特許第6163374号(P6163374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6163374-基礎杭及び基礎杭施工方法 図000002
  • 特許6163374-基礎杭及び基礎杭施工方法 図000003
  • 特許6163374-基礎杭及び基礎杭施工方法 図000004
  • 特許6163374-基礎杭及び基礎杭施工方法 図000005
  • 特許6163374-基礎杭及び基礎杭施工方法 図000006
  • 特許6163374-基礎杭及び基礎杭施工方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163374
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】基礎杭及び基礎杭施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20170703BHJP
   F24J 3/08 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   E02D5/34 Z
   F24J3/08
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-156882(P2013-156882)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25337(P2015-25337A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】石井 貞美
(72)【発明者】
【氏名】寺西 智博
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊平
(72)【発明者】
【氏名】亀山 健一
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−037161(JP,A)
【文献】 特開2006−343005(JP,A)
【文献】 特開2001−020454(JP,A)
【文献】 特開2012−162855(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01243875(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22〜 5/80
F28F 9/00〜 9/26
F24J 1/00〜 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート内に、上下方向に延在する配筋と前記配筋を連結する力骨とを有する鉄筋籠及び採熱配管を埋め込んだ基礎杭において、
前記鉄筋籠の上側には、前記力骨の略中心に前記力骨よりも直径が小さいスリーブが連結部材を介して前記力骨に取り付けられ、
前記採熱配管は、絞り込まれるように前記スリーブに挿通されると共に前記スリーブに固定されることにより、前記配筋から離されていることを特徴とする基礎杭。
【請求項2】
前記鉄筋籠の上側には、前記配筋が密に配置された密配筋部を有していることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭。
【請求項3】
前記鉄筋籠の前記密配筋部より下側では、前記採熱配管が前記力骨に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の基礎杭。
【請求項4】
前記スリーブは、構造用鋼管であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の基礎杭。
【請求項5】
前記コンクリートは、流動性の高いコンクリートを硬化させたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の基礎杭。
【請求項6】
前記配筋が密に配置された密配筋部では、12本の前記配筋が前記力骨に取り付けられ、
前記密配筋部の下側に設けられた粗配筋部では、前記密配筋部から延在する6本の前記配筋が前記力骨に取り付けられていることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の基礎杭。
【請求項7】
前記スリーブと前記力骨との間にはコンクリートが充填された領域が形成されている、請求項1〜6の何れか一項に記載の基礎杭。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一項に記載の基礎杭を施工する基礎杭施工方法であって、
