(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163479
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】肝細胞癌の診断、予後診断、監視および治療方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20170703BHJP
G01N 33/60 20060101ALI20170703BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20170703BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G01N33/60 Z
A61B10/00 T
A61K49/00
【請求項の数】26
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-504448(P2014-504448)
(86)(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公表番号】特表2014-517261(P2014-517261A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】IL2012050136
(87)【国際公開番号】WO2012140660
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】61/475,264
(32)【優先日】2011年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513257421
【氏名又は名称】エクサレンズ バイオサイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 千秋
(72)【発明者】
【氏名】グッゲンハイム,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ベン−オレン,イラン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルシュコウィッツ,アヴラハム
(72)【発明者】
【氏名】イラン,ヤロン
【審査官】
西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−516534(JP,A)
【文献】
特開平11−116503(JP,A)
【文献】
特表2001−515745(JP,A)
【文献】
特開昭61−017550(JP,A)
【文献】
特表2009−513706(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/152222(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0131810(US,A1)
【文献】
米国特許第06071245(US,A)
【文献】
国際公開第2010/062706(WO,A2)
【文献】
国際公開第2009/117096(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/111846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
A61B 10/00−10/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における肝細胞癌(HCC)の検出のための方法であって、
(i)同位体標識したオクタン酸塩の投与の後に、前記対象の呼気中で同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することと、
(ii)前記対象中のオクタン酸塩代謝産物の量に基づくパラメータと基準オクタン酸塩代謝産物の量に基づくパラメータとを比較することと、
を含み、
オクタン酸塩代謝物の有意な減少が、活動中の肝細胞癌を示す、
方法。
【請求項2】
前記基準オクタン酸塩代謝産物が、HCCに罹患していない対象において決定される、対照となるオクタン酸塩代謝物であるか、
前記ステップ(ii)における比較を、肝細胞癌が活動中の肝細胞癌か活動していない肝細胞癌かを決定するために、行うか、
前記ステップ(i)における前記監視を、同位体標識したオクタン酸塩の投与の後に、所定の期間にわたって連続して測定することにより実施するか、
同位体標識したオクタン酸塩の投与の後に、所定の期間にわたって周期的な間隔で前記対象から複数の呼気サンプルを収集するか、
または、
前記代謝産物が、CO2である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同位体が、炭素13、炭素14、酸素18からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記同位体が、13Cである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象中のオクタン酸代謝物と基準オクタン酸塩代謝産物とを比較することが、前記対象のDOB(delta over baseline)曲線、PDR(percentage dose recovery)曲線、およびCPDR(cumulative PDR)曲線のうちの少なくとも1つを作成することと、基準となるDOB、PDR、CPDR曲線、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つのパラメータと、前記DOB、PDR、CPDR曲線のうちの少なくとも1つのパラメータとを比較することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象中のオクタン酸塩代謝物と基準オクタン酸塩代謝産物とを比較することが、PDR曲線を作成し、基準となるPDRのうちの少なくとも1つのパラメータと前記PDR曲線のうちの少なくとも1つのパラメータを比較することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパラメータが、ピークの高さ、前記ピークの現れる時間、および前記PDR曲線の勾配からなる群から選択させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータが、ピークの高さであり、そしてここで、ピークの高さの低下が、HCCを示すか、または、
前記パラメータが、ピークに到達するまでの時間であり、そしてここでピークに到達するまでの時間が基準の値よりも長くなると、HCCを示す、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパラメータが、選択した時点での1つ以上のPDR値(%用量/時間)、選択した時点での1つ以上のCPDR値、および選択した時点での1つ以上のDOB値から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
選択した時点でのPDR、CPDR、および/またはDOB値の減少が、HCCを示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
同位体標識したオクタン酸塩の第1の投与の後に、前記対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩代謝物を監視することにより、前記肝機能の第1の評価を実施し、同位体標識したオクタン酸塩の第2の投与の後に、前記対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することにより、所定時間後に、前記肝機能の第2の評価を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記所定時間後に第2の評価を実施するステップが、複数回繰り返されるか、または、前記基準オクタン酸塩代謝物が、前記肝機能の第1の評価中に決定されたオクタン酸塩代謝物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
病因に応じて前記ステップ(i)において得られた値を標準化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記病因が、NASHおよびNAFLDからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の血液検査の結果に応じて前記ステップ(i)において得られた値を標準化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の血液検査が、空腹時血糖値、インシュリン値、ALT値、AST値、ALP値、GGTP値、ビルビリン値、アルブミン値およびナトリウム値から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
治療に応じて前記ステップ(i)において得られた値を標準化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記治療が、ソラフェニブの投与である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、肝細胞癌に罹患するリスクを有する対象、肝細胞癌を有する疑いのある対象、および肝細胞癌に罹患している対象からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、肝細胞癌に罹患しており、治療を受けたことがあるか、治療を受けている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記治療が、ソラフェニブの投与以外である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、少なくとも1つの慢性肝疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記慢性肝疾患が、NASH、NAFLD、B型肝炎およびC型肝炎、ならびにいずれかの病因による硬変からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記慢性肝疾患が、NASHまたはNAFLD以外である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記対象の呼気中の総CO2を監視することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記同位体標識したオクタン酸塩が、経口的、静脈内、または鼻腔内に投与される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞癌(HCC)の診断、予後診断、監視および治療に関する。特に、本発明は、HCCの検出および監視における、同位体標識したオクタン酸塩に基づく呼気検査の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌(HCC、悪性肝癌とも呼ぶ)は、慢性ウイルス肝炎(例えば、B型肝炎)および/またはいずれかの病因による肝硬変の患者で最も広く見られる。同様に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も、HCCの発生の危険因子であることが見いだされている。他の危険因子の例は、アフラトキシンの曝露およびヘモクロマトーシスなどのヘモクロマトーシスが挙げられる。場合によっては、原因不明のHCCは、肝疾患の病歴または知られている危険因子を有していない患者で発生することもある。
