(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜
図6は、本発明の合成樹脂製キャップの第1実施形態およびこれを用いた閉止装置を示すものである。
図6に示すように、この閉止装置は、容器20と、その口元部21に装着される合成樹脂製キャップ1(以下、単にキャップ1という)とを備えている。
以下の説明において、上下方向とは
図6における上下方向であり、キャップ1および容器20の中心軸に沿う方向(軸方向)である。上方向は高さ方向ともいう。上下方向に垂直な面を水平面という。径方向とは、キャップ1および容器20の径方向である。
【0010】
図6に示すように、容器20は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂からなり、飲料が充てんされる容器本体(図示略)と、その上部に形成された円筒状の口元部21とを有する。
口元部21の外面21cには雄ネジ22と、係止段部23とが形成されている。係止段部23は径方向外方に突出する環状突起であり、雄ネジ22の下方に形成されている。
内面21aおよび外面21cは、容器20の軸方向に沿う面である。開口端面21bは容器20の軸方向に垂直な面である。
【0011】
キャップ1は、円形の天板部2と、その周縁から垂下した筒部3とを備えている。
筒部3は、スコア6(弱化部)によって、主部8と、ブリッジ7によって主部8に連結されたタンパーエビデンスリング部(TEリング部)9とに区画されている。
主部8の内周面には、容器20の雄ネジ22に螺合するネジ部10が形成されている。ネジ部10は、1条または複数条の螺旋状に形成された突条である。
【0012】
図1および
図6に示すように、天板部2には、容器20の口元部21に嵌入して口元部21の内面21aに当接する円筒状の内側シール突起12と、口元部21の開口端面21bに当接する環状の開口端シール突起13と、円筒状の外側突起14とが形成されている。
【0013】
内側シール突起12は、天板部2の内面2a(下面)から下方に延出して形成されている。
内側シール突起12の外面には、基端部12cから略下方に離れた位置に、容器内面21aに当接する環状の当接凸部12aが形成されている。
当接凸部12aの断面形状は、略円弧形、略楕円弧形などとすることができる。図示例では、当接凸部12aが形成された部分は、内側シール突起12の基端近傍の部分より厚く形成されている。
【0014】
図7に示すように、内側シール突起12が口元部21内に嵌入すると、当接凸部12aの最大外径部12bは、開口端面21bより低い位置(開口端面21bから容器本体側に離れた位置)で全周にわたって内面21aに隙間なく当接し、容器20を密封(シール)できる。
【0015】
図2に示すように、最大外径部12bの外径(キャップ1を口元部21に装着していない状態での外径)は、口元部21内径より若干大きいことが好ましい。これによって、内側シール突起12は、わずかに内方に弾性的に曲げ変形した状態で内面21aに当接するため、十分な押圧力で内面21aに当接する。
最大外径部12bの外径D1と口元部21の内径D2との差D3は、小さすぎれば前記押圧力が小さくなって密封性に影響が及ぶため0.1mm以上(好ましくは0.2mm以上)が好適である。
差D3は、大きくなりすぎると前記押圧力が大きくなって高温時に口元部21が変形しやすくなるため、0.5mm以下(好ましくは0.35mm以下)が好適である。差D3がこの範囲であれば、キャップ1を口元部21に装着する際に、内側シール突起12を口元部21に嵌入する際の抵抗を小さくでき、キャップ1の斜め被り(キャップ1が傾いた状態で巻締められる)や巻締め不足を防止できる。
【0016】
内側シール突起12の最大外径部12b(外径が最大となる部位)の高さ位置は、最大外径部12bと開口端シール突起13下端(突出端)との高低差H1が1〜4mm(好ましくは1.5〜3mm)となるように設定するのが好適である。
高低差H1を前記範囲とすることで、十分なタンパーエビデンス性を確保し、かつ密封性能を高めることができる。
【0017】
開口端シール突起13は、天板部2の内面2a(下面)から下方に突出して形成されている。開口端シール突起13の断面形状は、例えば半円形、円弧形、楕円弧形などとすることができる。
開口端シール突起13は、内側シール突起12の外周側に、内側シール突起12から離間して形成することができる。
【0018】
図1〜
