特許第6163403号(P6163403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163403
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】アンテナ移動装置及びアンテナ移動方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/12 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   H01Q1/12 B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-204035(P2013-204035)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-70490(P2015-70490A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390001454
【氏名又は名称】NECネッツエスアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政人
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭58−500923(JP,A)
【文献】 特開2006−211108(JP,A)
【文献】 特開平5−7628(JP,A)
【文献】 特開平4−169779(JP,A)
【文献】 米国特許第8896497(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の周囲に固定されたリングの第1位置に設置されたパラボラアンテナユニットを、前記リングに沿って前記第1位置から前記リングの第2位置まで移動させるためのアンテナ移動装置であって、
少なくとも前記第1位置から前記第2位置に至るまで前記リングに沿って固定され、前記パラボラアンテナユニットを前記第1位置から前記第2位置まで案内するレール部材と、
前記パラボラアンテナユニットに固定され、前記パラボラアンテナユニットを前記レール部材に係合可能とする移動補助部材と、を備えること
を特徴とするアンテナ移動装置。
【請求項2】
前記レール部材は、水平方向に延びる設置平面を備え、前記設置平面は、前記リング上に配置した1以上のスペーサが形成する平面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ移動装置。
【請求項3】
前記スペーサは、前記リングの上部の突起部分を避けた少なくとも2つの位置に設けられ、前記スペーサが形成する前記平面は、前記突起部分の高さよりも高いことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ移動装置。
【請求項4】
前記レール部材は、鉛直方向上向きに延びるアンテナ支持部を備え、前記パラボラアンテナユニットは、前記移動補助部材によって、前記アンテナ支持部に係合しつつ前記レール部材に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載のアンテナ移動装置。
【請求項5】
前記移動補助部材は、一方の側面が前記パラボラアンテナユニットの裏側上部に固定され、他方の側面に押さえプレートが設けられた摺動プレートを備え、前記パラボラアンテナユニットと前記押さえプレートとが形成する空間内において、前記摺動プレートの下面が前記アンテナ支持部の上面と接触することによって、前記パラボラアンテナユニットは、前記アンテナ支持部に係合しつつ前記レール部材に沿って移動可能としていることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ移動装置。
【請求項6】
前記レール部材は、複数の分割レールからなり、前記複数の分割レールは、前記第1位置から前記第2位置に至るまで、前記リングに沿った一連の円弧形状を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1に記載のアンテナ移動装置。
【請求項7】
前記移動補助部材は、前記パラボラアンテナユニットを前記リングに設置するために設けたボルト穴を用いて、前記パラボラアンテナユニットに固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載のアンテナ移動装置。
【請求項8】
前記摺動プレートの下面は、前記アンテナ支持部との接触面積を減らすような曲面形状を備えることを特徴とする請求項5、請求項5に従属する請求項6、及び、請求項5に従属する請求項7のうち、いずれか1に記載のアンテナ移動装置。
