特許第6163406号(P6163406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163406
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】床面ワックス塗布装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 11/16 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   A47L11/16
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-225215(P2013-225215)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-84899(P2015-84899A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596066105
【氏名又は名称】サマンサジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大村 等
(72)【発明者】
【氏名】小野 英輔
(72)【発明者】
【氏名】小野 眞嗣
(72)【発明者】
【氏名】守政 和浩
(72)【発明者】
【氏名】能登 寿欣
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−000505(JP,A)
【文献】 特開昭59−101127(JP,A)
【文献】 特開平07−299017(JP,A)
【文献】 特開2012−130582(JP,A)
【文献】 特開昭62−231614(JP,A)
【文献】 特許第081078(JP,C2)
【文献】 実開平05−005058(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂設された回転主軸(37)の下部の水平方向に、4本(複数)のアーム(36)を放射状に取着し、かつ同アーム(36)の各先端にワックス塗布具(30)回転(自転)自在に4台を配設してなり、
そして前記ワックス塗布具(30)の1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を正回転の方向に伝達するAの回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の下部に具備された従歯車(41)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなるAの回転力伝達機構によって正回転の方向に自転するように構成し、
さらに、前記ワックス塗布具(30)の残りの1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を逆回転の方向に伝達するBの回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の下部に具備された従歯車(41)と、前記主歯車(40)と従歯車(41)の間に介設されたアイドラー歯車(50)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなるBの回転力伝達機構によって逆回転の方向に回転(自転)するように構成してなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
【請求項2】
垂設された回転主軸(37)の下部の水平方向に、4本(複数)のアーム(36)を放射状に取着し、かつ同アーム(36)の各先端にワックス塗布具(30)回転(自転)自在に4台を配設してなり、
そして前記ワックス塗布具(30)の1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を正回転の方向に伝達する第1の回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の上部に具備された従歯車(41)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなる第1の回転力伝達機構によって正回転の方向に回転(自転)するように構成し、
さらに、前記ワックス塗布具(30)の残りの1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を逆回転の方向に伝達する第2の回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の上部に具備された従歯車(41)と、前記主歯車(40)と従歯車(41)の間に介設されたアイドラー歯車(50)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなる第2の回転力伝達機構によって逆回転の方向に回転(自転)するように構成してなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
【請求項3】
前記プーリが平ベルトプーリ又は歯付きプーリであり、それに対応して平ベルト又は両面歯付きベルトを使用してなることを特徴とする請求項1に記載の床面ワックス塗布装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転力伝達機構における主プーリ、従プーリ、ベルトに替えて、主スプロケット、従スプロケット、スプロケットチェーンを設けてなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
【請求項5】
前記回転力伝達機構が、前記垂設された回転主軸に締結した傘歯車とこれに直交する複数の傘歯車を各ワックス塗布具の回転主軸方向に噛み合わせるとともに、該複数の傘歯車にシャフトを締結し、該シャフトの他端にはワックス塗布具の回転主軸に直交する傘歯車と、これと直交する対の傘歯車を噛み合わせて、前記垂設された回転主軸の回転力をワックス塗布具に伝達するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の床面ワックス塗布装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の床面ワックス塗布装置が、床面を走行する電動台車の後部に搭載されてなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
【請求項7】
