特許第6163525号(P6163525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6163525-燃料電池システム 図000002
  • 特許6163525-燃料電池システム 図000003
  • 特許6163525-燃料電池システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163525
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20170703BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20170703BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20170703BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170703BHJP
   H01M 8/14 20060101ALN20170703BHJP
【FI】
   H01M8/04 J
   H01M8/06 G
   H01M8/04 Z
   C01B3/38
   !H01M8/12
   !H01M8/14
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-195170(P2015-195170)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-69103(P2017-69103A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2016年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−138573(JP,A)
【文献】 特開2013−101872(JP,A)
【文献】 特開2010−257870(JP,A)
【文献】 特開2012−221674(JP,A)
【文献】 特開2010−118354(JP,A)
【文献】 特開2004−199979(JP,A)
【文献】 特開2004−063341(JP,A)
【文献】 特開2004−044458(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/079561(WO,A1)
【文献】 特開2004−071471(JP,A)
【文献】 特開2015−103329(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1686643(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
C01B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスに含まれる炭化水素ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質部及び燃焼反応により前記改質部を加熱する燃焼部を有する改質器と、
前記改質器から供給された前記改質ガスを用いて発電を行なう、直列に接続されたN個(Nは2以上の整数)の燃料電池と、
前記N個の燃料電池のうち、隣り合う2つの前記燃料電池の間にそれぞれ設けられ、より上流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガス中の水蒸気を凝縮させて回収し、水蒸気が回収されたオフガスをより下流の前記燃料電池に供給する第1水蒸気回収手段と、
最も下流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを前記燃焼部に供給するオフガス経路と、
前記燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第2水蒸気回収手段と、
前記第1水蒸気回収手段と前記第2水蒸気回収手段とを連結し、前記第1水蒸気回収手段にて回収された凝縮水を前記第2水蒸気回収手段に供給する凝縮水供給経路と、
前記第1水蒸気回収手段の水位を検知する水位検知手段と、
前記凝縮水供給経路に設けられ、前記水位検知手段により検知された水位に基いて開閉する開閉弁と、
を備え
前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池又は溶融炭酸塩形燃料電池である燃料電池システム。
【請求項2】
原料ガスに含まれる炭化水素ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質部及び燃焼反応により前記改質部を加熱する燃焼部を有する改質器と、
前記改質器から供給された前記改質ガスを用いて発電を行なう、直列に接続されたN個(Nは2以上の整数)の燃料電池と、
前記N個の燃料電池のうち、隣り合う2つの前記燃料電池の間にそれぞれ設けられ、より上流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガス中の水蒸気を凝縮させて回収し、水蒸気が回収されたオフガスをより下流の前記燃料電池に供給する第1水蒸気回収手段と、
最も下流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを前記燃焼部に供給するオフガス経路と、
前記燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第2水蒸気回収手段と、