前記鉄筋籠に前記スリーブが取り付けられた鉄筋構造体を準備する工程と、
前記スリーブの上側の第1開口部から前記スリーブ内に前記採熱配管を挿入した後に、前記スリーブの下側の第2開口部から前記採熱配管を取り出して前記力骨に取り付ける工程と、を有する基礎杭施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート内に鉄筋籠と採熱配管とを埋め込んだ基礎杭、及び基礎杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
年間を通して略一定の温度に保たれている地中に採熱配管を埋め込み、採熱配管内部を循環する熱媒体を介して熱交換を行うことで地中熱を利用する方法が知られている。
【0003】
このような地中熱の利用に用いられる基礎杭の施工方法が特許文献1に開示されている。この技術は、場所打ち基礎杭の内部に採熱配管を配設した採熱配管の施工方法である。この方法について述べると、掘削機により形成した坑穴にコンクリートを未硬化の状態で充填し、未硬化のコンクリートが硬化する前に坑穴に対して採熱配管が設置された鉄筋籠を挿入する。そして、鉄筋籠の挿入後にコンクリートを硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−37161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、基礎杭の1本当たりの耐力を更に向上させて、建物の施工に要する基礎杭の本数を削減することが検討されている。また、基礎杭には、耐力の向上のほかに、採熱配管を流れる熱媒体による熱交換効率の一層の向上や、基礎杭の施工性をより高めることも要求されている。
【0006】
そこで、本発明は、基礎杭の耐力と熱交換効率の一層の向上を達成しつつ、基礎杭の施工性をより高めることが可能な基礎杭及び基礎杭施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリート内に、上下方向に延在する配筋と配筋を連結する力骨とを有する鉄筋籠及び採熱配管を埋め込んだ基礎杭において、鉄筋籠の上側には、力骨の略中心に力骨よりも直径が小さいスリーブが取り付けられ、採熱配管は、スリーブに挿通されている。
【0008】
基礎杭の設計において、基礎杭の杭頭部近傍には建物に作用する地震力により大きい曲げモーメントが発生することが知られている。この基礎杭では、杭頭部近傍である鉄筋籠の上側において、力骨の略中心にスリーブが取り付けられている。このスリーブによれば、基礎杭の杭頭部近傍における曲げ・せん断耐力を向上させることができる。
また、地表面近傍には気温の影響を受け易い地盤領域が存在し、この地盤領域では、採熱配管を流通する熱媒体が熱外乱の影響を受け易い場合がある。この基礎杭では、地表面近傍である鉄筋籠の上部にスリーブが力骨の略中心に配置され、このスリーブ内に採熱配管が挿通されている。この構成によれば、地表面近傍においてコンクリート内に埋設された採熱配管と地盤との間の距離が大きくなるため、採熱配管と地盤との間の熱交換を行い難くできる。従って、熱外乱の影響を抑制することが可能となり、基礎杭による熱交換効率が向上する。
そして、採熱配管がスリーブ内に配置されているため、採熱配管を鉄筋籠の略中心にまとめて容易に配置することが可能となる。従って、基礎杭の施工性が高まる。
【0009】
また、鉄筋籠の上側には、配筋を密に配置した密配筋部が設けられていてもよい。基礎杭の曲げ・せん断耐力を向上させるために鉄筋籠を構成する配筋の数を増加させると、基礎杭を構成するコンクリート内において、配筋に採熱配管が近接して配置される場合がある。配筋に採熱配管が近接して配置されると、配筋とコンクリートとの密着性及び連続性が低下したり、採熱配管自体がコンクリート断面上の欠損(空洞)となることから、いわゆるコンクリートの付着割裂破壊が発生する可能性がある。従って、基礎杭の曲げ・せん断耐力を向上させるために配筋を増加した構造が、逆に曲げ・せん断耐力を低下させることにもなり得る。
この基礎杭では、杭頭部近傍である鉄筋籠の上側に配筋を密に配置した密配筋部が形成されているが、鉄筋籠の上側では採熱配管が力骨筋の略中心に配置されたスリーブ内に挿通されている。従って、配筋と採熱配管とを十分に離間させることができるため、付着割裂破壊が生じる可能性を抑制しつつ曲げ・せん断耐力を向上させることができる。
また、配筋が細密に配置された密配筋部においてスリーブが力骨の略中心に配置されているため、鉄筋籠の外側からの採熱配管の配置作業が困難な密配筋部において、採熱配管を容易に配置することが可能となる。従って、基礎杭の施工性が高まる。
【0010】
また、鉄筋籠の密配筋部より下側では、採熱配管が力骨に取り付けられていてもよい。
