(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163368
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】脆性材料基板のブレイク工具
(51)【国際特許分類】
B28D 1/22 20060101AFI20170703BHJP
C03B 33/033 20060101ALI20170703BHJP
C03B 33/10 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
B28D1/22
C03B33/033
C03B33/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-137209(P2013-137209)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-9496(P2015-9496A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】木下 知子
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】武田 真和
(72)【発明者】
【氏名】音田 健司
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−164099(JP,U)
【文献】
再公表特許第2012/108391(JP,A1)
【文献】
再公表特許第2009/157440(JP,A1)
【文献】
特開2003−340793(JP,A)
【文献】
実開昭50−096657(JP,U)
【文献】
実開平05−039899(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/22
B28D 5/00
B26F 3/00
C03B 33/033
C03B 33/10
H01L 21/78
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に基板の一端部分を挿入する凹溝を備えた受治具と、
前記基板の分断すべきスクライブラインを含む一端部分を先端から突出させた状態で前記基板を挟み込んで保持する挟み込み治具とからなり、
前記挟み込み治具は、前記基板を挟み込む間隔を隔てて平行姿勢で間隔調整可能に組み付けられた第一板材及び第二板材と、これら板材と前記基板との間に介在される中間板材とから形成され、
前記中間板材は弾性材料で形成され、かつ、中間板材の左右幅が前記基板の左右幅より小さい寸法で形成されている脆性材料基板のブレイク工具。
【請求項2】
前記挟み込み治具の第一板材と第二板材は調整ネジにより連結され、該調整ネジを操作することにより前記間隔が調整できるように形成されている請求項1に記載の脆性材料基板のブレイク工具。
【請求項3】
前記受治具は、前記凹溝の一方の側壁を形成する部材が溝幅方向に移動調整可能に形成され、前記凹溝の底面を形成する部材が凹溝の深さ方向に移動調整可能に形成されている請求項1または請求項2に記載の脆性材料基板のブレイク工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック等の脆性材料基板のブレイク工具に関する。特に本発明は、前段工程でスクライブライン(切溝)が形成された脆性材料基板(以下、単に「基板」という)のブレイク操作を手作業で行う簡易方式のブレイク工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の表面にカッターホイール(スクライビングホイールともいう)やレーザービーム等のスクライブ手段を用いて、互いに直交するX方向並びにY方向のスクライブラインを形成し、その後、当該スクライブラインの反対側の面から外力を印加して基板を撓ませたり、押し曲げたりすることにより、基板を単位基板にブレイクする方法は知られており、例えば、特許文献1や特許文献2、特許文献3等で開示されている。
【0003】
また、基板をスクライブラインに沿ってブレイクするための手段は、従来から各種のものが知られている。
図6は、一般的に用いられているブレイク方法の一例を示すものである。
図6(a)に示すように、水平なテーブル20上にクッションシート21を挟んで基板Wを載置する。この場合、基板のスクライブラインSが形成されている面が下側となるようにする。そして、基板Wの上方からブレイクバー22を
図6(b)に示すように降下させ、基板Wを撓ませることによりスクライブラインSから基板Wをブレイクする(特許文献1の
図5参照)。
【0004】