前記第1水蒸気回収手段及び前記第2水蒸気回収手段と接続し、前記第1水蒸気回収手段及び前記第2水蒸気回収手段にてそれぞれ回収された凝縮水を流通させる凝縮水流通経路と、
を備え
前記凝縮水流通経路は、前記凝縮水流通経路内を流通する凝縮水により、燃料電池システム内に供給されている未反応のガスを水封する燃料電池システム。
【請求項3】
前記開閉弁は、前記水位検知手段により検知された水位が第1の閾値以上となったときに開くことで前記第2水蒸気回収手段へ凝縮水を供給し、前記水位検知手段により検知された水位が第2の閾値以下となったときに閉じることで前記第2水蒸気回収手段へ凝縮水を供給しないように制御される請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1水蒸気回収手段及び前記第2水蒸気回収手段にて回収された水蒸気を前記炭化水素ガスの水蒸気改質に用いる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
600℃以上の温度で作動する固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池などの高温作動形燃料電池のシステムでは、効率化を図る点から、高温作動形燃料電池のアノードからそれぞれ排出されるアノードオフガスを燃焼したガスに含まれる水蒸気を凝縮して回収し、その回収した凝縮水を気化した水蒸気を炭化水素ガスの水蒸気改質に用いることがある。このとき、凝縮して回収される水蒸気の量が、炭化水素ガスの水蒸気改質に必要な水蒸気量よりも多くなるようにして、外部からの改質水供給が不要となる水自立が成立することが好ましい。
【0003】
また、燃料吸入流が供給された燃料電池スタックを運転して電気と200℃を超える温度の燃料排気流とを生成し、前記燃料排気流の温度を200℃以下に下げ、前記燃料排気流を第一の燃料排気分流と第二の燃料排気分流とに分割した後、蒸気を含む前記第一の燃料排気分流を前記燃料吸入流へとリサイクルする燃料電池システムの運転方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5542332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)等を備える高温作動形燃料電池システムにて、燃料利用率を向上させる手法として、燃料電池スタックの多段化が検討されている。これは、複数の燃料電池スタックを用いて、前段の燃料電池スタックで未反応であった改質ガスを含むアノードオフガスを後段の燃料電池スタックで利用するという技術である。
【0006】
また、発電効率を高める点から、前段の燃料電池スタックから排出されたアノードオフガス中から水蒸気を取り除いて、反応に寄与する改質ガス(水素や一酸化炭素)の濃度を高めた後にアノードオフガスを後段の燃料電池スタックで利用することが好ましい。
【0007】
さらに、燃料電池スタックでの発電に用いる改質ガスは、例えば、炭化水素ガスの水蒸気改質により生成されるが、この水蒸気改質に用いる水蒸気は、外部から供給することなく、システム内で生成される水蒸気により賄うことが好ましい。すなわち、燃料電池システムにて、外部からの改質水供給が不要となる水自立を成立させることが好ましい。
【0008】
燃料電池システムにて水自立を成立させる点から、アノードオフガス中に含まれる水蒸気及び改質部を加熱する際の燃焼反応により生じた燃焼排ガス中に含まれる水蒸気を、炭化水素ガスの水蒸気改質に用いることが想定される。このとき、アノードオフガス中の水蒸気を凝縮させてオフガスドレンタンクにて回収し、回収した凝縮水を、燃焼排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収した排ガスドレンタンクに供給し、この排ガスドレンタンクに貯留された凝縮水を炭化水素ガスの水蒸気改質に用いればよい。
【0009】
しかしながら、前述の2つのドレンタンクは連結していることにより、水素や一酸化炭素を含む改質ガス、未改質の炭化水素ガスなどの発電や燃焼に用いられていない未反応のガスを流通させた場合に、未反応のガスが、オフガスドレンタンクから排ガスドレンタンクへ供給されたときに、大気開放された排ガスドレンタンクから外部に放出されてしまい、外部にて未反応ガスが反応するなどの不安全事象が発生するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、システム内に供給されている未反応のガスが外部に放出されることを抑制し、不安全事象の発生を抑制した燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、例えば以下の手段により解決される。
<1> 原料ガスに含まれる炭化水素ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質部及び燃焼反応により前記改質部を加熱する燃焼部を有する改質器と、前記改質器から供給された前記改質ガスを用いて発電を行なう、直列に接続されたN個(Nは2以上の整数)の燃料電池と、前記N個の燃料電池のうち、隣り合う2つの前記燃料電池の間にそれぞれ設けられ、より上流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガス中の水蒸気を凝縮させて回収し、水蒸気が回収されたオフガスをより下流の前記燃料電池に供給する第1水蒸気回収手段と、最も下流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを前記燃焼部に供給するオフガス経路と、前記燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第2水蒸気回収手段と、前記第1水蒸気回収手段と前記第2水蒸気回収手段とを連結し、前記第1水蒸気回収手段にて回収された凝縮水を前記第2水蒸気回収手段に供給する凝縮水供給経路と、前記第1水蒸気回収手段の水位を検知する水位検知手段と、前記凝縮水供給経路に設けられ、前記水位検知手段により検知された水位に基いて開閉する開閉弁と、を備える燃料電池システム。
