【文献】
辻良夫,メガソーラ用制御システム「メインサイトコントローラ」,技術総合誌OHM,日本,株式会社オーム社,2012年10月12日,第99巻第10号,第52-53ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るPVシステム10の構成を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0012】
太陽光発電(PV)システム10は、メインサイトコントローラ(MSC)1、複数のPVモジュール2、複数のパワーコンディショナ(PCS)3、複数の連系トランス4、主変圧器5、及び電力量計6を備える。PVシステム10は、電力系統7と連系する。
【0013】
PVモジュール2は、太陽光により発電する複数の太陽電池を相互接続した発電器である。PVモジュール2は、発電した電力(直流電力)をPCS3に出力する。PVモジュール2は、PCS3の定格容量より多めの発電容量を備える。例えば、PVモジュール2は、PCS3の定格容量の120%から130%の容量を定格容量として備える。なお、ここでは、PCS3の定格容量は、予め決められた容量であれば、どのような容量でもよい。例えば、ハードウェアの仕様により決定される容量でもよいし、電力系統7の管理者等から要求されるPVシステム10の供給容量(逆潮流容量)を各PCS3で割り振った容量でもよいし、その他の方法で決められた容量でもよい。
【0014】
PCS3は、それぞれのPVモジュール2に設けられている。PCS3は、PVモジュール2から供給される直流電力を三相交流電力系統7と同期する交流電力に変換するインバータである。PCS3は、連系トランス4を介して、交流電力を主変圧器5に出力する。PCS3は、通常時は、PVモジュール2から出力される電力の最大電力点の電圧(最大電力点電圧)を追従する最大電力点追従(MPPT, maximum power point tracking)制御により、電力変換を行う。PVモジュール2が予め決められたPCS3の定格容量を超える電力を発電した場合、PCS3は、MPPT制御を行わずに、出力を定格容量以下にするように制限する制御を行う。
【0015】
連系トランス4は、それぞれのPCS3に設けられている。全ての連系トランス4の出力側は、主変圧器5に接続されている。主変圧器5の出力側は、電力系統7と接続されている。主変圧器5から出力される電力がPVシステム10の出力であるサイト出力電力(プラント出力電力)PLWとなる。
【0016】
電力量計6は、サイト出力電力PLWを計測する機器である。電力量計6は、計測したサイト出力電力PLWをMSC1に出力する。
【0017】
MSC1は、PVシステム10全体を制御する制御装置である。PVシステム10内のPCS3の集中監視をし、PVシステム10の発電制御を行う。MSC1は、全てのPCS3と相互にデータを送受信するネットワークNTで接続されている。MSC1は、電力量計6により検出されたサイト出力電力PLW、電力系統7の管理者から受信する系統情報Dps、及び各PCS3から受信する情報に基づいて、PVシステム10を監視及び制御する。系統情報Dpsは、電力会社のシステム又は地域の電力需給を管理する配電会社のエネルギーマネージメントシステム(EMS, energy management system)などから受信する。
【0018】
図2は、本実施形態に係るMSC1の構成を示す構成図である。
【0019】
MSC1は、データ取得部11、PCS制御部12、及びPCS指令部13を備える。
【0020】
データ取得部11は、MSC1による制御に必要な情報を受信する。データ取得部11は、電力量計6により計測されたサイト出力電力PLWを受信し、電力系統7の管理者から系統情報Dpsを受信し、各PCS3からPVモジュール2の発電電力などの必要なデータを受信する。データ取得部11は、受信した情報に基づいて、PCS制御部12に必要なデータを出力する。
【0021】
