(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163387
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】自由勾配側溝およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
E03F5/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-175530(P2013-175530)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-45138(P2015-45138A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】391006304
【氏名又は名称】ソイル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】安土 又也
(72)【発明者】
【氏名】常澤 通夫
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−209793(JP,A)
【文献】
実開昭60−111978(JP,U)
【文献】
実開平02−110929(JP,U)
【文献】
実開昭55−081180(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3039939(JP,U)
【文献】
実公昭50−30091(JP,Y2)
【文献】
実公昭63−2536(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00〜 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部壁と両側壁と頂部壁とを備え、前記両側壁及び底部壁で形成される排水路に通じる流入口が形成された側溝であって、底部壁と、この底部壁の一方の側部に位置する第1の側壁と、頂部壁とが一体に形成された側溝ブロックと、前記底部壁の他方の側部において、前記底部壁及び頂部壁に対して着脱可能な第2の側壁とを備え、前記第2の側壁が前記側溝ブロックに締結部材で取り付けられている自由勾配側溝。
【請求項2】
側溝ブロックが、他方の側部が開放したボックス状の形態を有している請求項1記載の自由勾配側溝。
【請求項3】
底部壁の他方の側部と第2の側壁下部とが、長手方向に間隔をおいて所定長さに又は連続して形成された嵌合部又は係合部で着脱可能に嵌合又は係合している請求項1又は2記載の自由勾配側溝。
【請求項4】
底部壁の他方の側部と第2の側壁下部とが、互いに係合可能な切り欠き段部で着脱可能に係合しており、第2の側壁が頂部壁と面一な上端面を有しており、第2の側壁が、前記底部壁の切り欠き段部および頂部壁の側端面の少なくとも一方の部位に締結部材で取り付けられている請求項1〜3のいずれかに記載の自由勾配側溝。
【請求項5】
頂部壁と第2の側壁との間に排水路に通じるスリット状流入口が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の自由勾配側溝。
【請求項6】
頂部壁の上端面が、第1の側壁から第2の側壁の方向にいくにつれて所定の勾配で下降している請求項1〜5のいずれかに記載の自由勾配側溝。
【請求項7】
施工箇所に、第2の側壁を開放した形態で請求項1〜6のいずれかに記載の側溝ブロックを隣接させて配置し、側溝ブロックの開放部からコンクリートを打設して所定の勾配に成形し、側溝ブロックの底部壁及び頂部壁に対して第2の側壁を装着し、第2の側壁を側溝ブロックに締結部材で取り付けて自由勾配側溝を施工する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の水路勾配を形成し、雨水などを円滑に集水して排水するのに有用な自由勾配側溝およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路(車道)と歩道との間には側溝ブロックが配置され、この側溝ブロックは、通常、コンクリートなどで形成され、上部が開口し、かつ排水路を有するブロック本体と、このブロック本体の開口部を覆う蓋体とを備えている。また、蓋体に形成したスリット状流入口、ブロック本体と蓋体との間に形成した流入口を利用して、雨水などを集水してブロック本体の排水路に案内している。このような側溝ブロックは、道路勾配が殆どない平坦路、坂道などの登り勾配に対して、逆に下降させて排水する必要がある傾斜路にも配置される。
