(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163546
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャーのための作動装置
(51)【国際特許分類】
F02B 37/18 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
F02B37/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-517629(P2015-517629)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公表番号】特表2015-520325(P2015-520325A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】EP2013001706
(87)【国際公開番号】WO2013189575
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】102012105402.9
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505448822
【氏名又は名称】アイ・エイチ・アイ チャージング システムズ インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ツィボール,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ブルメスター,ヘルマン
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102010049466(DE,A1)
【文献】
実開昭61−033923(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を流すための排気流路部(4)と該排気流路部(4)の中に配設されたタービン羽根車を迂回させて排気を流すためのバイパス流路とを有するタービン(3)を備えた排気ガスターボチャージャーのための作動装置であって、第1作動リンク部材(11)と、第2作動リンク部材(12)とを備え、前記第1作動リンク部材(11)に、前記バイパス流路の流路断面積を変化させるための弁体部材が間接的または直接的に装備されており、前記第1作動リンク部材(11)と前記第2作動リンク部材(12)とが互いに枢動連結されており、前記第1作動リンク部材(11)と前記第2作動リンク部材(12)とを枢動連結している枢動連結構造が、ピン形状の連結部材(15)と係止部材(16)とを備えている、作動装置において、
前記係止部材(16)によって発生される前記連結部材(15)の長手軸(A)の軸方向両側へ向かう引張力を、前記枢動連結構造に作用させるようにしてあり、
前記係止部材(16)は一体的に形成され、
前記連結部材(15)の長手軸の軸方向に延在するボス部(25)が、前記係止部材(16)の内法高さ寸法(h)の略々全寸法に亘って前記連結部材(15)を包持するように構成されている
ことを特徴とする作動装置。
【請求項2】
前記係止部材(16)は、押圧力によって前記連結部材(15)に引張力を作用させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の作動装置。
【請求項3】
前記係止部材(16)は、蓄えた予荷重により前記引張力を発生させるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の作動装置。
【請求項4】
前記係止部材(16)はクリップ型の部材として構成されており、第1係止片部分(19)と第2係止片部分(20)と第3係止片部分(21)とを備え、前記第1係止片部分(19)と前記第2係止片部分(20)とが前記第3係止片部分(21)を介して接続しており、
前記連結部材(15)は該連結部材(15)の溝部(17)に前記第1係止片部分(19)が係合するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項記載の作動装置。
【請求項5】
前記ボス部(25)は、前記第1作動リンク部材(11)に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の作動装置。
【請求項6】
前記係止部材(16)は、前記ボス部(25)を包持していることを特徴とする請求項1又は請求項5記載の作動装置。
【請求項7】
