(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の伝送回路、及び、信号送受信回路を適用した実施の形態について説明する前に、前提技術による伝送回路について説明する。
【0011】
図1は、前提技術の伝送回路を含むRF(Radio Frequency)トランシーバ10を示す図である。
【0012】
RFトランシーバ10は、アンテナ1、スイッチ2、バラン3Tx、3Rx、マッチング回路4Tx、4Rx、電力供給部5Tx、バイアス供給部5Rx、及びLSI(Large Scale Integrated circuit)6を含む。
【0013】
スイッチ2、バラン3Tx、マッチング回路4Tx、及び電力供給部5Txは、送信用の伝送回路を構築する。また、スイッチ2、バラン3Rx、マッチング回路4Rx、及びバイアス供給部5Rxは、受信用の伝送回路を構築する。
【0014】
図1では、スイッチ2を一つのブロックとして示すが、スイッチ2は、送信用の伝送回路に含まれる部分と、受信用の伝送回路に含まれる部分とに分けることができる。
【0015】
アンテナ1は、RF信号の送信及び受信を行うアンテナであり、スイッチ2により、送信系のバラン3Tx、マッチング回路4Tx、及び電力供給部5Tx、又は、受信系のバラン3Rx、マッチング回路4Rx、及びバイアス供給部5Rxに接続される。
【0016】
スイッチ2は、アンテナ1と、バラン3x、3Rxとの間に接続されている。スイッチ2は、アンテナ1と、送信系のバラン3Tx、マッチング回路4Tx、及び電力供給部5Tx、又は、受信系のバラン3Rx、マッチング回路4Rx、及びバイアス供給部5Rxとの接続を切り替えるスイッチである。
【0017】
スイッチ2は、アンテナ1からRF信号を送信する際に、LSI6からバラン3Tx、マッチング回路4Tx、及び電力供給部5Txを経てアンテナ1にRF信号を伝送する伝送経路に含まれる。
【0018】
また、スイッチ2は、アンテナ1がRF信号を受信するときに、受信したRF信号を、バラン3Rx、マッチング回路4Rx、及びバイアス供給部5Rxを経てLSI6に伝送する伝送経路に含まれる。
【0019】
このため、スイッチ2には、RF信号の損失を抑えるために、低損失であることが求められる。スイッチ2としては、例えば、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)によって構築されるスイッチが用いられる。このようなスイッチとしては、例えば、GaAsによって形成されるGaAsスイッチがある。
【0020】
なお、上述したように、スイッチ2は、送信用の伝送回路に含まれる部分と、受信用の伝送回路に含まれる部分とに分けることができる。
【0021】
バラン3Tx、3Rxは、それぞれ、送信系の伝送回路と受信系の伝送回路に含まれる。バラン3Txは、マッチング回路4Txから入力される差動形式の送信用のRF信号をシングルエンド形式のRF信号に変換する。また、バラン3Rxは、スイッチ2から入力されるシングルエンド形式のRF信号を差動形式のRF信号に変換してマッチング回路4Rxに出力する。
【0022】
バラン3Tx、3Rxは、シングルエンド形式の信号(不平衡信号)と差動形式の信号(平衡信号)とを変換するシングル差動変換を行う平衡/不平衡変換回路である。バラン3Tx、3Rxは、LSI6が差動形式のデータを取り扱うために設けられている。
【0023】
マッチング回路4Txは、バラン3Txと、LSI6との間に接続されており、バラン3Txと、LSI6とのインピーダンス整合を取るために設けられている。また、マッチング回路4Rxは、バラン3Rxと、LSI6との間に接続されており、バラン3Txと、LSI6とのインピーダンス整合を取るために設けられている。
【0024】
マッチング回路4Tx、4Rxは、アンテナ1のインピーダンスとLSI6のインピーダンスを変換するために必要である。無線通信用のLSI6で使われるRF(高周波)信号は、インピーダンスの違いにより伝搬度合いが変わるため、インピーダンスを整合させる(マッチングを取る)ことが必要がある。このために、マッチング回路4Tx、4Rxがアンテナ1とLSI6との間に設けられている。
【0025】
電力供給部5Txは、マッチング回路4TxとLSI6のPA(Power Amplifier)7Txとの間から電源に分岐する線路に挿入されており、LSI6のPA7Txに電力を供給するために設けられている。
【0026】
バイアス供給部5Rxは、マッチング回路4RxとLSI6のLNA(Low Noise Amplifier)7Rxとの間から基準電位点(グランド)に分岐する線路に挿入されており、LSI6のLNA7Rxに入力点のバイアスを供給するために設けられている。
【0027】
LSI6は、PA7Tx、LNA7Rx、送信信号制御回路8Tx、受信信号処理回路8Rx、及び信号処理回路9を含む。PA7Tx、LNA7Rx、送信信号制御回路8Tx、受信信号処理回路8Rx、及び信号処理回路9は、LSI6として1つのチップとして作製される。
【0028】
PA7Txは、マッチング回路4Txと送信信号制御回路8Txとの間に接続されており、送信信号制御回路8Txからマッチング回路4Txに伝送する送信用のRF信号を増幅するために設けられている。
【0029】
LNA7Rxは、マッチング回路4Rxと受信信号処理回路8Rxとの間に接続されており、アンテナ1で受信され、マッチング回路4Rxから出力される差動形式のRF信号を増幅するために設けられている。
【0030】
送信信号制御回路8Txは、信号処理回路9によって所定の処理が行われた送信用のRF信号をPA7Txに出力する際に、タイミング等の制御を行う回路である。
【0031】
受信信号処理回路8Rxは、LNA7Rxから入力されるRF信号を信号処理回路9に入力する際に、タイミング等の制御等の処理を行う回路である。
【0032】