【0003】
このような水路勾配を形成するため、門型側溝ブロックをベース上に敷設し、一対の側壁間の底部に所定厚みに調整コンクリートを打設し、所定の勾配を形成している。例えば、両側壁を有し、底部が全面開放し、上面の天井壁の中央部に開口部を設けた門型の側溝本体を基礎上に据え付け、上部開口部から開放した底部にインバートコンクリートを打設して水路勾配を形成している。特開2006−77556号公報(特許文献1)には、ゲート型(門型)の側溝本体に関し、底部コンクリートが所定の勾配に先行して形成されている場合には、底部コンクリートの側壁と側壁の内壁との間隙に、側溝ブロック体の据付と同時にモルタルを充填し、底部コンクリートをあと打ちする場合には、上部を開口して底部コンクリートを打設して底面を所定の勾配に仕上げ、側溝を形成することが記載されている。
【0004】
しかし、門型の側溝本体では、両側壁を基礎部で確実かつ強固に支持する必要があるため、基礎コンクリートが硬化するまで、施工ができない。また、コンクリートをあと打ちする場合には、側溝本体を基礎部に据え付け、側溝本体の上部開口部からインバートコンクリートを打設した後、打設した底部のコンクリート面を上部開口部から所定の水路勾配に成形操作する必要がある。そのため、工期が長くなるだけでなく、打設及び勾配形成の作業性及び施工性が大きく低下する。さらに、特許文献1の方法では、底部コンクリートの側壁と側壁の内壁との間隙にモルタルを充填する必要があり、敷設工事も煩雑化する。また、側溝本体の上部開口部は蓋体で覆われるものの、車両の走行によりがたつきが生じ、騒音が発生する。
【0005】
一方、断面U字状又はコ字状などの側溝ブロックを配設し、側溝ブロックの底面にコンクリートを打設して所定の勾配を形成する方法も知られている。特開2004−270293号公報(特許文献2)には、左右側壁版と底壁版とからなる断面U字型の側溝本体を鉄筋コンクリートで一体成形し、所要の流水勾配を生じさせるインバートコンクリートを底壁版上面に打ち継ぎ形成し、鉄筋コンクリート製の蓋版を左右側壁版の上端部間に左右側壁版と一体に成形するか一体的に接合し、側溝本体にインバートコンクリートと蓋版が付設された状態で養生する可変勾配型蓋付き側溝製品の生産方法が開示され、底壁版の上面中間部に凹部を形成し、この凹部をインバートコンクリートで埋め合わせることも記載されている。しかし、この方法では、側溝ブロックの上部開口部からコンクリートを打設し、しかも上部開口部を通じて、側溝ブロックの底面で勾配を形成する必要があり、上記と同様に、作業効率及び施工性が大きく低下する。また、車両の通行に伴ってがたつきや蓋体の欠損が生じ、騒音の原因ともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−77556号公報(段落[0010]〜[0012]、
図1〜
図4)
【特許文献2】特開2004−270293号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、所定の勾配の底面を容易に形成でき、施工性を改善できるとともに、工期を大幅に短縮できる側溝ブロックを備えた側溝、並びに側溝の施工方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、複雑な構造とすることなく、施工性又は敷設作業性を向上できる側溝、並びに側溝の施工方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、長手方向に沿ってスリット状集水路(又は流入路)を形成でき、集水効率を向上できる側溝、並びに