(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
BACE1ポリペプチドの活性を低減又は阻害するBACE1に結合する単離された抗体又はその断片であって、以下から選択されるHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3、
a)(i)配列番号:22、23及び71〜73から選択されるアミノ酸配列を含む、HVR-H1;
(ii)配列番号:24及び74〜78から選択されるアミノ酸配列を含む、HVR-H2;
(iii)配列番号:25及び79から選択されるアミノ酸配列を含む、HVR-H3;
(iv)配列番号:7及び8から選択されるアミノ酸配列を含む、HVR-L1;
(v)配列番号:9、10及び58〜64から選択されるアミノ酸配列を含む、HVR-L2;及び
(vi)配列番号:11〜16及び65〜67から選択されるアミノ酸配列を含む、HVR-L3;又は
b)配列番号:28のアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号:29のアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号:30のアミノ酸配列を含むHVR-H3、配列番号:35のアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号:36〜39から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び配列番号:40のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、抗体又はその断片。
配列番号:28のアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号:29のアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号:30のアミノ酸配列を含むHVR-H3、配列番号:35のアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号:36〜39から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び配列番号:40のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、請求項1に記載の抗体。
配列番号:22及び23から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号:24のアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号:25のアミノ酸配列を含むHVR-H3、配列番号:7及び8から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号:9及び10から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び配列番号:11〜16から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、請求項4に記載の抗体。
配列番号:23及び71〜73から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号:24及び74〜78から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号:25及び79から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3、配列番号:7のアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号:9及び58〜64から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び配列番号:12及び65〜67から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、請求項4に記載の抗体。
神経疾患又は障害がアミロイド様タンパク質を伴い、アルツハイマー病(AD)、外傷性脳損傷、脳卒中、緑内障、認知症、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レビー小体病、パーキンソン病、核上性麻痺、ウシ海綿状脳症、スクレピー、クロイツフェルト・ヤコブ病、及びハンチントン病から成る群から選択される、請求項23〜25の何れか一項に記載の医薬。
患者が抗BACE1抗体での治療に適格かを決定するためのキットであって、患者から単離された生体サンプルを、BACE1ポリペプチドへの抗体の結合に適切な条件下で請求項1〜17の何れか一項に記載の抗体と接触させ、抗体及びBACE1ポリペプチド間で複合体が形成されるか否かを決定し、抗体及びBACE1間の複合体の存在が抗BACE1抗体での治療に適格な患者を示す、キット。
アミロイド様タンパク質を伴う神経障害の治療における使用のための抗体であって、神経障害が、アルツハイマー病(AD)、外傷性脳損傷、脳卒中、緑内障、認知症、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レビー小体病、パーキンソン病、核上性麻痺、ウシ海綿状脳症、スクレピー、クロイツフェルト・ヤコブ病、及びハンチントン病から成る群から選択される、請求項1〜17の何れか一項に記載の抗体。
医薬が、アルツハイマー病(AD)、外傷性脳損傷、脳卒中、緑内障、認知症、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レビー小体病、パーキンソン病、核上性麻痺、ウシ海綿状脳症、スクレピー、クロイツフェルト・ヤコブ病、及びハンチントン病から成る群から選択される、アミロイド様タンパク質を伴う神経障害の治療のためのものである、請求項40に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(発明の実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここでの目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、下に定義するヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク由来の軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含んでなる。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、又はアミノ酸配列変化を有してもよい。幾つかの実施態様では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。幾つかの実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列において同一である。
【0056】
「親和性」とは、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合相互作用の強さの合計を指す。明記なき限り、ここで使用される場合、「結合親和性」とは結合対(例えば抗体及び抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する内因性結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般的に解離定数(Kd)によって表される。親和性は当分野で知られている一般的な方法によって測定可能であり、ここに記載されるものを含む。結合親和性を測定するための具体的な説明的、例示的実施態様を以下に記載する。
【0057】
「親和性成熟」抗体とは、そのような変更を持たない親抗体と比較して一又は複数の超可変領域(HVR)における一又は複数の変更を有する抗体を指し、そのような変更は抗原に対する抗体の親和性における改善をもたらす。
【0058】
「抗β-セクレターゼ抗体」、「抗BACE1抗体」、「β-セクレターゼに結合する抗体」及び「BACE1に結合する抗体」なる用語は、十分な親和性でBACE1に結合可能であり、BACE1を標的にすることにおいて診断及び/又は治療剤として有用であるような抗体を指す。一実施態様では、無関係な非BACE1タンパク質への抗BACE1抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定され、BACE1への抗体の結合の約10%未満である。ある実施態様では、BACE1に結合する抗体は、?1μM、?100nM、?10nM、?1nM、?0.1nM、?0.01nM、又は?0.001nM(例えば10
−8M以下、例えば10
−8M〜10
−13M、例えば10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある実施態様では、抗BACE1抗体は、異なる種及びアイソフォームからのBACE1間で保存されたBACE1のエピトープに結合する。
【0059】
ここにおいて「抗体」なる用語は、最も広い意味で使用され、様々な抗体構造を包含し、限定するものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の抗原結合活性を呈する限り抗体断片を含む。
【0060】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例は、限定するものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)
2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。
【0061】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上阻止する抗体を指し、逆に、競合アッセイにおいて参照抗体は抗体のその抗原への結合を50%以上阻止する。例示的な競合アッセイがここに提供される。
【0062】
「キメラ」抗体なる用語は、重及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重及び/又は軽鎖の残りが異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0063】
抗体の「クラス」とは、重鎖が持つ定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらの幾つかはIgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2等のサブクラス(アイソタイプ)に更に分けられる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0064】
「細胞傷害剤」なる用語は、ここで使用される場合、細胞機能を阻害又は防止する及び/又は細胞死又は破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害剤は、限定するものではないが放射性同位体(例えばAt
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体);化学療法物質又は薬物(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素;抗生物質;細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素(その断片及び/又は変異体を含む);及び下に開示される様々な抗腫瘍又は抗癌剤を含む。
【0065】
「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプによって異なる抗体のFc領域に起因しうるそれらの生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例は:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化を含む。
【0066】
「有効な量」の物質、例えば薬学的製剤とは、所望の治療又は予防結果を得るための必要な容量及び期間での有効な量を指す。
【0067】
ここでの「Fc領域」なる用語は、定常領域の少なくとも一部を有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。該用語は、天然配列Fc領域及び可変Fc領域を含む。一実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から重鎖のカルボキシル末端に延在する。しかしながら、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は存在する場合とそうでない場合がありうる。明記しない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、EUindexとも呼ばれるEU番号付けシステムに従い、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されている。
【0068】
「フレームワーク」又は「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般的に4つのドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4から成る。従って、HVR及びFR配列は一般的にVH(又はVL)において次の配列において出現する:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0069】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」なる用語は、ここでは交換可能に使用され、天然の抗体構造に実質的に類似した構造を持ち、ここで定義されるFc領域を有する重鎖を持つ抗体を指す。
【0070】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」なる用語は、交換可能に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、一次形質転換細胞、及び継代の数に関わらずそれらに由来する子孫を含む。子孫は親細胞に対して核酸内容物において完全に同一でない場合があり、変異を含みうる。元の形質転換細胞についてスクリーニング又は選択されたのと同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫はここに含まれる。
【0071】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞によって生産されるか、又はヒト抗体レパートリー又は他のヒト抗体コード配列を利用した非ヒト供給源から得られる抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を特異的に除く。
【0072】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般的に、配列のサブグループは、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一実施態様では、VLでは、サブグループはKabat等, supraのサブグループカッパIである。一実施態様では、VHでは、サブグループはKabat等, supraのサブグループIIIである。
【0073】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含んでなるキメラ抗体を指す。ある実施態様では、ヒト化抗体は、実質的に全ての少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインを含み、全て又は実質的に全てのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、全て又は実質的に全てのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は場合によっては、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含みうる。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0074】
「超可変領域」又は「HVR」なる用語は、ここで使用される場合、配列において超可変である及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般的に、天然の4鎖抗体は6つのHVR;VH(H1、H2、H3)に3つ、VL(L1、L2、L3)に3つを含む。HVRは一般的に超可変ループから及び/又は「相補性決定領域」(CDR)からアミノ酸残基を含み、後者は最も高い配列可変性であるか及び/又は抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)、及び96−101(H3)で生じる。(Chothia and Lesk, J. Mol.Biol.196:901-917 (1987))。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、アミノ酸残基L1の24−34、L2の50−56、L3の89−97、H1の31−35B、H2の50−65、及びH3の95−102で生じる。(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。VHにおけるCDRを除き、CDRは一般的に超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原と接触する残基である「特異性決定領域」又は「SDR」を含む。SDRは、abbreviated-CDR、又はa-CDRと呼ばれるCDRの残基内に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、及びa-CDR-H3)は、アミノ酸残基L1の31−34、L2の50−55、L3の89−96、H1の31−35B、H2の50−58、及びH3の95−102で生じる。(Almagro and Fransson, Front.Biosci.13:1619-1633 (2008)を参照)。明記しない限り、可変ドメインにおけるHVR残基及び他の残基(例えばFR残基)は、ここではKabat等, supraに従って番号付けされる。
【0075】
「イムノコンジュゲート」は、限定するものではないが細胞傷害剤を含む一又は複数の異種性分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0076】
「個体」又は「被験体」とは、哺乳類である。哺乳類は、限定するものではないが家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えばヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、及び齧歯類(例えばマウス及びラット)を含む。ある実施態様では、個体又は被験体はヒトである。
【0077】
「単離された」抗体は、それの天然環境の成分から分離されたものである。幾つかの実施態様では、抗体は95%又は99%超の純度に精製され、例えば電気泳動(例えばSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えばイオン交換又は逆相HPLC)で決定される。抗体純度の評価の方法の総説として、例えばFlatman等, J. Chromatogr.B 848:79-87 (2007)を参照のこと。
【0078】
「単離された」核酸は、それの天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を元々有した細胞に含まれる核酸分子を含むが、核酸分子は染色体外に、又はそれの天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0079】
「抗BACE1抗体をコードする単離された核酸」とは、抗体重及び軽鎖(又はその断片)をコードする一又は複数の核酸分子を指し、単一ベクター又は異なるベクターにおけるこのような核酸分子を含み、このような核酸分子は宿主細胞における一又は複数の位置に存在する。
【0080】
「モノクローナル抗体」なる用語は、ここで使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、ありうる可変抗体を除き同一であるか及び/又は同じエピトープに結合し、例えば自然に生じる変異又はモノクローナル抗体調製物の生産中に生じるものを含み、このような変異体は一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比較して、モノクローナル抗体の各モノクローナル抗体調製物は抗原における単一決定基に向けられる。従って、「モノクローナル」なる修飾詞は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特性を意味し、何れかの特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技術によって作られ得、限定するのもではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン座の全部又は一部を有するトランスジェニック動物を利用する方法を含み、モノクローナル抗体を作成するためのこのような方法及び他の例示的な方法がここに記載されている。
【0081】
「ネイキッド抗体」は、異種性部分(例えば細胞傷害部分)又は放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。ネイキッド抗体は薬学的製剤中に存在しうる。
【0082】
「天然抗体」は、様々な構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合された2つの同一な軽鎖及び2つの同一な重鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N-からC-末端へ、各重鎖は可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N-からC-末端へ、各軽鎖は可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、その後に定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの内一つに割り当てられうる。
【0083】
「パッケージ挿入物」なる用語は、治療用製品の商用パッケージに習慣的に含まれている説明書を指すために使用され、適応症、使用法、用量、投与、併用療法、禁忌及び/又はこのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含む。
【0084】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、特定の参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を測定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標)V4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0085】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのプログラムアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限りは、ここでの全ての%アミノ酸配列同一性値は、直ぐ上のパラグラフに示したようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。
【0086】
「薬学的製剤」なる用語は、そのような形態においてそこに含まれる活性成分の生物学的活性を有効にし、製剤が投与されるであろう被験体に容認し難いほど毒性である更なる成分を含まない調製物を指す。
【0087】
「薬学的に許容可能な担体」とは、被験体に非毒性である活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体は、限定するものではないがバッファー、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含む。
【0088】
「BACE1」なる用語は、ここで使用される場合、別段の定めがある場合を除き、哺乳類、例えば霊長類(例えばヒト)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)を含む何れかの脊椎動物供給源からの何れかの天然β-セクレターゼ1(β-部位アミロイド前駆体タンパク質切断酵素1、膜結合アスパラギン酸プロテアーゼ2、メマプシン2、アスパルチルプロテアーゼ2又はAsp2とも呼ばれる)を指す。用語は「完全長」の非プロセシングBACE1並びに細胞におけるプロセシングから得られる何れかの形態のBACE1を包含する。用語はまた、BACE1の天然に生じる変異体、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子多型を包含する。例示的BACE1ポリペプチドのアミノ酸配列は下の配列番号:49に示され、Vassar等, Science 286:735-741 (1999)に報告されるヒトBACE1、アイソフォームAの配列であり、出典明記によってその全体をここに援用する。
MAQALPWLLLWMGAGVLPAHGTQHGIRLPLRSGLGGAPLGLRLPRETDEEPEEPGRRGSFVEMVDNLRGKSGQGYYVEMTVGSPPQTLNILVDTGSSNFAVGAAPHPFLHRYYQRQLSSTYRDLRKGVYVPYTQGKWEGELGTDLVSIPHGPNVTVRANIAAITESDKFFINGSNWEGILGLAYAEIARPDDSLEPFFDSLVKQTHVPNLFSLQLCGAGFPLNQSEVLASVGGSMIIGGIDHSLYTGSLWYTPIRREWYYEVIIVRVEINGQDLKMDCKEYNYDKSIVDSGTTNLRLPKKVFEAAVKSIKAASSTEKFPDGFWLGEQLVCWQAGTTPWNIFPVISLYLMGEVTNQSFRITILPQQYLRPVEDVATSQDDCYKFAISQSSTGTVMGAVIMEGFYVVFDRARKRIGFAVSACHVHDEFRTAAVEGPFVTLDMEDCGYNIPQTDESTLMTIAYVMAAICALFMLPLCLMVCQWCCLRCLRQQHDDFADDISLLK(配列番号:49)
【0089】
ヒトBACE1の幾つかの他のアイソフォームが存在し、アイソフォームB、C及びDを含む。UniProtKB/Swiss-Prot Entry P56817を参照のこと(出典明記によってその全体をここに援用する)。アイソフォームBは配列番号:50に示され、アミノ酸190−214を欠く点においてアイソフォームA(配列番号:49)と異なる(すなわち、配列番号:49のアミノ酸190−214の欠失)。アイソフォームCは配列番号:51に示され、アミノ酸146−189を欠く点においてアイソフォームA(配列番号:49)と異なる(すなわち、配列番号:49のアミノ酸146−189の欠失)。アイソフォームDは配列番号:52に示され、アミノ酸146−189及び190−214を欠く点においてアイソフォームA(配列番号:49)と異なる(すなわち、配列番号:49のアミノ酸146−189及び190−214の欠失)。
【0090】
ここで使用される場合、「治療(treatment)」(及び「治療(treat)」又は「治療(treating)」などのその文法的変異)とは、治療されている個体の自然の経過を変更する目的での臨床的介入を指し、予防のため又は臨床病理学の経過中に実施されうる。治療の所望される効果は、限定するものではないが、疾患の発生又は再発の防止、症状の軽減、疾患の何れかの直接的又は間接的病理学的結果の縮小、転移の防止、疾患進行の割合の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解予後改善を含む。幾つかの実施態様では、発明の抗体は、疾患の展開を遅延するため又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0091】
「可変領域」又は「可変ドメイン」なる用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体重又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は一般的に類似した構造を有し、各ドメインは4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含んでなる。(例えばKindt等Kuby Immunology, 6