【0003】
HCCの発生率は、常に世界中で増加している。サハラ砂漠以南のアフリカ、中国、香港、および台湾などの世界の一部地域において、B型肝炎およびC型肝炎等の肝炎ウイルスの高曝露および環境病原菌の地域的曝露のために、HCCはほぼ確実に主要な健康問題となっている。
【0004】
このHCCの病因は、完全に知られてはいないが、ミトコンドリア機能不全が、この原因に含まれることが示唆されている。HCC細胞は、減少したミトコンドリアの機能で遺伝的かつ代謝的に変質していることが示される(Warburg O (1956). “On the origin of cancer cells”. Science 123 (3191): 309−14)。
【0005】
HCCの治療は、治癒を目標とするものもあれば、症状の軽減および延命に焦点を当てるものもある。治療の種類は、一般に、腫瘍の大きさとステージとにより選択される。この腫瘍が小さい場合(2〜3cm未満の合)、肝臓の脈管構造の浸潤の所見がなく、肝機能が良好に維持されている場合、肝臓の一葉に限局して外科的に摘出してもよい。他の治療の選択肢は、肝臓移植、高周波アブレーション(RFA)、(治療のアルゴリズムによる)肝動脈化学塞栓術(TACE)(例えば、バルセロナクリニック肝臓癌(BCLC)ステージングシステムを基準)を含む。RFAでは、(X線のスクリーニング、CTスキャン、または超音波などの)画像のガイダンスの下で、この腫瘍内へと進行する針電極を介して腫瘍に高周波エネルギーを伝導する。この針を介した高周波により、熱凝結およびタンパク質の変性によって腫瘍が破壊される。TACEでは、化学療法により、カテーテルを介して腫瘍に直接投与され、かつ腫瘍への血液供給がカットオフされる。上述した手法に加え、内服薬を投与してもよい。例えば、進行したHCCを有する患者に対して、トシル酸ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、内因性ミトコンドリア経路を活性化することにより腫瘍の成長を妨害する内服薬(Kurosu, “Sorafenib induces apoptosis specifically in cells expressing BCR/ABL by inhibiting its kinase activity to activate the intrinsic mitochondrial pathway”, Cancer Research 2009 May l;69(9):3927−36.)が承認されている。
【0006】
一般的に、診断が早期の場合は、小さい腫瘍または進行の遅い腫瘍は治療を成功させることができる。しかしながら、HCCに罹患する患者の大部分は、長期にわたる肝疾患に関連する症状以外の症状を有さないため、早期診断はある程度困難である。HCCの早期検出を促進するために、通常、硬変した患者のような高いリスクのグループの観察が行われている(例えば、AASLDガイドライン基準)。
【0007】
HCCの検出および診断は、概して、画像検査、血清学的検査、および場合によっては生検に基づく。画像試験は、例えば、腹部超音波検査、ヘリカルコンピュータ断層撮影(CT)スキャン、3相CTスキャン、および磁気共鳴画像(MRI)を含む。血清学的検査は、α−胎児型タンパク質(AFP)の血液レベルの測定を含むものであって、高レベルのAFPはHCCに関連する。この典型的な戦略は、AFPおよび超音波により1ヶ月観察する。
【0008】
同様に、HCCの評価は、部分的な治療後の監視として実施される。治療の有効性の評価、ならびに、HCCが活動中であるか活動していないかの決定は、通常、造影CTまたはMRIを使用して放射線学的に実施される。例示的な造影剤は、lipiodol(登録商標)、腫瘍の微小血管内に選択的に維持されるヨウ素化油剤である。治療した病変において血管の増強がなくなることは、通常この治療に対して肯定的な反応であることを示す。AFPは、経過観察の手段として十分に正確なものではなく、治療後のAFPレベルの監視は、画像に置き換わるものではない。理想的な画像間隔は知られていないが、当初は、初期治療後のHCCの病変を監視するために3から4か月の間隔が使用されている。
【0009】
このHCC診断および経過観察の標準的な技術はいくつかの欠陥を有する。例えば、CTまたはMRIに基づくイメージング方法は高価格であり、熟練した実務家により病院内で実施され、かつCT/MRIの場合に、高放射および造影剤によって誘発する腎障害などの副作用と関わらなければならない。さらに、AFP測定などの方法は、不十分な感度または効力である。
【0010】
肝臓による
13C標識基質の代謝の副生成物である
13CO
2の監視に基づいた呼気検査が、肝機能の評価の手段として提案されてきた。試験化合物の肝代謝が、二酸化炭素を形成する結果となり、適切な炭素が標識される場合、(例えば、質量分析器または非分散形赤外分析計において測定可能である)標識されたCO
2の呼息は、もともと標識した化合物の肝クリアランスを反映し、特異的な肝機能を評価するために使用されてもよい。例えば、肝細胞のシトクロムP450酵素により代謝された化合物が、肝臓のミクロソームの機能において使用されてもよい。例示的な化合物は、メタセチンである。別の例として、肝臓のミトコンドリアでの代謝で起こる化合物を、肝臓のミトコンドリア機能の評価として使用しても、特定の肝機能を検出するために使用してもよい。(例えば、Grattagliano et al. (2010) Eur J Clin Invest, 40 (9): 843−850 and Portincasa et al. (2010) Clujul Medical, 83 : 23−26基準)
【0011】
1つの例示的な分子は、肝臓のミトコンドリアにおいて脱炭酸を起こす化合物である、ケトイソカプロン酸(KICA)である。HCC患者の肝機能の評価におけるKICA呼気検査の使用が記録されてきた(Palmieri et al. (2009) Journal of Surgical Research 157, 199−207)。この研究において、肝機能に関する2つの異なるHCC治療の効果が評価された。HCCを有する硬化性の患者およびHCCを有していない硬化性の患者を、特にKICAの脱炭酸を使用して試験した。ベースラインでは、HCCを有する患者は、健康な対照およびHCCを有していない患者と比較して
13C−KLCA呼気検査の値が有意に低かった。HCCを有していない硬化性の患者および健康な対照の間に、小さいが有意な
13C−KLCA呼気検査の値の変化が現れた(健康な対照と比較してHCCを有していない硬化性の患者でより低い値が観察された)。この患者を、
13C−KLCAのレベルを、1日後、30日後、および180日後に再び試験した後、TACEまたはRFAのどちらかで治療した。この著者は、「ケトイソカプロン酸の脱炭酸は、TACEに反映されるものではないが、RFA後減少した(−27%, P< 0.05)」とまとめ、「RFAではなくTACEが、残留する(ミクロソームの)肝臓の質量を分離するが、ミトコンドリアの機能に関する効果を機能不全にするこのような経過を誘導するようだ」と結論づけた。
【0012】
肝臓のミトコンドリアにより代謝される別の例示的な分子は、オクタン酸塩である。オクタン酸塩は、ミトコンドリアに侵入する中間鎖脂肪酸であり、アセチルコエンザイムA(アセチル−CoA)を産生させるβ−酸化を起こす。アセチル−CoAはクレバス回路に入り、他のエネルギーが豊富な化合物の合成に利用されない限り、CO
2へと酸化される。
【0013】
国際出願公開第2007/054940号は、本発明の出願人によるものであり、肝機能の評価および代謝能力のため、または肝臓の健康状態および/または肝損傷の度合いを評価するための呼気検査装置および方法を開示する。例えば、肝臓の状態を評価する方法が開示されており、この方法は、同位体標識したオクタン酸、オクタン酸の塩または誘導体を対象に投与した後、対象のオクタン酸、オクタン酸の塩または誘導体の代謝産物をオンラインで監視することを含む。別の例では、肝臓の状態を評価するための装置が開示され、この装置は、対象の呼気中の標識したオクタン酸、その塩または誘導体の代謝産物の同位体のレベルをオンラインで監視するように適合した1つ以上のセンサおよび連続した状態で1つ以上のセンサの測定結果をサンプリングするように適合したコントローラを含む。この方法および装置を、対象の非アルコール性脂肪肝および非アルコール性脂肪性肝炎の状態の間を識別する際に使用してもよい。
【0014】
国際出願公開第2010/013235号は、本発明の出願人によるものであり、肝機能の評価および代謝能力の評価のため、または肝臓の健康状態および/または肝損傷の度合いを評価するために使用されてもよい呼気検査装置および方法を開示する。例えば、インシュリン耐性またはアルコール性肝疾患または非アルコール性脂肪性肝疾患またはメタボリックシンドロームに関連する異常なβ−酸化を検出する方法が開示され、この方法は、対象に同位体標識したオクタン酸、その塩または誘導体を対象に投与した後、対象の呼気中のオクタン酸、その塩または誘導体の代謝産物を監視することを含む。
【0015】
肝臓の代謝の複雑度は、肝機能を評価する際に試練を課すものであり、それゆえに、呼気検査の結果の解釈は常にわかりやすいものではない。呼気検査結果の解釈を潜在的に限定する例は、交絡変数(例えば、運動)の存在、動力学的胃排出の類型論、投与される気質の肝臓を最初に通過する代謝物、ならびに化合物の排出物および大使者物の競合経路の存在を含む。考慮にいれるべき追加的な因子は、例えば、肝臓以外の臓器で起こるミトコンドリアの代謝の存在(肝代謝が、例えば、試験の相関関係に陰性である場合の肝代謝を除く)、標識していないより大きなプール中の外因的に標識した化合物の希釈が起こり得ること、および対象から対象に実質的に変動することのできる標識していないCO
2の外因的産物を含む。さらに、異なる肝臓の機能に影響してもよく、異なる呼気検査の結果となってもよい、患者内、患者間の変動、および異なる病因となる多くの因子が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
原発性肝細胞癌に関する費用効果、観察、検出、予後診断、監視の正確かつ簡潔な方法およびシステムのニーズが未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、治療に関して改善したHCC検出、評価、および監視のための、オクタン酸またはそれらの塩もしくは誘導体を使用する方法およびシステムを提供する。
【0018】
本発明は、同位体標識したオクタン酸を使用した呼気検査に反映するとして、肝臓のミトコンドリアによるオクタン酸の代謝のレベルが、活動中のHCCの存在と相関し、かつHCCを検出し監視するために使用することができることを最初に開示した。特に、同位体標識したオクタン酸の呼気検査(OBT)、例えば、
13C−オクタン酸塩の呼気検査の値が低いほど、活動中のHCCを示す。驚くべきことに、有意に低い
