特許第6163478号(P6163478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163478
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20170703BHJP
【FI】
   A61F2/966
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-500121(P2014-500121)
(86)(22)【出願日】2013年1月15日
(86)【国際出願番号】JP2013050551
(87)【国際公開番号】WO2013121811
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-30027(P2012-30027)
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】下山 真和
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−528066(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122444(WO,A1)
【文献】 特表2008−500090(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/081007(WO,A1)
【文献】 特表2007−516044(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0156225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 25/00−25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管(12)と、生体管腔内挿入時に中心軸方向に圧縮されて前記内管(12)の先端側に配置され、生体管腔内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント(16)と、前記内管(12)の外面側に配置されることで前記ステント(16)を内腔に収納可能であると共に、前記内管(12)に対して基端方向に移動することにより、前記ステント(16)を外部に放出可能な外管(14)と、前記内管(12)に対して前記外管(14)を軸方向に移動させるための操作部(18)とを備えるステントデリバリーシステム(10、100、110、120)であって、
前記操作部(18)は、ハウジング(34)と、該ハウジング(34)の内部に収納された前記外管(14)に接続される連結体(36)と、を備え、前記ハウジング(34)の内部には、前記連結体(36)が軸方向に移動可能に保持される収納溝(46a、46b)が設けられ、前記連結体(36)の基端と前記収納溝(46a、46b)の基端との間に、該内管(12)の外周側を保護する保護体(58、102、112、126)が設けられることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項2】
請求項1記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(58、102、112)は、前記内管(12)の外周側を覆っていることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(58、102、112)は、前記外管(14)の軸方向に沿った移動に追従して該軸方向に変形自在に設けられることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(58、102、112)の弾性力は、少なくとも前記外管(14)が基端側へと移動する際の推力に対して小さく設定されることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(58、102、112、126)は、前記外管(14)、又は、該外管(14)が連結される連結体(36)によって基端側へと押圧されることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(58)は、前記軸方向に折り畳み自在な蛇腹状の筒体からなることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(102)は、前記軸方向に沿って螺旋状に形成されることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(112)は、円柱状に形成されていることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項9】