th ed., W.H.Freeman and Co., page 91 (2007)を参照)。単一VH又はVLドメインが抗原結合特異性を付与するのに十分でありうる。更に、特定の抗原に結合する抗体は、それぞれ相補VL又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体からVL又はVHドメインを使用して単離されうる。例えばPortolano等, J. Immunol.150:880-887 (1993); Clarkson等, Nature 352:624-628 (1991)を参照のこと。
【0092】
「ベクター」なる用語は、ここで使用される場合、それが連結される別の核酸を増殖可能な核酸分子を指す。用語は、自己複製核酸構造のベクター並びに導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。あるベクターは、作動的に連結された核酸の発現を指示することができる。このようなベクターは、ここでは「発現ベクター」と呼ばれる。
【0093】
「神経障害」又は「神経疾患」なる用語は、哺乳類における中枢及び/又は末梢神経系の疾患又は障害を指すか又は説明する。神経障害の例は、限定するものではないが以下の疾患及び障害を含む。ニューロパチー障害は不適切な又は非制御的な神経シグナル伝達又はその欠如に特徴付けられる神経系の疾患又は異常であり、限定するものではないが慢性疼痛(例えば侵害受容性疼痛(外傷による体組織への疼痛、癌性疼痛を含む)、神経障害性疼痛(神経、脊髄、又は脳における異常による疼痛)、及び心因性疼痛(完全に又はほぼ心理学的疾患に関する)、頭痛、片頭痛、ニューロパチー、及びめまい又は吐き気等のニューロパチー障害をしばしば伴う症状及び症候群を含む。アミロイドーシスはCNSにおける細胞外タンパク質沈着を伴う疾患及び障害のグループであり、限定するものではないが二次性アミロイドーシス、加齢性アミロイドーシス、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム‐パーキンソン認知症、脳アミロイド血管症、ハンチントン病、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、伝達性海綿状脳症、HIV-関連認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)、及びβアミロイド沈着に関連する眼疾患(すなわち、黄斑変性、ドルーゼン関連視神経症、及び白内障)を含む。CNSの癌は一又は複数のCNS細胞(すなわち神経細胞)の異常増殖を特徴とし、限定するものではないが神経膠腫、多形神経膠芽腫、髄膜腫、星状細胞腫、聴神経腫瘍、軟骨腫、乏突起神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワン腫、神経線維腫、神経芽腫、及び硬膜外、髄内又は硬膜内腫瘍を含む。眼疾患又は障害は眼の疾患又は障害であり、ここでの目的ではBBBに影響されるCNS臓器が考えられる。眼疾患又は障害は、限定するものではないが、強膜、角膜、虹彩及び毛様体の障害(すなわち、強膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、角膜擦過傷、雪眼炎、アークアイ、タイゲソン点状表層角膜症、角膜血管新生、フックスジストロフィー、円錐角膜、乾性角結膜炎、虹彩炎及びぶどう膜炎)、水晶体の障害(すなわち、白内障)、脈絡膜及び網膜の障害(すなわち、網膜剥離、網膜分離症、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症、網膜症、未熟児の網膜症、加齢黄斑変性症、黄斑変性症(ウェット又はドライ)、網膜上膜、網膜色素変性症及び黄斑浮腫)、緑内障、飛蚊症、視神経及び視覚路の障害(すなわち、レーベル遺伝性視神経症及び視神経乳頭ドルーゼン)、眼筋/両眼運動調節/屈折の障害(すなわち、斜視、眼麻痺、進行性外眼筋麻痺、内斜視、外斜視、遠視、近視、乱視、不同視、老視及び眼筋麻痺)、視覚障害及び盲目症(すなわち、弱視、レーバー先天性黒内障、暗点、色覚異常(color blindness)、色覚異常(achromatopsia)、夜盲症、盲目症、河川盲目症及び小眼球症/コロボーマ)、充血、アーガイル・ロバートソン瞳孔、角膜真菌症、眼球乾燥症及びandaniridiaを含む。CNSのウィルス又は微生物感染は、限定するものではないが、ウィルス(すなわち、インフルエンザ、HIV、ポリオウイルス、風疹、)、細菌(すなわち、ナイセリア菌種、ストレプトコッカス菌種、シュードモナス菌種、プロテウス菌種、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌種、髄膜炎菌種、ヘモフィルス菌種、及びマイコバクテリウム・ツベルクローシス)及び他の微生物、例えば真菌(すなわち、酵母、クリプトコッカス・ネオフォルマンス)、寄生虫(すなわち、トキソプラズマ・ゴンディ)又はアメーバによる感染を含み、限定するものではないが、急性又は慢性でありうる髄膜炎、脳炎、脊髄炎、血管炎及び膿瘍を含むCNS病態生理をもたらす。CNSの炎症は、物理的損傷(すなわち、事故、手術、頭部外傷、脊髄損傷、脳振盪に起因する)又はCNSの一又は複数の他の疾患又は障害に起因又は関連する損傷(すなわち、膿瘍、癌、ウィルス又は微生物感染)でありうるCNSへの損傷により引き起こされる炎症である。CNSの虚血は、ここで使用される場合、脳における異常な血流又は血管挙動又はその要因に関する障害の群を指し、限定するものではないが局所脳虚血、全脳虚血、脳卒中(すなわち、くも膜下出血及び脳出血)、及び動脈瘤を含む。神経変性疾患は、CNSにおける神経細胞の機能欠如又は死に伴う疾患又は障害の群であり、限定するものではないが副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、アルパース病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、コケーン症候群、大脳皮質基底核変性症、アミロイドーシスにより引き起こされるか又はそれに伴う変性、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭葉変性症、ケネディー病、多系統萎縮症、多発性硬化症、原発性側索硬化症、進行性核上性麻痺、脊髄性筋萎縮症、横断性脊髄炎、レフサム病、及び脊髄小脳失調症を含む。CNSの発作疾患又は障害はCNSにおける不適切及び/又は異常な電気伝導を含み、限定するものではないがてんかん(すなわち、欠神発作、脱力発作、良性ローランドてんかん、小児欠神てんかん、間代発作、複雑部分発作、前頭葉てんかん、熱性発作、点頭てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、若年性欠神てんかん、レノックス・ガストー症候群、ランドウ・クレフナー症候群、ドラベ症候群、大田原症候群、ウエスト症候群、ミオクローヌス発作、ミトコンドリア障害、進行性ミオクローヌスてんかん、心因性発作、反射てんかん、ラスムッセン症候群、単純部分発作、二次性全身性発作、側頭葉てんかん、強直間代発作、強直性発作、精神運動発作、辺縁系てんかん、部分発症発作、一般発症発作、てんかん重積症、腹部てんかん、無動発作、自律神経発作、巨大両側性ミオクローヌス(massive bilateral myoclonus)、月経随伴性てんかん、くず折れ発作、情動性発作、焦点発作、笑い発作、ジャクソン発作、ラフォラ疾患、運動発作、多巣性発作、夜間発作、光過敏性発作、偽発作、感覚発作、微発作、シルヴァン発作、離脱発作、及び視覚反射発作)を含む。行動障害は被験体の異常行動を特徴とするCNSの障害であり、限定するものではないが睡眠障害(すなわち、不眠、睡眠時随伴症、夜驚症、概日リズム睡眠障害、及びナルコレプシー)、気分障害(すなわち、うつ病、自殺性鬱病、不安、慢性情動障害、恐怖症、パニック発作、強迫性障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、慢性疲労症候群、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、双極性障害)、摂食障害(すなわち、食欲不振又は過食症)、精神病、発達性行動障害(すなわち、自閉症、レット症候群、アスペルガー症候群)、人格障害及び精神障害(すなわち、統合失調症、妄想性障害等)を含む。リソソーム蓄積症は、場合によってはCNSに関連するか又はCNS特異的症状を有する代謝障害であり、限定するものではないがテイ・サックス病、ゴーシェ病、ファブリー病、ムコ多糖症(タイプI、II、III、IV、V、VI及びVII)、糖原病、GM1-ガングリオシドーシス、異染性白質ジストロフィー、ファーバー病、カナバン白質ジストロフィー、及び神経セロイドリポフスチン症タイプ1及び2、ニーマン・ピック病、ポンペ病、及びクラッベ病を含む。
【0094】
II.組成物及び方法
一態様では、発明は、一つには、BACE1に結合し、BACE1活性を低減及び/又は阻害する抗体に基づく。ある実施態様では、BACE1の活性部位又はエキソサイトに結合する抗体が提供される。
【0095】
A.例示的な抗BACE1抗体
一態様では、発明は、(a)配列番号:22、23、26、28、45、68、71、72、73又は120のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:24、29、46、69、74、75、76、77、78又は121のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;(c)配列番号:25、30、47、70、79又は122のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3;(d)配列番号:7、8、17、35又は42のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(e)配列番号:9、10、18、36−39、41、43、56、58、59、60、61、62、63、64又は118のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(f)配列番号:11−16、19、40、44、57、65、66、67又は119のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、又は6のHVRを含んでなる抗BACE1抗体を提供する。
【0096】
一態様では、発明は、(a)配列番号:22、23、26、28、45、68、71−73又は120のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:24、29、46、69、74−78又は121のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25、30、47、70、79又は122のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3のVHHVR配列を含んでなる抗体を提供する。
【0097】
一実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:22又は配列番号:23又は配列番号:28又は配列番号:71又は配列番号:72又は配列番号:73を含んでなるHVR-H1を含む。別の実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:24又は配列番号:29又は配列番号:74又は配列番号:75又は配列番号:76又は配列番号:77又は配列番号:78を含んでなるHVR-H2を含む。更なる実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:25又は配列番号:30又は配列番号:79を含んでなるHVR-H3を含む。一実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:28を含んでなるHVR-H1を含む。別の実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:29を含んでなるHVR-H2を含む。更なる実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:30を含んでなるHVR-H3を含む。
【0098】
別の実施態様では、抗体は(a)配列番号:22のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:24のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:23のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:24のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含む。更なる実施態様では、抗体は、(a)配列番号:28のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:29のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:30のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含む。更なる実施態様では、抗体は(a)配列番号:23のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:74のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:23のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:75のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:71のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:24のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:72のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:24のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:23のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:76のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:23のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:77のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:79のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:73のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:78のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:25アミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を含む。
【0099】
別の態様では、発明は(a)配列番号:7、8、17、35及び42のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9、10、18、36−39、41、43、56、58−64又は118のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:11−16、19、40、44、57、65−67又は119のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3のVLHVR配列を含んでなる抗体を提供する。
【0100】
一実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:7又は列番号:8を含んでなるHVR-L1を含む。別の実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:9又は配列番号:10又は配列番号:58又は配列番号:59又は配列番号:60又は配列番号:61又は配列番号:62又は配列番号:63又は配列番号:64を含んでなるHVR-L2を含む。更なる実施態様では、抗体は、配列番号:11又は配列番号:12又は配列番号:13又は配列番号:14又は配列番号:15又は配列番号:16又は配列番号:65又は配列番号:66又は配列番号:67のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含む。別の実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:35を含んでなるHVR-L1を含む。別の実施態様では、抗体は、配列番号:36−39から成る群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2を含む。更なる実施態様では、抗体は、アミノ酸配列配列番号:40を含んでなるHVR-L3を含む。
【0101】
別の実施態様では、抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:11のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:12のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:13のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:14のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:16のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:10のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:15のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含む。更なる実施態様では、抗体は(a)配列番号:35のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:36のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:40アミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:35のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:40のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:35のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:40のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:35のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:40のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含む。
【0102】
別の実施態様では、抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:12アミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:65のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:59のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:12のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9アミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:66のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:67のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:60のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:67のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:61アミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:65のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:59のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:66のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:62のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:67のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:63のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:12のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含むか、又は抗体は(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:64のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:12のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含む。
【0103】
別の態様では、発明の抗体は、(a)(i)配列番号:22、23、26、28、45、68、71−73又は120から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1(ii)配列番号:24、29、46、69、74−78又は121から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2及び(iii)配列番号:25、30、47、70、79又は122から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3のVHHVR配列を含んでなるVHドメイン;及び(b)(i)配列番号:7、8、17、35又は42から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1、(ii)配列番号:9、10、18、36−39、41、43、56、58−64又は118から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2、及び(c)配列番号:11−16、19、40、44、57、65−67又は119から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3のVLHVR配列を含んでなるVLドメインを含む。
【0104】
別の態様では、発明は、(a)配列番号:23のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)配列番号:24のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3;(d)配列番号:7のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(e)配列番号:9のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(f)配列番号:12から選択されるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含んでなる抗体を提供する。
【0105】
ある実施態様では、抗体はHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-H1はアミノ酸配列GFX
30FX
31X
32X
33X
34IH(配列番号:45)を含み(上式中、X
30=N又はT;X
31=S、L又はY;X
32=G又はY;X
33=Y又はS;及びX
34=A、G又はS);HVR-H2はアミノ酸配列X
35X
36ISPX
37X
38GX
39TX
40YADSVKG(配列番号:46)を含み(上式中、X
35=A又はG;X
36=W又はS;X
37=A又はY;X
38=G又はS;X
39=S又はY;及びX
40=D又はS);そしてHVR-H3は配列X
41PX
42X
43X
44X
45X
46X
47MDY(配列番号:47)を含む(上式中、X
41=Q又はG;X
42=T又はF;X
43=H又はS;X
44=Y又はP;X
45=Y又はW;X
46=Y又はV及びX
47は配列YAKGYKA(配列番号:48)を含んでいてもよい)。
【0106】
ある実施態様では、抗体はHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-H1はアミノ酸配列GX
71X
72X
73X
74X
75X
76X
77IH(配列番号:120)を含み(上式中、X
71=F又はY;X
72=F、N又はT;X
73=F又はY;X
74=L、Q、I、S又はY;X
75=G又はY;X
76=Y又はS;及びX
77=A、G又はS);HVR-H2はアミノ酸配列X
78X
79ISPX
80X
81GX
82X
83X
84YADSVKG(配列番号:121)を含み(上式中、X
78=A又はG;X
79=W又はS;X
80=A、S、Q又はY;X
81=G又はS;X
82=S、K、L又はY;X
83=T又はY;及びX
84=D又はS);そしてHVR-H3はアミノ酸配列X
85PX
86X
87X
88X
89X
90X
91MDY(配列番号:122)を含む(上式中、X
85=Q又はG;X
86=T又はF;X
87=H、Y又はS;X
88=Y又はP;X
89=Y又はW;X
90=Y又はV及びX
91は配列YAKGYKA(配列番号:48)を含んでいてもよい)。
【0107】
ある実施態様では、抗体はHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-L1はアミノ酸配列RASQX
17VX
18X
19X
20X
21A、(配列番号:42)を含み(上式中、X
17=S、D又はV;X
18=S又はA;X
19=S、T又はN;X
20=A又はS;X
21=V又はL)、HVR-L2はアミノ酸配列X
22ASX
23LYS(配列番号:43)を含み(上式中、X
22=S、W、Y又はL;X
23=F、S又はW)、そしてHVR-L3はアミノ酸配列QQX
24X
25X
26X
27X
28X
29T(配列番号:44)を含む(上式中、X
24=S、F、G、D又はY;X
25=Y、P、S又はA;X
26=Y、T又はN;X
27=T、Y、D又はS;X
28=P又はL;及びX
29=F、P又はT)。
【0108】
ある実施態様では、抗体はHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3の群から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-L1はアミノ酸配列RASQX
17VX
18X
19X
20X
21A(配列番号:42)を含み(上式中、X
17=S、D又はV;X
18=S又はA;X
19=S、T又はN;X
20=A又はS;X
21=V又はL)、HVR-L2はアミノ酸配列X
62ASX
63X
64YX
65(配列番号:118)を含み(上式中、X
62=S、W、Y、F又はL;X
63=F、S、Y又はW;X
64=L又はR;X
65=S、P、R、K又はW)、そしてHVR-L3はアミノ酸配列QQX
66X
67X
68X
69X
70X
71T(配列番号:119)を含む(上式中、X
66=S、F、G、D又はY;X
67=Y、P、S又はA;X
68=Y、T又はN;X
69=T、Y、D又はS;X
70=P、Q、S、K又はL;及びX
71=F、P又はT)。
【0109】
ある実施態様では、抗体はHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-L1はアミノ酸配列RASQX
1VX
2X
3X
4X
