(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機器管理装置と、この機器管理装置と通信ラインを介して接続されたフィールド機器とを備え、前記機器管理装置から前記通信ラインを介して前記フィールド機器に蓄積されているデータを取得する機器管理システムにおいて、
前記フィールド機器は、
時系列のデータを履歴データとして蓄積するメモリと、
書き込むことが可能なデータ数が定められた通信用配列と、
前記機器管理装置からのデータの転送要求に応じ、前記メモリに蓄積されている履歴データを前記通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を前記機器管理装置に転送する通信用配列転送手段とを備え、
前記機器管理装置は、
前記フィールド機器から転送されてくる通信用配列を受信し、この受信した通信用配列に書き込まれている履歴データを取り出す履歴データ取出手段と、
前記メモリに蓄積されている履歴データがなくなるまで、前記フィールド機器に対してデータの転送要求を送り、前記通信用配列への履歴データの書き込み、前記履歴データが書き込まれた通信用配列の転送を繰り返させる転送要求送信手段とを備え、
前記機器管理装置と前記フィールド機器との間はHART(Highway Addressable Remote Transducer)通信方式のインタフェースで接続され、
前記通信用配列転送手段は、
前記データの転送要求が送られてくる毎に、その転送要求に含まれる最終時刻以降の前記メモリに書き込まれている履歴データを前記通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を前記機器管理装置に転送する
ことを特徴とする機器管理システム。
機器管理装置と、この機器管理装置と通信ラインを介して接続されたフィールド機器とを備えたシステムに用いられ、前記機器管理装置から前記通信ラインを介して前記フィールド機器に蓄積されているデータを取得する機器管理方法において、
前記フィールド機器において、
時系列のデータを履歴データとしてメモリに蓄積するステップと、
書き込むことが可能なデータ数が定められた通信用配列を定義するステップと、
前記機器管理装置からのデータの転送要求に応じ、前記メモリに蓄積されている履歴データを前記通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を前記機器管理装置に転送する通信用配列転送ステップと、
前記機器管理装置において、
前記フィールド機器から転送されてくる通信用配列を受信し、この受信した通信用配列に書き込まれている履歴データを取り出す履歴データ取出ステップと、
前記メモリに蓄積されている履歴データがなくなるまで、前記フィールド機器に対して前記データの転送要求を送り、前記通信用配列への履歴データの書き込み、前記履歴データが書き込まれた通信用配列の転送を繰り返させる転送要求送信ステップとを備え、
前記機器管理装置と前記フィールド機器との間はFF(Fieldbus Foundation)通信方式のインタフェースで接続され、
前記通信用配列転送ステップは、
前記データの転送要求が送られてくる毎に、その転送要求に含まれる最終時刻以降の前記メモリに書き込まれている履歴データをデータ種別毎に分類して前記通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を前記機器管理装置に転送する
ことを特徴とする機器管理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、履歴データを蓄積する機能を有するフィールド機器が増えている。この履歴データを蓄積する機能を利用すれば、例えば、ポジショナで取得される検査データ(時系列のデータ)を履歴データとしてメモリに蓄積させ、このメモリに蓄積させた履歴データを機器管理装置へ送るようにして、機器管理装置の画面上に検査データをグラフ表示させることが可能となる。
【0007】
しかしながら、この場合、ポジショナに蓄積されている履歴データを機器管理装置に高速で転送する必要があるが、機器管理装置とポジショナとの間はHART(Highway Addressable Remote Transducer)通信方式のインタフェースやFF(Fieldbus Foundation)通信方式のインタフェースで接続されており、どちらの通信方式も履歴データを高速に転送する機能に欠けている。
【0008】
例えば、2線の伝送路に流れる電流信号(例えば、4〜20mAのアナログ信号)にデジタル信号を重畳してデータを送受信するHART通信方式の場合(例えば、特許文献2参照)、コマンドとパラメタを含むバイト列のコマンドに対し、バイト列でレスポンスが返されるが、コマンド、レスポンスともに最長255バイトであり、大量のデータを転送することができない。