請求項1又は5記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記保護体(126)は、前記内管(12)の基端と前記外管(14)の基端との間に設けられた2つのスライド部材(122、124)により形成されていることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の生体管腔内にステントを送達、留置するためのステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部や閉塞部の改善のため、金属線材等によって多数の側壁開口を有する円筒形状に形成され、生体管腔内で拡張可能なステントが用いられることがある。
【0003】
例えば、ステント自体が自己拡張機能を備えた自己拡張型ステントである場合、このステントを内管と外管の間の間隙に圧縮・収納した状態で生体内へと送達し、外管を基端側に後退させることで放出して所望の管腔内に留置するためのステントデリバリーシステムが知られている。
【0004】
本出願人は、国際公開第2011/122444号パンフレットにおいて、この種のステントを備えたステントデリバリーシステムを提案しており、該ステントデリバリーシステムは、外管を内管に対して進退動作させる操作部を備え、前記操作部のローラを術者が回転させることでローラの歯車に噛合されたラック部材を介して外管を移動させステントの放出を行う。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一般的な目的は、外管が移動した際における内管の変形を防止し、ステントを生体管腔内の所望部位に確実に留置可能なステントデリバリーシステムを提供することにある。
【0006】
本発明は、内管と、生体管腔内挿入時に中心軸方向に圧縮されて前記内管の先端側に配置され、生体管腔内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、前記内管の外面側に配置されることで前記ステントを内腔に収納可能であると共に、前記内管に対して基端方向に移動することにより、前記ステントを外部に放出可能な外管と、前記内管に対して前記外管を軸方向に移動させるための操作部とを備えるステントデリバリーシステムであって、
【0007】
前記操作部は、ハウジングと、該ハウジングの内部に収納された前記外管に接続される連結体と、を備え、前記ハウジングの内部には、前記連結体が軸方向に移動可能に保持される収納溝が設けられ、前記連結体の基端と前記収納溝の基端との間に、該内管の外周側を保護する保護体が設けられることを特徴とする。
【0008】
従来から、例えば、ステントを放出させるために操作部を操作して外管を内管に対して基端側へと移動させた際、前記外管から前記内管に応力が付与されることがあるが、本発明によれば、ステントデリバリーシステムにおいて、操作部のハウジングに連結された内管の基端と外管の基端との間に、該内管の外周側を保護するように保護体を設けることにより、前記外管から前記内管に応力が付与された場合でも、前記内管の外周側に設けられた保護体に該内管が接触することで、前記内管の変形が防止される。
【0009】
従って、例えば、内管の変形に起因した外管の動作不良が確実に防止され、ステントを生体管腔内の所望部位に確実に留置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るステントデリバリーシステムの全体構成図である。
図2図1に示す操作部の内部側面図である。
図3図3Aは、図2に示す操作部の基端近傍を示す一部省略拡大構成図であり、図3Bは、図3Aの外側チューブ体が基端側へ移動した状態を示す一部省略拡大構成図である。
図4図4Aは、第1変形例に係る保護体が用いられたステントデリバリーシステムにおける操作部の基端近傍を示す一部省略拡大構成図であり、図4Bは、図4Aの外側チューブ体が基端側へ移動した状態を示す一部省略拡大構成図である。
図5図5Aは、第2変形例に係る保護体が用いられたステントデリバリーシステムにおける操作部の基端近傍を示す一部省略拡大構成図であり、図5Bは、図5Aの外側チューブ体が基端側へ移動した状態を示す一部省略拡大構成図である。
図6図6Aは、第3変形例に係る保護体が用いられたステントデリバリーシステムにおける操作部の基端近傍を示す一部省略拡大構成図であり、図6Bは、図6Aの外側チューブ体が基端側へ移動した状態を示す一部省略拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
このステントデリバリーシステム10は、図1に示されるように、管状に形成された内側チューブ体(内管)12と、該内側チューブ体12の外周側に設けられる外側チューブ体(外管)14と、前記内側チューブ体12と外側チューブ体14との間に収納された拡張可能なステント16と、前記外側チューブ体14を前記内側チューブ体12に対して移動させるための操作部18とを含む。