PCS制御部12は、データ取得部11から受信したデータに基づいて、各PCS3を制御するための演算処理をし、サイト出力電力PLWを制御するための演算処理をする。ここで、PCS制御部12で扱う電力(制御対象とする電力)は、特に区別しない限り、有効電力でもよいし、無効電力でもよいし、これら両方を含む電力でもよい。PCS制御部12は、制御結果に基づいて、各PCS3を制御するためのデータをPCS指令部13に出力する。
【0022】
PCS指令部13は、PCS制御部12から受信したデータに基づいて、各PCS3を制御するための指令を各PCS3に出力する。
【0023】
次に、PCS制御部12について詳細に説明する。
【0024】
図3は、本実施形態に係るPCS制御部12の動作を示すフローチャートである。
【0025】
PCS制御部12は、サイト電力制限制御部120及びPCS電力制限制御部123を備える。
【0026】
サイト電力制限制御部120は、サイト出力電力PLWがサイト上限設定値を超えないようにし、サイト出力電力PLWの変動が許容変動幅(単位時間当たりに許容する最大の電力変動幅)を超えないように制御する。サイト上限設定値及び許容変動幅は、電力系統7の管理者が要求する値である。サイト上限設定値は、電力系統7への逆潮流量を予め決められた値以下に制限するための値である。許容変動幅は、電力系統7へ逆潮流する電力変動を制限するための値である。サイト上限設定値及び許容変動幅は、電力系統7の管理者から受信する系統情報Dpsなどに含まれる。
【0027】
サイト電力制限制御部120は、サイト上限値演算部121及びサイト上限指令値演算部122を備える。
【0028】
サイト上限値演算部121は、サイト上限設定値及び許容変動幅に基づいて、サイト上限値を演算する(
図3のステップS101)。サイト上限値は、サイト出力電力PLWの変動が許容変動幅を超えない範囲で、サイト出力電力PLWを最終的にサイト上限設定値まで出力することができるようにするためのサイト出力電力PLWの上限値である。サイト上限値演算部121は、演算したサイト上限値をサイト上限指令値演算部122に出力する。
【0029】
ここで、サイト上限値の決定方法について説明する。
【0030】
図4は、サイト上限設定値Suがサイト上限値Su0よりも高い場合のサイト上限値Su0の第1の推移を示すグラフ図である。例えば、PVシステム10の運用中に、サイト上限設定値Suを高くする変更がなされた場合の状態である。
【0031】
仮に、サイト上限値Su0をサイト上限設定値Suと同じ値に急激に(一気に)変更をすると、サイト出力電力PLWの変動が許容変動幅を超える可能性がある。そこで、サイト上限値演算部121は、許容変動幅の範囲内で、サイト上限設定値Suに徐々に近づけるようにサイト上限値Su0を変更(更新)する。ここでは、現在のサイト出力電力PLWとは関係なく、サイト上限値Su0を変更する。
【0032】
図5は、サイト上限設定値Suがサイト上限値Su0よりも低く、かつ現在のサイト出力電力PLWがサイト上限値Su0よりも低い場合のサイト上限値Su0の第2の推移を示すグラフ図である。例えば、天候が悪く、PVシステム10が本来の発電能力を十分に発揮していない状態で、サイト上限設定値Suを低くする変更がなされた場合の状態である。
【0033】
この場合は、サイト上限値Su0をサイト上限設定値Suと同じ値にしても、サイト出力電力PLWの出力は、サイト上限値Su0で制限されない。従って、サイト上限値演算部121は、サイト上限値Su0をサイト上限設定値Suに一気に変更する。
【0034】
図6は、サイト上限設定値Suがサイト上限値Su0よりも低く、かつ現在のサイト出力電力PLWがサイト上限設定値Suよりも高い場合のサイト上限値Su0の第3の推移を示すグラフ図である。例えば、天候が良く、PVシステム10が発電能力を十分に発揮している状態で、サイト上限設定値Suを低くする変更がなされた場合の状態である。
【0035】