【0009】
フィールドバスを用いてデータを送受信するFF通信方式の場合(例えば、特許文献3参照)、名前でアクセス可能なパラメタを介してデータの送受信を行い、配列データの転送も可能であるので、HART通信方式よりも多くのデータを転送することは可能である。しかし、FF通信方式では、可変長サイズの配列を転送できないこと、および転送できる配列のデータ型が単純な型に限定されていることから、データの転送量が限られる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、フィールド機器に蓄積されている履歴データを機器管理装置に高速で転送することが可能な機器管理システムおよび機器管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために本発明は、機器管理装置と、この機器管理装置と通信ラインを介して接続されたフィールド機器とを備え、機器管理装置から通信ラインを介してフィールド機器に蓄積されているデータを取得する機器管理システムにおいて、フィールド機器は、時系列のデータを履歴データとして蓄積するメモリと、書き込むことが可能なデータ数が定められた通信用配列と、機器管理装置からのデータの転送要求に応じ、メモリに蓄積されている履歴データを通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を機器管理装置に転送する通信用配列転送手段とを備え、機器管理装置は、フィールド機器から転送されてくる通信用配列を受信し、この受信した通信用配列に書き込まれている履歴データを取り出す履歴データ取出手段と、メモリに蓄積されている履歴データがなくなるまで、フィールド機器に対してデータの転送要求を送り、通信用配列への履歴データの書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送を繰り返させる転送要求送信手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
この発明において、フィールド機器は、時系列のデータを履歴データとしてメモリに蓄積し、機器管理装置からデータの転送要求があると、メモリに蓄積されている履歴データを通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を機器管理装置に転送する。この場合、通信用配列は、書き込むことが可能なデータ数が定められているので、メモリに蓄積されている履歴データのうち、定められた数の履歴データが通信用配列に書き込まれ、この定められた数の履歴データが書き込まれた通信用配列が機器管理装置に転送される。
【0013】
機器管理装置は、フィールド機器からの通信用配列を受信すると、その受信した通信用配列に書き込まれている履歴データを取り出す。以下同様にして、機器管理装置は、メモリに蓄積されている履歴データがなくなるまで、フィールド機器に対してデータの転送要求を送り、通信用配列への履歴データの書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送を繰り返させる。
【0014】
これにより、本発明では、機器管理装置からフィールド機器へデータの転送要求を送ると、メモリに蓄積されている履歴データがなくなるまで、通信用配列への履歴データの書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送が繰り返され、フィールド機器に蓄積されている履歴データの機器管理装置への高速転送が実現されるものとなる。
【0015】
なお、本発明において、機器管理装置とフィールド機器との間がHART通信方式のインタフェースで接続されている場合には、データの転送要求が送られてくる毎に、その転送要求に含まれる最終時刻以降のメモリに書き込まれている履歴データを通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を機器管理装置に転送するようにし、機器管理装置とフィールド機器との間がFF通信方式のインタフェースで接続されている場合には、データの転送要求が送られてくる毎に、そのデータの転送要求に含まれる最終時刻以降のメモリに書き込まれている履歴データをデータ種別毎に分類して通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を機器管理装置に転送するようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィールド機器に、時系列のデータを履歴データとして蓄積するメモリと、書き込むことが可能なデータ数が定められた通