【0012】
本形態に係る燃料電池システムは、より上流の燃料電池から排出されたオフガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第1水蒸気回収手段と、燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第2水蒸気回収手段と、を備え、第1水蒸気回収手段と第2水蒸気回収手段とは、凝縮水供給経路により連結されている。さらに、本形態に係る燃料電池システムは、第1水蒸気回収手段に設けられた水位検知手段により、第1水蒸気回収手段の水位を検知し、検知された水位に基いて開閉弁を開閉する。
【0013】
そのため、例えば、システム起動開始直後など、燃料電池での発電による水蒸気が発生しない状況下では、システム内に供給されている未反応のガス(改質ガスや炭化水素ガス)が、凝縮水供給経路を介して第2水蒸気回収手段に供給され、第2水蒸気回収手段から外部に放出されてしまい、不安全事象が発生するおそれがある。
【0014】
一方、本形態に係る燃料電池システムは、水位検知手段により検知された第1水蒸気回収手段の水位に基いて開閉弁の開閉を調節するため、燃料電池での発電による水蒸気が発生しておらず、第1水蒸気回収手段の水位が所定の値よりも小さいときに開閉弁を閉じることで、システム内に供給されている未反応のガスが、凝縮水供給経路を介して第2水蒸気回収手段に供給されない。そして、システム内に供給されている未反応のガスは、オフガス経路を介して燃焼部に供給され、燃焼反応に用いられる。したがって、システム内に供給されている未反応のガスが外部に放出されることが抑制され、不安全事象の発生が抑制される。
【0015】
<2> 原料ガスに含まれる炭化水素ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質部及び燃焼反応により前記改質部を加熱する燃焼部を有する改質器と、前記改質器から供給された前記改質ガスを用いて発電を行なう、直列に接続されたN個(Nは2以上の整数)の燃料電池と、前記N個の燃料電池のうち、隣り合う2つの前記燃料電池の間にそれぞれ設けられ、より上流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガス中の水蒸気を凝縮させて回収し、水蒸気が回収されたオフガスをより下流の前記燃料電池に供給する第1水蒸気回収手段と、最も下流の前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを前記燃焼部に供給するオフガス経路と、前記燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第2水蒸気回収手段と、前記第1水蒸気回収手段及び前記第2水蒸気回収手段と接続し、前記第1水蒸気回収手段及び前記第2水蒸気回収手段にてそれぞれ回収された凝縮水を流通させる凝縮水流通経路と、を備える燃料電池システム。
【0016】
本形態に係る燃料電池システムは、より上流の燃料電池から排出されたオフガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第1水蒸気回収手段と、燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収する第2水蒸気回収手段と、を備える。さらに、本形態に係る燃料電池システムは、第1水蒸気回収手段及び前記第2水蒸気回収手段と接続し、各回収手段にて回収された凝縮水を流通させる凝縮水流通経路を備える。
【0017】
そのため、例えば、システム起動開始直後など、燃料電池での発電による水蒸気が発生しない状況下では、第1水蒸気回収手段にて水蒸気がほとんど凝縮されない一方、燃焼部での燃焼反応により生じる水蒸気を含む排ガスが発生することで、第2水蒸気回収手段にて水蒸気が凝縮される。そして、第2水蒸気回収手段に凝縮水が貯留され、貯留された凝縮水が凝縮水流通経路に供給される。
【0018】
第2水蒸気回収手段に貯留された凝縮水が、凝縮水流通経路内を流通することにより、システム内に供給されている未反応のガスが、第1水蒸気回収手段を介して凝縮水流通経路内に供給されることが抑制される。すなわち、凝縮水流通経路内を流通する凝縮水により、システム内に供給されている未反応のガスが水封され、凝縮水流通経路を介してガスが第2水蒸気回収手段に供給されない。そして、システム内に供給されている未反応のガスは、オフガス経路を介して燃焼部に供給され、燃焼反応に用いられる。そのため、システム内に供給されている未反応のガスが外部に放出されることが抑制され、不安全事象の発生が抑制される。
【0019】
<3> 前記開閉弁は、前記水位検知手段により検知された水位が第1の閾値以上となったときに開くことで前記第2水蒸気回収手段へ凝縮水を供給し、前記水位検知手段により検知された水位が第2の閾値以下となったときに閉じることで前記第2水蒸気回収手段へ凝縮水を供給しないように制御される<1>に記載の燃料電池システム。