【請求項9】
鉄塔の周囲に固定されたリングの第1位置に設置されたパラボラアンテナユニットを、前記リングに沿って前記第1位置から前記リングの第2位置まで移動させる方法であって、
前記パラボラアンテナユニットを前記リングから取り外して吊り上げた状態で、前記リングに沿った円弧形状のレール部材を設置するレール部材設置工程と、
前記リングから吊り上げられた状態の前記パラボラアンテナユニットに対して、移動補助部材を取り付ける移動補助部材取り付け工程と、
前記移動補助部材が取り付けられた前記パラボラアンテナユニットを、前記レール部材に係合させつつ摺動させることにより、前記パラボラアンテナユニットを前記第1位置から前記第2位置まで移動させるアンテナ移動工程と、
を備えることを特徴とするアンテナ移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔の周囲に固定されたリングに設置されたパラボラアンテナユニットをリングに沿って所望の位置まで水平移動するためのアンテナ移動装置及びアンテナ移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にパラボラアンテナ取り付け用の自立式鉄塔には、使用目的や周波数帯の相違から、高さ及び方向を変えた複数のアンテナが設置される。従来、新たなアンテナを設置する場合や、古いアンテナを撤去する場合、いずれかのアンテナを新しいアンテナに交換する場合など、クレーン等を用いて対象となるアンテナを地上から吊り上げ、又は、地上まで吊り降ろすなどの作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2012−076845号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アンテナの構成はより精密になっており、アンテナの取り外し作業や取り付け作業において、取り外し又は取り付け対象となるアンテナが、設置済アンテナや鉄塔に接触することによる損傷が発生しないようにしながら、対象アンテナを取り外す又は取り付けることが求められている。また、接触以外にも、設置済の運用中アンテナの電波発射方向(前面)を取り外し又は取り付け対象の対象アンテナが遮蔽しないようにすることも必要であるため、対象アンテナを地上に吊り降ろす又は地上から吊り上げる経路について、設置済アンテナ等を避けるように制約が生じている。
更に、鉄塔を立地する地形や、周囲の状況(例えば、局舎などの建物、樹木、その他地上の障害物の存在)により、アンテナを地上に降ろす位置等が限定される場合も多い。
これに対して、特許文献1に記載のアンテナの取り外し作業においては、複数の滑車にワイヤーロープをかけ、このワイヤーロープの引っ張り具合を調整することによって対象アンテナの吊り降ろし位置及び経路を変更している。しかし、この取り外し作業は、重量の大きなアンテナを吊った状態でワイヤーロープを調整するため、作業者の経験や技量に負うところが多く、作業効率や正確性等の点で困難を伴う場合があり、このため、作業中に対象のアンテナが対象以外のアンテナや鉄塔に接触するおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、鉄塔の周囲に固定されたリングに設置されたパラボラアンテナユニットをリングに沿って所望の位置まで水平移動するためのアンテナ移動装置及びアンテナ移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のアンテナ移動装置は、鉄塔の周囲に固定されたリングの第1位置に設置されたパラボラアンテナユニットを、前記リングに沿って前記第1位置から前記リングの第2位置まで移動させるためのアンテナ移動装置であって、少なくとも前記第1位置から前記第2位置に至るまで前記リングに沿って固定され、前記パラボラアンテナユニットを前記第1位置から前記第2位置まで案内するレール部材と、前記パラボラアンテナユニットに固定され、前記パラボラアンテナユニットを前記レール部材に係合可能とする移動補助部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のアンテナ移動装置において、前記レール部材は、水平方向に延びる設置平面を備え、前記設置平面は、前記リング上に配置した1以上のスペーサが形成する平面上に配置されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のアンテナ移動装置において、前記スペーサは、前記リングの上部の突起部分を避けた少なくとも2つの位置に設けられ、前記スペーサが形成する前記平面は、前記突起部分の高さよりも高いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のアンテナ移動装置において、前記レール部材は、鉛直方向上向きに延びるアンテナ支持部を備え、前記パラボラアンテナユニットは、前記移動補助部材によって、前記アンテナ支持部に係合しつつ前記レール部材に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のアンテナ移動装置において、前記移動補助部材は、一方の側面が前記パラボラアンテナユニットの裏側上部に固定され、他方の側面に押さえプレートが設けられた摺動プレートを備え、前記パラボラアンテナユニットと前記押さえプレートとが形成する空間内において、前記摺動プレートの下面が前記アンテナ支持部の上面と接触することによって、前記パラボラアンテナユニットは、前記アンテナ支持部に係合しつつ前記レール部材に沿って移動可能としていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のアンテナ移動装置において、前記レール部材は、複数の分割レールからなり、前記複数の分割レールは、前記第1位置から前記第2位置に至るまで、前記リングに沿った一連の円弧形状を形成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のアンテナ移動装置において、前記移動補助部材は、前記パラボラアンテナユニットを前記リングに設置するために設けたボルト穴を用いて、前記パラボラアンテナユニットに固定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のアンテナ移動装置において、前記摺動プレートの下面は、前記アンテナ支持部との接触面積を減らすような曲面形状を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のアンテナ移動方法は、鉄塔の周囲に固定されたリングの第1位置に設置されたパラボラアンテナユニットを、前記リングに沿って前記第1位置から前記リングの第2位置まで移動させる方法であって、前記パラボラアンテナユニットを前記リングから取り外して吊り上げた状態で、前記リングに沿った円弧形状のレール部材を設置するレール部材設置工程と、前記リングから吊り上げられた状態の前記パラボラアンテナユニットに対して、移動補助部材を取り付ける移動補助部材取り付け工程と、前記移動補助部材が取り付けられた前記パラボラアンテナユニットを、前記レール部材に係合させつつ摺動させることにより、前記パラボラアンテナユニットを前記第1位置から前記第2位置まで移動させるアンテナ移動工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、パラボラアンテナユニットの移動を案内するレール部材と、パラボラアンテナユニットをレール部材に係合可能とする移動補助部材と、を設けることにより、簡単な構成で正確にパラボラアンテナユニットを所望の経路で移動させ、地上まで降ろすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、パラボラアンテナユニットが設置される鉄塔の概略構成を示す側面図、(b)乃至(e)は、鉄塔に固定した第1リング乃至第4リング及び各リングに設置したパラボラアンテナユニットの概略構成をそれぞれ示す上面図である。
図2】(a)は、図1の第2リング及び第2リングに設置したパラボラアンテナユニットの構成を示す平面図、(b)は、パラボラアンテナユニットと固定具との結合関係を示す、(a)の線IIB−IIB’における断面図である。
図3】(a)は、図2(a)の第2リングに対してスペーサを配置した状態を示す平面図、(b)は、第2リングとスペーサとの結合関係を示す、(a)の線IIIB−IIIB’における断面図である。
図4】スペーサの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のIVC方向から見た側面図である。
図5】(a)は、図3(a)の第2リングに対してレール部材を配置した状態を示す上面図、(b)は、第2リング、スペーサ、及びレール部材の結合関係を示す、(a)の線VB−VB’における断面図である。
図6】(a)は、図5(a)のレール部材に対してパラボラアンテナユニットを設置した状態を示す平面図、(b)は、第2リング、スペーサ、レール部材、及びパラボラアンテナユニットの結合関係を示す、(a)の線VIB−VIB’における断面図である。
図7】(a)は、摺動プレートの構成を示す正面図、(b)は、押さえプレートの構成を示す正面図である。