前記ボス部(25)は、前記係止部材(16)に一体的に形成されていることを特徴とする請求項6記載の作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載された種類の排気ガスターボチャージャーのための作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気を流すための排気流路部と、この排気流路部の中に配設されたタービン羽根車を迂回させて排気を流すためのバイパス流路とを有するタービンを備えた、排気ガスターボチャージャーのための作動装置が開示されている。この作動装置は第1作動リンク部材と第2作動リンク部材とを備えている。第1作動リンク部材にはバイパス流路の流路断面積を変化させるための弁体部材が装備されている。弁体部材は第3作動リンク部材を介して間接的に第1作動リンク部材に連結されている。弁体部材に所望の動きを行わせるために、第1作動リンク部材と第2作動リンク部材とは枢動連結されており、第2作動リンク部材と第3作動リンク部材とは固定連結されている。第1作動リンク部材と第2作動リンク部材とを枢動連結している枢動連結構造は、ピン形状の連結部材であるボルトと、このボルトをその装着位置に係止する係止部材とを備えている。係止部材は第1作動リンク部材及び第2作動リンク部材を包持する形状に形成されており、そのため枢動連結構造には、係止部材により発生される押圧力が作用しており、それによって第1作動リンク部材と第2作動リンク部材とは、枢動連結構造の近傍部分において、ボルトの軸方向に互いに押付けられている。
【0003】
ここで問題となるのは、エンジンに取付けられた排気ガスターボチャージャーが動作しているときには、その排気ガスターボチャージャーが温度変動及び機械振動に曝されているということである。その温度変動のために、排気ガスターボチャージャーの構成部品の加熱と冷却が継続的に反復しており、特に排気ガスターボチャージャーのタービンの付近では、エンジンの燃焼ガスが排気流路部の中を流れることにより温度変動が最大になっている。排気ガスターボチャージャーの構成部品のうち、燃焼ガスが流れている排気流路の近くに配設されている構成部品ほど故障を生じる確率が高い。温度変動が継続的に反復することによって構成部品の膨張量も継続的に変動しており、そのため、緩みが発生するおそれ、余計な力が加わるおそれ、または材料の疲労が生じるおそれがある。また、枢動連結構造は、互いに連結される第1作動リンク部材及び第2作動リンク部材を包持して押圧力を発生する係止部材によって連結状態に維持されているため、この係止部材の外側面は燃焼ガスが流れている排気流路に近接した位置にあり、そのため上述した温度変動に曝されている。
【0004】
エンジンの運転中には、例えばピストンの往復運動、それに伴うクランクシャフトの回転運動、またはカムシャフトの回転運動などの、様々なエンジン構成部品の運動に起因する機械振動が発生している。排気ガスターボチャージャーはエンジンに機械的に連結されているため、このエンジンの機械振動によって排気ガスターボチャージャーの作動装置がカチカチ音やガチャガチャ音などの耳障りな騒音を発生することがある。更に加えて、エンジンの燃焼ガスは脈動流でもあり振動流でもあるため、この燃焼ガスが排気ガスターボチャージャーの中を流れ、また特にそのバイパス流路の中を流れることによって、弁体部材に余計な力が加わり、ひいては弁体部材に連結している作動リンク部材にその力が作用する。これによって作動装置の機械振動が強まり、その機械振動を原因とするカチカチ音やガチャガチャ音も大きくなる。
【0005】
また更に、そのような機械振動によって、互いに枢動可能に連結されている作動リンク部材の摩耗が進行することから、当初はきちんと連結していた枢動連結構造に緩みが発生し、ついには動作信頼性が低下することにもなり兼ねず、また少なくとも機能低下を来すおそれがある。これらの悪影響は、特に、第1作動リンク部材と連結部材の長手軸との間の直交性が失われ、第1作動リンク部材が連結部材の長手軸に対して傾いてしまうことにより発生するものである。この傾きにより、第1作動リンク部材と連結部材との接触部位に著しい摩耗が生じて、作動装置の寿命が短くなるおそれが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2010 049 466 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、低コストで摩耗の少ない構成とし、それによって高い動作信頼性と長い寿命とを得られるようにした、排気ガスターボチャージャーのための作動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、請求項1に記載した特徴を備えた排気ガスターボチャージャーのための作動装置により達成される。本発明の好適且つ重要な発展を備えた有利な実施形態は、その他の請求項により示される。
【0009】
本発明に係る排気ガスターボチャージャーのための作動装置によれば、前記係止部材によって発生される前記連結部材の長手軸の軸方向両側へ向かう引張力を、前記第1作動リンク部材と前記第2作動リンク部材とを互いに連結している前記枢動連結構造に作用させるようにしている。即ち、前記連結部材によって前記第1作動リンク部材と前記第2作動リンク部材との間に構成されている前記枢動連結構造に、前記係止部材が、引張力を作用させるようにしている。
