【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係るエレベータ用挙動異常監視装置200の基本構成及びその周辺関連部位となるエレベータの乗りかご100における要部構成を示したブロック図である。
図1を参照すれば、建物に設けられたエレベータの乗りかご100における要部構成は、乗りかご100が図示されない昇降路を昇降走行して目的階を呼び登録して到達したときに各階床に設けられた乗場ドア(外ドアとも呼ばれる)と係合して開閉するかごドア(内ドアとも呼ばれる)101と、乗りかご100内の積載荷重を検出する荷重センサ102と、乗りかご100内の利用者(乗客)を撮影するかご内カメラ(防犯カメラ)103と、乗りかご100内で所定のメッセージを発声(アナウンス)する音発声手段(スピーカ)を含むかご内放送装置104と、を備えている。
【0012】
また、挙動異常監視装置200は、かご内カメラ103で撮影された利用者の映像を画像処理して解析することで画像挙動異常を検出する画像挙動異常検出手段201と、かご内荷重センサ102による走行中の乗りかご100内の積載荷重の変動が所定の閾値を超えたときに荷重挙動異常を検出する荷重挙動異常検出手段202と、閾値をかご内荷重センサ102で検出される乗りかご100内の積載荷重に応じて設定する閾値設定手段203と、画像挙動異常検出手段201による画像挙動異常の検出結果と荷重挙動異常検出手段201による荷重挙動異常の検出結果とを組み合わせて利用者の挙動異常を判定する挙動異常判定手段204と、挙動異常判定手段204により利用者の挙動異常が判定されたときに乗りかご100内に備えられるかご内放送装置104に対して所定の警告メッセージを報知する報知手段205と、を備えている。因みに、閾値設定手段203の閾値は、乗りかご100内の積載荷重が大きい場合には大きく設定し、小さい場合には小さく設定することが好ましい。報知手段205から警告メッセージが報知されると、かご内放送装置104では、音発声手段(スピーカ)から警告メッセージを発声して放送(アナウンス)する。
【0013】
図2は、挙動異常監視装置200の挙動異常検出機能(挙動異常判定を含む)に係る動作処理を示したフローチャートである。
図2を参照すれば、挙動異常検出機能に係る動作
処理では、まず図示されないエレベータ制御装置により乗りかご100のかごドア101を戸開し、乗りかご100内に乗客が乗車(ステップS1)した後、エレベータ制御装置がかごドア101を戸閉し、かご内荷重センサ102がかご内荷重を検出(ステップS2)する処理に移行する。このとき、かご内荷重センサ102のかご内荷重の検出結果は閾値設定手段203及び荷重挙動異常検出手段202に引き渡たされるため、閾値設定手段203がかご内荷重による挙動異常検出の閾値設定(ステップS3)を行う。これにより、荷重挙動異常検出手段202がかご内荷重センサ102からのかご内荷重を閾値設定手段203に設定された閾値と比較して荷重挙動異常の検出を行うことが可能となり、更にその検出結果と閾値とが挙動
異常判定手段204に引き渡たされる。
【0014】
そこで、次にエレベータ制御装置が乗りかご100を目的階の呼び登録に応じて走行(ステップS4)させた後、挙動
異常判定手段204が閾値設定手段203に設定された閾値に基づいて挙動異常検出の必要の有無を挙動異常検出要であるか否かの判定(ステップS5)により行う。この判定の結果、挙動異常検出要でなければ動作処理を終了するが、挙動異常検出要であれば挙動
異常判定手段204が荷重挙動
異常検出手段202でかご内荷重センサ102からのかご内荷重を閾値設定手段203に設定された閾値と比較して荷重挙動異常を検出した結果として、乗りかご100内の積載荷重の変動を示す荷重変動幅>閾値であるか否かの判定(ステップS6)を行う。この判定の結果、荷重変動幅が閾値以下であればエレベータ制御装置により乗りかご100の走行を停止させてからかごドア101を戸開したか否かの判定(ステップS8)に移行するが、荷重変動幅が閾値より大きければ引き続いて挙動
異常判定手段204が画像挙動異常検出手段201によりかご内カメラ103で撮影された利用者(乗客)の映像を画像処理して解析した結果として、画像挙動異常が検出されたか否かの判定(ステップS7)を行う。この判定の結果、画像挙動異常が検出されていなければエレベータ制御装置により乗りかご100の走行を停止させてからかごドア101を戸開したか否かの判定(ステップS8)に移行するが、画像挙動異常が検出されていれば挙動異常判定手段204が利用者(乗客)の挙動異常であると判定してその旨を報知手段205へ引き渡し、報知手段205から警告メッセージが報知されたかご内放送装置104により音発声手段(スピーカ)から警告メッセージとして「静かにお乗りください」を放送(ステップS9)してから動作処理を終了する。因みに、図示しないが、このような警告メッセージは、乗りかご100内の操作盤上に表示装置が備えられる場合には、表示装置の表示画面上に警告表示を行うことも可能である。
【0015】