【0020】
本形態に係る燃料電池システムでは、検知された水位が第1の閾値以上となったときに第2水蒸気回収手段へ凝縮水を供給し、検知された水位が第2の閾値以下となったときに第2水蒸気回収手段へ凝縮水を供給しないように、開閉弁が制御される。そのため、水位が低下した際に開閉弁が閉じられるため、システム内に供給されている未反応のガスが、凝縮水供給経路を介して第2水蒸気回収手段に供給されることが抑制される。
【0021】
<4> 前記第1水蒸気回収手段及び前記第2水蒸気回収手段にて回収された水蒸気を前記炭化水素ガスの水蒸気改質に用いる<1>〜<3>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0022】
各水蒸気回収手段にて回収された水蒸気を炭化水素ガスの水蒸気改質に用いることにより、システムの水自立化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、システム内に供給されている未反応のガスが外部に放出されることを抑制し、不安全事象の発生を抑制した燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムにおける開閉弁の制御処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の第二実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0026】
<第1実施形態>
〔燃料電池システム〕
以下、本発明の第一実施形態に係る燃料電池システム10について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図であり、本燃料電池システムでは2個の燃料電池が直列に接続されている。
【0027】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、改質部19及び燃焼部18を有する改質器14と、第1燃料電池11と、第1水蒸気回収手段である水タンク31と、第2燃料電池12と、第2水蒸気回収手段である水タンク32と、水タンク31と水タンク32とを連結する凝縮水供給経路35と、開閉弁39とを備えている。また、水タンク31には、貯留された凝縮水の水位を検知する水位検知手段である水位センサー41が設けられている。さらに、燃料電池システム10は、水タンク32に貯留される凝縮水を炭化水素ガスの水蒸気改質に用いるシステムである。
【0028】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池11から排出されたオフガス中の水蒸気を凝縮させて回収する水タンク31と、燃焼部18から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて回収する水タンク32と、を備え、水タンク31と水タンク32とは、凝縮水供給経路35により連結されている。さらに、燃料電池システム10は、水タンク31に設けられた水位センサー41により、水タンク31の水位を検知し、検知された水位に基いて開閉弁39を開閉する。
【0029】
そのため、例えば、システム起動開始直後など、第1燃料電池11での発電による水蒸気が発生しない状況下では、システム内に供給されている未反応のガス(水素、一酸化炭素などの改質ガス、や炭化水素ガス)が、水タンク31及び凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給される。凝縮水供給経路35は、大気開放である水タンク32の上部と連結しているため、水タンク32に供給された未反応のガスは外部に放出されてしまい、外部にて未反応ガスが反応するなどの不安全事象が発生するおそれがある。
【0030】
一方、本実施形態に係る燃料電池システム10は、水位センサー41により検知された水タンク31の水位に基いて開閉弁39の開閉を調節するため、第1燃料電池11での発電による水蒸気が発生しておらず、水タンク31の水位が所定の値よりも小さいときに開閉弁39を閉じる動作を行なう。これにより、システム内に供給されている未反応のガスは、凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給されず、オフガス経路54、46を経て燃焼部18に供給されて燃焼反応に用いられる。したがって、システム内に供給されている未反応のガスが水タンク32から外部に放出されることが抑制され、不安全事象の発生が抑制される。また、未反応ガスが外部に放出されることが抑制されているため、システム効率も低下しない。
【0031】
また、本実施形態に係る燃料電池システム10は、水タンク31及び水タンク32にて凝縮されて回収される水蒸気の量が、炭化水素ガスの水蒸気改質に必要な水蒸気量よりも多くなるようにして、外部からの改質水供給が不要となる水自立が成立している。
【0032】
以下、本実施形態に係る燃料電池システム10の各構成について説明する。
【0033】
(原料ガス供給経路)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、炭化水素ガスを含む原料ガスを改質器14に供給する原料ガス供給経路24を備えており、原料ガス供給経路24は、原料ガスを流通させるためのブロワ25が設置されている。
【0034】