5A(配列番号:17)を含み(上式中、X
1=D又はV;X
2=S又はA;X
3=T又はN;X
4=S又はA;X
5=V又はL)、HVR-L2はアミノ酸配列X
6ASFLYS(配列番号:18)を含み(上式中、X
6=S又はL)、そしてHVR-L3はアミノ酸配列QQX
7X
8X
9X
10X
11X
12T(配列番号:19)を含む(上式中、X
7=S、F、G、D又はY;X
8=Y、P、S,又はA;X
9=T又はN;X
10=T、Y、D又はS;X
11=P又はL;X
12=P又はT)。
【0110】
ある実施態様では、抗体はHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-L1はアミノ酸配列RASQX
1VX
2X
3X
4X
5A(配列番号:17)を含み(上式中、X
1=D又はV;X
2=S又はA;X
3=T又はN;X
4=S又はA;X
5=V又はL)、HVR-L2はアミノ酸配列X
48ASX
49X
50YX
51(配列番号:56)を含み(上式中、X
48=S又はF;X
49=F又はY;X
50=L又はR;X
51=S、P、R、K又はW)、HVR-L3はアミノ酸配列QQFPTYX
52PT(配列番号:57)を含む(上式中、X
52=L、Q、S又はK)。
【0111】
ある実施態様では、抗体はHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-H1はアミノ酸配列GFTFX
13GYX
14IH(配列番号:26)を含み(上式中、X
13=S又はL及びX
14=A又はG)、HVR-H2はアミノ酸配列GWISPAGGSTDYADSVKG(配列番号:24)を含み、そしてHVR-H3はアミノ酸配列GPFSPWVMDY(配列番号:25)を含む。
【0112】
ある実施態様では、抗体はHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-H1はアミノ酸配列GX
53X
54X
55X
56GYGIH(配列番号:68)を含み(上式中、X
53=F又はY;X
54=T又はF;X
55=F又はY;X
56=L、Q又はI)、HVR-H2はアミノ酸配列GWISPX
57X
58GX
59X
60DYADSVKG(配列番号:69)を含み(上式中、X
57=A、S又はQ;X
58=G又はS;X
59=S、K又はL;X
60=T又はY)、そしてHVR-H3配列はアミノ酸配列GPFX
61PWVMDY(配列番号:70)を含む(上式中、X
61=S又はY)。
【0113】
ある実施態様では、抗体はHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3から選択される少なくとも一つの配列を含み、HVR-L1はアミノ酸配列RASQSVSSAVA(配列番号:35)を含み、HVR-L2はアミノ酸配列X
15ASX
16LYS(配列番号:41)を含み(上式中、X
15=S、W又はY及びX
16=S又はW)、そしてHVR-L3はアミノ酸配列QQYSYSPFT(配列番号:40)を含む。
【0114】
ある実施態様では、上記の抗BACE1抗体の何れか一又は複数のアミノ酸は、次のHVR位置で置換される:
HVR-H1(配列番号:26):位置5及び8;
HVR-L1(配列番号:17):位置5、7、8、9及び10;
HVR-L2(配列番号:18):位置1又はHVR-L2(配列番号:41)位置1及び4;及び
HVR-L3(配列番号:19):位置3、4、5、6、7及び8。
【0115】
ある実施態様では、ここに提供されるように置換は保存的置換である。ある実施態様では、何れか一又は複数の次の置換が任意の組合せにおいてなされうる:
HVR-H1(配列番号:26):位置5にセリン又はロイシン及び位置8にアラニン又はグリシン;
HVR-L1(配列番号:17):位置5にアスパラギン酸又はバリン;位置7にセリン又はアラニン;位置8にスレオニン又はアスパラギン;位置9にセリン又はアラニン及び位置10にバリン又はロイシン;
HVR-L2(配列番号:18):位置1にセリン又はロイシン又はHVR-L2(配列番号:41)位置1にセリン、チロシン又はトリプトファン又は位置4にチロシン、セリン又はトリプトファン;及び
HVR-L3(配列番号:19):位置3にセリン、フェニルアラニン、グリシン、アスパラギン酸又はチロシン;位置4にチロシン又はプロリン、位置5にセリン、アラニン、スレオニン又はアスパラギン;位置6にチロシン、スレオニン、アスパラギン酸又はセリン、位置7にアスパラギン酸、セリン、プロリン又はロイシン及び位置8にプロリン又はスレオニン。
【0116】
ある実施態様では、ここに提供されるように置換は保存的置換である。ある実施態様では、何れか一又は複数の次の置換が任意の組合せにおいてなされうる:
HVR-H1(配列番号:26):S5L及びA8G;
HVR-L1(配列番号:17):D5V;S7A;T8N;S9A及びV10L;
HVR-L2(配列番号:18):S1L又はHVR-L2(配列番号:41)位置S1W又はY及びS4W;及び
HVR-L3(配列番号:19):位置S3F、G、D又はYl;Y4P、S又はA;T5N;T6Y、D又はS;P7L及びP8T。
【0117】
ある実施態様では、上記の抗BACE1抗体の何れか一又は複数のアミノ酸は、次のHVR位置で置換される:
HVR-H1(配列番号:120):位置2、3、5、6、7及び8;
HVR-H2(配列番号:121):位置1、2、6、7、9、10、及び11;
HVR-H3(配列番号:122)位置1、3、4、5、6、7、及び8
HVR-L1(配列番号:42):位置5、7、8、9及び10;
HVR-L2(配列番号:118):位置1、4、5及び7;及び
HVR-L3(配列番号:119):位置3、4、5、6、7及び8。
ある実施態様では、ここに提供されるように置換は保存的置換である。
【0118】
上記置換のありうる組合せは、上記の配列番号:42−47及び118−122のコンセンサス配列に包含される。
【0119】
上記実施態様の何れかでは、抗BACE1抗体はヒト化である。一実施態様では、抗BACE1抗体は上記実施態様の何れかにおけるHVRを含み、更にアクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。別の実施態様では、抗BACE1抗体は上記実施態様の何れかにおけるHVRを含み、配列番号:1−6、20、21、27、31−34、80−98及び99−117のFR1、FR2、FR3、又はFR4配列を含んでなるVH又はVLを更に含む。
【0120】
別の態様では、抗BACE1抗体は、配列番号:20、21、27及び80−98から選択されるアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を有するが、その配列を含んでなる抗BACE1抗体はBACE1に結合する及び/又はBACE1活性を阻害又は低減する能力を保持する。ある実施態様では、配列番号:20、21、27及び80−98において合計で1〜10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、置換、挿入、又は欠失はHVR外の領域(すなわち、FR)において生じる。場合によっては、抗BACE1抗体は配列番号:20、21、27又は80−98においてVH配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施態様では、VHは(a)配列番号:22、23、26、28、45、68、71、72、73又は120のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1、(b)配列番号:24、29、46、69、74、75、76、77、78又は121のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2、及び(c)配列番号:25、30、47、70、79又は122のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3から選択される1、2又は3のHVRを含む。
【0121】
一態様では、発明は、(a)
図1(B)、2(B)及び24(A)におけるアミノ酸配列を含んでなるHVR-H1;(b)
図1(B)、2(B)及び24(B)におけるアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;(c)
図1(B)、2(B)及び24(C)におけるアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3;(d)
図1(A)、2(A)及び23(A)におけるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(e)
図1(A)、2(A)及び23(B)におけるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(f)
図1(A)及び2(A)及び23(C)におけるアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、又は6のHVRを含んでなる抗BACE1抗体を提供する。
【0122】
別の態様では、抗BACE1抗体であって、配列番号:1−6、31−34及び99−117から選択されるアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%,又は100%配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体が提供される。ある実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を有するが、その配列を含んでなる抗BACE1抗体はBACE1に結合する及び/又はBACE1活性を阻害又は低減する能力を保持する。ある実施態様では、配列番号:1−6、31−34及び99−117において合計で1〜10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、置換、挿入、又は欠失はHVR外の領域(すなわち、FR)において生じる。場合によっては、抗BACE1抗体は配列番号:1−6、31−34又は99−117においてVL配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施態様では、VLは(a)配列番号:7、8、17、35又は42のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L1;(b)配列番号:9、10、18、36−39、41、43及び56、58−64又は118のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:11−16、19、40、44、57、65、66、67又は119のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される1、2又は3のHVRを含む。
【0123】
別の態様では、抗BACE1抗体であって、上記の実施態様の何れかにおけるVH、及び上記の実施態様の何れかにおけるVLを含む抗体が提供される。一実施態様では、抗体は配列番号:21及び配列番号:2においてそれぞれVH及びVL配列を含み、これらの配列の翻訳後修飾を含む。
【0124】
更なる態様では、発明はここに提供される抗BACE1抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、ある実施態様では、配列番号:20、21、27及び80−98から選択されるVH配列及び配列番号:1−6、31−34及び99−117から選択されるVL配列を含んでなる抗BACE1抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。ある実施態様では、配列番号:21及び配列番号:2においてそれぞれVH及びVL配列を含んでなる抗BACE1抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0125】
ある実施態様では、配列番号:49のアミノ酸314SER、316GLU、317LYS、318PHE、319PRO、327GLN、328LEU、329VAL、330CYS、331TRP、332GLN、333ALA、335THR、337PRO、340ILE、375THR、378ASP、380CYS、426PHEに対応する少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9のアミノ酸を含んでなるBACE1内のエピトープに結合する抗体が提供される。
【0126】
ある実施態様では、配列番号:49のアミノ酸314SER;316GLU;317LYS;327GLN;330CYS;331TRP;332GLN;335THR;及び378ASPに対応する少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9のアミノ酸を含んでなるBACE1内のエピトープに結合する抗体が提供される。他の実施態様では、コンホメーションエピトープは、配列番号:49の314SER;316GLU;317LYS;327GLN;330CYS;331TRP;332GLN;335THR;及び378ASPに対応するアミノ酸を含む。BACE1エピトープにおいて同定されるアミノ酸はヒトBACE1アイソフォームAに対応することが理解されるだろう。しかしながら、記載したBACE1コンホメーションエピトープはまた、BACE1の他の変異体及びアイソフォームにおける対応するアミノ酸を包含し、エピトープは記載した残基以外のアミノ酸を含みうる。
【0127】
ある実施態様では、配列番号:49のアミノ酸315−318;配列番号:49のアミノ酸331−335;配列番号:49のアミノ酸370−381;又はその何れかの組合せに対応するBACE1の少なくとも1、少なくとも2又は少なくとも3のアミノ酸領域を含んでなるBACE1内のエピトープに結合する抗体が提供される。一実施態様では、抗体は、配列番号:49のアミノ酸315−318、331−335及び370−381を含んでなるBACE1のエピトープに結合する。
【0128】
別の実施態様では、抗体結合がないBACE1と比較して、結合によりBACE1のP6及び/又はP7部位(Turner等, Biochemistry 44:105-112 (2005))におけるコンホメーション変化をもたらすBACE1内のエピトープに結合する抗体が提供される。更なる実施態様では、BACE1のエピトープに結合し、BACE1の配列番号:49のアミノ酸218−231にランダムなループ構造を引き起こす抗体が提供される。BACE1の配列番号:49のアミノ酸218−231は、基質結合複合体ではα-ヘリックス構造において存在する。
【0129】
別の実施態様では、
図14及び15に示され、BACE1及び抗BACE1抗体、YW412.8.31の結晶構造に記載されるBACE1内の部位に結合する抗体が提供される(実施例3(B))。
【0130】
他の実施態様では、BACE1内のエキソサイトに結合する抗体が提供される。一実施態様では、BACE1内のエキソサイトはKornacker等, Biochem. 44:11567-11573 (2005)によって同定されているのと同じエキソサイトである。一実施態様では、BACE1への結合についてKornacker等, Biochem.44:11567-11573 (2005)(出典明記によってその全体をここに援用する)に記載のペプチド(すなわち、ペプチド1、2、3、1−11、1−10、1−9、1−8、1−7、1−6、2−12、3−12、4−12、5−12、6−12、7−12、8−12、9−12、10−12、4、5、6、5−10、5−9、Y5A、P6A、Y7A、F8A、I9A、P10A及びL11A)と競合する抗体が提供される。
【0131】
別の実施態様では、ここに記載の何れかの抗BACE1抗体と結合について競合する(例えば、同じエピトープに結合する)抗体が提供される。
【0132】
発明の更なる態様では、上記実施態様の何れかによる抗BACE1抗体はキメラ、ヒト化又はヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。一実施態様では、抗BACE1抗体は抗体断片、例えばFv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)
2断片である。別の実施態様では、抗体は完全長抗体、例えばインタクトなIgG1抗体又はここに定義されるほかの抗体クラス又はアイソタイプである。
【0133】
更なる態様では、上記実施態様の何れかによる抗BACE1抗体は、下のセクション1−7に記載されるような何れかの特徴を単独又は組合せにおいて組み入れうる。
【0134】
1.抗体親和性
ある実施態様では、ここに提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10
−8M以下、例えば10
−8M〜10
−13M、例えば10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0135】
一実施態様では、Kdは、次のアッセイによって記載されるように、対象の抗体のFab型とその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、一連の力価の非標識抗原の存在下で、最小濃度の(
125I)標識抗原でFabを均衡にし、ついで抗Fab抗体被覆プレートで結合抗原を捕獲することによって測定する(例えばChen等, J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照)。アッセイ条件を確率するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を5μg/mlの50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中の捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩被覆し、その後PBS中の2%(w/v)のウシ血清アルブミンで室温(およそ23℃)で2から5時間、ブロックする。非吸着プレート(Nunc #269620)において、100pM又は26pMの[
125I]抗原を段階希釈した対象のFabと混合する(例えば、Presta等, Cancer Res. 57: 4593-4599(1997)における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致する)。ついで対象のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは平衡状態に達したことを確認するまでより長い時間(例えば約65時間)継続する場合がある。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。ついで、溶液を取り除き、プレートをPBS中の0.1%ポリソルベート20(Tween-20(登録商標))で8回洗浄した。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MicroScint-20
TM;Packard)を加え、プレートをTOPCOUNT
TMγカウンター(Packard)で10分間計数する。最大結合の20%か又はそれ以下を与える各Fabの濃度を選択して競合結合測定に用いる。
【0136】
他の実施態様によれば、〜10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップで25℃のBIAcore(登録商標)-2000又はBIAcore(登録商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用して表面プラズモン共鳴アッセイを行ってKdを測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈した後、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流量で注入する。抗原の注入後、未反応群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学的な測定では、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流量で0.05%ポリソルベート20(Tween-20
TM)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen等, J. Mol Biol 293:865-881(1999)を参照のこと。上記の表面プラスモン共鳴アッセイにより結合速度が10
6M
−1S
−1を上回る場合、分光計、例えば、ストップフロー具備分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、バンドパス=16nm)の増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。
【0137】
2.抗体断片
ある実施態様では、ここに提供される抗体は抗体断片である。抗体断片は、限定しないが、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')
2、Fv、及びscFv断片、及び以下に記載の他の断片を含む。所定の抗体断片の概説については、Hudson等 Nat. Med. 9:129-134 (2003)を参照のこと。scFv断片の概説については、例えばPluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編,(Springer-Verlag, New York), pp. 269-315 (1994)を参照のこと;また国際公開第93/16185号;及び米国特許第5571894号及び第5587458号を参照のこと。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含みインビボ半減期が増加したFab及びF(ab')
2断片の検討については、米国特許第5869046号を参照のこと。
【0138】
ダイアボディは、二価又は二重特異性でありうる二つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson等, Nat. Med. 9:129-134 (2003);及びHollinger等 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディはまたHudson等, Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0139】
単一ドメイン抗体は抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片である。ある実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば米国特許第6248516B1号を参照)。
【0140】
抗体断片は、限定しないが、ここに記載されるようにインタクトな抗体のタンパク質消化並びに組換え宿主細胞(例えば大腸菌又はファージ)による生産を含む様々な技術によって作製されうる。
【0141】
3.キメラ及びヒト化抗体
ある実施態様では、ここで提供される抗体はキメラ抗体である。あるキメラ抗体は、例えば米国特許第4816567号;及びMorrison等, PNAS USA, 81:6851-6855 (1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又は非ヒト霊長類、例えばサル由来の可変領域)とヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体はクラス又はサブクラスが親抗体のものとは変化せられた「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体はその抗原結合断片を含む。
【0142】
ある種の実施態様では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化される。一般的に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその一部)が非ヒト抗体由来であり、FR(又はその一部)がヒト抗体配列由来である一又は複数の可変ドメインを含む。場合によっては、ヒト化抗体は、ヒト定常領域の少なくとも一部を含むであろう。幾つかの実施態様では、ヒト化抗体における幾つかのFR残基は、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が誘導される抗体)からの対応する残基で置換され、例えば抗体特異性又は親和性が回復又は改善される。
【0143】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えばAlmagro 及び Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)に概説されており、更に例えば、Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);Queen等, PNAS USA 86:10029-10033 (1989);米国特許第5821337号、同7527791号、同6982321号、及び同7087409号;Kashmiri等, Methods 36:25-34 (2005)(SDR(a-CDR)グラフトを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載);Dall'Acqua等, Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記載);及びOsbourn等, Methods 36:61-68 (2005) 及び Klimka等, Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000)(FRシャッフリングに対する「案内選別(guided selection)」アプローチ法を記載)に記載されている。
【0144】
ヒト化に使用されうるヒトフレームワーク領域には、限定されるものではないが、「ベストフィット法」を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims等 J. Immunol. 151:2296 (1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変ドメインの特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導されるフレームワーク領域(例えば、Carter等 PNAS USA, 89:4285 (1992);及び Presta等 J. Immunol., 151:2623 (1993));ヒト成熟(体細胞的に変異された)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro及びFransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照);及びFRライブラリーのスクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca等, J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) 及び Rosok等, J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996)を参照)が含まれる。
【0145】
4.ヒト抗体
ある実施態様では、ここで提供される抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で知られている様々な技術を使用して産生せしめることができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk及びvan de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001)及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に記載されている。
【0146】
ヒト抗体は、抗原投与に反応してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫源を投与することによって調製することができる。このような動物は、ヒト免疫グロブリン座位の全て又は一部を典型的には含み、内在性免疫グロブリン座位を置き換えるか、又は染色体外、又は動物の染色体内にランダムに組み込まれて存在する。このようなトランスジェニックマウスにおいて、内在性免疫グロブリン座位は、一般的に不活性化される。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の概説は、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005)を参照のこと。また、XENOMOUSE