側溝の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ボックス状(断面コ字状など)の側溝ブロックの一方の側壁を着脱可能とすることにより、長手方向に沿って開放部を形成でき、側溝ブロック内へのコンクリートの打設が容易であるだけでなく、打設したコンクリート面を平坦又は所定の勾配に容易に形成でき、施工性を大幅に向上できること、基礎部のコンクリートやモルタルが未硬化であっても底部壁を安定に据え付けることができること、蓋体を側溝ブロックと一体化することにより、車両が走行しても騒音などが発生しないことを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の側溝は、底部壁と両側壁と頂部壁とを備え、前記両側壁及び底部壁で形成される排水路に通じる流入口が形成された側溝であって、少なくとも一方の側壁部が開放した側溝ブロックと、前記開放した側壁部(開放部)に対して着脱可能な側壁とを備えている。このような側溝では、側壁部を開放できるため、この開放部を利用してインバートコンクリートを打設して所定の勾配に成形できる。また、底部壁上のコンクリートを所定の勾配に成形した後、開放部を側壁で塞ぐことにより、側溝を形成できる。
【0012】
本発明の側溝は、前記底部壁の両側部から延びる両側壁と、両側壁間を跨いで形成された頂部壁とを備えた形態を有しており、前記頂部壁は、側壁と一体化した蓋体(着脱不能な蓋体)に相当する。このような側溝において、一方の側壁(側壁部)が着脱可能であってもよい。すなわち、側溝は、前記底部壁と、この底部壁の一方の側部に位置する第1の側壁と、前記頂部壁とが一体に形成された側溝ブロックと、前記底部壁の他方の側部において、前記底部壁及び頂部壁に対して着脱可能な第2の側壁とを備えていてもよい。前記側溝ブロックは、他方の側部が開放したボックス状(例えば、断面コ字状又はU字状)の形態を有していてもよい。なお、側溝ブロックの平面形状は、施工部位に応じて、直線状であってもよく、湾曲又は屈曲形状であってもよい。
【0013】
第2の側壁の着脱形態は特に制限されず、例えば、底部壁の他方の側部と第2の側壁下部とを、長手方向に間隔をおいて所定長さに又は連続して形成された嵌合部又は係合部で着脱可能に嵌合又は係合してもよい。また、底部壁の他方の側部と第2の側壁下部とを、互いに係合可能な切り欠き段部で着脱可能に係合させてもよい。さらに、第2の側壁の上端面を頂部壁と面一に形成してもよく、第2の側壁を、前記底部壁の切り欠き段部および頂部壁の側端面の少なくとも一方の部位に取り付け手段(締結部材など)で取り付けてもよい。
【0014】
さらに、流入口は側溝の上部に形成すればよく、例えば、頂部壁や、頂部壁と第2の側壁との間に、排水路に通じる流入口(スリット状流入口など)を形成してもよい。さらに、頂部壁の上端面は、流入口に向かって集水するため、流入口側に向かって下降・傾斜させてもよい。例えば、頂部壁の上端面は、第1の側壁から第2の側壁の方向にいくにつれて所定の勾配で下降させてもよい。
【0015】
本発明の施工方法は、所定部位(施工箇所)に、少なくとも一方の側壁部が開放した形態で前記側溝ブロックを隣接させて配置し、側溝ブロックの開放部からインバートコンクリート(又は調整コンクリート)を打設して所定の勾配に成形し、側溝ブロックの開放部を第2の側壁で塞ぐことにより、側溝を施工できる。この方法において、前記第2の側壁を開放した形態で前記側溝ブロックを隣接させて配置し;側溝ブロックの開放側部からインバートコンクリート(又は調整コンクリート)を打設して所定の勾配に成形し;側溝ブロックの底部壁及び頂部壁に対して第2の側壁を装着することにより、側溝を施工してもよい。この方法は、側溝ブロックの開放部からインバートコンクリート(又は調整コンクリート)を打設して、底面を所定の勾配に成形し、自由勾配側溝を形成するのに有用である。
【0016】