床面を走行する電動台車の後部に搭載された床面ワックス塗布装置の複数のワックス塗布具が回転主軸周りを回転することによって得られるワックス塗布領域幅が、前記電動台車の左右の車輪間の車輪幅より大きくなるよう構成したことを特徴とする請求項6に記載の床面ワックス塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面を走行する電動台車に搭載する床面ワックス塗布装置に係わり、特に複数のワックス塗付具を垂設した回転主軸の下部の水平方向に同回転主軸の周りを回転するように放射状に配設し、かつ前記ワックス塗付具がそれぞれ自転するよう構成してなる床面ワックス塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
床面にワックス液を塗布する作業は、従来からワックス液の入った容器にモップのような拭布を浸した後、該拭布を前後左右に動かして床面にワックス液を塗り広げる方法が行われてきた。
しかし、このような手作業によるワックス塗付は手間暇かかり、作業者の技量によって出来映えに差が生じるとともに、拭布を動かすことによる肉体的な負担が大きいという問題があった。
【0003】
この拭布を用いて手作業で行うワックス塗布に替わるワックス塗布方法として、電動モータの動力を利用して床面上を移動しながら床面にワックス等の床コート剤を塗布する走行式塗布装置や塗布方法がこれまでにも幾つか提案されてきた。
例えば、実開平5−80452号公報には「操作ハンドルを作業者が手で押して走行させながらパッド(バフ)をモータで高速回転して床面の艶出しを行う床面艶出機(ポリッシャー)を用いて、ワックスを塗付しながらパッドで床面を磨くように工夫されたワックス塗付機能を備えた床面艶出機」(特許文献1)が開示されている。
また、特開平3−101869号公報には、「コーティング剤溶液を床面に塗布する塗布具を移動機体に取り付けた床コーティング剤塗布機であって、前記塗布具を上下に震動させながら床面に沿わせて回動運動させる塗布具駆動機構を設けてある床コーティング剤塗布機」(特許文献2)が開示され、さらに特開2009−045171号公報には、「ワックス液を床面に供給塗布するためのワックス供給塗布装置の塗布面が連続気孔を備えた円筒形状の多孔質樹脂体のロールで構成されてなる走行式ワックス塗布乾燥装置」(特許文献3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−80452号公報
【特許文献2】特開平3−101869号公報
【特許文献3】特開2009−045171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明は、現在多用されている床面の艶出機(ポリッシャー)を利用したもので、高速回転する円形の塗付パッドの前に設けたワックスローラーにワックスを含浸させ、このワックスローラーによって床面にワックスを塗付するものである。
しかし、ローラーを塗付具として用いる場合には、ローラーの両端部にワックスが過剰に塗付され、ローラー幅の全域にわたっての均一な塗付が困難であり、繰り返しワックスを塗り重ねていく場合には、ローラーの両端部における塗付量が過多となり、ワックス塗布の仕上がり外観を損なうという課題があった。
【0006】
特許文献2に開示された発明は、床面を摺擦しながらワックスを塗布するものであり、床面に落下していた塵埃が塗布具に付着すると、それ以降ワックス塗布装置の進行方向に沿って筋状の塗布傷が生じ、良好な仕上がり面が得られなくなるという問題があった。
【0007】
特許文献3に開示された発明は、連続気孔を備えた円筒形状の多孔質樹脂体を塗付ロールとしたものであり、かつ装置の進行速度より塗付ロールの回転速度を速くして床面を摺擦することにより、樹脂ロールの欠点であったロール回転中の空気巻き込みによって塗付膜に気泡が混入するいう課題は解決されたものの、ローラー方式の欠点であるローラー両端部のワックス塗付量過多という問題を完全に解決するには至っていない。
【0008】
したがって、本発明の課題は、従来の走行式ワックス塗付装置の課題に鑑み、効率よく塗布領域の全幅にわたりワックスを平滑、均一に塗付できる走行式ワックス塗付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を、下記の手段により解決した。
(1)垂設された回転主軸(37)の下部の水平方向に、4本(複数)のアーム(36)を放射状に取着し、かつ同アーム(36)の各先端にワックス塗布具(30)回転(自転)自在に4台を配設してなり、
そして前記ワックス塗布具(30)の1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を正回転の方向に伝達するAの回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の下部に具備された従歯車(41)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなるAの回転力伝達機構によって正回転の方向に自転するように構成し、
さらに、前記ワックス塗布具(30)の残りの1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を逆回転の方向に伝達するBの回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の下部に具備された従歯車(41)と、前記主歯車(40)と従歯車(41)の間に介設されたアイドラー歯車(50)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなるBの回転力伝達機構によって逆回転の方向に回転(自転)するように構成してなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
【0010】
(2)垂設された回転主軸(37)の下部の水平方向に、4本(複数)のアーム(36)を放射状に取着し、かつ同アーム(36)の各先端にワックス塗布具(30)回転(自転)自在に4台を配設してなり、
そして前記ワックス塗布具(30)の1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を正回転の方向に伝達する第1の回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の上部に具備された従歯車(41)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなる第1の回転力伝達機構によって正回転の方向に回転(自転)するように構成し、