TM技術を記載する米国特許第6075181号及び同6150584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5770429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7041870号;VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を参照。このような動物により産生されるインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば異なるヒト定常領域と組合せることにより、更に修飾することができる。
【0147】
また、ヒト抗体は、ハイブリドーマベース法により作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の生産のためのヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner等, J. Immunol., 147: 86 (1991)を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して産生されるヒト抗体は、Li等, PNAS. USA, 103:3557-3562 (2006)にまた記載されている。付加的な方法には、例えば米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の生産を記載)、及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されている。また、ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers 及びBrandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) 及び Vollmers及びBrandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)にも記載されている。
【0148】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することにより産生せしめることもできる。ついで、このような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組合せられうる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を以下に記載する。
【0149】
5.ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特性を有する抗体について、そのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で知られている。このような方法は、例えばHoogenboom等 Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien等編, Human Press, Totowa, NJ, 2001)において概説され、更に例えばMcCafferty等, Nature 348:552-554;Clackson等, Nature 352: 624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992);Marks及びBradbury, Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo編, Human Press, Totowa, NJ, 2003);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004);Fellouse, PNAS USA 101(34): 12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)に記載されている。
【0150】
ある種のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリーにおいてランダムに組換えられ、これがついで、Winter等, Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載されているように、抗原-結合ファージについてスクリーニングされうる。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片又はFab断片として、抗体断片をディスプレイする。免疫化されたソースからのライブラリーにより、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対して高親和性の抗体が提供される。あるいは、天然レパートリーを、Griffiths等, EMBO J, 12: 725-734 (1993)に記載されているように、免疫化をすることなく、広範囲の非自己、更には自己抗原に対するヒト抗体の単一供給源を提供するために(例えばヒトから)クローニングすることができる。最後に、ナイーブライブラリーは、幹細胞から再配置されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用することで合成的に作製することができ、高頻度可変CDR3領域をコードし、Hoogenboom 及び Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)により記載されているような、再配置をインビトロで達成することができる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許文献には、例えば米国特許第5750373号、及び米国特許出願第2005/0079574号、同2005/0119455号、同2005/0266000号、同2007/0117126号、同2007/0160598号、同2007/0237764号、同2007/0292936号、及び同2009/0002360号が含まれる。
【0151】
ヒト抗体ライブラリーから単離される抗体又は抗体断片は、ここでのヒト抗体又はヒト抗体断片と考えられる。
【0152】
6.多重特異性抗体
ある実施態様では、ここで提供される抗体は多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある種の実施態様では、結合特異性の一つはBACE1に対してであり、他方は任意の他の抗原に対してである。ある実施態様では、二重特異性抗体は、BACE1の二つの異なるエピトープに結合しうる。また二重特異性抗体はBACE1を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化させるために使用することができる。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0153】
多重特異性抗体を作製するための技術には、限定されるものではないが、異なる特異性を有する二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現(Milstein及びCuello, Nature 305: 537 (1983)を参照)、国際公開第93/08829号、及びTraunecker等, EMBO J. 10: 3655 (1991))、及び「ノブ-イン-ホール」技術(例えば、米国特許第5731168号を参照)が含まれる。また、多重特異性抗体は、抗体ヘテロ二量体分子を作製するための静電気操縦効果の設計(国際公開第2009/089004A1号);2又はそれ以上の抗体又は断片の架橋(例えば、米国特許第4676980号、及びBrennan等, Science, 229: 81 (1985)を参照);二重特性抗体の産生のためのロイシンジッパーの使用(例えば、Kostelny等, J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992));二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger等, PNAS USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);及び単鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber等, J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照);及びTutt等 J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているような三重特異性抗体の調製により、作製することができる。
【0154】
「オクトパス抗体」を含む3又はそれ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体もここに含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576A1号を参照)。
【0155】
また、ここでの抗体又は断片は、BACE1並びに他の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」又は「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号を参照)。
【0156】
7.抗体変異体
ある実施態様では、ここに提供される抗体のアミノ酸配列変異体が考えられる。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的性質を改善させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入して、又はペプチド合成により調製されうる。そのような修飾は、抗体のアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終コンストラクトが所望の特性、例えば抗原結合性を有している限り、欠失、挿入、及び置換をどのように組合せて、最終コンストラクトに到達してもよい。
【0157】
a)置換、挿入、及び欠失変異体
ある実施態様では、一又は複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換突然変異誘発のために関心ある部位はHVR及びFRを含む。保存的置換は、「保存的置換」と題して表1に示す。より実質的な変化は「例示的置換」との項目で表1に提供され、アミノ酸側鎖クラスを基準にして以下に更に記載される。アミノ酸置換は関心ある抗体に導入され得、生成物が所望の活性、例えば保持された/改善された抗原結合性、低減した免疫原性、改善されたADCC又はCDCについて、スクリーニングされる。
【0158】
アミノ酸は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0159】
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを他のクラスに交換することを必要とするであろう。
【0160】
一タイプの置換変異体は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基を置換することを含む。一般的に、更なる研究のために選択される得られた変異体は、親抗体に対して所定の生物学的性質(例えば親和性の増加、免疫原性の減少)に修飾(例えば改善)を有するか、及び/又は親抗体の実質的に保持された所定の生物学的性質を有しているであろう。例示的な置換変異体は、親和性成熟抗体であり、これは、例えばここに記載されたもののようなファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して簡便に産生せしめることができる。簡潔に言えば、一又は複数のHVR残基を変異させ、変異体抗体をファージにディスプレイさせ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0161】
改変(例えば置換)は、例えば抗体親和性を改善するために、HVRにおいてなされうる。このような改変はHVR「ホットスポット」、つまり体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えばChowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照)、及び/又はSDRs(a-CDRs)においてなされる場合があり、得られる変異体VH又はVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築しそれから再選択することによる親和性成熟は、例えばHoogenboom等 Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien等編, Human Press, Totowa, NJ, (2001))に記載されている。親和性成熟の幾つかの実施態様では、様々な方法(例えばエラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発)の何れかによって成熟のために選択された可変遺伝子中に多様性が導入される。ついで、二次抗体が作製される。ついで、ライブラリーがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体変異体が同定される。多様性を導入する他の方法は、幾つかのHVR残基(例えば一度に4−6残基)が無作為化されるHVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基が、例えばアラニンスキャン突然変異誘発又はモデリングを使用して、特に同定されうる。特にCDR-H3及びCDR-L3がしばしば標的とされる。
【0162】
ある実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、一又は複数のHVR内で生じうる。例えば、結合親和性を実質的に減少させない保存的改変(例えばここで提供される保存的置換)をHVRにおいてなすことができる。そのような改変はHVR「ホットスポット」又はSDRの外側でありうる。上に提供された変異VH及びVL配列の所定の実施態様では、何れかの各HVRが改変されず、又は一、二又は三のアミノ酸置換を含む。
【0163】
突然変異誘発の標的とされうる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science 244:1081-1085 (1989)によって記載されている「アラニンスキャンニング突然変異誘発法」と呼ばれる。この方法において、残基又は標的残基の群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が同定され、中性の又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)で置換され、抗体の抗原との相互作用に影響があるかどうかが決定される。最初の置換に対して機能的感受性を示しているアミノ酸位置に更なる置換を導入することができる。あるいは、又は付加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造が抗体と抗原間の接触点を同定する。そのような接触残基及び近傍の残基は置換のための候補として標的にされるか又は削除されうる。変異体は、それらが所望の性質を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされうる。
【0164】
アミノ酸配列挿入は、長さが1残基から百以上の残基を含むポリペプチドまで及ぶアミノ末端及び/又はカルボキシ末端融合体、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドへの抗体のN又はC末端の融合を含む。
【0165】
b)グリコシル化変異体
ある実施態様では、ここで提供される抗体は、抗体がグリコシル化される度合いを増大又は減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、アミノ酸配列を、一又は複数のグリコシル化部位が作られ又は除去されるように改変させることによって、簡便に達成されうる。
【0166】
抗体がFc領域を含む場合、そこに結合される炭水化物が改変されうる。哺乳動物細胞により産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297に対してN結合により一般的に結合する分枝状で二分岐のオリゴ糖を含む。例えば、Wright等 TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照。オリゴ糖は様々な炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸を含み得、並びにフコースが二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合される。幾つかの実施態様では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が、ある改善された特性を有する抗体変異体を生じせしめるために、なされうる。
【0167】
一実施態様では、Fc領域に(直接又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、かかる抗体におけるフコースの量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%、又は20%から40%でありうる。フコースの量は、例えば国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定して、Asn297(例えば複合のハイブリッド及び高マンノース構造)に結合した全ての糖構造の合計に対してAsn297の糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297はFc領域内の約297位(Fc領域のEu番号付け)に位置したアスパラギン残基を意味する;しかしながら、Asn297は、抗体中のマイナーな配列変異のために、297位から約±3アミノ酸上流又は下流に、つまり294位と300位の間に位置している場合がありうる。そのようなフコシル化変異体は改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)を参照。「脱フコシル化された」又は「フコース欠損」抗体変異体に関連した刊行物の例には、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;国際公開第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;米国特許出願公開第2002/0164328号;米国特許出願公開第2004/0093621号;米国特許出願公開第2004/0132140号;米国特許出願公開第2004/0110704号;米国特許出願公開第2004/0110282号;米国特許出願公開第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;国際公開第2003/084570号;国際公開第2005/035586号;国際公開第2005/035778号;国際公開第2005/053742号;国際公開第2002/031140号;Okazaki等 J. Mol. Biol. 336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を生産可能な細胞株の例には、タンパク質フコシル化に欠けているLec13CHO細胞(Ripka等 Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号, Presta, L;及び国際公開第2004/056312A1号, Adams等,特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y等, Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)が含まれる。
【0168】
例えば抗体のFc領域に結合した二分オリゴ糖がGlcNAcにより二分される二分オリゴ糖を有する抗体変異体が更に提供される。そのような抗体変異体は、フコシル化が低減され、及び/又はADCC機能が改善されている場合がある。そのような抗体変異体の例は、例えば国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet等);米国特許第6602684号(Umana等);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana等)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖に少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。このような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有している場合がある。このような抗体変異体は、例えば国際公開第1997/30087号(Patel等);国際公開第1998/58964号(Raju, S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju, S.)に記載されている。
【0169】
c)Fc領域変異体
ある実施態様では、一又は複数のアミノ酸修飾が、ここに提供される抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域変異体を産生せしめてもよい。Fc領域変異体は、一又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含んでなるヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4Fc領域)を含みうる。
【0170】
ある実施態様では、本発明は、幾つかであるが全てではないエフェクター機能を持つ抗体変異体を考察し、これは、抗体を、インビボでの抗体の半減期は重要であるが、あるエフェクター機能(例えば、補体及びADCC)は不要か又は有害である用途のために望ましい候補とする。CDC及び/又はADCC活性の減少/喪失を確認するために、インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害性アッセイが実施されうる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγR結合を欠く(よってADCC活性を欠くと思われる)が、FcRn結合能力を保持していることを確かめるために実施されうる。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγI、FcγII及びFcγIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するための非限定的なインビトロアッセイが米国特許第5500362号(例えばHellstrom, I.等 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)) and Hellstrom, I等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985); 5,821,337 (see Bruggemann, M.等, J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照)に記載されている。別法では、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA;及びCyto Tox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照)。このようなアッセイのために有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes等 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)に記載されているような動物モデルにおいてインビボで評価されうる。Clq結合アッセイが、抗体がClqに結合できず、よってCDC活性を欠くことを確認するためにまた実施されうる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S.等, Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期定量も当該技術分野で知られている方法を使用して実施することがまたできる(例えば、Petkova, S.B.等, Intl. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照)。
【0171】
減少したエフェクター機能を有する抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の一又は複数の置換を有するものを含む(米国特許第6737056号)。このようなFc変異体は、二又はそれ以上のアミノ酸位265、269、270、297及び327に置換を有するFc変異体を含み、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7332581号)。
【0172】
FcRへの改良又は減少された結合を有するある種の抗体変異体が記載されている(例えば米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照)。
【0173】
ある実施態様では、抗体変異体は、ADCCを改善する一又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/又は334での置換(残基のEU番号付け)を有するFc領域を含む。
【0174】
幾つかの実施態様では、例えば米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に記載されているように、改変された(つまり、改善され又は減少した)Clq結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を生じる改変がFc領域に改変がなされる。
【0175】
増加した半減期及び胎児への母性IgGsの移動に関与する新生児Fcレセプター(FcRn)(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))への改善された結合性を有する抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934A1(Hinton等)に記載されている。その抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する一又は複数の置換をそこに有するFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の一又は複数での置換、例えばFc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7371826号)。
【0176】
Fc領域変異体の他の例に関しては、Duncan及びWinter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0177】
d)システイン操作抗体変異体
ある実施態様では、システイン操作抗体、例えば抗体の一又は複数の残基がシステイン残基で置換される「thioMAbs」を作ることが望ましいことがある。特定の実施態様では、置換される残基が抗体の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインと置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能な部位に位置させられ、抗体を他の部分、例えば薬剤部分又はリンカー薬剤部分に結合させ、ここで更に記載されるように免疫コンジュゲートを作るために使用されうる。ある実施態様では、以下の残基の任意の一又は複数がシステインと置換されうる:軽鎖のV205(カバット番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば米国特許第7521541号に記載されるようにして、産生されうる。
【0178】
e)抗体誘導体