図3に示すように、外側突起14は、天板部2の内面2a(下面)から下方に延出して形成されている。
外側突起14は、開口端シール突起13の外周側に、開口端シール突起13から離間して形成することができる。
図示例では、外側突起14の内面14aは、大部分がキャップ1の軸方向に沿って形成されており、前記軸方向にほぼ一定の内径を有する。
内面14aの内径(キャップ1を口元部21に装着していない状態での内径)は、口元部21の外径より大きくてもよいし、これより小さくてもよい。また、内面14aの内径は口元部21の外径にほぼ等しくてもよい。
【0019】
外側突起14の先端面14bは、内面14aの下端から外面14cの下端までの領域であり、下方に行くに従って徐々に拡径する傾斜面とされている。先端面14bは、ほぼ一定の角度で傾斜していることが望ましい。
【0020】
外側突起14の外面14cは、先端に向けて徐々に外径が小さくなるように傾斜する傾斜面となっている。外面14cは、ほぼ一定の角度で傾斜していることが望ましい。
外側突起14は、先端に向けて徐々に厚さを減じるように形成することができる。
【0021】
外側突起14は、先端が径方向内方および外方に移動するような若干の曲げ変形が可能であることが好ましい。これによって、口元部21に拡径方向の変形が起きた場合でも、それに応じた外側突起14の変形が可能となるため、キャップ1の巻締め性の悪化が起きにくくなる。
【0022】
外側突起14の内面14aには、口元部21の外面21cに当接する1または複数の当接凸部15が形成されている。
図3に示すように、当接凸部15は、外側突起14の基端部14d内面から直線状に形成されたストレート部15aと、ストレート部15aの下縁部15cから外方に向けて略円弧状に湾曲して形成された湾曲部15bとを有する。
【0023】
図4(B)および
図4(C)に示すように、当接凸部15の外面は略円弧状の横断面形状を有することが好ましい。当接凸部15の横断面とは、例えば水平面における断面である。
【0024】
図3に示すように、ストレート部15a外面は、例えば凸状円柱面であり、その中心軸方向は、外側突起14の先端方向(突出方向)に行くに従って徐々にキャップ1の中心軸(筒部3の中心軸)に近づく方向に傾斜していることが好ましい。
湾曲部15b外面は、略球面をなすことが好ましい。
【0025】
ストレート部15aの軸方向(キャップ1の軸方向)に対する角度α1は、外面14cの軸方向に対する角度α2以下であることが好ましい。これによって、金型からの取出しが容易になるため、製造しやすさの点で好ましい。
【0026】
図4(A)〜
図4(C)および
図5に示すように、図示例では、当接凸部15は複数(図示例では12)形成されており、これらは周方向に間隔をおいて形成されている。
図5に示す例では、複数の当接凸部15は周方向にほぼ等間隔ごとに形成されている。
当接凸部15の数は、4〜24が好ましく、5〜15がさらに好適である。これら複数の当接凸部15は、キャップ1の中心軸を中心とする軸回りの回転対称形になるように配置することが好ましい。
図5の例では、当接凸部15は、周方向に約30度ごとに形成されている。
【0027】
図3に示すように、湾曲部15bは、内径寸法が最も小さくなる部位である最小内径部15dを有する。
キャップ1を口元部21に巻締めていない状態において、最小内径部15dの内径は、口元部21の外径より小さいことが好ましい。これによって、当接凸部15は、外側突起14がわずかに外方に弾性的に曲げ変形した状態で、十分な押圧力で外面21cに当接する。
【0028】
当接凸部15は、湾曲部15bで外面21cに当接するため、外面21cに対する接触面積が小さくなることから、接触部分およびその周囲に多量の水が溜まることがなく、衛生性の点で好ましい。
また、湾曲部15bは十分な強度を有するため、当接凸部15が押圧力により変形するのを防ぐことができる。このため、当接凸部15の変形によって外側突起14と外面21cとの隙間が小さくなるのを回避できる。
【0029】
最小内径部15dの内径D4と口元部21の外径D5との差D6は、0.01mm以上が好ましい。これによって、口元部21の外方変形を防止できる。差D6は、例えば0.1mm以下とすることができる。
最小内径部15dは、キャップ1を口元部21に巻締めたときに、開口端面21bより低い位置(開口端面21bから容器本体側に離れた位置)で外面21cに当接することが好ましい。
【0030】