原料ガス供給経路24内を流通する原料ガスとしては、水蒸気改質が可能な炭化水素ガスを含むものであれば特に限定されず、例えば、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、特にメタンが好ましい。なお、炭化水素ガスとしては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよい。
【0035】
原料ガス供給経路24は、後述する水蒸気供給経路37と接続しており、水蒸気供給経路37内を流通する水蒸気が原料ガス供給経路24に供給される。そして、水蒸気供給経路37より供給された水蒸気は、原料ガスとともに改質器14に供給される。なお、原料ガス供給経路24は、経路内での水蒸気の凝縮を防ぐ観点から、水蒸気供給経路37と接続されずに水蒸気が水蒸気供給経路37を通じて改質器14に直接供給される構成であってもよい。
【0036】
(改質器)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器14を備えている。改質器14は、例えば、バーナ又は燃焼触媒を配置した燃焼部18と、改質用触媒を備える改質部19とを備える。
【0037】
改質部19は、上流側にて原料ガス供給経路24と接続しており、下流側にて改質ガス供給経路42と接続している。そのため、原料ガス供給経路24を通じてメタンなどの炭化水素ガスを含む原料ガスが改質部19に供給され、改質部19にて炭化水素ガスを水蒸気改質した後に、生成された改質ガスが改質ガス供給経路42を通じて第1燃料電池11に供給される。
【0038】
燃焼部18は、上流側にて酸素供給経路44及びオフガス経路46と接続しており、下流側にて排気経路48と接続している。燃焼部18は、第2燃料電池12のカソード側から排出され、酸素供給経路44を通じて供給された未反応の酸素を含むガスと、第2燃料電池12のアノード側から排出され、オフガス経路46を通じて供給されたオフガスとの混合ガスを燃焼させ、改質部19内の改質用触媒を加熱する。燃焼部18からの排ガスは、排気経路48内を流通する。
【0039】
改質部19で起こる水蒸気改質は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部から熱の供給が必要であり、そのため、燃焼部18で発生する燃焼熱により改質部19を加熱することが好ましい。
【0040】
炭化水素ガスの一例であるメタンを水蒸気改質させた場合、改質部19にて、以下の式(a)の反応により一酸化炭素および水素が生成される。
CH+HO→CO+3H (a)
【0041】
改質部19内に設置される改質用触媒としては、水蒸気改質反応の触媒となるものであれば特に限定されないが、Ni,Rh,Ru,Ir,Pd,Pt,Re,Co,Fe及びMoの少なくとも一つを触媒金属として含む水蒸気改質用触媒が好ましい。
【0042】
改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの水蒸気の分子数Sと、改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの炭化水素ガスの炭素原子数Cと、の比であるスチームカーボン比S/Cは、1.5〜3.5であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましく、2.0〜2.5であることがさらに好ましい。スチームカーボン比S/Cがこの範囲にあることにより、炭化水素ガスが効率よく水蒸気改質され、水素および一酸化炭素を含む改質ガスが生成される。さらに、燃料電池システム10内での炭素析出を抑制することができ、燃料電池システム10の信頼性を高めることができる。
【0043】
また、燃焼部18は、水蒸気改質を効率よく行なう観点から、改質部19を、600℃〜800℃に加熱することが好ましく、600℃〜700℃に加熱することがより好ましい。
【0044】
排気経路48内を流通する排ガスは、気化器の役割を有する熱交換器23にて、改質水供給経路33内を流通する改質水と熱交換を行なう。これにより、排気経路48内を流通する排ガスは冷却され、改質水供給経路33内を流通する改質水は気化された後に水蒸気供給経路37を通じて原料ガス供給経路24に供給される。
【0045】
熱交換器23にて熱交換が行なわれた排ガスは、熱交換器22にて、酸素供給経路44内を流通する酸素を含むガスと熱交換を行なう。これにより、排ガスは冷却された後に水タンク32(凝縮器)に供給され、酸素を含むガスは加熱された後に、第1燃料電池11のカソードに供給されて発電に用いられる。
【0046】
水タンク32は、排気経路48内を流通する排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮して得られた凝縮水を貯留する容器である。水タンク32では、水蒸気以外の排ガスは外部に排出され、また、所定量以上の水が貯留された際には、例えばオーバーフローによりドレン排水してもよい。
【0047】
水タンク32は、後述する凝縮水供給経路35を通じて水タンク31と連結している。そのため、水タンク31に貯留された凝縮水が凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給される。
【0048】
さらに、水タンク32は、改質水供給経路33と接続しており、改質水供給経路33には、改質水ポンプ34及び水処理装置38が設けられている。改質水ポンプ34により、水タンク32に貯留された水は改質水として、改質水供給経路33を通じて水処理装置38にて不純物が除去された後、熱交換器23に供給される。