ある実施態様では、ここに提供される抗体は、当該技術分野において知られ直ぐに利用できる更なる非タンパク質性部分を含むように更に修飾することができる。抗体の誘導体化に適した部分は、限定しないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーかランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中におけるその安定性のために製造の際に有利でありうる。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じでも異なった分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、抗体誘導体が定まった条件下での治療に使用されるかどうか等を含む、改善される抗体の特定の性質又は機能を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0179】
他の実施態様では、放射線への暴露によって選択的に加熱されうる非タンパク質様部分及び抗体のコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質様部分はカーボンナノチューブである(Kam等 , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線は任意の波長のものであってよく、限定するものではないが、通常の細胞に害を与えないが、抗体-非タンパク質様部分に近位の細胞が死滅させられる温度まで非タンパク質様部分を加熱する波長が含まれる。
【0180】
B.組換え方法及び組成物
抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載されているように、組換え法及び構成物を使用して製造することができる。一実施態様では、ここに記載の抗BACE1抗体をコードする単離核酸が提供される。このような核酸は、VLを含んでなるアミノ酸配列及び/又は抗体のVHを含んでなるアミノ酸配列(例えば、抗体の軽及び/重鎖)をコードしてもよい。更なる実施態様では、このような核酸を含んでなる一又は複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる実施態様では、このような核酸を含んでなる宿主細胞が提供される。このような一実施態様では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含んでなるアミノ酸配列及び抗体のVHを含んでなるアミノ酸配列をコードする核酸を含んでなるベクター、又は(2)抗体のVLを含んでなるアミノ酸配列をコードする核酸を含んでなる第一ベクター、及び抗体のVHを含んでなるアミノ酸配列をコードする核酸を含んでなる第2ベクターを含む(例えば、これらによって形質転換される)。一実施態様では、宿主細胞は真核生物、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球系細胞(例えばY0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様では、抗BACE1抗体の作製方法が提供され、該方法は、上に提供された抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に適した条件下で、培養し、場合によっては宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することを含む。
【0181】
抗BACE1抗体の組換え生産では、例えば上述のような抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞での更なるクローニング及び/又は発現のために一又は複数のベクターに挿入される。このような核酸は、直ちに単離され、一般的な手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定されうる。
【0182】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現のために適した宿主細胞は、ここに記載される原核細胞又は真核細胞である。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合に、細菌で生産されうる。細菌での抗体断片及びポリペプチドの発現については、米国特許第5648237号、米国特許第5789199号、及び米国特許第5840523号を参照のこと。(また大腸菌中での抗体断片の発現を記述しているCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 245-254を参照)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、更に精製されうる。
【0183】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物が、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主であり、そのグリコシル化経路が「ヒト化」された菌及び酵母株を含み、部分的に又は完全にヒト化したグリコシル化パターンを持つ抗体の生産を生じる。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004),及びLi等, Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照。
【0184】
グリコシル化抗体の発現のために適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からもまた誘導される。無脊椎動物細胞の例は、植物及び昆虫の細胞を含む。特にヨウトガ細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併用されうる多くのバキュロウィルス株が同定されている。
【0185】
植物細胞培養もまた宿主として利用することができる。例えば米国特許第5959177号、同第6040498号、同第6420548号、同第7125978号、及び同第6417429号(遺伝子導入植物において抗体を生産するためのPLANTIBODIES
TM技術を記述)を参照。
【0186】
脊椎動物細胞をまた宿主として使用することができる。例えば、懸濁状態で増殖するよう適合化された哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(Graham等, J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載された293又は293細胞);ベビーハムスター腎細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えばMather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されるTM4細胞);サル腎細胞(CV1);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載されるTRI細胞;MRC 5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));及びY0、NS0、及びSp2/0等のミエローマ細胞株である。抗体生産のために適した哺乳類動物宿主細胞株の概説として、例えばYazaki及びWu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp255-268 (2003)を参照のこと。
【0187】
C.アッセイ
ここに提供される抗BACE1抗体は、当分野で知られている様々なアッセイによってそれらの物理的/化学的特性について同定、スクリーニング、又は特徴付けされうる。
【0188】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、発明の抗体は、知られている方法、例えばELISA、ウエスタンブロット等によってその抗原結合活性について試験される。
【0189】
他の態様では、競合アッセイはBACE1に対する結合について、ここに記載の抗体又はFabの何れか、例えばYW412.8、YW412.8.31、YW412.8.30、YW412.8.2、YW412.8.29、YW412.8.51、Fab12、LC6、LC9、LC10と競合する抗体を同定するために使用されうる。ある実施態様では、このような競合抗体は、ここに記載の抗体又はFabの何れか、例えばYW412.8、YW412.8.31、YW412.8.30、YW412.8.2、YW412.8.29、YW412.8.51、Fab12、LC6、LC9、LC10によって結合される同じエピトープ(例えば線状又はコンホメーションエピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0190】
例示的な競合アッセイでは、固定されたBACE1が、BACE1(例えば、YW412.8、YW412.8.31、YW412.8.30、YW412.8.2、YW412.8.29、YW412.8.51、Fab12、LC6、LC9、LC10)に結合する第一標識抗体、及びBACE1への結合について第一抗体と競合するその能力について試験されている第二非標識抗体を含んでなる溶液中においてインキュベートされる。第二抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在しうる。コントロールとして、固定されたBACE1が、第一標識抗体を含むが第二非標識抗体を含まない溶液中においてインキュベートされる。BACE1への第一抗体の結合が可能な条件下でのインキュベーション後、過剰な非結合抗体が除去され、固定されたBACE1に付随するラベルの量が測定される。固定されたBACE1に付随するラベルの量が、コントロールサンプルと比較して試験サンプルにおいて有意に低減された場合、これは、BACE1への結合について第二抗体が第一抗体と競合していることを意味する。Harlow and Lane (1988) Antibodies:A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
【0191】
2.活性アッセイ
一態様では、生物学的活性を有するその抗BACE1抗体を同定するためのアッセイが提供される。生物学的活性は、例えばBACE1アスパルチルプロテアーゼ活性の阻害又は低減;又はBACE1によるAPP切断の阻害又は低減;又はAβ生産の阻害又は低減を含む。インビボ及び/又はインビトロにおいてこのような生物学的活性を有する抗体も提供される。
【0192】
ある実施態様では、発明の抗体は、このような生物学的活性について試験される。例えば、BACE1プロテアーゼ活性は、合成基質ペプチドを使用して、実施例1及び2(B)に詳細に記載するようにホモジニアス時間分解蛍光HTRFアッセイ又はマイクロ流体キャピラリー電気泳動(MCE)アッセイにおいて試験できる。
【0193】
簡潔には、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイは、アミロイド前駆タンパク質BACE1切断部位ペプチドの使用によりBACE1アスパルチルプロテアーゼ活性を測定するために使用できる。例えば、Bi27ペプチド(ビオチン−KTEEISEVNLDAEFRHDSGYEVHHQKL(配列番号:53), American Peptide Company))を、384-ウェルプレート(Proxiplate
TM, Perkin-Elmer)においてBACE反応バッファー(50mM酢酸ナトリウムpH4.4及び0.1%CHAPS)中において抗BACE抗体でプレインキュベートされたBACE1と組み合わせる。タンパク分解性反応混合物を周囲温度で75分間インキュベートし、検出バッファー(200mM Tris pH 8.0、20mM EDTA, 0.1% BSA、及び0.8M KF)中において、2nMのストレプトアビジン-D2及び150nMのユーロピウムクリプテートで標識された抗アミロイドβ抗体を有する5μLのHTRF検出混合物の添加によってクエンチした。最終反応混合物を周囲温度で60分間インキュベートし、TR-FRETシグナルを320nmの励起波長及び615及び665nmの放出波長でEnVision Multilabel Plate Reader
TM (Perkin-Elmer)を使用して測定する。
【0194】
MCEアッセイ反応は標準的な酵素反応において実施可能であり、ヒトBACE1(細胞外ドメイン)、アミロイド前駆タンパク質βセクレターゼ活性部位ペプチド(FAM-KTEEISEVNLDAEFRWKK-CONH
2(配列番号:55))、50mMのNaOAc pH4.4及び0.1%CHAPSを有する、4x化合物及び酵素に基質を添加することによって開始した。周囲温度で60分間のインキュベーションの後、各反応における産物及び基質をLC3000(登録商標)(both, Caliper Life Sciences)において分析される12-sipper microfluidic chipを使用して分離した。産物及び基質の分離は、製造者の最適化ソフトウェアを使用して電圧及び圧力を選択することによって最適化される。基質変換はHTS Well Analyzer software (Caliper Life Sciences)を使用して電気泳動図から算出される。
【0195】
更に、BACE1プロテアーゼ活性は、APP等のBACE1基質を発現する細胞株においてインビボで、又はヒトAPP等のBACE1基質を発現するトランスジェニックマウスにおいて、実施例2(C)及び4に記載のように試験できる。
【0196】
更に、BACE1プロテアーゼ活性は動物モデルにおいて抗BACE1抗体で検査できる。例えば、様々な神経疾患及び障害の動物モデル、及びこれらのモデルに伴う病理学的過程を検査するための関連技術が当分野において容易に利用可能である。様々な神経障害の動物モデルは、非組換え及び組換え(トランスジェニック)動物双方を含む。非組換え動物モデルは、例えば齧歯類、例えばマウスモデルを含む。このようなモデルは、標準的な技術、例えば皮下注射、尾静脈注射、脾臓移植、腹腔内移植、及び腎被膜下移植を使用して同系マウスに細胞を導入することによって生成可能である。インビボモデルは、脳卒中/脳虚血のモデル、神経変性疾患のインビボモデル、例えばパーキンソン病のマウスモデル;アルツハイマー病のマウスモデル;筋萎縮性側索硬化症のマウスモデル;脊髄性筋萎縮症のマウスモデル;局所及び全脳虚血のマウス/ラットモデル、例えば一般的な頸動脈閉塞又は中大脳動脈閉塞モデル;又はエクスビボ全胚培養を含む。一非限定的な例として、アルツハイマー病のための多くの当分野で知られたマウスモデルがある((例えばRakover等, Neurodegener. Dis. (2007); 4(5): 392-402; Mouri等, FASEB J. (2007) Jul;21 (9): 2135-48; Minkeviciene et al ., J. Pharmacol. Exp. Ther. (2004) Nov; 311 (2) :677-82 and Yuede等, Behav Pharmacol. (2007) Sep; 18 (5-6): 347-63を参照)。様々なアッセイが、知られたインビトロ又はインビボアッセイ形態において実施され得、当分野で知られており、文献に記載されている。様々なこのような動物モデルはまた、Jackson Laboratory等の民間ベンダーから入手から入手可能である。更なる動物モデルアッセイを実施例4及び5に記載する。
【0197】
D.イムノコンジュゲート
発明はまた、一又は複数の細胞傷害性物質、例えば化学療法物質又は薬物、増殖阻害物質、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素的活性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体にコンジュゲートされたここの抗BACE1抗体を含んでなるイムノコンジュゲートを提供する。
【0198】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、限定しないが、メイタンシノイド(米国特許第5208020号、第5416064号及び欧州特許第0425235B1号を参照);アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチン薬剤部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)(米国特許第5635483号及び同第5780588号及び同第7498298号を参照);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5712374号、同第5714586号、同第5739116号、同第5767285号、同第5770701号、同第5770710号、同第5773001号、及び同第5877296号;Hinman等, Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);及びLode等, Cancer Res. 58:2925-2928 (1998)を参照);アントラサイクリン、例えばダウノマイシン又はドキソルビシン(Kratz等, Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey等, Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov等, Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik等, Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King等, J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);及び米国特許第6630579号を参照);メトトレキセート;ビンデシン;タキサン、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセル;トリコテシン及びCC1065を含む一又は複数の薬物に抗体がコンジュゲートされる抗体薬剤コンジュゲート(ADC)である。
【0199】
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、限定しないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む、酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートされたここに記載された抗体を含む。
【0200】
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートされるここに記載の抗体を含む。様々な放射性同位元素が放射性コンジュゲートの生産のために利用可能である。例は、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位元素を含む。放射性コンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばTc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても知られている)用のスピン標識、例えばまたヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含みうる。
【0201】
抗体と細胞傷害剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照のこと。リンカーは細胞中の細胞傷害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」でありうる。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
【0202】
ここでのイムノコンジュゲート又はADCは、限定するものではないが、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含む架橋剤を用いて調製されるコンジュゲートが明示的に考えられる。
【0203】
E.診断及び検出のための方法及び組成物
ある実施態様では、ここに提供される何れかの抗BACE1抗体は生物学的サンプルにおけるBACE1の存在の検出に有用である。「検出」なる用語は、ここで使用される場合、定量的又は定性的検出を包含する。ある実施態様では、生物学的サンプルは細胞又は組織、例えば血清、血漿、唾液、胃液分泌物、粘液、脳脊髄液、リンパ液、神経組織、脳組織、心臓組織又は血管組織を含む。
【0204】
一実施態様では、診断又は検出の方法における使用のための抗BACE1抗体が提供される。更なる態様では、生物学的サンプルにおけるBACE1の存在を検出する方法が提供される。ある実施態様では、方法は、生物学的サンプルを、BACE1への抗BACE1抗体の結合が可能な条件下でここに記載の抗BACE1抗体と接触させる工程、及び抗BACE1抗体及びBACE1間で複合体が形成されているかを検出する抗体を含む。このような方法はインビトロ又はインビボ方法でありうる。一実施態様では、抗BACE1抗体は抗BACE1抗体での治療に適格な被験体を選択するために使用され、例えばBACE1が患者の選択のためのバイオマーカーである場合などである。
【0205】
発明の抗体を使用して診断されうる例示的な障害は、神経変性疾患、例えば非限定的に、レビー小体病、ポリオ後症候群、シャイ・ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体黒質変性症、タウオパチー、(アルツハイマー病、及び核上性麻痺を含むがこれらに限定されない)、プリオン病(ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、慢性消耗病、及び致死性家族性不眠症を含むがこれらに限定されない)、脳卒中、筋ジストロフィー、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パジェット症候群、外傷性脳損傷、球麻痺、運動ニューロン疾患、及び神経系ヘテロ変性疾患(カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン症、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス縮毛症候群、コケイン症候群、ハラーホルデン・スパッツ症候群、ラフォラ病、レット症候群、肝レンズ核変性症、レッシュ・ナイハン症候群、及びウンフェルリヒト・ルントボルク症候群を含むがこれらに限定されない)、認知症(ピック病、及び脊髄小脳失調症を含むがこれらに限定されない)が含まれる。
【0206】
ある実施態様では、標識抗BACE1抗体が提供される。標識には、限定するものではないが、直接検出される標識又は分子(例えば、蛍光、発色、高電子密度、化学発光、及び放射性標識)、並びに、例えば酵素反応又は分子相互作用によって間接的に検出される酵素ないしはリガンドなどの分子が含まれる。例示的な標識には、限定するものではないが、放射性同位体である
32P、
14C、
125I、
3H、及び
131I、フルオロフォア、例えば希有土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、複素環のオキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、HRP、ラクトペルオキシダーゼ又はマイクロペルオキシダーゼなどの色素前駆体を酸化するために水素ペルオキシダーゼを用いる酵素とカップリングさせたもの、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離基などが含まれる。
【0207】
F.薬学的製剤
ここに記載された抗BACE1抗体の薬学的製剤は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、一又は複数の任意の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol,A.編(1980))と所望の度合いの純度を有する抗体を混合することにより調製される。薬学的に許容される担体は用いられる用量及び濃度でレシピエントに一般に非毒性であり、限定しないが、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン;保存料(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含む。ここでの例示的な薬学的に許容可能な担体は、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えばヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標), Baxter International, Inc.)のような間質薬剤分散剤を更に含む。rHuPH20を含むある種の例示的sHASEGPs及び使用方法は米国特許出願公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは一又は複数のグリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと組み合わせられる。
【0208】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は米国特許第6267958号に記載される。水性抗体製剤は米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されたものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテートバッファーを含む。
【0209】
また、ここでの製剤は治療される特定の適応症に必要な一又は複数の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものを含みうる。このような活性成分は意図される目的のために有効である量で組合わせて適切に存在する。
【0210】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A.編(1980)に開示されている。
【0211】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例は、抗体を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0212】
インビボ投与に使用される製剤は一般に無菌である。滅菌は、例えば滅菌濾過膜による濾過により、直ぐに達成されうる。
【0213】
G.治療方法及び組成物
ここに提供される抗BACE1抗体の何れかは、治療方法において使用されうる。
【0214】
一態様では、医薬としての使用のための抗BACE1抗体が提供される。更なる態様では、神経疾患又は障害の治療における使用のための抗BACE1抗体が提供される(例えばAD)。ある実施態様では、治療の方法における使用のための抗BACE1抗体が提供される。ある実施態様では、発明は、有効量の抗BACE1抗体を個体に投与することを含んでなる、神経疾患又は障害を有する個体を治療する方法における使用のための抗BACE1抗体を提供する。一このような実施態様では、方法は、有効量の少なくとも一つの更なる治療剤を個体に投与することを更に含む。更なる実施態様では、発明は、神経疾患又は障害(例えばAD)の危険があるか又は患っている患者におけるアミロイド斑形成の低減又は阻害における使用のための抗BACE1抗体を提供する。ある実施態様では、発明は、有効量の抗BACE1抗体を個体に投与することを含んでなる、個体におけるAβ生産の低減又は阻害の方法における使用のための抗BACE1抗体を提供する。上記実施態様の何れかによる「個体」とは、好ましくはヒトである。ある態様では、発明の方法における使用のための抗BACE1抗体は、BACE1活性を低減又は阻害する。例えば抗BACE1抗体は、APPを切断するBACE1の能力を低減又は阻害する。
【0215】
更なる態様では、発明は、医薬の製造又は調製における抗BACE1抗体の使用を提供する。一実施態様では、医薬は神経疾患又は障害の治療のためである。更なる実施態様では、医薬は、有効量の医薬を神経疾患又は障害を有する個体に投与することを含んでなる、神経疾患又は障害を治療する方法における使用のためである。一このような実施態様では、方法は、有効量の少なくとも一つの更なる治療剤、例えば下記のものを個体に投与することを更に含む。更なる実施態様では、医薬はBACE1活性を阻害するためである。更なる実施態様では、医薬は、Aβ生産又は斑形成を阻害するために、有効量の医薬を個体に投与することを含んでなる、個体におけるAβ生産又は斑形成を阻害する方法における使用のためである。上記実施態様の何れかによる「個体」は、ヒトでありうる。
【0216】
更なる態様では、発明はアルツハイマー病を治療するための方法を提供する。一実施態様では、方法は、有効量の抗BACE1抗体をADを有する個体に投与することを含む。一このような実施態様では、方法は、有効量の少なくとも一つの更なる治療剤を個体に投与することを更に含む。上記実施態様の何れかによる「個体」は、ヒトでありうる。
【0217】