図7は別のブレイク方法を示すものである。この方法では、スクライブラインSを挟んで基板Wを受ける一対の受刃23、23を配置し、基板WのスクライブラインSを設けた面とは反対側の面からブレイクバー24を基板に押し付けることにより基板Wを撓ませて、スクライブラインSから基板をブレイクしている(特許文献2の
図3参照)。
【0005】
図8はさらに別のブレイク方法を示すものである。この方法では、テーブル25の一端縁から基板Wの分断すべき一端部分Waを外側に突き出した状態でテーブル25上に基板Wを載置する。この場合、分断すべきスクライブラインSは上向きにしてテーブル24の端縁と一致させておく。そしてブレイクバー26を降下させて基板Wの突き出した部分Waを押下げ、スクライブラインSから基板をブレイクしている(特許文献3の
図1〜3参照)。
【0006】
上記したブレイク方法では、いずれも基板をテーブル上に保持するための保持手段や、垂直方向に昇降するブレイクバーが不可欠である。このため、ブレイクバーを昇降可能に保持するフレームや昇降させるための駆動源、また、基板をテーブル上に安定保持するための吸引機構や押さえ部材等を必要とするため装置が大型化し、高価なものとなる。また、装置を最初に稼働させる際にはテーブル上での基板の位置決めや送りピッチ、ブレイクバーの押し付け圧力等の動作部の各種初期設定を行わなければならず、少量の基板(すなわち大量生産用ではない規格品以外の基板等)をブレイクするには不向きである。
【0007】
そこで、特許文献4の第8図に示すような、手作業で基板をブレイクする簡単な工具が提案されている。
このブレイク工具は、
図9に示すように、台盤27の表面に複数の凹溝28を設け、この凹溝28に基板Wの一端部分を差し込んで基板Wの上端部分を手で掴み、
図9(b)の矢印で示す前後方向に振ることによって凹溝28近傍位置にあるスクライブラインSから基板Wをブレイクするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−071335号公報
【特許文献2】特開2013−079171号公報
【特許文献3】特開2009−227550号公報
【特許文献4】特公平05−37097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、厚みのある板材を折り曲げると、折り曲げ箇所における内角側は圧縮応力がかかるとともに、外角側は引張応力がかかる。上記の
図6〜8で示したブレイク方法では、基板をブレイクバーにより撓ませたときに、スクライブラインを設けた面が引張応力のかかる外角側(凸面側)となるようにして、スクライブラインのクラックの浸透を助長し、分断を容易にしている。
しかし、前述した
図9のブレイク工具では、基板上端部分を手で掴んで折り曲げるように前後に振ってブレイクするものであるから、基板根元部分にあるスクライブラインには引張応力と圧縮応力が交互に負荷され、スクライブラインが破断限界点に達したときに一挙にブレイクされることになる。このため、基板分断面が乱雑になって、
図10(a)において符号29で示す「ソゲ」や、符号30の「カケ」と呼ばれる現象が発生することがある。
また、基板上端部分を手で掴んで折り曲げるように傾倒させたときに、基板Wの左右両端部分にかかる力が不均等になって分断後の基板両端部に
図10(b)において符号31で示す「ツノ」と呼ばれる現象が発生することがある。このような「ソゲ」や「カケ」、「ツノ」はブレイク後の製品の品質を劣化させるため、不良品の原因となる。
さらに、基板上端部分を手で掴んで折り曲げるようにしてブレイクするものであるから、ブレイク時に大きな力を必要とするとともに、狙った所とは別のスクライブラインから分断したり、分離不良(スクライブラインではない部分が割れること)が発生するおそれがある。これらの不具合は、スクライブラインのクラック浸透が浅い基板、またはスクライブラインのピッチが狭い基板ほど顕著になり、例えばスクライブラインのクラック浸透が基板厚みの10%以下で、かつスクライブラインのピッチが3mm以下の基板では発生率が高くなって、殆ど実用に供さないといった問題点があった。
【0010】
そこで本発明は、上記課題を解決し、基板を手できれいにブレイクすることができるとともに、クラック浸透が浅い基板、またはスクライブラインのピッチが狭い基板であっても確実にブレイクすることが可能なブレイク工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明のブレイク工具は、表面に基板の一端部分を挿入する凹溝を備えた受治具と、前記基板の分断すべきスクライブラインを含む一端部分を先端から突出させた状態で前記基板を挟み込んで保持する挟み込み治具とからなり、前記挟み込み治具は、前記基板を挟み込む間隔を隔てて平行姿勢で間隔調整可能に組み付けられた第一板材及び第二板材と、これら板材と前記基板との間に介在する中間板材とから形成され、前記中間板材は弾性材料で形成され、かつ、中間板材の左右幅が前記基板の左右幅より小さい寸法で形成されていることを特徴とする。
