(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の端子部は、前記メタルベース上に設けられた電気絶縁性の第2の絶縁層と、該第2の絶縁層上に形成された銅からなる第2の導体と、該第2の導体上に設けられ前記下地ニッケル層よりも厚さが大きいニッケルからなる第2の端子要素と、該第2の端子要素上に形成されかつ表面に第2の粗化処理部を有した第2の金めっき層とを有し、前記第2の粗化処理部と前記第2の導体との間に配置された前記第2の端子要素により、前記第2の導体の銅の一部が前記第2の粗化処理部に露出することを防ぐ第2の保護手段を構成したことを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用サスペンション。
前記第2の絶縁層が開口を有し、該開口に前記第2の導体の一部が入り込んだ状態において前記第2の導体が前記メタルベースに接していることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置用サスペンション。
前記第2の絶縁層と前記第2の導体の互いに対応する位置に貫通孔が形成され、該貫通孔に前記第2の端子要素が収容され、該第2の端子要素が前記メタルベースに接していることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置用サスペンション。
前記第1の端子要素の厚さ方向に前記スライダ端子部の前記下地ニッケル層と共通の下地ニッケル層が重なっていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用サスペンション。
前記第2の端子要素の厚さ方向に前記スライダ端子部の前記下地ニッケル層と共通の下地ニッケル層が重なっていることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置用サスペンション。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の第1の実施形態に係るディスク装置用サスペンションについて、
図1から
図14を参照して説明する。
図1に示すディスク装置(HDD)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転するディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を駆動するためのポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)7などを有している。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0020】
図2はディスク装置1の一部を模式的に示す断面図である。
図1と
図2に示されるように、キャリッジ6にアーム(キャリッジアーム)8が設けられている。アーム8の先端部にサスペンション10が取付けられている。サスペンション10の先端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ11が設けられている。ディスク4が高速で回転すると、ディスク4とスライダ11との間に空気が流入することによって、エアベアリングが形成される。
【0021】
ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、スライダ11がディスク4の所望トラックまで移動する。
【0022】
図3は、DSA(Dual Stage Actuator)タイプのサスペンション10を示している。このサスペンション10は、キャリッジ6のアーム8(
図1と
図2に示す)に固定されるベースプレート20と、ロードビーム21と、配線付きフレキシャ(flexure with conductors)22と、サスペンション10の先端付近に配置されたアクチュエータ搭載部23などを備えている。ベースプレート20には、前記アーム8に形成された孔8a(
図2に示す)に挿入されるボス部20aが形成されている。
【0023】
図3に矢印Xで示す方向がロードビーム21の長手方向すなわちサスペンション10の長手方向(前後方向)である。矢印Yがスウェイ方向(スライダ11の幅方向)である。ロードビーム21の基部(後端部)には、厚さ方向に弾性的に撓むことができるばね部25が形成されている。フレキシャ22はロードビーム21に沿って配置されている。
【0024】
図4は、サスペンション10の先端部に配置されたアクチュエータ搭載部23をスライダ11側から見た斜視図である。磁気ヘッドをなすスライダ11の端部には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子28が設けられている。これらの素子28によって、ディスク4に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。スライダ11と、ロードビーム21と、フレキシャ22などによって、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly)が構成されている。
