(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素繊維100質量部と、下記の条件1および条件2を満たす1種類以上の含浸助剤3〜15質量部とを含む易含浸性炭素繊維束に、66〜2000質量部のポリブチレンテレフタレートが付着していることを特徴とする成形用材料。
・ 条件1:280℃における液体の粘度が10Pa・s以下である。
・ 条件2:ポリブチレンテレフタレート100質量部あたり、1〜100質量部の間の量の含浸助剤を配合して得られる樹脂組成物が示すガラス転移温度Tg1[℃]と、該ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度Tg0[℃]、該含浸助剤の配合率(%)から以下式(A)で定義されるガラス転移温度低下率(ΔTg)が0.2[℃/%]より大きい。
ガラス転移温度低下率(ΔTg)[℃/%]=(Tg0[℃]−Tg1[℃])/含浸助剤配合率[%]・・・(A)
ここで、含浸助剤配合率[%]は、以下式(B)、
含浸助剤配合率[%]=100×含浸助剤の配合量[質量部]/ポリブチレンテレフタレートの量[質量部]・・・(B)
にて定義される。
リン酸エステルが、その常圧下での沸点が340℃以上であり、かつ、窒素雰囲気下280℃での加熱減量が2%/分以下である芳香族リン酸エステルであることを特徴とする請求項2記載の成形用材料。
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルが、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、エナントラクトンの各単独重合体で重量平均分子量3000〜50000のもの、およびこれら2種以上のモノマーの共重合体で重量平均分子量3000〜50000のものからなる群より選ばれる1種類以上のものである請求項2記載の成形用材料。
前記の成形用材料を、前記ポリブチレンテレフタレートの可塑化温度以上の温度の状態で金型内に存在させることにより、該成形用材料において、前記の易含浸性炭素繊維束に該ポリブチレンテレフタレートを含浸させて、該易含浸性炭素繊維束の炭素繊維束を解き分散させつつ成形した後、冷却することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、炭素繊維100質量部に対し、下記の条件1および条件2を満たす1種類以上の含浸助剤3〜15質量部を含む易含浸性炭素繊維束に、50〜2000質量部のポリブチレンテレフタレートが付着していることを特徴とする成形用材料、該成形用材料から得られる成形体、および該成形体の製造方法に関するものである。
・ 条件1:280℃における液体の粘度が10Pa・s以下である。
・ 条件2:ポリブチレンテレフタレート100質量部あたり、1〜100質量部の間の量の含浸助剤を配合して得られる樹脂組成物が示すガラス転移温度Tg
1[℃]と、該ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度Tg
0[℃]、該含浸助剤の配合率(%)から以下式(A)で定義されるガラス転移温度低下率(ΔTg)が0.2[℃/%]より大きい。
ガラス転移温度低下率(ΔTg)[℃/%]=(Tg
0[℃]−Tg
1[℃])/含浸助剤配合率[%]・・・(A)
ここで、含浸助剤配合率[%]は、以下式(B)、
含浸助剤配合率[%]=100×含浸助剤の配合量[質量部]/ポリブチレンテレフタレートの量[質量部]・・・(B)
にて定義される。
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態につき詳細に説明する。尚、本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0013】
[易含浸性炭素繊維束]
本発明における易含浸性炭素繊維束とは、炭素繊維100質量部に対し、下記の条件1および条件2を満たす1種類以上の含浸助剤3〜15質量部を含むことにより、ポリブチレンテレフタレート(好ましくは可塑化されたポリブチレンテレフタレート)により容易に含浸されることを特徴とする炭素繊維束である。
・ 条件1:280℃における液体の粘度が10Pa・s以下である。
・ 条件2:ポリブチレンテレフタレート100質量部あたり、1〜100質量部の間の量の含浸助剤を配合して得られる樹脂組成物が示すガラス転移温度Tg
1[℃]と、該ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度Tg
0[℃]、該含浸助剤の配合率(%)から以下式(A)で定義されるガラス転移温度低下率(ΔTg)が0.2[℃/%]より大きい。
ガラス転移温度低下率(ΔTg)[℃/%]=(Tg
0[℃]−Tg
1[℃])/含浸助剤配合率[%]・・・(A)
ここで、含浸助剤配合率[%]は、以下式(B)、
含浸助剤配合率[%]=100×含浸助剤の配合量[質量部]/ポリブチレンテレフタレートの量[質量部]・・・(B)
にて定義される。
この易含浸性炭素繊維束は、炭素繊維に対し、該含浸助剤を所定の量にて含む炭素繊維束であれば良く、その製造方法や、炭素繊維と含浸助剤とが含まれている形態を問わない。
【0014】
本発明で用いる含浸助剤は、上記の条件1を満たすものであり、これは、該含浸助剤が汎用のポリブチレンテレフタレートの代表的な加工温度である280℃において、低粘度状態であり、かつ、280℃において液体としての粘度測定が可能なものであることを意味する。含浸助剤の280℃における液体の粘度は8Pa・s以下であることが好ましく、6Pa・s以下であることがより好ましい。
なお、上記の条件1について、含浸助剤の液体としての粘度を測定する方法としては、回転式粘度計が適している。具体的には高温槽付きパラレルプレートにて測定する方法などを例示することができる。
【0015】
更に、本発明で用いる含浸助剤は、上記の条件2を満たすものである。この条件2において、含浸助剤は、ポリブチレンテレフタレート100質量部あたり、1〜100質量部の配合量の範囲全域で、ガラス転移温度低下率(ΔTg)>0.2[℃/%]である必要は無く、当該配合量範囲の一部で、0.2℃/%より大きいガラス転移温度低下率(ΔTg)を示すものであれば良い。
【0016】
ガラス転移温度低下率(ΔTg)が0.2℃/%より大きいことにより、含浸を促進する効果を有するものであり、ΔTgが0.3℃/%より大きいものであるとより好ましい。ΔTgが0.2℃/%以下ということは、含浸助剤がポリブチレンテレフタレートと相溶化していない状態であり、そのため、ポリブチレンテレフタレートのTgが殆どそのまま計測されると推測している。
ΔTgが0.2℃/%以下の含浸助剤を炭素繊維束に加え、これにポリブチレンテレフタレートを付着させたものを成形しても、含浸助剤による含浸促進効果は著しく低いもので、得られる成形体において炭素繊維の分散不良が発生する。また、上記の条件2について、ポリブチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレートと含浸助剤との樹脂組成物のガラス転移温度を測定する方法としては、示差走査熱量測定(DSC)による方法などが挙げられる。
【0017】
含浸助剤は、その常圧下での沸点が340℃以上であり、かつ、窒素雰囲気下280℃での加熱減量が2%/分以下であることが好ましい。
上記「常圧下での沸点が340℃以上」とは、その含浸助剤について、明確に常圧下での沸点を測定できなくても、340℃で明らかに沸騰がおこらず液体のままでいるのであれば当該条件を満たすものと解する。
