(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レンズの曲率半径の中心から鉛直下方に延びる垂線と前記レンズとが交差する場合には、この交差する位置が前記最下点となることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
前記レンズの曲率半径の中心から鉛直下方に延びる垂線と前記レンズとが交差しない場合には、前記垂線に最も近い前記レンズの縁部が前記最下点となることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、カメラ(撮像装置)に付随して、圧縮空気発生ユニット、筐体ガラスを回転させるモータやワイパーを設置する必要がある。このため、カメラの周辺に大きなスペースが必要となり構成部品も多くなり高価となる問題があった。
特に、車両に搭載する場合は、車両側の取り付けスペースが制限されることが多いため、撮像装置をなるべくコンパクトに設置することが必要となる。
本発明は、省スペース化を図りつつ、レンズの表面に付着した水滴を簡単に除去し、レンズへの汚れの付着を防止する撮像装置、及び、レンズの水滴除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、光軸が
鉛直下方に向けて配置される撮像装置本体と、この撮像装置本体の前面側に配置されて外気に露出するレンズとを備え、前記レンズの表面に親水コーティング及び撥水コーティングを施し、これらのコーティング領域
は、略V字状を呈する2本の境界線で区分けされ、前記境界線は、前記レンズの最下点近傍で
接していることを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記レンズにおける前記光軸が通過する領域には、前記親水コーティングが施されても良い。また、前記レンズの曲率半径の中心から鉛直下方に延びる垂線と前記レンズとが交差する場合には、この交差する位置が前記最下点となる構成としても良い。
【0007】
また、前記レンズの曲率半径の中心から鉛直下方に延びる垂線と前記レンズとが交差しない場合には、前記垂線に最も近い前記レンズの縁部が前記最下点となる構成としても良い。
また、前記レンズの表面には、前記最下点となる該レンズの中心点から放射状にそれぞれ延びる前記親水コーティングされた領域と前記撥水コーティングされた領域とが設けられても良い。
【0008】
本発明は、光軸が
鉛直下方に向けて配置される撮像装置本体の前面側に配置され、外気に露出するレンズの表面に付着する水滴を除去する水滴除去方法であって、
前記レンズの表面に親水コーティング及び撥水コーティングを施し、これらのコーティング領域
は、略V字状を呈する2本の境界線で区分けされ、前記境界線は、前記レンズの最下点近傍で
接しており、親水コーティングが施された領域に付着した水滴を前記境界線に沿って前記最下点に導くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光軸が
鉛直下方に向けて配置される撮像装置本体と、この撮像装置本体の前面側に配置されて外気に露出するレンズとを備え、前記レンズの表面に親水コーティング及び撥水コーティングを施し、これらのコーティング領域
は、略V字状を呈する2本の境界線で区分けされ、前記境界線は、前記レンズの最下点近傍で
接しているため、親水コーティングが施されたレンズ表面に付着した水滴を境界線に沿ってレンズの最下点に導くことができ、付着した水滴を効率良く除去することができる。また、レンズの表面に親水コーティング及び撥水コーティングを施すだけで、圧縮空気発生ユニット等の装置を設置することないため、省スペース化及び低コスト化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置を模式的に示した図であり、(A)は取り付け状態で側方から見た側面図であり、(B)は(A)を正面方向から見た正面図である。
撮像装置10は、カメラ装置本体(撮像装置本体)11と、このカメラ装置本体11の前面に設けられるレンズ13とを備える。このレンズ13は、画角の広い曲率半径rの球面形状をした凸レンズであり、カメラ装置本体11に水密性を確保して取り付けられている。
【0012】
撮像装置10は、レンズ13が外気に露出した状態で使用される装置であり、例えば、車載用リアビジョンカメラや車載用サイドビューカメラ等の屋外で使用される車載用カメラ装置である。カメラ装置本体11は、