13C−オクタン酸塩の呼気検査の値が、活動していないHCCを有する対象およびHCCを有していない対照となる患者と比較して、活動中のHCCを有する対象で観察されることが観察された。以下の本明細書で例示される活動していないHCCを有する対象は、TACE治療を経験しており、この手法が終了してから最大3か月後に評価された。特に、「TACEは、RFAで観察されるミトコンドリアの機能の初期の低下を導入してはおらず、このミトコンドリアの機能の手法の特異的な干渉を示唆するものではない」という出版が早期に開始されたという観点から、この観察された結果は驚くべきものであった(Palmieri et al. (2009) Journal of Surgical Research 157, 199−207)。
【0019】
本発明は、OBT値は、初期のステージであってもHCCの検出に使用してもよいことをさらに開示する。特に、<2cmのHCCなどの、肝臓の質量の非常に小さな部分を有した患者であっても、OBTの測定が有意に低下することが見いだされた。本発明は、OBTの値がこの疾患の治療および/または再発に関する評価のために、HCCを有する患者の治療後の経過観察として使用されてもよいことをさらに開示する。
【0020】
本発明の方法およびシステムは、小さくかつより大きな腫瘍のスクリーニング/観察および初期検出に適用することができてもよい。同様に、本発明の方法およびシステムは、いくつかの種類のHCC治療、例えば、TACEおよびRFA治療に関する監視に適用することができてもよい。同様に、OBTは、腫瘍の摘出または肝移植の後の再発を初期に検出することができてもよい。
【0021】
1つの実施態様において、本発明は、対象の予後診断および/または経過観察を決定するHCCの検出のための方法であって、
(i)同位体標識したオクタン酸塩を投与した後に、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することと、
(ii)対象のオクタン酸塩代謝物と基準オクタン酸塩代謝物とを比較することと、を含み、オクタン酸の有意な減少が、活動中のHCCを示す、方法を提供する。
【0022】
一部の実施形態において、本方法は、以下に詳細に記載される病因により呼気検査値を標準化することをさらに含む。追加の実施形態または代替的実施形態において、本方法は、以下に詳細に記載される治療により呼気検査を標準化することをさらに含む。一部の実施形態において、本方法は、活動中のHCCと活動していないHCCとの比較に基づき識別することをさらに含む。
【0023】
本発明の実施形態による方法は、初期の活動中のHCC、例えば、2cmより小さいHCCの検出に有益である。小さな活動中のHCC(例えば、<2cm)を有する患者のOBTの減少を、肝臓の質量の大多数による代謝間および代謝内の変動により遮蔽することができ、このことは、先行技術に詳細には説明されていない。特定の作用の理論または作用機構に拘束することを意図するものではないが、本方法は、これらの患者の肝臓内の総合的なミトコンドリアの機能に影響する腫瘍細胞により分泌される因子に影響を与えてもよい。この因子を中和するいずれかの種類の治療は、悪性腫瘍の経過を軽減する効果を有していてもよい。代替的にあるいは上記に加えて、本方法が、腫瘍の中、例えば、その血管過多領域内、または腫瘍細胞内、または細胞および血管の間のオクタン酸塩を補足することによるものであってもよい。この腫瘍に関連する血管内の変化は、腫瘍の直接の腫瘤にわたって効果を増強に起因してもよい。潜在的な補足効果は、腫瘍に対する造影剤または治療剤を送達する手段として有益であってもよい。HCCに対する送達機構は、全身性の副作用がなく腫瘍中において高濃度の治療剤を得ることができてもよい。
【0024】
本発明は、例えば、
13C−KICA呼気検査などのいくつかの先行文献の限定を示す。先行技術で使用したKICAとは対照的に、オクタン酸塩の代謝は、肝機能全体に影響を与えるものではなく、慢性的な患者においても正常に維持される。有利な点として、HCCのない(線維症ステージまたは肝硬変による)障害のある肝臓、すなわち、正常な対象と同様のオクタン酸塩代謝を有し、かつKICAのような肝臓の貯蔵機能の低下による減少がない患者ならびにHCCを有した患者の間で、オクタン酸呼気検査で有意な差異がみることができた。
【0025】
本明細書に使用される、「オクタン酸塩」という用語は、オクタン酸などのオクタン酸塩およびそれらの塩または誘導体を含む。
13Cによって標識された「オクタン酸塩」は、カプリル酸のナトリウム塩であり、カプリル酸ナトリウムの一般名により知られている。カプリル酸ナトリウムのIUPAC名は、1−
13Cオクタン酸ナトリウムである。追加的な同義語は、1−
13C−オクタン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム塩、ナトリウム n−オクタン酸塩、オクタノン酸ナトリウムを含む。
【0026】
本明細書で使用される「同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物の監視」は、所定時間、対象の呼気中の同位体の比の変化を検出および測定することを意味する。「同位体比率」という用語は、標識したオクタン酸塩で選択した同位体および天然に多く存在する同位体の間の比率を意味する。一部の実施形態において、監視は、標識したオクタン酸塩の単一投与の後、所定の期間にわたる連続測定により実施される。他の実施形態において、この同位体比率は、標識したオクタン酸塩の単一投与の後、定期的な間隔で対象から収集した呼気サンプルにおいて測定される。これらの実施形態により、複数のサンプルが、所定の期間にわたって収集された。
【0027】
いくつかの典型的な実施形態において、この代謝産物は、CO
2である。一部の実施形態において、この同位体は、炭素13、炭素14、および酸素18からなる群から選択される。いくつかの典型的な実施形態において、この同位体は
13Cである。
【0028】
一部の実施形態において、基準オクタン酸塩代謝物と対象のオクタン酸塩代謝物とを比較することは、対象のDOB(delta over baseline)曲線、PDR(percentage dose recovery)曲線、およびCPDR(cumulative PDR)曲線を作成することと、基準となるDOB、PDR、CPDR、またはそれらの組み合わせの内の少なくとも1つのパラメータと、対象のDOB、PDR、またはCPDRの内の少なくとも1つのパラメータを比較することを含む。
【0029】
一部の実施形態において、対象のオクタン酸塩代謝物と基準オクタン酸塩代謝産物とを比較することは、PDR曲線を作成することと、基準となるPDRの内の少なくとも1つのパラメータと、対象のPDRの内の少なくとも1つのパラメータとを比較することとを含む。
【0030】
一部の実施形態において、この少なくとも1つのパラメータは、PDRの最大レベル(ピークとなる高さ)、ピークの存在する時間(ピーク時間)、および代謝物の比率の勾配からなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示される。
【0031】
いくつかの特定の実施形態において、このパラメータはピークの高さである。これらの実施形態によると、ピークの高さの低下が、HCCを示す。
【0032】
追加的な特定の実施形態において、このパラメータはピークの時間である。これらの実施形態によると、ピークの時間が長くなることが、HCCを示す。
【0033】
さらなる追加的な特定の実施形態において、少なくとも1つのパラメータが、選択した時点での1つ以上のPDR値(%用量/時間)である。これらの実施形態によると、選択した時点でのPDR値の減少がHCCを示す。
【0034】
いくつかの特定の実施形態において、少なくとも1つのパラメータは、選択した時点での1つ以上のCPDR値である。これらの実施形態によると、選択した時点でのCPDR値の減少が、HCCを示す。
【0035】
いくつかの特定の実施形態において、少なくとも1つのパラメータは、選択した時点での1つ以上のDOB値である。これらの実施形態によると、選択した時点でのDOB値の減少がHCCを示す。
【0036】
いくつかの典型的な実施形態において、標識したオクタン酸塩は、経口的に投与される。他の実施形態において、静脈内または鼻腔内に投与される。
【0037】
いくつかの典型的な実施形態において、標識したオクタン酸塩は、所定の単一用量(例えば、各患者に100mg)で投与される。他の実施形態においては、患者の体重に基づき(例えば、体重1キログラムあたり2mg)投与される。
【0038】
一部の実施形態において、本方法は、対象のHCC治療に関連した経過観察および監視に適合される。
【0039】
一部の実施形態において、本方法は、同位体標識したオクタン酸塩の第1の投与の後、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することにより、肝機能の第1の評価を実施し、同位体標識したオクタン酸塩の第2の投与の後、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することにより、所定時間後に肝機能の第2の評価を実施することを含む。
【0040】
一部の実施形態において、所定時間後に第2の評価を実施するステップを複数回繰り返す。
【0041】
「肝機能の第1の評価」および「肝機能の第2の評価」という用語は、初期の評価セッションおよびその後の連続したセッションに限定されるものではないが、いずれか2つの別々の評価セッションに関連してもよい。
【0042】
本明細書に使用される、「減少する」、「有意に減少する」、または「有意な減少」は、概して、当業者に知られている標準的な方法により定義することのできる、統計的に有意な差異を意味する。
【0043】
一部の実施形態において、「基準オクタン酸塩代謝産物」は、HCCに罹患していない対照となる患者内で決定される、対照となるオクタン酸塩を意味する。一部の実施形態において、この対照となる対象は、少なくとも1つの慢性肝疾患を有しているが、HCCを有していない。いくつかの例示的な実施形態において、対照となる対象は、HCCを有していない肝硬変の患者である。他の実施形態において、対照となる対象は、肝疾患に罹患していない健康な個体である。
【0044】
他の実施形態において、「基準オクタン酸塩代謝産物」は、例えば、以前に試験した対象で測定したオクタン酸塩代謝物などの、肝機能の第1の評価の間に決定されるオクタン酸塩代謝物を意味する。例えば、本発明の方法が治療に関連する監視のために使用される場合、特定の対象からの第1の測定で得られた呼気検査の結果は、同一の対象の第2の測定で得られた呼気検査の基準として使用されてもよい。例えば、第1の測定は、治療の開始前に実施されても、第2の測定が、治療後所定の時間が経過した後に実施されてもよい。この場合、第1の測定と比較した第2の測定で、呼気検査でオクタン酸塩が増加していると、治療に陽性であることを示している。
【0045】
いくつかの典型的な実施形態において、試験した対象は哺乳類であり、好ましくはヒトである。
【0046】
一部の実施形態において、試験した対象は、HCCが発生するリスクを有する対象、HCCを有する疑いのある対象、およびHCCに罹患している対象からなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示される。
【0047】
一部の実施形態において、この対象は、HCCに罹患している対象であり、治療を受けたことがあるか現在治療を受けている対象である。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれに示される。