この場合は、サイト上限値Su0をサイト上限設定値Suと同じ値にすると、サイト出力電力PLWがサイト上限値Su0で制限される。このため、サイト上限値Su0をサイト上限設定値Suに一気に変更すると、これに伴って、サイト出力電力PLWがサイト上限値Su0(即ち、上限設定値Su)まで一気に下がることになり、サイト出力電力PLWの変動が許容変動幅を超える可能性がある。そこで、1段階目では、サイト上限値演算部121は、サイト上限値Su0を現在のサイト出力電力PLWまで一気に下げる。次に、2段階目では、サイト上限値演算部121は、許容変動幅の範囲内で、サイト上限設定値Suに徐々に近づけるようにサイト上限値Su0を変更(更新)する。
【0036】
サイト上限指令値演算部122は、サイト上限値演算部121により演算されたサイト上限値とサイト出力電力PLWとの差分に基づいて、サイト上限指令値を演算する(
図3のステップS102)。サイト上限指令値演算部122は、演算したサイト上限指令値をPCS電力制限制御部123に出力する。
【0037】
次に、サイト上限指令値を演算する方法の具体的な一例を説明する。
【0038】
サイト上限指令値演算部122は、次式を用いて、サイト上限指令値を演算する。
【0039】
サイト上限指令値=現在のサイト出力電力PLW+修正差分 …式(1)
修正差分=Kp×(今回の差分−前回の差分+fc×今回の差分/Ti) …式(2)
差分=サイト上限値−現在のサイト出力電力PLW …式(3)
ここで、Kpは比例定数(ゲイン)、fcはMSC1の制御周波数、Tiは積分定数をそれぞれ表している。
【0040】
式(2)は、比例積分(PI)制御 (proportional-plus-integral control)による演算式を示しているが、比例積分微分(PID)制御(proportional-plus-integral-plus-derivative control)による演算式を用いて、サイト上限指令値を求めてもよいし、その他の制御方式により、サイト上限指令値を求めてもよい。
【0041】
PCS電力制限制御部123は、サイト上限指令値演算部122により演算されたサイト上限指令値に基づいて、各PCS3を制御するための演算処理をする。PCS電力制限制御部123は、制御結果に基づいて、各PCS3を制御するためのデータをPCS指令部13に出力する。
【0042】
次に、PCS電力制限制御部123による演算処理について説明する。
【0043】
PCS電力制限制御部123は、次式により、サイト上限指令値から各PCS3のPCS上限目標値を演算する(
図3のステップS103)。PCS上限目標値は、サイト上限指令値をMSC1の管理下にあるPCS(MSC管理下PCS)3で、各PCSの出力容量に応じて割り振った値である。MSC管理下PCS3とは、MSC1が制御できている状態のPCS3である。また、MSC管理外PCSとは、MSC1が制御できていない状態のPCS3である。
【0044】
各PCS上限目標値=(サイト上限指令値−MSC管理外PCSの出力電力の総和)×各PCS最大電力/各PCS最大電力の総和 …式(4)
ここで、PCS最大電力は、PCS3の定格容量に関係なく、出力することができる最大の電力である。
【0045】
PCS電力制限制御部123は、各PCS上限目標値に基づいて、各PCS上限指令値を演算する(
図3のステップS104)。PCS上限指令値は、PCS3の出力電力の上限を直接的に制限する指令値である。次に、PCS上限指令値の決定方法について説明する。
【0046】
PCS上限目標値がそのPCS3の定格容量以下の場合は、PCS電力制限制御部123は、PCS上限目標値をそのままPCS上限指令値に決定する。PCS上限目標値がそのPCS3の定格容量を超えている場合は、PCS電力制限制御部123は、予め決められた一定条件を満たす場合に、そのPCS上限目標値をPCS上限指令値に決定する。一定条件を満たさない場合は、PCS電力制限制御部123は、そのPCS3の定格容量をPCS上限指令値に決定する。この場合は、PCS電力制限制御部123は、他のPCS上限指令値を高くすることなどにより、サイト出力電力PLWが低くならないように、各PCS上限指令値間で調整をする。
【0047】