信号処理回路9は、送信用のRF信号に所定の処理を行うことにより、データの重畳等を行うとともに、受信したRF信号に所定の処理を行うことにより、データの取得等を行う回路である。
【0033】
また、信号処理回路9は、送信状態と受信状態を切り替えるために、スイッチ2の切替を制御する。スイッチ2の切替は、信号処理回路9からスイッチ2に出力される切替信号によって行われる。
【0034】
次に、
図2及び
図3を用いて、前提技術による送信用の伝送回路と受信用の伝送回路について説明する。
【0035】
図2は、前提技術による伝送回路の一例を示す図である。
【0036】
図2に示す前提技術の伝送回路20は、スイッチ22、バラン23、マッチング回路24、及びバイアス供給部25を含む。伝送回路20は、送信用の回路と受信用の回路とで同一の構成を有する。
【0037】
伝送回路20は、
図1に示すスイッチ2(の送信系の部分)、バラン3Tx、マッチング回路4Tx、及び電力供給部5Tx、又は、
図1に示すスイッチ2(の受信系の部分)、バラン3Rx、マッチング回路4Rx、及びバイアス供給部5Rxに対応する。
【0038】
スイッチ22は、左側の端子にアンテナ1(
図1参照)が接続される。アンテナ22の右側の端子は、バラン23に接続されている。スイッチ22の左側の端子では、信号V1が入力又は出力される。
【0039】
スイッチ22は、送信用の伝送回路20と受信用の伝送回路20とに1つずつ含まれる。アンテナ1(
図1参照)からRF信号を送信する際には、送信用の伝送回路20のスイッチ22がオンにされ、受信用の伝送回路20のスイッチ22がオフにされる。
【0040】
アンテナ1(
図1参照)でRF信号を受信する際には、送信用の伝送回路20のスイッチ22がオフにされ、受信用の伝送回路20のスイッチ22がオンにされる。
【0041】
スイッチ22がオフにされると、スイッチ22の左側の端子と、バイアス供給部25の右側の2つの端子との間は、High-Zになり、遮断される。
【0042】
バラン23は、トランスであり、1次側(図中左側)の1つのコイルがスイッチ22に接続され、2次側(図中右側)の2つのコイルがマッチング回路24に接続されている。バラン23は、1次側(図中左側)の1つのコイルと、2次側(図中右側)の2つのコイルとで、シングル差動変換を行う。
【0043】
マッチング回路24は、インダクタL11、L12、キャパシタC11、C12を含む、LC型の整合回路である。インダクタL11とキャパシタC11は差動形式の一方の信号を伝送し、インダクタL12とキャパシタC12は差動形式の他方の信号を伝送する。なお、インダクタL11、L12のインダクタンスは互いに等しく、キャパシタC11、C12のキャパシタンスは互いに等しい。
【0044】
バイアス供給部25は、キャパシタC13、C14、インダクタL13、L14、及び2つの電源Vを含む。キャパシタC13、C14は、直流遮断用に設けられており、インダクタL13、L14は、電源Vの直流電圧を供給するために設けられている。
【0045】
バイアス供給部25の右側の2つの端子では、差動形式の信号V2p(positive)、V2n(negative)が入力又は出力される。
【0046】
このような伝送回路20がRF信号を送信する際には、バイアス供給部25の右側の2つの端子に差動形式の信号V2p、V2nが入力され、スイッチ22の左側の端子から信号V1が出力され、アンテナ1(
図1参照)からRF信号が放射される。
【0047】
また、伝送回路20がRF信号を受信する際には、スイッチ22の左側の端子に受信した信号V1が入力され、バイアス供給部25の右側の2つの端子から、差動形式の信号V2p、V2nが出力される。
【0048】
このような伝送回路20は、RF信号を送信又は受信する際に、RF信号の伝送経路にスイッチ22が含まれる。このため、RF信号を送信及び受信する際に、RF信号の損失が生じる。スイッチ22として低損失なGaAsスイッチを用いた場合でも、約0.2dB〜約0.5dB程度の損失が生じる。
【0049】
次に、
図3を用いて、
図2を変形した他の前提技術の伝送回路について説明する。
【0050】
図3は、他の前提技術による伝送回路30の一例を示す図である。
【0051】
伝送回路30は、スイッチ32、変換整合回路33、及びバイアス供給部35を含む。伝送回路30は、送信用の回路と受信用の回路とで同一の構成を有する。
【0052】
伝送回路30は、
図2に示すバラン23とマッチング回路24の代わりに、
図2に示すバラン23とマッチング回路24とを一体化した変換整合回路33を含むことにより、部品点数を削減したものである。このため、スイッチ32とバイアス供給部35の構成は、それぞれ、
図2に示すスイッチ22とバイアス供給部25と同様である。
【0053】
変換整合回路33は、インダクタL11、L12、キャパシタC11、C12を含む。変換整合回路33は、スイッチ32の右側の端子に接続される2つの線路を含み、インダクタL11とキャパシタC11は、2つの線路にそれぞれ直列に挿入されている。
【0054】
キャパシタC12は、インダクタL11と、バイアス供給部25のキャパシタC13との間から接地電位点に分岐する分岐路に直列に挿入されている。インダクタL12は、キャパシタC11と、バイアス供給部25のキャパシタC14との間から接地電位点に分岐する分岐路に直列に挿入されている。
【0055】
変換整合回路33では、インダクタL11とインダクタL12とのインダクタンスが等しく、かつ、キャパシタC11とキャパシタC12とのキャパシタンスが等しくなるように回路が構築されている。
【0056】
変換整合回路33は、このような回路構成により、シングル差動変換とインピーダンス整合とを実現している。
【0057】
このような回路構成を有する伝送回路30の動作は、伝送回路20の動作と同様である。
【0058】
すなわち、伝送回路30がRF信号を送信する際には、バイアス供給部35の右側の2つの端子に差動形式の信号V2p、V2nが入力され、スイッチ32の左側の端子から信号V1が出力され、アンテナ1(