【0049】
水処理装置38は、改質水供給経路33内を流通する水に含まれる不純物を除去するための装置であり、交換や薬品による再生処理が必要なイオン交換樹脂を有する水処理装置、イオン交換樹脂を電気的に再生可能な電気脱イオン式の水処理装置などが挙げられる。
【0050】
また、排気経路48内を流通する排ガスと、改質水供給経路33内を流通する改質水と、の間で熱交換を行なう熱交換器23の代わりに、改質部19、第1燃料電池11、第2燃料電池12の内少なくとも一つより放出される熱を利用して、改質水を気化する気化器を設けてもよい。
【0051】
酸素供給経路44は、空気などの酸素を含むガスが流通する経路であり、酸素を含むガスを第1燃料電池11に送るためのブロワ26を備える。酸素を含むガスは熱交換器22により第1燃料電池11の作動温度に適した温度に加熱された後に第1燃料電池11のカソードに供給される。
【0052】
(第1燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、改質ガス供給経路42を通じて改質器14から供給された改質ガスを用いて発電を行なう第1燃料電池11を備えている。第1燃料電池11としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。また、第1燃料電池11としては、600℃〜800℃程度で作動する高温型の燃料電池、例えば、700℃〜800℃程度で作動する固体酸化物形燃料電池、600℃〜700℃程度で作動する溶融炭酸塩形燃料電池が挙げられる。
【0053】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、酸素供給経路44を通じて酸素を含むガスが供給される。酸素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(b)に示す反応が起こり、その際、酸素イオンが固体酸化物電解質(図示せず)の内部を移動する。
+4e→2O2− (b)
【0054】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、改質ガス供給経路42を通じて水素を含む改質ガスが供給される。固体酸化物電解質の内部を移動する酸素イオンからアノードと固体酸化物電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(c)に示す反応が起こる。
+O2−→HO+2e (c)
【0055】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、酸素供給経路44を通じて酸素及び二酸化炭素を含むガスが供給される。酸素及び二酸化炭素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(d)に示す反応が起こり、その際、炭酸イオンが電解質(図示せず)の内部を移動する。
+2CO+4e→2CO2− (d)
【0056】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、改質ガス供給経路42を通じて水素を含む改質ガスが供給される。電解質の内部を移動する炭酸イオンからアノードと電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(e)に示す反応が起こる。
+CO2−→HO+CO+2e (e)
【0057】
上記式(c)及び式(e)に示すように、第1燃料電池11での改質ガスの電気化学的な反応により、固体酸化物形燃料電池では主に水蒸気が生成され、溶融炭酸塩形燃料電池では主に水蒸気及び二酸化炭素が生成される。また、アノードで生成された電子は、外部回路を通じてカソードに移動する。このようにして電子がアノードからカソードに移動することにより、第1燃料電池11にて発電が行なわれる。なお、固体酸化物形燃料電池であっても、一部の一酸化炭素が発電に用いられることで、二酸化炭素が生成される。
【0058】
カソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の酸素供給経路44を通じて、第2燃料電池12のカソード(図示せず)に供給される。
【0059】
一方、アノードから排出された未反応の改質ガスを含むオフガスは、オフガス経路52を通じて水タンク31へ供給される。ここで、未反応の改質ガスを含むオフガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気などを含む混合ガスである。
【0060】
オフガス経路52及びオフガス経路54には熱交換器21が設置されており、熱交換器21により、オフガス経路52内を流通するオフガスと、オフガス経路54内を流通する水蒸気が回収されたオフガスと、の間で熱交換を行なう。これにより、オフガス経路52内を流通するオフガスは冷却され、水タンク31にて水蒸気が凝縮される温度に近づくとともに、第2燃料電池12に供給される水蒸気が回収されたオフガスは、発電に適した温度に加熱される。よって、システム全体の発電効率及び熱効率がより向上する。熱交換器21により冷却されたオフガスは、水タンク31に供給される。
【0061】
水タンク31は、オフガス経路52内を流通するオフガス中に含まれる水蒸気を凝縮して得られた凝縮水を貯留することで、オフガス中に含まれる水蒸気を回収するための容器である。水タンク31は、貯留された凝縮水の水位を検知する水位センサー41を有する。
【0062】