更なる態様では、発明は、例えば上記治療方法の何れかにおける使用のための、ここに提供される抗BACE1抗体の何れかを含んでなる薬学的製剤を提供する。一実施態様では、薬学的製剤は、ここに提供される何れかの抗BACE1抗体及び薬学的に許容可能な担体を含む。他の実施態様では、薬学的製剤は、ここに提供される何れかの抗BACE1抗体及び少なくとも一つの更なる治療剤、例えば下記のものを含む。
【0218】
発明の抗体は、治療において単独で、又は他の薬剤との組合せにおいて使用されうる。例えば、発明の抗体は少なくとも一つの更なる治療剤と共投与されうる。
【0219】
上記のこのような併用療法は、組合せ投与(2以上の治療在が同じ又は別の製剤中に含まれる)、及び別々の投与(この場合、発明の抗体の投与は更なる治療剤及び/又はアジュバントの投与より前に、同時に、及び/又は後に行われる)を含包含する。発明の抗体は放射線治療と併用して使用されることもできる。
【0220】
本発明の抗体(及び任意の更なる治療剤)は、非経口、腹腔内、及び鼻腔内、及び局所治療が望まれるならば、病巣内投与を含む任意の適切な手段によって投与されうる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は、任意の適切な経路、例えば投与が短期か慢性であるかどうかに部分的に依存して、静脈内又は皮下注射のような注射によるものとできる。限定しないが、単一又は様々な時点にわたる複数回の投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含む様々な投薬スケジュールがここで考えられる。
【0221】
発明のある実施態様は、血液脳関門を通過するための抗体又はその断片を提供する。ある神経変性疾患は、血液脳関門の透過性の増加を伴い、抗体又はその活性断片は容易に脳に導入可能である。血液脳関門がインタクトなままの場合、それを通過して分子を運ぶための幾つかの当分野で知られた方法が存在し、限定するものではないが、物理的方法、脂質ベース法、及び受容体及びチャンネルベース法を含む。
【0222】
血液脳関門を通過して抗体又はその断片を運ぶ物理的方法は、限定するものではないが、血液脳関門全体を回避するか又は血液脳関門に開口を作ることを含む。回避方法は、限定するものではないが、脳への直接注射(例えばPapanastassiou等, Gene Therapy 9: 398-406 (2002)を参照)及び脳における送達装置移植(例えばGill等, Nature Med. 9: 589-595 (2003); and Gliadel Wafers
TM, Guildford Pharmaceuticalを参照)を含む。関門に開口を作る方法は、限定するものではないが、超音波(例えばU.S. Patent Publication No. 2002/0038086号を参照)、浸透圧(例えば、高張性マンニトールの投与(Neuwelt, E. A., Implication of the Blood-Brain Barrier and its Manipulation, Vols 1 & 2, Plenum Press, N.Y. (1989)))、例えばブラジキニン又は又はpermeabilizer A-7による透過処理(例えば米国特許第5,112,596号、同第5,268,164号、同第5,506,206号、及び同第5,686,416号を参照)、及び抗体又はその断片をコードする遺伝子を有するベクターによる血液脳関門をまたがるニューロンの遺伝子導入(例えばU.S. Patent Publication No. 2003/0083299を参照)を含む。
【0223】
血液脳関門を通過して抗体又はその断片を運ぶ脂質ベース方法は、限定するものではないが、血液脳関門の血管内皮上の受容体に結合する抗体結合断片にカップリングされるリポソームへの抗体又はその断片の封入(例えばU.S. Patent Application Publication No. 20020025313を参照)、及び低密度リポタンパク質粒子(例えばU.S. Patent Application Publication No. 20040204354を参照)又はアポリポタンパク質E(例えばU.S. Patent Application Publication No. 20040131692を参照)における抗体又はその断片のコーティングを含む。
【0224】
本発明の抗体は、良好な医療実務に合致した形で製剤化され、用量決定され、投与される。この点で考慮される要因には、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療実務家に既知の他の要因が含まれる。抗体は、必要ではないが、場合によっては、問題の疾患を予防又は治療するために現在使用されている一又は複数の薬剤と共に製剤される。そのような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する抗体の量、疾患又は治療のタイプ、及び上で検討した他の要因に依存する。これらは一般にここに記載のものと同じ用量及び投与経路で、あるいはここに記載の用量のおよそ1から99%で、又は経験的/臨床的に適切であると判定される任意の用量及び任意の経路で使用される。
【0225】
疾患の防止又は治療について、発明の抗体の適切な投与量は(単独又は一又は複数の他の更なる治療剤との組合せにおいて使用される場合)、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体が予防又は治療目的のために投与されるか、過去の治療、患者の臨床歴及び抗体に対する応答、及び主治医の判断に依存するだろう。抗体は、一度に又は一連の治療にわたって適切に投与される。疾患のタイプ及び重症度に依存し、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.1mg/kg−10mg/kg)の各抗体が、例えば一又は複数の別々の投与又は連続的な注入によって、患者に投与される初回の候補投与量でありうる。一つの典型的な投与量は約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であり得、上記の要因に依存する。数日又はそれ以上にわたる反復投与の場合、状態に依存し、治療は一般的に疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されうる。抗体の一つの例示的投与量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲でありうる。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの一又は複数の投与が患者に投与されうる。このような投与は、間欠的に、例えば毎週又は毎三週に投与されうる(例えば、患者は約2〜約20、又は例えば約6投与の抗体をうける)。最初の高負荷投与量、次いで一又は複数の低投与量が投与されうる。しかしながら、他の投与レジメンが有用でありうる。この治療の進行は、一般的な技術及びアッセイによって容易にモニタされる。
【0226】
任意の上記製剤又は治療方法は、抗BACE1抗体の代わりに又は加えて、発明のイムノコンジュゲートを使用して実施されうることが理解される。
【0227】
H.製品
当該発明のもう1つの局面において、前記した障害の治療、予防および/または診断で有用な材料を含有する製品が提供される。該製品は、容器および該容器上の、または該容器に付随するラベルまたは添付文書を含む。適当な容器は、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグ等を含む。該容器はガラスまたはプラスチックのような種々の材料から形成することができる。該容器は、単独の、または該疾患を治療し、予防し、および/または診断するのに有効なもう1つの組成物と組み合わされた組成物を保有し、および滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、該容器は皮下注射針を刺すことができるストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであってよい)。該組成物中の少なくとも1つの活性な剤は当該発明の抗体である。該ラベルまたは添付文書は、該組成物が選択された疾患を治療するのに用いられることを示す。さらに、該製品は、(a)組成物がその中に含有された第一の容器、ここに、該組成物は当該発明の抗体を含み;および(b)組成物がその中に含有された第二の容器、ここに、該組成物はさらなる細胞傷害性またはそうでなければ治療剤を含む、を含むことができる。当該発明のこの実施態様における製品は、さらに、該組成物を用いて、特定の疾患を治療することができることを示す添付文書を含んでもよい。別法として、または加えて、該製品は、さらに、注射用の静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液のような医薬上許容される緩衝液を含む第二の(または第三の)容器を含んでもよい。それは、さらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含めた、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0228】
前記した製品のいずれも、抗BACE1抗体の代わりに、またはそれらに加えて、発明のイミュノコンジュゲートを含んでもよいと理解される。
【0229】
III.実施例
以下は発明の方法及び組成物の実施例である。上記の一般的な説明のもと、様々な他の実施態様が実施されうることが理解される。
【0230】
実施例1:抗BACE1抗体の生成及び特徴付け
BACE1に特異的に結合する抗体を、ヒトBACE1細胞外ドメイン、配列番号:49のアミノ酸1−457に対し2つの異なるタイプのファージディスプレイ抗体ライブラリー(一方は天然多様性(VH及びVH/VL)を有するものであり、他方は特定のアミノ酸セット(YSGX)に人工的に制限された特定のCDR領域に多様性を有するもの)をパニングすることによって生成した。
【0231】
A.抗BACE-1抗体を同定するための自然多様性ライブラリーソーティング及びスクリーニング
ファージディスプレイされた抗BACE1クローンの選択
ビオチン化ヒトBACE-1(配列番号:49の1-457)をライブラリーソーティングの抗原として使用した。天然多様性ファージライブラリーを、交互ニュートラアビジン/ストレプトアビジンプレートに事前捕獲されたビオチン化BACE-1に対して4ラウンドソーティングした。ソーティングの第一ラウンドでは、NUNC 96ウェル Maxisorpイムノプレートをまず10μg/mLニュートラアビジン(Fisher Scientific, #21125)でコートし、ファージブロッキングバッファーPBST(リン酸緩衝食塩水(PBS)及び1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.05%(v/v)Tween 20)で一晩ブロッキングした。最初に、10μg/mLビオチン化BACE-1をイムノプレート上に30分間捕獲した。交代ファージライブラリーVH (see e.g., Lee等, J. Immunol. Meth. 284:119-132 (2004))及びVH/VL (see Liang等, J. Mol. Biol. 366: 815-829 (2007))を、ファージブロッキングバッファーPBSTで事前にブロッキングし、その後プレートに加え、室温で一晩インキュベートした。プレートをPBT(0.05% Tween 20のPBS)で次の日10x洗浄し、結合ファージを1mLの50mM HCl及び500mMのNaClで30分間溶出し、600μLの1M Tris塩基(pH 8.0)で中和した。回収したファージを大腸菌XL-1 Blue細胞において増幅させた。その後の選択ラウンド中、増殖したファージライブラリーをまずPBST/BSA中において50μlのDynabeads(登録商標) MyOne
TM ストレプトアビジン T1 (Invitrogen, # 65601)でプレ吸収し、室温で30分間インキュベートした。ニュートラアビジンに結合したファージ粒子を、Dynabeads(登録商標)の除去によりファージストックから取り除いた。次いで非結合ファージをストレプトアビジンプレート上にディスプレイされたBACE-1抗原に加え、インキュベーション時間を2-3時間に低減した。プレート洗浄のストリンジェンシーを徐々に増加させた。
【0232】
5ラウンドのパニング後、有意な濃縮が観察された。96クローンをVH及びVH/VLライブラリーソーティングからとり、それらがヒトBACE-1に特異的に結合するか決定した。ユニーク配列クローンを同定するために、これらのクローンの可変領域をPCR配列決定した。バックグラウンドの少なくとも5x超でヒトBACE-1に結合する42のユニークファージ抗体を選択し、インビトロ細胞アッセイにおける評価のために完全長IgGに再編成した。
【0233】
個々のクローンのV
L及びV
H領域をそれぞれLPG3及びLPG4ベクターにクローン化することによって興味のクローンをIgGに再編成し、哺乳類CHO細胞において一過性に発現させ、プロテインAカラムクロマトグラフィーを使用して精製した。
【0234】
抗BACE1阻害クローンの選択
BACE1はアミロイド前駆タンパク質を、その膜貫通ドメインに近い、細胞の表面に近接したポイントで通常切断するアスパルチルプロテアーゼである。したがって、特定のBACE1基質に対するBACE1タンパク質分解活性を調節する上記抗体の能力を、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイを使用してインビトロで評価した。
【0235】
HTRFアッセイを次のように実施した。2マイクロリットルの375nM Bi27(ビオチン-KTEEISEVNLDAEFRHDSGYEVHHQKL (配列番号:53), American Peptide Company))、BACE1切断に対する感受性を増加するために置換を有するアミロイド前駆体タンパク質BACE1切断部位ペプチドを、384ウェルプレート (Proxiplate
TM, Perkin-Elmer)においてBACE反応バッファー(50mM酢酸ナトリウムpH 4.4及び0.1% CHAPS)において抗BACE抗体でプレインキュベートされた3μLの125nM BACE1と組み合わせた。タンパク分解性反応混合物を周囲温度で75分間インキュベートし、検出バッファー(200 mM Tris pH 8.0, 20 mM EDTA, 0.1% BSA,及び0.8M KF)中において、2 nM のストレプトアビジン-D2 及び150 nMのユーロピウムクリプテートで標識された6E10抗アミロイドβ抗体(Covance, Emoryville, CA)を有する5 μL のHTRF 検出混合物の添加によってクエンチした。最終反応混合物を周囲温度で60分間インキュベートし、TR-FRETシグナルを320nmの励起波長及び615及び665nmの放出波長でEnVision Multilabel Plate Reader
TM(Perkin-Elmer)を使用して測定した。BACE1酵素(0 BACE)を欠く反応及び抗BACE1抗体 (PBS (100% BACE1活性)の欠如を有する反応をコントロールとして使用した。
【0236】
自然多様性ライブラリーから同定された試験された42抗体から、BACE1の最良のインヒビター、YW412.8を親和性成熟について選択した。
図4を参照。
【0237】
抗BACE1阻害クローンの親和性成熟
ライブラリーを次のようにYW412.8抗体を親和性成熟するために構築した。全CDR-L3位置に終止コドン(TAA)を有し、M13バクテリオファージ)の表面上に一価のFabを提示するファージミドpW0703(ファージミドpV0350-2b由来(Lee等, J. Mol. Biol. 340, 1073-1093 (2004))を、親和性成熟のための天然多様性ライブラリーから興味のクローンの重鎖可変ドメイン(VH)を移植するためのライブラリー鋳型として使用した。ハード及びソフトランダム化方策の双方を親和性成熟に使用した。ハードランダム化では、選択された位置の3つの軽鎖CDRを有する一軽鎖ライブラリーを、天然ヒト抗体を模倣するために設計されたアミノ酸を使用してランダム化し、設計DNA縮重はLee等(J. Mol.Biol.340, 1073-1093 (2004))に記載される通りであった。ソフトランダム化では、CDR-L3の位置91-94及び96、CDR-H1の28-31及び34-35、CDR-H2の50、52、及び53-58、CDR-H3の95-99及び100Aの残基を標的にした;CDRループの2つの異なる組合せ、L3/H1/H2及びL3/H3をランダム化のために選択した。選択した位置におよそ50%の変異率を導入するソフトランダム化条件を得るために、変異誘発DNAを、野生型ヌクレオチドを好む70-10-10-10混合物で合成した(Gallop等, J. Med.Chem.37:1233-1251 (1994))。
【0238】
親和性改善Fabsの選択を次のように実施した。親和性改善ファージライブラリーを第一ラウンドでプレートソーティングに、その後4又は5ラウンドの溶液ソーティング課した。第一ラウンドのプレートソーティングでは、ライブラリーを、室温で2時間、1%BSA及び0.05%Tween 20中に約2OD/mlのファージ投入により、ニュートラアビジンコートプレート(NUNC Maxisorp plate)に捕獲された10μg/ml ビオチン化標的(BACE1)に対してソーティングした。プレートソーティングの第一ラウンド後、選択のストリンジェンシーを増加するために溶液ソーティングを実施した。溶液ソーティングでは、第一ラウンドのプレートソーティングから増殖された1OD/mlのファージを、1% Superblock(Pierce Biotechnology)及び0.05% Tween 20を有する100μlのバッファー中において室温で30分間100nMのビオチン化標的タンパク質(濃度は親クローンファージIC
50値に基づく)でインキュベートした。混合物を1% Superblockで10x更に希釈し、100μl/ウェルをニュートラアビジン-コード化ウェル(5μg/ml)に、ビオチン化標的がファージに結合するように穏やかに振とうさせながら室温で15分間適用した。ウェルを、PBS及び0.05% Tween20で10回洗浄した。バックグラウンド結合を決定するために、ビオチン化されていない標的を伴うファージを有するコントロールウェルをニュートラアビジン-コート化プレート上に捕獲した。結合ファージを0.1NのHClで20分間溶出し、1/10体積の1M Tris pH 11で中和し、滴定し、次ラウンドのために増殖させた。次に、選択ストリンジェンシーを増加させながら更に2ラウンドの溶液ソーティングを実施した。第一ラウンドは、100nMから5nMにビオチン化標的タンパク質濃度を低下することによるオン-レート選択についてであった。第二ラウンドは、室温で弱い結合を競合オフするために過剰量の非ビオチン化標的タンパク質(100倍以上)を加えることによるオフ-レート選択についてであった。また、バックグラウンドファージ結合を低下させるためにファージ投入を低下させた(0.1~0.5 OD/ml)。
【0239】
コロニーを第4ラウンドスクリーニングから選択し、96-ウェルプレート(Falcon)において50μg/mlカルベニシリン及び1E10/ml KO7ファージを有する150μl/ウェルの2YT培地において37℃で一晩増殖させた。同じプレートから、XL-1感染親ファージのコロニーをコントロールとして選択した。96ウェルNunc Maxisorpプレートを、4℃で一晩又は室温で2時間、PBS中において100μl/ウェルのニュートラアビジン(2μg/ml)でコートした。ビオチン化標的タンパク質(2μg/ml)を加える前にプレートを65μlの1%BSAで30分間、そして40μlの1%Tween20で更に30分間ブロッキングし、室温で15分間インキュベートした。
【0240】
ファージ上澄みを100μlの全体積において10nMの標的タンパク質の有無によりELISA(酵素結合免疫吸着測定法)バッファー(0.5% BSA, 0.05% Tween20のPBS)において1:10に希釈し、単一スポット競合アッセイにおける使用のためにFプレート(NUNC)において室温で少なくとも1時間インキュベートした。標的タンパク質の有無による75μlの混合物を、ニュートラアビジンコート化プレートに捕獲された標的タンパク質に並列して移した。プレートを15分間穏やかに振とうさせ、ニュートラアビジン捕獲標的タンパク質に非結合ファージを捕獲させた。プレートをPBS-0.05% Tween 20で少なくとも5回洗浄した。結合をELISAバッファー(1:5000)中における西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化抗M13抗体の添加によりクエンチし、室温で30分間インキュベートした。プレートを少なくとも5回PBS-0.05% Tween 20で洗浄した。次に、100μl/ウェルの1:1比の3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)ペルオキシダーゼ基質及びPeroxidase Solution B(H
2O
2)(Kirkegaard-Perry Laboratories (Gaithersburg, MD))をウェルに加え、室温で5分間インキュベートした。反応を100μlの1Mリン酸(H
3PO
4)を各ウェルに加えることによって停止させ、室温で5分間インキュベートさせた。各ウェルにおける黄色のOD(光学密度)を450nmで標準のELISAプレートを使用して決定した。ODの低下(%)を次の式によって算出した:
【0241】
OD
450nmの低下(%)=[(競合を有するウェルのOD
450nm)/(競合無しのウェルのOD
450nm)]*100。
【0242】
親ファージ(100%)のウェルのOD
450nmの低下(%)と比較して、ヒト及びマウス双方について50%未満のOD
450nmの低下(%)を有したクローンを配列分析のために選択した。ユニーククローンを、親クローンとの比較により標的に対する結合親和性(ファージIC
50)を決定するためにファージ調製のために選択した。最も親和性改善されたクローンを、抗体生産及びBIAcoreを使用した表面プラズモン共鳴による更なる結合キネティック分析及び他のインビトロ又はインビボアッセイのためにヒトIgG1に再フォーマットした。
【0243】
自然多様性ファージライブラリーから選択されたYW412.8の軽鎖及び重鎖HVR領域の配列を
図1(A)及び1(B)に示す。加えて、YW412.8抗体の親和性成熟から得られた5つの抗体をまた配列決定し、軽鎖及び重鎖HVR配列をまた
図1(A)及び1(B)に示す。これらの抗体において可変性を提示した軽鎖HVR領域のコンセンサスアミノ酸配列は次の通りであった:HVR-L1:Arg Ala Ser Gln X
1 Val X
2 X
3 X
4 X
5 Ala(配列番号:17)(上式中、はX
1アスパラギン酸及びバリンから選択され、X
2はセリン及びアラニンから選択され、X
3はスレオニン及びアスパラギンから選択され、X
4はアラニン及びセリンから選択され、そしてX
5はバリン及びロイシンから選択さる);HVR-L2:X
6 Ala Ser Phe Leu Tyr Ser(配列番号:18)(上式中、X
6はセリン及びロイシンから選択さる);及びHVR-L3:Gln Gln X
7 X
8 X
9 X
10 X
11 X
12 Thr(配列番号:19)(上式中、X
7はセリン、フェニルアラニン、グリシン、アスパラギン酸及びチロシンから選択され、X
8はチロシン、プロリン、セリン及びアラニンから選択され、X
9はスレオニン及びアスパラギンから選択され、X
10はスレオニン、チロシン、アスパラギン酸及びセリンから選択され、X
11はプロリン及びロイシンから選択され、そしてX
12はプロリン及びスレオニンから選択さる)。重鎖超可変領域H1のみがこれらの抗体間で可変性を提示し、その領域のコンセンサス配列は次の通りであった:HVR-H1:Gly Phe Thr Phe X
13 Gly Tyr X
14 Ile His(配列番号:26)(上式中、X
13はセリン及びロイシンから選択され、X
14はアラニン及びグリシンから選択される)。
【0244】
B.抗BACE-1抗体を同定するための合成多様性ライブラリーソーティング及びスクリーニング
相補性決定領域(CDR)に制限化学多様性を有するミニマル合成抗体ライブラリーを構築が構築され、Fellouse, F.A.et al.J. Mol.Biol.373:924-940 (2007)に過去に記載されるように、様々なタンパク質に対する高親和性抗体バインダーの獲得に効果的であることが示されている。YSGXライブラリーと命名される合成多様性ライブラリーを、溶液ソーティングによりBACE1に対する阻害抗体を探索するために使用した。結合のパニングを下記のように5回実施した。
【0245】
YSGXライブラリーと命名される一次ソーティングのライブラリーを、Fab-ファージディスプレイのファージミド(pF1359)を使用して前述のように構築した(Library D in Fellouse, F.A.et al., J. Mol.Biol.373:924-940 (2007))。ライブラリーの多様性は約2x10
10だった。
【0246】
親和性成熟では、一次ソーティングに由来する選択クローンについて全3つのCDRLを固定CDRHでランダム化した。これらのタイプのオリゴヌクレオチドをランダム化のために使用した。タイプIはTyr及びSerのみをコードする縮重コドンTMCを使用する。タイプIIは等モル比でTyr、Ser、Gly及びTrpのコドンを有するカスタム三量体ホスホラミダイトミックスを使用する。タイプIIIは次のモル比:Tyr(30%)、Ser(15%)、Gly(15%)、Trp(10%)及びPhe、Leu、His、Asp、Pro、Ala、各々5%において10アミノ酸残基をコードする三量体ホスホラミダイトミックスを使用する。元の鋳型のKpnI部位が変異誘発によってサイレンシングされるようにオリゴヌクレオチドに変異を導入した。長さのバリエーションはCDR-L1では3〜10アミノ酸、CDR-L2では7アミノ酸、CDR-L3では2−10アミノ酸だった。最終セットのオリゴヌクレオチドを作成するためにオリゴヌクレオチドを適切に一つにプールし、すなわち、一タイプ内に異なる長さを有する全てのL1、L2及びL3オリゴヌクレオチドを混合し、次いでそれぞれCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3のオリゴヌクレオチドセットとして全3つのタイプを一つに混合する。Kunkel変異誘発を使用し、全CDR-LC位置を置換した。Kunkel変異誘発(Kunkel, T.A.et al., Methods Enzymol.154:367-382 (1987))後、DNAを精製し、鋳型DNAを消化するために37℃で3時間KpnIで処理した。次いで精製DNAを、ライブラリー構築のためにエレクトロポレーションに課した。
【0247】
ファージディスプレイされた抗BACE1クローンの選択
ビオチン化ヒトBACE-1(配列番号:49の1−457)をライブラリーソーティングの抗原として使用した。パニングの第一ラウンドでは、20μgのビオチン化BACE1を4℃で1.5時間1x10
13pfu/mlの濃度で1mLのライブラリーでインキュベートした。標的に結合したファージを、ブロッキングバッファー(PBS,0.5%(w/v)ウシ血清アルブミン)で事前にブロックした200μlのDynabeads(登録商標)MyOneストレプトアビジンで15分間捕獲した。結合したファージを0.1MのHClで溶出し、すぐに1MのTris塩基で中和した。溶出ファージを前述のように標準プロトコルに従って増幅した(Sidhu, S.S.等 Methods Enzymol. 328: 333-363 (2000))。第二ラウンドを第一ラウンドと同じように実施し、10μgのビオチン化BACE1を使用し400μlの増幅ファージでインキュベートした。その後の全てのラウンドでは、2μgのビオチン化BACE1を400μlの増幅ファージでインキュベートした。ビオチン化BACE1に結合したファージを、ニュートラアビジン又はストレプトアビジン(ラウンド間で交互)で事前にコートされブロッキングバッファーでブロックされたMaxisorpイムノプレート(NUNC)を使用して15分間捕獲した。
【0248】