図1参照)からRF信号が放射される。
【0059】
また、伝送回路30がRF信号を受信する際には、スイッチ32の左側の端子に受信した信号V1が入力され、バイアス供給部35の右側の2つの端子から、差動形式の信号V2p、V2nが出力される。
【0060】
伝送回路30は、
図2に示す伝送回路20と同様に、RF信号を送信又は受信する際に、RF信号の伝送経路にスイッチ32が含まれる。このため、RF信号を送信及び受信する際に、RF信号の損失が生じる。スイッチ32として低損失なGaAsスイッチを用いた場合でも、約0.2dB〜約0.5dB程度の損失が生じる。
【0061】
ここで、例えば、信号経路にスイッチ22又は32による0.5dBの損失がある場合において、RF信号を受信する場合には、受信感度が0.5dB劣化する。受信感度を0.5dB改善するためには、LNA7Rx(
図1参照)の電流を増やす必要があり、そのためにはLNA7Rx(
図1参照)のトランスコンダクタンスを1.2倍、すなわち電流を1.4倍に増大する必要がある。
【0062】
また、RF信号を送信する場合は、LSI6(
図1参照)から0.5dB分だけ電力を余計に出力する必要があるため、電力は12.2%増えることになる。
【0063】
このように、
図2及び
図3に示す伝送回路20及び30では、いずれの場合も、信号経路にスイッチ22及び32が含まれている。
【0064】
このため、スイッチ22又は32における損失がLSI6の全体の消費電力に対して占める割合は大きく、電流増加の影響は無視できない。
【0065】
従って、以下で説明する実施の形態1、2では、信号経路における損失を低減した伝送回路、及び、信号送受信回路を提供することを目的とする。
【0066】
以下、本発明の伝送回路、及び、信号送受信回路を適用した実施の形態について説明する。
【0067】
<実施の形態1>
図4は、実施の形態1の伝送回路100Tx、100Rxを含むRF(Radio Frequency)トランシーバ500を示す図である。
【0068】
RFトランシーバ500は、アンテナ1、伝送回路100Tx、100Rx、及びLSI(Large Scale Integrated circuit)510を含む。RFトランシーバ500は、信号送受信回路の一例である。
【0069】
ここで、伝送回路100Txが伝送するRF信号の周波数と、伝送回路100Rxの周波数とは、同一の周波数帯域にあることとする。
【0070】
同一の周波数帯域とは、例えば、信号の通過特性を表すS11パラメータの値が所定値以下になる周波数帯域が同一であること、あるいは、重複することをいう。また、同一の周波数帯域とは、例えば、信号の通過特性を表すS21パラメータの値が所定値以上になる周波数帯域が同一であること、あるいは、重複することをいう。
【0071】
伝送回路100Tx、100Rxの構成要素のうち、スイッチ130Tx、130Rxは、LSI510に含まれる。すなわち、スイッチ130Tx、130Rxは、LSI510のチップに含まれており、半導体集積回路の一部として実現される。
【0072】
伝送回路100Txは、端子101Tx、102Txp、102Txn、回路150Tx、及びスイッチ130Txを含む。同様に、伝送回路100Rxは、端子101Rx、102Rxp、102Rxn、回路150Rx、及びスイッチ130Rxを含む。
【0073】
回路150Txは、伝送回路100Txからスイッチ130Txと端子101Tx、102Txpを除いた部分であり、LSIではなく、キャパシタ(C1、C2、C3)、インダクタ(L1、L2、L3)、及び直流電源(V)等の電子部品によって構築される部分である。
【0074】
同様に、回路150Rxは、伝送回路100Rxからスイッチ130Rxと102Rxp、102Rxnを除いた部分であり、LSIではなく、キャパシタ(C1、C2、C3)、インダクタ(L1、L2、L3)、及び直流電源(V)等の電子部品によって構築される部分である。
【0075】
このため、換言すれば、RFトランシーバ500は、アンテナ1、回路150Tx、150Rx、及びLSI510を含む。
【0076】
アンテナ1は、伝送回路100Txの端子101Txと、伝送回路100Rxの端子101Rxとに接続されている。また、伝送回路100Txの端子102Txp、102Txnは、PA(Power Amplifier)511の一対の出力端子に接続されている。伝送回路100Rxの端子102Rxp、102Rxnは、LNA(Low Noise Amplifier)512の一対の入力端子に接続されている。
【0077】
また、回路150Txの端子151Txp、151Txnは、それぞれ、LSI510の端子551Txp、551Txnと接続されている。同様に、回路150Rxの端子151Rxp、151Rxnは、それぞれ、LSI510の端子551Rxp、551Rxnと接続されている。
【0078】
LSI510は、スイッチ130Tx、130Rx、PA511、LNA512、送信信号制御回路520Tx、受信信号処理回路520Rx、信号処理回路530、及び端子551Txp、551Txn、551Rxp、551Rxnを含む。
【0079】
LSI510は、1つの半導体集積回路装置のチップとして実現される。LSI510は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタによって構築される。この場合、PA511、LNA512、送信信号制御回路520Tx、受信信号処理回路520Rx、信号処理回路530、及び端子551Txp、551Txn、551Rxp、551Rxnは、CMOSトランジスタによって構築される。また、スイッチ130Tx、130Rxは、CMOSトランジスタに含まれるPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ又はNMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタによって構築される。