なお、本明細書において、排水路の「勾配」は、複数の側溝により形成される排水路が全体として所定の勾配を有していればよく、排水路全体の一部に平坦部などがあってもよいことを意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、一方の側壁部を開放できるため、側溝ブロック内へのコンクリートの打設作業を改善できるとともに、打設したコンクリートの底面を所定の勾配に容易に形成できる。そのため、施工性を大幅に改善できる。また、コンクリートやモルタルが未硬化であっても底部壁を基礎部に面接触させて安定に据え付けることができ、施工性及び工期を大幅に短縮できる。さらに、複雑な構造とすることなく、一方の側壁が着脱可能な簡単な構造で、施工性又は敷設作業性を向上でき、側溝の製造コストおよび施工コストも低減できる。さらには、側溝ブロックに対して側壁を装着するだけで、長手方向に沿ってスリット状集水路(又は流入路)を形成でき、集水効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の側溝の一例を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は
図1の側溝の施工状態を示す縦断面概略図である。
【
図7】本発明の側溝の他の例を示す概略断面図である。
【
図8】本発明の側溝のさらに他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
図1〜
図3は本発明の側溝の一例を示す図面であり、この側溝は、側溝ブロック1と、この側溝ブロックの一方の開放側部を閉鎖又は閉塞するための側壁11とを備えている。
【0020】
側溝ブロック1は、他方の側部が開放したボックス状(断面コ字状)の形態を有しており、平坦な底面を有する底部壁(底板部)2と、この底部壁の一方の側部に位置する第1の側壁3と、この側壁の上端部から
他方の側壁方向に延びて形成された頂部壁(頂板部又は上部壁)4とが一体に形成されている。すなわち、従来の蓋体と異なり、頂部壁4は着脱不能である。
【0021】
前記底部壁2の他方の側部には、第2の側壁11が前記底部壁2及び頂部壁4に対して着脱可能である。この例では、底部壁2の他方の側部(内側)には、長手方向に延びる凸条(又は外壁の切り欠き部、突出壁)5が形成され、第2の側壁11の下部(内側)には、この凸条5に対して係止可能な切り欠き凹部12が長手方向に沿って形成され、前記凸条5と切り欠き凹部12とで互いに係合可能な切り欠き段部を形成しており、この切り欠き段部5,12を利用して、第2の側壁11が前記底部壁2及び頂部壁4に対して着脱可能である。なお、前記底部壁2と第1の側壁3と第2の側壁11とで排水路6が形成される。
【0022】
また、第2の側壁11は、前記底部壁2の凸条5および頂部壁4の側端面に対して、締結部材(螺合機構)で取り付けられている。すなわち、前記凸条5および頂部壁4には、それぞれ、長手方向に間隔をおいて中空インサート13a,13bが埋め込まれ、このインサートの中空部には、前記第2の側壁11に形成された孔部(図示せず)を通じて、ボルト部材14a,14bのネジ部が螺着されている。そのため、前記凸条5と切り欠き凹部12とで係合させて装着した状態で、前記第2の側壁11の孔部にボルト部材14a,14bを挿通してインサート13a,13bに螺合し、前記ボルト部材にナット15a,15bを螺合することにより、第2の側壁11を下部壁2と頂部壁4とに取り付け又は装着できる。なお、この例では、第2の側壁11の上部は長手方向に切り欠かれ、この切り欠き部(切り欠き段部)で頂部壁4の側端面でボルト部材14bのネジ部にナット15bが螺合可能である。
【0023】
さらに、頂部壁4の上端面は、第1の側壁3から第2の側壁
11の方向にいくにつれて所定の勾配θで下降し、この下降した傾斜面により流水を第2の側壁
11の方向に案内している。この例では、前記上端面(傾斜面)の勾配θは路面の勾配に応じて傾斜している。また、第2の側壁11の上端面は、頂部壁4と面一に形成されている。
【0024】
そして、前記頂部壁4と第2の側壁11との間には排水路6に通じるスリット状流入口21aが形成されている。この例では、前記頂部壁4の側端部が所定間隔をおいて所定長さに切り欠かれ、第2の側壁11の内壁との間でスリット状流入口21aを形成している。
