特許第6163376号(P6163376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163376
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】成膜マスクの製造方法及び成膜マスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20170703BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20170703BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20170703BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
   H01B5/14 A
   H01B5/14 B
   H01B13/00 503B
   H01B13/00 503D
   G06F3/041 400
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-157667(P2013-157667)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-28194(P2015-28194A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
(72)【発明者】
【氏名】小川 吉司
(72)【発明者】
【氏名】梶山 康一
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−142195(JP,A)
【文献】 特表2009−520110(JP,A)
【文献】 特開2010−135269(JP,A)
【文献】 特開2005−302457(JP,A)
【文献】 特開2009−221524(JP,A)
【文献】 特開2013−083704(JP,A)
【文献】 特開2013−065446(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0179996(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0202821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
G06F 3/041
H01B 5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して複数の開口パターンを設けた成膜マスクの製造方法であって、
樹脂製のフィルムの一面にて、該フィルムの周縁部に沿って複数の孤立パターンから成る金属薄膜を形成する第1段階と、
前記複数の開口パターンを内包する大きさの開口部を有する枠状の金属フレームの一端面に前記金属薄膜を対面させた状態で、前記金属フレームに前記フィルムを架張し、前記金属薄膜と前記金属フレームとをスポット溶接する第2段階と、
前記フィルムにレーザ光を照射して前記複数の開口パターンを形成する第3段階と、
を実行することを特徴とする成膜マスクの製造方法。
【請求項2】
前記第2段階においては、成膜時の温度上昇により前記フィルムが伸びる量以上に前記フィルムを架張した状態で前記金属薄膜と前記金属フレームとをスポット溶接することを特徴とする請求項1記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムは、ポリイミドであることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項4】
前記金属薄膜は、前記フィルムと同線膨張係数を有する材料で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項5】
前記金属フレームは、インバー又はインバー合金から形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項6】
基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して複数の開口パターンを設けた樹脂製のフィルムと、
前記フィルムの一面にて、該フィルムの周縁部に沿って形成された複数の孤立パターンから成る金属薄膜と、
前記複数の開口パターンを内包する大きさの開口部を有し、一端面に前記金属薄膜をスポット溶接して前記フィルムを支持する枠状の金属フレームと、
を備えたことを特徴とする成膜マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して複数の開口パターンを設けた成膜マスクの製造方法に関し、特に高精細な薄膜パターンの形成位置精度を向上し得る成膜マスクの製造方法及び成膜マスクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の成膜マスクの製造方法は、複数の貫通開口を有する第1レジストパターンを金属板上に形成し、上記第1レジストパターンの貫通開口を介してエッチング処理を行なって上記金属板に貫通する複数の貫通孔を形成した後、上記第1レジストパターンを除去し、上記複数の開口パターンの各々の周りの所定幅の金属縁部を各々が露出せしめる複数の第2貫通開口を有する第2レジストパターンを上記金属板上に形成し、上記第2レジストパターンの第2貫通開口を介してエッチング処理を行なって上記複数の貫通開口の各々の周りのマスク本体部と該マスク本体部の周囲に位置するマスク本体部の厚さより大なる厚さを有する周縁部とを形成した後、上記第2レジストパターンを除去するものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−237072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の成膜マスクの製造方法は、金属板をエッチング処理して該金属板に貫通する複数の開口パターンを形成するので、高精細な開口パターンを精度よく形成することができなかった。特に、エッチングむらの発生及び等方エッチングによる開口面積の広がり等により、高精細な開口パターンをマスク全面に亘って均一に形成することができなかった。