さらに、前記ワックス塗布具(30)の残りの1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を逆回転の方向に伝達する第2の回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の上部に具備された従歯車(41)と、前記主歯車(40)と従歯車(41)の間に介設されたアイドラー歯車(50)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなる第2の回転力伝達機構によって逆回転の方向に回転(自転)するように構成してなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
(3)前記プーリが平ベルトプーリ又は歯付きプーリであり、それに対応して平ベルト又は両面歯付きベルトを使用してなることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の床面ワックス塗布装置。
【0011】
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の回転力伝達機構における主プーリ、従プーリ、ベルトに替えて、主スプロケット、従スプロケット、スプロケットチェーンを設けてなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
【0012】
(5)前記回転力伝達機構が、前記垂設された回転主軸に締結した傘歯車とこれに直交する複数の傘歯車を各ワックス塗布具の回転主軸方向に噛み合わせるとともに、該複数の傘歯車にシャフトを締結し、該シャフトの他端にはワックス塗布具の回転主軸に直交する傘歯車と、これと直交する対の傘歯車を噛み合わせて、前記垂設された回転主軸の回転力をワックス塗布具に伝達するものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の床面ワックス塗布装置。
【0013】
(6) 前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の床面ワックス塗布装置が、床面を走行する電動台車の後部に搭載されてなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。
(7) 床面を走行する電動台車の後部に搭載された床面ワックス塗布装置の複数のワックス塗布具が回転主軸周りを回転することによって得られるワックス塗布領域幅が、前記電動台車の左右の車輪間の車輪幅より大きくなるよう構成したことを特徴とする(6)に記載の床面ワックス塗布装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床面ワックス塗布装置により、以下のような効果が得られる。
〈1〉本床面ワックス塗布装置が、垂設された回転主軸の下部の水平方向に、同回転主軸の周りを回転する4台のワックス塗布具を放射状に配設してなり、かつ前記4台のワックス塗布具は、その1ないし3台は正方向へ回転し、残りの1ないし3台は逆方向へ回転するように構成しているので、従来の走行式塗付装置に比べ、塗付幅全面にわたり塗付むらのない均質な仕上がりのワックス塗付が可能となる。
【0015】
〈2〉床面を走行する電動台車の後部に搭載された床面ワックス塗布装置の複数のワックス塗布具が回転主軸周りを回転することによって得られるワックス塗布径が、前記電動台車の左右の車輪間の車輪幅より大きくなるよう構成したので、床面にワックスを重ね塗りする際、床面に前記電動台車の轍跡を残すことなく塗付幅全面にわたり塗付むらのない均質な仕上がりのワックス塗付面が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に関連する参考例の床面ワックス塗布装置を床面を走行する電動台車に搭載した状態を側面から見た構成図
図2】本発明に関連する参考例の床面ワックス塗布装置を床面を走行する電動台車に搭載した状態を後部から見た構成図
図3図1図2示した床面ワックス塗付装置の詳細な構成図
図4】ワックス塗布具を3個備えた床面ワックス塗付装置の回転力伝達機構の一参考例の構成図
図5】ワックス塗布具を3個備えた床面ワックス塗付装置の回転力伝達機構の他の参考例の構成図
図6本発明のワックス塗布具を4個備え回転力伝達機構にアイドラー歯車を加えた床面ワックス塗付装置の構成図
図7図6に示す床面ワックス塗付装置の回転力伝達機構の構成図
図8】回転力伝達機構が、アームを回転主軸に締結、固定し主歯車を回転主軸に回転自在とした床面ワックス塗付装置の構成図
図9】垂設された回転主軸の回転数とワックス塗布具の回転数を個別に制御する床面ワックス塗布装置の構成図
図10】本発明の床面ワックス塗布装置のワックス塗付領域を示した図
図11図10に示すワックス塗布領域両端部の不塗布部幅の計算式の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
参考例及び本発明のワックス塗布装置の実施の形態を実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明に関連する参考例の床面ワックス塗布装置を床面を走行する電動台車に搭載した状態を側面から見た構成図、図2は本発明に関連する参考例の床面ワックス塗布装置を床面を走行する電動台車に搭載した状態を後部から見た構成図であり、図3図1図2示した床面ワックス塗付装置の拡大構成図、図4はワックス塗布具を3個備えた床面ワックス塗付装置の回転力伝達機構の一参考例の構成図、図5はワックス塗布具を3個備えた床面ワックス塗付装置の回転力伝達機構の他の参考例の構成図である。
そして図6本発明実施例1のワックス塗布具を4個備え回転力伝達機構にアイドラー歯車を加えた床面ワックス塗付装置の構成図、図7図6に示す床面ワックス塗付装置の回転力伝達機構の構成図であり、図8本発明実施例2の、回転力伝達機構が、アームを回転主軸に締結、固定し主歯車を回転主軸に回転自在とした床面ワックス塗付装置の構成図、図9は回転主軸の回転数と回転主軸の回転数を個別に制御する参考例の床面ワックス塗付装置の断面構成図である。
また図10は本発明の床面ワックス塗布装置のワックス塗付領域を示した図であり、図11は、図10に示すワックス塗布領域両端部の不塗布部幅の計算式の説明図である。
なお、図1図2、及び図3のワックス塗布装置は、図面を簡潔にするため、ワックス塗布具を4個備えその2個同士が側面及び後方から見て重なり合って見える位置にある場合の状態を示したものである。
【0018】
本発明に関連する参考例の床面ワックス塗布装置は、図1に見られるように床面を走行する電動台車の後部に搭載されるので、まずは前記電動台車と、床面ワックス塗布装置の台車への搭載機構について図1図2に基づいてその概要を説明する。
前記電動台車は、図1に示すように電動台車の走行運転を司る走行運転機構Aと前記床面ワックス装置を懸架したワックス塗布機構Bとで構成されている。