【0025】
このような側溝はインサートが埋設されたプレキャストコンクリート製の自由勾配側溝を形成しており、施工箇所(所定部位)において互いに隣接させて配置される。
図4〜
図6は
図1の側溝の施工状態を示しており、上り勾配の道路に配置し、水路勾配を逆方向に形成している。すなわち、施工箇所には予め基礎工事(例えば、基礎砕石22の敷設とモルタル23の打設)により基礎が形成され、この基礎には、第2の側壁を開放した形態で高さの異なる複数の側溝ブロック1a,1b,…1eが上り勾配の道路(図中、右上がりの勾配)に互いに隣接して配置又は据え付けされる。
【0026】
側溝ブロック1a〜1eの開放側部から底部壁2にコンクリート24を打設する。打設されたコンクリート面を、道路の上り勾配方向(上流方向)にいくにつれて下降する所定の勾配に成形し、側溝ブロック1a〜1eの底部壁2の上に所定勾配の底面(傾斜路)を形成する。次いで、前記のようにして、側溝ブロック1a〜1eの底部壁2及び頂部壁4に対して第2の側壁11を装着し、開放側部を第2の側壁11で塞ぐことにより、側溝を形成できる。なお、第2の側壁11の上部切り欠き部(段差部)には、歩道と車道とを区画するための境界ブロック(縁石)25aが配置されている。
【0027】
このような側溝では、モルタル23が未硬化状態であっても、底部壁2をモルタル23に面接触させて安定に据え付けることができる。そのため、施工性を高めることができるとともに、養生期間を必要とせず、工期を大幅に短縮できる。また、上り勾配の基礎上に複数の側溝ブロック1a,1b,…1eを配置又は据え付け、空間的に広い第2の側壁11を外した状態で、コンクリート24を打設でき、凸条5によりコンクリート24が外部へ流出するのを規制できるとともに、側部の広い空間を利用してコンクリート24面(排水路の底面)を所定の勾配に成形できる。そのため、作業および施工効率を大きく改善できるとともに、上り勾配であっても下降した水路勾配(傾斜路)を精度よく形成できる。さらに、頂部壁4が側壁3および底部壁2と一体化した構造を有し、第2の側壁11の上端面が頂部壁4の上端面と面一に形成されているため、通行および車両が走行してもがたつきや欠損が生じることがなく、安全に通行又は走行できる。また、流入口21aがスリット状であるため、安全かつ円滑に通行および走行できる。また、頂部壁4の上端面が所定方向に傾斜し、しかも境界ブロック(縁石)25aで雨水の拡散を防止しつつ集水できるため、雨水を頂部壁4の傾斜した上端面に沿ってスリット状流入口21aに案内でき、排水路6を通じて円滑に排水できる。さらに、頂部壁4の上端面(車道端部)が車道の傾斜角に対応して所定勾配θで傾斜しているため、頂部壁4の上端面で走行する自転車や単車などのスリップを防止できるとともに、頂部壁4の上端面に水溜まり部が生じるのを防止でき、車両の走行による水はねも防止できる。また、境界ブロック25aとして高さの低い境界ブロックを用いた側溝では、車いすなどであっても、歩道から車道への移動を円滑に行うことができる。
【0028】
なお、本発明の側溝は、底部壁と両側壁と頂部壁とを備えた形態(前記底部壁の両側部から延びる両側壁と、両側壁を跨いで形成された頂部壁とを備えた形態)を有している。側溝を構成する側溝ブロックは、少なくとも一方の側壁部が開放していればよく、一方の側壁と頂部壁とが開放可能であってもよい。
図7は本発明の他の例を示す概略断面図である。なお、前記
図1〜
図6と同一の要素には同一の符号を付して説明する。
【0029】
この例では、側溝ブロック31は、断面L字状の形態で形成された底部壁2と一方の側壁3とを備えており、この一方の側壁の上端面は、内方に傾斜した傾斜面(傾斜受け面)33を形成している。また、他方の側壁11は、前記と同様に、底部壁2の凸条5に係合可能な切り欠き凹部12を備えている。そして、頂部壁34は、前記一方の側壁3の傾斜面(傾斜受け面)33に対応した傾斜面35を有しており、一方の側壁3の傾斜面(傾斜受け面)33及び頂部壁34の傾斜面35の少なくとも一方の面には、貫通孔の形態の流入口21bを形成するため、スペーサ部(凸部又は長手方向に対して直行する方向に延びる凸部)が形成されている。なお、頂部壁34の他方の端面と他方の側壁11との間には、前記と同様に、スリット状流入口21aが形成されている。