【0012】
なお、図1において、内側チューブ体12及び外側チューブ体14の左側を「基端(後端)」側(矢印A方向)、前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14の右側を「先端」側(矢印B方向)と呼び、他の各図についても同様とする。
【0013】
内側チューブ体12は、図1に示されるように、ガイドワイヤを挿通するためのガイドワイヤルーメンが形成された第1先端チューブ20と、前記第1先端チューブ20の基端側(矢印A方向)に連結部材26を介して連結された第1基端チューブ22と、前記第1基端チューブ22の基端に接続されたコネクタ24とを有する。
【0014】
この内側チューブ体12は、管状体からなり、第1先端チューブ20及び第1基端チューブ22の先端及び基端がそれぞれ開口すると共に、前記第1先端チューブ20の先端が、外側チューブ体14の先端から突出するように配置される。なお、上述したガイドワイヤは、例えば、ステントデリバリーシステム10を生体管腔内の病変部に導くために用いられる。
【0015】
そして、内側チューブ体12は、外側チューブ体14の内部において第1先端チューブ20の基端と第1基端チューブ22の先端とが連結部材26を介して連結されると共に、前記第1基端チューブ22は、その先端から基端まで貫通するルーメンを有し、該ルーメンにはコネクタ24を通じて生理食塩水等の液体が注入される。
【0016】
外側チューブ体14は、管状体からなり、内部に内側チューブ体12の第1先端チューブ20が配置される第2先端チューブ28と、該第2先端チューブ28の基端側(矢印A方向)に連結され内部に第1基端チューブ22が配置される第2基端チューブ30とを有する。なお、第2先端チューブ28の先端は、生体管腔内の病変部にステント16を留置する際の放出口として機能すると共に、途中まで放出された前記ステント16を回収する際の収納口としても機能する。
【0017】
また、第2先端チューブ28の基端には、該第2先端チューブ28の内腔と外部とを連通する開口したガイドワイヤ導出孔32が形成され、内部に設けられた第1先端チューブ20のガイドワイヤルーメンの開口と連通可能に設けられる。このガイドワイヤ導出孔32を通じて内側チューブ体12のガイドワイヤルーメンにガイドワイヤを挿通させる。
【0018】
ステント16は、多数の開口を有したメッシュ状で略円筒形状に形成される。このステント16は、生体管腔内への挿入時には外側チューブ体14の第2先端チューブ28と内側チューブ体12の第1先端チューブ20との間において中心軸方向となる半径内方向に圧縮されて配置され、前記外側チューブ体14の先端から前記生体管腔内の病変部に放出されることにより、半径外方向に拡張して圧縮前の形状へと復元可能な自己拡張型ステントである。
【0019】
操作部18は、図1及び図2に示されるように、ハウジング34と、該ハウジング34の内部に収納され外側チューブ体14に接続されるラック部材(連結体)36と、前記ラック部材36に噛合される歯車38を有し該ラック部材36を直線移動させる回転ローラ40とを含む。
【0020】
ハウジング34は、その中央部が丸みを帯びた形状で形成され、その略中央部には回転ローラ40を収納可能なローラ収納部42が形成され、該回転ローラ40の一部が前記ローラ収納部42に形成されたローラ孔44を介して外部に露呈する。なお、回転ローラ40は、ハウジング34の内壁面に形成された一対の軸受(図示せず)によって回転自在に支持される。
【0021】
また、ハウジング34の内部には、ラック部材36が軸方向(矢印A、B方向)に移動可能に収納され保持される一組の収納溝46a、46bがそれぞれ形成され、前記収納溝46bの基端側(矢印A方向)には、コネクタ24が収納されるコネクタ収納部48が形成され、前記コネクタ24が前記コネクタ収納部48に収納されることによってハウジング34に対して固定される。これにより、内側チューブ体12を構成する第1基端チューブ22の基端がコネクタ24を介して操作部18に固定される。
【0022】
一方、ハウジング34の先端には、外側チューブ体14の第2基端チューブ30を摺動可能に保持する先端ノズル50が装着され、該先端ノズル50の内部には、前記第2基端チューブ30が挿通される貫通孔(図示せず)が形成される。
【0023】
ラック部材36は、直線状に形成され、且つ、略対称形状に形成された一組の第1及び第2ブロック体52、54からなり、外側チューブ体14における第2基端チューブ30の基端が、前記第1ブロック体52と前記第2ブロック体54との間に挟持されることによって固定される。この場合、内側チューブ体12は、外側チューブ体14の内部を自在に移動することが可能である。
【0024】
そして、第1及び第2ブロック体52、54からなるラック部材36が、ハウジング34の内部において収納溝46a、46bに挿入されることによって該ハウジング34の先端及び基端側(矢印A、B方向)に向かって直線的に移動可能な状態で保持されることとなる。