信用配列と、機器管理装置からのデータの転送要求に応じ、メモリに蓄積されている履歴データを通信用配列に書き込み、この履歴データが書き込まれた通信用配列を機器管理装置に転送する通信用配列転送手段とを設け、機器管理装置に、フィールド機器から転送されてくる通信用配列を受信し、この受信した通信用配列に書き込まれている履歴データを取り出す履歴データ取出手段と、メモリに蓄積されている履歴データがなくなるまで、フィールド機器に対してデータの転送要求を送り、通信用配列への履歴データの書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送を繰り返させる転送要求送信手段とを設けるようにしたので、機器管理装置からフィールド機器へデータの転送要求を行うと、メモリに蓄積されている履歴データがなくなるまで、通信用配列への履歴データの書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送が繰り返され、フィールド機器に蓄積されている履歴データを機器管理装置に高速で転送することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1:HART通信方式〕
図1は本発明に係る機器管理システムの一実施の形態を含むシステムの要部を示す図である。同図において、100は本発明に係る機器管理システム、200はDCS(分散制御システム)である。
【0019】
DCS200は、監視装置1と、この監視装置1と通信ラインLを介して接続されたコントローラ2と、このコントローラ2によって制御されるフィールド機器3とを備え、プラントに分散して配置されているフィールド機器3の監視・制御を行う。この実施の形態では、フィールド機器3をポジショナとし、n個のポジショナ3−1〜3−nが設けられているものとする。
【0020】
機器管理システム100は、DCS200の通信ラインLに接続された機器管理装置4を備えており、機器管理装置4はコントローラ2を経由してポジショナ3における各種の検査データを取得する。
【0021】
なお、この実施の形態において、コントローラ2とポジショナ3との間は2線の伝送路で接続されており、この2線の伝送路に流れる電流信号(4〜20mAのアナログ信号)にデジタル信号を重畳して検査データの取得を行うものとされている。すなわち、機器管理装置4とポジショナ3との間は、HART通信方式のインタフェースで接続されている。
【0022】
図2にポジショナ3の要部のブロック図を示す。ポジショナ3は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、ステップ応答検査実行部31と、メモリ32と、通信部33とを備えている。このポジショナ3において、メモリ32としては、リングバッファが用いられている。
【0023】
ステップ応答検査実行部31は、
図3にその処理動作のフローチャートを示すように、機器管理装置4からのステップ応答検査の開始指令を受けて(ステップS101のYES)、ステップ応答検査を開始し(ステップS102)、ステップ入力に応答して変化する検査データ(時系列のデータ)を取得する。この例では、検査データとして、調節弁の開度を取得するものとする。
【0024】
ステップ応答検査実行部31は、検査データを取得する毎に、その取得した検査データを履歴データとし、この履歴データをそのデータの発生時刻を付してメモリ32に書き込む(ステップS103)。ステップ応答検査実行部31は、検査が終了するまで(ステップS104のYES)、検査データの取得、取得した検査データ(履歴データ)のメモリ32への書き込みを繰り返す。
【0025】
この実施の形態において、メモリ32はリングバッファとされており、ステップ応答検査実行部31は、履歴データの取得数がメモリ32に書き込むことが可能な最大数(一定数)に達した後は、最古のデータを最新のデータに書き替えながら、取得した履歴データを循環してメモリ32に書き込んで行く。
図4にメモリ32への履歴データの書き込み状況を示す。この例では、ポジショナ電源ONからの経過秒をデータの発生時刻とし、このデータの発生時刻を付して取得した検査データをメモリ32に書き込んでいる。
【0026】
通信部33は、
図5にその処理動作のフローチャートを示すように、機器管理装置4からのコマンドの着信を確認すると(ステップS201のYES)、そのコマンドに含まれる要求パラメタの解釈処理を行い(ステップS202)、メモリ32に書き込まれている履歴データを通信用配列にコピーする(ステップS203)。
【0027】
なお、この実施の形態では、機器管理装置4からのコマンドが本発明でいう検査データの転送要求に相当する。また、履歴データが書き込まれる通信用配列については後述するが、この通信用配列には書き込むことが可能なデータ数が定められている。この例において、通信用配列に書き込むことが可能なデータ数は10とされている。