【0005】
そこで、出願人は、基板に成膜される複数の薄膜パターンに対応して該薄膜パターンと形状寸法の同じ複数の開口パターンを形成した樹脂製のフィルムと、複数の開口パターンのうち少なくとも一つの開口パターンを内包する大きさの貫通孔を形成した薄板状の磁性金属部材とを密接させた構造の複合マスクを提案している。
【0006】
上記複合マスクは、厚みが10μm〜30μm程度の薄い樹脂製フィルムに開口パターンをレーザ加工して形成するものであり、高精細な開口パターンを精度よく形成することができると共に、一辺の長さが数十cm以上の大面積の成膜マスクもマスク全面に亘って均一に開口パターンを形成することができるという特長を有している。
【0007】
しかしながら、上記複合マスクにおいては、例えばインバー又はインバー合金のような熱膨張係数の小さい磁性金属部材と樹脂製フィルムのような比較的熱膨張係数の大きい部材とを室温以上で密接させているため、フィルムには両部材間の熱膨張の差に起因して内部応力が発生する。したがって、このようなフィルムに複数の開口パターンを順繰りにレーザ加工して行くと、部分的に上記内部応力が解放され、その結果、開口パターンの位置が累積的にずれることがあった。したがって、高精細な薄膜パターンを位置精度よく形成することができないおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、高精細な薄膜パターンの形成位置精度を向上し得る成膜マスクの製造方法及び成膜マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明による成膜マスクの製造方法は、基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して複数の開口パターンを設けた成膜マスクの製造方法であって、樹脂製のフィルムの一面にて、該フィルムの周縁部に沿って複数の孤立パターンから成る金属薄膜を形成する第1段階と、前記複数の開口パターンを内包する大きさの開口部を有する枠状の金属フレームの一端面に前記金属薄膜を対面させた状態で、前記金属フレームに前記フィルムを架張し、前記金属薄膜と前記金属フレームとをスポット溶接する第2段階と、前記フィルムにレーザ光を照射して前記複数の開口パターンを形成する第3段階と、を実行するものである。
【0010】
また、第2の発明による成膜マスクは、基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して複数の開口パターンを設けた樹脂製のフィルムと、前記フィルムの一面にて、該フィルムの周縁部に沿って形成された複数の孤立パターンから成る金属薄膜と、前記複数の開口パターンを内包する大きさの開口部を有し、一端面に前記金属薄膜をスポット溶接して前記フィルムを支持する枠状の金属フレームと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の開口パターンが形成されるフィルムの有効領域はフィルムのみで構成されているため、上記フィルムの有効領域には熱膨張差に基づく内部応力は発生せず、複数の開口パターンを順繰りにレーザ加工しても、開口パターンの位置が累積的にずれるおそれがない。したがって、高精細な薄膜パターンを位置精度よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による成膜マスクの実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図である。
図2】本発明による成膜マスクの製造方法において、金属薄膜付きフィルムの準備段階を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のP−P線断面拡大図である。
図3】本発明による成膜マスクの製造方法において、金属フレームに対して金属薄膜付きフィルムを架張する段階を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のP−P線断面拡大図である。
図4】本発明による成膜マスクの製造方法において、金属フレームに金属薄膜をスポット溶接する段階を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のP−P線断面拡大図である。
図5】本発明による成膜マスクの製造方法において、金属フレームの外形に合わせてフィルムをカットする段階を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のP−P線断面拡大図である。
図6】本発明による成膜マスクの製造方法において、フィルムに複数の開口パターンをレーザ加工する段階を説明する平面図である。
図7】本発明による成膜マスクを使用して行うタッチパネル基板の製造について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による成膜マスクの実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図である。この成膜マスクは、基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して複数の開口パターンを設けたもので、樹脂製フィルム1と、金属薄膜2と、金属フレーム3と、を備えて構成されている。