図8】(a)は、パラボラアンテナユニットを第2リングに固定した状態を示す一部断面図、(b)は、パラボラアンテナユニットに移動補助部材を固定した状態を示す一部断面図である。
図9】パラボラアンテナユニットを地上へ吊り降ろす状態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るアンテナ移動装置及びアンテナ移動方法について図面を参照しつつ詳しく説明する。以下の説明において、上下方向は鉛直方向であり、特に断らない場合は、構成の説明は鉄塔10に取り付けた姿勢に基づいて行う。尚、以下は、アンテナの撤去時を例に説明するが、本発明は、新規アンテナや、交換後のアンテナを鉄塔に設置する場合にも同様に適用可能である。
図1(a)は、パラボラアンテナユニットが設置される鉄塔の概略構成を示す側面図、(b)乃至(e)は、鉄塔に固定した第1リング乃至第4リング及び各リングに設置したパラボラアンテナユニットの概略構成をそれぞれ示す上面図である。
アンテナ移動装置100(図6(b)参照)は、鉄塔10の周囲に固定されたリング21乃至24に対してそれぞれ設置されたパラボラアンテナユニット31乃至37を、リングに沿って第1位置P1から第2位置P2(図6(a)参照)まで移動させるために設けられる。図1に示す例では、地面E上に設置された鉄塔10の周囲の所定高さにそれぞれ複数のリング(第1リング21、第2リング22、第3リング23、第4リング24)が固定されており、更に、それらのリングの外周には、複数のパラボラアンテナユニット31、32、33、34、35、36、37が設置されている。リングの設置高さ、設置数、及び、リングに対するパラボラアンテナユニットの設置位置(方位)は、当該パラボラアンテナが通信を行う対向無線基地局の方向(方位)となるため、必然的に決定される。
【0018】
アンテナ移動装置100は、図6(b)に示すように、レール部材70a及び移動補助部材80を備える。レール部材70aは、図5(b)に示すように、レール基部71とアンテナ支持部72とからなる。移動補助部材80は、図6(b)に示すように、摺動プレート81と押さえプレート82とを備える。
【0019】
以下、第2リング22に設置したパラボラアンテナユニット32、33(図1(c)参照)を例にとって、リング、パラボラアンテナユニット、及び、アンテナ移動装置の構成、並びに、パラボラアンテナユニットの設置から取り外しまでの工程について説明する。これらの構成及び工程は、第1リング21、第3リング23、又は、第4リング24に設置したパラボラアンテナユニットについても同様である。
図2(a)は、図1の第2リング及び第2リングに設置したパラボラアンテナユニットの構成を示す平面図、図2(b)はパラボラアンテナユニットと固定具の結合関係を示す、図2(a)の線IIB−IIB’における断面図である。図3(a)は、図2(a)の第2リングに対してスペーサを配置した状態を示す平面図、図3(b)は第2リングとスペーサとの結合関係を示す、図3(a)の線IIIB−IIIB’における断面図である。図4は、スペーサの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のIVC方向から見た側面図である。図5(a)は、図3(a)の第2リングに対してレール部材を配置した状態を示す平面図、図5(b)は第2リング、スペーサ、及びレール部材の結合関係を示す、図5(a)の線VB−VB’における断面図である。図6(a)は、図5(a)のレール部材に対してパラボラアンテナユニットを設置した状態を示す平面図、図6(b)は第2リング、スペーサ、レール部材、及びパラボラアンテナユニットの結合関係を示す、図6(a)の線VIB−VIB’における断面図である。図7(a)は摺動プレートの構成を示す正面図、図7(b)は押さえプレートの構成を示す正面図である。図8(a)はパラボラアンテナユニットを第2リングに固定した状態を示す一部断面図、図8(b)はパラボラアンテナユニットに移動補助部材を固定した状態を示す一部断面図である。
【0020】
(1)リングへのパラボラアンテナユニットの設置
図2(a)に示すように、第2リング22は、鉄塔10の複数の塔脚11からそれぞれ延びる複数の腕部12によって鉄塔10に固定されている。ここで、第2リング22は、図2(b)に示すように、鉛直方向(図2(b)の上下方向)において対向配置された2つのリング部材22a、22bからなる。リング部材22aは、水平方向に延びる面と鉛直方向下向きに延びる面とを備え、水平方向に直交する断面が逆L字型をなしており、一方、リング部材22bの同断面はL字型をなしている。
第2リング22の外周において、所定の設置位置(第1位置)P1、P1’に、パラボラアンテナユニット32、33がそれぞれ設置されている。
【0021】