【0080】
PA511は、送信信号制御回路520Txと伝送回路100Txとの間に設けられており、送信信号制御回路520Txから入力される差動形式のRF信号を増幅して伝送回路100Txに入力する。
【0081】
LNA512は、伝送回路100Rxと受信信号処理回路520Rxとの間に設けられており、アンテナ1で受信され、伝送回路100Rxから出力される差動形式のRF信号を増幅して、受信信号処理回路520Rxに入力する。
【0082】
送信信号制御回路520Txは、信号処理回路530によって所定の処理が行われた送信用のRF信号をPA511に出力する際に、タイミング等の制御を行う回路である。
【0083】
受信信号処理回路520Rxは、LNA512から入力されるRF信号を信号処理回路530に入力する際に、タイミング等の制御等の処理を行う回路である。
【0084】
信号処理回路530は、送信用のRF信号に所定の処理を行うことにより、データの重畳等を行うとともに、受信したRF信号に所定の処理を行うことにより、データの取得等を行う回路である。
【0085】
また、信号処理回路530は、送信状態と受信状態を切り替えるために、スイッチ130Tx、130Rxの切替を制御する。信号処理回路530は、送信状態にするときはスイッチ130Txをオンにして、スイッチ130Rxをオフにし、受信状態にするときはスイッチ130Txをオフにして、スイッチ130Rxをオンにする。スイッチ130Tx、130Rxの切替は、信号処理回路530からスイッチ130Tx、130Rxに出力される切替信号によって行われる。
【0086】
次に、
図5を用いて、伝送回路100Tx、100Rxについて説明する。なお、伝送回路100Tx、100Rxの構成は同様であるため、以下では、伝送回路100Txと100Rxを区別しない場合は、伝送回路100と称す。
【0087】
図5は、実施の形態1の伝送回路100を示す図である。
【0088】
伝送回路100は、端子101、102p、102n、回路110、120、スイッチ130、キャパシタC4を含む。これらのうち、回路110、120、及びキャパシタC4は、
図4に示す伝送回路100Txの回路150Txと、伝送回路100Rxの回路150Rxとに相当する。
【0089】
また、回路110、120と、スイッチ130との間には、端子151p、151n、551p、551nがある。端子151p、151n、551p、551nは、
図4では、端子151Txp、151Txn、551Txp、551Txnと、151Rxp、151Rxn、551Rxp、551Rxnとに対応する。
【0090】
伝送回路100は、端子101と端子102pとの間の信号経路と、端子101と端子102nとの間の信号経路とを有する。端子101は、第1端子の一例であり、端子102p、102nは、一対の第2端子の一例である。
【0091】
端子101と端子102pとの間の信号経路は、第1経路の一例であり、端子101と端子102nとの間の信号経路は、第2経路の一例である。端子101と端子102pとの間の信号経路と、端子101と端子102nとの間の信号経路とは、分岐点103において分岐している。
【0092】
回路110は、キャパシタC1、C3、インダクタL2、及び直流電源Vを含む。回路110は、第1回路の一例である。
【0093】
キャパシタC1は、端子101と端子102pとの間の信号経路に直列に挿入されている。より具体的には、キャパシタC1は、分岐点103と端子102pとの間の信号経路に直列に挿入されている。
【0094】
キャパシタC3とインダクタL2は、並列に接続されている。キャパシタC3とインダクタL2を含む並列回路は、キャパシタC1と端子102pとの間の分岐点104からグランド電位点に分岐する分岐路に直列に挿入されている。
【0095】
直流電源Vは、キャパシタC3とインダクタL2を含む並列回路と、グランド電位点との間の分岐路に直列に挿入されている。直流電源Vの正極性端子は、キャパシタC3とインダクタL2を含む並列回路に接続され、負極性端子はグランド電位点に接続されている。
【0096】
なお、分岐点104とグランド電位点との間の分岐路は、第1分岐路の一例であり、グランド電位点は、基準電位点の一例である。
【0097】
また、キャパシタC1は、第1キャパシタの一例であり、キャパシタC3は、第2キャパシタの一例であり、インダクタL2は、第2インダクタの一例である。
【0098】
回路120は、キャパシタC2、インダクタL1、L3、及び直流電源Vを含む。回路120は、第2回路の一例である。
【0099】
インダクタL1は、端子101と端子102nとの間の信号経路に直列に挿入されている。より具体的には、インダクタL1は、分岐点103と端子102nとの間の信号経路に直列に挿入されている。
【0100】
キャパシタC2とインダクタL3は、並列に接続されている。キャパシタC2とインダクタL3を含む並列回路は、インダクタL1と端子102nとの間の分岐点105からグランド電位点に分岐する分岐路に直列に挿入されている。
【0101】
直流電源Vは、キャパシタC2とインダクタL3を含む並列回路と、グランド電位点との間の分岐路に直列に挿入されている。直流電源Vの正極性端子は、キャパシタC2とインダクタL3を含む並列回路に接続され、負極性端子はグランド電位点に接続されている。
【0102】
なお、分岐点105とグランド電位点との間の分岐路は、第2分岐路の一例であり、グランド電位点は、基準電位点の一例である。
【0103】
また、キャパシタC2は、第3キャパシタの一例であり、インダクタL1は、第1インダクタの一例であり、インダクタL3は、第3インダクタの一例である。
【0104】
スイッチ130は、端子102pと102nとの間に接続されている。換言すれば、スイッチ130の一端(