例えば、一定条件は、他のPCS上限指令値で、PCS3の定格容量よりも低くかつPCS3の出力電力がほぼそのPCS上限指令値と同じであるものが1つもない場合である。この一定条件は、他のPCS3で出力電力が定格容量未満で、PCS上限指令値によりその出力電力が制限されている可能性のあるものが1つもないことを表している。なお、その他に、一定条件は、少なくとも1つのPCS3で定格容量未満の電力しか出力できない状態が示唆されるような条件又はそれ以外の条件のどのような条件にしてもよい。
【0048】
PCS電力制限制御部123は、次のようにして、PCS上限指令値を更新する。
【0049】
まず、PCS電力制限制御部123は、次式により、制御時間当たりのPCS電力変換幅を演算する。制御時間当たりのPCS電力変換幅は、制御時間当たりにPCS3の出力電力を変化させることのできる電力幅である。
【0050】
制御時間当たりのPCS電力変換幅=制御時間当たりのサイト電力変換幅/MSC管理下PCSの数 …式(5)
ここで、制御時間当たりのサイト電力変換幅は、制御時間当たりにサイト出力電力PLWを変化させることのできる電力幅である。
【0051】
PCS上限指令値を引き上げる場合(
図3のステップS105のyes)、PCS電力制限制御部123は、現在のPCS上限指令値にPCS電力変換幅を加算する(
図3のステップS106)。PCS上限指令値を引き下げる場合(
図3のステップS107のyes)、PCS電力制限制御部123は、現在のPCS上限指令値にPCS電力変換幅を減算する(
図3のステップS108)。
【0052】
次に、PCS電力制限制御部123による各PCS上限指令値間の調整について説明する。
【0053】
サイト出力電力PLWがサイト上限設定値とほぼ等しい場合(
図3のステップS109のYes)、PCS電力制限制御部123は、各PCS上限指令値間の調整を行う。サイト出力電力PLWがサイト上限設定値とほぼ等しい場合とは、電力系統7の管理者の要求通りに、PVシステム10からサイト出力電力PLWが出力されている状態である。
【0054】
図7は、PCS電力制限制御部123の調整による各PCS上限指令値Su1,Su2,Su3の推移を示すグラフ図である。ここでは、説明の便宜上、各PCS3の定格容量は全て同じものとする。初期状態では、PCS上限指令値Su1は、定格容量を大きく超えており、PCS上限指令値Su2は、ほぼ定格容量であり、PCS上限指令値Su3は、定格容量を大きく下回っているものとする。
【0055】
PCS電力制限制御部123は、PCS3の定格容量から乖離しているPCS上限指令値Su1〜Su3が複数あるか判断する(
図3のステップS110)。このようなPCS上限指令値Su1〜Su3が複数無ければ、調整できないためである。
図7では、PCS上限指令値Su1とPCS上限指令値Su3が調整対象となる。
【0056】
PCS電力制限制御部123は、サイト出力電力PLWがサイト上限設定値とほぼ同じである状態を保持したまま、PCS上限指令値Su1とPCS上限指令値Su3をそれぞれがPCSの定格容量に近づくように調整する(
図3のステップS111)。このとき、2つのPCS上限指令値Su1,Su3の変化幅は、式(5)により求めた制御時間当たりのPCS電力変換幅である。即ち、
図7では、PCS電力変換幅を傾きとして、2つのPCS上限指令値Su1,Su3を示すグラフが定格容量に徐々に近づく。これにより、特定のPCS3に過度の負担が掛からないようにする。
【0057】
その他に、PCS電力制限制御部123は、各PCS上限指令値を必要に応じて変更する。
図8を参照して、PCS電力制限制御部123によるPCS上限指令値Su4の修正方法について説明する。
【0058】
PCSの出力電力Pp1がPCS上限指令値Su4を大きく下回っている場合、PCS電力制限制御部123は、PCS上限指令値Su4を現在のPCSの出力電力Pp1に予め設定された電力α分を加算した値に下げるように変更する。このような変更をしない場合、PCS電力制限制御部123は、PCS上限指令値Su4をPCS上限目標値Sutに追従するように上昇させることになる。これは、PVモジュール2による発電量の増加が期待できないにも関わらず、PCS上限指令値Su4を上昇させるものである。従って、このような場合は、PCS電力制限制御部123は、PCS上限指令値Su4を下げることで、