【0025】
アクチュエータ搭載部23は、フレキシャ22の先端部に形成されたジンバル部30と、このジンバル部30においてスライダ11の両側に配置された一対のアクチュエータ素子31,32とを含んでいる。アクチュエータ素子31,32は、それぞれPZT等の板状の圧電体からなり、スライダ11を前記スウェイ方向に回動させる機能を有している。
【0026】
図5は、ジンバル部30とアクチュエータ素子31,32を、
図4とは反対側から見た斜視図である。
図6は、アクチュエータ搭載部23をスライダ11側から見た平面図である。
図6においてスライダ11は2点鎖線で示されている。
図8に一方のアクチュエータ素子31を代表して示すように、アクチュエータ素子31は一方の端面33と、下面34と、他方の端面35と、上面36とを有している。
【0027】
フレキシャ22は、ステンレス鋼板からなるメタルベース40と、メタルベース40に沿って配置された配線部41とを有している。配線部41は、メタルベース40に重なる部分と、メタルベース40とは重ならない部分とを含んでいる。
図6に示されるように、配線部41の先端にスライダ11用の端子(スライダ端子部41a)が設けられている。
【0028】
メタルベース40は、例えばレーザ溶接によって形成された第1の溶接部W1(
図3と
図6に示す)と、第2の溶接部W2(
図5と
図6に示す)等の固定手段によって、ロードビーム21に固定されている。このフレキシャ22は、サスペンション10の前後方向の中間部において溶接部W1によってロードビーム21に固定された第1の固定側部分22aと、フレキシャ22の先端寄りの位置において溶接部W2によってロードビーム21に固定された第2の固定側部分22bとを含んでいる。フレキシャ22の後部22c(
図3に示す)はベースプレート20の後方に延びている。
【0029】
図3から
図6に示されるように、フレキシャ22のメタルベース40は、第1の固定側部分22aに連なる一対の第1アーム51,52と、第2の固定側部分22bに連なる一対の第2アーム53,54とを有している。第1アーム51,52と第2アーム53,54によって、ジンバル部30を弾性的に支持するためのアーム部55が構成されている。
【0030】
図7はメタルベース40と配線部41の断面の一例を示している。配線部41は、ポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなる絶縁層60と、絶縁層60上に形成された書込用導体61および読取用導体62と、ポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなるカバー層63などを含んでいる。カバー層63は導体61,62を覆っている。書込用導体61と読取用導体62とは、スライダ11の前記素子28に接続されている。メタルベース40の厚さの一例は20μm(12〜25μm)、絶縁層60の厚さの一例は10μm(5〜20μm)、導体61,62の厚さの一例は9μm(4〜15μm)、カバー層63の厚さの一例は5μm(2〜10μm)である。メタルベース40の厚さはロードビーム21の厚さ(例えば30μm)よりも小さい。
【0031】
フレキシャ22のジンバル部30に一対のアクチュエータ素子31,32が配置されている。ジンバル部30は、ロードビーム21と対向する第1の面30a(
図5と
図9に示す)と、第1の面30aとは反対側の第2の面30b(
図4と
図9に示す)とを有している。第2の面30bに、スライダ11とアクチュエータ素子31,32とが配置されている。
【0032】
アクチュエータ素子31,32は、それぞれ第1の端部31a,32aと、第2の端部31b,32bとを有している。
図4と
図6に矢印X1で示す方向がアクチュエータ素子31,32の前側、矢印X2が後側である。アクチュエータ素子31,32の第1の端部31a,32aは、ジンバル部30に形成された一対の第1支持部70,71に固定されている。第1支持部70,71は、可撓性の一対の第1アーム51,52を介して、フレキシャ22の第1の固定側部分22aに連なっている。アクチュエータ素子31,32の第2の端部31b,32bは、ジンバル部30に形成された一対の第2支持部72,73に固定されている。
【0033】
一対のアクチュエータ素子31,32の構成は互いに共通であるため、以下に一方のアクチュエータ素子31を代表して説明する。
図8は、一方のアクチュエータ素子31のストローク方向の両端部31a,31bの機械的な固定と電気的接続をなすジョイント部J1,J2の断面を示している。
