(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163560
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】マイクロ流体細胞の捕捉チップ及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20170703BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20170703BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20170703BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/48 S
C12M3/00 Z
C12M1/00 A
C12M1/26
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-540988(P2015-540988)
(86)(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公表番号】特表2016-503496(P2016-503496A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】CN2012084603
(87)【国際公開番号】WO2014071642
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】201210442637.7
(32)【優先日】2012年11月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515332469
【氏名又は名称】武漢友芝友医療科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】劉 侃
(72)【発明者】
【氏名】汪 勝祥
(72)【発明者】
【氏名】張 南剛
(72)【発明者】
【氏名】周 鵬飛
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04790640(US,A)
【文献】
特開2010−227015(JP,A)
【文献】
特開2005−143598(JP,A)
【文献】
特表2012−520687(JP,A)
【文献】
特開2008−116211(JP,A)
【文献】
特表2002−516982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部硬質材料及び下部硬質材料を含み、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に、入口及び出口を有する溝が形成され、前記上部硬質材料及び下部硬質材料の少なくとも1つが透明材であるマイクロ流体細胞の捕捉チップにおいて、前記溝が入口から出口までの高さが高い点から低い点へと次第に過渡し楔状となり又は溝の一部の領域が楔状となり、前記溝の最低点が少なくとも1つの標的細胞のサイズに近似し又は未満であり、
前記溝の上下の底面に、ナノ粒子層や、ナノファイバ層、細胞と接触面との摩擦抵抗の増大のためのマイクロナノ構造が1層堆積され、
前記溝の入口において、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に厚さ50〜200μmの鋼板が塞がれ、前記溝の出口において、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に厚さ1〜50μmの鋼板が塞がれ、前記溝が前記2つの鋼板の間に形成されることを特徴とするマイクロ流体細胞の捕捉チップ。
【請求項2】
前記溝は、幅が0.05〜200mmであり、長さが1〜500mmである請求項1に記載のマイクロ流体細胞の捕捉チップ。
【請求項3】
前記ナノ粒子層又はナノファイバ層は、ナノTiO2、SiO2又はFe2O3である請求項1に記載のマイクロ流体細胞の捕捉チップ。
【請求項4】
前記上部硬質材料又は下部硬質材料の少なくとも1つの表面に免疫仕上げを行い、少なくとも1つの標的細胞の分子特異性を認識できる請求項1又は3に記載のマイクロ流体細胞の捕捉チップ。
【請求項5】
前記上部硬質材料及び下部硬質材料の何れも、ガラス又はアクリル材料である請求項1に記載のマイクロ流体細胞の捕捉チップ。
【請求項6】
上部硬質材料と下部硬質材料とを重ねる工程1と、
前記上部硬質材料と下部硬質材料が重なった一端に厚鋼板を塞いで締め具で括り付け、前記上部硬質材料と下部硬質材料が重なった他端に薄鋼板を塞いで締め具で括り付け、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に楔状溝を形成する工程2と、
前記上部硬質材料及び下部硬質材料の側辺をポリジメチルシロキサンで封止しベーキングして、ヒト液体のサンプルが前記上部硬質材料及び下部硬質材料の側辺から流れ出さないようにする工程3と、
更に、前記楔状溝の両端をポリジメチルシロキサンで封止してベーキングし、前記厚鋼板に貫通孔を設けて前記楔状溝の入口を形成し、前記薄鋼板に貫通孔を設けて前記楔状溝の出口を形成し、ヒト液体のサンプルが前記楔状溝の入口から流れ込んで、前記楔状溝の出口から流れ出すようにする工程4と、
を備え、
工程1において、前記上部硬質材料及び下部硬質材料の表面に、ナノ粒子層や、ナノファイバ層、細胞と接触面との摩擦力の増大に寄与するマイクロナノ構造が1層堆積され、
