特許第6163352号(P6163352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163352
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】バトミントンラケット
(51)【国際特許分類】
   A63B 49/02 20150101AFI20170703BHJP
【FI】
   A63B49/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-108579(P2013-108579)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-226340(P2014-226340A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大谷 和也
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−285568(JP,A)
【文献】 実開平06−009664(JP,U)
【文献】 特開平10−033719(JP,A)
【文献】 特表平04−501820(JP,A)
【文献】 特開2003−010367(JP,A)
【文献】 米国特許第1539019(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00−49/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップと、環状のフレームと、前記グリップと前記フレームとを連結するシャフトと、を有するバトミントンラケットであって、
前記フレームは、
前記シャフトの延びるシャフト軸方向について中央領域と、
前記シャフト軸方向について前記中央領域より前記シャフト側の根元領域と、
前記シャフト軸方向について前記中央領域より前記バトミントンラケットの先端側の先端領域と、
を有し、前記フレームの面の垂線方向の厚さが、前記根元領域及び前記先端領域よりも前記中央領域において薄く、
前記中央領域におけるフレームの弾性率が、前記先端領域におけるフレームの弾性率及び前記根元領域におけるフレームの弾性率よりも高いことを特徴とするバトミントンラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のバトミントンラケットであって、
前記中央領域におけるフレームの材料が、前記先端領域におけるフレームの材料及び前記根元領域におけるフレームの材料の少なくともいずれか一方と異なることを特徴とするバトミントンラケット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバトミントンラケットであって、
前記中央領域は、前記シャフト軸方向について前記フレームの中央から等間隔で広がる領域であることを特徴とするバトミントンラケット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載のバトミントンラケットであって、
前記中央領域の前記シャフト軸方向についての幅は、前記先端領域及び前記根元領域の前記シャフト軸方向についての幅よりも狭いことを特徴とするバトミントンラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バドミントン等に使用されるラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
バドミントンは、素早くシャトルを打ち落とすことが求められる競技である。このため、高い反発力を有するバドミントンラケットが開発されてきた。
【0003】
特許文献1には、カーボンナノチューブを含むカーボンファイバープリプレグ成形体を有するバドミントンラケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−147846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラケットを振り抜く際に、可能な限り腕から遠い位置でシャトルを打ち返せばシャトルに対するストリングの接触速度を高めることができる。そのため、上級者はスマッシュ等を打つときにラケットフレームの中央よりも先端側でシャトル等を打ち返すことが多いのであるが、フレームの中央よりも上端側においてシャトル等の被打対象物を打ち返した際に、被打対象物が打ち出される速度をさらに高めることがプレーヤーの間で望まれている。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フレームの中央よりも先端側において打ち返された被打対象物の打ち出し速度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
グリップと、環状のフレームと、前記グリップと前記フレームとを連結するシャフトと、を有するバトミントンラケットであって、
前記フレームは、
前記シャフトの延びるシャフト軸方向について中央領域と、
前記シャフト軸方向について前記中央領域より前記シャフト側の根元領域と、
前記シャフト軸方向について前記中央領域より前記バトミントンラケットの先端側の先端領域と、
を有し、前記フレームの面の垂線方向の厚さが、前記根元領域及び前記先端領域よりも前記中央領域において薄く、