【0014】
上記フィルム1は、基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して該薄膜パターンと形状寸法の同じ貫通する複数の開口パターン4を形成したものであり、例えば厚みが10μm〜30μm程度のポリイミド又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の可視光を透過する樹脂製フィルムである。なお、以下の説明においては、熱膨張係数が3×10−6〜20×10−6/℃程度のポリイミドの場合について説明する。
【0015】
上記フィルム1の一面1aにて、上記複数の開口パターン4が形成される有効領域の外側領域には、金属薄膜2が形成されている。この金属薄膜2は、後述の金属フレーム3の一端面3aにスポット溶接されて、上記フィルム1を金属フレーム3に固定するためのものであり、例えばめっき形成される。又は、メタルマスクを使用してスパッタリング又は蒸着形成してもよい。以下の説明においては、めっき形成する場合について述べる。
【0016】
好ましくは、金属薄膜2は、線膨張係数が上記フィルム1の線膨張係数と同程度の金属材料が選択されるのが望ましい。例えば、フィルム1が、線膨張係数が12×10−6/℃程度のポリイミドの場合には、金属薄膜2としては、例えば線膨張係数が14×10−6/℃程度のニッケルを選択するのがよい。より好ましくは、上記金属薄膜2は、フィルム1の周縁部に沿って設けられた孤立する複数のパターンであるのが望ましい。これにより、例えば、フィルム1と金属薄膜2との線膨張係数が異なる場合に、成膜時の温度上昇によりフィルム1が伸びたときにもフィルム1にシワや反り発生するのを抑制することができる。以下の説明においては、金属薄膜2は、孤立パターンである場合について述べる。
【0017】
上記フィルム1の一面1a側には、上記フィルム1の複数の開口パターン4を内包する大きさの開口部5を有し、外形が上記フィルム1の外形に略等しい大きさの枠状の金属フレーム3が設けられている。この金属フレーム3は、上記フィルム1を架張した状態で、フィルム1の金属薄膜2の部分を一端面3aにスポット溶接してフィルム1を支持するもので、厚みが30mm〜50mm程度の例えばインバー又はインバー合金等の磁性金属材料で形成されている。
【0018】
次に、このように構成された成膜マスクの製造方法について説明する。
先ず、図2に示すように、一面1aにて複数の開口パターン4が形成される有効領域(同図(a)に破線で囲って示す)の外側領域に金属薄膜2を成膜したフィルム1を準備する。
【0019】
より詳細には、このフィルム1は、厚みが10μm〜30μmであり、方形状に切り出された例えばポリイミドで、その一面1aに、外周縁に沿って孤立したパターン状の複数の金属薄膜2を並べて形成したものである。
【0020】
ここで、上記金属薄膜2の形成について詳細に説明する。
先ず、樹脂製フィルム1の一面1aに良電導性の金属膜からなるシード層を蒸着、スパッタリング又は無電解めっき等の公知の成膜技術により50nm程度の厚みで形成する。この場合、フィルム1がポリイミドであるため、シード層としてはニッケル等を使用するのがよい。銅はポリイミド内に拡散するため、ポリイミドに対するシード層としては好ましくない。なお、フィルム1がPETの場合には、密着性の点からシード層として銅等を使用するのが好ましい。
【0021】
次いで、上記シード層上にフォトレジストを例えば30μmの厚みに塗布した後、フォトマスクを使用して露光し現像して、上記金属薄膜2に対応した部分に開口を有するレジストマスクを形成する。
【0022】
続いて、上記レジストマスクの開口内のシード層上に公知のめっき技術により例えばニッケル薄膜の島パターンを例えば30μmの厚みに成膜する。その後、上記レジストマスクを有機溶剤又は剥離剤により除去すると共に、上記島パターンの外側のシード層をエッチングして除去する。これにより、フィルム1の一面1aにて、フィルム1の周縁部に沿って並んだ複数の金属薄膜2のパターンが形成される。
【0023】
さらに、枠状の金属フレーム3が準備される。この金属フレーム3は、予め定められた外形寸法を有し、枠内の開口部5が複数の開口パターン4を内包する大きさ(フィルム1の有効領域に対応する大きさ)に設定されたものであり、厚みが30mm〜50mmの例えばインバー又はインバー合金の磁性金属板を例えば切削加工して上記開口部5を形成したものである。
【0024】
以下、本発明による成膜マスクの製造方法を図3図6を参照して説明する。
先ず、図3(b)に示すように、フィルム1が金属薄膜2を設けた一面1a側を金属フレーム3側として、同図(a)に示すように周縁部を複数のテンショングリップ6により掴んでフィルム1の面に平行な、同図(b)に矢印Fで示す側方に引張り、フィルム1に一定のテンションがかけられる。そして、その状態で、フィルム1は、金属フレーム3の上方に位置付けられる。次に、同図(b)に示すように、金属フレーム3の一端面3aに対面して金属薄膜2が位置するようにフィルム1の位置調整がなされた後、フィルム1の金属薄膜2が金属フレーム3の一端面3aに密着される。
【0025】