また、「窒素雰囲気下280℃での加熱減量が2%/分以下」に関して言うと、その含浸助剤が、窒素雰囲気下280℃では激しく分解してしまい、加熱減量を正確に測定できないような場合は、当該条件を満たさないものと解される。
なお、上記の加熱減量としては、示差熱天秤を用いて、当初質量W
pre(g)の含浸助剤の試料を窒素雰囲気下、室温(5〜35℃)から10℃/分で280℃まで昇温した後、更に、280℃で15分間保持した後の該試料の質量W
post(g)から、下記式(i)によって算出されたものが好ましく、試料数3以上で測定および算出を行った平均値であるとより好ましい。
加熱減量(%/分)=100×{W
pre(g)−W
post(g)}/W
pre(g)/15(分) (i)
【0018】
本発明において、易含浸炭素繊維束に含まれる含浸助剤の量は、炭素繊維100質量部に対し3〜15質量部であり、好ましくは5〜12質量部である。
3質量部未満では、炭素繊維へのポリブチレンテレフタレートの含浸性が不十分となり、15質量部より多いと炭素繊維へのポリブチレンテレフタレートの含浸性は優れるが、マトリクス樹脂であるポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度が低下することにより成形品の耐熱性が低下するため好ましくない。
【0019】
本発明にて用いられる易含浸性炭素繊維束は、複数種の含浸助剤を含むものでも良く、また本発明において用いられる含浸助剤としては、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる1種類以上のものであると好ましく、当然、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルの双方を含むものであっても良い。含浸助剤として用いられるこれらのリン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルについては、後に詳細に記載する。
【0020】
易含浸性炭素繊維束の代表的な製法としては、ディッピング法、スプレー法、ローラー転写法、スリットコーター法などから選ばれる群より選ばれる1種類以上の方法にて、汎用の炭素繊維束に含浸助剤を含ませる方法が例示される。これらの方法において、炭素繊維束に含浸助剤を含ませた場合、含浸助剤は主に炭素繊維束の表面に付着し、一部は炭素繊維束の内部にも浸み込んでいるものと思われる。
【0021】
易含浸性炭素繊維束を製造する際における含浸助剤の形態としては、水性エマルジョン、有機溶媒希釈溶液、または加熱された粘調または溶融状態の液体として取り扱うことが可能である。製造方法と含浸助剤の形態との好ましい組合せとしては、水性エマルジョンの場合、ディッピング法、ローラー転写法であるが、十分に水分を乾燥させるために100℃以上の雰囲気下での乾燥工程が必要となる。また加熱粘調液体の場合、スリットコーター法などの一般的なコーティング手法が可能であり、適量を炭素繊維束に付着させた後にスムージングロールなどで均一に付着させることが可能である。
【0022】
本発明の成形用材料を用いて成形し、炭素繊維がポリブチレンテレフタレートに均質に分散した成形体を得るためには、炭素繊維束に含浸助剤をできるだけ均一に付着させるのが好ましい。炭素繊維束に含浸助剤をより均一に付着させる方法として、上記方法により含浸助剤を炭素繊維束に付着させた後、これら含浸助剤の粘度が十分に低下する温度以上に再度熱処理する方法が例示される。また、該熱処理には、例えば、熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーター等を使用することができ、ローラーを用いることが好ましい。
【0023】
[炭素繊維]
本発明の成形用材料に含まれる炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石油ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維であっても良い。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、工場規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
上記炭素繊維としては、平均直径3〜12μmのものが好ましく、平均直径5〜10μmのものがより好ましく使用でき、平均直径5〜7μmのものが更に好ましく使用できる。なお、一般的な炭素繊維は、1000〜50000本の単繊維が繊維束となった炭素繊維フィラメントである。本発明における炭素繊維束には、そのような一般的な炭素繊維フィラメントも含まれるが、該炭素繊維フィラメントを、更に重ね合わせて合糸したものや、合糸に撚りを掛け撚糸としたもの等も含まれる。
【0024】
本発明の成形用材料に含まれる炭素繊維としては、炭素繊維とポリブチレンテレフタレートとの接着性を高めるため、表面処理によって、表面に含酸素官能基を導入されたものも好ましい。
また、前述のように、炭素繊維束に含浸助剤を含ませることにより易含浸性炭素繊維束を作る場合、含浸助剤を炭素繊維束に均一に付着させる工程を安定させるため、炭素繊維束としては、収束性を持たせる為の収束剤で処理されたものであると好ましい。収束剤としては、炭素繊維フィラメント製造用に公知のものを使用することができる。また、炭素繊維束としては、製造時に滑り性を上げるために使用された油剤が残存したものであっても、本願発明において問題無く使用することができる。なお、以後、含浸助剤と、上記の収束剤といったその他の処理剤とを包含する上位概念の意味で、表面処理剤との表現をする場合がある。
【0025】
[リン酸エステル]
本発明において、含浸助剤として用いられるリン酸エステルは、前記条件1および条件2を満たすものであれば、特に限定されないが、リン酸エステルモノマー又はオリゴマー性リン酸エステルのブレンドなど、具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、及びトリフェニルホスフェートに代表される芳香族リン酸エステル類等が挙げられる。好ましくはトリメチルホスフェート、又は芳香族リン酸エステル類である。成形加工性の観点から、ポリブチレンテレフタレートの一般的な成形温度範囲の上限である280℃において、窒素雰囲気下、加熱減量が2%/分以下であり、かつ、常圧下での沸点が340℃以上であるものが好ましい。加熱減量及び沸点が上記範囲であると、混練中にリン酸エステルが分解や蒸発しないので、混練終了時まで樹脂が炭素繊維へ含浸するので好ましく、成形体外観がより向上する。
本願において、常圧とは、特に注記無い限り、意図的に加圧・減圧操作をしない、標準大気圧(1013hPa)程度の気圧をいい、一般に800〜1050hPa、通常には1000〜1030hPa、より通常には、1009〜1017hPaの範囲にある気圧をいう。
そのような耐熱性を有するリン酸エステルとして、本発明において、前記一般式(1)で表される芳香族リン酸エステルが好適に用いられる。
【0026】
本願発明において、芳香族リン酸エステルとして、前記一般式(1)において、R
1〜R
12が水素原子、又はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であるものを用いると、溶融流動性および成形体の耐光性を顕著に改善できるので好ましい。これらのアルキル基のうち、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基及び/又はエチル基がより好ましい。
【0027】
前記一般式(1)にて表される芳香族リン酸エステルとしては、当該式中の芳香族基
【化2】