前記挟み込み治具の第一板材と第二板材は調整ネジにより連結され、該調整ネジを操作することにより前記間隔が調整できるようにするのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、基板を挟み込み治具の第一板材と第二板材とによって、ブレイクしようとするスクライブラインに沿わせて挟み付け、しっかりと固定することができるため、スクライブラインに沿って基板内部に浸透したクラックの浸透の浅い基板(例えば、クラック深さが基板厚みの10%以下の場合)や、スクライブラインのピッチの狭い基板(例えば、スクライブラインのピッチが3mm以下の場合)であっても、基板のスクライブライン以外の部分から基板が折れたり、意図したスクライブライン以外のスクライブラインで分断されたりすることがなくなるとともに、挟み込み治具の先端部を支点として傾倒させることにより、てこの原理を応用して軽い力でブレイクすることができる。
また、第一、第二板材と基板との間に弾性材料からなる中間板材が介在しているので、基板表面の傷付きを未然に防止することができるとともに、各調整ネジの締め付け力に多少のバラツキがあっても、中間板材の弾性力を介して基板を確実に挟着保持することができる。これにより基板全面を略均等した力で押し付けて傾倒させることができるので、「ツノ」の発生も抑制することができる。
【0013】
特に本発明では、中間板材の左右幅を前記基板の左右幅より小さい寸法で形成するようにした結果、中間板材の左右幅を基板の左右幅より大きい寸法で形成した場合よりも「ツノ」の発生をさらに抑制できるようになった。これは、ブレイクの際に基板両端部への負荷が小さくなることによるものと考えられる。
すなわち、中間板材の左右幅を基板の左右幅より大きい寸法で形成した場合、特に中間板材が弾性材料の場合には、基板及び中間板材が締め付けられると、中間板材が圧縮されて中間板材の基板と対面していない部分が相対的に膨張した状態となり、基板の端面、特に中間板材と接触している端部に基板の中央部分と比較して過大な応力が負荷されることになり、これによりブレイク時に不自然な方向へ応力が負荷されて「ツノ」の発生を誘発するものと考えられる。
これに対し、本発明では基板の端部が開放された状態にあるため、ブレイク時に基板の端部に不必要な応力が負荷されることがなく、スクライブラインに沿って自然にクラックが進展することとなって「ツノ」の発生が抑制されることになるものと考えられる。
【0014】
また、挟み込み治具の先端から突出した基板先端部分のスクライブラインを、挟み込み治具の先端に近接させることにより、挟み込み治具を傾倒させたときの基板への曲げ応力をこのスクライブラインに集約させることができる。これにより、スクライブラインのクラックを基板の厚み方向に垂直に浸透させることができて、分断面に「ソゲ」や「カケ」が発生するのを抑制することができる。また、分断時に亀裂がスクライブラインの延在方向に沿って真っ直ぐに発生し、亀裂が斜めに走ったり蛇行したりすることを抑制することができて、高品質の分断面をもつ単位製品を得ることができるといった効果がある。
【0015】
本発明において、前記受治具は、前記凹溝の一方の側壁を形成する部材が溝幅方向に移動調整可能に形成され、前記凹溝の底面を形成する部材が凹溝の深さ方向に移動調整可能に形成されている構成とするのがよい。
これにより、分断すべき基板の厚みやスクライブラインのピッチに合わせて凹溝の幅や深さを調整することができて、各種基板のブレイクに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るブレイク工具の一実施例を示す斜視図。
【
図3】
図1のブレイク工具を用いた基板のブレイク手順を示す説明図。
【
図4】
図1のブレイク工具における挟み込み治具を示す正面図。
【
図5】
図1のブレイク工具によりブレイクされる基板の一例を示す平面図。
【
図6】従来の一般的なブレイク方法の一例を示す説明図。
【
図8】従来のブレイク方法のさらに別の例を示す説明図。
【
図9】従来のブレイク方法のさらに他の例を示す説明図。
【
図10】ブレイク時に基板分断面に発生する加工不良現象の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明のブレイク工具を