【0028】
通信部33は、メモリ32に書き込まれている履歴データを通信用配列にコピーした後、すなわちメモリ32に書き込まれている履歴データを通信用配列に定められた数だけ書き込んだ後、この定められ数の履歴データが書き込まれた通信用配列を機器管理装置4に送信する(ステップS204)。通信部33は、終了要求があるまで(ステップS205のYES)、ステップS201〜S205の処理動作を繰り返す。
【0029】
図6に機器管理装置4の要部のブロック図を示す。機器管理装置4は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、ステップ応答検査表示部41と、通信部42と、終点時刻記憶部43とを備えている。
【0030】
ステップ応答検査表示部41は、
図7にその処理動作のフローチャートを示すように、ステップ応答検査の検査データの表示に際し、検査データの取得要求(通信要求)を通信部42へ送る(ステップS301)。通信部42は、ステップ応答検査表示部41からの通信要求を受けて(
図8:ステップS401のYES)、ポジショナ3へコマンド(検査データの転送要求)を送信する(ステップS402)。
【0031】
ポジショナ3の通信部33は、機器管理装置4からのコマンド(検査データの転送要求)を受けて、メモリ32に書き込まれている履歴データの中から、データの発生時刻順に1番目から10番目までの履歴データを読み出し、データの発生時刻と合わせて通信用配列#1に書き込む(
図9(a))。また、この通信用配列#1に、機器管理装置4からのコマンド(検査データの転送要求)に含まれるコマンド番号と、メモリ32に書き込まれている履歴データの総数と、通信用配列#1に書き込んだデータ数と、始点時刻(通信用配列#1に書き込んだ最初の履歴データに付されているデータの発生時刻)を通信情報として書き込む。そして、この履歴データを書き込んだ通信用配列#1を機器管理装置4へ送信する(ステップS201〜S204)。
【0032】
機器管理装置4の通信部42は、ポジショナ3からの通信用配列#1の着信を確認すると(ステップS403のYES)、その通信用配列#1に書き込まれている履歴データのうち、最後の履歴データに付されているデータの発生時刻を終点時刻(最終時刻)として終点時刻記憶部43に書き込む(ステップS404)。そして、この通信用配列#1をステップ応答検査表示部41へ送る(ステップS405)。
【0033】
ステップ応答検査表示部41は、通信部42からの通信用配列#1を受けて、この通信用配列#1に書き込まれている履歴データを取り出し、すなわちポジショナ3のメモリ32に蓄積されていた1番目から10番目までの履歴データを取り出し、この取り出した履歴データを画面上にグラフ表示(描画)する(ステップS302)。
【0034】
そして、通信用配列#1に書き込まれているデータ総数と読み込み済みのデータ数とが一致しているか否かを確認する(ステップS303)。この場合、データ総数は50、読み込み済みのデータ数は10であるので、ステップ応答検査表示部41は、ステップS303でのNOに応じて、ステップS301へ戻り、通信部42へ再度通信要求を送る。
【0035】
通信部42は、ステップ応答検査表示部41からの通信要求を受けて(ステップS401のYES)、ポジショナ3へコマンド(検査データの転送要求)を再度送信する(ステップS402)。なお、この再送信するコマンド(検査データの転送要求)には、終点時刻記憶部43に記憶されている終点時刻を含ませる。
【0036】
この機器管理装置4からのコマンド(検査データの転送要求)を受けて、ポジショナ3の通信部33は、メモリ32に書き込まれている履歴データのうち、そのコマンド(検査データの転送要求)に含まれる終点時刻以降の履歴データを通信配列にコピーする。この場合、11番目から20番目までの履歴データを読み出し、データの発生時刻と合わせて通信用配列#2に書き込む(
図9(b))。また、この通信用配列#2に、機器管理装置4からのコマンド(検査データの転送要求)に含まれるコマンド番号と、メモリ32に書き込まれている履歴データの総数と、通信用配列#2に書き込んだデータ数と、始点時刻(通信用配列#2に書き込んだ最初の履歴データに付されているデータの発生時刻)を通信情報として書き込む。そして、この履歴データを書き込んだ通信用配列#2を機器管理装置4へ送信する(ステップS201〜S204)。
【0037】
機器管理装置4の通信部42は、ポジショナ3からの通信用配列#2の着信を確認すると(ステップS403のYES)、その通信用配列#2に書き込まれている履歴データのうち、最後の履歴データに付されているデータの発生時刻を終点時刻(最終時刻)として終点時刻記憶部43に書き込む(ステップS404)。そして、この通信用配列#2をステップ応答検査表示部41へ送る(ステップS405)。