が、それぞれ独立に、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基のいずれかであるものは、耐熱性が高いので好ましく、中でも、メチル、エチル、プロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基を2個有するフェニル基であるものがより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基を2個、2位及び6位に有するフェニル基(例えば、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−エチル−6−メチルフェニル基など)が極めて好ましい。なお、以後、特に注記無く、化合物名でキシレニルとある場合は、2,6−ジメチルフェニル基を意味する。
【0028】
前記一般式(1)において、nは0または1の整数であるが、1であることが好ましい。
前記一般式(1)において、Xは、結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−S−、−SO
2−、−O−、−CO−または−N=N−であるが、結合、−CH
2−、または−C(CH
3)
2−が好ましく、−C(CH
3)
2−がより好ましい。
【0029】
前記の一般式(1)において、繰返し単位mは0〜5の整数であるが、1以上、つまり式(1)の芳香族リン酸エステルが、いわゆる芳香族縮合リン酸エステルであると好ましく、1〜3の整数であるとより好ましく、1又は2であると更に好ましく、特に1であると好ましい。
【0030】
前記一般式(1)にて表される芳香族リン酸エステルのうち、より好ましいものとして、トリフェニルホスフェート
【化3】
【0031】
トリキシレニルホスフェート
【化4】
【0032】
1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)
【化5】
【0033】
1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)
【化6】
【0034】
ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)
【化7】
【0035】
ビスフェノールA ビス(ジキシレニルホスフェート)
【化8】
【0036】
1,4−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)
【化9】
【0037】
1,4−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)
【化10】
【0038】
4,4’−ビフェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、
【化11】
【0039】
および、4,4’−ビフェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)
【化12】
からなる群より選ばれる1種類以上の芳香族リン酸エステルが挙げられる。前記一般式(1)にて表される芳香族リン酸エステルのうち、トリフェニルホスフェート、又はビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)が更に好ましく、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)が特に好ましい。
【0040】
なお、前記一般式(1)には該当しないが、1,4−ナフタレンジオール ビス(ジキシレニルホスフェート)
【化13】
【0041】
2,5−ピリジンジオール ビス(ジフェニルホスフェート)
【化14】
のように、多核芳香環残基や複素環残基を介して縮合している縮合リン酸エステルも、本発明におけるリン酸エステル含浸助剤の好ましいものとして使用することができる。
【0042】
易含浸炭素繊維束に含まれるリン酸エステルの量は、炭素繊維100質量部に対し3〜15質量部であり、好ましくは5〜12質量部である。3質量部未満では、炭素繊維へのポリブチレンテレフタレートの含浸性が不十分となり、15質量部より多いと炭素繊維へのポリブチレンテレフタレートの含浸性は優れるが、マトリクス樹脂であるポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度が低下することにより成形品の耐熱性が低下するため好ましくない。なお、含浸助剤として、リン酸エステルと共に、脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルも併用する場合は、これらの使用量合計が上記範囲に該当していれば良い。
【0043】
[脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステル]
本発明において、含浸助剤として使用できる脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基からなるポリエステルであり、単独の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基からなる単重合ポリエステルでもよく、複数種の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基を含む共重合ポリエステルでもよい。また、該脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルとしては、ポリマーを構成する残基のうち、50モル%未満の量にて、脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基以外の残基、例えば、ジオール残基やジカルボン酸残基などを含む共重合ポリエステルであっても良いが、意図的に共重合成分を加えられていない単重合体が、入手し易い点で好ましい。
【0044】
本発明に用いられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルの重量平均分子量は、3000〜50000であるのが好ましい。重量平均分子量が3000〜50000の範囲であると、ポリブチレンテレフタレート樹脂との親和性がよく、また乳化も容易である。特に好ましくは5000〜20000、更に好ましくは8000〜15000の範囲である。なお、重量平均分子量の測定方法としては、高温GPC法など公知の方法を使用することができる。
【0045】
本発明において、含浸助剤として使用できる脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルは、特に限定されないが、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、エナントラクトンの各単独重合体、およびこれら2種以上のモノマーの共重合体であると好ましく、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、エナントラクトンの各単独重合体で重量平均分子量3000〜50000のもの、およびこれら2種以上のモノマーの共重合体で重量平均分子量3000〜50000のものからなる群より選ばれる1種類以上のものであるとより好ましい。各重合体の更に好ましい重量平均分子量の範囲は上記のとおりである。特に好ましくは、ε−カプロラクトン、又はδ−カプロラクトンの各単独重合体で重量平均分子量3000〜50000のものである。
なお、本願発明においてラクトン類の重合体というときは、実際に、ラクトン類を開環重合させた重合体だけでなく、該ラクトン類の等価体である脂肪族ヒドロキシカルボン酸やその誘導体を原料とする同様の構造の重合体も含まれる。