【0030】
このような形態の側溝では、頂部壁34と他方の側壁11を開放できるため、側溝ブロック31の底部壁2へのコンクリートの打設作業及び勾配の成形作業を効率よく行うことができる。また、前記と同様に、スリット状流入口21aと境界ブロック25bとで効率よく集水して、排水路に排水できる。さらに、水の透過を規制する止水層41の上に透水性層42を舗装して道路を形成する場合、流入口21bを透水性層42に臨まして側溝を配置することにより、透水
性層42を浸透する浸透水も排水路に排水できる。
【0031】
なお、流入口21bは、所定間隔をおいて又は散在して形成された複数の貫通口を形成してもよい。また、頂部壁34の一方の端部は一方の側壁3の傾斜面(傾斜受け面)33で支持する必要はなく、一方の側壁3の平坦面、切り欠き段部などで支持してもよい。
【0032】
頂部壁(上部壁)が開放可能な側溝では、通行及び走行による騒音の発生及び頂部壁の欠損が生じる場合がある。そのため、蓋体に相当する頂部壁は、側部壁と一体化しているのが好ましい。すなわち、前記底部壁と、この底部壁の一方の側部に位置する第1の側壁と、前記頂部壁とが一体に形成されているのが好ましく、このような側溝ブロックは、通常、プレキャストコンクリート製である。このような側溝ブロックは、
図1〜
図4に示されるように、他方の側部が開放したボックス状の形態を有している。このような側溝ブロックの断面形状は、特に制限されないが、通常、側部が開放したコ字状又はU字状の形態である場合が多く、内壁面のコーナー部にはアール状又は傾斜状のハンチ部(増肉部)を形成してもよい。特に、基礎(モルタルなどを含む)上に安定して側溝を据え付けるため、底部壁の底面は、凹凸部があってもよいが、少なくとも基礎に対して面接触可能であるのが好ましく、全体として平坦(例えば、凸部や凸条部などを有していてもよい平坦面)であるのが好ましい。
【0033】
側溝は、前記底部壁の他方の側壁の開放部を閉塞するため、前記底部壁及び頂部壁に対して着脱可能な第2の側壁を備えている。この第2の側壁は、開放部の形態に応じて、細幅状(高さが小さな形態)であってもよいが、コンクリートの打設作業および勾配の形成作業の点から、幅広状(高さが大きな形態)、例えば、側溝の他方の側壁(特に、側壁全体)を形成する程度に幅広である場合が多い。また、第2の側壁は、他方の側壁の少なくとも上部(例えば、側壁の高さの50%以上、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%程度)が開放可能であるのが好ましい。さらには、打設したコンクリートの流出を規制するため、底部壁には、前記凸条などの規制部(又は長手方向に延びる規制壁)を形成するのが好ましい。
【0034】
必要であれば、単一の側溝ブロックの長手方向に間隔をおいて複数の開放部を形成してもよいが、側溝ブロックの開放部は、通常、単一の側溝ブロックの前記側壁部が開放された形態(長手方向に沿って開放された形態)を有している。側溝ブロックの開放部は、閉塞部材[第2の側壁(及び必要により頂部壁)]で閉塞可能であればよく、通常、開放部に対して閉塞部材(第2の側壁)が装着可能である。この装着機構は特に制限されず、係合又は掛合機構、嵌合機構などが利用でき、通常、閉塞部材(第2の側壁)が長手方向へスライド可能な嵌合又は係合機構[例えば、閉塞部材の端部(例えば、第2の側壁上部及び/又は下部)と、閉塞部材に隣接する壁部の対応部位とに形成された凸条及び凹溝によるスライド機構など]、閉塞部材の幅方向への移動に伴う嵌合又は係合機構(例えば、対向部に形成された凹凸部による凹凸嵌合、対応する部位に形成された段部による係合など)である場合が多い。
【0035】
前記側溝ブロックの底部壁及び頂部壁に対する第2の側壁(閉塞部材)の装着は、底部壁の他方の側部と第2の側壁下部との間に、長手方向に間隔をおいて所定長さに又は連続して形成された嵌合部又は係合部を利用して行うことができ、第2の側壁を着脱可能に嵌合又は係合できる。側溝ブロック及び第2の側壁が剛直