図1〜5に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るブレイク工具Aは、表面に基板Wの一端部分を挿入する直線状の凹溝3を備えた受治具1と、基板Wの分断すべき一端部分W’を先端(
図1の下端)から突出させた状態で該基板Wを挟み込んで保持する挟み込み治具2とから構成される。
【0018】
受治具1は、凹溝3の一方の側壁を形成する固定側壁部材3aと、他方の側壁を形成する可動側壁部材3bと、凹溝3の底面を形成する可動底板部材3cと、これら部材を保持する台盤4とで構成される。
固定側壁部材3aは支持プレート5を介して台盤4に固着されている。可動側壁部材3bは台盤4上に溝幅方向にのみスライド可能に載置され、第一調整ボルト6により溝幅が調整できるように形成されている。また、可動底板部材3cは、台盤4と固定側壁部材3aとの間に配置され、第二調整ボルト7により凹溝3の深さ方向に移動調整可能に保持されている。
【0019】
挟み込み治具2は、基板Wを挟み込む間隔を隔てて平行姿勢で組み付けられた金属等の硬質材料からなる第一板材8及び第二板材9と、これらの板材8、9と基板Wとの間にそれぞれ介在する中間板材11、11とから形成されている。この中間板材11は、比較的硬度の高い天然もしくは合成ゴム等の弾性材料で形成されている。
第一板材8並びに第二板材9は、互いに対向する平らな挟着面8a、9aを備え、これら挟着面8a、9aの間で、中間板材11、11を介して基板Wが挟着されるようにしている。なお、中間板材11はその先端(
図1における下端部分)が第一板材8並びに第二板材9の先端から突出しないように取り付けられる。
また、第一板材8と第二板材9は、左右の調整ネジ10により連結されており、この調整ネジ10を締め付けることにより、基板Wを挟着保持することができるようになっている。また、この調整ネジ10を緩めることにより、両板材8、9の間にある基板Wを順次下方に移動させたり、着脱したりすることができるようにしてある。
【0020】
さらに、
図4に示すように、中間板材11の左右幅L1が基板Wの左右幅L2より小さい寸法となるように形成して、挟み付けられる基板Wの左右両端部分に中間板材11が重ならない領域L3が残るようにしてある。この領域L3は、基板Wの左右幅L2の3〜30%(特には5〜15%)程度が好ましい。例えば、基板Wの左右幅が50mmとした場合、領域L3の長さは1.5〜15.0mm(好ましくは2.5〜7.5mm)とするのがよい。
【0021】
挟み込み治具2の第一板材8並びに第二板材9の先端外縁は、先端に至るほど挟着面8a、9aに近づく傾斜面でカットされて先細り状となっている。なお、第一板材8と第二板材9を連結する調整ネジ10は、
図1に示すように、上下に一対ずつ、合計4本設けるのがよい。これにより、両板材8、9の平行間隔を確実に保持して基板Wを均等な締め付け力で安定よく挟着することができるが、左右一対のみで形成することも可能である。
【0022】
次に、上記のブレイク工具Aを使用して基板Wをブレイクする方法について説明する。
ブレイクされる基板Wとして本実施例では、50mm×60mm角のサイズで、厚みが1.0mmのアルミナ基板を用いた。基板Wの表面には、
図5に示すように、先行するスクライブ工程で縦方向のスクライブラインS1並びに横方向のスクライブラインS2が加工されている。なお、本実施例におけるそれぞれのスクライブラインの間隔(ピッチ)は2.5mmである。
【0023】
この基板Wを、
図1〜3に示すように、挟み込み治具2の第一板材8側にある中間板材11と、第二板材9側にある中間板材11との間に挟み込んで保持する。この際、
図2に示すように、挟み込み治具2の先端から、最初に切り離す横方向のスクライブラインS2’を含む基板一端部分W’が突出するようにしておく。また、分断すべきスクライブラインS2’は、挟み込み治具2の第一板材8並びに第二板材9の先端に可能な限り近づけた状態とするのがよい。
一方、受治具1の凹溝3の幅及び深さは、分断すべき基板Wの厚み並びに突出した一端部分W’の寸法に合わせて予め調整しておく。すなわち、凹溝3の溝幅は、第一調整ボルト6で可動側壁部材3bを移動させて突出した基板一端部分W’がガタツキなく挿入できる寸法に調整する。また、溝深さは、第二調整ボルト7で可動底板部材3cを移動させて、分断すべきスクライブラインS2’から突出した基板一端部分W’の端縁までの長さ(スクライブラインS2のピッチに相当する長さ)に調整しておく。
【0024】
図3は、
図1のブレイク工具を用いて基板Wをブレイクする工程を示すものである。
図3(a)に示すように、挟み込み治具2の上部を手で掴んで治具2の先端から突出した基板一端部分W’を、
図3(b)のように受治具1の凹溝3に挿入する。次いで、