採熱配管が力骨に取り付けられることにより、採熱配管が基礎杭のより外側に配置される。従って、地表面から深く温度環境が安定した地中において、採熱配管と地盤との間の距離が短くなる。従って、採熱配管内部を流動する熱媒体と地盤との間で熱交換が行われ易くなり、熱交換効率が高まる。
【0011】
また、スリーブは構造用鋼管であるため、密配筋部の曲げ・せん断耐力が一層向上する。
【0012】
また、コンクリートは、流動性の高いコンクリートを硬化させたものである。鉄筋籠を構成する配筋や力骨の周囲にコンクリートを回り込ませて、硬化したコンクリートに空洞が形成されることを抑制できる。
【0013】
また、密配筋部では、12本の配筋が力骨に取り付けられ、密配筋部の下側に設けられた粗配筋部では、密配筋部から延在する6本の配筋が力骨に取り付けられていてもよい。
この構造によれば、鉄筋籠の全長に亘って延在する6本の配筋が通しで配置され、この6本の配筋を利用して、曲げ・せん断耐力向上のための配筋を容易に追加配置することができる。従って、密配筋部を有する鉄筋籠を容易に製造することができる。
【0014】
上記基礎杭を施工する基礎杭施工方法であって、鉄筋籠にスリーブが取り付けられた鉄筋構造体を準備する工程と、スリーブの上側の第1開口部からスリーブ内に採熱配管を挿入した後に、スリーブの下側の第2開口部から採熱配管を取り出して力骨に取り付ける工程と、を有する。
【0015】
この施工方法では、鉄筋籠にスリーブが取り付けられた後に、このスリーブに採熱配管を挿通する。従って、採熱配管を鉄筋籠の略中心にまとめて容易に配置することが可能となり、基礎杭の施工性が高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基礎杭の曲げ・せん断耐力と熱交換効率の一層の向上を達成しつつ、基礎杭の施工性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る基礎杭を示す図である。
図2】(a)は図1に示された基礎杭のA−A線に沿った断面図であり、(b)は図1に示された基礎杭のB−B線に沿った断面図である。
図3図1に示された基礎杭の拡大斜視図である。
図4】基礎杭の施工に用いられる装置の構成を示す図である。
図5】基礎杭の施工方法を示す図である。
図6図5の続きである基礎杭の施工方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る基礎杭及び基礎施工方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に示されるように、基礎杭1は、円柱状の形状を有し杭穴2に設けられると共に、構造物の基礎となるフーチング(不図示)に対して配置されるものである。基礎杭1は、比較的小径の杭で直径が620mm程度であり、全長が28m程度である。この基礎杭1は、杭穴2の掘削時に掘削土を排出することなく杭穴2の穴壁2aに練りつけ、杭穴2に対する安定液の注入を不要としたいわゆる無排土工法により施工される。無排土工法によれば、掘削土の排出が不要になり、掘削土を穴壁2aに練りつけることから、穴壁2aの強度を高めることができる。
【0020】
基礎杭1は、杭穴2に充填されたコンクリート4の内部に、鉄筋籠3にスリーブ12が取り付けられた鉄筋構造体5と、採熱配管6とが埋め込まれた構造を有している。
【0021】
鉄筋籠3は、上下方向に延在する第1配筋部7a及び第2配筋部7bが環状に配置されて円筒形状をなし(図2(a)参照)、第1配筋部7a及び第2配筋部7bは上下方向に離間して配置された力骨8により連結されている。鉄筋籠3は、第1配筋部7a及び第2配筋部7bが配置された密配筋部9Aと、第1配筋部7aが配置された粗配筋部9Bとを有している。
【0022】
基礎杭1の設計において、基礎杭1の地表面近傍の範囲では大きな曲げモーメントが発生することが知られている。図2(a)に示されるように、基礎杭1は、地表面11付近における曲げ・せん断耐力を向上させるために第1配筋部7a及び第2配筋部7bを細密に配置した密配筋部9Aを有している。鉄筋籠3の密配筋部9Aは、60°の位相角をもって配置された6本の第1配筋部7aと、60°の位相角をもって配置された6本の第2配筋部7bとを有している。すなわち、密配筋部9Aには、第1配筋部7a及び第2配筋部7bが合計で12本配置されている。第2配筋部7bは、第1配筋部7aの間に配置され、第1配筋部7aに対して30°の位相角をもって配置されている。
【0023】