【0025】
また、第2ブロック体54は、ハウジング34の内部において回転ローラ40に臨むように設けられ、該回転ローラ40に臨む側面には軸方向(矢印A、B方向)に沿って凹凸状に形成された複数の歯部56が設けられる。
【0026】
さらに、図1図3Bに示されるように、内側チューブ体12の基端と外側チューブ体14の基端との間、より具体的には、ラック部材36の基端と収納溝46bの基端との間には、例えば、樹脂製材料から蛇腹状の筒体で形成された保護体58が設けられ、該保護体58は軸方向(矢印A、B方向)に伸縮自在に形成されると共に、その先端が第1及び第2ブロック体52、54の基端に当接し、基端が収納溝46bの基端となる壁面に当接している(図3A及び図3B参照)。すなわち、保護体58は、ラック部材36と収納溝46bとを接続するように介装されている。また、保護体58の内部には、その略中央部軸方向に沿って内側チューブ体12を構成する第1基端チューブ22が挿通されている。
【0027】
なお、保護体58の材質及び形状は、ラック部材36が基端側(矢印A方向)へと移動する際の推力に対して前記保護体58の弾性力が小さくなるものが選択される。
【0028】
回転ローラ40は、例えば、ホイール状に形成され、その中心部に設けられた一対の回転軸がハウジング34の軸受(図示せず)にそれぞれ挿入される。また、回転ローラ40の側面には、回転軸を中心とした歯車38が設けられ、ラック部材36の歯部56に噛合される。そして、回転ローラ40が回転することによってラック部材36が収納溝46a、46bに沿って直線的に移動することとなる。また、回転ローラ40の外周部位は、その一部がハウジング34のローラ孔44を介して外部に露呈し、この露呈した部位を介して術者が前記回転ローラ40を回転させる。
【0029】
上述した操作部18では、例えば、術者が回転ローラ40をハウジング34に対して所定方向(図1及び図2中、矢印C方向)に回転させることにより、前記ハウジング34の内部においてラック部材36が収納溝46a、46bに沿ってコネクタ24側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、外側チューブ体14がハウジング34の基端側(矢印A方向)へと移動(後進)する。これにより、ステント16が、外側チューブ体14の先端から放出される。
【0030】
一方、ステント16を途中まで放出した後、回転ローラ40を前記とは反対方向(図1及び図2中、矢印D方向)に回転させることにより、前記ラック部材36が収納溝46a、46bに沿ってコネクタ24から離間する方向(矢印B方向)へと移動し、それに伴って、前記外側チューブ体14が内側チューブ体12に対して先端側(矢印B方向)に移動(前進)してステント16が前記外側チューブ体14の内部に再収納される。
【0031】
本発明の実施の形態に係るステントデリバリーシステム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0032】
先ず、生体管腔内(例えば、血管内)にガイドワイヤを挿入し、その先端が前記生体管腔内の病変部に予め留置した状態とする。そして、術者が操作部18の基端に設けられたコネクタ24に対して液体注入具(図示せず)を接続し、前記液体注入具からコネクタ24へと生理食塩水等の液体を注入する。これにより、この液体が内側チューブ体12及び外側チューブ体14の先端側(矢印B方向)へと流通する。そして、先端まで到達した液体が内側チューブ体12及び外側チューブ体14の先端から吐出することにより、生体外において前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14の内部のエア抜き(ブライミング)が完了する。
【0033】
次に、生体外に露呈しているガイドワイヤの基端を、内側チューブ体12の先端からガイドワイヤルーメンへと挿通させ、前記ガイドワイヤに沿って前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14を生体管腔内へと進行させていく。
【0034】
そして、外側チューブ体14の先端が病変部に到達したことを図示しない造影マーカーによって確認した後、回転ローラ40を所定方向(矢印C方向)へと回転させる。これにより、歯車38の回転に伴ってラック部材36がハウジング34内で基端側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、外側チューブ体14が前記操作部18の基端側へと徐々に移動する。また、同時に、保護体58は、その内部に内側チューブ体12の第1基端チューブ22が挿通された状態で、徐々に軸方向(矢印A方向)に押し潰されるように圧縮されていく。
【0035】