【0010】
特に、前記連結部材によって互いに連結された前記第1作動リンク部材と前記第2作動リンク部材との連結状態を維持するために、本発明に係る作動機構に備えられている前記係止部材は、押圧力によって前記連結部材に引張力を作用させるように構成されている。換言するならば、前記係止部材は、前記連結部材の長手軸の軸方向両側へ向かう引張力を前記連結部材に作用させるように構成されており、ただしその引張力は、前記係止部材に押圧力が作用する結果として発生するものである。
【0011】
本発明の重要な利点の1つに、係止部材が連結部材に押圧力を作用させるようにしている場合と比べて、必要スペースが小さくなることにある。これは、係止部材が連結部材に引張力を作用させるようにすれば、係止部材を装着するための必要スペースが小さくなるからである。即ち、係止部材によって、第1作動リンク部材と第2作動リンク部材とを含む構成部分の全体を係止部材で包持する必要がなくなり、第1作動リンク部材の上面と、連結部材に装備した適宜の固定部材との間のスペースに、係止部材を装着することが可能になるのである。
【0012】
これによって従来と比較してコンパクトな構成が得られ、即ち、係止部材を小型化できることから、係止部材を製作する板材の厚さ及び幅を小さくして同じ大きさの力を発生させることが可能になる。
【0013】
本発明の更なる1つの利点として、ただ1つの構成部品で、即ち係止部材だけで、枢動連結構造の連結状態を維持できるということがある。係止部材が連結部材に押圧力を作用させるようにしている場合、連結部材と第1作動リンク部材と第2作動リンク部材とから成る構造部分の全体を係止部材が包持していることから、第1作動リンク部材と第2作動リンク部材との間の枢動連結構造の連結状態を維持するためには、例えば係止座金などの更なる係止部材が必要とされる。
【0014】
更に、特に大きな利点の1つとして、本発明に係る作動装置の係止部材は、タービンハウジングとは反対側を向いた位置に装備できるため、タービンハウジングから放出される熱のうち、その係止部材に影響を及ぼし得る熱を非常に少なくすることができる。また、係止部材を装備する位置に応じて、第1作動リンク部材と第2作動リンク部材とのいずれか一方が、その係止部材のための熱遮蔽部材として機能することによって、タービンハウジングから放出される熱のうち、実際にその係止部材へ入力される熱は更に少なくなる。それゆえ、係止部材の材料を選択する上で満たさねばならない、高温下でも弾性力を喪失しないという条件と、頻繁に反復される熱変動に耐え得るという条件とが、いずれも非常に緩やかなものとなる。このことは、耐熱性を付与するために係止部材の材料に添加する高価な合金成分の成分量の低減に資すると共に、係止部材を製作する際の材料の加工性の向上にも資することから、製作に要する総合コストの改善が達成される。
【0015】
それゆえ本発明に係る作動装置は、低コストで摩耗の少ない構成を有しており、それによって作動装置それ自体が格段に長寿命化され、ひいては排気ガスターボチャージャーの全体も格段に長寿命化されるものである。
【0016】
特に、前記係止部材は、蓄えた予荷重により前記引張力を発生させるように構成するとよく、それによって更に簡明で低コストの構成とすることができる。
【0017】
本発明に係る作動装置の特に有利な他の実施形態によれば、前記係止部材はクリップ型の部材として構成されている。即ち、前記係止部材は、互いに対向するように形成された2つの係止片部分である第1係止片部分及び第2係止片部分を備えており、それらが第3係止片部分を介して接続されることで弾性変形可能な例えばU字形の折返し型板バネとして構成されている。この折返し型板バネは、装着状態にあるときに押圧力を作用させるものであり、その押圧力は、前記第1係止片部分が前記連結部材の溝部に係合することで前記連結部材に支持され、前記第2係止片部分が前記第1作動リンク部材と前記第2作動リンク部材とのいずれか一方に支持されることにより、前記連結部材に引張力として作用している。この引張力によって、前記連結部材の当接フランジ部に作用する押圧力が発生し、その結果、前記第1作動リンク部材の傾きが抑制され、ひいては部材どうしが擦れ合うことによる摩耗が低減される。
【0018】
更なる利点として、例えば前記第1作動リンク部材の上面と、ピン形状の前記連結部材に形成されている前記溝部との間のスペースを、有効利用できることがある。この構成によれば、上で説明した第1作動リンク部材及び第2作動リンク部材を係止部材で包持する包持型の構成と比べて、係止部材の第1係止片部分及び第2係止片部分に必要とされる長さを顕著に短縮することができる。そのため、前記係止部材の幅寸法を小さくし、またその製作材料である板材の厚さを薄くして、上述した包持型の構成とした場合と同程度の大きさの力を作用させることができる。このことは、係止部材に必要とされるスペースを小さくするのに資するものであり、また、係止部材を製作するために要する材料を大幅に減らすことに資するものである。