図2(a)及び図3に示されるように、この密配筋部9Aには、採熱配管6を第1配筋部7a及び第2配筋部7bから離して配置するための円筒状のスリーブ12が配置されている。スリーブ12は、構造用鋼管である。なお、スリーブ12は、構造用鋼以外の材料からなる筒状の部材であってもよく、例えば薄肉鋼管や設備配管等であってもよい。また、スリーブ12は、スリーブ12内にコンクリート4が隙間なく充填可能な大きさ、例えば200mm程度の直径を有している。スリーブ12は、その中心軸が力骨8の中心軸Aに一致するように配置され、フラットバー13を介して力骨8に取り付けられている。
【0024】
図1に示されるように、粗配筋部9Bは、杭穴2の底側であって密配筋部9Aの下側に設けられている。粗配筋部9Bが負担する曲げモーメントの大きさは、密配筋部9Aが負担する曲げモーメントよりも小さくなるため、第2配筋部7bを配置せず、第1配筋部7aだけで構成している。鉄筋籠3では、密配筋部9Aから延在する6本の第1配筋部7aが円周状に、60°の位相角をもって配置されている(図2(b)参照)。すなわち、粗配筋部9Bにおける第1配筋部7aは、密配筋部9Aの第1配筋部7aが粗配筋部9Bの端部まで延在したものである。
【0025】
第1配筋部7a及び第2配筋部7bを連結する力骨8は、上下方向に均等間隔で配置されている。なお、力骨8の配置間隔は均等でなくてもよい。力骨8は、帯状のプレートを円筒状に成形したものであり、力骨8の外周面8aに第1配筋部7a及び第2配筋部7bがフレア溶接されている(図2(a)参照)。なお、力骨8は、鉄筋、鉄筋とフラットバーを組み合わせたもの、L形鋼、I形鋼、H形鋼により形成されてもよい。
【0026】
環状に配置された第1配筋部7a及び第2配筋部7bの外側には、鉄筋籠3の全長に亘って螺旋状に延びるフープ筋14が設けられている。フープ筋14は、鉄筋籠3をトラス構造とすることにより曲げ・せん断耐力を向上させ、杭穴2への鉄筋籠3の挿入を容易にする。フープ筋14は、第1配筋部7a及び第2配筋部7bに対して鉄線(不図示)により結束されている。
【0027】
また、鉄筋籠3には、鉄筋籠3の中心軸を、杭穴2の中心軸に調整するためのスペーサ16が取り付けられている。スペーサ16は、上下方向に互いに離間して配置されている。また、スペーサ16は、第1配筋部7aに対して固定され、60°の位相角をもって均等配置されている(図2(a)参照)。また、互いに対面するスペーサ16の距離は、杭穴2の内径と略同等とされている。
【0028】
鉄筋籠3の内部には、液体状の熱媒体を流通させるための3対の採熱配管6が配置されている。採熱配管6は、樹脂等からなる可撓性を有する配管である。また、採熱配管6には、杭穴2の底に向かって流動する熱媒体を地表面11に向かって流動するように折り返すための折り返し部6aが下端に設けられている。
【0029】
図2(a)に示されるように、採熱配管6は、スリーブ12が配置されている密配筋部9Aではスリーブ12内に挿通されスリーブ12の上下端の2か所で結束バンド17により固定されている。一方、図2(b)に示されるように、採熱配管6は、スリーブ12が配置されていない粗配筋部9Bでは、力骨8の内周面8bに結束バンド18により固定されている。また、粗配筋部9Bにおいて、第1配筋部7aと採熱配管6との間の距離が大きくなるように、採熱配管6は互いに隣接する第1配筋部7aの間の略中央に配置されている。すなわち、採熱配管6は、第1配筋部7aに対して30°の位相角をもって配置されている。なお、採熱配管6は、結束バンド17,18による結束とは異なる構造によりスリーブ12及び力骨8に固定されてもよい。
【0030】
コンクリート4は、流動性の高いコンクリートを硬化させたものである。流動性の高いコンクリートには、建築工事標準仕様書(JASSS5)に規定されている高流動コンクリートや、流動化剤を施工現場で添加することによりコンクリートに流動性を付与する流動化コンクリートを用いることができる。また、設計基準強度(Fc)が33N/mm以上であり、コンクリートの流動性を示すスランプが21cmであるコンクリートを用いることもできる。
【0031】
基礎杭1を構築する際には、杭穴2の生成や鉄筋籠3の建込、さらにはコンクリート4の打設等が行われる。これらの作業は、トラックミキサーや掘削機等を用いて行われる。
【0032】
図4に示されるように、トラックミキサー21は、杭穴2に充填される未硬化コンクリートを運搬及び供給する。トラックミキサー21は、シュート部21aを通じてドラム部21bに積載された未硬化コンクリートを吐出する。未硬化コンクリートの吐出位置には、搬送管23を介して掘削機24へ向けて未硬化コンクリートを圧送するコンクリートポンプ22が設置されている。コンクリートポンプ22には搬送管23の一端側が接続されている。
【0033】