水タンク31は、凝縮水供給経路35を介して水タンク32と連結しており、凝縮水供給経路35は、水位センサー41により検知された水位に基いて開閉する開閉弁39を有する。
【0063】
開閉弁39は、前述の水位センサー41により検知された水位に基いて開閉する弁であり、水位センサー41により検知された水位のデータに基いて、制御部40により、その開閉が制御される。例えば、開閉弁39は、水タンク31の水位が第1の閾値以上のときに開くことで水タンク32へ凝縮水を供給するように制御部40により制御され、かつ、水タンク31の水位が第2の閾値以下のときに閉まることで水タンク32へ凝縮水が供給されないように制御部40により制御されることが好ましい。これにより、水タンク31の水位が低下した際に開閉弁39を閉じることで、システム内に供給されている未反応のガスが、凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給されることが抑制される。また、水タンク31の水位がある一定以上となった際に開閉弁39を開くことで、水タンク31に貯留されている凝縮水が凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給される。
【0064】
以下、燃料電池システム10における開閉弁の制御処理について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムにおける開閉弁の制御処理を示すフローチャートである。
【0065】
まず、ステップ200にて、燃料電池システム10を起動する。起動時において、開閉弁39は閉じた状態であり、システム内に供給されている未反応のガスが凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給されることが抑制される。
【0066】
次に、ステップ201にて、水タンク31の水位が第1の閾値以上であるか判定する。水タンク31の水位が第1の閾値以上でなければ、開閉弁39は閉じたままの状態とし、水タンク31の水位が第1の閾値以上であれば、ステップ202にて、開閉弁39を開く。開閉弁39を開くことにより、水タンク31に貯留されていた凝縮水が、凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給される。
【0067】
次に、ステップ203にて、水タンク31の水位が第2の閾値以下であるか判定する。水タンク31の水位が第2の閾値以下でなければ、開閉弁39は開いたままの状態とし、水タンク31の水位が第2の閾値以下であれば、ステップ204にて、開閉弁39を閉じる。これにより、水タンク31に貯留されている凝縮水の水位が低下した場合であっても、システム内に供給されている未反応のガスが凝縮水供給経路35を介して水タンク32に供給されることが抑制される。
【0068】
そして、ステップ204にて開閉弁を閉じた後、ステップ205にてシステムの運転停止要求があるか判定し、システムの停止要求がないときは、ステップ200〜ステップ204を繰り返す。また、ステップ205にてシステムの停止要求があるときは、燃料電池システム10の停止とともに、開閉弁39の制御処理も停止する。
【0069】
開閉弁としては、水位センサーにより検知された水位に基いて開閉する弁であればよく、例えば、電磁弁、電動弁などが挙げられる。
【0070】
次に、水蒸気が回収された後のオフガスは、水タンク31からオフガス経路54内を流通し、第2燃料電池12へ供給される。このとき、前述のように、オフガス経路52及びオフガス経路54に設置された熱交換器21により、オフガス経路54内を流通する水蒸気回収後のオフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。
【0071】
(第2燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、水タンク31の下流に配置され、水蒸気が回収されたオフガスを用いて発電を行なう第2燃料電池12を備えている。第2燃料電池12としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。なお、第2燃料電池12は、上述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、共通する事項に関する説明は省略する。
【0072】
燃料電池システム10では、第2燃料電池12は、水蒸気が回収されたオフガスを用いて発電を行なう。そのため、第2燃料電池12では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の水蒸気に起因する濃度過電圧が低減され、特に高電流密度時に高い性能を発揮することができる。よって、燃料電池システム10は、後段の燃料電池にて水蒸気が分離されていないオフガスを用いて発電を行なう多段式の燃料電池システムと比較して、高い発電効率を得ることができる。
【0073】
第2燃料電池12のカソードから排出されたオフガスは、下流側の酸素供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、第2燃料電池12のアノードから排出されたオフガスは、オフガス経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。
【0074】