その結果、外側チューブ体14内に収容されたステント16が、先端部側から徐々に露出し始めるのと同時に半径外方向に拡張し始め、ステント16が、外側チューブ体14に対して完全に露出した状態となることで、円筒状に拡張した状態で病変部に留置される。
【0036】
また、上述したようなステント16の放出を行う際に、回転ローラ40の回転作用下にラック部材36を基端側(矢印A方向)へと移動させるが、例えば、内側チューブ体12の歪みや曲がり、あるいはラック部材36の移動時における収納溝46b内でのふらつき等を原因として、前記ラック部材36あるいは外側チューブ体14から内側チューブ体12に対して応力が付与されることがある。
【0037】
このような場合でも、内側チューブ体12の第1基端チューブ22は、その外周側を覆う(保護する)保護体58の内周面によって前記応力による径方向への変形が規制されているため、前記内側チューブ体12の座屈が確実に防止される。その結果、ステント16を生体管腔内の病変部に確実に留置することができる。
【0038】
以上のように、第1の実施の形態では、ステントデリバリーシステム10を構成する操作部18において、ハウジング34に形成された収納溝46bの基端とラック部材36の基端との間に、内側チューブ体12の第1基端チューブ22を覆う(保護する)ように蛇腹状の筒体からなる保護体58を設ける。これにより、例えば、ステント16を放出させるために回転ローラ40の回転作用下にラック部材36を基端側(矢印A方向)へと後退させる際、内側チューブ体12の歪みや曲がり、あるいはラック部材36の移動時における収納溝46b内でのふらつき等に起因して内側チューブ体12に応力が付与されることがあるが、この場合でも、前記内側チューブ体12の外周側に設けられた筒状の保護体58に該内側チューブ体12が接触することで、その変形が防止される。
【0039】
その結果、内側チューブ体12の変形に起因した外側チューブ体14の動作不良が確実に防止され、ステント16を生体管腔内の所望部位に確実に留置することが可能である。
【0040】
すなわち、内側チューブ体12の変形可能な空間を、該内側チューブ体12の外周側に筒状の保護体58を設けることで制限して変形を防止している。
【0041】
また、上述した蛇腹状の保護体58を設ける代わりに、図4A及び図4Bに示されるステントデリバリーシステム100のように螺旋状の保護体102を用いるようにしてもよいし、図5A及び図5Bに示されるステントデリバリーシステム110のように、例えば、中実筒状に形成された保護体112を用いるようにしてもよい。
【0042】
この第1変形例に係る保護体102は、例えば、樹脂製材料からなる線材を螺旋状に巻回することによって形成され、軸方向(矢印A、B方向)に伸縮自在に形成される。なお、保護体102の材質及び形状は、ラック部材36が基端側(矢印A方向)へと移動する際の推力に対して前記保護体102の弾性力が小さくなるものが選択される。そして、保護体102の先端が、ラック部材36の基端に当接し、前記保護体102の基端が、収納溝46bにおける基端の内壁面に当接するように配置される。
【0043】
そして、図4Aに示される状態からラック部材36が基端側(矢印A方向)へと移動することにより、該ラック部材36の基端によって押圧された保護体102が徐々に基端側(矢印A方向)へと押し潰されるように圧縮されていくと共に、その内部に挿通された内側チューブ体12の第1基端チューブ22の変形が前記保護体102の内周面によって規制され、該内側チューブ体12の変形(座屈)が確実に防止される。これにより、内側チューブ体12の座屈等の変形に起因した外側チューブ体14の動作不良が防止され、ステント16を生体管腔内の所望部位に確実に留置することが可能である。
【0044】
また、第2変形例に係る保護体112は、例えば、樹脂製材料から円柱状に形成され、その先端がラック部材36の基端に当接し、基端が収納溝46bにおける基端の内壁面に当接するように設けられる。保護体112は、軸方向(矢印A、B方向)に伸縮自在に設けられ、該軸方向に圧縮されることで拡径自在に形成される。保護体112の材質は、ラック部材36が基端側(矢印A方向)へと移動する際の推力に対して前記保護体112の弾性力が小さくなるものが選択され、具体的には、スポンジ、ゴム、ウレタン等が好適である。
【0045】
また、保護体112の中心部には、軸方向に沿って内側チューブ体12の第1基端チューブ22が挿通されている。
【0046】
そして、図5Aに示される状態からラック部材36が基端側(矢印A方向)へと移動することにより、該ラック部材36の基端によって押圧された保護体112が徐々に基端側(矢印A方向)へと押し潰されていくのと同時に、半径外方向へと徐々に拡径していく。これにより、保護体112の内部に挿通された内側チューブ体12の変形が前記保護体112によって規制され、該内側チューブ体12の座屈が確実に防止される。これにより、内側チューブ体12の座屈等の変形による外側チューブ体14の動作不良が防止され、ステント16を生体管腔内の所望部位に確実に留置することが可能である。