図3のステップS111で説明したように、他のPCS上限指令値を上げるように調整をする。
【0059】
図9は、本実施形態に係るMSC1によるPVシステム10のサイト出力電力PLWを示すグラフ図である。サイト出力電力PLW1は、MSC1による制御がされたものを示している。サイト出力電力PLW2は、MSC1による制御がされていないものを示している。
【0060】
各PCS3の出力電力は、天候などにより、変動にばらつきがあるが、これらのPCS3から出力された電力の合計である2つのサイト出力電力PLW2は、共にある程度安定したものになる。さらに、サイト出力電力PLW2は、MSC1による制御により、サイト出力電力PLW2の低い部分に、電力が補填された波形になる。即ち、MSC1による制御により、PVシステム10のサイト出力電力PLWは、電力系統7の管理者が要求するサイト上限設定値に近い値でより安定化する。
【0061】
本実施形態によれば、通常時は、全てのPCS3は、定格容量の範囲内で出力を行い、一部のPVモジュール2の発電量がPCS3の定格容量よりも減少した場合、他の余力のあるPVモジュール2がPCS3の定格容量を超える発電をすることで、PVシステム10のサイト出力電力PLWを電力系統7の管理者が要求通りに、かつ安定して電力系統7に供給(逆潮流)することができる。
【0062】
これにより、一部のPVモジュール2が雲の陰に入っていたり、一部のPVモジュール2が劣化により発電量が減少したりする場合でも、PVシステム10は、これらによる影響を少なくした安定した電力を出力することができる。
【0063】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係るPVシステム10Aの構成を示す構成図である。
【0064】
PVシステム10Aは、
図1に示す第1の実施形態に係るPVシステム10において、蓄電池8、PCS3A、及び連系トランス4を加え、MSC1をMSC1Aに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態に係るPVシステム10と同様である。
【0065】
蓄電池8は、PCS3Aの動作により、他のPCS3から出力された電力で充電され、放電することで、PVシステム10からサイト出力電力PLWとして出力される。PCS3Aは、他のPCS3と同様に、連系トランス4を介して出力側が主変圧器5と接続されている。
【0066】
図11は、本実施形態に係るMSC1Aの構成を示す構成図である。
【0067】
MSC1Aは、
図2に示す第1の実施形態に係るMSC1において、蓄電池制御部14及び蓄電池指令部15を加え、PCS制御部12をPCS制御部12Aに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態に係るMSC1と同様である。PCS制御部12Aは、蓄電池制御部14とのデータの送受信により、互いの制御動作に応じて、各PCS3への指令内容を修正する。その他の点は、第1の実施形態に係るPCS制御部12と同様である。
【0068】
蓄電池制御部14は、データ取得部11から受信したデータに基づいて、蓄電池8の充放電を制御するための演算処理をする。蓄電池制御部14は、制御結果に基づいて、PCS3Aを制御するためのデータを蓄電池指令部15に出力する。
【0069】
蓄電池指令部15は、蓄電池制御部14から受信したデータに基づいて、蓄電池8の充放電を制御するための指令をPCS3Aに出力する。
【0070】
図12は、本実施形態に係る蓄電池制御部14の動作を示すフローチャートである。ここで、本フローチャートで用いる用語を説明する。
【0071】