【0046】
易含浸性炭素繊維束に付着させる脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルの量は、炭素繊維100質量部に対し3〜15質量部であり、好ましくは5〜12質量部である。
3質量部未満では、炭素繊維へのポリブチレンテレフタレートの易含浸性が不十分となり、15質量部より多いと含浸性は優れるが、マトリクス樹脂であるポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度が低下することにより得られる成形体の耐熱性が低下するため好ましくない。
【0047】
[成形用材料]
本発明の成形用材料は、上記の易含浸性炭素繊維束に、ポリブチレンテレフタレートが、易含浸性炭素繊維束に含まれる炭素繊維100質量部あたり50〜2000質量部にて付着しているものであり、66〜1900質量部にて付着しているとより好ましく、100〜600質量部にて付着していると更に好ましい。本発明の成形用材料の形状は特に限定されず、柱状、板状、粒状、塊状、糸状(紐状)、網状等が挙げられ、異なる形状の成形用材料を複数種用いて成形することも可能である。
【0048】
前記の易含浸性炭素繊維束にポリブチレンテレフタレートを付着させ、本発明の成形用材料とする方法としては、易含浸性炭素繊維束の表面に溶融状態のポリブチレンテレフタレートを被覆する方法、易含浸性炭素繊維束を引き並べた上にTダイなどを使って溶融状態のポリブチレンテレフタレートをキャストし積層化する方法、引き並べた易含浸性炭素繊維束にフィルム状ポリブチレンテレフタレート樹脂を積層ラミネートする方法、易含浸性炭素繊維束を引きそろえた上に粉末状ポリブチレンテレフタレートを吹きつける方法などが挙げられる。連続上に引き並べられた易含浸性炭素繊維束の替わりに、所定の長さに切断された易含浸性繊維束の集合体を同様に用いることも可能である。
【0049】
本発明の成形用材用は、易含浸性炭素繊維束を芯成分、ポリブチレンテレフタレートを鞘成分とする芯鞘型構造であることが好ましく、特に、本発明の成形用材用で、射出成形用のものとしては、易含浸性炭素繊維束の周囲にポリブチレンテレフタレートを被覆したストランドをストランドカッターにて切断するなどして得られる、易含浸性炭素繊維束を芯成分、ポリブチレンテレフタレートを鞘成分とする芯鞘型構造の、ペレットであることがより好ましく、長手方向の長さが3〜10mm程度のペレット(以下、芯鞘型ペレットと称することがある)が更に好ましい。該芯鞘型ペレットの直径に特に制限は無いが、ペレット長さの1/10以上2倍以下であると好ましく、ペレット長さの1/4以上かつペレット長さと同等以下であるとより好ましい。
【0050】
[ポリブチレンテレフタレート]
本発明において使用するポリブチレンテレフタレート樹脂は、例えば1,4−ブタンジオールとテレフタル酸またはその低級アルコールエステル誘導体とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート単一重合体、又はポリブチレンテレフタレートを主成分とする共重合体である。
ポリブチレンテレフタレート単一重合体の融点は好ましくは224℃であり、ポリブチレンテレフタレート共重合体の融点は好ましくは150〜230℃であり、さらに好ましくは170〜210℃である。
【0051】
ポリブチレンテレフタレート共重合体では、共重合する二官能以上の酸成分モノマーとしては、上記テレフタル酸またはその低級アルコールエステル誘導体以外の成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、コハク酸等の脂肪族または芳香族多塩基酸、又はそのエステル形成可能な誘導体;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、又はそのエステル形成可能な誘導体等が挙げられる。酸成分モノマーと重縮合される二官能以上のポリヒドロキシ成分モノマーとしては、上記1,4−ブタンジオール以外の成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,3−オクタンジオール等の低級アルキレングリコール;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体などの芳香族ポリヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加体;グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオール等が挙げられる。
【0052】
本発明では、上記の如き酸成分モノマー及びポリヒドロキシ成分モノマーを重縮合して生成する種類のポリブチレンテレフタレートはいずれも使用することができる。上記の各成分モノマーは単独で、又は2種以上混合して使用することができるが、ポリブチレンテレフタレート本来の物性を要求する観点から、好ましくはポリブチレンテレフタレート単一重合体が使用される。
【0053】
ポリブチレンテレフタレート単一重合体又は共重合体の製造方法としては、特殊なものではなく一般に知られている、(i)1,4−ブタンジオール、テレフタル酸及び必要に応じてコモノマー成分を直接重合させる方法、(ii)これらをエステル交換させて重合させる方法などにより重合させればよい。以後、区別の必要がある場合を除いて、ポリブチレンテレフタレート単一重合体及び共重合体を単にポリブチレンテレフタレート(樹脂)という。
【0054】
本発明において用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、アルキル化剤、アシル化剤、シリル化剤、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、またはカルボジイミド化合物などとの反応により、その分子鎖の末端が封止されたものであってもよい。
また、流動性、外観光沢、難燃特性、熱安定性、耐候性、耐衝撃性などを上げる目的で、機械的強度を損なわない範囲で、各種ポリマー、充填剤、安定剤、顔料などを配合してもよい。
なお、難燃性を向上させる目的で、難燃剤としてリン酸エステルをポリブチレンテレフタレートに配合させることも可能である。
【0055】
[成形体及びその製造方法]
前述のとおり、本発明の成形用材料を、従来技術のように、独立した工程にて強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させる為の処理をすることなく、既存の熱可塑性樹脂成形プロセスにて成形することにより、成形用材料において、易含浸性炭素繊維束へポリブチレンテレフタレートが含浸し、炭素繊維束を解きつつ溶融流動して金型内に広がることにより、良好な物性の成形体を得ることが可能である。
【0056】
つまり、本願には、前記の本発明の成形用材料からなる成形体の発明、および該成形用材料を、前記ポリブチレンテレフタレートの可塑化温度以上の温度の状態で金型内に存在させることにより、該成形用材料において、前記の易含浸性炭素繊維束に該ポリブチレンテレフタレートを含浸させて、該易含浸性炭素繊維束の炭素繊維束を解き分散させつつ成形した後、冷却することを特徴とする成形体の製造方法の発明も包含される。
【0057】
本発明の成形体の製造方法において、“易含浸性炭素繊維束の炭素繊維束を解き分散させる”とは、成形体において炭素繊維が塊状物となることが無い程度にまで、炭素繊維束が解繊され分散されることを意味し、炭素繊維フィラメント等の炭素繊維束を、その構成する数千〜数万本の炭素繊維単糸1本1本まで完全に解くまでしなくても、優れた物性および外観の成形体を得ることができる。