【0047】
一方、上述した保護体58の代わりに、図6A及び図6Bに示されるステントデリバリーシステム120のように、内側チューブ体12の基端と外側チューブ体14の基端との間に設けられた2つの第1及び第2スライド部材122、124により形成される保護体126、より具体的には、ラック部材36の基端に連結された第1スライド部材122と、収納溝46bの基端に連結された第2スライド部材124とからなる保護体126を用いるようにしてもよい。
【0048】
この第3変形例に係る保護体126は、第1及び第2スライド部材122、124が、例えば、樹脂製材料からブロック状に形成され、前記第1スライド部材122は、内側チューブ体12に対して上方に配置され、前記第2スライド部材124は、前記内側チューブ体12に対して下方に配置される。
【0049】
第1スライド部材122の下面には、ラック部材36から離間する方向(基端側)に向かって徐々に上方へと傾斜した第1傾斜面128を有し、該第1傾斜面128の中央には内側チューブ体12の挿通される第1溝部130が一直線上に形成される。なお、第1溝部130は、第1スライド部材122の長手方向(矢印A、B方向)に沿って形成される。
【0050】
第2スライド部材124の上面には、ラック部材36側(先端側)に向かって徐々に下方へと傾斜した第2傾斜面132を有し、該第2傾斜面132の中央には内側チューブ体12の挿通される第2溝部134が一直線上に形成される。なお、第2溝部134は、第2スライド部材124の長手方向(矢印A、B方向)に沿って形成される。また、第2傾斜面132の傾斜角度は、第1傾斜面128の傾斜角度と略同一に設定される。
【0051】
そして、ステントデリバリーシステム120において、ステント16が外側チューブ体14の内部に収納された状態では、図6Aに示されるように、第1スライド部材122の基端と第2スライド部材124の先端とが軸方向に所定長さだけ重なるように配置され、且つ、ラック部材36の基端と収納溝46bの基端との間における内側チューブ体12の一部が第1スライド部材122の第1溝部130によって保持され、残りの内側チューブ体12が第2スライド部材124の第2溝部134によって保持される。
【0052】
このステントデリバリーシステム120において、図6Aに示される状態からラック部材36が基端側(矢印A方向)へと移動することにより、該ラック部材36の基端によって押圧された第1スライド部材122が徐々に第2スライド部材124側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、第1傾斜面128と第2傾斜面132とが徐々に接近していく。そして、第1スライド部材122が第2スライド部材124の上方へと移動することで、内側チューブ体12が前記第1及び第2スライド部材122、124によって上下から保持された状態となる。
【0053】
すなわち、ラック部材36の基端と収納溝46bの基端との間における内側チューブ体12が、保護体126を構成する第1スライド部材122及び第2スライド部材124の少なくともいずれかによって保持されているため、前記ラック部材36の移動に伴って内側チューブ体12に応力が付与された場合でも、前記内側チューブ体12の変形が前記保護体126によって規制され、該内側チューブ体12の座屈が確実に防止される。これにより、内側チューブ体12の変形による外側チューブ体14の動作不良が防止され、ステント16を生体管腔内の所望部位に確実に留置することが可能である。
【0054】
なお、上述したステントデリバリーシステム10、100、110、120にでは、保護体58、102、112、126の先端をラック部材36の基端に当接させ、該ラック部材36を基端側(矢印A方向)へと移動させる際に前記保護体58、102、112、126を押圧する構成としているが、これに限定されるものではなく、例えば、前記ラック部材36の基端側(矢印A方向)にさらにラック部材36に固定された別部材(連結体)を設け、前記別部材と収納溝46bとの間に保護体58、102、112、126を設けるようにしてもよい。
【0055】
また、上述した説明においては、回転ローラ40を回転させることでラック部材36をハウジング34の軸方向(矢印A、B方向)に沿って移動可能な構成としているが、例えば、前記回転ローラ40を設ける代わりに、前記ハウジング34の外部に露出し、且つ、前記ラック部材36又は前記別部材に連結された操作レバーを設け、前記操作レバーを直線的に動かすことで前記ラック部材36又は前記別部材を移動可能な構成としてもよい。
【0056】
なお、本発明に係るステントデリバリーシステムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6