掘削機24は、杭穴2を形成すると共にコンクリートポンプ22から供給される未硬化コンクリートを杭穴2に充填する。掘削機24は、アーム24aに対して鉛直方向に昇降可能とされたロッド24bを有している。中空構造のロッド24bは、上端部に搬送管23の他端側が接続され、下端部にドリル26が取り付けられている。ドリル26は、掘削土を穴壁2aに練りつけつつ杭穴2を掘削し、更に掘削した杭穴2に未硬化コンクリートを充填する。
【0034】
次に、基礎杭1の施工方法の作業工程について説明する。
この施工方法では、鉄筋籠3にスリーブ12が取り付けられた鉄筋構造体5を製造する工程と、鉄筋構造体5に採熱配管6を取り付ける工程と、採熱配管6が取り付けられた鉄筋構造体5を用いて基礎杭1を施工する工程とが行われる。
【0035】
図3に示されるように、まず、スリーブ12に対し、力骨8に連結するためのフラットバー13を溶接してスリーブユニットを形成する。次に、力骨8を所定間隔に並べた後に、力骨8内にスリーブユニットを挿通させ、スリーブユニットのフラットバー13と力骨8とを溶接する。
【0036】
続いて、第1配筋部7aを位相角が60°となるように環状に配置し、力骨8の外周面8aにフレア溶接する。その後、スリーブ12が取り付けられた領域において第1配筋部7aの間に第2配筋部7bを配置し、力骨8に対して第2配筋部7bをフレア溶接する。そして、第1配筋部7a及び第2配筋部7bの外側にフープ筋14を配置し、第1配筋部7a及び第2配筋部7bに対して鉄線(不図示)により固定する。以上の工程により、鉄筋籠3にスリーブ12が取り付けられた鉄筋構造体5が製造される。この鉄筋構造体5を製造する工程は、基礎杭1の施工現場ではなく、工場等において実施される。工場等で製造された鉄筋構造体5は施工現場に輸送される。
【0037】
なお、鉄筋構造体5は、工場等において一体として製造されてもよいし、鉄筋構造体5を所定長に分割した分割鉄筋構造体として製造してもよい。分割鉄筋構造体として製造した場合には、施工現場においてそれぞれの分割鉄筋構造体を接合し、鉄筋構造体5を形成する。
【0038】
基礎杭1の施工現場に輸送された鉄筋構造体5に採熱配管6を取り付ける。スリーブ12における密配筋部9A側の第1開口部12aからスリーブ12内に採熱配管6を挿入した後に、粗配筋部9B側の第2開口部12bから採熱配管6を取り出す。この作業は、採熱配管6を第1開口部12a側から第2開口部12b側に押し出すように挿入することにより行われる。従って、第1配筋部7aと第2配筋部7bの間から作業者が手を入れて作業することなく、採熱配管6が鉄筋籠3の中心付近に配置される。
【0039】
そして、第2開口部12bから取り出された採熱配管6の端部が、鉄筋籠3の端部に到達するまで順次送り出し、鉄筋籠3の全長に亘って採熱配管6を配置する。粗配筋部9Bでは第2配筋部7bが配置されていないため、第1配筋部7a同士の間隔は、密配筋部9Aにおける第1配筋部7aと第2配筋部7bの間隔よりも広い。従って、粗配筋部9Bでは第1配筋部7a同士の間から作業者が手を入れて採熱配管6の送り出し等の作業を容易に行うことができる。
【0040】
続いて、採熱配管6を固定する。より詳細には、スリーブ12に挿通された採熱配管6をスリーブ12に対して結束バンド17(図2(a)参照)により固定する。また、粗配筋部9Bにおける採熱配管6を力骨8の内周面8bに接するように配置し内周面8bに対して結束バンド18(図2(b)参照)により固定する。以上の工程により、採熱配管6を取り付けた鉄筋構造体5が得られる。
【0041】
採熱配管6が取り付けられた鉄筋構造体5を用いて基礎杭1を施工する。図5(a)に示されるように、はじめに杭穴2の掘削作業が行われる。掘削機24は、先端部にドリル26が取り付けられたロッド24bを回転駆動させながら下降させて地盤を掘削して杭穴2を形成する。この掘削時には、ドリル26が掘削土を穴壁2aに練りつけつつ地盤を掘削するため、掘削土が杭穴2の外へ排出されることがない。杭穴2の深さが目標深度に達すると、ドリル26の回転駆動および下降を一旦停止させる。
【0042】
次に、ドリル26を回転させつつ上昇させる。このとき、コンクリートポンプ22を駆動して、流動性の高い未硬化コンクリート4Aを搬送管23およびロッド24bを介してドリル26まで搬送させる。搬送された未硬化コンクリート4Aは、ドリル26の下端における吐出口から杭穴2に対して圧入される。
【0043】
図5(b)に示されるように、掘削機24は、未硬化コンクリート4Aを杭穴2に充填しながらロッド24bを徐々に引き上げていく。ロッド24bを引き上げる際にも、掘削土の穴壁2aへの練りつけが行われる。その後、図5(c)に示されるように、未硬化コンクリート4Aが地表面11まで充填されるまで、ロッド24bの上昇および未硬化コンクリート4Aの圧入が続けられる。