5ラウンドの選択後、ファージを96-ウェルフォーマットにおいて増殖された個々のクローンから生産し、ファージスポットELISAにおける使用のために培養上澄みをリン酸緩衝食塩水(PBS),0.5%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma-Aldrich, St Louis, MO), 0.1% (v/v) Tween 20 (Sigma-Aldrich) (PBT buffer)に3倍に希釈した。希釈ファージ上澄みを、ニュートラアビジンコート化384-ウェルMaxisorpイムノプレート(NUNC)上に固定化されたビオチン化BACE1で1時間インキュベートした。プレートをPBS,0.05%(v/v)Tween20(PTバッファー)で6回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ/抗M13抗体コンジュゲート(PBTバッファー中に1:5000希釈)(GE Healthcare)で30分間インキュベートした。プレートをPTバッファーで6回及びPBSで2回洗浄し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン/H
2O
2ペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard-Perry Laboratories)で15分間処理し、1.0MのH
3PO
4でクエンチし、吸光度を分光光度法で450nmで読んだ。
【0249】
抗BACE1阻害クローンの選択
YSGXライブラリーのパニングは、BACE1に結合する18のユニーククローンの同定をもたらした。
図3を参照。これらのクローンに対応するFabタンパク質を次のように精製した。終止コドンを、Fabをコードするファージミドの重鎖及び遺伝子3間に導入した。得られたファージミドを大腸菌株34B8に形質転換した。単一コロニーを、50μg/mlのカルベニシリンで補充された30mLのLB培地において37℃で一晩増殖させた。一晩した培養物(5mL)をカルベニシリン(50μg/ml)で補充された500mLの完全C.R.A.P.培地に播種し、24時間30℃で増殖させた。Fabタンパク質を、標準的な方法によりプロテインAアガロースビーズを使用して精製した。
【0250】
精製Fabを上記のようにHTRF酵素活性アッセイを使用してBACE1に対する阻害活性ついてスクリーニングした。Fab2、5、8、12、14及び19をBACE1のインヒビターとして同定し、Fab23をアクチベーターとして同定した。
図5を参照。
【0251】
Fab2、5、8、12、14及び19を、それらの結合エピトープを決定するために更に特徴付けた。全6抗体の精製Fabのパネルを使用して、下記のようにファージ競合ELISAにおいてプレート捕獲BACE1に結合された個々のFab-ディスプレイファージと競合させた。
【0252】
選択クローンの単一コロニー(XL1 blue cellにおける)を選択し、50μg/mlのカルベニシリン、10μg/mlのテトラサイクリン及びM13KO7で補充された1ml 2YTブロスにおいて37℃で2時間増殖させた。カナマイシン(25μg/ml)を培養物に加え、6時間増殖を続けた。培養物を50μg/mlのカルベニシリン及び25μg/mlのカナマイシンで補充された30mlの2YTブロスに移し、37℃で一晩増殖させた。ファージを収集し、前述のように精製した(Sidhu, S.S.等 Methods Enzymol. 328: 333-363 (2000))。精製されたFabディスプレイファージをPBTバッファーにおいて段階希釈し、プレート上に固定されたBACE1に対する結合について試験した。80%の飽和シグナルをもたらす一定ファージ濃度を、その後の競合ELISAのために選択した。競合を、一定亜飽和Fabディスプレイファージを段階希釈のBACE1と1時間インキュベートすることによって実施し、次いで非結合ファージを捕獲するために15分間BACE1固定化プレートに移した。次いでプレートを8回洗浄し、結合ファージを抗M13-HRPで検出した。
【0253】
精製Fab5は、ファージディスプレイFab8及び12に対してBACE1の結合で競合したが、Fab2、14及び19とは競合しなかった。このデータと一致して、精製Fab8はファージディスプレイFab5及び12と競合した。まとめると、これらのデータはFab5、8及び12がBACE1上の同じ又は重複エピトープに結合することを示す。Fab14及び19も、これらの精製FabのどちらかがFab14-及び19ディスプレイファージのどちらかと競合するという事実に基づき、互いに競合であった。これは、これらの2つの抗体が、Fab5、8及び12のものとは異なる同じ又は重複エピトープに結合することを示唆した。ファージELISAアッセイでは、Fab2-ディスプレイファージはFab2自身を含む精製Fabタンパク質の何れかと競合せず、Fab2及びBACE1間の結合が非特異的であることを示す。従って、Fab2を親和性成熟について候補として除外した。
【0254】
抗BACE1阻害クローンの親和性成熟
最初のパニングプロセスによって得られた親阻害抗体の結合親和性を改善するために、Fab5、8、12、14及び19の全3つのCDR-LCをランダム化して新しいファージライブラリーを設計した。これらの5つの抗体をそれらの異なるエピトープに基づいて2つのサブグループに分けた−Fab5、8及び12をグループ1、Fab14及び19をグループ2とした。個々のクローンの一本鎖DNA(ssDNA)をライブラリー構築の鋳型として精製した。グループ1のssDNA鋳型を親和性成熟ライブラリー1(LC-lib1として設計)のために一つにプールし、グループ2をライブラリー2(LC-lib2)のためにプールした。化学多様性を、分子認識について天然アミノ酸の機能的能力に基づいてランダム化CDR内に制限した。Birtalan, S.等Mol Biosyst.6:1186-1194 (2010)を参照。ミニマル多様性(Tyr及びSer二元コドン)、セミミニマル多様性(Tyr,Ser,Gly及びTrp三元コドン)及び10アミノ酸を含む更なる多様性を、高親和性を得るために混合した。2つの親和性成熟ライブラリー、LC-lib1及びLC-lib2を同セットのオリゴヌクレオチドを使用して構築し、上記のように全3つのCDR-LCを同時にランダム化した。親和性成熟では、全3つのCDR-LC(相補性決定領域-軽鎖)を、一次ソーティング由来の選択クローンについて固定CDR-HC(相補性決定領域-重鎖)とランダム化した。
【0255】
最初に得られた抗体の親和性成熟のためのライブラリーのスクリーニングを上記と同様に実施した。ライブラリーを3ラウンド溶液中においてビオチン化BACE1でソーティングし、これは結合において100倍超の濃縮をもたらした。ラウンド1では、2μgのビオチン-BACE1をファージディスプレイFabライブラリーでインキュベートした。ラウンド2及び3では、20nM及び5nMのビオチン化BACE1を増幅ファージでそれぞれインキュベートした。2つのライブラリーの各々からのクローン(96)をワンポイント競合ELISAにおいてスクリーニングし、下記のように、プレート固定BACE1への結合からファージ粒子と競合するように20nMのBACE1を溶液中において使用した。
【0256】
BACE1で固定化されたプレートを、事前に2μg/mlのニュートラアビジンを4℃で一晩コーティングし、ブロッキングバッファーでブロックした384-ウェルaxisorp Immunoplateを使用して15分間2μg/mlのビオチン化BACE1を捕獲することによって調製した。96-ウェルフォーマットにおいて増殖された個々のクローンからの培養上澄みをPBTバッファーにおいて20倍に希釈し、室温で1時間20nMのBACE1の有無によりインキュベートした。Th混合物を固定化BACE1を有するプレートに移し、15分間インキュベートした。プレートをPTバッファーで6回洗浄し、結合ファージを上記のように抗M13-HRPで検出した。溶液中におけるBACE1の不在及び存在におけるウェルからのELISAシグナル間の比率はクローンの親和性を示し、高比率は高親和性を示す。
【0257】
LC_lib1からの5クローンは、BACE1存在におけるウェルからのELISAシグナルに対するBACE1不在におけるウェルからのELISAシグナル間に>4の比率を有し、LC_lib2からの1クローンは>3の比率であった。LC4及び11と命名する2クローンをFab5から得て;Fab12から3クローンLC6、LC9及びLC10、及びFab14からLC40を得た(
図6)。
【0258】
これらの6クローンの親和性を推定するために、上記のようにファージ競合ELISAを実施し、IC
50値を決定した(
図7)。IC
50値を、Kaleidagraph (Synergy Software)を使用してMarquardt (Marquardt, D. W. SIAM J. Appl.Math.11:431-441 (1963))によるfour-parameter logistic equationにデータをフィッティングすることによって決定し、下の表2に示す。
【0259】
全LCクローンは確かに、それらのそれぞれの親と比較して改善した親和性を示した。注目すべきは、CDR-L2への2つのTrp残基の導入は、親の100倍超、Fab12誘導体の親和性を改善した。
【0260】
6クローンのFabタンパク質を精製し、上記のようにHTRF酵素活性アッセイに課した。BACE1のペプチド阻害剤であるOM99-2(CalBiochem(登録商標), catalog #496000)をコントロールとして使用した。親としてFab5を有する抗体では、FabLC4が有意な改善された阻害を示し、LC11は阻害活性を失った。Fab14由来のLC40もその阻害活性を失った。Fab12の親和性改善誘導体、FabLC6、LC9及びLC10は一般に、それらの阻害活性においておよそ20倍の改善を示した(
図8)。このアッセイに基づくと、FabLC6が最良の阻害剤であり、酵素活性のほぼ100%の阻害を示し、他のFabは部分阻害剤であり、およそ60−70%の阻害範囲を有した(
図8)。試験された様々なFabのIC
50値を下の表3に示す。IC
50OM99-2はこのアッセイにおいて11nMだった。
【0261】
Fab12の軽及び重鎖HVR領域の配列を
図2(A)及び2(B)に示す。Fab12の親和性成熟によって生産される3つの抗体の軽及び重鎖HVR配列をまた、
図2(A)及び2(B)に示す。軽鎖HVR-L2のみがこれらの抗体において可変性を示した:HVR-L2:X
15 Ala Ser X
16 Leu Tyr Ser(配列番号:41)(上式中、X
15はセリン、トリプトファン及びチロシンから選択され、X
16はセリン及びトリプトファンから選択される)。3つの重鎖HVR領域の各々は4つの抗体において同一であった。
【0262】
Fabを次のように他の適用における使用のためにIgG抗体としてクローン化した。293T細胞又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における一過性IgG発現のために、選択されたFabの軽鎖及び重鎖の可変ドメインをヒト軽鎖又は重鎖(ヒトIgG1)定常ドメインと共にRK5-ベースプラスミドにクローン化した。IgGタンパク質を、標準的な方法によりプロテインAアガロースビーズを使用して精製した。
【0263】
実施例2:抗BACE1抗体の更なる特徴付け
上記のように、抗体をBACE1への機能及びエピトープ結合について同定した。親及び親和性成熟抗体を、下記のアッセイを使用して更に特徴付けた。
【0264】
A.結合キネティクス
YW412.8.31の結合キネティクスを評価した。簡潔には、抗BACE1 IgGの結合親和性を、BIAcore
TM-3000 instrumentを使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。YW412.8.31 抗BACE1ヒトIgGをCM5バイオセンサーチップ上にコートされたマウス抗ヒトFc抗体(GE Healthcare, cat# BR-1008-39)によって捕獲し、およそ100反応単位(RU)を得た。キネティクス測定のために、2倍の段階希釈(0.98nM〜125nM)のヒトBACE1 ECD又はマウスBACE1 ECD(アミノ酸1-457)を25℃、30μl/分の流量でPBTバッファー(0.05% Tween 20のPBS)に注入した。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を、単純一対一ラングミュア結合モデル(BIAcore
TM Evaluation Software version 3.2)を使用して算出した。平衡解離定数(K
D)を比k
off/k
onとして算出した。pH7.0でのYW412.8.31結合の結果を表4に示す。
【0265】
BACE1へのYW412.8.31の結合をpH7.0及び5.0双方で確認した。これは重要であり、BACE1は酸性pHで、おそらく細胞内小胞及び/又はトランスゴルジネットワークにおいて最適に活性である。
【0266】
B.インビトロ阻害アッセイ
加えて、特定のBACE基質に対するBACE1タンパク質分解活性を調節する抗体の能力を、BACE1のヒト組換え細胞外ドメインを用い2つの活性アッセイ:HTRFアッセイ及びマイクロ流体キャピラリー電気泳動(MCE)アッセイを使用してインビトロで評価した。
【0267】
親和性成熟YW412.8.31 抗BACE1抗体を実施例1に記載のようにHTRFアッセイにおいて試験した。BACE1の合成ペプチド阻害剤、OM99-2 (CalBiochem(登録商標), Catalog # 496000),BACE1の小分子阻害剤 (β-セクレターゼ阻害剤IV, CalBiochem(登録商), Catalog #5657688)及びBACE1に結合しないIgG抗体をコントロールとして使用した。
図9 (パネルA) (長ペプチド)を参照。加えて、短FRETペプチド(Rh-EVNLDAEFK-quencher (配列番号:54), Invitrogen)を使用した反応をまた、HTRF反応と同様に実施した。コントロール反応からの得られた蛍光性産物を、545nmの励起波長及び585nmの放出波長以外は上記の通りに測定した。得られたデータをGraphPad Prism 5
TM(LaJolla, CA)を使用して分析した。
図9(パネルA)(短ペプチド)を参照。
【0268】
MCEアッセイ反応を、384-ウェルマイクロプレートにおいて20μL/ウェルの最終体積において実施した。標準的な酵素反応を、12nMのヒトBACE1細胞外ドメイン、1mMのアミロイド前駆体タンパク質βセクレターゼ活性部位ペプチド(FAM-KTEEISEVNLDAEFRWKK-CONH
2 (配列番号:55))、50mMのNaOAc pH 4.4及び0.1% CHAPSを含む5mLの4x化合物及び5 μLの4x酵素に、10 μLの2X基質を加えることによって開始した。同じ反応条件をヒトBACE2酵素の細胞外ドメイン(5nM)及びカテプシンDの細胞外ドメイン(6nM, Calbiochem(登録商標))に使用した。周囲温度で60分間のインキュベーションの後、各反応における産物及び基質をLC3000(登録商標)において分析される12-sipper microfluidic chipを使用して分離した(双方ともCaliper Life Sciences)。産物及び基質の分離を、製造者の最適化ソフトウェアを使用して電圧及び圧力を選択することによって最適化した。分離バッファーは、100mM HEPES pH 7.2、0.015% Brij-35、0.1%コーティング試薬#3、10mM EDTA及び5% DMSOを含んだ。分離条件は、-500Vの下流電位、-2250Vの上流電位及び-1.2 psi.のスクリーニング圧力を使用した。産物及び基質蛍光を、488nmの波長で励起させ、530nmの波長で検出した。基質変換をHTS Well Analyzerソフトウェア(Caliper Life Sciences)を使用して電気泳動図から算出した。
【0269】
YW412.8.31抗体を使用したHTRF及びMCEアッセイからの結果を
図9に示す。長ペプチドアッセイにおける抗体の観察されたIC
50は1.7nMであり、最大阻害は77%に達した。加えて、YW412.8.31抗体は短ペプチドアッセイにおいて17nMのをIC
50を有した。更に、YW412.8.31抗BACE1抗体は、マイクロ流体キャピラリー電気泳動アッセイにおいて80pMのIC
50でBACE1活性を阻害し、ヒトBACE2又はカテプシンD、リソソームアスパルチルプロテアーゼを阻害しなかった。YW412.8.31抗体のSPR分析はまた、BACE1に最も高く関連するプロテアーゼであるBACE2に抗体が結合しないことを確認した。合わせてこれらのデータは、YW412.8.31抗体が強力で選択的なBACE1アンタゴニストであることを示す。この抗体の更なる特徴付けを、その機能をより理解するために実施した。
【0270】
C.細胞ベース阻害アッセイ
APPプロセシングへの抗BACE1抗体の観察されたインビトロ阻害作用がまた細胞状況において存在するか決定するために、インビボ研究を実施した。野生型ヒトアミロイド前駆体タンパク質を安定して発現する293-HEK細胞におけるAβ
1−40生産を阻害する抗体の能力を以下のように評価した。293-APP
WT細胞を96-ウェルプレートにおいて3x10
4細胞/ウェルの密度で一晩播種した。抗BACE1抗体又はコントロールIgG1抗体を有する50μlの新鮮な培地(DMEM+10%FBS)を、37
oCで24時間細胞と共にインキュベートした。三環系小分子BACE1インヒビター(BACE1 SMI)をまたコントロールとして使用した((Compound 8e - Charrier, N.等 J. Med. Chem. 51:3313-3317 (2008))。細胞培地を回収し、製造者の指示に従ってAβ
1-40 HTRF(登録商標)アッセイ(CisBio)を使用してAβ
1-40の存在についてアッセイした。Aβ
1-40値を細胞生存率について正規化し、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を使用して決定した。実験を少なくとも3回実施し、各実験における各ポイントを二つ組において反復した。データをfour-parameter non-linear regression curve-fitting program(Kaleidagraph, Synergy Software)を使用してプロットした。
【0271】
同様な研究をまた、マウスから単離された後根神経節、皮質ニューロン及び海馬ニューロンにおいて実施した。簡潔には、解離ニューロン培養物をE13.5後根神経節(DRG)、E16.5皮質ニューロン及びE16.5海馬ニューロンから調製した。ニューロンをインビトロにおいて5日間増殖させた。YW412.8.31抗BACE抗体又はコントロールIgG1を有する新鮮な培地を24時間ニューロンと共にインキュベートした。培地を回収し、製造者の指示に従ってMSD(登録商標)齧歯類/ヒト(4G8)Aβ40 Ultrasensitiveキットを使用してAβ
40の存在についてアッセイした。Aβ
40値を細胞生存率について正規化し、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を使用して決定した。実験を少なくとも3回実施し、各実験における各ポイントを二つ組において反復した。データをfour-parameter non-linear regression curve-fitting program(Kaleidagraph, Synergy Software)を使用してプロットした。
【0272】
試験した全抗BACE1抗体(LC6、LC9、YW412.8、YW412.8.30、YW412.8.31及びYW412.8.51)は、非BACE1 IgG抗体阻害剤(Xolair(登録商標))と比較してAPPを発現する293の細胞においてAβ
1−40生産を阻害した。
図10を参照。
【0273】
図11に示すように、YW412.8.31抗BACE1抗体はAPPを発現する293の細胞においてBACE1 SMIコントロールと類似な程度までAβ
1−40生産を阻害し、17nMのIC
50及び〜90%の最大低減だった。類似な結果がDRGニューロンにおいて得られ、最も高い濃度のYW412.8.31でAβ
40生産において約50%の低減となり、8.4nMのIC
50だった。YW412.8.31抗BACE1抗体はまた、2.3−2.6nMのIC
50で皮質及び海馬ニューロンにおけるAβ
40生産を阻害した。これらの発見は抗BACE1抗体がインビトロにおいて前に観察されたように細胞に同様に機能したことを示す。更に、YW412.8.31抗体はCNSのニューロンにおいて最良の効力を示すと思われる。
【0274】
D.抗BACE1抗体の細胞内内部移行
BACE1は細胞内、特にゴルジにおいて発現されることが知られている。YW412.8.31が細胞内環境においてBACE1と相互作用するか否か確かめるために、内部移行研究を実施した。BACE1+/+又はBACE1−/−マウスから、一セットのニューロン培養物をE13.5後根神経節(DRG)外植片から調製し、第二セットのニューロン培養物をE16.5解離皮質ニューロンから調製し、37℃で24又は72時間それぞれ培養した。0.5μMのYW412.8.31抗BACE1抗体を有する培地を30分〜2時間の様々な期間で培養物に加え、4℃又は37℃の何れかでインキュベートした。処理後、非結合抗体をPBSで十分に洗浄した。培養物を4%パラホルムアルデヒドで20分間室温で固定し、選択したサンプルをまた0.1%Triton X-100で透過処理した。結合した抗体を、製造者の指示に従って二次Alexa 568-コンジュゲート化抗ヒトIgG1抗体(Molecular Probes)を使用して検出した。
【0275】
大部分の抗体シグナルが、高温サンプルにおいて内部移行されたことが分かった。
図12(B)に見られるように、二次抗体によるYW412.8.31抗BACE1抗体の検出を可能にするために細胞が透過処理されたとき、BACE1は37
oCでDRG軸索において細胞内に検出できた。逆に、DRGが内部移行を防ぐために4
oCで冷却インキュベーションされる場合、又は細胞がYW412.8.31の細胞内検出を可能にするために透過処理されない場合、細胞表面では微少のBACE1が検出される。ニューロンへの抗体の内部移行はBACE1結合に依存し、なぜならそれがBACE1+/+動物からの皮質ニューロンにおいてのみ検出可能であり、BACE1−/−動物からのニューロンでは検出されたなかったからである(
図12(C)の中央及び右パネルを比較)。
【0276】
加えて、マウス皮質ニューロンを10分間又は3時間YW412.8.31抗BACE1抗体又はコントロールIgGの存在下において培養し、その後抗体を免疫染色によって検出した。ニューロン培養物をE15.5解離皮質ニューロンから調製し、14DIV培養した。1μMのYW412.8.31を有する培地を10分間〜3時間培養物に加え、37℃でインキュベートした。処理後、非結合抗体をHBSSで十分に洗浄した。培養物を室温で10分間2%パラホルムアルデヒドで固定し、次いで0.1%Triton X-100で透過処理をするか又はしなかった。結合抗体をAlexa 568コンジュゲート抗ヒトIgG1二次抗体(Molecular Probes)を使用して検出した。YW412.8.31局在を、どのくらい細胞の表面に結合したか見るために非透過処理細胞において、並びにどのくらい抗体が内部移行したか見るために透過処理細胞において分析した。検出された抗体シグナルの大部分が細胞内に局在し、少量の抗体染色が細胞表面に観察された(
図12(A))。内部移行はYW412.8.31処理のわずか10分後に明らかであり、抗体が初期エンドソームによって活発に取り込まれることを示唆する。ほとんどのYW412.8.31シグナルが点状であり、それが小胞内に含まれたであろうことを示す。
【0277】
YW412.8.31が局在化された細胞内区画をより良く同定するために、我々は異なる小胞区画のマーカーで共染色した:初期エンドソーム(トランスフェリン受容体、TfR)、トランスゴルジネットワーク(TGN)(VAMP4)、及びリソソーム(LAMP1)。細胞を抗TfR(Novus, Cat#NB100-64979)、抗VAMP4(Novus, Cat#NB300-533)又は抗LAMP1(BD Pharmingen, Cat#553792)で共染色した。YW412.8.31免疫反応性は初期エンドソーム及びTGNのマーカーと共局在したが、リソソームとは異なった(
図12(A))。このパターンはBACE1が活性である区画に局在する抗体と一致する。
【0278】
実施例3:抗BACE1抗体結合部位の特徴づけ
ヒトBACE1に対する特定の抗BACE1抗体の結合部位を同定するために更なる研究を実施した。一セットの実験では、どの抗体が競合結合を示すか決定するために、BACE1(hBACE1)への抗体の結合を既知の活性部位又はエキソサイトBACE1結合ペプチドの有無において評価した。第二セットの実験では、三次元結合部位を決定するために、抗BACE1 FabをヒトBACE1細胞外ドメインと共結晶化させた。
【0279】
A.競合結合
発明の抗BACE1抗体のBACE1上の結合部位を決定する間接的方法として、競合ELISAを実施した。簡潔には、抗体YW412.8IgG(1μg/ml)を4℃で一晩NUNC96ウェルMaxisorpイムノプレートにコートし、ブロッキングバッファーPBST(PBS及び1%BSA及び0.05%Tween20)で1時間室温でブロックした。抗BACE1抗体YW412.8又はhBACE1結合ペプチドの段階希釈を所定量のビオチン化hBACE1でインキュベートし、室温で60分間インキュベートした。次いで段階希釈をYW412.8コート化プレートに加え、室温で30分間インキュベートした。その後、プレートを洗浄バッファー(0.05%T-20のPBS)で洗浄し、室温で30分間、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されたストレプトアビジンを加えて処理した。次いでプレートを洗浄し、テトラメチルベンジジン(TMB)基質で処理した。捕獲ビオチン化hBACE1に結合したHRP-コンジュゲートストレプトアビジンを、標準的な技術を使用して630nmの波長で測定した。
【0280】
上記競合ELISAアッセイに使用されるビオチン化標的タンパク質の最適濃度を決定するために、NUNC96ウェルMaxisorpイムノプレートをコートし、上記のようにブロックした。ビオチン化標的の段階希釈を、抗体コートプレートで30分間室温でインキュベートした。次いでプレートをPBSTで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンで30分間室温でインキュベートした。結合シグナルの検出は上記の通りであった。データをfour-parameter non-linear regression curve-fitting program(Kaleidagraph, Synergy Software)を使用してプロットした。ビオチン化hBACE1の亜飽和濃度をカーブフィッティングから決定し、上記の競合ELISAに適用した。
【0281】
予測した通り、YW412.8は、hBACE1への結合について自身と競合した(
図13)。YW412.8及び活性部位阻害ペプチドOM99-2(CalBiochem(登録商標), catalog #496000)間で競合は観察されたなかった。LC6及びYW412.8抗BACE1抗体及び既知のエキソサイト結合ペプチドBMS1(Peptide 1 from Kornacker等, Biochemistry 44:11567-11572 (2005))間で競合が観察された。まとめると、これらの結果はYW412.8がAPP切断のためのBACE1活性部位と異なるBACE1エキソサイトに結合することを示唆する。
図13における曲線の形は、YW412.8、LC6及びBMS1がBACE1において重複する結合部位を有しうることを示唆する。
【0282】
B.血漿構造
BACE1とのYW412.8抗体の相互作用をより良く理解するために、YW412.8.31Fabをヒト組換えBACE1細胞外ドメインの細胞外ドメインと共結晶化した。
【0283】
タンパク質発現及び精製
C末端His6タグ(配列番号:210)を伴うBACE1(配列番号:49のアミノ酸57-453)DNAのタンパク質発現及び精製をBlue Heronで合成し、pET29a(+)ベクター(Novagen)にクローン化し、BL21(DE3)細胞(Invitrogen)に形質転換した。発現を、1mMのイソプロピル β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)導入により37
oCで4時間実施した。細胞をマイクロフルダイザーで溶解し、封入体(BACE1を含む)を単離し、TE(10mM Tris pH8.0及び1mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA))バッファーで2回洗浄した。12,000rpmで30分間の遠心分離の前に、タンパク質可溶化を7.5M尿素、100mM AMPSO pH10.8及び100mM β-メルカプトエタノール(BME)を使用して室温で2時間実施した。次いで上澄みを7.5M尿素、100mM AMPSO pH10.8で希釈し、約1.5-2.0のOD
280を得た。タンパク質リフォールディングを、まず冷却水において可溶化BACE1を1:20に希釈し、次いでリフォールディングを生じさせるために4