本実施形態では、第1燃料電池11に酸素を供給した後、第2燃料電池12に酸素が供給されるが、酸素供給経路44は並列であってもよい。つまり、酸素が流通する酸素供給経路44が分岐し、第1燃料電池11及び第2燃料電池12のカソードに酸素をそれぞれ供給する構成であってもよい。
【0075】
本実施形態に係る燃料電池システム10では、第1燃料電池11と第1燃料電池11との間に、第1燃料電池11のアノードから排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素分離手段を設けてもよい。これにより、第2燃料電池12では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の水蒸気及び二酸化炭素に起因する濃度過電圧が低減される。よって、燃料電池システム10は、より高い発電効率を得ることができる。二酸化炭素分離手段としては、オフガスに含まれる二酸化炭素を分離できるものであれば特に限定されず、分離膜、吸収材、吸着材などが挙げられる。
【0076】
また、本実施形態では、水蒸気回収手段として水タンク31を用いているが、オフガス中の水蒸気を少なくとも分離する水蒸気分離膜と水タンク31とを組み合わせてもよい。
【0077】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態に係る燃料電池システムについて図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第二実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第一実施形態に係る燃料電池システム10は、開閉弁39を有する凝縮水供給経路35を介して水タンク31と水タンク32とが連結し、かつ水タンク31に水位センサー41が設けられたシステムであるが、本実施形態に係る燃料電池システム20は、水タンク31及び水タンク32は、下流側にて凝縮水を流通させる凝縮水流通経路である改質水供給経路33と接続しており、かつ水タンク31に水位センサー41が設けられていないシステムである。なお、本実施形態では、第一実施形態と同様の構成については、同一の符号を付しており、その詳細な説明を省略する。
【0078】
第二実施形態に係る燃料電池システム20は、改質部19及び燃焼部18を有する改質器14と、第1燃料電池11と、第1水蒸気回収手段である水タンク31と、第2燃料電池12と、第2水蒸気回収手段である水タンク32と、水タンク31及び水タンク32の下流に設けられた改質水供給経路33とを備えている。また、改質水供給経路33は、水タンク31及び水タンク32と接続している。さらに、燃料電池システム20は、水タンク31及び水タンク32に貯留される凝縮水を炭化水素ガスの水蒸気改質に用いるシステムである。
【0079】
例えば、システム起動開始直後など、第1燃料電池11での発電による水蒸気が発生しない状況下では、水タンク31にて水蒸気がほとんど凝縮されない一方、燃焼部18での燃焼反応により水蒸気が発生し、燃焼部18から排出された排ガス中の水蒸気は水タンク32にて凝縮される。そして、水タンク32に凝縮水が貯留され、貯留された凝縮水が改質水供給経路33に供給される。
【0080】
水タンク32に貯留された凝縮水が、改質水供給経路33内を流通することにより、システム内に供給されている未反応のガスが、水タンク31を介して改質水供給経路33内に供給されることが抑制される。すなわち、改質水供給経路33内を流通する凝縮水により、システム内に供給されている未反応のガスが水封され、改質水供給経路33を介してガスが水タンク32に供給されない。したがって、システム内に供給されている未反応のガスが、水タンク32から外部に放出されることが抑制され、不安全事象の発生が抑制される。
【0081】
改質水供給経路33内を流通する凝縮水は、炭化水素ガスの水蒸気改質に用いる改質水であり、改質水ポンプ34により、水処理装置38に供給されて不純物が除去された後、熱交換器23に供給される。そして、改質水は熱交換器23にて気化され、炭化水素ガスの水蒸気改質に用いられる。
【0082】
本実施形態では、水蒸気回収手段として水タンク31を用いているが、これに限定されず、オフガス中の水蒸気を少なくとも分離する水蒸気分離膜を用いてもよく、水タンク31と水蒸気分離膜とを組み合わせてもよい。
【0083】
本発明は、前述の第一実施形態、第二実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で、当業者によって、前述の各実施形態を組み合わせて実施される。また、本発明において、例えば、熱交換器の設置位置、組み合わせなどはこれらの実施形態に限定されない。また、ガス、水などの各種流体の加熱及び冷却には熱交換器以外の手段を用いてもよい。
【0084】
また、本発明は、第一実施形態、第二実施形態のように、2つの燃料電池を備える燃料電池システムに限定されず、3つ以上の燃料電池を備える燃料電池システムであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…燃料電池システム、11…第1燃料電池、12…第2燃料電池、14…改質器、18…燃焼部、19…改質部、21、22、23…熱交換器、24…原料ガス供給経路、25、26…ブロワ、31、32…水タンク、33…改質水供給経路、34…改質水ポンプ、35…凝縮水供給経路、37…水蒸気供給経路、38…水処理装置、39…開閉弁、40…制御部、41…水位センサー、42…改質ガス供給経路、44…酸素供給経路、46、52、54…オフガス経路、48…排気経路
図1
図2
図3