以下、図2(b)を参照して、第2リング22に対するパラボラアンテナユニット32の設置構造について説明する。第2リング22に対するパラボラアンテナユニット33の設置構造も同様である。
パラボラアンテナユニット32は、電波を反射させる反射器32aと、反射器32aの向きを変更可能な状態で反射器32aを支持する架台32bと、を備える。パラボラアンテナユニット32は、V字ボルト41、42により第2リング22に固定される。具体的には、パラボラアンテナユニット32の上部は、リング部材22aを横から挟むようにV字ボルト41を配置し、V字ボルト41の先端のボルト部41a、41bを、架台32bの裏側32cに設けたボルト穴32d、32eにそれぞれ挿通させ、ナットで固定される。また、パラボラアンテナユニット32の下部は、リング部材22bを挟むようにV字ボルト42を配置し、V字ボルト42の先端のボルト部42a、42bを、架台32bの裏側32cに設けたボルト穴32f、32gにそれぞれ挿通させ、ナットで固定される。ここで、V字ボルト41は、リング部材22aの周方向(図2(b)の紙面に対して垂直方向)に2つ設けられ、それぞれ架台32bの裏側32cの上部(ボルト穴32d、32d、32e、32e)に固定されている。また、V字ボルト42も同様に、リング部材22bの周方向(図2(b)の紙面に対して垂直方向)に2つ設けられ、それぞれ架台32bの裏側32cの下部(ボルト穴32f、32f、32g、32g)に固定されている。
【0022】
(2)レール部材の設置工程
この工程では、鉄塔10の任意の部位に台棒101a(図9参照)を設置し、台棒101aに支持されたワイヤ38(図8(b)参照)をワイヤ係止部32hに係止してパラボラアンテナユニット32を支持しながらV字ボルト41、42を外してパラボラアンテナユニット32を第2リング22から外し、パラボラアンテナユニット32を吊り上げたまま、第2リング22のリング部材22a上に、周方向に分割された複数のスペーサ50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g、50h、50iを配置し、更にその上に、複数のレール部材70a、70b、70c、70dを順に設置する。以下、スペーサ50a、レール部材70aを例にとって説明するが、スペーサ50b、50c、50d、50e、50f、50g、50h、50i、レール部材70b、70c、70dもそれぞれ同様の構成であり、同様に設置する。
【0023】
図3及び図4に示すように、スペーサ50aは、リング部材22a上に載置される底板部51と、底板部51から上方に延びる支持部52とからなる。底板部51と支持部52は一体で形成することが好ましい。図3(b)に示すように、スペーサ50aは、リング部材22aを下から挟むように配置したV字ボルト60の先端のボルト部61、62を、底板部51に設けられたボルト穴51a、51bにそれぞれ挿通し、ナットで固定されて、リング部材22aに固定される。
図3(a)に示すように、スペーサ50aは、リング部材22aの上面のうち、腕部12とリング部材22aとの連結部材やボルト等の突起物(突起部分)を避けた平面上に配置する。この設置状態において、スペーサ50aは、その支持部52の上面52aが、リング部材22aの上面に存在する前記突起物の高さよりも高くなる寸法で構成されている。さらに、支持部52は、底板部51から突出するボルト部61、62よりも高くなるように形成されている。
スペーサ50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g、50h、50iは、それぞれの上面52aによって、レール部材を載置する平面を形成する。
【0024】
図5(a)に示すように、レール部材70aは、リング部材22aの円弧に合わせた円弧形状で構成されている。レール部材70aは、水平方向に延びてスペーサ50aの上面52a上に配置される設置平面を形成するレール基部71と、レール基部71から鉛直上向きに延び、移動補助部材80(図6(b))によってパラボラアンテナユニット32が係合するアンテナ支持部72と、を備える。レール部材70aは、レール基部71をスペーサ50aの上面52a上に配置した状態で、レール基部71に設けられたボルト穴71a、71bとスペーサ50aのボルト穴53a、53bとをそれぞれ位置合わせしてボルト74、74を挿通し、ナットによって固定されて、スペーサ50aに固定される。レール部材70aは、スペーサ50aと同様にして、スペーサ50b、スペーサ50cにも固定される。