図8に矢印X3で示す方向が、アクチュエータ素子31の長手方向、すなわちアクチュエータ素子31が伸縮する方向(ストローク方向)である。
図10は、第1のジョイント部J1とその周辺部を示す拡大図である。
図11は、第2のジョイント部J2とその周辺部を示す拡大図である。
図10と
図11に示す配線部41は、カバー層63(
図7に示す)を省略して描いている。
【0034】
図8に示されるように、アクチュエータ素子31は、例えばPZT(ジルコンチタン酸鉛)からなる素子本体80と、素子本体80の周面に形成された第1の電極81と、第2の電極82とを有している。第1の電極81は、第1の端部31aの端面33と下面34とにわたって設けられている。第2の電極82は、第2の端部31bの端面35と上面36とにわたって設けられている。第1の電極81と第2の電極82との間には、電気絶縁のためのスリット83,84が形成されている。
【0035】
図8と
図10に示されるように、第1のジョイント部J1の第1支持部70に、絶縁層60の一部60aが形成されている。この絶縁層60の一部60aに、シグナル側(プラス側)の第1の導体87が設けられている。カバー層63には、第1の導体87の上面の一部を露出させる第1の開口63aが形成されている。
【0036】
図8と
図11に示されるように、第2のジョイント部J2の第2支持部72に、絶縁層60の一部60bが形成されている。この絶縁層60の一部60bに、グランド側(マイナス側)の第2の導体88が設けられている。カバー層63には、第2の導体88の上面一部を露出させる第2の開口63bが形成されている。
【0037】
図8に示すようにアクチュエータ素子31の第1の端部31aは、例えばエポキシ樹脂等の電気絶縁性の接着材89によって、第1のジョイント部J1のメタルベース40に固定されている。アクチュエータ素子31の第2の端部31bも、エポキシ樹脂等の接着材89によって、第2のジョイント部J2のメタルベース40に固定されている。
【0038】
アクチュエータ素子31の第1の端面33に配置された第1の電極81と第1の導体87との間に、導電性ペースト90が設けられている。アクチュエータ素子31の第2の端面35に配置された第2の電極82と第2の導体88との間にも導電性ペースト90が設けられている。
【0039】
導電性ペースト90の一例は銀ペーストである。銀ペーストは、有機物バインダとして機能する樹脂基材と、樹脂基材中に混入された多量の導電粒子(銀の粒子)とを有している。未硬化の銀ペーストが常温あるいは加熱により硬化すると、導電粒子(銀の粒子)が互いに電気的に接触する。第1のジョイント部J1に設けられた導電性ペースト90は、第1の電極81とシグナル側の第1の導体87との電気的接続をなすための導通手段として機能する。第2のジョイント部J2に設けられた導電性ペースト90は、第2の電極82とグランド側の第2の導体88との電気的接続をなすための導通手段として機能する。なお、導電性ペースト90が半田ペーストであってもよい。
【0040】
図5と
図6に示されるように、フレキシャ22のジンバル部30は、固定側の第1タング部91と、移動側の第2タング部92と、これらタング部91,92間に形成されたヒンジ部93とを含んでいる。第1タング部91と、第2タング部92と、ヒンジ部93とは、いずれもメタルベース40の一部であり、スライダ11を搭載するためのタングを構成している。第2タング部92は、第1タング部91に対して、
図5に矢印Aで示す方向に回動することができる。
【0041】
スライダ11のリーディング側部分11aは、第1タング部91に対して移動可能に配置されている。スライダ11のトレーリング側部分11bは、第2タング部92に固定されている。ここで言う「リーディング側」とは、ディスク4が回転したときにスライダ11とディスク4との間に流入する空気の流入側である。これに対し「トレーリング側」とは、スライダ11とディスク4との間に流入した空気の流出側である。
【0042】
図9は、ロードビーム21の一部とジンバル部30の一部を、ヒンジ部93のところで切断した断面図である。ロードビーム21にディンプル100が形成されている。ディンプル100は支持凸部の一例であり、フレキシャ22のジンバル部30に向かって突出する凸側の面を有している。この凸側の面の頂部(ディンプル100の先端)がヒンジ部93に当接することにより、スライダ11が揺動可能に支持されている。
【0043】
アクチュエータ搭載部23にリミッタ部材110,111が設けられている。これらリミッタ部材110,111は、サスペンション10に外部から機械的な衝撃が入力したときに、タング部91,92が過剰に揺れたり、ヒンジ部93がディンプル100から離れたりすること(ディンプルセパレーション)を抑制する機能を有している。リミッタ部材110,111は、配線部41の絶縁層60(
図7に示す)と共通の樹脂(例えばポリイミド)からなる。