tn:現在の時刻、tn−1:前回の時刻、Δt:現在と前回の時間差、SOC:蓄電池の蓄電量、SOCF:満充電量、SOCH:PLW>PLWH時の充電目標値、SOCL:PLW<PLWL時の放電目標値、SOCLL:出力電力の下げ強制による充電を開始する充電量設定値、PLWH:補助充電を開始する出力電力設定値、PLWL:補助放電を開始する出力電力設定値、PLW:サイト出力電力、PVW:PV−PCS出力電力、CH:蓄電池充放電電力、WU:電力上昇速度設置値(ΔW/Δt)、WD:電力降下速度設定値(ΔW/Δt)、WU1:サイト出力電力上昇速度許容値、WD1:サイト出力電力降下速度許容値、WU2:PLW>PLWHかつSOC<SOCH時に補助充電するための電力上昇速度設定値、WD2:PLW>PLWHかつSOC<SOCH時に補助充電するための電力降下速度設定値、WU3:PLW<PLWLかつSOC>SOCL時に補助放電するための電力上昇速度設定値、WD3:PLW<PLWLかつSOC>SOCL時に補助放電するための電力降下速度設定値。なお、現在の値を示す場合は(tn)を、前回の値を示す場合は(tn−1)を添え字として各用語に付すものとする。
【0072】
蓄電池8が満充電の状態の場合(
図12のステップS203のyes)、これ以上充電できないため、PVモジュール2が電力許容値を超過して発電すると蓄電池8で超過分を吸収できない。このため、蓄電池制御部14は、各PCS3に許容値となる電力値で定電力運転する指令を出力する(
図12のステップS204のyes、ステップS205)。このとき、電力許容値を超過しない範囲で、蓄電池制御部14は、各PCS3にMPPT制御による運転をさせる指令を出力する(
図12のステップS204のNo、ステップS206)。
【0073】
蓄電池8の蓄電量が低く、PVモジュール2の発電電力が急激に減少しかつ継続すると、サイト出力電力PLWを降下速度許容値内でPVモジュール2の発電電力まで降下させる前に、蓄電池8の蓄電量が空になる恐れがある。このため、蓄電池制御部14は、蓄電池8の蓄電量が設定値SOCHを下回り、サイト出力電力PLWが設定値PLWHを超過したら、サイト出力電力PLWの上昇値を抑制し、抑制した分の電力で蓄電池8を目標値SOCHまで充電する(
図12のステップS207のyes、ステップS208)。
【0074】
蓄電池8の蓄電量が高く、PVモジュール2の発電量が上昇すると、すぐに満充電に到達し、PCS3をMPPT制御運転から定電力運転に移行させ、PVモジュール2の発電を抑制することになり、発電の機会を逸する恐れがある。このため、蓄電池制御部14は、蓄電池8の蓄電量が設定値SOCLを超え、サイト出力電力PLWが設定値PLWLを下回ったら、サイト出力電力PLWの降下値を抑制し、抑制した分の電力を補うように、蓄電池8を目標値SOCLまで放電する(
図12のステップS209のyes、ステップS210)。
【0075】
蓄電池制御部14は、蓄電量が設定値SOCLLを下回ったら、サイト出力電力PLWを降下速度許容値内で降下させ、その分の電力で蓄電池8を充電する(
図12のステップS211のYes、ステップS215)。これにより、蓄電池制御部14は、蓄電池8の蓄電量が低く、早急な充電が必要な状態のときに対応する。
【0076】
蓄電池制御部14は、サイト出力電力PLWの上昇を抑制し、抑制した差分の電力を蓄電池8に充電する(
図12のステップS212のYes、ステップS215)。これにより、蓄電池制御部14は、PVモジュール2の発電上昇速度が設定値WUを超過したときに対応する。
【0077】
蓄電池制御部14は、サイト出力電力PLWの降下を抑制し、抑制した差分の電力を蓄電池8から放電して補う(
図12のステップS214のYes、ステップS213)。これにより、蓄電池制御部14は、PVモジュール2の発電降下速度が設定値WDを下回ったときに対応する。
【0078】
PVモジュール2の発電電力の変動が上昇速度許容値と降下速度許容値の両方の範囲以内にある場合、蓄電池制御部14は、蓄電池8の充放電をせずに、PVモジュール2の発電電力を全てサイト出力電力PLWにする(
図12のステップS214のNo、ステップS216)。
【0079】