oCで3週間サンプルを穏やかに撹拌することによって実施した。リフォールディングしたBACE1の精製は3つのカラムクロマトグラフィー工程を含んだ。まず、BACE1を20mM Tris pH 8.0及び0.4M尿素でプレ平衡化された50ml Q sepharose Fast Flow(GE Healthcare)カラムにロードし、0-0.5M NaClの塩勾配で溶出した。ピーク画分をプールし、20mM Tris pH 8.0バッファーで5倍に希釈し、SourceTM15Qカラム(GE Healthcare)にロードした。BACE1を溶出するために0-0.3M NaClの勾配を使用した。BACE1タンパク質を有する画分をプールし、濃縮し、そして25mM Hepes pH 7.5、150mM NaClにおいてSuperdex
TM S75カラム(GE Healthcare)において更に精製した。
【0284】
YW412.8.31 Fabを大腸菌において発現させ、細胞ペーストをPBS、25mM EDTA及び1mM PMSFにおいて解凍した。混合物をホモジナイズし、マイクロフルダイザーを2回通過させ、12,000rpmで60分間遠心分離した。次いで上澄みをプロテインGカラムに5ml/分でロードした。カラムをベースラインまでPBSで洗浄し、タンパク質を0.58%酢酸で溶出した。YW412.8.31 Fabを有する画分をプールし、20mM MES, pH 5.5で平衡化したSP-セファロースカラムにロードし、Fabを0〜0.25M NaClの塩勾配で溶出した。Fabを25mM Hepes pH 7.5及び150mM NaClにおいてSuperdex
TMS75カラムにおいて更に精製した。
【0285】
結晶化
精製BACE1タンパク質(配列番号:49のアミノ酸57〜453)を1:1.5モル比(Fabの過剰)で精製YW412.8.31 Fabと混合した。複合体を氷上で1時間インキュベートし、S200 26/60 gel filtration column(GE Healthcare)において精製し、過剰Fabからそれを分離した。次いで複合体を15mg/mlに濃縮した。結晶化を、20% PEG 4000、0.1MのTris pH 8.5及び0.2Mの酢酸ナトリウムを有する1μlのウェル溶液と混合した1μlのBACE1/Fab複合体を用いてsitting drop vapor diffusion 法によって実施した。次いで結晶化ドロップを19℃でインキュベートした。結晶は4日後出現し、更に2日間成長した。次いで結晶を収集し、母液及び20%グリセロールを有する凍結保護溶液において急速冷凍させた。
【0286】
データ収集及び構造決定
回折データをStanford Synchrotron Radiation Facility(SSRL) beam line 7-1で単色X線ビーム(12658.4eV)を使用して収集した。X線検出装置は、結晶から430mm離して置かれたADSC quantum-315 CCD検出器だった。完全なデータセットの収集のために回転法を単一結晶に適用し、0.5°オシレーション/フレーム及び180°のトータルウェッジサイズを用いた。次いでデータをインデックス化し、統合し、プログラムHKL2000(登録商標) (HLK Research, Inc.)を使用してスケーリングした。
【0287】
構造をプログラムPhaser (Read, R.J., Acta Cryst.D57:1373-1382 (2000))を用い分子置換(MR)法を使用して解析した。Matthews’ coefficientの算出結果は、各非対称ユニットが1つのBACE1/Fab及び48%溶媒から成ることを示した。従って、MR算出は、FabのN- 及びC-ドメイン、及びBACE1細胞外ドメインを含む3サブユニットの一セットを検索することに向けられた。N-及びC-末端Fabドメインは、柔軟なエルボー角度を可能にするために別個に検索した Fabサブユニットの検索モデルは、HGFA/Fab複合体の結晶構造から得た(PDB code:2R0L, Wu, Y.等Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:19784-19789 (2007))。BACE1の検索モデルは、公開BACE1構造PDBコード:1FKN からである(Hong, L.等Science 290:150-153 (2000))。有意なコンホメーション変化は、BACE1/Fab界面で生じる。手動再構築をプログラムCOOT(Crystallographic Object-Orientation Toolkit) (Emsley & Cowtan, Acta.Cryst.D60:2126-2132 (2004))を用いて実施した。構造精密化を、最尤標的機能を使用して、プログラムREFMAC5 (Murshudov, G.N.,等, Acta Cryst.D53:240-255 (1997))及びPHENIX (Python-based Hierarchical Environment for Integrated Xtallography) (Adams, P.D.et al.Acta.Cryst.D66:213-221 (2010)を用いて反復的に実施し、0.221の最終R因子及び0.274のR
freeを得た。構造精密化統計を表5に示す。
1Rsym=S|I
hi−I
h|/SI
hi、ここでI
hiは反射hのi番目の対象関連観察のスケール強度であり、I
hは平均値である。
2括弧内の値は(1.97−1.90Å)である最外郭分解能のものである。
3Rcryst=S
h|F
oh−F
ch|/S
hF
oh、ここでF
oh及びF
chは反射hの観察及び算出構造因子振幅である。
4Rfreeの値は精密化に含まれていない5%のランダムに選択した反射についての算出である。
【0288】
結晶回折及び構造を2.8Å分解能で精密化した。複合体におけるBACE1の全体構造は、その遊離形態に非常に類似し(Hong等, Science 290:150-153 (2000))、残基の96% (373/385)のCα原子位置で0.63Å RMSDでアラインできる。YW412.8.31 FabはBACE1分子表面の〜840Å
2の表面積をカバーし、活性部位の近傍において結合しない。エピトープはループC(完全長BACE1のアミノ酸315−318)、D(完全長BACE1のアミノ酸331−335)、及びF(完全長BACE1のアミノ酸370−381)としてHong等(Science 290:150-153 (2000))に示される構造要素を含み、これらは三次元空間において近位に位置する。更に、YW412.8.31結合部位の及び近傍におけるBACE1の部分はコンホメーション変化を採用し、強結合と一致する0.71の形態相補スコアを生じる。コンホメーション変化を誘発された抗体は、セクレターゼ活性のアロステリック阻害に寄与すると考えられる。
【0289】
Fabはアミロイド前駆体タンパク質のBACE1の活性部位に遠位なエキソサイトに結合し、BACE1結合ペプチドのパパネルの結合部位として過去に同定されたエキソサイトと部分的に重複する(Kornacker等, Biochemistry 44:11567-11572 (2005) (
図14)。重及び軽鎖双方が相互作用に関与した(
図15)。BACE1エピトープ領域が高温度因子に示されるようにより動的である遊離形態と異なり、抗体結合構造はユニークコンホメーションにおいて安定し、セクレターゼのP6及びP7部位(Turner等, Biochemistry 44:105-112 (2005))を変形させる。これらの部位に隣接して、基質結合複合体においてαヘリックス構造を採用する配列番号:49のアミノ酸218−231(AGFPLNQSEVLASV (配列番号:126)(Lin等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:1456-1460 (2000)の残基157-170 (アミノ酸番号付けはBACE1の成熟プロテアーゼドメインで開始する))は、抗体複合体においてランダムループとなり、これはおそらく触媒能においてAPPがBACE1触媒クレフトと反応するのを防ぐことによりAPPタンパク分解性切断に悪影響を及ぼす。構造エピトープは、結晶構造においてYW412.8.31 Fabの何れかの部分から4Åの距離内に位置する一又は複数の原子を有するBACE1のアミノ酸残基を含む。下の表6において、Fab軽鎖残基は鎖Lに属し、Fab重鎖残基は鎖Hに属する。BACE1アミノ酸の残基番号付けは、BACE1の完全長配列(配列番号:49)に基づく。Fabアミノ酸の残基番号付けはKabat番号付けスキームに基づく(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991)。
【0290】
詳細な原子相互作用は、極性相互作用のファンデルワールス接触の形態である。極性相互作用は水素結合及び塩橋を含む。下の表7はBACE1及びYW412.8.31Fab間の対極性相互作用のリストを含む。Fab軽鎖残基は鎖Lに属し、Fab重鎖残基は鎖Hに属する。BACE1アミノ酸の残基番号付けは、BACE1の完全長配列(配列番号:49)に基づく。Fabアミノ酸の残基番号付けはKabat番号付けスキームに基づく。
【0291】
下に示すように、YW412.8.31抗体BACE1エピトープにおけるアミノ酸組成は、BACE2及びカテプシンDにおける対応する領域間であまり保存されていない。YW412.8.31抗体のエピトープにおけるこのアミノ酸差異は、抗体がBACE1に対して高く選択的であるという観察と一致する。番号付けはBACE1の完全長配列(配列番号:49)に基づく。BACE2及びカテプシンDの配列は、それらのそれぞれの結晶構造に基づいてBACE1にアラインされる。YW412.8.31 BACE1エピトープにおける残基をボックスで囲む。
【0292】
実施例4:インビボ特徴づけ-マウス
インビボでのYW412.8.31の効果を評価した。BACE1特異性阻害剤が達成できる最大Ab
1−40低減を得るために、BACE1+/+コントロールと比較したBACE1−/−マウスの血漿及び前脳におけるAb
1−40生産に対するBACE1の寄与を調査した。BACE1−/−マウスにおいて血漿Ab
1−40シグナルは45%低減し、脳Ab
1−40シグナルは80%低減した(
図16、パネルA)。これらの結果は、BACE1が確かに前脳において主要なb-セクレターゼであるが、周辺においてはBACE1は部分的なAb
1−40生産のみを占め、残りは他のb-セクレターゼから生じるこをを示す。
【0293】
Aβ生産へのBACE1の寄与の理解により、hAPPトランスジェニックマウス及び野生型マウスにおけるアミロイド形成プロセシングを調節する抗BACE1抗体YW412.8.31の能力を評価した。
【0294】
hAPPトランスジェニックマウス
簡潔には、5ヶ月のヒトAPP-発現マウスを、毎4日、計3投与(すなわち1、5、及び9日目)の腹腔内注入によって30mg/kg又は100mg/kgYW412.8.31抗体又はビヒクルで処理した。動物を最終投与後2時間で安楽死させた。血清、血漿、及び脳を収集し加工した。血漿、皮質及び海馬を、製造者の指示に従ってアミロイドベータ(Aβ)ELISA試験キット(The Genetics Company)を使用して可溶性Aβ
1−40及びAβ
1−42のレベルについて分析した。薬物動態分析を血清及び脳ホモジネートにおいて実施した。
【0295】
結果は血漿Aβ
1−40及びAβ
1−42レベルが、30mg/kg及び100mg/kgのYW412.8.31抗体投与レベル双方でコントロールレベルのおよそ30%に低減されたことを示した(
図17(A)、上パネル及び
図18、パネルA)。しかしながら、下で検討される野生型マウスにおいて観察されたものと対照的に、脳におけるAβ
1−40及びAβ
1−42のレベルは100mg/kg投与量レベルのYW412.8.31抗体では15−22%のみ低減された(
図17(A)、下パネル及び
図18、パネルA)。試験された動物の脳におけるYW412.8.31抗体の濃度は用量依存的に増加し、30mg/kgで処置された動物の脳における抗体の観察された濃度は4.8±3.6nMであり、100mg/kgで処置された動物の脳における抗体の観察された濃度は14.0±9.3nMであり、抗体のより高い腹腔内投与用量は確かに、脳におけるより高用量の観察抗体に変換されたことを確認する。個々の薬物動態学対薬力学の結果のプロットは、このモデルにおけるこの抗体についてPK/PD関係が存在することを示唆する(
図17(B))。
【0296】
類似な実験をまた実施し、YW412.8.31 抗BACE1抗体を持続ICV注入によってhAPPトランスジェニックマウス脳に全身性又は直接的に送達させた。ICV送達では、一側性移植されたAlzet osmotic minipump(model 2001)によって7日間持続的に抗体を送達させた。送達されたYW412.8.31抗体の量は0.041mg/日(低容量)又は0.41mg/日(高容量)だった;0.33 mg/日のコントロールIgGをコントロールグループに送達させた。安楽死では、血漿、皮質、及び海馬を収集し、製造者の指示に従いELISA(The Genetics Company)によって可溶性Aβ
1-40及びAβ
1-42のレベルについて分析した。
【0297】
下の表8は全身性送達によって30mg/kg又は100mg/kg、又はICV送達によって0.041mg/日及び0.41mg/日投与されたマウスの脳におけるYW412.8.31抗体の濃度を示す。
【0298】
しかしながら、注入後の脳における高レベルの抗体にも関わらず、Aβの低下は15−23%と中程度であり、全身性送達で観察された低下と類似であった(
図18,パネルB)。この観察は、高用量の全身性注入はhAPPトランスジェニックマウスにおいてAβレベルを低下可能でありうるが、しかしながら減少は中程度であることを示唆する。hAPPトランスジェニックマウスにおける低減された効果は動物モデルの結果であると信じられ、なぜなら、全身性送達後の血清における濃度と等しい脳における高濃度は、Ab生産を更に低下させなかったからである。更に、hAPPトランスジェニックマウスの脳における低減は、野生型マウスに観察され下に記載されるものと比較して小さい。このようにトランスジェニックhAPPマウスは、インビボで抗BACE1効果を研究するには理想的ではないかもしれない。野生型マウスは疾患の観点からも抗体についてより適切なモデルであり、なぜなら圧倒的多数のアルツハイマーの患者人口は野生型APP対立遺伝子を保有するからである。
【0299】
野生型マウス
アミロイド形成プロセシングを調節する抗BACE1抗体YW412.8.31の能力をまた、野生型マウスにおいて評価した。簡潔には、実験を上記のように実施した。単一用量のコントロールIgG抗体又はYW412.8.31抗BACE1抗体(50mg/kg)を野生型マウスに静脈内(IV)注入によって全身性に送達させた。24又は48時間後、血漿及び脳サンプルを収集し、Aβ
1−40レベルを分析した。血漿及び脳における全マウスAβ
1−40の濃度を、全抗BACE1抗体濃度を測定する下記の類似な手順に従って、サンドイッチELISAを使用して決定した。簡潔には、Aβ
1−40のC末端に特異的なウサギモノクローナル抗体(Millipore, Bedford, MA)をプレート上にコートし、ビオチン化抗マウスAβモノクローナル抗体M3.2 (Covance, Dedham, MA)を検出に使用した。アッセイは血漿において1.96pg/ml、脳において39.1pg/gの定量下限を有した。
図16、パネルBに示すように、血漿Aβ
1−40は35%低減され、皮質Aβ
1−40は20%低減された。
【0300】
野生型C57Bl/6Jマウスによる更なる実験を実施し、100mg/kgのYW412.8.31又はコントロールIgGを全身性に投与した。単一腹腔内(IP)注入の4時間後の処置動物の血漿及び前脳双方におけるAb
1-40のレベルを決定した。血漿を単離するために、血液を心穿刺によって動物から集めた。PBS灌流後、脳を収集し、一方の半脳からの前脳をPKバッファー(PBS中に1% NP-40, Rocheコンプリートプロテアーゼインヒビターを伴う)において調製し、他方の半脳からの前脳を5MのGuHCL, 50mMのTris pH 8.0においてホモジナイズし、Ab
1-40分析のために、カゼインブロッキングバッファー(PBS中に0.25%カゼイン/0.05% アジ化ナトリウム, 20μg/mlアプロチニン/5mM EDTA, pH 8.0/10mg/mlロイペプチン)中に更に希釈した。
【0301】
図22、パネルAに示すように、100mg/kg用量はコントロールレベルの〜50%、及び前述のBACE1ノックアウトレベルに類似して血漿Ab
1−40を低減できた。しかしながら、投与後4時間では前脳Ab
1−40において変化は検出されなかった。この早期の時点は、脳における効果を見るにはYW412.8.31の投与後で早すぎうる。投与後の長い時間が脳における低下Aβを観察するのに必要であり得、なぜなら特に、上記のようにAβの低下が低用量(50mg/kg)の野生型マウスにおいて24時間で観察されるからである。血清におけるYW412.8.31濃度は非常に高く、投与後4時間で1040±140μg/mL(6.9±0.9μM)であった。脳におけるYW412.8.31濃度はずっと低く0.7±0.4μg/g(4.7±2.7nM)であり、これは血清における濃度の〜0.07%を表し、CNSへの抗体の予測された0.1%定常状態浸透に近似する(Reiber and Felgenhauer, Clin.Chim.Acta.163:319-328 (1987)。重要なことには、脳において得られた抗体濃度、4.7±2.7nMは、前に観察された細胞IC
50に近い(
図11)。このように、BACE1ノックアウトマウスにおいて見られるレベルまでの血漿Ab
1−40の低減に示されるように、抗BACE1抗体はインビボにおいて非常に効果的である。しかしながら、単一全身性投与はマウスへの投与後4時間では脳低減をもたらさず、おそらく何れかの効果を観察するには時点が早すぎたためだと思われる。
【0302】
反復投与による上昇脳抗体レベルの効果を決定するために、更なる実験を実施した。YW412.8.31抗体、又はコントロールIgGを毎4日、計3投与、30又は100mg/kg IP投与した。この試験では、最終投与後4時間の処置動物の血漿及び前脳双方におけるAb
1−40のレベルを測定した。再び、30及び100mg/kg双方でのマルチ投与後、血漿Ab
1−40レベルにおける〜50%の低減が観察された(
図22、パネルB)。注目すべきは、高用量の抗BACE1では前脳Ab
1−40において42%の低減が観察されたが、低用量では低減が観察されなかった。それぞれ毎4日に与えられる30及び100mg/kgでの投与後、血清におけるYW412.8.31抗体濃度は480±210及び1500±440μg/mLであり、脳における濃度は0.9±0.6μg/g(5.9±4.3nM)及び3.0±1.6μg/g(20±10nM)だった。このように、予測された通り、脳における高抗体レベルはAbレベルにおいて頑強な低減をもたらした。注目すべきは、末梢Abレベルにおいて100mg/kg用量と比較して30mg/kg用量での差はなく、30mg/kgでの最大末梢阻害が得られ、従って単純に末梢Abレベルを低減することは脳レベルを低減するには十分でないことを示唆する。
【0303】
加えて、野生型及びBACE1ノックダウンマウスにYW412.8.31抗BACE1抗体を投与した後、PKデータを得た。
図19を参照のこと。抗BACE1の単一投与(1又は10mg/kg)をBALB/CマウスにIV注入によって送達した。血清PKを、投与後21日まで分析した。
【0304】
マウス血清及び脳サンプルにおける全抗BACE1抗体濃度を次のように測定した。マウス血清及び脳サンプルにおける抗体濃度を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して測定した。NUNC 384ウェル Maxisorpイムノプレート(Neptune, NJ)をロバ抗ヒトIgGのF(ab’)
2断片、Fc断片特異性ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)で4
oCで一晩コートした。次の日、プレートを0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を有するリン酸緩衝食塩水(PBS)で室温で1時間ブロックした。各抗体(コントロールIgG及び抗BACE1)を、それぞれの抗体濃度を定量化するためにスタンダードとして使用した。マイクロプレートウォッシャー(Bio-Tek Instruments, Inc., Winooski, VT)を使用して0.05% Tween 20を有するPBSでプレートを洗浄後、0.5% BSA、0.35M NaCl、0.25% CHAPS、5mM EDTA、0.05% Tween 20及び15ppm Proclinを有するPBSにおいて希釈したスタンダード及びサンプルを穏やかな攪拌と共に室温で2時間プレートにおいてインキュベートした。結合抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートF(ab’)
2ヤギ抗ヒトIgG、Fc特異性ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch)で検出した。最後に、プレートを基質3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB) (KPL, Inc., Gaithersburg, MD)を使用して処理した。吸光度をMultiskan Ascent reader (Thermo Scientific, Hudson, NH)において630nmの基準を用いて450nmの波長で測定した。濃度をfour-parameter non-linear regression programを使用して標準曲線から決定した。アッセイは血清において3.12ng/ml及び脳において15.6ng/gの定量下限(LLOQ)を有した。
【0305】
マウスにおける遊離YW412.8.31抗体濃度を、コートとしてBACE1 ECD及び検出のために抗ヒトIgG、Fc特異性抗体(Jackson ImmunoResearch)を使用して上記に類似した手順に従って検出した。遊離抗BACE1マウスELISAは、血清において0.626ng/ml及び脳において3.13ng/gのLLOQ値を有する。
【0306】
2つの別個のPKアッセイを使用した:血清における全YW412.8.31を検出するアッセイ(全mAb)、及び血清における非結合YW412.8.31のみを検出するアッセイ(遊離mAb)。観察されたPKは非線形であり、YW412.8.31濃度が<10μg/mLであるサンプルの全体対遊離mAb値における差は、標的媒介クリアランスを示唆する。
図19、パネルAを参照。更に、全mAb及び非結合mAb間の差異は、血清における幾つかのYW412.8.31が可溶性BACE1に結合し得たことを示す。BACE1+/+、BACE1+/−、及びBACE1−/−マウスにおける単一投与PK分析は、初期研究において観察された非線形を確認し、増強クリアランスが確かに標的媒介であることを示す。BACE1−/−マウスは線形PKを示す。
図19(パネルB)を参照。
【0307】
実施例5:インビボ特徴付け-サル
カニクイザルにIV送達によってコントロールIgG又はYW412.8.31抗BACE1抗体(30mg/kg)を投与した。個々動物の各々における平均ベースラインAβ
1−40レベルを設定するために投与の7日前まで、次いで投与後様々な時点で血漿及びCSFをサンプリングた。サル血清及びCSFサンプルにおける全抗BACE1又はコントロール抗体濃度を、コート及び検出双方としてサル吸着ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Bethyl, Montgomery, TX)を使用して測定した。サルにおける遊離抗BACE1抗体濃度を、コートとしてBACE1 ECD及び検出のためにサル吸着ヤギ抗ヒトIgG抗体(Bethyl)を使用して決定した。全及び遊離抗BACE1サルアッセイ双方は、血清又はCSFにおいて6.25ng/mlのLLOQ値を有した。PKはサルに投与されたIgG1について予測された通りであり、予測した曝露を示す。
【0308】
試験したカニクイザルからの血漿及びCSFにおけるAβ
1-40レベルも決定した。簡潔には、血漿における全cyno Aβ
1-40の濃度を、製造者に説明に従いMSD MA6000 Human (6E10) Abeta Kit (Cat#K111BVE-2, Meso Scale Diagnostics)を使用して決定した。Aβ
1-40のC末端に特異的な捕獲抗体をプレート上に事前にコートし、Sulfo-Tag 抗Aβモノクローナル抗体6E10を検出に使用した。アッセイは血漿において49.4pg/mlの定量下限を有した。CSFにおける全cyno Aβ
1-40のの濃度を、サンドイッチELISAを使用して決定した。Aβ
1-40 のC末端に特異的なウサギポリクローナル抗体(cat#AB5737, Millipore, Bedford, MA)をプレート上にコートし、ビオチン化抗Aβモノクローナル抗体6E10 (Cat#SIG-39340, Covance, Dedham, MA)を検出に使用した。アッセイはCSFにおいて15.6pg/mlの定量下限を有した。
【0309】
図21(パネルA)に示すように、血漿Aβ
1−40レベルは全個体にわたりベースラインの〜50%に低減された。Aβにおける50%最大血漿低減が、7日の観察期間中持続した。YW412.8.31抗BACE1抗体の血清濃度-時間プロファイルは、コントロールIgG抗体について観察されたものと類似し、線形範囲において投与された典型的なIgG1のものに類似する動力学が示唆される(
図20,パネルA)。〜800μg/mLのピーク血清抗体濃度を投与後15分の最初のサンプル採取の時間に観察し、投与後7日までに232μg/mLに落ちた。注目菅器は、投与後測定した全ての時点で、YW412.8.31の血清濃度は細胞IC
50を超えた。(〜2.5nM,
図11を参照)。
【0310】
CSF Aβ
1−40レベルは、
図21(パネルB)に示すように、変動はあるが、投与後1及び3日で最大で50%までの低下、その後は投与後7日ではベースラインAβへの回帰傾向を示した。ベースライン血漿及びCSFレベルにおける変動を
図21(パネルC及びD)に示す。ベースライン血漿レベルは動物を通してかなり均一であったが、CSF Aβ
1−40レベルはかなり変動した。従って、全Aβ
1−40測定を各個々のサルについてベースラインに正規化した。
【0311】
これらのデータは、サルにおける単一投与のYW412.8.31が、血漿及びCSF Aβレベルを有意に低減することを示す。CSFでは、この期間にわたり0.2−0.3μg/mlのYW412.8.31濃度が観察され、これは〜2nM(
図20,パネルB)に変換される。このデータから、YW412.8.31の脳濃度が類似範囲内であることが推測される。PK及びPDデータを比較すると、これらの結果は、血漿における薬物曝露が7日ウィンドウにわたりAβ生産を最大限に阻害するのに十分であり、細胞IC
50に近いCSFにおける薬物濃度がそして試験された投与レベル(30mg/kg)で、脳におけるAβレベルを一過性に低減することを示す。概要すると、これらのデータは、CSF Aβ測定によって決定されるように、非ヒト霊長類において、全身性に投与された抗BACE1が脳におけるBACE1活性を低減できることの強力な証拠を提供する。
【0312】
実施例6:YW412.8.31抗体の親和性成熟
YW412.8.31抗体を、前に記載した結晶構造に提供される構造データに従って親和性成熟した。BACE1と接触する抗体残基を、YW412.8.31抗体の親和性を増強するために変異させた。この方策によって生成される親和性成熟クローンは、命名法YW412.8.31xSを有する。YW412.8.31親和性成熟クローンはまた、前述したように全CDRのソフトランダム化ターゲティングにより生成され、命名法YW412.8.31xを有する。BACE1に結合したクローンの重鎖可変配列及び軽鎖可変配列を
図23(A)β(C)及び24(A)β(C)に記載する。
【0313】
BACE1に結合したクローンを、実施例2Cにおいて前述したように細胞ベースHTRFアッセイにおいてBACE1プロテアーゼ阻害について試験した。アッセイの結果を
図25A及び25Bに示す。
図25Bは、記載の濃度で様々な親和性成熟抗BACE1抗体により24時間処理された一次皮質ニューロンからのAβ
1−40生産(pg/ml)の結果を示す。試験された幾つかの抗体が、YW412.8.31で観察されたものと類似なレベルでBACE1を阻害した。
【0314】
前述の発明を、理解を明瞭にするために説明及び実施例によって幾らか詳細に記載したが、説明及び実施例は、発明の範囲を制限するとして解釈されるべきではない。ここに引用される全特許及び化学文献の開示は、出典明記によってその全体を明瞭にここに援用する。