図1において、1は電動台車、ワックス塗布機構B内に点線で囲んで示した2はワックス塗布装置、3はワックス塗布装置を昇降させる電動アクチュエータ、4はワックスタンク、5はワックス供給ポンプ、6は電磁開閉弁、そして7はワックス乾燥用ブロワー、8は乾燥用スリットノズルである。
走行運転機構A内の13は前輪(駆動輪)、14は走行用駆動モータ、15は操作ハンドル、16は減速機、17はステアリング系統(シャフト、交差歯車、平歯車、スプロケット)、18はギアボックス、19は後輪(従輪)、20はバッテリー、21は制御装置部、22は運転操作パネル部である。
前記床面ワックス塗付装置2は、図2に示すように、電動モータ45を搭載した円形基板46の両側に取り付けたヒンジ10を介して懸垂ブラケット9と連結され、さらに前記懸垂ブラケット9を2つの電動アクチュエータ3のロッドにコイルスプリング12によって連結され、前記電動台車1に装着されている。したがって、ワックス塗布装置2は電動アクチュエータ3のロッドの移動によってリニアガイド11に沿って昇降させることができ、ワックス塗布時にはワックス塗布装置2を床面に圧接し、移動時にはワックス塗布装置2を床面から引き上げて走行可能になっている。また、床面ワックス塗布装置2がコイルスプリング12を介してを懸垂されているので、電動アクチュエータ3のロッドの伸縮量によってワックス塗布装置2の床面への押しつけ力を加減できるとともに、床面の凹凸の変動による衝撃を緩和させる作用も備えている。
また図2に示すように、ワックス塗布具30の垂設された回転主軸周りの回転径が、電動台車1の左右の後輪19間の幅より大きく採られており、ワックスを重ね塗りする際、先行する電動台車1の前輪13と後輪19が着けた轍を、後続するワックス塗布具30によって消し去り、均質なワックス塗布面が得られるように配慮してある。
以下に図1及び図2に点線で囲んだ床面ワックス塗布装置2の構造と作用についていくつかの参考例を示し詳細に説明する。
【参考例1】
【0019】
図3は回転するワックス塗布具を3個を備えた床面ワックス塗布装置2を電動台車1の後部から見た構成図であり、図4図3に示す床面ワックス塗布装置の回転力伝達機構の一参考例の構成図である。
図3図4において、30はワックス塗布具、31aはワックス塗布部材、31bはワックス塗布部材31aを回転基盤32に取り付けるブラケット盤、33はワックス塗布具30を支持回転させる回転軸であって中心にはワックス液を流下させる導出孔34が穿設されており、前記導出孔34を流下したワックス液は先端に設けられたニードルノズル35から床面に滴下される。
そして36は垂設された回転主軸37の周りにワックス塗布具30の回転軸33を放射状に配設するためのアーム(図4参照)であって、垂設された回転主軸37に装着された転がり軸受38によって前記回転主軸37に対し自在に回転するよう構成されている。また、39は前記アーム36の中間部に設けられた中間軸であり、該中間軸39には回転主軸37に取り付けられた主歯車40と噛み合う従歯車41と、前記ワックス塗布具30の回転軸33に取り付けた従プーリ43とベルト44を介して連結する主プーリ42が設けられている。
【0020】
また45は床面ワックス塗布装置2の基板46に取り付けられ、回転主軸37を回転させる中空軸型の電動モータ、47は図1に示したワックス供給ポンプ5に接続されたチューブ48を介して回転主軸37の上端にワックス液を該回転主軸37に貫通されたワックスの導出孔34に流入させるための回転継手、及び回転主軸37内を流下したワックス液をワックス分配器49及びチューブ48を介して各ワックス塗布具30の回転軸33に貫通した導出孔34に供給する回転継手である。
前記ワックス分配器49は上蓋と下蓋とからなり、上蓋と下蓋はOリングを挟んでボルトで締結される。上蓋には回転継手49と接続するネジが切られ、次いで孔が穿かれている。下蓋には液溜の空間部とその周囲には3方向に孔が穿かれ、継手とジョイントできるようねじ切りしてある。ワックス液は該分配器49から3方向へチューブ48を介して各ワックス塗布具30の回転軸33に供給される。チューブ48には各ワックス塗付具30への流量を調整できるボールバルブ等の開閉弁が取り付けられている。
【0021】
図3図4に示したワックス塗布具30を3個備えた床面ワックス塗布装置2の実施の形態、作用を以下に詳述する。
垂設された回転主軸37を回転させる電動モータ45には、中空軸の出力200W、ギア比30のDCギアードモータを用い、これを床面ワックス塗布装置2の円形の基板46に取り付け、次いで前記電動モータ45の中空軸部に内径6mmのワックス液を流下させる導出孔34を貫通させた回転主軸37を挿入、その後回転主軸37に主歯車40を締結した。
またワックス塗付具30の回転軸33を支持する3本のアーム36を回転主軸37から120度間隔で放射状に、かつ回転主軸37からワックス塗付具30の回転軸33までの軸間距離を237.5mmとして配設した。
そして、前記3本のアーム36にはそれぞれ、中間部に回転主軸37の回転力をワックス塗布具30に伝達するための中間軸39を、また端部にはワックス塗付具30を保持、回転させる回転軸33を取り付け、前記中間軸39には前記回転主軸37に設けられた主歯車40と噛み合う従歯車41と、主プーリ42とを締結し、前記回転軸33には従プーリ43を締結し、下部にワックス塗付具30を装着する回転基盤32を固着した。
【0022】
ワックス塗付部材31aには、ビルメンテナンス用の床洗浄機に用いられるポリエステル繊維製の白パッドを裏地ベースとし、これに市販の拭布(商品名トレールパッド)を糊付けした直径15インチ(380mm)、厚さ30mmのものを使用し、これを面ファスナーでブラケット盤31bに接着した後、ワックス塗布具30の回転軸33に固着された回転基盤32にボルトで着脱可能に螺着した。
なお少し厚い拭布を用いる場合は、ブラケット盤31bに多数の穴を開け、拭布を紐で縫い付けて装着してもよい。
また、ワックス塗布部材31aは上記のように裏地ベースと拭布とを張り合わせた構成のものに限られることなく、例えば特許文献3に記載の多孔質PVA発泡樹脂や多孔質ウレタン発泡樹脂体単体をワックス塗布部材31aとしてもよい。
さらに、前記回転軸33の下部に設けたニードルノズル35から床面に直接ワックス液を滴下する方法に変えて、中央部を切り抜いたワックス塗付部材31aに微細な連続する空孔を有する多孔質発泡樹脂体を埋め込み、この多孔質発泡樹脂体に回転軸33の下端から直接ワックス液を供給する方法も本発明で好適に実施できる。ワックス液を含浸した前記発泡樹脂体からその外側の拭布にワックス液が浸展し、ニードルノズル35から床面に直接ワックス液を適下する場合と同等に床面への均質なワックス塗付が可能となる。
【0023】