図1に示すように、路面上の対象物(道路の車線等の表示、車両、歩行者、障害物等)を撮影できるように、光軸Pが水平方向よりも下方に向けて車体(不図示)の後方または側方に設置されている。
【0013】
近年の車載用カメラ装置を搭載したシステムでは、カメラ装置本体11で撮影した映像を使用した画像認識技術により、道路の車線や障害物を認識する機能が搭載されている。この種の車載用カメラ装置では、天候や周辺環境によりレンズ13の表面に雨滴や汚れが付着しやすく、撮影される画像が不鮮明になる場合があり、撮影対象となる道路の車線や障害物を正しく認識できないことが想定される。
本構成では、レンズ13の表面に付着した水滴を簡単に除去し、レンズ13への汚れの付着を防止するために、レンズ13の表面には、親水コーティングと撥水コーティングとが組み合わせて施されている。
【0014】
次に、レンズ13の表面のコーティングについて説明する。
レンズ13は、
図1(A)に示すように、曲率半径rの球面形状をした凸レンズであり、このレンズ13が設けられた撮像装置10は、光軸Pが水平方向よりも下方に所定角度θだけ傾くように取り付けられている。
本実施形態では、レンズ13上には、光軸Pが通過するレンズ13の中心点Aと、該レンズ13の曲率半径rの中心Oから鉛直下方に延びる垂線Hとレンズ13との交差点Qとが形成される。この交差点Qは、撮像装置10を取り付けた場合におけるレンズ13の最下点となる。
【0015】
図2は、撮像装置10のレンズ13の表面に施された親水コーティング及び撥水コーティングの領域を示す図である。
レンズ13の表面には、
図2に示すように、レンズ13の中心点Aを含む一の領域20に親水コーティングが施され、この一の領域20以外の他の領域21に撥水コーティングが施されている。親水コーティングの成分としては、アルコキシシラン、ポリエチレングリコール、光触媒(TiO
2)、若しくはオルガノシロキサン等を用いて、真空蒸着等の方法でコーティングする。また、撥水コーティングの成分としては、シリコン樹脂やフッ素樹脂等を用いて、親水コーティングと同様に真空蒸着等の方法でコーティングする。
コーティングする場合には、レンズ13の全面に親水コーティングを施し、一の領域20をマスキングした後に、他の領域21に撥水コーティングを施せば良い。
【0016】
本実施形態では、親水コーティングが施された一の領域20と、撥水コーティングが施された他の領域21とは、略V字状を呈する2本の境界線22、23とで区分けされる。各境界線22、23の一端は、レンズ13の中心点Aを挟んだ該レンズ13の水平方向の周縁部13A、13Bに延び、境界線22、23の他端は、上記したレンズ13の交差点Qの近傍で一致している。これにより、親水コーティングが施された一の領域20は、交差点Qに近づくに連れ、水平方向の幅が小さくなっていく。
【0017】
このような各コーティングが施されたレンズ13に水滴が付着した場合、親水コーティングが施された一の領域20では、水滴は大きな塊になり易く、この大きな塊となった水滴は自重により流れる。
具体的には、
図3に示すように、レンズ13の一の領域20の表面に付着した水滴は、レンズ13の表面を伝って自重により下方に流れるが、撥水コーティングが施された他の領域21との境界線22、23まで流れ落ちると、この境界線22、23に沿って、交差点Qに向けて流れ落ちる。この構成では、境界線22、23は、略V字状を呈しており、交差点Qに近づくに連れ、水平方向の幅が小さくなるため、交差点Qに水滴を集中して導くことができる。さらに、交差点Qは、レンズ13の最下点であるため、交差点Qに導かれた水滴は、そのまま下方に排出される。これにより、レンズ13の表面に付着した水滴を効率良く除去することができる。
【0018】
本構成では、カメラ装置本体11の光軸Pが通過するレンズ13の中心点Aには、親水コーティングが施されるため、水滴が除去されたレンズ13を通じて、鮮明が画像を撮影することができる。また、レンズ13の表面に親水コーティング及び撥水コーティングを施すだけで水滴の除去ができるため、圧縮空気発生ユニット等の装置を設置する必要がない。よって、車両に搭載される車載用カメラ装置におけるレンズ13の表面に付着した水滴の除去を省スペース及び低コストで実現できる。
【0019】