図5中の上側の端子)は、分岐点104と端子102pとの間に接続され、スイッチ130の他端(
図5中の下側の端子)は、分岐点105と端子102nとの間に接続される。スイッチ130は、
図4に示す信号処理回路530から出力される切替信号によってオン/オフの制御が行われる。
【0105】
キャパシタC4は、端子101と、分岐点103との間に接続される。キャパシタC4は、第4キャパシタの一例である。
【0106】
このような伝送回路100において、キャパシタC1のインピーダンスは、キャパシタC2とインダクタL3との並列回路のインピーダンスと等しい。また、インダクタL1のインピーダンスは、インダクタL2とキャパシタC3との並列回路のインピーダンスと等しい。
【0107】
これは、端子101に接続されるアンテナ1(
図4参照)と、LSI510(
図4参照)とのインピーダンスを整合させるためである。
【0108】
また、キャパシタC3とインダクタL3を取り除いて考えると、キャパシタC1及びインダクタL2の組と、インダクタL1及びキャパシタC2の組とは、シングルエンド形式の信号と、差動形式の信号とを変換するバランの機能を有していることが分かる。
【0109】
すなわち、キャパシタC1及びインダクタL2は、端子102pから入力される信号の位相を90度進める。一方、インダクタL1及びキャパシタC2は、端子102nから入力される信号の位相を90度遅延させる。
【0110】
端子102pと102nには、差動形式の一対の信号が入力される。差動形式の一対の信号は、互いの位相が略180度異なる。
【0111】
従って、端子102p、102nから差動形式の一対の信号が入力されると、差動形式の一対の信号のうちのポジティブ側の信号は、キャパシタC1及びインダクタL2によって位相が90度進められる。また、差動形式の一対の信号のうちのネガティブ側の信号は、インダクタL1及びキャパシタC2によって位相が90度遅延される。
【0112】
このため、分岐点103には、端子102pから入力されるポジティブ側の信号の位相を90度進めた信号が入力されるとともに、端子102nから入力されるネガティブ側の信号の位相を90度遅延させた信号が入力される。
【0113】
端子102pから入力されるポジティブ側の信号の位相を90度進めた信号と、端子102nから入力されるネガティブ側の信号の位相を90度遅延させた信号との位相は等しい。
【0114】
従って、キャパシタC1及びインダクタL2の組と、インダクタL1及びキャパシタC2の組とにより、端子102p、102nから入力される差動形式の信号をシングルエンド形式の信号に変換することができる。
【0115】
また、端子101からシングルエンド形式の信号が入力される場合は、上述とは逆の動作により、シングルエンド形式の信号が、差動形式の信号に変換される。
【0116】
以上より、キャパシタC1及びインダクタL2の組と、インダクタL1及びキャパシタC2の組とにより、シングル差動変換を行うことができる。
【0117】
ところで、インダクタL3がないと、回路120の直流電源Vが出力する直流電圧を分岐点105に入力することができず、端子102nにおいて入力又は出力される信号に直流バイアスを供給することができない。
【0118】
このため、インダクタL3を設けて、回路120の直流電源Vが出力する直流電圧を端子102nに供給する経路を実現している。
【0119】
また、回路120にインダクタL3を加えると、回路110と回路120のインピーダンス整合が取れなくなるため、回路110にキャパシタ130を設けている。
【0120】
回路110では、回路110の直流電源Vから出力される直流電圧は、インダクタL2及び分岐点104を経て、端子102pに供給される。
【0121】
以上のような理由から、回路110は、キャパシタC1、C3、インダクタL2、及び直流電源Vを含み、回路120は、キャパシタC2、インダクタL1、L3、及び直流電源Vを含む。
【0122】
そして、キャパシタC1のインピーダンスは、キャパシタC2とインダクタL3との並列回路のインピーダンスと等しく、インダクタL1のインピーダンスは、インダクタL2とキャパシタC3との並列回路のインピーダンスと等しい。
【0123】
このような回路構成を有する回路110と120は、信号のシングル差動変換、インピーダンス整合、及びバイアス電圧の供給を行う回路である。
【0124】
また、キャパシタC4は、端子101に対して、回路120の直流電圧VからインダクタL3及びL1を経て分岐点103に供給される直流電圧を遮断するために設けられている。
【0125】
ここで、伝送回路100が伝送するRF信号の周波数(共振周波数)、端子101における特性インピーダンス、端子102pと端子102nの間のインピーダンスの一例としての値について説明する。
【0126】
例えば、伝送回路100が伝送するRF信号の周波数(共振周波数)fが430MHzであるとする。また、端子101における特性インピーダンスZ1が50Ω、端子102pと端子102nの間のインピーダンスZ2が1200Ωであることとする。
【0127】
キャパシタC1のキャパシタンスをC1、インダクタL1のインダクタンスをL1とすると、Z1とL1は、次のようにあらわすことができる。なお、ωは角周波数 ω=2πfとする。
Z1 = Z2/{1+(ω*C1*Z2)^2} ・・・(1)
L1 = C1*Z2^2/{1+(ω*C1*Z2)^2} ・・・(2)
ここで、式(1)、(2)において、1 << (ω*C1*Z2)^2 であるとすると、式(1)、(2)は式(3)、(4)のように変形できる。
Z1 = 1 / ω^2*C1^2*Z ・・・(3)
L1 = 1 / ω^2*C1 ・・・(4)
C1、L1は、式(3)、(4)を満たす値に設定すればよい。
【0128】
また、キャパシタC2、C3のキャパシタンス(C2、C3)と、インダクタL2、L3のインダクタンス(L2、L3)は、次式(5)、(6)を満たす値に設定すればよい。