当接凸部15の内面14aからの突出寸法D7は、例えば0.1mm以上(好ましくは0.2mm以上)とすることができる。これによって、当接凸部15がない位置における外側突起14の内面14aと口元部21の外面21cとの隙間を大きくし、この隙間を通したガス排出を容易にすることができる。
突出寸法D7は、例えば1mm以下としてよい。突出寸法D7をこの範囲とすることによって、巻締めトルクの上昇を抑制できる。
【0031】
図2に示すように、当接凸部15の最小内径部15dの高さ位置は、内側シール突起12の最大外径部12bより高い位置にあることが望ましい。
最小内径部15dの高さ位置は、最小内径部15dと開口端シール突起13下端(突出端)との高低差H2が2mm以下(好ましくは1.5mm以下)となるように設定するのが好適である。
高低差H2が大きすぎれば、当接凸部15の内方押圧力が不十分となることがあるが、高低差H2をこの範囲とすることで、当接凸部15の内方押圧力を高め、口元部21の変形を阻止することができる。
高低差H2は、例えば0.5mm以上(好ましくは1.5mm以上)とすることができる。
【0032】
TEリング部9の内周面には、開栓時に容器20の係止段部23に係止してTEリング部9の移動を阻止する係止突起である係止突起11が形成されている。係止突起11は、TEリング部9の内周面から内方に突出して形成されている。
【0033】
キャップ1は、ポリプロピレン、高密度ポリエチレンなどの合成樹脂材料で構成することができる。特に、耐熱性に優れたポリプロピレンが好ましい。
【0034】
次に、キャップ1の使用方法を説明する。
図7に示すように、内溶液を充填した容器20の口元部21に、キャップ1を装着する際には、内側シール突起12を容器口元部21内に挿入する。
内側シール突起12は、最大外径部12bにおいて口元部21の内面21aを外方に押圧しつつ、内面21aに当接する。これによって容器20が密封される。
【0035】
外側突起14の内面に形成された当接凸部15は、最小内径部15dにおいて外面21cを内方に押圧しつつ、外面21cに当接する。
このため、内側シール突起12の押圧力によって口元部21が外方変形するのを防ぐことができる。
【0036】
図4(C)に示すように、外側突起14の内面14aのうち、当接凸部15が形成されていない部分の少なくとも一部は、外面21cには当接せず、内面14aと外面21cとの間には隙間16が形成される。
外側突起14の内面14aは、当接凸部15が形成されていない部分の少なくとも一部において外面21cから離間していればよい。例えば、内面14aのうち当接凸部15の近傍範囲のみが外面21cから離間し、他の部分は外面21cに接していてもよい。なお、当接凸部15が形成されていない部分の全域が外面21cから離れていてもよい。
図示例では、当接凸部15が形成されていない部分の内面14aのうち、当接凸部15の近傍範囲の領域14eは外面21cから離間し、他の領域の一部は外面21cに当接している。
【0037】
図6に示すように、TEリング部9に設けられたタブ11は、雄ネジ22の直下に設けられた環状の膨出段部23を乗り越え、膨出段部23の下方に達する。
【0038】
口元部21に装着されたキャップ1を開栓方向に回すと、回転に従ってキャップ1は上昇する。
係止突起11が係止段部23の下端に達した状態でキャップ1をさらに開栓方向に回すと、主部8は回転に従って上昇する一方、係止突起11が係止段部23に係止するためTEリング部9の上方移動は阻止される。
その結果、主部8とTEリング部9とを連結しているブリッジ7に引張力が作用し、ブリッジ7が破断し、TEリング部9が主部8から切り離される。
これによって、キャップ1が開栓されたことが明示される。
【0039】
図8に示すように、キャップ1をいったん開栓した後に再度閉栓した際には、内容液の発酵などにより容器20の内圧が高くなる(例えば0.4MPa以上となる)ことがある。
容器20の内圧により天板部2に上方への力が加えられ、膨出変形(いわゆるドーミング)によって天板部2の一部が傾斜すると、内側シール突起12の内方変位、および開口端シール突起13の上方変位が起こりやすくなる。
【0040】
上述のように、当接凸部15が形成されていない部分では、外側突起14の内面14aと外面21cとの間には隙間16がある(
図4(C)参照)。