【0048】
一部の実施形態において、この治療は、TACAおよびRFAまたは、チロシンキナーゼ阻害剤および限定するものではないが、アドリアマイシンを含む化学療法剤のいずれかの種類を含むHCCのための他の薬剤、ならびに限定するものではないが、パルス樹状細胞を含むHCCのために使用されるいずれかの種類の免疫療法、およびこれらの治療のいずれかの組み合わせからなる群から選択される。同様に、この治療は、外科的摘出または肝移植を受けた患者のいずれかの補助薬物療法の反応の経過観察をも含む。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示される。
【0049】
一部の実施形態において、試験した対象は、少なくとも1つの慢性肝疾患を有する。一部の実施形態において、慢性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、B型肝炎、C型肝炎、またはいずれかの病因による肝硬変を有する患者からなる群から選択される。一般的にこの疾患は、肝硬変を有する他の種類の慢性肝疾患、または肝硬変を有していない他の種類の慢性肝疾患であってもよく、突発性肝硬変を有する患者を含み、患者に原発性肝癌および/または転移反応が顕在化していてもよい。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示される。
【0050】
一部の実施形態において、慢性肝疾患は、NASHおよびNAFLDからなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示される。これらの実施形態によると、本発明は、OBT値を標準化することをさらに含み、NASH/NAFLDは、肝臓のミトコンドリアの機能に影響することが知られている(例えば、Grattagliano I. et al, 13C−breath tests for clinical investigation of liver mitochondrial function; Eur J Clin Invest 2010; 40 (9): 843−850基準)。一部の実施形態において、NASH/NAFLD患者の値を訂正するためにあるアルゴリズムを使用する。一部の実施形態において、異なるカットオフ値は、NASH/NAFLDを有する対象のために決定される。
【0051】
一部の実施形態において、試験した対象は、NASH以外の肝疾患を有する。一部の実施形態において、試験した対象は、NAFLD以外の肝疾患を有する。一部の実施形態において、NASHおよびNAFLDからなる群から選択した肝疾患を有する対象は、本発明の方法を使用して試験した対象から除外される。
【0052】
一部の実施形態において、試験した対象を、(ミトコンドリアの機能を高めることが知られている)ソラフェニブで治療する。これらの実施形態によると、本方法は、OBT値を標準化することをさらに含む。一部の実施形態において、ソラフェニブで治療した患者の値を訂正するためにあるアルゴリズムを使用する。一部の実施形態において、ソラフェニブで治療した対象のために、異なるカットオフ値が決定される。
【0053】
同様に、このことは、いずれかの化学療法、放射線療法、および補助薬物療法、免疫療法または細胞内機構の阻害剤、または上記の組み合わせを含む他のいずれかの種類にも適用される。
【0054】
他の実施形態において、この対象を、ソラフェニブまたは他のいずれかの制癌剤で治療する。一部の実施形態において、ソラフェニブまたは他のいずれかの制癌剤で治療した対象は、本発明の方法を使用した試験から除外される。
【0055】
したがって、一部の実施形態において、本方法は、病因によりステップ(i)で得られる値を標準化することをさらに含む。追加的または代替的な実施形態において、本方法は、治療によりステップ(i)で得られる値を標準化することをさらに含む。
【0056】
一部の実施形態において、本方法は、例えば、カプノグラフィーにより、呼吸中の総CO
2を同時に監視することを含む。このことにより、肝臓の試験評価が変動することのなくなった代謝率およびCO
2産物の試験の長さおよびばらつきを最小限にすることが可能となってもよい。
【0057】
本発明の方法ならびにさらなる実施態様および特性は、以下の、図面、詳細な説明、実施例、および請求項から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】活動中のHCCと活動していないHCCとの比較、および対照の
13Cオクタン酸塩の呼気検査のボックスプロット図およびダイアモンド型平均値の表示を示す。
【
図2】活動中のHCCと活動していないHCCとの比較、および対照における
13Cオクタン酸塩の呼気検査のROC曲線。
【
図3】ソラフェニブで治療した患者を除く、活動中のHCCと活動していないHCCとの比較、および対照における
13Cオクタン酸塩の呼気検査のROC曲線。
【
図4】HCCを有したNASHの対象およびソラフェニブで治療した患者を除く、活動中のHCCと活動していないHCCとの比較、および対照における
13Cオクタン酸塩の呼気検査のボックスプロット図およびダイアモンド型平均値の表示。
【
図5】HCCを有さない、61歳男性のHCV患者の
13Cオクタン酸塩の呼気検査のPDR曲線。
【
図6】活動中のHCCを有する74歳女性のHCV患者の
13Cオクタン酸塩の呼気検査のPDR曲線。
【
図7】HCCの再発前後の、HCCを有する69歳女性のNASH患者の3つの連続した
13Cオクタン酸塩の呼気検査のPDR曲線。
【
図8】連続したHCC治療の前後の、突発性肝硬変を有する61歳男性の3つの連続した
13Cオクタン酸塩の呼気検査のPDR曲線。
【
図9】HCC治療の前後の、HCV肝硬変を備えた58歳男性の2つの連続した
13Cオクタン酸塩の呼気検査のPDR曲線。
【0059】
本発明は、HCCの診断、予後診断、および経過観察のための同位体標識したオクタン酸塩、またはその塩もしくは誘導体の使用を目的とする。
【0060】
本発明の方法およびシステムは、活動していないHCCを有する、またはHCCを有していない対象と活動中のHCCを有する対象の差異を効果的に識別する。したがって、本発明の方法およびシステムは、対象のHCCの検出、診断、および監視に有益である。同様に、本発明の方法およびシステムは、HCCのスクリーニング、腫瘍の進行状態、再発、予後、およびステージングの検出にも有益であってもよい。同様に、本発明の方法は、腫瘍の寸法の評価およびいずれかの種類の治療に対する反応に有益であってもよい。同様に、本発明の方法は、HCCの再発を検出するために有益であってもよい。
【0061】
本発明の方法は、呼気検査のパラメータの分析に基づく。知られている定量として、同位体標識した外因的な基質、すなわち、同位体標識したオクタン酸塩が対象に投与され、この標識した基質の代謝物を、以下のように定量化および定性化する。ここで得られた呼気検査パラメータを、基準とするデータと比較する。この得られたパラメータは、対象のHCC状態を示す。本発明の実施形態による呼気検査は、対象の呼気中の同位体標識した代謝産物の検出ならびに標識した代謝産物および非標識の代謝産物の間の比率の測定に基づく。このデータを、例えば、標識した代謝産物の呼息の比率を計算し、PDR曲線を作成することにより、さらに処理する。
【0062】
呼気検査において肝臓の状態を評価することが困難であるにも関わらず、対象のオクタン酸塩代謝物のレベルおよびHCCの状態の間で相関関係が見られた。
【0063】
1つの実施態様により、本発明は、対象のHCCの早期検出、予後診断および経過観察のための方法であって、この方法が、
(i)同位体標識したオクタン酸塩を投与した後、対象の呼気サンプル中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することにより、対象のオクタン酸塩代謝物を決定することと、
(ii)基準とするオクタン酸塩の代謝産物と対象のオクタン酸塩の代謝産物を比較することであって、オクタン酸塩の代謝産物が有意に減少した場合、HCCを示すことと
を含む方法を提供する。
【0064】
一部の実施形態において、対象のHCCの予後診断および/または経過観察を決定する、検出のための方法であって、同位体標識したオクタン酸塩の投与後、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することにより決定され対象中のるオクタン酸代謝産物を、基準オクタン酸塩代謝産物と比較することであって、オクタン酸塩代謝物が有意に減少した場合、活動中のHCCを表すことを含む、方法を本明細書に提供する。
【0065】
硬化性の患者では、総合的に、肝機能に障害を有する。先行技術として使用されているKICAの代謝物は、総合的な肝機能に影響があり、KICA呼気検査に影響があり、肝硬変を有していない対象の通常値と比較して、それらの値が低下している肝硬変により、機能障害となることが知られている。しかしながら、HCC患者の中には、肝硬変でない患者もいることが知られている。したがって、肝硬変を有してはいないが、HCCを有している患者を、KICAにより効率的に検出できないことが予測される。本発明の実施形態による方法は、代謝物が総合的な肝機能に影響を与えない化合物を利用する点において有利である。健康な対象、肝硬変を有した対照、または活動していないHCCを有する対象対(実質的な肝機能不全から独立している)HCCを有する対象のOBT値のピーク値は、類似するものであった。したがって、肝硬変を有していないが、HCCを有している患者は、オクタン酸塩呼気検査により検出することができることが予測される。
【0066】
概して、同位体標識したオクタン酸塩を対象に投与し、呼気サンプルを収集する。一部の実施形態において、監視を、所定の期間にわたる連続的な測定により実施する。一部の実施形態において、連続的な測定を、例えば、BreathID(登録商標)システム(Bioscience Ltd.)を使用して実施する。このような測定により、PDRのピークの正確な評価が可能となり、このことにより、HCCの存在のために現在好ましいと示唆される測定であり、小さな腫瘍の早期検出用に使用されてもよい。
【0067】
他の実施形態において、監視を、同位体標識したオクタン酸塩の単一投与後の所定の期間にわたる所定の間隔または所定の時点で対象から複数の呼気サンプルを収集し、このサンプルの同位体比率を測定することにより実施する。
【0068】
一部の実施形態において、サンプルを、連続的なオンラインサンプリングにより収集する。
【0069】
一部の実施形態において、周期的な期間は、約0.1から1時間、0.1から2時間、約0.1から3時間、約1から2時間、約1から3時間、約1から4時間、約2から4時間、の範囲である。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示されている。
【0070】
一部の実施形態において、呼気サンプルの収集の周期的な間隔は、約0.5から30分、約10から30分、約20から60分、約30から60分の範囲である。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示されている。
【0071】
一部の実施形態において、監視は、標識した基質の投与後のみに開始される。他の実施形態において、監視は、標識した基質の投与前に開始される。一部の実施形態において、ベースラインの読み取りまたはベースライン値が作成される。