1/(ωL1) = 1/(ω*L2) - ω*C3 ・・・(5)
ωC1 = ω*C2 - 1/(ω*L3) ・・・(6)
ここで、
図6を用いて、スイッチ130のオフとオンの場合の信号の流れについて説明する。
【0129】
図6は、実施の形態1の伝送回路100における信号の流れを示す図である。
図6(A)
は、スイッチ130がオフの状態における動作を示し、
図6(B)は、スイッチ130がオンの状態における動作を示す。
【0130】
図6(A)に示すように、伝送回路100のスイッチ130がオフのときは、端子101と端子102p、102nとの間で、RF信号を双方向に伝送することができる。
【0131】
すなわち、端子101に入力されるシングルエンド形式のRF信号を差動形式のRF信号に変換して端子102p、102nから出力することができる。また、これとは逆に、端子102p、102nに入力される差動形式のRF信号をシングルエンド形式のRF信号に変換して端子101から出力することができる。
【0132】
また、スイッチ130がオフのときは、RF信号がどちらの方向に伝送される場合でも、直流電源Vから端子102p、102nにバイアス電圧を供給することができる。
【0133】
また、
図6(B)に示すように、伝送回路100のスイッチ130がオンのときには、キャパシタC1とインダクタL1とを含むループ状のLC共振回路が構築される。このLCループ回路は、スイッチ130、分岐点104、キャパシタC1、分岐点103、インダクタL1、及び分岐点105を経て、スイッチ130に戻るループ回路によって実現される。
【0134】
実施の形態1の伝送回路100では、キャパシタC1のキャパシタンスとインダクタL1のインダクタンスとによって決まる共振周波数が、伝送回路100によって伝送されるRF信号の共振周波数に等しくなるように設定されている。
【0135】
これは、伝送回路100のスイッチ130をオンにした状態で、端子101又は端子102p、102nからRF信号が入力されたときに、キャパシタC1とインダクタL1とを含むループ状のLC共振回路において、共振を生じさせることにより、端子101と端子102p、102nとの間のHigh-Z(ハイインピーダンス)にするためである。
【0136】
伝送回路100のスイッチ130をオンにした状態で、端子101と端子102p、102nとの間をHigh-Zにすれば、端子101と端子102p、102nとの間でRF信号が流れなくなる。
【0137】
このため、実施の形態1の伝送回路100では、スイッチ130をオフにすれば、端子101と端子102p、102nとの間でRF信号を伝送でき、かつ、シングル差動変換とバイアス供給を行うことができる。
【0138】
また、実施の形態1の伝送回路100では、スイッチ130をオンにすれば、端子101と端子102p、102nとの間を遮断することができる。
【0139】
ここで、
図7及び
図8を用いて、伝送回路100においてスイッチ130のオン/オフを切り替えた場合の信号通過特性について説明する。
【0140】
図7は、伝送回路100においてスイッチ130をオフにした場合の信号通過特性を示す図である。
図8は、伝送回路100においてスイッチ130をオンにした場合の信号通過特性を示す図である。
【0141】
図7及び
図8に示す信号通過特性(S11パラメータ、S21パラメータ)は、端子101をport1とし、端子102p、102nに、理想的なシングル差動変換を行うバランを接続し、このバランからシングルエンド形式のRF信号が出力される端子をport2として求めた。なお、port1, port2は接地されている。
【0142】
図7及び
図8に示すS11パラメータ、S21パラメータは、式(3)、(4)、(5)、(6)を満たすキャパシタンスC1、C2、C3、インダクタンスL1、L2、L3を求めた上で、シミュレーションによって求めた。
【0143】
なお、ここでは、一例として、S11パラメータについては、−10dB以下の周波数帯域を、信号の反射の少ない良好な周波数帯域として評価する。また、S21パラメータについては、−3dB以上の周波数帯域を通過損失の少ない良好な周波数帯域として評価する。
【0144】
スイッチ130をオフにした場合には、
図7に実線で示すように、S11パラメータは、430MHzをほぼ中心とする周波数帯域(約3.9MHz〜約4.5MHz)において、−10dB以下となった。
【0145】
また、
図7に破線で示すように、S21パラメータは、430MHzをほぼ中心とする周波数帯域(約3.9MHz〜約4.5MHz)において、−3dB以上となった。
【0146】
このため、スイッチ130をオフにした場合には、端子101と端子102p、102nとの間において、共振周波数f=4.3MHzの前後を含む周波数帯域において、RF信号の良好な伝送状態を得られることが分かった。
【0147】
また、スイッチ130をオンにした場合には、
図8に実線で示すように、S11パラメータは、周波数に関係なく、約0dBであった。
【0148】
また、
図8に破線で示すように、S21パラメータは、−36dB以下となった。
【0149】
このため、スイッチ130をオンにした場合には、端子101と端子102p、102nとの間が遮断されてHigh-Zの状態が得られることが分かった。
【0150】
以上、実施の形態1の伝送回路100では、スイッチ130をオフにすれば、端子101と端子102p、102nとの間でRF信号を伝送でき、かつ、シングル差動変換とバイアス供給を行うことができる。
【0151】
また、実施の形態1の伝送回路100では、スイッチ130をオンにすれば、端子101と端子102p、102nとの間を遮断することができる。
【0152】
そして、実施の形態1の伝送回路100は、スイッチ130をオフにして端子101と端子102p、102nとの間でRF信号を伝送する際に、RF信号がスイッチ130を通過しないため、RF信号の損失を大幅に低減することができる。