前記中央領域におけるフレームの弾性率が、前記先端領域におけるフレームの弾性率及び前記根元領域におけるフレームの弾性率よりも高いことを特徴とするバトミントンラケットである。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラケットによれば、中央領域のフレームが面の垂線方向について薄いため、ラケットを振り抜く際に中央領域をキックポイントとしてフレームを変形させることができる。そして、中央より上端側の反発力を高めることができる。そのため、フレームの中央よりも先端側において打ち返された被打対象物の打ち出し速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、本実施形態におけるバドミントンラケット1の正面図であり、図1Bは、本実施形態におけるバドミントンラケット1の側面図である。
図2】ラケット1のフレーム10の側面図である。
図3】先端領域11に外力が加わったときにおけるフレーム10の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
===開示の概要===
本明細書及び図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
すなわち、グリップと、環状のフレームと、前記グリップと前記フレームとを連結するシャフトと、を有するラケットであって、前記フレームは、前記シャフトの延びるシャフト軸方向について中央領域と、前記シャフト軸方向について前記中央領域より前記シャフト側の根元領域と、前記シャフト軸方向について前記中央領域より前記ラケットの先端側の先端領域と、を有し、前記フレームの面の垂線方向の厚さが、前記根元領域及び前記先端領域よりも前記中央領域において薄いこと特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、中央領域のフレームが面の垂線方向について薄いため、ラケットを振り抜く際に中央領域をキックポイントとしてフレームを変形させることができる。そして、中央より上端側の反発力を高めることができる。そのため、フレームの中央よりも先端側において打ち返された被打対象物を打ち出し速度を高めることができる。
【0012】
かかるラケットであって、前記中央領域におけるフレームの弾性率が、前記先端領域におけるフレームの弾性率及び前記根元領域におけるフレームの弾性率よりも高いことを特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、中央領域における弾性率が高いため、中央領域をキックポイントとして変形が生じた場合であっても、その変形に対する復元力をより高めることができる。そして、高められた復元力によって被打対象物の打ち出し速度をより高めることができる。
【0013】
かかるラケットであって、前記中央領域におけるフレームの材料が、前記先端領域におけるフレームの材料及び前記根元領域におけるフレームの材料の少なくともいずれか一方と異なることを特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、中央領域におけるフレームの材料を他の領域のフレームの材料と異ならせて、中央領域におけるフレームの弾性率を他の領域のフレームの弾性率よりも高めることができる。
【0014】
かかるラケットであって、前記中央領域は、前記シャフト軸方向について前記フレームの中央から等間隔で広がる領域であることを特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、シャフト軸方向についてフレームの真の中央部分を中央領域とすることができるので、バランスに優れ、振り抜きやすいラケットを提供することができる。
【0015】
かかるラケットであって、前記中央領域の前記シャフト軸方向についての幅は、前記先端領域及び前記根元領域の前記シャフト軸方向についての幅よりも狭いことを特徴とするラケットである。
【0016】
このようなラケットによれば、幅の狭い中央領域で局部的にフレームが変形するため、より高い反発力をもって先端領域で被打対象物を打ち返すことができる。
【0017】
===ラケット1について===
以下、本実施形態に係るラケットとして、バドミントンラケットを例に挙げて説明を行う。
【0018】
図1Aは、本実施形態におけるバドミントンラケット1の正面図であり、図1Bは、本実施形態におけるバドミントンラケット1の側面図である。バドミントンラケット1(以下、単に、「ラケット1」ということがある)は、環状のフレーム10とシャフト20とグリップ30を備える。フレーム10には、ストリング40が張られる。なお、図1Aには、ラケット1の上下方向(シャフト軸方向)についてのフレーム10の中央の位置が符号Ctとして示されている。
【0019】
図2は、ラケット1のフレーム10の側面図である。図2では、シャフト20が延びるシャフト軸方向についてフレーム10を先端領域11と中央領域12と根元領域13の3つの領域に分割して示している。また、図2において、中央領域12が、フレーム10の中央Ctからシャフト軸方向について等間隔Dで広がる領域であることが示されている。
【0020】
本実施形態におけるラケット1のフレーム10において、中央領域12は図2に示される側面図においてその厚さが先端領域11及び根元領域13よりも薄くなるように形成されている。具体的には、図2に示されるように中央領域12の厚さTH2が、先端領域11の厚さTH1及び根元領域13の厚さTH3よりも薄くなるように形成されている。
【0021】
また、本実施形態において、この中央領域12のシャフト軸方向についての幅は、先端領域11及び根元領域13のシャフト軸方向についての長さよりも短くされる。具体的には、図2に示されるように中央領域の幅L2が、先端領域11の幅L1及び根元領域13の幅L3よりも狭くなるように形成されている。
【0022】
また、フレーム10において、中央領域12の材料は、先端領域11の材料及び根元領域13の材料とは異なる材料が選択される。このとき、中央領域12におけるフレーム10の引張弾性率が、先端領域11及び根元領域13の引張弾性率よりも高くなるように材料が選択される。このようにするために、中央領域12におけるフレーム10の材料を、根元領域13におけるフレーム10の材料及び先端領域11におけるフレーム10の材料の少なくともいずれか一方と異ならせることができる。