【0072】
一部の実施形態において、吐き出された同位体標識した代謝産物は、例えば、PDR(percentage dose recovery)曲線を作成するために、少なくとも3つの時点で測定される。この代謝活性は、このPDRから決定されてもよい。
【0073】
一部の実施形態において、本方法は、同位体標識したオクタン酸塩を対象に投与した後に、対象のオクタン酸塩の代謝産物をオンラインで監視することを含む。
【0074】
いくつかの典型的な実施形態において、この代謝産物は、CO
2である。一部の実施形態において、この同位体は、炭素−13、炭素−14、および酸素−18からなる群から選択される。いくつかの典型的な実施形態において、この同位体は、
13Cである。例えば、肝臓の
13Cオクタン酸塩代謝物を、呼気中の
13C/
12Cの比率を測定することにより評価してもよい。炭素−13は安定であり、非放射性同位体であり、肝臓による代謝および
13CO
2の産生の後に放出されるように、試験基質の分子内の特定の位置に組み込まれることができる。
13C化合物を経口的に投与しても、その後、
13CO
2を、所定の期間内の呼気において測定してもよい。
【0075】
一部の実施形態において、監視は、PDR(percentage dose recovery)曲線、CPDR(cumulative percentage dose recovery)曲線およびDOB(delta over baseline)曲線の内の少なくとも1つを作成し、このPDR、CPDR、およびDOB曲線のうちの少なくとも1つを計算することを含む。
【0076】
一部の実施形態において、比較することは、基準となるPDR曲線、CPDR曲線およびDOB曲線の内の少なくとも1つと、計算した少なくとも1つのパラメータとを比較することを含む。
【0077】
一部の実施形態において、基準オクタン酸塩代謝産物と対象のオクタン酸塩代謝物とを比較することは、対象のPDR(percentage dose recovery)曲線を作成し、基準となるPDR曲線の少なくとも1つのパラメータとこの対象のPDR曲線の少なくとも1つのパラメータを比較することを含む。PDR曲線は、当業者に知られている。このような曲線により、呼気で測定するように%用量/時間(時間あたりに回収した用量のパーセンテージ)における標識した基質の代謝物の比率を割り出す。PDR曲線は、肝臓の動的反応に反映する。
【0078】
一部の実施形態において、少なくとも1つのパラメータは、ピークの高さ、ピークが現れる時間、および代謝物の比率の勾配からなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示される。代替的または追加的な実施形態において、このパラメータは、選択した時点での1つ以上のPDR値(%用量/時間)である。
【0079】
一部の実施形態において、基準オクタン酸塩代謝産物と対象のオクタン酸塩代謝物とを比較することは、対象のCPDR(cumulative percentage dose recovery)曲線を作成し、基準となるCDPR曲線の少なくとも1つのパラメータと、この対象のCPDR曲線の少なくとも1つのパラメータを比較することを含む。CDPR曲線は、当業者に知られている。このような曲線は、呼気で測定されるように、%用量(ある時間にわたって回収した投与量の累積率)において、代謝した標識基質の量を検出した。この呼気中の標識したCO
2の累積回収を、PDRの曲線(AUC)の下の領域として計算することができる。
【0080】
一部の実施形態において、このパラメータは、選択した時点での1つ以上のCPDR値であり、例えば、30、40、および/または45分でのCPDR値である。
【0081】
一部の実施形態において、基準オクタン酸塩代謝産物と対象内のオクタン酸塩代謝物を比較することは、DOB(delta over baseline)を作成し、基準となるDOB曲線のうちの少なくとも1つのパラメータと、対象のDOB曲線のうちの少なくとも1つのパラメータを比較することを含む。DOB曲線は、当業者に知られている。このような曲線は、ある時点で収集した試験サンプル中の同位体比率(例えば、
13CO
2/
12CO
2)およびベースラインサンプルにおける対応する比率の間の差異を示す。
【0082】
一部の実施形態において、このパラメータは、選択した時点での1つ以上のDOB値である。
【0083】
PDR曲線は、投与された基質の高さおよび重量および量に基づき、対象のCO
2の産生比率を考慮した対象あたりのDOBの標準化を示す。一部の実施形態において、この対象の重量(例えば、キロあたり1mgもしくは2mgもしくは3mg)に基づきオクタン酸塩の用量を投与し、これらの実施形態により、DOB曲線は、分析にとってより好ましい。他の実施形態において、この対象に、固定された所定の用量のオクタン酸塩(例えば、100mg)で投与する。これらの実施形態において、PDR曲線は、分析にとってより好ましい。
【0084】
概して、本発明の実施形態による分析のための呼気検査のパラメータの分類は、余分な肝臓の代謝の問題に対処し、または余分な肝臓代謝の問題を解決する。一般的に、分析は、ピーク、例えば、ピークの高さおよびピークの時間が検出されるまで得られる情報のために実施されてきた、
【0085】
いくつかの特定の実施形態において、このパラメータはピークの高さである。これらの実施形態において、ピークの高さの低下が、HCCを示す。
【0086】
いくつかの典型的な実施形態において、標識したオクタン酸塩は、経口的、静脈内、または鼻腔内に投与される。
【0087】
一部の実施形態において、本方法は、対象のHCC治療に関する経過観察および監視に適合される。一部の実施形態において、本方法は、同位体標識したオクタン酸塩の投与の後、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することにより、肝機能の第1の評価を実施し、所定時間後に、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することにより、肝機能の第2の評価を実施することを含む。一部の実施形態において、所定時間後に第2の評価を実施するステップは、複数回繰り返される。
【0088】
「多数」という用語は、1より多いいずれかの数を意味してもよい。一部の実施形態において、「多数」という用語は、2より多いいずれかの数を意味する。他の実施形態において、「多数」という用語は、3より多いいずれかの数を意味する。
【0089】
本明細書で使用される「減少した」、「有意に減少した」、または「有意な減少」は、一般的に、当業者に知られている標準的な方法により定義することのできる統計的に有意な差異を意味する。
【0090】
一般的に、対照となるオクタン酸塩代謝物は、HCCに罹患していない対照において決定される。一部の実施形態において、対照となる対象は、HCCを有していない少なくとも1つの慢性肝疾患を有する。いくつかの例示的な実施形態において、対照となる対象は、HCCのない硬化性の患者である。他の実施形態において、対照となる対象は、肝疾患を有していない健康な個体である。
【0091】
本発明の原則による対照となるオクタン酸塩代謝物は、少なくとも1つの対照、好ましくは複数の対象において決定される。対照となる対象において決定される一連の対照パラメータを、基準とするデータ収集として保存してもよい。
【0092】
いくつかの典型的な実施形態において、試験した対照は哺乳類であり、好ましくはヒトである。
【0093】
一部の実施形態において、この試験した対象は、HCCが発生するリスクを有する対象、HCCを有する疑いのある対象、およびHCCに罹患している対象からなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれに示される。
【0094】
一部の実施形態において、この対象は、HCCを患っており、治療を経験しているか、または現在治療中である。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれに示される。
【0095】
一部の実施形態において、この治療は、TACAおよびRFAまたは、チロシンキナーゼ阻害剤のいずれかの種類および限定するものではないが、アドリアマイシンを含むいずれかの種類の化学療法剤を含むHCCのための他の薬剤、ならびに限定するものではないが、パルス樹状細胞を含むHCCのために使用されるいずれかの種類の免疫療法、ならびにこの治療のいずれかの組み合わせからなる群から選択される。同様にこのことは、外科摘出または肝移植を受けた患者の補助薬物療法の反応の経過観察をも含む。可能な形態のそれぞれが、本発明のそれぞれの実施形態に示される。
【0096】
一部の実施形態において、本方法は、病因によりステップ(i)において得られた値を標準化することをさらに含む。一部の実施形態において、この病因は、NASHおよびNAFLDからなる群から選択される。
【0097】
代替的または追加的な実施形態において、本方法は、1つ以上の血液研鑽の結果によりステップ(i)において得られた値を標準化することをさらに含む。一部の実施形態において、この1つ以上の血液試験は、空腹時血糖値、インシュリン値、ALT値、AST値、ALP値、GGTP値、ビリルビン値、アルブミン値、およびナトリウム値からなる群から選択される。
【0098】
代替的または追加的な実施形態において、本方法は、対象が受けているまたはすでに受けているHCCの治療によりステップ(i)において得られた値を標準化することをさらに含む。一部の実施形態において、この治療は、ソラフェニブの投与である。
【0099】
一部の実施形態において、同位体標識した呼気の代謝産物は、例えば、赤外分光法により分光的にまたは質量分析により測定される。
【0100】
一部の実施形態において、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視することは、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)、陽子移動反応質量分析計(PTR−MS)、電子ノーズデバイス、および水晶膜厚計(QCM)からなる群から選択される少なくとも1つの技術を使用することを含む。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれを示す。
【0101】
一部の実施形態において、試験した対象は、少なくとも1つの慢性肝疾患を有する。一部の実施形態において、この慢性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、B型肝炎およびC型肝炎、または原発性肝癌および/または転移を患者に曝す硬変を有する、またはこの硬変を有していない他の種類の慢性疾患からなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれに示される。
【0102】
一部の実施形態において、この慢性肝疾患は、NASHおよびNAFLDからなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれに示される。これらの実施形態において、本方法は、OBT値を標準化することをさらに含む。NASH/NAFLDは、肝臓のミトコンドリアの機能に影響することが知られている(例えば、Grattagliano I. at al.