【0038】
ステップ応答検査表示部41は、通信部42からの通信用配列#2を受けて、この通信用配列#2に書き込まれている履歴データを取り出し、すなわちポジショナ3のメモリ32に蓄積されていた11番目から20番目までの履歴データを取り出し、画面上にグラフ表示(描画)する(ステップS302)。
【0039】
そして、通信用配列#2に書き込まれているデータ総数と読み込み済みのデータ数とが一致しているか否かを確認する(ステップS303)。この場合、データ総数は50、読み込み済みのデータ数は20であるので、ステップ応答検査表示部41は、ステップS303でのNOに応じて、ステップS301へ戻り、通信部42へ再度通信要求を送る。
【0040】
以下同様にして、機器管理装置4は、ポジショナ3へのコマンド(検査データの転送要求)の送信を繰り返す。また、ポジショナ3は、機器管理装置4からのコマンド(検査データの転送要求)に応じて、メモリ32に蓄積されている履歴データの通信用配列への書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送を繰り返す。これにより、ポジショナ3から機器管理装置4へ、履歴データが書き込まれた通信用配列#3(
図9(c))、通信用配列#4(
図9(d))、通信用配列#5(
図9(e))が送られる。なお、ポジショナ3の通信部33は、最後の通信用配列#5を機器管理装置4に転送した後、メモリ32に書き込まれている履歴データを全て削除し、履歴データの蓄積量を0とする。
【0041】
機器管理装置4の通信部42は、ポジショナ3からの通信用配列#3,#4,#5の着信を確認すると(ステップS403のYES)、その通信用配列#3,#4,#5に書き込まれている履歴データのうち、最後の履歴データに付されているデータの発生時刻を終点時刻(最終時刻)として終点時刻記憶部43に書き込む(ステップS404)。そして、この通信用配列#3,#4,#5をステップ応答検査表示部41へ送る(ステップS405)。
【0042】
ステップ応答検査表示部41は、通信部42からの通信用配列#3,#4,#5を受けて、この通信用配列#3,#4,#5に書き込まれている履歴データを取り出し、すなわちポジショナ3のメモリ32に蓄積されていた21番目から30番目までの履歴データ、31番目から41番目までの履歴データ、41番目から50番目までの履歴データを取り出し、この取り出した履歴データを画面上にグラフ表示(描画)する(ステップS302)。そして、読み込み済みのデータ数が通信用配列#5に書き込まれているデータ総数に達したことを確認して(ステップS303のYES)、ステップ応答検査の表示処理を終了する。
【0043】
このようにして、本実施の形態では、機器管理装置4からポジショナ3へ検査データの転送要求を行うと、メモリ32に蓄積されている履歴データがなくなるまで、通信用配列への履歴データの書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送が繰り返され、ポジショナ3に蓄積されている履歴データの機器管理装置4への高速転送が実現されるものとなる。
【0044】
〔実施の形態2:FF通信方式〕
実施の形態1において、機器管理装置4とポジショナ3との間は、HART通信方式のインタフェースで接続されているものとした。これに対し、実施の形態2では、機器管理装置4とポジショナ3との間は、FF通信方式のインタフェースで接続されているものとする。
【0045】
なお、この実施の形態2において、その基本構成は実施の形態1と同じであるので、システムの要部を示す図としては
図1を流用し、ポジショナ3の要部を示すブロック図としては
図2を流用し、機器管理装置4の要部を示すブロック図としては
図6を流用する。
【0046】
但し、実施の形態2において、ポジショナ3のステップ応答検査実行部31は、検査データとして、調節弁の開度、操作器圧、駆動信号の3種類を取得するものとする。
図10にメモリ32への検査データ(履歴データ)の書き込み状況を示す。この例では、ポジショナ電源ONからの経過秒をデータの発生時刻とし、このデータの発生時刻を付して取得した3種類の検査データ(調節弁の開度、操作器圧、駆動信号)をメモリ32に書き込んでいる。
【0047】
この実施の形態2において、機器管理装置4のステップ応答検査表示部41は、
図11にその処理動作のフローチャートを示すように、ステップ応答検査の検査データの表示に際し、検査データの取得要求(通信要求)を通信部42へ送る(ステップS501)。
【0048】
通信部42は、ステップ応答検査表示部41からの通信要求を受けて(