なコンクリート製であることを考慮すると、長手方向へスライド可能な嵌合又は係合機構、幅方向へ
の移動に伴う嵌合又は係合機構を利用するのが有利である。例えば、底部壁の他方の側部と第2の側壁下部とを、互いに係合可能な切り欠き段部で着脱可能に係合してもよい。この場合、切り欠き段部(前記凸条又は凸条部及び切り欠き凹部)を形成すると、前記のように段部の凸条又は凸条部(規制部)により打設コンクリートの流出も規制できる。凸条部(又は規制部)は、底部壁の他方の側部の内側に限らず外側に形成してもよいが、外側に凸条部を形成すると、打設コンクリートが第2の側壁の装着部にまで流動する可能性がある。そのため、凸条部(又は規制部)は、底部壁の他方の側部の内側(排水路側)に形成するのが有利である。
【0036】
閉塞部材が開放部に装着可能である限り、取り付け手段は必ずしも必要ではないが、閉塞部材を開放部の装着部に対して緊密かつ強固に装着して取り付けるためには、取り付け手段を利用するのが好ましい。特に、第2の側壁は安定に取り付けるため取り付け手段を利用して取り付けるのが好ましい。この取り付け手段の種類は特に制限されず、通常、締結部材、例えば、壁部の所定部位に埋設されたインサート(筒体(非腐食性筒体))に対して螺合可能なネジ部材と、このネジ部材のネジ部に対して螺合可能な螺合部材とで構成できる。なお、インサートを埋設することなく、ネジ部を延出した形態でネジ部材(例えば、ネジ棒の頭部)を壁部の所定部位に埋設させてもよいが、装着作業性の観点から、ネジ部材が螺合可能なインサートを所定部位に埋設するのが好ましい。また、ネジ部材が挿通可能な第2の側壁の孔部に代えて、第2の側壁には、ネジ部材をインサートに案内して螺合するため、ネジ部材の軸部が通過可能な形態の切り欠き案内部、例えば、縦方向に延びて(又は切り欠いて)インサートの部位に至る切り欠き案内部を形成してもよい。また、取り付け部位は、開放部の装着部及び閉塞部材の形態などに応じて選択でき、例えば、前記底部壁の切り欠き段部(係合段部、突条壁など)および頂部壁の側端面の少なくとも一方の部位であってもよい。なお、第2の側壁は、少なくとも前記底部壁の切り欠き段部(係合段部、突条壁など)に取り付ける場合が多い。換言すれば、側溝ブロックの適用部位(例えば、用水路など)によっては、頂部壁に対して側壁(第2の側壁又は閉塞部材)を取り付けるための取り付け手段(締結部材など)は必ずしも必要ではない。
【0037】
頂部壁の端部は第2の側壁で支持してもよい。
図8は本発明のさらに他の例を示す概略断面図である。この例では、第2の側壁11の上端部の内側には、切り欠かれて支持段部11aが形成され、この支持段部には頂部壁4の端部が載置され、支持されている。一方、頂部壁4の端部は、長手方向に間隔をおいて切り欠かれ、スリット状流入口21cを形成している。
【0038】
このような側溝でも前記と同様に施工性を大幅に向上できるとともに、水路勾配を簡便かつ精度よく形成できる。
【0039】
なお、側溝の平面形状は、施工部位の形態に応じて、直線状、湾曲又は屈曲形状であってもよく、1つの側溝が直線部と湾曲又は屈曲部とを備えていてもよい。
【0040】
前記側溝には、前記両側壁及び底部壁で形成される排水路に通じる流入口が形成できればよく、この流入口は、頂部壁及び/又は側壁の上部に形成してもよく、流入口は貫通孔(又スリット状貫通孔)の形態であってもよい。好ましい形態では、隣接する壁部の間、例えば、頂部壁と第2の側壁との間(特に、歩道側)に流入口が形成される。流入口は、長手方向に規則的又は不規則的に散在していてもよいが、集水効率を高めるため、スリット状であるのが好ましい。流入口は、長手方向に沿って又は延びて形成する場合が多い。特に、路面の高さに沿ってスリット状集水路を開口させると、路肩において、自動車レーンの横断勾配を車道の勾配(幅方向の傾斜)に合わせて施工でき、段差(バリア)や勾配差を解消できる。そのため、従来の施工と異なり、段差(バリア)や勾配差による水溜まりがなく、車両による水ハネを防止できるとともに、車道と側道(街渠エプロン)との間で勾配折れ(勾配差)が生じることがない。