【0153】
これは、前提技術の伝送回路20(
図2参照)と伝送回路30(
図3参照)の信号の伝送経路に、それぞれ、スイッチ22、32が含まれていることと比べると、非常に大きな違いである。
【0154】
以上のように、実施の形態1によれば、損失を低減した伝送回路100を提供することができる。
【0155】
従って、
図4に示す実施の形態1のRFトランシーバ500において、伝送回路100Tx、100Rxのスイッチ130Tx、130Rxのオン/オフを互い違いに制御すれば、伝送回路100Tx、100Rxのどちらか一方のみでRF信号を伝送できる。
【0156】
そして、その際に、RF信号がスイッチ130を通過しないため、RF信号の損失を大幅に低減することができる。
【0157】
また、実施の形態1の伝送回路100は、スイッチ130がRF信号の伝送経路に含まれないため、前提技術の伝送回路20、30(
図2、3参照)のスイッチ22、32のように、低損失なMMICによって構築されるスイッチを用いる必要がない。
【0158】
このため、スイッチ130は、シリコンを主材料とする半導体集積回路装置によって実現されるLSI510の内部に配置することができる。
【0159】
また、実施の形態1の伝送回路100では、回路110と120は、信号のシングル差動変換、インピーダンス整合、及びバイアス電圧の供給を行う回路である。
【0160】
このため、前提技術の伝送回路20、30(
図2、3参照)よりも部品点数を削減することができる。このため、前提技術の伝送回路20、30(
図2、3参照)よりも、小型化を図ることができる。LSI510の外部の部品は、実装面積が比較的大きいため、LSI510の外部の部品の数を削減できることは、小型化において非常に有利である。
【0161】
なお、以上では、
図4に示すRFトランシーバ500のように、送信系及び受信系の両方に、実施の形態1の伝送回路100(100Tx、100Rx)を含む形態について説明した。しかしながら、RFトランシーバ500は、次のように変形してもよい。
【0162】
図9は、実施の形態1の変形例のRFトランシーバ500Aを示す図である。
【0163】
図9に示すRFトランシーバ500Aのように、送信系の伝送回路100Txのみを含み、受信系は、LSI510Aの端子560AとLSI510Aの内部のスイッチ130Aを介して、アンテナ1とLNA512Aを接続してもよい。この場合は、受信系は、シングルエンド形式のRF信号を信号処理回路530に入力することになる。
【0164】
また、これとは逆に、受信系の伝送回路100Rxのみを含み、送信系は、Lシングルエンド形式のRF信号を信号処理回路530に入力してもよい。
【0165】
<実施の形態2>
図10は、実施の形態2の伝送回路200を示す図である。伝送回路200は、実施の形態1の伝送回路100(
図5参照)から、回路110の内部の直流電源Vと、回路120の内部の直流電源Vとを取り除いた構成を有する。
【0166】
その他の構成は、実施の形態1の伝送回路100の構成と同様であるため、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0167】
実施の形態2の伝送回路200は、回路110の内部の直流電源Vと、回路120の内部の直流電源Vとを有しないため、実施の形態1の伝送回路100の回路110、120に比べると、バイアス電圧の供給機能を有しないことになる。
【0168】
従って、回路110、120は、信号のシングル差動変換、及びインピーダンス整合を行う回路である。
【0169】
このような伝送回路200は、RFトランシーバのLSIのPA又はLNAがバイアス供給機能を有する場合に、用いることができる。
【0170】
伝送回路200は、スイッチ130をオフにして端子101と端子102p、102nとの間でRF信号を伝送する際に、RF信号がスイッチ130を通過しないため、RF信号の損失を大幅に低減することができる。
【0171】
以上のように、実施の形態2によれば、損失を低減した伝送回路200を提供することができる。
【0172】
<実施の形態3>
図11は、実施の形態3の伝送回路300を示す図である。
【0173】
伝送回路300は、端子101、回路310、320、スイッチ130、端子302p、302nを含む。以下、実施の形態1、2の伝送回路100、200と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0174】
端子101は、実施の形態1の伝送回路100の端子101と同様であり、アンテナ1(
図4参照)に接続される。
【0175】
回路310及び320は、それぞれ、インダクタL1とキャパシタC1を有する。
【0176】
回路310のインダクタL1は、端子101と端子302pとの間に直列に挿入される。また、回路310のキャパシタC1は、分岐点304と電源端子との間に直列に挿入される。
【0177】
回路320のキャパシタC1は、端子101と端子302nとの間に直列に挿入される。また、回路310のインダクタL1は、分岐点305とグランド端子との間に直列に挿入される。
【0178】
スイッチ130は、端子302p、302nの間に接続される。
【0179】
このような伝送回路300において、回路310のインダクタL1とキャパシタC1と、回路320のキャパシタC1とインダクタL1とは、互いの位置を入れ替えた回路構成を有する。
【0180】
これは、回路310のインダクタL1とキャパシタC1と、回路320のキャパシタC1とインダクタL1とで、インピーダンス整合を取るとともに、シングル差動変換を実現するためである。
【0181】
すなわち、スイッチ130がオフであるときは、端子302pから入力される差動信号のポジティブ側の信号は、回路310のインダクタL1とキャパシタC1によって位相が90度進められる。また、端子302nから入力される差動信号のネガティブ側の信号は、回路320のキャパシタC1とインダクタL1によって位相が90度遅延される。