【0058】
本発明の成形体を製造するにおいて、前記の成形用材料を、採用する成形方法に適した種々の形態として用いることができる。
例えば、射出成形にて成形する場合は、前述のとおり、易含浸性炭素繊維束の周囲にポリブチレンテレフタレートを被覆したストランドをストランドカッターにて、好ましくは長さ3〜10mm程度に切断したペレット状の成形用材料(芯鞘型ペレット)として用いることができる。
【0059】
また、板状の大型成形体を得る場合には、プレス成形が有効である。プレス成形を行う場合には、ポリブチレンテレフタレートと易含浸性炭素繊維束とを積層した板状の成形用材料とし、これを、ポリブチレンテレフタレートの可塑化温度以上に加熱し、プレス型内に設置後、所定のプレス圧にて成形することも可能である。形状などによっては、予め本発明にかかる成形用材料を加熱プレスして得られるプリフォーム体を用いて成形する方法なども有効である。
【0060】
本発明の成形用材料を用い、他の成形用材料や添加剤を加えることなく、成形を行って成形体を得た場合、該成形用材料と該成形体の炭素繊維含有量(質量基準)、およびこれを割合にて表した炭素繊維含有率等の組成は当然同じである。よって本発明の成形体に含まれる炭素繊維やポリブチレンテレフタレートの量やその好ましい範囲については、成形用材料について前述したものである。
【0061】
なお、本発明の成形用材料を用いて、他の成形用材料や添加剤を加えることなく成形を行った場合は、成形用材料または得られた成形体のいずれか一方の炭素繊維含有量(率)を測定し、これを他方の炭素繊維含有量(率)とみなすことができる。また、本発明の成形用材料に、他の成形用材料や添加剤等を加えて成形を行った場合でも、それらの添加量を元に計算を行い、本発明の成形用材料または成形体のいずれか一方の炭素繊維含有量(率)から、他方の炭素繊維含有量(率)を求めることができる。
【0062】
従来の炭素繊維強化熱可塑性樹脂の成形体は、炭素繊維が熱可塑性樹脂に均質に分散した状態にするために、2軸押出機等にて熱可塑性樹脂と炭素繊維とを溶融混練したペレット等を材料として成形することによって得られている。しかしこの方法では、高いせん断をかけて混練するために、炭素繊維が押出機内で破砕され、得られる成形体中の炭素繊維長さが0.3mm未満となってしまうため、繊維による物性補強効果が低下してしまう。これに対し、本発明の成形用材料の成形体は、炭素繊維束へのポリブチレンテレフタレートの含浸性に優れるため、高いせん断で炭素繊維束と溶融樹脂とを混練する必要がない。このため得られる成形体中に炭素繊維が長いまま残存し、機械的強度に優れたものとなる。
【0063】
本発明の成形体は、成形体において、易含浸性炭素繊維束が解かれた炭素繊維が、平均繊維長0.3mm以上で分散しているものが好ましく、更に好ましくは該炭素繊維が平均繊維長0.4mm以上で分散しているものである。本発明の成形体において、残存する炭素繊維の平均繊維長の上限に特に制限は無く、用途や採用される成形方法による。例えば、易含浸性炭素繊維束の周囲にポリブチレンテレフタレートを被覆したストランドをストランドカッターにてペレット状にして成形用材料として用いて射出成形により得られた成形体については、炭素繊維の平均繊維長10mm以下程度が一般的であり、熱可塑性樹脂による含浸された度合が高い炭素繊維束ほど、射出成型時に折損が起きやすいことから、平均繊維長が2mm以下の場合も多い。
【0064】
更に、本発明の成形体は、ISO527規格肉厚4mmの引張試験片においては下式(C)の関係が成り立つものが好ましい。
炭素繊維含有率(質量%)×3+90 < 引張強度(MPa) ・・・(C)
上記式(C)が成り立つことは、炭素繊維強化熱可塑性樹脂の成形体において、炭素繊維含有率に比べて、成形体の引張強度が極めて高く、コストおよび性能の面で極めて好ましいことを意味する。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
各実施例、比較例において用いた含浸助剤について、以下に示す。なお、これら含浸助剤の液体の粘度は、レオメトリックス社粘弾性測定器(RDA2)を用いて、パラレルプレートにて、ひずみ速度1/s、280℃の条件にて測定されたものである。また、ポリブチレンテレフタレートや、これに含浸助剤を配合した樹脂組成物のガラス転移温度は、TAインスツルメント社製熱分析装置DSC−Q20を用いて、昇温速度20℃/minの条件にて測定されたものである。
含浸助剤の加熱減量(%/分)は、示差熱天秤を用いて、当初質量Wpre(g)の該含浸助剤の試料を窒素雰囲気下、室温から10℃/分で280℃まで昇温した後、更に、280℃で15分間保持した後の該試料の質量Wpost(g)から、前記式(i)によって算出された、試料数3の平均値である。
【0066】
1)ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)
ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)の280℃における液体の粘度は5Pa・sである。ポリブチレンテレフタレート(Tg
0=50℃)100質量部あたり、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)を10質量部配合して得られる樹脂組成物が示すガラス転移温度Tg
1は、45℃であり、前記式(A)で定義されるガラス転移温度低下率(ΔTg)は0.5℃/%であり、0.2℃/%より大きい。また、常圧下の沸点は340℃以上であり、280℃における加熱減量は0.00% /分であり、2%/分以下である。
【0067】
2)ポリカプロラクトン
ポリカプロラクトンの280℃における液体の粘度は8Pa・sである。ポリブチレンテレフタレート(Tg
0=50℃)100質量部あたり、ポリカプロラクトンを5質量部配合して得られる樹脂組成物が示すガラス転移温度Tg
1は、48℃であり、前記式(A)で定義されるガラス転移温度低下率(ΔTg)は0.4℃/%であり、0.2℃/%より大きい。
【0068】
3)トリメチルホスフェート
トリメチルホスフェートの280℃における液体の粘度は2mPa・s(2×10
−3Pa・s)である。ポリブチレンテレフタレート(Tg
0=50℃)100質量部あたり、トリメチルホスフェートを2質量部配合して得られる樹脂組成物が示すガラス転移温度Tg
1は、49℃であり、前記式(A)で定義されるガラス転移温度低下率(ΔTg)は0.5℃/%であり、0.2℃/%より大きい。また、常圧下の沸点は193℃である。
【0069】
また、実施例および比較例において用いた各測定試験法および評価方法は以下のとおりである。
(成形用材料または成形体などにおける炭素繊維の含有量、含有率)
炭素繊維の含有量は、ペレット等の成形用材料または、切り出された成形体の試料をるつぼに入れ、炉内温度を600℃に設定したマッフル炉に投入して樹脂成分を燃焼除去し、残った炭素繊維の質量から求めた。なお、成形用材料や成形体について炭素繊維含有率(質量%)と示してあるものは、炭素繊維とポリブチレンテレフタレートとだけではなく含浸助剤等も含めた全体の質量に対する炭素繊維の質量の割合である。
【0070】
(表面処理剤の含有量、含有率)
易含浸性炭素繊維束や炭素繊維フィラメント等に含有されている含浸助剤等の表面処理剤の量は、1mの長さで切り出された炭素繊維束をるつぼに入れ、炉内温度を550℃に設定したマッフル炉に15分間投入し、表面処理剤成分を燃焼除去して、残った炭素繊維の質量から求めた。
【0071】
(引張強度の測定)
得られた成形用材料よりダンベル試験片を射出成型機により作成し、ISO 527(JIS K 7161)に準拠し引張強度の測定を行った。