【0023】
例えば、先端領域11及び根元領域13の材料として引張弾性率が200〜260(GPa)の材料を選択するのに対し、中央領域12におけるフレーム10の材料として引張弾性率が350(GPa)以上の材料を選択することができる。例えば、先端領域11及び根元領域13の材料としては、カーボンを採用できる。
【0024】
また、例えば、中央領域12におけるフレーム10の引張弾性率が450(GPa)となる材料を選択することもできる。
【0025】
なお、上記のような引張弾性率を高めるにあたっては、原材料となるポリアクリロニトリルを炭素繊維に製造する際の熱処理温度を高めたり、熱処理時間を長くすることで実現することができる。
【0026】
このようなラケット1によれば、中央領域12のフレームのみが側面視について薄い(フレーム10の面の垂線方向について薄い)ため、ラケット1を振り抜く際に中央領域12をキックポイントとしてフレーム10を変形させることができる。ここで、フレーム10のキックポイントとは、ラケット1を振ったときにフレーム10において最もしなる位置をいう。すなわち、ラケット1を振り抜く際に中央領域12を局所的にしならせて、シャトルを打ち返すことができる。
【0027】
図3は、先端領域11に外力が加わったときにおけるフレーム10の説明図である。図3には、フレーム10の側面図が示されている。そして、先端領域11に矢印で示す力が加わったときにおいて、中央領域12をキックポイントとしてフレーム10が変形する様子が示されている。
【0028】
このように中央領域12を最もしなる位置とすることで、中央より先端側の反発力を高めることができる。そのため、プレーヤーが中央よりも先端側でシャトルを打ち返した際に、シャトルの打ち出し速度をより高めることができる。特に、バドミントンにおいては、先端側でシャトルを打つ傾向にあるので、より効果的に、打ち返したシャトルの速度を速めることができる。
【0029】
また、中央領域12におけるフレーム10の材料を他の領域のフレームの材料と異ならせることで、中央領域12におけるフレーム10の弾性率が、根元領域13におけるフレーム10の弾性率及び先端領域11におけるフレームの弾性率よりも高く設定されるので、中央領域12をキックポイントとして変形が生じた場合であっても、その高い復元力によりその変形が元の形状に戻りやすいという性質を有する。そのため、その復元力から生ずる反発力によりシャトル等が打ち出される速度を高めることができる。
【0030】
つまり、本実施形態では、中央領域12を細くすることでフレーム10の部分的なしなりやすさを実現し、さらに、中央領域12における材料に高弾性材料を採用することとして復元力を高めて、シャトルに対する高い反発力を実現することができる。
【0031】
また、前述のように、中央領域12をフレームの中央Ctからシャフト軸方向について等間隔Dで広がる領域としているので、フレーム10の真に中央の部分を中央領域12とすることができる。そして、バランスに優れ、振り抜きやすいラケット1を提供することができる。
【0032】
また、中央領域12のシャフト軸方向についての幅L2を、先端領域11のシャフト軸方向についての幅L1及び根元領域13のシャフト軸方向についての幅L3よりも狭くしているので、ラケット1を振り抜いたとき、幅の狭い中央領域12で局所的にフレームが変形する。よって、より高い反発力をもってフレーム10の先端領域でシャトルを打ち返すことができる。
【0033】
特に、バドミントンプレーヤーの上級者においては、スマッシュを打つときにフレーム10の先端側でシャトルを打ち返す傾向にあるが、上記のような構成とすることで、打ち返したシャトルの速度をより速くすることができる。
【0034】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0035】
<ラケット>
上記の実施形態においては、バドミントンラケットを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、テニスやスカッシュ等のラケットにも適用することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、ストリング40が張られている状態のバドミントンラケット1を例として説明したが、バドミントンラケット1本体としては、ストリングが張られていない状態のものも本技術的思想に含まれる。
【0037】
また、上記実施形態において、中央領域12の材料として引張弾性率が350(GPa)以上の材料を採用し、先端領域11及び根元領域13において200〜260(GPa)の材料を採用することとして説明を行ったが、中央領域12におけるフレーム10の弾性率が、根元領域13におけるフレーム10の弾性率及び先端領域11におけるフレーム10の弾性率よりも高ければ、材料はこれに限られない。
【0038】
また、上記実施形態において、中央領域12が、フレームの中央からシャフト軸方向について等しい間隔Dで広がる領域であることとしたが、等しい領域でなくともよい。
【0039】
また、上記実施形態において、中央領域12のシャフト軸方向の幅が先端領域11及び根元領域13のシャフト軸方向の幅よりも狭いこととしたが、中央領域12の幅を他の領域の幅以上に設定することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 バドミントンラケット、
10 フレーム、11 先端領域、12 中央領域、13 根元領域、
20 シャフト、30 グリップ、40 ストリング
図1
図2
図3