また、撥水コーティングが施された他の領域21では、水滴がはじかれて水玉となる。この水玉は、車両の走行によって払拭される。また、撮像装置10が車載用カメラ装置である場合には、他の領域21を車両のバンパーやボディーが撮影される領域と合致するように取り付けられることが望ましい。
これは、車両のバンパーやボディーが撮影される領域以外の撮影画像は、画像処理によるレーン認識や移動物体認識などで使用される画像処理領域となるためである。つまり、水滴(水玉)が残存する可能性のある他の領域21を車両のバンパーボディーが撮影される領域に合致させることで、車載用カメラ装置の撮影画像による画像処理の邪魔にならないようにすることができる。
【0020】
また、レンズ13の表面に施される親水コーティング及び撥水コーティングは、上記した形態に限るものではなく、他の態様とすることも可能である。
図4は、親水コーティング及び撥水コーティングが施されたレンズ13の変形例を示す図である。このレンズ13では、親水コーティングが施された一の領域20及び撥水コーティングが施された他の領域21を区分けする境界線24、25が上記した実施形態と異なる。その他の構成については、同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
この変形例では、境界線24、25が一直線ではなく、途中で屈曲した屈曲部24A、25Aを備える。この屈曲部24A、25Aは、一の領域20内に張り出すように形成されるため、一の領域20の形状を自由に変更できるとともに、流下する水滴が境界線24、25の途中で停滞することを防止できる。
【0021】
図5は、親水コーティング及び撥水コーティングが施されたレンズ13の別の変形例を示す図である。この変形例では、親水コーティングが施された一の領域20A,20Bと撥水コーティングが施された他の領域21A,21Bとをそれぞれ複数(2つずつ)備える点で異なる。上記した実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
この変形例では、親水コーティング及び撥水コーティングが高さ方向に重ねて設定される。各領域を区分けする境界線31,32、境界線33,34、境界線35,36はそれぞれ略V字状に形成され、最も下方に配置される境界線31,32のV字の角部は、交差点Qと略一致しており、他の境界線33,34、境界線35,36のV字の角部は、それぞれ中心点Aと交差点Qとを結ぶ直線上に配置される。
これによれば、各境界線31,32、境界線33,34、境界線35,36に沿って流れる水滴は、それぞれのV字の角部に導かれ、最終的には交差点Qに導かれて交差点Qから排出される。これにより、レンズ13に付着した水滴を効率良く除去することができる。
一般に、車載用カメラは比較的小型のカメラであるが、カメラ装置本体及びレンズの大きさは大小様々である。レンズの大きい車載用カメラの場合、レンズの面積が大きくなるため、レンズ表面への水滴の停滞が懸念される。
しかし、本構成のように、親水コーティング及び撥水コーティングをそれぞれ略V字状に形成することにより、表面に付着した水滴の停滞を抑え、該水滴を効率良く除去することができる。この構成は比較的大きなレンズに用いた場合に効果的である。
また、本構成では、レンズ13の中央部に近い部分に撥水コーティングが施されている。しかし、撥水コーティングの施された他の領域21Aが、確保したい視野や画像認識の処理領域に邪魔にならない領域であれば、車載用カメラは機能的に問題にならない。このため、視界や画像認識の処理領域を考慮して親水及び撥水の各コーティング領域を決定すれば良い。
【0022】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る撮像装置50を模式的に示した図であり、(A)は取り付け状態で側方から見た側面図であり、(B)は(A)を正面方向から見た正面図である。
この第2実施形態にかかる撮像装置50のカメラ装置本体11は、光軸Pが水平方向よりも下方に向けて設置されている点で、上記した撮像装置10と同じであるが、光軸Pと水平方向との所定角度θの点で構成を異にする。
具体的には、上記した実施形態では、レンズ13の曲率半径rの中心Oから鉛直下方に延びる垂線Hは、レンズ13と交差点Qで交差している。しかしながら、撮像装置50の傾斜配置される所定角度が小さくなると、
図6(A)に示すように、垂線Hとレンズ13とが交差することがない。
このため、この構成では、垂線Hからの距離Lが最も近いレンズ13の下端縁Q1を最下点とし、この下端縁Q1にて境界線が略一致するように領域を区分けする。