【0019】
本発明に係る作動装置の更に他の実施形態によれば、前記連結部材の軸方向に延在するボス部が、前記係止部材の内法高さ寸法の略々全寸法に亘って前記連結部材を包持するように構成されている。互いに対向するように形成された前記係止部材の2つの係止片部分の間に、前記係止部材が装備状態にあるときに所定の内法高さ寸法を有するスペースが確保されている。このボス部によって、ピン形状の前記連結部材と、該連結部材に当接している前記第1作動リンク部材の穴の内壁面との間に発生する面圧が小さくなり、これによって摩耗が更に少なくなる。
【0020】
特に簡明で低コストの実施形態によれば、前記ボス部は前記第1作動リンク部材に一体的に形成されている。前記第1作動リンク部材に前記ボス部を一体的に形成するには塑性化工法を用いるとよく、例えば深絞り加工、パンチング加工、またはフロードリル加工などを用いるとよい。
【0021】
本発明の更なる利点、特徴、及び細部構成については、以下に示す好適な実施形態についての説明及び図面を参照することにより明らかとなる。以上の説明中で言及した様々な特徴及びそれら特徴の組合せ、及び、図面に関連した以下の説明中で言及し、及び/または、図面中に示す様々な特徴及びそれら特徴の組合せは、それら説明及び図面に示した通りの組合せで利用し得るばかりでなく、それとは異なる組合せで利用することもでき、また、個々の特徴を単独で利用することも可能なものであって、そのように特徴を利用した場合でも本発明の範囲から逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来の作動装置を備えた排気ガスターボチャージャーの斜視図である。
【
図2】本発明に係る排気ガスターボチャージャーのための作動装置の一部分を示した斜視図である。
【
図3】連結部材及び係止部材が装着された
図2に示した作動装置の第1作動リンク部材の斜視図である。
【
図4a】
図3に示した第1作動リンク部材の縦断面図である。
【
図4b】他の実施形態の第1作動リンク部材の縦断面図である。
【
図5a】本発明に係る作動装置の係止部材の平面図である。
【
図5b】
図5aに示した係止部材の切断線に沿った縦断面の輪郭形状を示した図である。
【
図5c】他の実施形態の係止部材の切断線に沿った縦断面の輪郭形状を示した図である。
【
図6】
図1及び
図2に示した各作動装置において動作中に連結部材に作用する圧力の圧力分布を示した模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る作動装置の枢動連結構造の断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る作動装置の枢動連結構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従来の排気ガスターボチャージャー2の作動装置1として、
図1に示したように構成されているものがある。排気ガスターボチャージャー2は、排気流路部4を有するタービン3を備えている。排気ガスターボチャージャー2の動作中には排気流路部4の中を気体が流れており、その気体は一般的には排気ガスである。また、その排気ガスは通常、エンジン5の燃焼生成物であり、
図1にはエンジン5の全体のうち排気マニホルド6の部分だけが示されている。
【0024】
排気ガスターボチャージャー2は、吸気流路部7を備えており、また、排気流路部4と吸気流路部7との間に位置する軸受構造部8を備えている。軸受構造部8の中には、不図示の回転体アセンブリが回転可能に収容されている。回転体アセンブリは不図示のコンプレッサ羽根車と不図示のタービン羽根車とを備えており、それら2つの羽根車は不図示のシャフトを介して一体回転するように互いに連結されている。コンプレッサ羽根車は、外気を吸入できるように、吸気流路部7の不図示の第1羽根車ケーシングの中に回転可能に収容されている。また、タービン羽根車は排気流路部4の不図示の第2羽根車ケーシングの中に回転可能に収容されている。排気ガスターボチャージャー2の動作中には、排気流路部4の中を流れる排気ガスがタービン羽根車に作用してタービン羽根車を駆動し、それによってタービン羽根車が回転運動を発生する。この回転運動がシャフトを介してコンプレッサ羽根車に伝達されるため、コンプレッサ羽根車はタービン羽根車の回転運動に合わせて回転運動する。コンプレッサ羽根車の回転運動により外気が吸入され、吸入された外気は吸気流路部7において圧縮される。
【0025】
排気ガスターボチャージャー2は、いわゆるウェイストゲート式チャージャーとして構成された過給器であって、排気ガスの全部または一部をタービン羽根車に流さずにバイパスするための装置9を備えており、この装置を以下の説明ではバイパス装置と呼ぶ。バイパス装置9は、排気流路部4の中に形成された不図示のバイパス流路を備えると共に、このバイパス流路を開閉するための