【0041】
さらに、頂部壁の上端面は平坦面であってもよいが、集水効率を改善するため、集水口に向かって下降して傾斜しているのが好ましい。例えば、頂部壁の上端面は、第1の側壁(車道側)から第2の側壁(歩道側)の方向にいくにつれて所定の勾配で下降し、傾斜しているのが好ましい。上端面(傾斜面)の勾配θは、適当に選択でき、道路の幅方向(横断方向)の傾斜勾配と異なっていてもよい(勾配θが道路の幅方向の傾斜勾配よりも小さくてもよく、大きくてもよい)が、通常、道路の幅方向の勾配に対応して連続した傾斜面を形成するのが好ましい。勾配θは、例えば、1〜10°、好ましくは1〜5°、特に1〜3°程度であってもよい。
【0042】
歩道側の第2の側壁の上端面は、頂部壁と異なる勾配に形成してもよいが、雨水を流入口に案内するため、頂部壁と面一に形成するのが好ましい。なお、第2の側壁の上端面には、必要により、雨水を流入口に案内するため、流入口の外側に規制壁を形成してもよい。
【0043】
側溝には、通常、車道と歩道との境界に境界ブロック(境界部材)が配置され、この境界ブロックの形態は特に制限されず、頭部(縁石部)を有し、車両の乗り入れを規制する規制ブロックであってもよく、緩やかなスロープを有する乗り入れブロックなどであってもよい。なお、側溝には、必ずしも境界ブロック(境界部材)を配置するための段差部(切り欠き部)を形成する必要はない。
【0044】
なお、必要により、側溝において、流入口以外の隙間には目地を充填してもよく、シール剤でシールしてもよい。特に、腐食部材と腐食部位、例えば、ネジ部材と螺合部材とで閉塞部材を締結する場合、ネジ部材とともに、ネジ部材と螺合部材との螺合部などは、シール剤でシールしてもよい。
【0045】
本発明では、少なくとも側壁部が開放可能であるため、側溝の施工効率を大幅に向上できる。また、底壁部を基礎部に面接触して据え付けることができるため、施工が容易であるとともに、基礎部のコンクリートやモルタルが未硬化であっても施工でき、工期を大幅に短縮できる。なお、前記の例では、道路の上り勾配に対して下降する水路勾配を形成しているが、側溝は平坦な道路(又は基礎部)や下降した道路(又は基礎部)に施工してもよい。複数の側溝を隣接させて配置又は据え置きし、開放した側部を利用して、打設したコンクリート又はモルタルを所定の勾配に成形することにより、所定方向に傾斜した水路(底面)を精度よく形成できる。そのため、坂道などの道路勾配(傾斜勾配)のみならず、平坦な基礎部に対して、水路勾配を変更可能な自由勾配側溝を形成するのに適している。なお、基礎部は、慣用の方法、例えば、砕石や砂利の敷設、モルタルの打設などにより形成できる。
【0046】
側溝の高さは、施工箇所の勾配(傾斜路又は平坦路)に応じて選択でき、順次に高さが異なる複数の側溝を用いて施工してもよく、高さが同じ複数の側溝を用いて施工してもよい。前者は傾斜路に施工する場合が多い。なお、水路勾配の勾配は特に制限されず、施工場所に応じて選択できる。
【0047】
なお、側溝ブロックの底部壁と打設コンクリートとの密着性が低下する場合がある。このような場合、打設コンクリートとの係止性又はアンカー性を高めるため、側溝ブロックの下部(底部壁など)には、凹凸部、インサートした突出部材(ピット、棒状体など)などを形成してもよい。このような密着性を改善するための手段としては、例えば、特開2012−241507号公報、特開2013−68063号公報、特開2013−11152号公報などを参照できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の側溝は、高い施工性で種々の道路などに適用できる。特に、複数の側溝ブロックを用い、傾斜路や平坦路であっても所定方向に水路勾配を形成できるため、自由勾配側溝を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0049】
1…側溝ブロック
2…底部壁
3…第1の側壁
4…頂部壁
5…凸条
6…排水路
11…第2の側壁
12…切り欠き凹部
21a,21b,21c…スリット状流入口