上記拭布は材質を問わず不織布、織布の拭布のいずれであってもよい。また形状は円形が好適であるが、ワックス液を含浸して塗布することができるものであれば方形のものであってもよく、その形状に合わせて該ワックス塗布具30をブラケット盤31に取り付けられれば、参考例及び本発明の実施に適用できる。
【0024】
ワックス液のワックス塗付具30への供給は、図1に示したワックスタンク4からワックス供給ポンプ5、電磁開閉弁6及び図3に示すチューブ48を介して回転主軸37の中心部に貫通されたワックス液の導出孔34に送られ、次いで前記回転主軸37の下端に取り付けられたワックス分配器49によって3方向に均等に分配され、各ワックス塗布具30の回転軸33の上部に設けられた回転継手47へ送られ、前記回転軸33の中心に貫通された導出孔34を経て回転軸33の末端から床面へ適下されるので、3個のワックス塗布具30自体の回転(自転)と、3個のワックス塗布具30の回転主軸37周りの回転とによって、ワックス液は塗付領域の全域にわたって均等に分配される。
電動台車1に固定されたワックスタンク4から供給ポンプ5、電磁開閉弁6とチューブ48を介して回転主軸37の導出孔34へ、回転主軸37の下部に設けたワックス分配器49からチューブ48を通して回転軸33の導出孔へとワックス液を確実に供給できるよう、回転主軸37上部、回転主軸37とワックス分配器49との間、及び回転軸33の上部には回転継手47が装着されている。これによって、ワックス分配器49と回転軸33を結ぶチューブ48が床面ワックス塗布装置2の回転部分と絡むことなく、ワックス液をワックス塗付具30の下端から円滑かつ安定に床面に滴下させることができる。
【0025】
また、ワックス塗布具30、回転軸33、及び主従歯車40、41、主従プーリ42、43、ベルト44等の回転力伝達機構を取り付けたアーム36が、回転主軸37から放射状に取着されているので、ワックス分配器49と回転軸33の上端を結ぶチューブ48の取り付けの自由度が高められ、かつ装置の軽量化も図れるので好ましい。
なお、ワックスタンク4は常に床面より上部に配設されているため、ワックス作業停止時にもサイホン効果によってワックス液がワックス塗布具30の下端から床面へ落下するおそれがある。したがって、このサイホン効果によるワックス液の床面への滴下を防止するため、ワックス供給ポンプ5からチュ−ブ48までの間に電磁弁6を設けている。この電磁弁6はサイホン効果によるワックス液の滴下を防止できるものであればいずれのものも使用できる。
また、ワックス塗布作業を終え、次の塗布場所に移動する際にワックス塗布装置2がアクチュエータ3によって回転しながら引き上げられる時に数滴のワックス液が落下、飛散すると塗布済みの床面を汚すという問題が生じる。このため、本発明では上記のワックス塗布具30を取り付けた回転軸33の下端にニードルノズル35を装着することによりワックス液の落下、飛散を抑止している。試験の結果、ニードルノズル35の滴下口の径を0.2〜0.3mmにすれば、ニードルノズル35の先端部におけるワックス液の重力よりもその表面張力が優るので、ワックス液の落下、飛散を抑止できることが判明した。
【0026】
参考例の床面ワックス塗布装置2を電動アクチュエータ3のロッドを伸ばして床面に降ろし、ワックスを滴下しつつ電動モータ45で回転主軸37を回転させると回転力伝達機構により回転力がワックス塗付具30の回転軸33に伝わってワックス塗付具30が回転するとともに、床面と該ワックス塗付具30との間の摩擦による反動によって回転主軸37に転がり軸受38を介して装着されたアーム36がワックス塗布具30の回転方向とは逆方向に回転する。このように回転力伝達機構で回転主軸37と連結されたワックス塗付具30が回転(自転)するとともに、ワックス塗付具30を取り付けたアーム36を回転主軸37の周りに回転させることができる。
そしてこの際、ワックスを塗布する床面の状態によって、ワックス塗布具30の下面が床に接触する圧力を前記床面ワックス塗布装置2の自重によるか、又は前記アクチュエータ3のロッドの延伸による加圧によるかして適切に制御することができる。
床面上でワックス塗付具30が回転主軸37の回りを回転する回転数は、回転主軸37の回転数、ワックス塗付具30の回転数、床面とワックス塗付具30間の摩擦状態、ワックス塗付具30の床面への押し付け力に左右される。またワックス塗付具30自身の回転数とアーム36の回転主軸周りの回転数の比は、主歯車40と従歯車41、主プーリ41と従プーリ42のそれぞれの歯数比によって変えられるので、主従両歯車の歯数比、主従両プーリの歯数比を適宜選択して、回転主軸37の回転数とワックス塗布具30の回転数を異ならせることができる。
上記のように、アーム36の回転主軸周りの回転数とワックス塗付具30の回転数を異ならせるのは、アーム36の回転主軸周りの回転数とワックス塗付具30の回転数とが同一の場合には、アーム36から見ればワックス塗布具30は回転していないことになる。
すなわち、3個のワックス塗付具30はアーム36に固定された状態で回転主軸の周りを回転することになり、ワックス塗付具30が回転(自転)しながら回転主軸の周りを回転する二重回転機構によるワックス塗付性能の向上が得られなくなるからである。
【0027】
参考例1のワックス塗布装置2を搭載した走行式ワックス塗布装置1による床面へのワックス塗付実験を行った。実験は、電動モータ45の回転数を60〜120rpm、床面ワックス塗布装置2の床面への押し付け力を10〜25kgf、ワックス塗付量を5〜10g/m2に設定し、走行式ワックス塗布装置1の走行速度1〜2km/hの範囲でプラスティックタイル(Pタイル)の床面にワックスを塗付することで行った。
なお、ワックスにはアクリルウレタン共重合樹脂系の市販品(リンレイ社、商品名パーモR−1)を用いた。
その結果、
1.塗付全面にわたりワックスが均質かつ均等の厚さに塗付できた。
2.塗付進行方向の左右の端部が塗付過多とならず、幾重にも重ね塗りしても、当該端部の境界が識別できない程度に均一にワックスが塗付できた。
【0028】
上記のように、従来提案された床面ワックス塗布装置に比較して、優れた塗付性能が得られたのは、垂設された回転主軸37の下部の水平方向に、同回転主軸37の周りを回転する複数のワックス塗布具30を放射状に配設し、かつ前記複数のワックス塗布具30をそれぞれ自転するように構成したことと、ワックス液をワックス塗付部材31aの中心から滴下させたことにある。すなわち、いま仮に塗布領域幅に対応する径を有する一つのワックス塗布具を回転させて床面にワックスを塗布したとすると、ワックス塗布具の回転軸やワックス塗布具自体のバランス不良による回転ぶれによって塗布領域全幅を均一な塗布面に仕上げることは難しいが、本参考例では複数のワックス塗布具30を自転と回転主軸37周りの回転によって、個々のワックス塗布具30の回転ぶれをそれぞれが打ち消しあって塗布の均一性を高め、また床面の凹凸に対する追随性も向上し、より均質なワックス塗布効果が得られている。