【0023】
図7は、撮像装置50のレンズ13の表面に施された親水コーティング及び撥水コーティングの領域を示す図である。
レンズ13の表面には、
図6に示すように、レンズ13の中心点Aを含む一の領域60に親水コーティングが施され、この一の領域60以外の他の領域61に撥水コーティングが施されている。本実施形態では、親水コーティングが施された一の領域60と、撥水コーティングが施された他の領域61とは、略V字状を呈する2本の境界線62、63とで区分けされる。各境界線62、63の一端は、レンズ13の中心点Aを挟んだ該レンズ13の水平方向の周縁部13A、13Bに延び、境界線62、63の他端は、上記したレンズ13の下端縁Q1の近傍で一致している。
この構成では、撮像装置50が取り付けられる所定角度が小さい場合であっても、コーティングを区分けする境界線62、63をレンズ13の下端縁Q1の近傍で一致させるため、このレンズ13の最下端となる位置に境界線62、63の端部を合わせることができる。これにより、撮像装置50の取り付け角度の自由度の幅を持たせることができ、該撮像装置50の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0024】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係る撮像装置70を取り付け状態で側方から見た側面図であり、
図9は、撮像装置70のレンズ13の表面に施された親水コーティング及び撥水コーティングの領域を示す図である。
この第3実施形態では、撮像装置70のカメラ装置本体11の光軸Pが鉛直下方に向けて設置される点で上記した実施形態と構成を異にする。
この実施形態では、カメラ装置本体11の光軸Pと、レンズ13の曲率半径rの中心Oから鉛直下方に延びる垂線Hとが一致し、これらはレンズ13の中心点Aを通過する。このため、この中心点Aがレンズ13の最下点として機能し、中心点Aにて境界線が略一致するように領域を区分けする。
【0025】
レンズ13の表面には、
図9に示すように、レンズ13の中心点Aから周縁に向けて放射状に延びる一の領域80A,80Bと、この一の領域80A,80B以外の他の領域81A,81Bとが形成される。一の領域80A,80Bには親水コーティングが施され、他の領域81A,81Bには撥水コーティングが施されている。
これらの領域80A,80B,81A,81Bは、それぞれ略V字状を呈する4本の境界線82,83,84,85にて略同一の大きさに区分けされる。各境界線82〜85の一端は、それぞれレンズ13の周縁部に延び、境界線82〜85の他端は、レンズ13の最下端となる中心点Aの近傍で一致している。
親水コーティングが施される領域80A,80Bと、撥水コーティングが施される領域81A,81Bとは、レンズ13の周方向に交互に形成されている。
【0026】
この構成によれば、各境界線82〜85に沿って流れる水滴は、それぞれのV字の角部となる中心点Aに導かれて中心点Aから排出される。これにより、レンズ13に付着した水滴を効率良く除去することができる。
本構成では、親水コーティング及び撥水コーティングを周方向に交互に配置するため、レンズ13は略半分の領域に撥水コーティングが施されている。この場合であっても、視界や画像認識の処理領域を確保できる方向にコーティングの方向を決めておけば、車載用カメラは、機能的に問題にならない。
例えば、車両前方はドライバーの視界に入ってくる部分ではあるが、車両後方はドライバーの視界には入らず、かつ、車載用カメラにて視界や画像認識する領域を確保したい領域となる。このため、この車載用カメラにて視界や画像認識する領域に親水コーティングが向くように設計すれば良い。
レンズ13の表面に、細かく周方向に交互に各コーティングを施せば、レンズ13の表面における水滴除去効果が高まるため、撥水コーティング領域の面積を少なくすることができる。
この実施形態では、レンズ13の表面を4つの領域に区分けしているが、この領域の数を増減させても良いことは勿論である。また、この実施形態では、各領域80A,80B,81A,81Bを略同一の大きさに区分けしているが、これに限るものではなく、撥水コーティングが施された領域81A,81Bの大きさを親水コーティングが施される領域80A,80Bよりも小さくして、レンズ13の表面の水滴の除去を積極的に促し、レンズ13の視界を確保する構成としても良い。