また、エレベータ制御装置により乗りかご100の走行を停止させてからかごドア101を戸開したか否かの判定(ステップS8)の結果、戸開していれば動作処理を終了するが、戸開していなければ荷重変動幅>閾値であるか否かの判定(ステップS6)の前に戻ってからそれ以降の処理を繰り返す。ここでの手順は、例えば乗りかご100内で利用者(乗客)が乗車後に足を滑らしてバランスを崩して乗りかご100の床面を強く踏み込んだり、或いは転倒したりして乗りかご100の床面に対する負荷が増大した場合等において、荷重変動幅が閾値よりも大きくなって荷重挙動異常が検出されても、画像挙動異常が検出されていなければ挙動異常判定手段204が挙動異常として判定しないようにすることにより、不要に警告メッセージを報知して正常に利用しているエレベータの利用者(乗客)に対して不快感を与えることを回避するための処理である。
【0016】
以下は、上述した閾値設定手段203によるかご内荷重による挙動異常検出の閾値設定(ステップS3)の技術的概要について詳細に説明する。一般に乗りかご100の定格積載荷重は、顧客等の要望によりエレベータ毎に異なるため、乗りかご100内での荷重変動幅の閾値は、走行時の乗りかご100の積載荷重により定まる。そこで、本実施例1では、最初に走行前の乗りかご100の積載荷重により比例値を算出する。但し、ここでは利用者(乗客)が1人や満員時の場合を除くため、定格積載荷重に対して所定の最小適用荷重及び最大適用荷重を設け、比例値を比例値=(走行前の積載荷重−最小適用荷重)÷(最大適用荷重−最小適用荷重)なる関係で算出する。次に、この比例値を用いて所定の最小適用閾値を定めた上、走行中の乗りかご100内での荷重変動幅の閾値を閾値=(比例値×最小適用閾値)+最小適用閾値なる関係で算出する。
【0017】
図3は、上述した
図2の挙動異常検出機能の動作処理に含まれる荷重挙動異常検出時に閾値設定手段203で適用される走行中の乗りかご100内の荷重変動幅の閾値を設定する手順を示したフローチャートである。
図3を参照すれば、閾値設定手段203による走行中の乗りかご100内の荷重変動幅の閾値の設定は、上述した走行前の乗りかご100の積載荷重により比例値を算出する手法を走行中の乗りかご100の積載荷重に応じて比例値を算出するように適用し、この比例値を用いて走行中の乗りかご100内での荷重変動幅の閾値を設定する手順としたものである。
【0018】
具体的に云えば、まず
図2のエレベータ制御装置がかごドア101を戸閉し、かご内荷重センサ102がかご内荷重を検出(ステップS2)する処理で得られた現状の積載荷重(現在の荷重)と最小適用荷重(最小有効荷重)とを比較し、現在の荷重<最小有効荷重であるか否かの判定(手順T1)を行う。この判定の結果、現在の荷重が最小有効荷重よりも小さければ挙動異常検出不要(手順T5)に移行してから動作処理を終了するが、現在の荷重が最小有効荷重以上であれば引き続いて、現状の積載荷重(現在の荷重)と最大適用荷重(最大有効荷重)とを比較し、現在の荷重>最大有効荷重であるか否かの判定(手順T3)を行う。この判定の結果、現在の荷重が最大有効荷重よりも大きければ挙動異常検出不要(手順T5)に移行してから動作処理を終了するが、現在の荷重が最小有効荷重以下であれば引き続いて、比例値を比例値=(現在荷重−最小有効荷重)÷(最大有効荷重−最小有効荷重)なる関係で算出(手順T3)した後、係る比例値を用いて走行中の乗りかご100内での荷重変動幅の閾値を、所定の最小閾値を定めた上で閾値=(比例値×最小閾値)+最小閾値なる関係で算出(手順T4)してから動作処理を終了する。
【0019】
以上に説明した実施例1に係る挙動異常監視装置200によれば、画像挙動異常検出手段201で検出されるかご内カメラ103により撮影された映像を画像処理して解析した結果の画像挙動異常の検出結果に加え、かご内荷重センサ102による走行中の乗りかご100内の積載荷重の変動が所定の閾値を超えたときに荷重挙動異常検出手段202で検出される荷重挙動異常の検出結果を組み合わせて挙動異常判定手段204が乗りかご100内の利用者(乗客)に対する挙動異常を判定するため、乗りかご100内での利用者(乗客)の挙動異常・挙動不審の検知精度を向上させて不要な警告アナウンスや警告表示を極力低減することができる。即ち、従来では誤判定され易かった乗りかご100内の利用者(乗客)が鏡の前で髪を整えるような動作や縞模様の服装の乗客の軽微な動作等は例え画像挙動異常検出手段201で画像挙動異常として検出されても、荷重挙動異常検出手段202で荷重挙動異常として検出されることがないために挙動異常判定手段204が挙動異常として判定せず、また乗りかご100内で利用者(乗客)が乗車後に足を滑らしてバランスを崩して乗りかご100の床面を強く踏み込んだり、或いは転倒したりして乗りかご100の床面に対する負荷が増大して荷重挙動異常検出手段202で荷重挙動異常が検出されても、画像挙動異常検出手段201で画像挙動異常が検出されていなければ挙動異常判定手段204が挙動異常として判定せず、報知手段205による警告報知が行われないため、誤判定で正常に利用している利用者(乗客)へ警告報知して不快感を与える事態を極力回避することができる。