13C−breath tests for clinical investigation of liver mitochondrial function; Eur J Clin Invest 2010; 40 (9): 843−850基準)。
【0103】
一部の実施形態において、NASH/NAFLD患者の値を修正するために、あるアルゴリズムおよび/または異なるカットオフを使用する。適切なアルゴリズムは、限定するものではないが、空腹時血糖値、インシュリン値、および/または肝パネル(例えば、ALT、AST、ALP、GGTP、ビリルビン、アルブミン、ナトリウム値)を含む、特定の血液試験結果が、この患者の疾患の重症度を示すことを含んでもよい。
【0104】
一部の実施形態において、試験した対象は、NASH/NAFLD以外の肝疾患を有する。
【0105】
一部の実施形態において、試験した対象は、(ミトコンドリアの機能を高める)ソラフェニブで治療される。これらの実施形態によると、本方法は、OBT値の標準化および/または異なるカットオフの使用をさらに含む。一部の実施形態において、ソラフェニブで治療した患者の値を修正するためにあるアルゴリズムを使用する。例えば、呼気検査の結果を、ソラフェニブの用量、頻度、およびすでに終了した治療の回数の関数として標準化してもよい。
【0106】
同様に、このことが、いずれかの化学療法、放射線療法および補助薬物療法、免疫療法、または細胞内機構の阻害剤、または上記の組み合わせを含む他のいずれかの種類の療法に使用されてもよい。他の実施形態において、この対象は、ソラフェニブで治療されていない対象である。
【0107】
本方法は、呼気中の総CO
2を監視することを含む。CO
2は、例えば、カプノグラフィーにより監視されてもよい。このことは、HCCの評価に関連しない変数を導入する代謝率および/またはCO
2産物における試験の長さおよび変動を最小限にしてもよい。
【0108】
本方法は、呼気中の総CO
2を監視することにより得られる少なくとも1つの関連パラメータと組み合わせて、オクタン酸塩の代謝産物を監視することにより得られた少なくとも1つの呼気に関連したパラメータを分析することを含む。本方法は、少なくとも1つの生理学的および/または医学的パラメータと組み合わせて、オクタン酸塩の代謝産物を監視することにより得られる少なくとも1つの呼気に関連したパラメータを分析することをさらに含む。この生理学的および/または医学的パラメータは、年齢、性別、体重、身長、血液に関連するパラメータ、肥満度指数(BMI)、腹囲、薬物療法関連パラメータ、背景となる疾患、またはそれらのいずれかの組み合わせを含んでもよい。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれを示す。
【0109】
一部の実施形態において、予測スコアを作成するために、オクタン酸塩呼気検査の結果を、対象の人工統計または臨床データと組み合わせてもよい。
【0110】
一部の実施形態においては、人工統計のパラメータをも考慮し、評価する。
【0111】
一部の実施形態において、本方法は、少なくとも呼気検査に関連したパラメータおよび人口統計のパラメータに基づいた肝障害スコア(HIS)をコンピュータで計算することをさらに含む。
【0112】
限定するものではないが、人口統計のパラメータの例は、身長、体重、年齢、性別、喫煙の習慣、病因、合併症に関して知られている情報、またはそれらの組み合わせを含む。この人口統計の情報は、
(i)呼気検査に影響する患者間の因子を補填する、および/または
(ii)呼気検査データと共に、疾患に影響する因子を処理する
ために使用され、疾患の重症度および/または状態の信頼可能な予測を提供することができてもよい。この情報は、以下の、身長および体重、年齢、性別、喫煙の習慣、病因、(限定するものではないが、シャント、門脈高血圧症、脳症、静脈瘤、静脈りゅう出血、ビルビリンなどの血液検査の異常、浮腫および/または腹水症、非代償性肝硬変、オクタン酸塩の代謝経路に影響があってもよい特定の薬剤の消費を含む)合併症に関して知られている情報、ならびにCTP(Child−Turcotte−Pugh)、MELD(Model for Endstage Liver Disease)スコアおよび/またはナトリウムMELD(Na−MELD)スコアなどの肝疾患の重症度を評価する一般的なスコアなどのリスト(および/または他のいずれかの関連情報)から選択した1つ以上の項目に関連してもよい。
【0113】
HISスコアをコンピュータで計算する情報は、国際公報第2010/013235号に見出すことができる。
【0114】
一般的に、本明細書に説明される、検出、監視、区別、評価、測定、識別、定量化などは、装置、呼気収集システム、分析器ユニット、キャブリレーション装置、アルゴリズムおよび米国特許第6,186,958号、第6,491,643号および第6,656,127号および米国特許出願公報第2003/0216660号および第2001/0021815号に開示される方法のいずれかにより行われてもよい。
【0115】
本発明の方法に適切な装置の追加的な例は、限定するものではないが、国際公報第2007/054940号および国際公報第2010/013235号に記載される。
【0116】
概して、本発明の方法に適切な装置は、異なる分子量である、2つの化学的に同一の気体の比率を測定することのできる、非常に感度の良いガス分析器を含む、呼気検査分析器を含む。この気体分析器は、対象の呼気中に存在してもよい同位体標識した気体のわずかな定量を測定することができる。
【0117】
一部の実施形態において、呼気サンプルを分析するための少なくとも2つの様式がある。この分析器は、個体の呼気に関する分析を実施することができ、または患者から連続して収集した患者の呼気の複数のサンプルをオンライン上で分析することができる。
【0118】
一部の実施形態において、この呼気検査分析器は、呼気分析チャンバ、患者から呼気分析チャンバまで呼気を運搬する呼気注入管、ならびに吐気分析チャンバ内の気体を分析し、患者により吐き出された気体の第1の分析を行うために作動する気体分析器を含む。
【0119】
一部の実施形態において、同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物の監視は、連続して測定することにより行われる。一部の実施形態において、オンラインの監視はリアルタイムで行われ、対象はその後の分析のために呼気を提供し続ける。オンライン監視に適切な装置は、例えば、標識したオクタン酸塩、またはオクタン酸塩もしくは誘導体の代謝産物内の同位体レベルを監視するために適合した1つ以上の呼気センサ、および連続モードの際の1つ以上のセンサのオンラインサンプルの測定に適合したコントローラを含んでもよい。
【0120】
この装置は、連続モードの際の1つ以上のセンサのサンプル測定に適合してもよく、この対象は、例えば鼻カニューレを介して呼気のサンプリングの間、装置と接触している。この装置は、呼気サンプルを自動的に収集および分析するために適合されてもよい。
【0121】
この装置は、カプノグラフィーセンサなどの、呼気中のCO
2を監視するために適合した1つ以上の呼気センサをさらに含んでもよい。
【0122】
この装置は、呼気中のCO
2を監視することにより得られる少なくとも1つの呼気関連パラメータと組み合わせて、オクタン酸塩などの標識した基質の代謝産物内の同位体レベルを監視することにより得られる少なくとも1つの呼気関連パラメータを分析するように適合されたプロセッサをさらに含んでもよい。このプロセッサは、呼気検査を介した対象のCO
2呼気/産物における変化を訂正してもよい。
【0123】
一部の実施形態において、持ち運びできる診療所用のシステムは、対象に装着した鼻カニューレを介して、オンラインおよびリアルタイムで、連続して呼気を検出かつ収集し、CO
2を分析してもよく、ならびに、リアルタイムでHCCの状態を評価し、それにより、臨床での肝臓の経過観察の方法を提供することができてもよい。一部の実施形態において、このような試験は、
13CO
2/
12CO
2比率が1/1000と同様に臨床的に関連する変分を正確に検出するための感度および正確度を提供するように設計される。
【0124】
一部の実施形態において、本発明の実施形態による呼気検査は、ポイントオブケア検査で実施されてもよい。
【0125】