このため、容器20の内圧上昇による天板部2の膨出変形の影響によって、内面21aに対する内側シール突起12の接触圧が低下し、開口端面21bに対する開口端シール突起13の接触圧が低下すると、容器20内のガスは、内側シール突起12と内面21aとの隙間、開口端シール突起13と開口端面21bとの隙間を経て、隙間16を通って外部に排出される。
この際、天板部2の膨出変形の影響によって、外側突起14による内方押圧力が大きくなることがあるが、内面14aと外面21cとの間には隙間16があるため、外側突起14がガス排出の妨げとなることはない。
このため、容器20の内圧が過度に上昇するのを防ぐことができる。従って、キャップ1の開栓時に容器20の内圧によりキャップ1が外れる、いわゆるキャップ飛びを防ぐことができる。
【0041】
また、キャップ1では、当接凸部15によって、外側突起14の内面14aと口元部21の外面21cとの間に隙間16が確保されるため、水が排出されやすいことから、キャップ装着装置(キャッパー)による巻き締めの際に、内面14aと外面21cとの間の水の層を原因として摩擦が低減し、巻き締めが過剰となるのを防止できる。
【0042】
次に、本発明の合成樹脂製キャップの第2実施形態を説明する。
図9および
図10は、本発明の合成樹脂製キャップの第2実施形態を示すもので、ここに示すキャップ31は、
図1等に示すキャップ1と同様に、外側突起24の内面24aに、口元部21の外面21cに当接する1または複数の当接凸部25が形成されている。
当接凸部25が複数ある場合には、これらは周方向に間隔をおいて形成することができる。
【0043】
当接凸部25は、例えば凸状円柱面をなすストレート部25aと、略球面をなす湾曲部25bとを有する形状としてよい。
外側突起24の内面24aのうち、当接凸部25が形成されていない部分の少なくとも一部は、外面21cには当接せず、内面24aと外面21cとの間には隙間が形成される(
図4(C)参照)。
【0044】
天板部2と外側突起24との連接部分の内面側には、下方に向けてテーパー状に拡がる内面26aを有する厚肉壁部26が形成されている。
厚肉壁部26は、天板部2の内面2aから外側突起24の内面24aにかけて形成された厚肉部分である。
厚肉壁部26の内面26aは、下方に行くほど拡径するように一定角度で傾斜する傾斜面であり、開口端面21bの外周縁部21dに当接可能に形成される。
【0045】
キャップ31は、キャップ装着装置(キャッパー)により口元部21に巻き締められる(これを第1の閉栓という)。
この第1の閉栓では、巻締め力が大きいため、キャップ31は、内側シール突起12、開口端シール突起13だけでなく、厚肉壁部26においても口元部21に当接するため、密封性能を高めることができる。
【0046】
キャップ31をいったん開栓した後に、使用者が再度閉栓する際には(これを第2の閉栓という)、第1の閉栓に比べて巻締め力が小さくなることが多いため、厚肉壁部26は、外周縁部21dに弱い押圧状態で当接するか、または外周縁部21dに当接しない状態となりやすい。
【0047】
図11に示すように、内容液の発酵などにより容器20の内圧が高くなると、容器20内のガスは、内側シール突起12と内面21aとの隙間、開口端シール突起13と開口端面21bとの隙間、厚肉壁部26と外周縁部21dとの隙間、外側突起24と外面21cとの隙間を通って、容易に外部に排出される。
よって、容器20の内圧が過度に上昇するのを防ぐことができる。従って、キャップ1の開栓時に容器20の内圧によりキャップ1が外れる、いわゆるキャップ飛びを防ぐことができる。
このように、キャップ31は、厚肉壁部26を有するため、第1の閉栓の際には高い密封性能が得られ、かつ第2の閉栓の際には良好なガス排出性能を示す。
【0048】
図6等に示す閉止装置は、果汁飲料、茶飲料、コーヒー飲料等の飲料を容器20に充填し、口元部21にキャップ1を装着することによって、飲料が充填された飲料入り閉止装置とすることができる。
【0049】
本発明は、図示した例のみに限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、数量、構成、位置、材料などを変更することができる。
例えば、外側突起は、当接凸部が十分な押圧力で口元部外面に当接することができれば、その形状は円筒形に限らない。例えば、外側突起は、円状に配列された複数の平面視円弧状の突起で構成してもよい。
当接凸部の形状は、十分な押圧力で口元部外面に当接することができれば、図示例に限定されない。例えば、半球形、直方体形、円錐台形などとしてよい。