【0044】
図12は、スライダ端子部41aを示している。スライダ11に設けられている端子11cは、金ボールなどのボンディング用の導電部材120を介してスライダ端子部41aに接続されている。スライダ端子部41aは、絶縁層60と、カバー層63と、銅からなる端子導体121と、端子導体121上に形成された下地ニッケル層122と、下地ニッケル層122上に形成された金めっき層123を含んでいる。金めっき層123の表面は粗化処理されておらず平滑である。
【0045】
金めっき層123の下地として使用される下地ニッケル層122の厚さT1(
図12に示す)は、例えば0.12〜2.0μmである。金めっき層123の厚さは、例えば0.5〜1.5μmである。銅に対する下地ニッケル層122の剥離強度と、下地ニッケル層122に対する金めっき層123の剥離強度は、銅に対する金めっき層123の剥離強度と比べて格段に大きい。このため銅からなる端子導体121と金めっき層123との間に下地ニッケル層122を介在させることにより、金めっき層123を端子導体121に強固に密着させることができる。
【0046】
図13は、第1のジョイント部J1に設けられた第1の端子部130を示している。第1の端子部130は、
図13において下から順に、メタルベース40と、絶縁層60と、第1のカバー層63と、銅からなるシグナル側の第1の導体87と、ニッケルからなる第1の端子要素131と、第1の金めっき層132とを含んでいる。端子要素131の厚さT2(
図13に示す)は、下地ニッケル層122の厚さT1(
図12に示す)の例えば5倍以上である。第1の端子要素131は、第1のカバー層63に形成された開口63aに設けられている。第1の端子要素131の外側の端部には、開口63aの外側にはみ出すオーバーハング部131aが形成されている。
【0047】
端子要素131は、ニッケルを厚くめっきする必要があるため、下地ニッケル層122(
図12に示す)とは別工程で形成されている。ニッケルめっきを行なう際に、導体87上にスライダ端子部41aと共通の下地ニッケル層122を形成したのち、端子要素131をめっきによって形成するようにしてもよい。その場合、
図13に2点鎖線で示すように、下地ニッケル層122の厚さ方向に端子要素131が重なる。あるいは、導体87上に端子要素131をめっきによって形成したのち、スライダ端子部41aと共通の下地ニッケル層122を形成してもよい。その場合、端子要素131の上に下地ニッケル層122が重なる。
【0048】
第1の金めっき層132の厚さは、例えば0.5〜1.5μmである。この金めっき層132の表面に、粗化処理部133が形成されている。粗化処理部133は、ざらざらした性状のいわばテクスチャ(texture)構造をなしている。粗化処理部133は、例えばレーザ加工機によって金めっき層132の表面に多数の微小な凹凸を形成することによって設けることができる。あるいはエッチングの一種によって、金めっき層132の表面に多数の微小な凹凸を形成し、表面をざらざらにしてもよい。
【0049】
金めっき層132に粗化処理部133を形成する際、例えばレーザビームのパワーが強すぎると、金めっき層132に孔が開くことがある。
図12に示すスライダ端子部41aのように、通常の厚さ(0.12〜2.0μm)の下地ニッケル層122が使われている場合、下地ニッケル層122が薄いため、金めっき層に孔が開くと下地ニッケル層122にも孔が開いてしまい、端子導体121の銅が露出することがある。露出した銅が大気中の酸素や湿分に触れると酸化し、導電性ペースト90の濡れ性が悪くなる原因となる。
【0050】
しかるに
図13に示す端子部130では、金めっき層132の下に厚さが大きい端子要素131が存在している。このため、粗化処理部133を形成する際に粗化処理部133が荒れたり、孔が開いてしまったりしても、端子要素131には孔が貫通しないため、導体87の銅が粗化処理部133に露出することを回避できる。
【0051】
すなわちこの実施形態では、第1の粗化処理部133と第1の導体87との間に第1の端子要素131を設けることにより、第1の導体87の銅の一部が第1の粗化処理部133に露出することを防ぐための第2の保護手段が構成されている。しかも端子要素131がニッケルからなるため、導体87と金めっき層132との双方に強固に密着させることができる。
【0052】
第1の端子部130に、
図9に示す導電性ペースト(例えば銀ペースト)90が設けられている。導電性ペースト90と接する金めっき層132の表面に粗化処理部133が設けられているため、導電性ペースト90を金めっき層132に強固に密着させることができ、第1の端子部130に対する導電性ペースト90の剥離強度が向上し、良好な電気的導通を得ることができる。
【0053】
図14は、第2のジョイント部J2に設けられた第2の端子部140を示している。第2の端子部140は、