また、ワックス液をワックス塗付部材31aの中心から滴下させることによってワックス液がワックス塗布部材31aの周囲に飛散することなく、ワックス塗付部材31aの全面に浸透させられるが、前記の塗布領域幅に対応する径を有する一つのワックス塗布具で床面にワックスを塗布する場合にあっては、中心から滴下するワックス液の量は必然的に多くなり、かつ、周辺部への均等な浸透も難しくなり、ワックス塗布具の中心部と周辺部でワックスの塗付量が異なり、塗りむらが生じることになる。
しかし、本参考例のワックス塗布装置2では、同一量のワックス液が複数のワックス塗付具30に分配され、またワックス塗付部材31aの径も前記塗布領域幅に対応する径を有するワックス塗布具に比べて小さいため周辺部へのワックス液の浸透が速やかに行われるとともに、各ワックス塗布部材31aごとにワックスの浸透速度、塗付量のばらつきがあっても、ワックス塗付具30の回転主軸37周りの回転によってこれを平準化する効果が得られる。また、前記放射状に配したアーム36の間にワックス分配器49で三方向に分岐されたチューブ48から床面に直接ワックス液を滴下しても本参考例の目的に適うが、上記のように、ワックス塗付具30の回転軸33下端からワックス液を滴下することがより好まししい。
【0029】
さらに、ワックス塗付具30の自転と回転主軸37周りの回転に加え、ワックス塗布装置2全体を懸垂する前記電動アクチュエータ3のロッドの伸長量によるワックス塗布具30の床面への押圧力を調整できることから均一なワックス塗付が得られるばかりでなく、床面に大きな凹凸があっても円滑な走行と塗付が可能になる。この際、コイルスプリング12の縮み代を測定することによりワックス塗布装置2の全重量からワックス塗布具30の床面への押圧力を算定できるので、使用する床面ワックス塗付装置2を取り換えるなどの作業条件が変わっても、目標とした適正な押圧力での塗布作業が実施できる。
【0030】
参考例1では、ワックス塗付具30が3個の場合について説明したが、ワックス塗布具30が、2個、5個、6個の場合にも適用して実施できる。
【参考例2】
【0031】
上記の参考例1では、垂設された回転主軸37の回転力をワックス塗付具30の回転軸33へ伝達する回転力伝達機構を主歯車40、従歯車41、主プーリ42、従プーリ43の2段構えの方式としたが、図6に示すように、回転主軸37に締結した主プーリ42と3個のワックス塗付具30の回転軸33に締結した従プーリ43との間を1本の両面歯付ベルト、平ベルト、あるいはスプロケットチェーン(図6参照、符号44で表示)のいすれかを架け渡すことによっても参考例1と同様に、ワックス塗付具30の自転と回転主軸周りの回転との2重回転が得られる。
【実施例1】
【0032】
本発明の実施例1として、回転主軸37を中心として放射状に90度間隔で4個のワックス塗布具30が配設された場合について説明する。図6は本実施例1のワックス塗布塗付装置2の電動台車1の後部から見た構成図、図7は該床面ワックス塗布装置2の回転力伝達機構の構成図を示したものである。
実施例1が前記参考例1と異なる点は、図7に見られるように、4つのアーム36のうち相対するいずれか2つのアーム36に取り付けられた2つのワックス塗布具30への回転力伝達機構の主歯車40と従歯車41との間にアイドラー歯車50が設けられていることにあり、その他の機構は参考例1のワックス塗布装置2と同一である。
本実施例では、このアイドラー歯車50を設けたことにより、アイドラー歯車50が組
み込まれた2つのワックス塗付具30と、組み込まれていない2つのワックス塗付具30との回転方向が逆となり、さらにワックス塗布具30の回転転速度も2つずつ異ならせることができる。そして参考例1と同様に回転するワックス塗付具30と床面との摩擦による反動によって垂設された回転主軸37の外周に設けられた転がり軸受38を介して配設されたアーム36を回転させることによって、4個のワックス塗布具を回転主軸37の周りに回転させている。
すなわち本実施例1の装置は、下記の床面ワックス塗布装置である。
「垂設された回転主軸(37)の下部の水平方向に、4本のアーム(36)を放射状に取着し、かつ同アーム(36)の各先端にワックス塗布具(30)を自転自在に4台を配設してなり、
そして前記ワックス塗布具(30)の1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を正回転の方向に伝達するAの回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の下部に具備された従歯車(41)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなるAの回転力伝達機構によって正回転の方向に自転するように構成し、
さらに、前記ワックス塗布具(30)の残りの1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を逆回転の方向に伝達するBの回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の下部に具備された従歯車(41)と、前記主歯車(40)と従歯車(41)の間に介設されたアイドラー歯車(50)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなるBの回転力伝達機構によって逆回転の方向に回転(自転)するように構成してなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。」
本実施例のワックス塗布装置2によって参考例1と同様の床面の塗付を行ったが、本実施例のワックス塗布装置2は、参考例1のそれと比べて、ワックス塗付具30の数が増えたことから、ワックス塗付具30の単位床面積当たりの接触機会が増え、塗付のさらなる均一化が図られ、そして、電動台車1の進行方向の左右両側端に生じる塗装領域の波状軌跡のピッチ(図10参照)も狭くなり、塗付領域の端部がより直線に近づく結果を得た。
【実施例2】
【0033】
参考例1、2及び実施例1では、主歯車40を回転主軸37に締結、固定し、アーム36を前記回転主軸37の外周に転がり軸受38を介して装着することによってアーム36を自在に回転させているが、本実施例では、図8に示すように、アーム36を回転主軸37に締結、固定し、主歯車40を回転主軸に回転自在に装着している。
以下の床面ワックス塗布装置である。
「垂設された回転主軸(37)の下部の水平方向に、4本(複数)のアーム(36)を放射状に取着し、かつ同アーム(36)の各先端にワックス塗布具(30)を回転(自転)自在に4台を配設してなり、