いずれかの理論または作動機構にしばられるものではないが、一部の実施形態において、2cmより小さな腫瘍をも含む、活動中のHCCを有する患者のOBTの低下が、これらの患者の総合的なミトコンドリアの機能に影響する腫瘍細胞により分泌される因子に反映されてもよい。
【0126】
一部の実施形態において、この推定上の因子を阻害するいずれかの種類の療法が、悪性(腫瘍)工程の緩和にある効果があってもよい。
【0127】
いずれかの理論または作用機構にしばられるものではないが、一部の実施形態において、その腫瘍の血管過多による腫瘍内、または腫瘍細胞内もしくはその細胞の間のいずれかの腫瘍におけるオクタン酸塩を補足する。
【0128】
一部の実施形態において、オクタン酸塩または腫瘍細胞により分泌される因子を補足する両機構が、同時に行われてもよい。
【0129】
一部の実施形態において、オクタン酸塩は、腫瘍内の化学療法を送達し、それにより、望まれていない薬剤の全身性の副作用を予防および低減し、腫瘍内部に高濃度の薬剤を使用することができる方法としての化学療法剤と組み合わせることができる。
【0130】
一部の実施形態において、これらの治療剤は、同様に、化学療法、限定するものではないが、イリジウムなどの放射性基質を含む放射線療法、免疫療法、遺伝子療法、または上述のいずれかの組み合わせの内のいずれかの種類をも含む。したがって、このオクタン酸塩は、この療法を送達するための薬剤またはキャリアーとして扱うことができる。
【0131】
一部の実施形態において、このオクタン酸塩は、腫瘍内に濃縮されるため、画像検査の手段として、例えば、CTまたはMRIで使用される場合のリポドールのような、現在知られている薬剤の効率的な代替物として扱うこともできる。
【0132】
本発明の方法は、肝臓のミトコンドリアによるオクタン酸塩代謝物(C
8H
16O
2)に基づく。(オクタン酸塩などの)脂肪酸の代謝物および
13CO
2の形体の
13C炭素の放出は、β酸化、
13Cに標識したアセチル−CoA(AcCoA)の産生および(クエン酸回路もしくはクレバス回路としても知られている)トリカルボン酸(TCA)回路での
13Cのその後の放出を含む、複合的なステップを必要とする。不適当なTCAの機能は、AcCOAの蓄積を引き起こしてもよい。代替的な経路がAcCoAに存在することにより、ケトン体を産生し、または脂質を生合成することとなり、呼気検査内で検出されなくなることが知られている。TCA回路内で反応し続けている標識したオクタン酸塩のパーセンテージ対キナーゼ体の産生が行われる標識したオクタン酸塩のパーセンテージは、対象の生理条件に依存してもよい。例えば、飢餓条件/空腹条件において、効率的でないTCA工程となるオクタン酸が、(グルコース合成/糖新生において細胞により使用されるために)必要とされる。このTCA回路の経路で「取得した」標識したオクタン酸塩の量および代替的な経路で「取得した」標識したオクタン酸塩の量の間の変動(場合によっては予期していない)比率は、呼気検査の正確度に影響してもよい。一部の実施形態において、
a.TCA回路が飽和することを避けるために、オクタン酸またはオクタン酸塩の(約100mgの範囲内など)低用量を使用するステップであって、一般的に投与されるオクタン酸塩の用量は、例えば、約1mg/kgから3mg/kgで、体重により選択され、約15mg(子供の場合、1mg/kg)から約450mg(肥満患者の場合、3mg/kg)の範囲の用量とすることのできるステップと、
b.患者を、代謝条件が多少安定しており、食事を消費することによる変分に対して感度が低いことを保証する飢餓状態後>8時間より後に試験してもよいステップと、
c.試験食が、グルコースおよび
13Cオクタン酸塩を含んでもよいステップと、
d.試験食が、アスパルテーム(および
13Cオクタン酸塩)を含んでもよく、オキサロ酢酸の源であるアスパラギン酸を提供するステップと、
e.cおよび/またはdに対する代替物のステップであって、グルコース/アスパルテームを、この試験の前に投与するステップと、
f.ケトン産生経路を阻害/低減する薬剤(例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤)を使用するステップと、
g.
13Cオクタン酸塩呼気検査と結合して、生化学検査でケトン体の産生物(ケトン尿および/または血清もしくは血漿ケトン体の濃度)を測定して、この試験の診断正確度を改善するステップと、
h.血液中の
13Cオクタン酸塩の形跡を探索するステップと、
を、オクタン酸呼気検査の診断の正確度を上げるために、相互に独立して、または任意に組み合わせることにより、提供する。
【0133】
別の実施態様により、本発明は、対象のHCCの検出、予後診断、および/または経過観察のための装置であって、この装置が、対象のオクタン酸塩代謝物および対照となるオクタン酸塩代謝物の間の差異を検出するように構成されるプロセッサを含む装置を提供し、オクタン酸塩代謝物が減少すると、HCCを示す。
【0134】
一部の実施形態において、このプロセッサは、同位体標識したオクタン酸塩の投与の後に、対象の呼気中の同位体標識したオクタン酸塩の代謝産物を監視し、基準オクタン酸塩代謝物と、対象のオクタン酸塩代謝物を比較するように構成され、オクタン酸塩代謝物が有意に減少すると、活動中のHCCを示す。
【0135】
一部の実施形態において、このプロセッサは、病因、治療、またはそれらの組み合わせによる呼気検査の値を標準化するように適合される。
【0136】
一部の実施形態において、このプロセッサは、DOB曲線、PDR曲線、およびCPDR曲線のうちの少なくとも1つを計算および作成し、ならびに、基準となるパラメータの少なくとも1つと、このDOB、PDRまたはCPDRの内の少なくとも1つを比較するように適合される。
【0137】
一部の実施形態において、この少なくとも1つのパラメータは、PDRの最大値(ピークの高さ)ピークの存在する時間(ピーク時間)および代謝物の比率の勾配からなる群から選択される。可能な形態のそれぞれが、本発明の実施形態のそれぞれに示される。
【0138】
一部の実施形態において、このプロセッサは、オクタン酸塩代謝物の差異に基づくHCCに関連した出力表示をコンピュータ計算するようにさらに適合される。
【0139】
一部の実施形態において、このプロセッサは、DOB、PDR、および/またはCPDRのうちの少なくとも1つのパラメータの差異に基づき、HCCに関連する出力表示をコンピュータ計算するようにさらに適合される。
【0140】
一部の実施形態において、このプロセッサは、呼気中の総CO
2を同時に監視するようにさらに適合される。
【0141】
以下の実施例は、本発明のある実施形態をより完全に例示するために存在する。しかしながら、これらは本発明の広い範囲を限定するものとみなされるものではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書に開示される原則の多くの変分および修正を容易に読み取ることができる。
【実施例】
【0142】
実施例1:活動中のHCCと活動していないHCCとの比較、および対照における
13Cオクタン酸塩呼気検査値
活動中のHCCまたは(成功した療法後の)活動していないHCCを有する患者を募集した。この活性の度合いを、CTおよび/またはMRIの下で、対照媒体(lipiodol(登録商標))の注入に基づき決定した。さらに、いずれのHCCの兆候を有さない硬化性の患者をも同様に募集した(対照のグループとして使用した)。この研究の集団に関する情報を、本明細書の以下の表1、2、および3に提供する。
【表1】
【表2】
※1人の男性患者は、OBT処理前にネクサバール(商標)(ソラフェニブ)の治療中であった。
【表3】
【0143】
治療の前後にBreathID(登録商標)装置(Exalenz Bioscience Ltd.)を使用して、動的
13Cオクタン酸塩呼気検査(OBT)をすべての患者に行った。3人の男性の対象であって、2人はHCVを有し、1人はNASH活動中のHCCを有する対象を(1つを治療前に、1つを試験の後に)2回試験を行った。
【0144】
この呼気検査を、以下の手順により実施した。
a.この研究の対象の調製
(監視する薬物療法を含む)一晩の飢餓状態の後、呼気検査を行うよう患者に依頼した。この患者は、試験の1時間前までに少量の水を飲むことが許可されていた。(呼吸率および脈拍が、この試験を介して正常かつ一定であることを保証するために、)
試験の開始前に、患者は3から5分間の休憩を行った。
b.