【0044】
未硬化コンクリート4Aが硬化するまでにはある程度の時間を要する。ここで、未硬化コンクリート4Aが硬化する前に、杭穴2に対して鉄筋構造体5を建て込む。鉄筋構造体5の建込を行う際には、図6(a)に示されるように、クレーン27によって鉄筋構造体5を吊り下げた後に、鉄筋構造体5を徐々に下降させる。このとき、鉄筋構造体5を未硬化コンクリート4Aに対して沈降しやすくするために、クレーン27に設けられた加振装置(不図示)によって振動を付与する。図6(b)に示されるように、下降される鉄筋構造体5は、自重によって未硬化コンクリート4A内に沈降していく。
【0045】
こうして、未硬化コンクリート4Aに対する鉄筋構造体5の沈降が進み、鉄筋構造体5が杭穴2の底部に到達すると、鉄筋構造体5はクレーン27から取り外される。その後、一定時間が経過することにより、図6(c)に示されるように、未硬化コンクリート4Aが硬化してコンクリート4となり、採熱配管6を備える基礎杭1が構築される。
【0046】
この基礎杭1では、杭頭部近傍である上側に密配筋部9Aが形成され、この密配筋部9Aには第1配筋部7a及び第2配筋部7bが配置されている。さらに、この密配筋部9Aでは、力骨8の略中心に配置されたスリーブ12内に採熱配管6が挿通されている。第1配筋部7a及び第2配筋部7bから採熱配管6を十分に離間させることができるため、コンクリート4に付着割裂破壊が生じる可能性を抑制しつつ曲げ・せん断耐力を向上させている。そして、密配筋部9Aには、スリーブ12が配置されている。従って、このスリーブ12によっても、基礎杭1の杭頭部近傍における曲げ・せん断耐力を向上させることができる。
【0047】
また、地表面11の近傍には気温の影響を受け易い地盤領域が存在し、この地盤領域では、採熱配管6を流通する熱媒体が熱外乱の影響を受け易い場合がある。この基礎杭1では、地表面11の近傍に形成された密配筋部9Aにおいてスリーブ12が力骨8の略中心に配置され、このスリーブ12内に採熱配管6が挿通されている。この構成によれば、密配筋部9Aにおいてコンクリート4内に埋設された採熱配管6と地盤との間の距離が大きくなるため、採熱配管6と地盤との間の熱交換を行い難くできる。従って、熱外乱の影響を抑制することが可能となり、基礎杭1による熱交換効率が向上する。
【0048】
そして、第1配筋部7a及び第2配筋部7bが細密に配置された密配筋部9Aにおいてスリーブ12が力骨8の略中心に配置されているため、外側からの採熱配管6の配置作業が困難な密配筋部9Aにおいて、採熱配管6を鉄筋籠3の中央にまとめて容易に配置することが可能となる。従って、基礎杭1の施工性が高まる。
【0049】
また、粗配筋部9Bでは、採熱配管6が力骨8に取り付けられることにより、採熱配管6が密配筋部9Aよりも外側に配置される。従って、地表面11から深く温度環境が安定した地中において、採熱配管6と地盤との間の距離が近くなる。従って、採熱配管6内部を流動する熱媒体と地盤との間で熱交換が行われ易くなり、熱交換効率が高まる。
【0050】
また、スリーブ12は、構造用鋼管であるため、密配筋部9Aの曲げ・せん断耐力が一層向上する。
【0051】
また、コンクリート4は、流動性の高いコンクリートを硬化させたものであるため、鉄筋籠3を構成する第1配筋部7a及び第2配筋部7bや力骨8の周囲に未硬化コンクリート4Aを回り込ませて、硬化したコンクリート4に空洞が形成されることを抑制できる。
【0052】
また、鉄筋籠3では、全長に亘って延在する6本の第1配筋部7aが通しで配置され、この6本の第1配筋部7aを利用して、曲げ・せん断耐力向上のための第2配筋部7bを容易に追加配置することができる。従って、密配筋部9Aと粗配筋部9Bを有する鉄筋籠3を容易に製造することができる。
【0053】
この施工方法では、鉄筋籠3にスリーブ12が取り付けられた後に、スリーブ12に採熱配管6を挿通する。従って、外側からの採熱配管6の配置作業が困難な密配筋部9Aにおいて、採熱配管6を鉄筋籠3の略中心に容易に配置することが可能となり、基礎杭1の施工性が高まる。
【0054】
以上、本発明の基礎杭1及び基礎杭施工方法について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1…基礎杭、3…鉄筋籠、4…コンクリート、5…鉄筋構造体、6…採熱配管、7a…第1配筋部、7b…第2配筋部、8…力骨、9A…密配筋部、9B…粗配筋部、12…スリーブ、13…フラットバー、14…フープ筋、16…スペーサ、17,18…結束バンド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6