【0072】
(成形体の表面外観の評価)
得られた成形体の表面外観を観察し、炭素繊維束へのポリブチレンテレフタレートの含浸が不十分だったことにより発生する直径3mm以上の繊維状物質の塊、および気泡が表面に確認されなかったものを○(良好)、繊維状物質の塊は確認されなかったものの気泡が確認されたものを△(やや良好)、繊維状物質の塊が確認されたものを×(不良)とした。
【0073】
(成形体中の炭素繊維長の評価)
得られた複合成形体から20mm×10mmの試験片を切出し、550℃にて1.5時間有酸素雰囲気下で加熱し樹脂成分を燃焼除去した。残った炭素繊維を界面活性剤入りの水に投入し、超音波振動により十分に攪拌させた。攪拌させた分散液を計量スプーンによりランダムに採取し評価用サンプルを得て、ニレコ社製画像解析装置Luzex APにて、繊維数3000本の長さを計測し、長さ平均を算出し、成型体中における炭素繊維の平均繊維長を求めた。
以下に、実施例および比較例にて詳細を示す。
【0074】
<実施例1>
含浸助剤として、芳香族縮合リン酸エステルであるビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)(大八化学株式会社製;CR−741)を用い、これを不揮発分12質量%にエマルジョン化した溶液内に、炭素繊維束としてPAN系炭素繊維フィラメント(東邦テナックス社製STS40 24K相当 繊維直径7.0μm フィラメント本数24000本、引張強度4000MPa)を通過させた後、炭素繊維束に過剰に付着した溶液を、ニップロールにて取り除いた。更に、この含浸助剤が付着した炭素繊維束を180℃に加熱された熱風乾燥炉内を2分間かけて通過させることにより乾燥させ、易含浸炭素繊維束を得た。この易含浸炭素繊維束を200℃に加熱した直径60mmの2本の金属製ロールに沿わせ、再度の加熱処理を行い、炭素繊維束に、含浸助剤がより均一に付着した易含浸性炭素繊維束とした。この易含浸性炭素繊維束の含浸助剤の含有率は5質量%(炭素繊維100質量部あたり5.3質量部)であった。
次に、上記で得られた易含浸性炭素繊維束を、出口径3mmの電線被覆用クロスヘッドダイを用いて、ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス株式会社製:ジュラネックス(登録商標)2002)で被覆し、これを長さ6mmに切断し、炭素繊維含有率が20質量%(炭素繊維100質量部あたり、ポリブチレンテレフタレートが394.7質量部)、直径3.2mm、長さ6mmの射出成形に適した芯鞘型ペレットである成形用材料を得た。この成形用材料を、日本製鋼所製110ton電動射出成形機(J110AD)を用い、シリンダー温度C1/C2/C3/C4/N=260℃/280℃/280℃/280℃/270℃(C1〜C4はキャビティ、Nはノズル)にて成形サイクル35秒で射出成形し、肉厚4mmの引張試験用ダンベルを得た。得られた成形体は、分散不良による繊維状物質の塊や気泡は見られず外観が良好なものであり、引張強度は185MPaと優れた機械物性を示した。また成形体中に含まれる炭素繊維の平均繊維長は1.3mmであった。結果を表1に示す。
【0075】
<実施例2>
含浸助剤であるビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)のエマルジョン化溶液の濃度を不揮発分25質量%として炭素繊維フィラメントを処理することにより、含浸助剤の含有率10質量%(炭素繊維100質量部あたり11.1質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例1と同様に操作を行った。得られた成形体は、良好な外観および機械物性を示した。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例3>
易含浸性炭素繊維束を、出口径3mmの電線被覆用クロスヘッドダイを用いて、ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス株式会社製:ジュラネックス(登録商標)2002)で被覆する際、得られるペレット状の成形用材料の炭素繊維含有率を30質量%(炭素繊維100質量部あたり、ポリブチレンテレフタレートが222.2質量部)とした以外は、実施例2と同様に操作を行った。得られた成形体は、良好な外観および機械物性を示した。結果を表1に示す。
【0077】
<実施例4>
含浸助剤として、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)ではなく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルであるポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)を用い、これを不揮発分12質量%のエマルジョン液としたものにより、炭素繊維フィラメントを処理して、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率5質量%(炭素繊維100質量部あたり5.3質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例1と同様に操作を行った。得られた成形体は、良好な外観および機械物性を示した。結果を表1に示す。
【0078】
<実施例5>
含浸助剤であるポリカプロラクトンのエマルジョン化溶液の濃度を、不揮発分25質量%のエマルジョン液として炭素繊維フィラメントを処理することにより、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率10質量%(炭素繊維100質量部あたり11.1質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例4と同様に操作を行った。得られた成形体は、良好な外観および機械物性を示した。結果を表1に示す。
【0079】
<実施例6>
含浸助剤として、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)ではなく、トリメチルホスフェート(第八化学株式会社製 TMP)を用い、これを不揮発分25質量%のエマルジョン液としたものにより、炭素繊維フィラメントを処理して、トリメチルホスフェート含浸助剤の含有率10質量%(炭素繊維100質量部あたり11.1質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例1と同様に操作を行った。得られた成形体は充分な引張強度を示し、その外観表面には繊維状物質の塊は確認されなかったが、気泡が見られた。結果を表1に示す。
【0080】
<実施例7>
含浸助剤であるポリカプロラクトンのエマルジョン化溶液の濃度を、不揮発分9質量%のエマルジョン液として炭素繊維フィラメントを処理することにより、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率3質量%(炭素繊維100質量部あたり4.0質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例4と同様に操作を行った。得られた成形体は充分な引張強度を示し、その外観表面には繊維状物質の塊は確認されなかったが、気泡が見られた。結果を表1に示す。
【0081】
<実施例8>