図12:ステップS601のYES)、ポジショナ3に対してメモリ32からの履歴データの転送開始点を指定する始点インデックスの書き込みを行う(ステップS602)。実施の形態2では、この機器管理装置4からのポジショナ3に対する始点インデックスの書き込みが、本発明でいう検査データの転送要求に相当する。
【0049】
ポジショナ3の通信部33は、始点インデックスが書き込まれると(ステップS701のYES)、すなわち検査データの転送要求を受けると、ステータスを転送中に変更し(ステップS702)、メモリ32に書き込まれている履歴データの中から、データの発生時刻順に1番目から10番目の履歴データの組み合わせを読み出し、その履歴データをデータ種別毎に分類して、データの発生時刻と合わせて、通信用配列#1に書き込む(
図14(a))。また、この通信用配列#1に、始点インデックスと、メモリ32に書き込まれている履歴データの総数と、通信用配列#1に書き込んだデータ数とを通信情報として書き込む(ステップS703)。そして、この通信用配列#1への履歴データの書き込みを終了した後、ステータスを転送完了に変更して(ステップS704)、この履歴データを書き込んだ通信用配列#1を機器管理装置4へ送信する(ステップS705)。
【0050】
なお、通信用配列#1において、履歴データの数は、データの発生時刻が同じ履歴データの組み合わせを1つとして数える。また、この例では、各データ発生時刻において、3種類の履歴データが生じているが、同じデータの発生時刻に1種類の履歴データしか生じていない場合もあるし、2種類の履歴データが生じている場合もある。すなわち、通信用配列中には必ずしもフルにデータが詰まっているわけではない。その場合、空いている部分には、空きを示すデータが入る。
【0051】
機器管理装置4の通信部42は、始点インデックスの書き込み後(ステップS602)、すなわちポジショナ3への検査データの転送要求後、ポジショナ3におけるステータスを読み込み(ステップS604)、そのステータスが転送完了となると(ステップS605のYES)、ポジショナ3から送られてくる通信用配列#1を読み込む(ステップS606)。そして、その通信用配列#1に書き込まれている履歴データの組み合わせうち、最後の履歴データの組み合わせのデータの発生時刻を終点時刻(最終時刻)として終点時刻記憶部43に書き込む(ステップS607)。そして、この通信用配列#1をステップ応答検査表示部41へ送る(ステップS608)。
【0052】
ステップ応答検査表示部41は、通信部42からの通信用配列#1を受けて、この通信用配列#1に書き込まれている履歴データの組み合わせを取り出し、すなわちポジショナ3のメモリ32に蓄積されていた1番目から10番目までの履歴データの組み合わせを取り出し、この取り出した履歴データの組み合わせを画面上にグラフ表示(描画)する(ステップS502)。
【0053】
そして、通信用配列#1に書き込まれているデータ総数と読み込み済みのデータ数とが一致しているか否かを確認する(ステップS503)。この場合、データ総数は50、読み込み済みのデータ数は10であるので、ステップ応答検査表示部41は、ステップS503でのNOに応じて、ステップS501へ戻り、通信部42へ再度通信要求を送る。
【0054】
通信部42は、ステップ応答検査表示部41からの通信要求を受けて(ステップS601のYES)、ポジショナ3に対して始点インデックスの書き込みを行う(ステップS602)。すなわち、ポジショナ3へ検査データの転送要求を送る。なお、この場合の始点インデックスは、終点時刻記憶部43に記憶されている終点時刻によって定める。すなわち、終点時刻記憶部43に記憶されている終点時刻以降の点を、メモリ32からの履歴データの転送開始点とする。
【0055】
ポジショナ3の通信部33は、始点インデックスが書き込まれると(ステップS701のYES)、すなわち検査データの転送要求を受けると、ステータスを転送中に変更し(ステップS702)、メモリ32に書き込まれている履歴データの中から、11番目から20番目の履歴データの組み合わせを読み出し、その履歴データをデータ種別毎に分類して、データの発生時刻と合わせて、通信用配列#2に書き込む(
図14(b))。また、この通信用配列#2に、始点インデックスと、メモリ32に書き込まれている履歴データの総数と、通信用配列#2に書き込んだデータ数とを通信情報として書き込む(ステップS703)。そして、この通信用配列#2への履歴データの書き込みを終了した後、ステータスを転送完了に変更して(ステップS704)、この履歴データを書き込んだ通信用配列#2を機器管理装置4へ送信する(ステップS705)。
【0056】