そして前記ワックス塗布具(30)の1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を正回転の方向に伝達する第1の回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の上部に具備された従歯車(41)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなる第1の回転力伝達機構によって正回転の方向に回転(自転)するように構成し、
さらに、前記ワックス塗布具(30)の残りの1ないし3台は前記回転主軸(37)の回転力を逆回転の方向に伝達する第2の回転力伝達機構、
すなわち垂設された回転主軸(37)に設けた主歯車(40)と、前記アーム(36)の中間部に垂設された中間軸(39)の上部に具備された従歯車(41)と、前記主歯車(40)と従歯車(41)の間に介設されたアイドラー歯車(50)と、該中間軸(39)の下部に設けられた主プーリ(42)と、前記ワックス塗布具(30)を装着した回転軸(33)に設けられた従プーリ(43)と、前記主従両プーリ間を連結するベルト(44)とによって構成されてなる第2の回転力伝達機構によって逆回転の方向に回転(自転)するように構成してなることを特徴とする床面ワックス塗布装置。」
したがって電動モータ45を回転した場合、回転主軸37の回転によってアーム36が回転し始め、同時に従歯車41が基板46に固定された主歯車40の周りを回転する。従歯車41が回転すると従歯車41が締結された中間軸39が回転し、同時に該中間軸39に取り付けられた主プーリ42も回転する。主プーリ42が回転するとこれにベルト44で連結された従プーリ42と従プーリ42が締結されたワックス塗布具30の回転軸33が回転し、該回転軸33に締結されたワックス塗付具30も回転することになり、ワックス塗布具30の自転と回転主軸37周りの回転との二重回転が実現される。そしてその他の機構は、実施例のワックス塗布装置2と同一であるので、アイドラー歯車50を装着した側のワックス塗付具30とアイドラー歯車を装着しない側のワックス塗付具30の回転方向は逆向きになる。
この場合、回転数の差によって生じる反動による電動モータの負荷を抑えるため、4個のワックス塗付具30の床面での回転数がほぼ同じになるよう主歯車40、従歯車41、主プーリ42、従プーリの43歯数比を適宜選択することが好ましい。
【参考例3】
【0034】
参考例3は、上記参考例1、2及び実施例1が複数のワックス塗布具30の自転と床面との摩擦によって生じる反動を利用してワックス塗布具30を回転主軸37の周りに回転する二重回転機構とされていたのと異なり、ワックス塗布具30の回転とワックス塗布具30を装着したアーム36の回転主軸37周りの回転とを個別に制御できるワックス塗布装置2に関するもので、その構成を図9に示す。
【0035】
参考例3のワックス塗布装置2は、図9に見られるように、基板46に回転主軸37を回転させる電動モータ45と、アーム36を回転させる電動モータ45’を設け、前記アーム36を回転させる電動モータ45’に取り付けた平歯車52と回転主軸37に転がり軸受38を介して装着された平歯車53とが噛み合わされてなり、そして前記平歯車53は、これも回転主軸37に転がり軸受38を介して装着されたアーム36とボルトで締結され、回転主軸37に対して自在に回転する機構とされている。
さらにアーム36の下部には傘歯車54が取り付けられ、該傘歯車54と回転軸56が直交する傘歯車55が、回転主軸37の周りに4つのワックス塗布具30を配設するため、90度間隔で4個配設され、該4個の傘歯車55それぞれのシャフト59がアーム36に並行して転がり軸受38を組み込んだ2個のブラケット60によって支持懸垂されて延伸され、前記傘歯車56のシャフト59の先端には傘歯車56が、ワックス塗布具30を回転させる回転軸33には該傘歯車56と対をなす2つの傘歯車57、58が取り付けられている。
ワックス塗布具30を回転させる回転軸33に取り付けられた2つの傘歯車57、58
のうち、上側の傘歯車57は回転軸33に固定されているのに対し、下側の傘歯車58は回転軸33に転がり軸受38を介して回転自在に装着されている。逆に下側の傘歯車58を回転軸33に固定し上側の傘歯車を回転軸33に転がり軸受け33を介して回転時自在に装着すれば、ワックス塗布具30の回転方向を逆にすることができる。
なお、図9においては、ワックス液供給機構が、実施例1と同一であるのでその記載を省略した。
【0036】
参考例1、2及び実施例1に記載のワックス塗布装置2の場合は、ワックス塗付具30の床面への押圧力、回転主軸37周りの回転速度、各ワックス塗付具30の回転(自転)速度差によりワックス塗付具30と床面の摩擦による反動の力は左右され、回転主軸周りの回転速度を任意に制御するのは困難であるのに対し、本実施例5の場合は、回転主軸37の回転とワックス塗布具30の回転とを別々の電動モータ45、45’で行っているので、ワックス塗付具30の自転速度ならびに回転主軸周りの回転速度を任意に制御することができ、それぞれの塗布現場において最適な塗布条件の選択が可能になる。
【0037】
参考例3のワックス塗布装置2は、回転主軸37の周りに4つのワックス塗布具30を配設し、電動モータ45’の回転力を直交する傘歯車の組み合わせによってワックス塗布具30の回転軸33へ伝達しており、回転主軸37に対して点対称となる位置に配設された2つのワックス塗布具30の回転は互いに逆方向となり、4個の塗付具30の回転による床面との摩擦による反動は打ち消し合うことになる。
すなわちワックス塗付具30の自転のみでは、ワックス塗布具30を回転主軸37周りに回転させる力は生じないことになる。したがって、ワックス塗付具30の回転主軸37周りの回転は電動モータ45’の回転を平歯車52、53を経由してアームに36に伝達し、かつアーム36を回転主軸37に対して自在に回転可能に装着することにより、該アーム36に取り付けられたワックス塗付具30が回転主軸37の周りに回転する機構としている。
また、図9に示すワックス塗布装置構成から、電動モータ45’を除去し、かつアーム36の両端に垂設された回転軸33それぞれに装着される2つの傘歯車群の回転方向、回転数を異ならせれば、回転主軸37を回転させる電動モータ45一つてあってもワックス塗布具30の床面との摩擦の反動によって、ワックス塗布具30自身の回転と回転主軸37の周りを該ワックス塗布具30が回転する二重の回転得られる。
なお、本参考例3については、回転主軸から90°間隔で4方向にワックス塗付具30を配設した場合について説明したが、ワックス塗布具30を回転主軸27から120°間隔で3方向に、また72°間隔で5方向に配設することも可能である。
【0038】