含浸助剤であるポリカプロラクトンのエマルジョン化溶液に替えて120℃に加熱し溶融し液体状となったポリカプロラクトンを炭素繊維束表面に滴下しさらには120℃に加熱したホットバーを通し溶融したカプロラクトンを炭素束に含浸させた。このように炭素繊維束を処理したことより、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率8質量%(炭素繊維100質量部あたり8.7質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例4と同様に操作を行った。得られた成形体は、良好な外観および機械物性を示した。結果を表1に示す。
【0082】
<比較例1>
含浸助剤であるビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)のエマルジョン化溶液の濃度を不揮発分5質量%として炭素繊維フィラメントを処理することにより、含浸助剤の含有率2質量%(炭素繊維100質量部あたり2質量部)の炭素繊維束とした以外は、実施例1と同様に操作を行った。得られた成形体の表面には分散不良の繊維束の塊が存在しており、引張強度も低い値となった。結果を表1に示す。
【0083】
<比較例2>
含浸助剤を用いて易含浸性炭素繊維を作成することはせず、ウレタン・エポキシ系収束剤が1.2質量%含浸されたPAN系炭素繊維フィラメント(東邦テナックス社製 STS40−F13 平均直径7μm フィラメント本数24000本)を用いて、これをポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス株式会社製:ジュラネックス(登録商標)2002)で被覆する以降の操作を実施例1と同様に行った。得られた成形体の表面には分散不良の繊維束の塊が存在しており、引張強度も低い値となった。結果を表1に示す。
【0084】
<比較例3>
易含浸性炭素繊維束を被覆する樹脂をポリブチレンテレフタレートではなく、ポリアミド6(いわゆるナイロン6、宇部興産製 UBEナイロン1015B)に変更した以外は実施例2と同様に操作を行った。得られた成形体は、引張強度が低く、その外観も不良であった。
【0085】
<比較例4>
炭素繊維100質量部と、ポリブチレンテレフタレート233.3質量部とを二軸押出成形機内にて溶融混練し、炭素繊維含有率30質量%のペレットとしたものである炭素繊維強化ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス社製:ジュラネックス(登録商標)2002)を実施例1と同様の条件で射出成形を行った。得られた成形体は、炭素繊維の分散状態は良好であったが、成形体中における炭素繊維の平均繊維長は0.20mmと短く、引張強度も130MPaと満足できる値ではなかった。
【0086】
<比較例5>
実施例1で用いたのと同様の炭素繊維束を、含浸助剤である芳香族縮合リン酸エステルであるビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)で処理せずに、出口径3mmの電線被覆用クロスヘッドダイを用いて、ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス株式会社製:ジュラネックス(登録商標)2002)で被覆し、これを長さ6mmに切断し、炭素繊維含有率が20質量%(炭素繊維100質量部あたり、ポリブチレンテレフタレートが394.7質量部)、直径3.2mm、長さ6mmのペレットを得た。このペレットにポリカプロラクトンを5.3質量添加(後添加)し、射出成形に適した成形用材料を得た。この成形用材料を、実施例1と同様の条件で射出成形し、肉厚4mmの引張試験用ダンベルを得た。得られた成形体は、引張強度が低く、その外観も不良であった。結果を表1に示す。
【0087】
<比較例6>
含浸助剤であるポリカプロラクトンのエマルジョン化溶液の濃度を、不揮発分4.5質量%のエマルジョン液として炭素繊維フィラメントを処理することにより、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率1.5質量%(炭素繊維100質量部あたり2.0質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例4と同様に操作を行った。得られた成形体は、引張強度が低く、その外観も不良であった。結果を表1に示す。
【0088】
<比較例7>
含浸助剤であるポリカプロラクトンのエマルジョン化溶液の濃度を、不揮発分45質量%のエマルジョン液として炭素繊維フィラメントを処理することにより、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率18質量%(炭素繊維100質量部あたり20.0質量部)の易含浸性炭素繊維束とした以外は、実施例4と同様に操作を行った。得られた成形体は、外観は良好であったが、引張強度が低く、その耐熱性も劣るものであった。結果を表1に示す。
【0089】
上記の実施例1〜8において、炭素繊維が良好に分散し、機械物性が優れた成形体が得られていることから、本発明の成形用材料を用いて成形を行う際、易含浸性炭素繊維束にポリブチレンテレフタレートが円滑に含浸していることは明らかであるが、本発明者らは、より直接的に、それぞれの易含浸性炭素繊維束の易含浸性の度合を確認することを試みた。しかし、例えば、射出成形において、成形用材料を可塑化し、易含浸性炭素繊維束にポリブチレンテレフタレートが含浸し始める段階で、成形機を急停止して試料を採取するような作業は、安全性に問題があり、かつ成形機に損傷を与える可能性があるため、実施困難であった。
【0090】
そこで、本発明者らは、上記実施例や比較例と同じ、易含浸性炭素繊維束や炭素繊維フィラメント等を用いて、これらにシート状ポリブチレンテレフタレートを乗せた成形用材料を、金属板上で短時間加熱した試料についてマトリックス樹脂であるポリブチレンテレフタレートの含浸率(以後、ポリブチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂を用いた場合も含め、マトリックス樹脂含浸率と称する)を求め、易含浸性を評価した。以下、実施例1〜8および比較例1〜7の易含浸性炭素繊維束などの易含浸性を評価した結果を、それぞれ参考例A〜Gおよび比較参考例A〜Fとして示す。
【0091】
<参考例A>
実施例1と同様の操作にて得られた、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)の含有率5質量%(炭素繊維100質量部あたり5.3質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)の上面に厚み300μm幅10mm長さ20mmのシート状ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス株式会社製 ジュラネックス(登録商標)2002)を乗せた状態で、280℃に加熱した熱板上に置き、易含浸性炭素繊維束およびシート状ポリブチレンテレフタレートを2分間加熱した。加熱により溶融したポリブチレンテレフタレートが易含浸性炭素繊維束に含浸した部分はウェット状態となり、炭素単繊維間がポリブチレンテレフタレートで固着する。一方、炭素繊維束における、ポリブチレンテレフタレートが含浸しなかった部分は、ドライ状態で炭素単繊維間におけるポリブチレンテレフタレートの固着はなく、炭素単繊維が剥離しやすい。そこで、加熱後の試料のポリブチレンテレフタレートが含浸しなかった部分から、炭素単繊維を剥離して質量を測定し、下記計算式(D)にて、マトリックス樹脂がポリブチレンテレフタレートである場合の易含浸性炭素繊維束へのマトリックス樹脂含浸率を算出した。
マトリックス樹脂含浸率(質量%)=100−(マトリックス樹脂であるポリブチレンテレフタレートが未含浸の炭素単繊維質量/炭素繊維束質量)×100 ・・・(D)