【0182】
このため、スイッチ130がオフであるときは、端子302p、302nに入力される差動形式のRF信号をシングルエンド形式のRF信号に変換して、端子101から出力することができる。
【0183】
また、スイッチ130がオフであるときは、端子101から入力されるシングルエンド形式のRF信号を回路310、320で差動形式のRF信号に変換して、端子302p、302nから出力することができる。
【0184】
以上のように、伝送回路300は、スイッチ130をオフにして端子101と端子302p、302nとの間でRF信号を伝送する際に、RF信号がスイッチ130を通過しないため、RF信号の損失を大幅に低減することができる。
【0185】
また、スイッチ130をオンにすれば、回路310のインダクタL1と、回路320のキャパシタC1とで構築されるループ状のLC共振回路によって、端子101と、端子302p、302nとの間は、High-Zにされる。
【0186】
このため、伝送回路300は、実施の形態1、2の伝送回路100、200と同様に動作することができる。
【0187】
以上のように、実施の形態3によれば、損失を低減した伝送回路300を提供することができる。
【0188】
以上、本発明の例示的な実施の形態の伝送回路、及び、信号送受信回路について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
信号を入力又は出力する第1端子と、前記信号を出力又は入力する一対の第2端子の一方とを接続する第1経路と、
前記第1端子と、前記一対の第2端子の他方とを接続する第2経路と、
前記第1経路に直列に挿入される第1キャパシタを有し、前記第1経路を伝送される信号のシングル差動変換、インピーダンス整合、及びバイアス電圧の供給を行う第1回路と、
前記第2経路に直列に挿入される第1インダクタを有し、前記第2経路を伝送される信号のシングル差動変換、インピーダンス整合、及びバイアス電圧の供給を行う第2回路と、
前記一対の第2端子の一方と他方との間に接続されるスイッチと
を含む、伝送回路。
(付記2)
前記第1キャパシタのキャパシタンスと、前記第1インダクタとインダクタンスとによって定まる共振周波数は、前記第1経路及び前記第2経路を伝送される信号の共振周波数と等しい、付記1記載の伝送回路。
(付記3)
前記第1回路は、
前記第1キャパシタと、
前記第1キャパシタと前記一対の第2端子の一方との間から分岐し、基準電位点に接続される第1分岐路と、
前記第1分岐路に直列に挿入される、第2インダクタ及び第2キャパシタの第1並列回路と、
前記第1並列回路と前記基準電位点との間で、前記第1分岐路に直列に挿入される第1直流電源と
を有し、
前記第2回路は、
前記第1インダクタと、
前記第1インダクタと前記一対の第2端子の他方との間から分岐し、基準電位点に接続される第2分岐路と、
前記第2分岐路に直列に挿入される、第3インダクタ及び第3キャパシタの第2並列回路と、
前記第2並列回路と前記基準電位点との間で、前記第2分岐路に直列に挿入される第2直流電源と
を有する、付記1又は2記載の伝送回路。
(付記4)
前記第1端子と、前記第1キャパシタ及び前記第1インダクタとの間に挿入される、第4キャパシタをさらに含む、付記1乃至3のいずれか一項記載の伝送回路。
(付記5)
信号を入力又は出力する第1端子と、前記信号を出力又は入力する一対の第2端子の一方とを接続する第1経路と、
前記第1端子と、前記一対の第2端子の他方とを接続する第2経路と、
前記第1経路に直列に挿入される第1キャパシタを有し、前記第1経路を伝送される信号のシングル差動変換とインピーダンス整合を行う第1回路と、
前記第2経路に直列に挿入される第1インダクタを有し、前記第2経路を伝送される信号のシングル差動変換とインピーダンス整合を行う第2回路と、
前記一対の第2端子の一方と他方との間に接続されるスイッチと
を含む、伝送回路。
(付記6)
信号送受信端子と、
信号を送信する送信回路と、
前記第1端子が前記信号送受信端子に接続され、前記一対の第2端子が前記送信回路の一対の出力端子に接続される、付記1乃至5のいずれか一項記載の伝送回路と
を含む、信号送受信回路。
(付記7)
前記スイッチと、前記送信回路とは、1つの半導体回路装置として実現される、付記5記載の信号送受信回路。
(付記8)
信号送受信端子と、
信号を受信する受信回路と、
前記第1端子が前記信号送受信端子に接続され、前記一対の第2端子が前記受信回路の一対の入力端子に接続される、付記1乃至5のいずれか一項記載の伝送回路と
を含む、信号送受信回路。
(付記9)
前記スイッチと、前記受信回路とは、1つの半導体回路装置として実現される、付記8記載の信号送受信回路。
(付記10)
信号を入力又は出力する第1端子と、前記信号を出力又は入力する一対の第2端子の一方とを接続する第1経路と、
前記第1端子と、前記一対の第2端子の他方とを接続する第2経路と、
前記第1経路に直列に挿入される第1キャパシタと、
前記第2経路に直列に挿入される第1インダクタと、
前記第1経路の前記第1キャパシタと前記一対の第2端子の一方との間から分岐し、基準電位点に接続される第1分岐路と、
前記第1分岐路に直列に挿入される、第2インダクタ及び第2キャパシタの第1並列回路と、
前記第1並列回路と前記基準電位点との間で、前記第1分岐路に直列に挿入される第1直流電源と、
前記第2経路の前記第1インダクタと前記一対の第2端子の他方との間から分岐し、基準電位点に接続される第2分岐路と、
前記第2分岐路に直列に挿入される、第3インダクタ及び第3キャパシタの第2並列回路と、
前記第2並列回路と前記基準電位点との間で、前記第2分岐路に直列に挿入される第2直流電源と、
前記一対の第2端子の一方と他方との間に接続されるスイッチと
を含む、伝送回路。