次に、蓄電池制御部14による制御の効果を説明するために、蓄電池8を簡易的に制御した場合の効果について説明する。
【0080】
図13は、蓄電池8の簡易的な制御によるサイト出力電力PLWの1日の変動を示すグラフ図である。点線は、蓄電池8により電力が補償された部分を示している。
図14は、簡易的な制御による蓄電池8の充放電量の変動を示すグラフ図である。
図15は、簡易的な制御による蓄電池8の蓄電量(SOC, State of Charge)の変動を示すグラフ図である。
図13、
図14及び
図15は、同日の同時刻の状態を示している。
【0081】
PVシステム10Aの発電電力は、
図13に示すように晴れた日は日射が多い昼にピークとなる曲線となる。雲の影等で日射が変化し、発電量が急激に変化するのを蓄電池8の充放電で抑制するには、
図14に示すように、発電電力の低下時に蓄電池8から放電し、発電電力の上昇時に蓄電池8に充電することになる。これにより、
図15に示すように、蓄電池8の蓄電量は、満充電に近い状態かゼロに近い状態のいずれかになる状態が大部分を占める。
【0082】
しかし、蓄電池8を満充電状態にしておくと、サイト出力電力PLWの上昇時に充電ができず、蓄電池8の充電によるサイト出力電力PLWの上昇変動を抑制できなくなる。一方、蓄電池8をゼロに近い状態にしておくと、サイト出力電力PLWの下降時に放電ができず、蓄電池8の放電によるサイト出力電力PLWの下降変動を抑制できなくなる。なお、蓄電池8の容量を増加させることで、これらの問題に対応することも考えられるが、蓄電池8の容量の増加は、PVシステム10A全体の費用コストの増大となる。
【0083】
次に、蓄電池制御部14による制御の効果について説明する。
【0084】
図16は、蓄電池制御部14による蓄電池8の制御によるサイト出力電力PLWの1日の変動を示すグラフ図である。点線は、蓄電池8により電力が補償された部分を示している。一点鎖線は、蓄電池8によるピークカットがされた部分を示している。
【0085】
図17は、蓄電池制御部14の制御による蓄電池8の充放電量の変動を示すグラフ図である。
図18は、蓄電池制御部14の制御による蓄電池8の蓄電量の変動を示すグラフ図である。
図16、
図17及び
図18は、同日の同時刻の状態を示している。
【0086】
図16及び
図17に示すように、蓄電池8の充電をサイト出力電力PLWが設定値を超えた後に開始する。充電によりサイト出力電力PLWのピークが抑制される。その後に雲の影等の影響で発電電力の急激な降下が発生しても、ピーク値が低い分、サイト出力電力PLWが下降する変動幅が小さくなるため、変動の抑制に必要な蓄電池8の容量が少なくてよい。
【0087】
図19は、蓄電池制御部14による蓄電池8の制御によるサイト出力電力PLWの
図16から
図18に示す日とは別の1日の変動を示すグラフ図である。点線は、蓄電池8によるピークカットがされた部分を示している。一点鎖線は、PCS3をMPPT制御から定電力制御に切り替えることにより電力変動が抑制された部分を示している。
【0088】
蓄電池8が満充電となり、充電によるサイト出力電力PLWの上昇抑制が不可となった場合、蓄電池制御部14は、PCS3をMPPT制御から定電力制御に切り替える。蓄電池制御部14は、瞬時毎の設定電力指令値をPCS3に与えることで、蓄電池8の満充電時でも、急激な電力変動を抑制できる。
【0089】
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、蓄電池8を設けて、蓄電池8の充放電制御を行うことで、サイト出力電力PLWの変動をさらに抑制することができる。
【0090】
また、蓄電池制御部14により、サイト出力電力PLWの変動抑制をするように蓄電池8の充放電を制御することで、蓄電池8の容量を効果的に利用することができる。これにより、蓄電池8を簡易的に制御する場合と比較して、PVシステム10Aに設置する蓄電池8の容量を小さくすることができる。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。