本発明のワックス塗布装置2は、複数のワックス塗付具30が垂設された回転主軸37とワックス塗付具30の回転軸30との間の距離を半径として回転主軸周りに回転し、かつ該半径を中心として塗付具が自転しながら電動台車1の走行方向に移動する。したがって本発明のワックス塗布装置2によるワックス塗布領域の左右両端の軌跡は直線とはならず、図10に示すように、サイクロイド曲線を進行方向に圧縮してその頂点近傍部分を切断した形を連続させた波形を描く。
この軌跡のピッチ、山から谷までの幅は、ワックス塗付具30の個数、ワックス塗布具30の回転主軸周りの回転数、回転主軸周りを回転するワックス塗布具30が描く軌跡の半径、電動台車1の走行速度によって左右される。そしてこの塗付されない部分の幅dが小さいほど、床面へのワックス塗付作業が効率的に行えることになる。
ワックスが塗布されない部分の幅dは、ワックスの塗布速度V(km/h)、ワックス
塗布具30の回転主軸周りの回転速度R(rpm)、ワックス塗布具30端部の回転主軸周りの回転軌跡の半径r、ワックス塗布具30の個数Sとから算定できる。
図11に示すように、複数のワックス塗付具30が回転主軸37の周りを回転する場合に、先行のワックス塗付具30aの自転の中心とワックス塗布具30端部の回転主軸周りの回転軌跡の中心とを結ぶ線が電動台車1の進行方向に対して直交する位置にきたとき、ワックス塗布幅が最も広くなり、その後電動台車1が距離x移動し後続のワックス塗付具30bの自転の中心と前記ワックス塗布具30端部の回転主軸周りの回転軌跡の中心とを結ぶ線が電動台車1の進行方向に対して直交する位置にきたとき、ワックス塗布幅は再び最も広くなる。したがって移動距離xの中間点においてワックス塗布幅が最も狭くなり、その位置は、距離x離れた位置における2つのワックス塗布具30端部の回転主軸周りの回転軌跡の交点Qとなる。
いまワックス塗布具30の端部の回転主軸周りの回転軌跡半径をrとし、前記交点Qから2つのワックス塗布具30a、30b端部の回転主軸周りの回転軌跡の中心O、O’を結ぶ線までの垂線の長さをy、ワックス塗布具30端部の回転主軸周りの回転軌跡の中心Oと前記交点Qを結ぶ線と前記垂線yとのなす角をθとすると、前記ワックス塗布幅の最も広くなる点(山)と最も狭くなる点(谷)との塗布幅の差、すなわちワックスが塗布されない部分の幅dは
d=r−y ………………………………(1)
y=rcosθ ……………………………(2)
θ=sin-1{(x/2)/A}…………(3)
で与えられる。
【0039】
一方、電動台車1の走行速度をV(km/h)とすると、1秒当りの移動距離(速さ)は
10000/36×V(mm)となる。
また、ワックス塗布具30の回転主軸周りの回転速度をR(rpm)、ワックス塗付具30の個数をSとした場合、隣り合うワックス塗付具30a、30bが回転主軸37の中心となす角度は360/S(度)となり、先行のワックス塗布具30aが頂点を離れ、後続のワックス塗布具30bが頂点にくるまでの時間t(秒)は、1秒間の回転数R/60で移動角度360/S度を割った値、
t=(360/S)÷(R/60)
となる。
そして、時間tの間に走行式ワックス塗布装置1が走行する距離xは、
x=(360/S)÷(R/60)×10000/36×V(mm)
=6×107×V/SR ……………………………(4)
となる。
したがって、上記(1)〜(4)式に、ワックス塗布具30の個数S、ワックス塗布具
30の回転主軸周りのに回転軌跡の半径r、ワックス塗布具30の回転主軸周りの回転速度R、及び走行式ワックス塗布装置1の走行速度Vの値を与えれば、ワックスが塗布されない部分の幅dが求められる。
【0040】
いま、ワックス塗布具30端部の回転主軸周りの回転軌跡の半径がrのワックス塗布具によってワックスが塗布されない部分の幅がdである床面へのワックス塗布を行おうとすると、式(3)からxが一定でなければならないという条件が導かれる。そしてそのxは式(4)で定義されるものであるから、x一定の条件にあっては電動台車1の走行速度Vと、ワックス塗布具30の回転主軸周りの回転速度Rとは比例関係にあり、ワックス塗布具の回転主軸周りの回転速度Rとワックス塗布具の数Sとは反比例の関係にあることが理解できる。
電動台車1にワックス塗布装置2を搭載しての室内におけるワックス塗付は、一般的に直線での塗布作業距離は短く、折り返し作業の頻度が非常に高いので、走行速度Vを減じての作業が多い。したがって、本発明のワックス塗布装置を搭載する電動台車1においては、ワックス塗布具の回転主軸周りの回転数Rを電動台車1の走行速度Vに比例して減速するよう電動モータ45への供給電圧を下げるよう制御して、ワックスが塗布されない部分の幅dを所定値としてワックスの床面への均一な塗付を効率よく実施するとともに、電動モータ45へのバッテリ14からの電力供給量を抑え、より広い面積のワックス塗布作業が行えるよう配慮している。
【0041】
ワックスが塗付できない部分の走行方向の長さも、電動台車の走行速度V、ワックス塗布具の数S、ワックス塗布具の回転主軸周りの回転速度R、ワックス塗布具端部の回転主軸37周りの回転軌跡の半径Aによって左右される。ワックス塗布具の数Sが2個のように少ない場合には、式(4)においてワックス塗布具の数Sとワックス塗布具の回転主軸周りの回転速度Rとが反比例の関係にあることから、ワックス塗布具の回転主軸周りの回転速度を高めることによってワックスが塗布できない部分の幅dと長さとを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1:電動台車
2:床面ワックス塗布装置
3:電動アクチュエータ
4:ワックスタンク
5:ワックス供給ポンプ
6:電磁開閉弁
7:乾燥用ブロワ
8:スリットノズル
9:懸垂ブラケット
10:ヒンジ
11:リニアガイド
12:コイルスプリング
13:前輪(駆動輪)
14:走行用駆動モータ
15:操作ハンドル
16:減速機
17:ステアリング系統
18:ギアボックス
19:後輪
20:バッテリ
21:制御装置
22:運転操作パネル
30:ワックス塗布具
31a:ワックス塗布部材
31b:ブラケット盤
32:回転基盤
33:回転軸
34:導出孔
35:ニードルノズル
36:アーム
37:回転主軸
38:転がり軸受
39:中間軸
40:主歯車
41:従歯車
42:主プーリ
43:従プーリ
44:ベルト
45、45’:電動モータ
46:基板
47:回転継手
48:チューブ
49:ワックス分配器
50:アイドラー歯車
51:アイドラー歯車軸
52、53:平歯車
54、55、56、57、58:傘歯車
59:シャフト
60:ブラッケット
A:走行運転機構
B:ワックス塗布機構
図1
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図3
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