ここで、フィルム1にかけるテンションの大きさは、成膜時の温度上昇によりフィルム1が伸びる量以上にフィルム1を伸ばし得る大きさとするのがよい。言い換えれば、成膜時の温度上昇によりフィルム1が伸びることで、架張されたフィルム1に内在する引張応力が緩和されても、許容値以下の引張応力が残存し得る大きさとするのがよい。例えばフィルム1に対して過度のテンションがかけられている場合、成膜時の温度上昇によりフィルム1が伸びてフィルム1に内在する引張応力は一部緩和されるが、尚も大きな引張応力は内在するため、フィルム1は引っ張られてフィルム1が伸びた分だけ開口パターン4の位置がずれることになる。一方、フィルム1に対するテンションが小さい場合には、成膜時の温度上昇によりフィルム1が伸びて撓んだりシワが発生したりする。そこで、本発明においては、フィルム1に対するテンションは、成膜時の温度上昇によりフィルム1が伸びることでフィルム1に内在する引張応力が緩和されてゼロとなるか、又は開口パターン4の位置ずれが許容値内に収まる程度の引張応力(許容値以下の引張応力)が残るようにテンションの大きさが設定される。このテンションの大きさは、例えば予備実験により予め設定することができる。
【0026】
続いて、図4(a)に矢印Aで示すように、複数の金属薄膜2の部分に順繰りにレーザ光Lが照射され、同図(b)に示すように金属薄膜2が金属フレーム3の一端面3aにスポット溶接される。なお、上記スポット溶接が終わるまでは、フィルム1には前述のテンションがかけられたままである。
【0027】
その後、図5(a)に示すように、フィルム1は、金属フレーム3の外周縁に沿ってカットされる。これにより、同図(b)に示すように、金属薄膜2の部分が金属フレーム3の一端面3aにスポット溶接されて、フィルム1が金属フレーム3に固定して支持される。
【0028】
次いで、上記金属フレーム3がレーザ加工装置のXYステージ上にフィルム1を下側として載置される。そして、図6に示すように、有効領域内のフィルム1の部分に、例えば400nm以下のレーザ光Lが照射面積を開口パターン4の面積に等しくなるように整形されて照射され、フィルム1がアブレーションして除去される。これにより、開口パターン4がフィルム1を貫通して形成される。以後、XYステージを予め定められた所定ピッチでXY方向にステップ移動(矢印B参照)しながらフィルム1にレーザ光Lが照射され、開口パターン4が形成される。こうして、図1に示す成膜マスクが完成する。
【0029】
本発明の成膜マスクによれば、フィルム1の周縁部に形成される金属薄膜2は、孤立した複数のパターンであるため、フィルム1には金属薄膜2との熱膨張差に基づく内部応力は存在しない。したがって、複数の開口パターン4をレーザ加工した場合にも、開口パターン4の位置ずれが抑えられて開口パターン4を位置精度よく形成することができる。
【0030】
次に、本発明の成膜マスクを使用して静電容量式タッチパネル基板の透明電極の形成について、図7を参照して説明する。
先ず、例えばスパッタリング装置の真空チャンバーの下側に配設された基板ホルダー7の中央部にタッチパネル基板用の透明ガラス基板8が設置され、その周囲に磁石9が配置される。
【0031】
次に、図7に示すように、成膜マスクが金属フレーム3をターゲットホルダー10側とし、フィルム1を基板ホルダー7側としてガラス基板8上に載置される。この場合、ガラス基板8の厚みをt1とすると、磁石9の厚みt2は、t1と同等かやや大きい方がよい(t1≦t2)。これにより、成膜マスクは、金属フレーム3が磁石9に吸引されて固定される一方、フィルム1が自重で垂れ下がってガラス基板8の面に密着する。
【0032】
基板ホルダー7に対向して真空チャンバーの上側に配設されたターゲットホルダー10には、透明電極用の、例えばITO(インジウムとスズの複合酸化物)ターゲット11が取り付けられる。
【0033】
なお、対向配置されたターゲットホルダー10と基板ホルダー7とは、基板ホルダー7側が下となるように真空チャンバーの垂直軸に対して傾けて配設してもよい。この場合も、自重で垂れ下がったフィルム1をガラス基板8の面に密着させることができる。
【0034】
ターゲット11及びガラス基板8の取り付けが終了すると、真空チャンバーが閉じられる。そして、真空チャンバー内が予め定められた所定値の真空度となるまで真空引きが行われる。
【0035】
真空チャンバー内の真空度が所定値になると、一定量のArガスが導入された後、13.56MHzの高周波電源によりターゲット11とガラス基板8との間に高電圧が付与される。これにより、Arガスが電離してプラズマが生成され、プラズマ中の陽イオンがターゲット11に衝突する。こうして、図7に矢印で示すように、弾き飛ばされたターゲット11の粒子が成膜マスクのフィルム1に形成された開口パターン4を通過してガラス基板8の表面に付着し、透明電極12(透明導電膜の薄膜パターン)が形成される。
【0036】
この場合、本発明によれば、前述したように、成膜マスクのフィルム1には、成膜時の温度上昇によりフィルム1が伸びることで、架張されたフィルム1に内在する引張応力が緩和されても、許容値以下の引張応力が残存し得る大きさのテンションがかけられているため、成膜中にフィルム1が伸びて開口パターン4の位置がずれることがない。したがって、ガラス基板8上に透明電極12の薄膜パターンを位置精度よく形成することができる。それ故、高精細な透明電極12を形成したタッチパネル基板を製造することができる。
【0037】
なお、上記実施形態においては、成膜マスクがスパッタリングに使用されるマスクの場合について説明したが、本発明はこれに限られず、蒸着に使用するマスクであってもよい。
【0038】
また、以上の説明においては、成膜マスクがタッチパネル基板の透明電極成膜用のマスクである場合について述べたが、本発明はこれに限られず、例えば有機EL表示基板の有機EL層成膜用のマスクであってもよく、又は他の薄膜パターン成膜用マスクであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…フィルム
1a…フィルムの一面
2…金属薄膜
3…金属フレーム
3a…金属フレームの一端面
4…開口パターン
5…開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7