レール部材70aは、リング部材22aにおいてパラボラアンテナユニット32を取り付けた設置位置(第1位置)P1から、パラボラアンテナユニット32を取り外す取り外し位置(第2位置)P2に至る、リング部材22aの周方向に沿った円弧部分上に固定する。ここで、設置位置(第1位置)P1及び取り外し位置(第2位置)P2は、それぞれ、リング部材22a上の所定の方位の位置であるとともに、これに対応するレール部材70a上の位置である。
図6(a)に示すように、レール部材70a、70b、70c、70d(分割レール)は、リング部材22aの周方向に沿って順に配置されており、第1位置から第2位置に至るまで、リング部材22aの周方向に沿った一連の円弧形状を形成している。これにより、レール部材70a、70b、70c、70dの各アンテナ支持部72が一連の円弧形状のレールとなり、後述するようにパラボラアンテナユニット32を第1位置から第2位置まで案内することが可能となる。レール部材は、設置位置(第1位置)P1から取り外し位置(第2位置)P2に至るまでの必要な長さ分のみの分割レールを地上から運び上げればよく、また、複数の分割レールとして構成することにより鉄塔という高所への運び上げ及び固定作業の容易化を図ることが可能である。
なお、図5(a)及び図6(a)に示すように、レール部材70a、70b、70c、70d(分割レール)は、それぞれ異なる長さで構成してもよいし、総て同じ長さで構成してもよい。レール部材は、複数のスペーサ間を掛け渡すように配置する以外にも、1つのスペーサ上に1つ配置するようにしてもよい。
【0025】
(3)移動補助部材取り付け工程
この工程では、レール部材の設置工程に引き続いて、ワイヤ38によってリング部材22aから吊り上げられた状態のパラボラアンテナユニット32に対して、移動補助部材80を取り付ける。移動補助部材80は、パラボラアンテナユニット32に固定され、パラボラアンテナユニット32をレール部材(70a乃至70d)に係合可能とするものである。
図7(a)に示すように、摺動プレート81は、板状部材であり、アンテナ支持部72の上端面と接触する下側端面81aを有する。下側端面81aは、アンテナ支持部72との接触面積を減らすような曲面形状を備える。この曲面形状としては、例えば、アンテナ支持部72と点又は小さな面で接触するような半球面形状、アンテナ支持部72と線で接触するような円弧形状を採用可能である。
図7(b)に示すように、押さえプレート82は、略長方形の平面形状の板状部材であり、その上下方向の長さは、摺動プレート81よりも長くなっている。
【0026】
図8(b)に示すように、摺動プレート81及び押さえプレート82は、架台32bの裏側32c(パラボラアンテナユニット32の裏側)の上部に対して、摺動プレート81、押さえプレート82の順に配置した状態で、架台32bの裏側32cに設けられたボルト穴32d、32dと、摺動プレート81のボルト穴81b、81cと、押さえプレート82のボルト穴82b、82cと、をそれぞれ位置合わせしてボルト92、92を挿通し、ナットによって固定されて、架台32bに対して固定される。このボルト穴32dは、上述の通り、パラボラアンテナユニット32をリング部材22aに設置するためのV字ボルト41を挿通するボルト穴である(図2(b)参照)。このように、ボルト穴32d、32dを用いることによって、新たなボルト穴を設ける必要がなく、移動補助部材80の取り付け作業の容易化を図ることが可能である。ここで、摺動プレート81及び押さえプレート82は、図6(b)及び図8(b)の紙面に対して垂直方向に2組設けられ(第1移動補助部材、第2移動補助部材)、それぞれ架台32bの裏側32cの上部(ボルト穴32d、32d)に固定されている。
【0027】
摺動プレート81の下側端面81aの下方には、摺動プレート81と押さえプレート82の側面の面積の違いにより、架台32bと押さえプレート82の下部82aとで挟まれた空間93が形成される(図8(b)参照)。この空間93内にレール部材70aのアンテナ支持部72を入れると、レール部材70aのアンテナ支持部72の上端面と摺動プレート81の下側端面81aとが接触した状態で、パラボラアンテナユニット32がレール部材70aに係合される。パラボラアンテナユニット32は、作業員によって手押しされると、摺動プレート81の下側端面81aがアンテナ支持部72の上端面で摺動しつつ、設置位置(第1位置)P1から取り外し位置(第2位置)P2までレール部材70a、70b、70c、70d(分割レール)に案内されて、リング部材22aに沿って移動することが可能となる。
ここで、摺動プレート81及び押さえプレート82の厚み、高さなどの形状は、パラボラアンテナユニット32の移動が確実かつスムーズに行うことのできる形状であれば任意に設計可能である。
【0028】
(4)アンテナ移動工程