機器管理装置4の通信部42は、始点インデックスの書き込み後(ステップS602)、すなわちポジショナ3への検査データの転送要求後、ポジショナ3におけるステータスを読み込み(ステップS604)、そのステータスが転送完了となると(ステップS605のYES)、ポジショナ3から送られてくる通信用配列#2を読み込む(ステップS606)。そして、その通信用配列#2に書き込まれている履歴データの組み合わせうち、最後の履歴データの組み合わせのデータの発生時刻を終点時刻(最終時刻)として終点時刻記憶部43に書き込む(ステップS607)。そして、この通信用配列#2をステップ応答検査表示部41へ送る(ステップS608)。
【0057】
ステップ応答検査表示部41は、通信部42からの通信用配列#2を受けて、この通信用配列#2に書き込まれている履歴データの組み合わせを取り出し、すなわちポジショナ3のメモリ32に蓄積されていた11番目から20番目までの履歴データの組み合わせを取り出し、この取り出した履歴データの組み合わせを画面上にグラフ表示(描画)する(ステップS502)。
【0058】
そして、通信用配列#2に書き込まれているデータ総数と読み込み済みのデータ数とが一致しているか否かを確認する(ステップS503)。この場合、データ総数は50、読み込み済みのデータ数は20であるので、ステップ応答検査表示部41は、ステップS503でのNOに応じて、ステップS501へ戻り、通信部42へ再度通信要求を送る。
【0059】
以下同様にして、機器管理装置4は、ポジショナ3に対する始点インデックスの書き込み(検査データの転送要求)を繰り返す。また、ポジショナ3は、機器管理装置4からの始点インデックスの書き込み(検査データの転送要求)に応じて、メモリ32に蓄積されている履歴データの通信用配列へのデータ種別毎に分類しての書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送を繰り返す。これにより、ポジショナ3から機器管理装置4へ、履歴データが書き込まれた通信用配列#3(
図14(c))、通信用配列#4(
図14(d))、通信用配列#5(
図14(e))が送られる。なお、ポジショナ3の通信部33は、最後の通信用配列#5を機器管理装置4に転送した後、メモリ32に書き込まれている履歴データを全て削除し、履歴データの蓄積量を0とする。
【0060】
機器管理装置4の通信部42は、ポジショナ3からの通信用配列#3,#4,#5を読み込むと(ステップS606)、その通信用配列#3,#4,#5に書き込まれている履歴データの組み合わせうち、最後の履歴データの組み合わせのデータの発生時刻を終点時刻(最終時刻)として終点時刻記憶部43に書き込む(ステップS607)。そして、この通信用配列#3,#4,#5をステップ応答検査表示部41へ送る(ステップS608)。
【0061】
ステップ応答検査表示部41は、通信部42からの通信用配列#3,#4,#5を受けて、この通信用配列#3,#4,#5に書き込まれている履歴データの組み合わせを取り出し、すなわちポジショナ3のメモリ32に蓄積されていた21番目から30番目までの履歴データの組み合わせ、31番目から41番目までの履歴データの組み合わせ、41番目から50番目までの履歴データの組み合わせを取り出し、この取り出した履歴データの組み合わせを画面上にグラフ表示(描画)する(ステップS502)。そして、読み込み済みのデータ数が通信用配列#5に書き込まれているデータ総数に達したことを確認して(ステップS503のYES)、ステップ応答検査の表示処理を終了する。
【0062】
このようにして、本実施の形態では、機器管理装置4からポジショナ3へ検査データの転送要求を行うと、メモリ32に蓄積されている履歴データがなくなるまで、通信用配列への履歴データの書き込み、履歴データが書き込まれた通信用配列の転送が繰り返され、ポジショナ3に蓄積されている履歴データの機器管理装置4への高速転送が実現されるものとなる。
【0063】
なお、上述した実施の形態では、フィールド機器をポジショナとした場合を例にとって説明したが、フィールド機器はポジショナに限られるものでないことは言うまでもなく、検査データも開度や操作器圧、駆動信号などに限られるものでもない。また、機器管理装置から行う検査としてステップ応答検査を挙げたが、ステップ応答検査に限られるものではなく、バルブシグネチャなど他の処理に適用してもよい。
【0064】
また、HART通信方式、FF通信方式に限られるものではなく、イーサネット(登録商標)通信など他の通信方式においても、同様にしてメモリに蓄積された履歴データを転送することができる。また、上述した実施の形態では、履歴データを蓄積するメモリをリングバッファとしたが、リングバッファに限られるものでもない。
【0065】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。