マトリックス樹脂含浸率は98質量%と極めて高く、実施例1において用いた易含浸性炭素繊維束が極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいことを確認できた。
【0092】
<参考例B>
実施例2および3と同様の操作にて得られた、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)の含有率10質量%(炭素繊維100質量部あたり11.1質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は100質量%と極めて高く、実施例2および3において用いた易含浸性炭素繊維束が極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいことを確認できた。
【0093】
<参考例C>
実施例4と同様の操作にて得られた、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率5質量%(炭素繊維100質量部あたり5.3質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は96質量%と極めて高く、実施例4において用いた易含浸性炭素繊維束が極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいことを確認できた。
【0094】
<参考例D>
実施例5と同様の操作にて得られた、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率10質量%(炭素繊維100質量部あたり11.1質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は100質量%と極めて高く、実施例5において用いた易含浸性炭素繊維束が極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいことを確認できた。
【0095】
<参考例E>
実施例6と同様の操作にて得られた、トリメチルホスフェート含浸助剤の含有率10質量%(炭繊維100質量部あたり11.1質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)をいる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は80質量%と高く、実例6において用いた易含浸性炭素繊維束が、ポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいこと確認できた。
【0096】
<参考例F>
実施例7と同様の操作にて得られた、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率3質量%(炭素繊維100質量部あたり4質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は90質量%と高く、実施例7において用いた易含浸性炭素繊維束がポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいことを確認できた。
【0097】
<参考例G>
実施例8と同様の操作にて得られた、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率8質量%(炭素繊維100質量部あたり5.3質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は100質量%と極めて高く、実施例8において用いた易含浸性炭素繊維束が極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいことを確認できた。
【0098】
<比較参考例A>
比較例1と同様の操作にて得られた、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)含浸助剤の含有率2質量%(炭素繊維100質量部あたり2質量部)の炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は45質量%と低く、比較例1において用いた、含浸助剤の含有率2質量%の炭素繊維束は、ポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいものでは無かった。
【0099】
<比較参考例B>
易含浸性炭素繊維束の代わりに、比較例2と同じウレタン・エポキシ系収束剤が1.2質量%含浸された炭素繊維フィラメント(東邦テナックス社製 STS40−F13 平均直径7μm フィラメント本数24000本)を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は6質量%と極めて低く、比較例2において用いた炭素繊維フィラメントは、極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されにくいものであった。
【0100】
<比較参考例C>
実施例2および3と同様の操作にて得られた、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)の含有率10質量%(炭素繊維100質量部あたり11.1質量部)の易含浸性炭素繊維束(幅10mm長さ20mm)の上面に、厚み300μm幅10mm長さ20mmのシート状ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス式会社製 ジュラネックス(登録商標)2002)ではなく、同寸法のポリアミド6(宇部興産製 UBEナイロン1015B)のシート状物を用いて、参考例Aと同様に操作を行った。前記計算式(D)において、マトリックス樹脂をポリブチレンテレフタレートではなくポリアミド6として求めたマトリックス樹脂含浸率は4質量%と極めて低く、実施例2において用いた易含浸性炭素繊維束は、ポリアミド6には極めて含浸されにくいものであることが分かった。
【0101】
<比較参考例D>
易含浸性炭素繊維束の代わりに、比較例5と同様に、含浸助剤を後添加して得られたポリカプロラクトン含浸助剤の含有率1.2質量%の炭素繊維束を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は2質量%と極めて低く、比較例5において用いた炭素繊維フィラメントは、極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されにくいものであった。
【0102】
<比較参考例E>
比較例6と同様の操作にて得られた、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率1.5質量%の炭素繊維束を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は30質量%と低く、比較例6において用いた、含浸助剤の含有率1.5質量%の炭素繊維束は、ポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいものでは無かった。
【0103】
<比較参考例F>
比較例7と同様の操作にて得られた、ポリカプロラクトン含浸助剤の含有率18質量%の炭素繊維束を用いる以外は、参考例Aと同様に操作を行った。マトリックス樹脂含浸率は100質量%と極めて高く、比較例7において用いた易含浸性炭素繊維束が極めてポリブチレンテレフタレートに含浸されやすいことを確認できた。
【0104】
【表1】