図14において下から順に、メタルベース40と、絶縁層60と、第2のカバー層63と、銅からなるグランド側の第2の導体88と、ニッケルからなる第2の端子要素141と、第2の金めっき層142とを含んでいる。端子要素141の厚さT3(
図14に示す)は、下地ニッケル層122の厚さT1(
図12に示す)の例えば10倍以上である。第2の端子要素141は、第2のカバー層63に形成された開口63bに設けられている。第2の端子要素141の外側の端部には、開口63bの外側にはみ出すオーバーハング部141aが形成されている。
【0054】
図14に示されるように絶縁層60に開口150が形成されている。この開口150に第2の導体88の一部が収容されている。そしてこの第2の導体88の一部がメタルベース40に接することにより、グランド側の第2の導体88がメタルベース40に導通している。また第2の導体88に凹部151が形成され、この凹部151に第2の端子要素141の一部が収容されている。
【0055】
端子要素141は、ニッケルを厚くめっきする必要があるため、下地ニッケル層122(
図12に示す)とは別工程で形成されている。ニッケルめっきを行なう際に、導体88上にスライダ端子部41aと共通の下地ニッケル層122を形成したのち、端子要素141をめっきによって形成するようにしてもよい。その場合、
図14に2点鎖線で示すように、下地ニッケル層122の厚さ方向に端子要素141が重なる。あるいは、導体88上に端子要素141をめっきによって形成したのち、スライダ端子部41aと共通の下地ニッケル層122を形成してもよい。その場合、端子要素141の上に下地ニッケル層122が重なる。
【0056】
第2の金めっき層142の厚さは、例えば0.5〜1.5μmである。この金めっき層142の表面に、粗化処理部143が形成されている。粗化処理部143は、ざらざらした性状のいわばテクスチャ(texture)構造をなしている。粗化処理部143は、例えばレーザ加工機によって金めっき層142の表面に多数の微小な凹凸を形成することによって設けることができる。あるいはエッチングの一種によって、金めっき層142の表面に多数の微小な凹凸を形成し、表面をざらざらにしてもよい。
【0057】
金めっき層142に粗化処理部143を形成する際、例えばレーザビームのパワーが強すぎると、金めっき層142に孔が開くことがある。しかるに
図14に示す端子部140では、金めっき層142の下に厚さが大きい端子要素141が設けられている。このため、粗化処理部143を形成する際に粗化処理部143が荒れたり、孔が開いてしまったりしても、端子要素141には孔が貫通しないため、導体88の銅が粗化処理部143に露出することを回避できる。
【0058】
すなわちこの実施形態では、第2の粗化処理部143と第2の導体88との間に第2の端子要素141を設けることにより、第2の導体88の銅の一部が第2の粗化処理部143に露出することを防ぐための第2の保護手段が構成されている。しかも端子要素141がニッケルからなるため、導体88と金めっき層142との双方に強固に密着させることができる。
【0059】
第2の端子部140に、
図9に示す導電性ペースト(例えば銀ペースト)90が設けられている。導電性ペースト90と接する金めっき層142の表面に粗化処理部143が設けられているため、導電性ペースト90を金めっき層142に強固に密着させることができ、端子部140に対する導電性ペースト90の剥離強度が向上し、良好な電気的導通を得ることができる。
【0060】
以下に本実施形態のサスペンション10の動作について説明する。
ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6(
図1と
図2に示す)が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、磁気ヘッドのスライダ11がディスク4の記録面の所望トラックまで移動する。アクチュエータ素子31,32に電圧が印加されると、電圧に応じてアクチュエータ素子31,32が互いに反対方向に歪む。スライダ11のトレーリング側部分11bは第2タング部92に固定されている。スライダ11のリーディング側部分11aは第1タング部92に対して移動自在である。このためアクチュエータ素子31,32が互いに反対方向に歪むと、第1タング部91に対して第2タング部92がヒンジ部93を境にスライダ11の幅方向に回動する。これにより、ロードビーム21をスウェイ方向(
図3に矢印Yで示す方向)に微小量変位させることができる。
【0061】
図15は第2の実施形態に係る端子部130Aを示している。この端子部130Aは、メタルベース40と、絶縁層60と、シグナル側の第1の導体87と、ニッケルからなる第1の端子要素131と、第1の金めっき層132とを有している。金めっき層132の表面に、粗化処理部133が形成されている。この端子部130Aには、第1の実施形態の端子部130(