図1では不図示の弁体部材と、この弁体部材を作動させるための作動装置1とを備えている。尚、弁体部材の好適例はフラップ弁体であり、即ち、一般的にウェイストゲートフラップ、またはウェイストゲート弁体と呼ばれている弁体部材である。作動装置1はアクチュエータ装置10を備えており、このアクチュエータ装置10としては、多くの場合、いわゆるダイヤフラム型アクチュエータが用いられる。アクチュエータ装置10は、吸気流路部7から取り出される過給圧に応動し、弁体部材を介してバイパス通路を開閉する。電子的または電気的に動作するアクチュエータ装置10を用いてバイパス流路の開閉を行うようにしてもよい。換言すると、これは、タービン3の排気流路部4のバイパス流路の流路断面積を、弁体部材によって変化させることができることを意味している。
【0026】
本発明に係る作動装置1の実施形態の1つを
図2及び
図3に示した。この実施の形態に用いられているアクチュエータ装置10はダイヤフラム型アクチュエータである。作動装置1は、第1作動リンク部材11と第2作動リンク部材12とを備えており、第1作動リンク部材11には、弁体部材26が装備されている。第1作動リンク部材11と第2作動リンク部材12とは互いに枢動可能に連結されている。この実施の形態では、第1作動リンク部材11の第1端13に、バイパス流路を開閉するための弁体部材26が間接的に装備されている。第2作動リンク部材12は、第1作動リンク部材11の第2端14に連結されている。作動装置1の構成によっては、弁体部材26を第1作動リンク部材11に直接的に装備することもある。
【0027】
弁体部材26は、シャフト形状に形成されている第1作動リンク部材11に第3作動リンク部材27を介して連結されており、この第3作動リンク部材27は、適宜の支持手段によって排気流路部4に回転可能に支持されている。第3作動リンク部材27の回転運動はアクチュエータ装置10によってなされており、その際に、アクチュエータ装置10は、図示例ではピストンロッド形状に形成されている第2作動リンク部材12を駆動して、この第2作動リンク部材12を主に並進運動させる。この第2作動リンク部材12の運動が、第2作動リンク部材12と第1作動リンク部材11とを連結している枢動連結構造を介して第1作動リンク部材11に伝達されて、第1作動リンク部材11を運動させる。そしてこの第1作動リンク部材11の運動が、第1作動リンク部材11と第3作動リンク部材27とを連結している固定連結構造を介して第3作動リンク部材27に伝達される。
【0028】
第1作動リンク部材11と第2作動リンク部材12とを連結している枢動連結構造は、ピンの形状の連結部材15と係止部材16とを備えている。係止部材16は、この係止部材16によって発生される連結部材15の長手軸Aの軸方向両側へ向かう引張力を、枢動連結構造に作用させることができるように構成されている。係止部材16によって発生されるこの引張力は、連結部材15の長手軸Aの軸方向両側へ向かう力であるため、係止部材16の拡開力であるとも言える。
【0029】
連結部材15はピンまたはボルト形状に形成されているため長手軸Aを有し、連結部材15の軸方向の一方の端部の近傍にリング溝17が形成されており、それとは反対側の軸方向の他方の端部に当接フランジ部28が形成されている。リング溝17は、係止部材16の少なくとも一部分が係合するものであり、それによって好適な固定手段として機能するものである。
【0030】
図5aに示した係止部材16はクリップ型の部材として構成されており、図中の切断線18に沿ったこの係止部材16の断面形状はU字形を成している。より詳しくは、係止部材16は、第1係止片部分19と、この第1係止片部分19に対向している第2係止片部分20と、それら第1係止片部分19と第2係止片部分20とを接続している第3係止片部分21とを備えている。
【0031】
第3係止片部分21の形状は、中空円筒体をその長手軸に沿った切断面で切断した半円筒体の形状であり、その切断した半円筒体の長手方向に沿って延在する2つの切断縁の一方に第1係止片部分19が接続し、他方に第2係止片部分20が接続することで、第3係止片部分がそれらの中間部分を成している。係止部材16はバネ力を発揮できるように構成されている。理想的には、係止部材16は一体的に形成されたものとするのがよい。
【0032】
係止部材16は、連結部材15をその中に収容するための第1切欠凹部22が、第1係止片部分19の中央に形成されている。また、第2係止片部分20の中央にも、同様に第2切欠凹部23が形成されている。第2切欠凹部23は、その中に連結部材15を直接的または間接的に収容するための切欠凹部である。これら第1切欠凹部22及び第2切欠凹部23は、必ずしも第1係止片部分19及び第2係止片部分20の中央に形成せねばならないものではなく、対応する係止片部分19、20の中央からずれた非対称位置に形成してもよい。