図3(c)に示すように、挟み込み治具2をスクライブラインS2’の反対側に傾倒させて基板一端部分W’をスクライブラインS2’からブレイクする。この挟み込み治具2を傾倒させる際は、第一板材8並びに第二板材9の先端外縁を傾斜面にカットして先細り状としているので、挟み込み治具2の先細りとなった先端を受治具1の表面に接触させた状態で、その接触部を支点として挟み込み治具2を傾倒させることができる。
このようにしてブレイクされた基板一端部分W’は受治具1の凹溝3から取り外され、長方形の短冊状基板W1(
図5参照)となる。
【0025】
そして、受治具1の凹溝3から基板一端部分W’を除去した後、挟み込み治具2の調整ネジ10を緩めて次に切り離すべき基板一端部分W’が突出する位置まで基板Wを引き出す。そして調整ネジ10を締め付けて基板Wを再度挟着保持した後、上記同様に、突出した基板一端部分W’を受治具1の凹溝3に差し込んで挟み込み治具2を傾倒させ、突出した基板一端部分W’をブレイクする。このような操作を順次繰り返すことにより、横方向の全てのスクライブラインS2から基板Wをブレイクして複数の短冊状基板W1を取り出す。
短冊状の基板W1は、その後、縦方向のスクライブラインS1を横にした状態で、かつ、分断すべき基板一端部分W’を突出させた状態で挟み込み治具2に取り付ける。そして、上記同様に、突出した基板一端部分W’を受治具1の凹溝3に差し込んでスクライブラインS1から順次ブレイクし、
図5に示す単位製品W2を完成させる。
【0026】
上記したブレイク工具Aによる基板分断の際、基板Wは挟み込み治具2の第一板材8と第二板材9とによって挟み付けられてしっかりと固定されているため、スクライブラインに沿って基板内部に浸透したクラックの浸透の浅い基板(例えば、クラック深さが基板厚みの10%以下の場合)や、スクライブラインのピッチの狭い基板(例えば、スクライブラインのピッチが3mm以下の場合)であっても、基板のスクライブライン以外の部分から基板が折れたり、意図したスクライブライン以外のスクライブラインで分断されることがなくなるとともに、挟み込み治具2の先端接触部を支点としたてこの原理の応用により軽い力で分断することができる。
また、各板材8、9と基板Wとの間に中間板材11を介在させているので、基板Wの表面への傷付きを防止することができるとともに、各調整ネジ10の締め付け力に多少のバラツキがあっても、中間板材11の弾性力を介して基板Wを確実に挟着保持することができる。これにより、基板Wの全表面に対して均等した力で押し付けて傾倒させることができるので、初頭で述べたような「ツノ」の発生も抑制することができる。
特に本発明では、中間板材11の左右幅L1を基板Wの左右幅L2より小さい寸法で形成し、挟み付けられる基板Wの左右両端部分に、中間板材11が重ならない領域L3が残るようにしたので、ブレイクの際に基板両端部への負荷が小さくなることによるものと考えられる。
【0027】
また、挟み込み治具2の先端から突出した基板一端部分W’を区分けするスクライブラインS2が、挟み込み治具2の先端に可能な限り近づけた位置にあるので、挟み込み治具2を傾倒させたときの基板Wへの曲げ応力がスクライブラインS2に集中的に負荷される。これにより、スクライブラインS2のクラックを基板Wの厚み方向に垂直に浸透させることができ、分断面における「ソゲ」の発生を抑制することができる。
さらに、挟み込み治具2の先端がスクライブラインS2に近接した位置でスクライブラインS2に沿って配置されているので、分断時に亀裂がスクライブラインの延在方向に沿って真っ直ぐに発生し、亀裂が斜めに走ったり、蛇行したりすることを抑制することができて、高品質の分断面をもつ単位製品W2を得ることができる。
【0028】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施例構造のみに特定されるものでない。例えば、上記実施例では、受治具1の凹溝3が上向きとなるように形成したが、横向きにして形成することもできる。その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明はセラミック等の脆性材料からなる基板を手でブレイクするブレイク工具に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
A ブレイク工具
L1 中間板材の左右幅
L2 基板の左右幅
L3 中間板材が重ならない領域
W 脆性材料基板
W’挟み込み治具の先端から突出した基板一端部分
S1 縦方向のスクライブライン
S2 横方向のスクライブライン
1 受治具
2 挟み込み治具
3 凹溝
3a 固定側壁部材
3b 可動側壁部材
3c 可動底板部材
4 台盤
8 第一板材
9 第二板材
10 調整ネジ
11 中間板材