上述の通り、移動補助部材取り付け工程で取り付けた移動補助部材80をレール部材70aに係止しつつ、図6(a)の矢印方向に、パラボラアンテナユニット32が作業員により手押しされると、パラボラアンテナユニット32は、レール部材70a、70b、70c、70dによって順次案内されて、設置位置P1から取り外し位置P2まで移動する。ここで、摺動プレート81の下側端面81aの形状をアンテナ支持部72との接触面積を減らすような形状としているため、摺動時の摩擦抵抗が小さくなっており、これによりパラボラアンテナユニット32を人力による移動が可能かつ容易になっている。また、アンテナ支持部72の上端面と摺動プレート81の下側端面81aとの間に、潤滑油等の摩擦抵抗を低減する物質を塗布しながら、アンテナユニット32を移動させると、より移動作業が容易になる。また、移動にあたっては、パラボラアンテナユニット32(特に架台32c)及び第2リング22に、落下防止のためのワイヤ等を掛け渡し、そのワイヤ等を付け替えて、移動補助部材80とレール部材70aの係合を補助することが好ましい。
【0029】
(5)アンテナ吊り降ろし工程
図9は、パラボラアンテナユニット32を地上へ吊り降ろす状態を示す斜視図である。アンテナ吊り降ろし工程では、アンテナ移動工程で取り外し位置(第2位置)P2まで移動したパラボラアンテナユニット32を、鉄塔10に設けた台棒101bで吊り上げて、移動補助部材80とレール部材70aの係合を解除した後に、第2リング22のリング部材22b等に取り付けられた金車105に通されたメインワイヤ(ウインチワイヤ)102に吊り替えて、メインワイヤ102を駆動しつつパラボラアンテナユニット32を所定の経路で地上まで吊り降ろす。メインワイヤ102は、パラボラアンテナユニット32の略中央を支持する。メインワイヤ102のほか、パラボラアンテナユニット32は、ガイドワイヤ103、104によって左右端を支持されている。ガイドワイヤ103、104を用いることにより、メインワイヤ102による吊り降ろし中にパラボラアンテナユニット32が回転、振動して鉄塔10やほかのパラボラアンテナユニット等に接触することを防止することができる。
【0030】
以下に変形例について説明する。
上述の実施形態においては、スペーサ50aを、リング部材22aの上面のうち、ボルト等の突起物のない平面上に配置していたが、本発明は特にこれに限定されない。スペーサ50aの底面形状をその突起物の形状に対応させて形成し、リング部材22aの上面の突起物がある部位に固定するように設けても良い。この場合もスペーサの上面によってレール部材を載置する平面を形成する。
【0031】
上述の説明では、パラボラアンテナユニットの設置位置を第1位置、取り外し位置を第2位置としたが、第1位置及び第2位置はこれ以外の設定としてもよい。本発明は、例えば、同一リング上においてパラボラアンテナユニットの設置方位を変更したい場合にも有用であり、リングに沿ってパラボラアンテナユニットを容易に移動できるため、設置方位の変更を容易かつ正確に行うことができる。
【0032】
上述の実施形態では、スペーサ及びレール部材の設置の後に、移動補助部材の取り付けを行うこととしていたが、移動補助部材の取り付けを先に行っても良いし、これらを並行して行っても良い
【0033】
摺動プレート81と押さえプレート82とは一体で形成してもよい
また、摺動プレート81とアンテナ支持部72の関係は、パラボラアンテナユニットの移動時の抵抗を減らすことができれば、上述の例に限定されない。例えば、アンテナ支持部72の上端面と摺動プレート81の下側端面81aの間に金属製の球を多数配置すると、球の回動によってスムーズにパラボラアンテナユニットを移動させることが可能となる。
【0034】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係るアンテナ移動装置及びアンテナ移動方法は、移動経路が限定されているパラボラアンテナユニットの取り付け及び取り外し作業に有用である。
【符号の説明】
【0036】
10 鉄塔
21 第1リング
22 第2リング
22a、22b リング部材
23 第3リング
24 第4リング
31、32、33、34、35、36、37 パラボラアンテナユニット
32c 裏側
32d、32e、32f、32g ボルト穴
41、42、60 V字ボルト
50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g、50h、50i スペーサ
52a 上面
70a、70b、70c、70d レール部材
71 レール基部
72 アンテナ支持部
80 移動補助部材
81 摺動プレート
82 押さえプレート
93 空間
100 アンテナ移動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9