【0033】
係止部材16の第1係止片部分19は、連結部材15に拡開力を作用させる上で好都合なように、少なくともその作用面(即ち連結部材15に力を作用させる面)が実質的に平面を成す形状とされている。また、別の言い方をするならば、第1係止片部分19の形状は、第1係止片部分19と第2係止片部分20との中間を延展する中心面24に対して略々平行に延展する平板形状とされている。
【0034】
第2係止片部分20は、クリップ力即ち係止力を発揮する上で好都合なように、中心面24に対して平行ではない湾曲部を有する形状とされている。
図5bに示した実施形態では、この湾曲部は第2係止片部分20の一部分にのみ形成されており、また、中心面24の方へ突出している。
【0035】
図5cに示した他の実施形態に係る係止部材16では、第2係止片部分20は全長Lに亘って湾曲した形状に形成されており、また、中心面24から見て陥凹している。
【0036】
ただし、湾曲部が中心面24の方へ突出しているかそれとも中心面24から見て陥凹しているかにかかわらず、また、湾曲部が第2係止片部分20の全長Lに亘って湾曲しているか否かにもかかわらず、第1作動リンク部材11と第2作動リンク部材12との連結状態を維持するために係止部材16を装着したならば、その係止部材16は、その全体が第1作動リンク部材11の一方の側に位置するようになる。
【0037】
連結状態を維持するためには、第1切欠凹部22によって第1係止片部分19を連結部材15のリング溝17に係合させる。また、係止部材16が
図2及び
図3に示した装着状態にあるときには、第2係止片部分20は第1作動リンク部材11と第1係止片部分19との間に位置している。
【0038】
作動装置1は、摩耗を少なくするために、連結部材15の長手軸の軸方向に延在するボス部25を備えている。このボス部25は、係止部材16の内法高さ寸法hの略々全寸法に亘って連結部材15を包持するように構成されている。尚、係止部材16の内法高さ寸法hとは、係止部材16が装着状態にあるときの、第1係止片部分19と第2係止片部分20との互いに対向する表面どうしの間の距離をいう。
【0039】
ボス部25は、
図4aに示したように、第1作動リンク部材11に一体的に形成されている。ただしこのボス部25を、
図4bに示したように、第1作動リンク部材11とは別体に形成するようにしてもよい。
図4bに示した構成では、ボス部25は、第1作動リンク部材11を完全に貫通して延在するブッシュとして形成されている。このブッシュ25は適宜の固定手段によって第1作動リンク部材11に固定される。その固定手段として、例えばカシメ加工などを用いてもよく、またその固定のために、ブッシュ25にフランジ部を形成してもよい。尚、ブッシュ25の全長寸法は、第1作動リンク部材11の材料である板材の厚さ寸法より大きなものとされる。
【0040】
更に別の実施形態では、図には示さないが、ボス部25が係止部材16に一体的に形成され、そのボス部25が第2係止片部分20の第2切欠凹部23の中に収容されて第2係止片部分20に固定されている。いずれの構成においても、係止部材16が発揮する拡開力は、連結部材15の円筒軸部分に、即ち、第1作動リンク部材11の第2端14に位置するボス部を貫通して延在している円筒軸部分に、引張力を作用させ、またそれと同時に、第1作動リンク部材11の第2端14の下面を押付けることによって、この第2端14の下面と連結部材15の当接フランジ部28との間に作用する押圧力を発生させる。
【0041】
係止部材16は、連結部材15の軸方向の範囲Iに亘って略々一定の面圧を発生させるように構成されている。この連結部材15の軸方向の範囲Iは、係止部材16の内法高さ寸法hに第2係止片部分20の厚さ寸法Dを加えたものに対応している。
【0042】
図6は、排気ガスターボチャージャー1の動作中に連結部材15と係止部材16との当接面における面圧の圧力分布を示した模式図である。図の左半分はボス部が存在しない場合の連結部材15と係止部材16との当接面における面圧の圧力分布を示し、反対側の図の右半分は連結部材15と係止部材16及びボス部25との当接面における面圧の圧力分布を示している。係止部材16にボス部25が連結されているために、軸方向の範囲Iに亘って面圧が顕著に低減されており、面圧のピーク値も強く抑制されている。
【0043】
図7及び
図8に他の2通りの実施形態を示した。どちらの実施形態でも、当接フランジ部28が第1作動リンク部材11と第2作動リンク部材12との間に位置しているが、第1の実施形態では第1作動リンク部材11が係止部材16と当接フランジ部28との間に位置しているのに対して、第2の実施形態では係止部材16が第1作動リンク部材11と当接フランジ部28との間に装着されている。また、第2の実施形態には、連結状態を維持するために、係止座金29として形成された更なる係止部材が装備されている。