図14)のカバー層63や開口150および凹部151が設けられていない。それ以外の構成と効果は、第1の実施形態で説明した端子部130と共通であるため、両者に共通の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図16は第3の実施形態に係る端子部130Bを示している。この端子部130Bは、メタルベース40と、絶縁層60と、シグナル側の第1の導体87と、ニッケルからなる第1の端子要素131と、第1の金めっき層132を有している。金めっき層132の表面に、粗化処理部133が形成されている。第1の導体87を覆うカバー層63に開口63aが形成されている。この開口63aの内側に、第1の端子要素131と、粗化処理部133を有する第1の金めっき層132とが設けられている。また第1の導体87に凹部160が形成され、この凹部160に第1の端子要素131の一部が収容されている。それ以外の構成と効果は、第1の実施形態で説明した端子部130と共通であるため、両者に共通の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図17は第4の実施形態に係る端子部130Cを示している。この端子部130Cは、第1の絶縁層60に形成された凹部161を有し、この凹部161に第1の導体87の一部が収容されている。それ以外の構成と効果は、
図16に示した第3の実施形態の端子部130Bと共通であるため、両者に共通の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図18は第5の実施形態に係る端子部130Dを示している。この端子部130Dは、メタルベース40の一部、すなわち導体87の下方に、開口165が形成されている。それ以外の構成と効果は、
図17に示した第4の実施形態の端子部130Cと共通であるため、両者に共通の符号を付して説明を省略する。
【0065】
図19は第6の実施形態に係る端子部140Aを示している。この端子部140Aは、絶縁層60と第2の導体88の互いに対向する位置に貫通孔170が形成されている。この貫通孔170に第2の端子要素141が収容され、第2の端子要素141の先端がメタルベース40に接している。それ以外の構成と効果は、
図14に示した第1の実施形態の端子部140と共通であるため、両者に共通の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図20は第7の実施形態に係る端子部140Bを示している。この端子部140Bは、カバー層63に形成された開口63bの内側に、第2の端子要素141と、粗化処理部143を有する第2の金めっき層142が設けられている。それ以外の構成と効果は、
図19に示した第6の実施形態の端子部140Aと共通であるため、両者に共通の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図21は第8の実施形態に係る端子部140Cを示している。この端子部140Cは、絶縁層60に開口150が形成されている。この開口150に第2の導体88の一部が収容されている。第2の導体88の下端がメタルベース40に接することにより、グランド側の第2の導体88がメタルベース40に導通している。また第2の導体88に凹部151が形成され、この凹部151に第2の端子要素141の一部が収容されている。それ以外の構成と効果は、
図20に示した第7の実施形態の端子部140Bと共通であるため、両者に共通の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図22は第9の実施形態に係る端子部140Dを示している。この端子部140Dは、絶縁層60に形成された開口150に第2の端子要素141が設けられている。第2の端子要素141の一端に、粗化処理部143を有する第2の金めっき層142が設けられている。第2の端子要素141の他端がメタルベース40に接している。
【0069】
図23は第10の実施形態に係る端子部140Eを示している。この端子部140Eは、絶縁層60に形成された円形の開口150と、メタルベース40に形成された円形の開口180とを有している。これら開口150,180の内側に、円柱形の第2の端子要素141が収容されている。第2の端子要素141はメタルベース40と導体88に接している。第2の端子要素141の一端に、粗化処理部143を有する金めっき層142が設けられている。この粗化処理部143に導電性ペースト90(
図8に示す)が接する。
【0070】
なお本発明を実施するに当たって、アクチュエータ素子を有するサスペンションの具体的な構成をはじめとして、フレキシャのメタルベースや、絶縁層、導体、端子要素、金めっき層、導電性ペーストなど、端子部を構成する各要素の具体的な態様を種々に変更して実施できることは言うまでもない。