13Cオクタン酸塩の調製
空の使い捨て紙カップに100mgの
13Cオクタン酸塩および150ccの水を添加した。この混合物を、この基質が完全に溶解するまで混合した。
この試験の直前に、使い捨てコップにこの溶液を注いだ。
c.呼気検査の投与
i.各患者に室内の椅子に座るように依頼してこの試験を実施した。
ii.鼻カニューレをBreathID(登録商標)装置および患者に取り付けた。
iii.BreathID(登録商標)装置を起動し、約2分間、患者が吐出したCO
2のベースラインを収集した。
iv.その後、医療スタッフおよび試験基質を飲用するための装置に関する表示により説明が行われた。
v.椅子に座ったままの患者は、その後の60分間、正常な方法で呼吸した。
vi.BreathID(登録商標)装置で、リアルタイムで患者の呼気を連続的に測定および分析した。この試験基質が代謝されると、
13CO
2/
12CO
2比率の値が変化し、BreathID(登録商標)システムにより、リアルタイムでこの値を計算した。同様に、BreathID(登録商標)は、%/時間で表現されるPDR(percentage dose recovery)およびCPDR(cumulative PDR)をもリアルタイムで計算した。リアルタイムで計算した際に、BreathID(登録商標)装置のスクリーン上にこれらの値が表示される。
vii.どんな時もこの装置が患者の呼気を検出するわけではない場合、または所望の試験に必要なものから逸脱したものがある場合、この装置では適切な警告信号が生じる。
viii.この手法が完了した際に、患者の鼻カニューレをはずし、患者を試験室から退出させた。
【0145】
内科医または他のいずれかの資格を有するいずれかのスタッフの監督の下で、この患者の全試験が行われた。
【0146】
各呼気検査のために、PDR(percentage dose recovery)およびCPDR(cumulative PDR)曲線を作成した。このPDRのピーク値は、活動中のHCC/活動していないHCCおよび対照によりグループ分けし、ボックスプロット図に表示した。ダイアモンド型平均値の表示も同様に作成した。この結果を
図1に示す。
【0147】
このデータを、有効なエクセルシートに記入し、バージョン2.12のAnalyze−It(登録商標)ソフトウェアで分析した。
【0148】
さらに、ROC(receiver operating characteristic)曲線を作成し(
図2)、活動中のHCCと、活動していない(非活動)HCCまたは対照とを区別する際にPDRピークの予測値を評価するために、AUC
ROCを計算した。0.89(95%CI 0.74−1.00,p0.0001)のAUC
ROC値を得た。
【0149】
(
図1の)ボックスプロット図の異常値は、HCCの存在により、OBT試験の前にソラフェニブで治療した患者から得たサンプルと対応する。以前の研究(例えば、Kuroso et al. (2009) Cancer Res. 69:3927−3936基準)で、ソラフェニブはミトコンドリアの機能を改善できることが示されてきた。したがって、OBT値は、ソラフェニブで治療したHCC患者においてより高い値であることが予測される。この結果の第2の分析を実施し、この分析を、ソラフェニブで治療した患者から得られたサンプルのない状態で実施した。このROC曲線は、0.95のAUC
ROC値(95%CI 0.86−1.00,p0.0001)を示す
図3に示される。
【0150】
NASHの存在が、OBT値を高めることが以前の研究から知られている(例えば、Braun M et al. “The unique breath ID test system diagnoses and predicts the extent of hepatic injury in patients with nonalcoholic fatty liver disease”, Hepatology, 2005;42: 752A.を基準)。実際、本研究において、HCCを有する2人のNASHの対象のサンプルは、OBTの結果が上昇した。第3の分析を実施し、この分析では、HCCを有し、ソラフェニブで治療した患者を含まないNASHの対象から得られたサンプルを使用していない。このより明らかとなったサンプルからボックスプロットを再作成した(
図4基準)。ROC分析により、NASHがなく、ソラフェニブで治療した対象を含まないデータセットを分析する際に、活動中のHCCおよび活動していないHCCまたは対照の間を完全に区別されることを意味する、1のAUC
ROC値を示した(p<0.0001)。この観察から、診断の目的のために、病因(例えば、NASHを有するかまたは有さないかが)含まれることが示唆される。NASHのないカットオフは、ピークが26%/時間であることが示唆される(
図4中の破線を基準)。
【0151】
上述するように、(2人はHCVを有し、1人はNASHを有する)3人の男性の対象を(治療の前に1回、その後に1回)2回試験した。これらの対象の呼気検査の値が、OBTおよび患者の状態間で完全に一致したことを示した。
対象1−成功した治療
第1の診断で、OBTピーク=16.30%/時間を示した。
TACEの3か月後の第2の診断で、OBTピーク=31.78%時間を示した。
HCCは、TACEの後不活性となった。(AFPは、それぞれ5.84および5.48ng/mlであり、AFPの測定の感度限界を示す。概して、10ng/mlより大きなAFP値は、異常と考えられる。通常の範囲内の変化(9以下)は、それぞれ判定されず、評価することができない)。
対象2−TACE後活性したままのHCC
第1の診断で、OBTピーク=25.36%/時間を示した。
TACEの3か月後の第2の診断で、OBTピーク=22.19%/時間を示した。
患者が臨床的に悪化し、AFPは、3500から4800ng/mlまで増加した。
対象5−TACE後治療の成功したNASH患者
第1の診断にて、OBTピーク=30.35%/時間を示した。
TACEの5か月後の第2の診断で、OBTピーク=37.63%/時間を示した。
患者が臨床的に改善し、CTは活動していないHCCを示した。
同様に、このHCCの活性が、治療の経過観察のために決定することもできることが観察された。このNASHの対象は、HCCの活性状態を決定する別の閾値を有していてもよいが、このOBTピークは、成功した治療の後に、NASHの患者において改善した。
【0152】
異なる分析から得られたOBTの性能のパラメータをまとめて、以下の本明細書の表4に提供する。
【表4】
【0153】
活動中のHCCおよび活動していないHCC+対照の間の差異を完全に示す上述の1のAUC
ROC値(p<0.0001)は、ネクサバール(商標)およびNASHを除いたデータセットにて得られた。
【0154】
実施例2 PDR曲線
追加的な
13Cオクタン酸塩呼気検査(OBT)を実施し、この結果を
図5から9に示した。この試験を、上記の実施例1に記載される手順により実施した。
【0155】
図5は、肝臓癌のない典型的な硬化性患者のOBT PDR曲線を示す。30分以内にPDRピークに到達し、このピークは相対的に高い(〜30%時間)
【0156】
図6は、肝臓癌を有する典型的な硬化性の患者のOBT PDR曲線を示す。このピークは遅く(30分後であり)、概して低い。
【0157】
図7は、肝臓癌を有する典型的な硬化性の患者の、3つの連続したOBTのPDR曲線を示す。すべての曲線は低く、TACEの治療(部分的に成功した治療後の2番目のOBT治療)が、いくらかの改善を曲線番号2で示したにも関わらず、HCCが再発したことを、第3の曲線ではっきりと見ることができる(以前の試験から1ヶ月後の3番目の曲線は、HCCの再発を示す)。
【0158】
図8は、成功したTACEの治療を行った肝臓癌を有する典型的な硬化性の患者の、3つの連続したOBTのPDR曲線を示す。治療前の2つの曲線は低い。第3の曲線は、非HCCの場合の特性(高いPDRピーク)を示し、それゆえに、HCC治療が成功したという事実を指摘する。この病巣は、7cmのまま成長しておらず、不活性であった。
【0159】
図9は、成功したTACEの治療を行った肝臓癌を有する典型的な硬化性の患者の、2つの連続したOBTのPDR曲線を示す。治療前の曲線は低い。第2の曲線は、非HCCの場合の特性(高いPDRピーク)を示し、それゆえに、HCC治療が成功したという事実を指摘する。
【0160】
前述の特定の実施形態の説明は、現在の知識を適用することにより、本発明の一般的な性質を完全に開示し、過度の実験をすることなく、一般的な概念から逸脱することなく、このような特異的な実施形態のような多様な使用法を容易に修正および/または適合することができ、したがって、このような適合および修正は、開示された実施形態と同様の意味および範囲内と理解される意図を有する。本明細書で使用される文言および用語は、記述を目的とするものであり、限定するものではない。開示された多様な機能を実施するための手段、材料およびステップは、本発明を逸脱するものではない代替的な形態の変動ととられてもよい。