前記厚鋼板の厚さは50〜200μmであり、前記薄鋼板の厚さは1〜50μmであることを特徴とするマイクロ流体細胞の捕捉チップの製作方法。
【請求項7】
前記楔状構造の入口及び出口に、それぞれヒト液体のサンプルを通過させる孔針を挿す工程5を更に備える請求項6に記載の製作方法。
【請求項8】
前記溝は、幅が0.05〜200mmであり、長さが1〜500mmである請求項6に記載の製作方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子層又はナノファイバ層は、ナノTiO2、SiO2又はFe2O3である請求項6に記載の製作方法。
【請求項10】
前記上部硬質材料又は下部硬質材料の少なくとも1つの表面に免疫仕上げを行い、少なくとも1つの標的細胞の分子特異性を認識できる請求項6に記載の製作方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの表面に仕上げを行う工程としては、無水エタノールで4%の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン溶液を調合してチップの溝に満たし、常温で1時間反応させた後、無水エタノールで5分間洗浄する工程1と、ジメチルスルホキシドで蛋白質架橋剤の4−マレイミド酪酸−N−スクシンイミジルを1μmol/mLの溶液に調合してチップの溝に注入し、常温で45min反応させた後、無水エタノールで5分間洗浄する工程2と、リン酸塩緩衝液で50μg/mLのストレプトアビジン溶液を調合してチップの溝に注入して、4℃の冷蔵庫において一晩反応させた後でpH=7.2〜7.4のリン酸塩緩衝液で5分間洗浄する工程3と、上皮細胞接着分子溶液をチップの溝に注入し、常温で1〜2時間静置反応させた後、PBSで溝を5分間洗浄する工程4と、を含む請求項10に記載の製作方法。
【請求項12】
前記上部硬質材料及び下部硬質材料の何れも、ガラス又はアクリル材料である請求項6に記載の製作方法。
【請求項13】
請求項6乃至12のいずれか1項に記載の製作方法で製作されたマイクロ流体細胞の捕捉チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞捕捉ツール及びその調製方法に関し、特に、腫瘍診断、補助治療、及び生化学分析検討の有利なツールとして用いられる、循環腫瘍細胞を分離・濃縮・認識するマイクロ流体細胞の捕捉チップ及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、腫瘍診断は、一般的に、大量の病的状態に基づいて行われる。例えば、生検や直腸癌の指診のような方法としては、一般的に、侵入性分析をとるが、ある程度の外傷性を有するので、患者には好ましくない。
【0003】
また、例えば、血清学的パラメータ(PSA量)検出のような、末梢血中の分子バイオマーカーをとって検査することもあるが、その感度及び特異性の何れも好ましくないので、癌の診断・治療でよい効果を得ることは困難である。
【0004】
数多くの癌患者にとって、死亡の原因は、主に転移性腫瘍である。手術で患者の主要な腫瘍を切除した後、従来の検出手段では、適時な治療状況の反映、転移性腫瘍の同定、及び後の放射線治療・化学治療過程の指針作成が難しいため、患者が治療の最適時機を失い、無効な治療及び投薬計画を適時且つ効果的に調整できない。そのため、全ての転移性腫瘍をうまく治療できず、患者が最終的に死亡してしまう。臨床の角度から見れば、転移性腫瘍を癌が自然に進行したことによる最終的な結果と見なしてもよい。
【0005】
非外傷性過程で患者から腫瘍細胞サンプルを抽出するツールの開発が望まれている。
【0006】
循環腫瘍細胞(circulating tumor cells;CTCs)とは、極めて低いレベルで血液中に存在する生体固形癌腫瘍細胞である。循環腫瘍細胞の研究の発展につれて、これらの細胞の濃縮・同定が既に癌診断の1つの補助方法となっている。監督管理機構(例えば、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA))は、既に循環腫瘍細胞捕捉、同定システムに基づいたある臨床応用を許可した。
【0007】
体液中の循環腫瘍細胞を分離・濃縮し、腫瘍細胞を拡散させるために、このような細胞サイズ、表面分子発現等の特徴に基づく、いくつかの捕捉、濃縮方法(例えば、多孔質濾過膜、免疫磁気ビーズ濃縮法)が開発されている。
【0008】
従来の多孔質濾過膜は、(1)孔径が単一で、実際の臨床病者の細胞サイズの多様性に合わず、漏れる現象があり、(2)試薬の消費量が高く、後期の同定作業を行いにくく、(3)詰まり現象になりやすく、実験の結果に影響を与えてしまい、(4)専用濾過膜の調製プロセスが複雑で、コストが高いという欠点を有する。
【0009】
免疫的認識濃縮法としては、主に、磁気ビーズ濃縮及びチップ濃縮の2つがある。生物の複雑性と多様性により、体液中の腫瘍細胞では細胞特徴認識基が退化し、免疫的認識の効率が低下して、偽陰性又は偽陽性になる可能性がある。磁気ビーズ濃縮とチップ濃縮の何れも、細胞と免疫的認識基との接触確率が大きくなく、結合が弱いので、最後の検出及び診断状況に影響を及ぼす。それと同時に、このようなチップは、コストが高く、加工しにくい。そこで、既存の循環腫瘍細胞の分離・濃縮方法を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の解决しようとする技術問題は、既存技術の侵入によるサンプリング等の問題を解决した、ヒト液体のサンプルから希少な細胞を分離・濃縮可能なマイクロ流体細胞の捕捉チップを提出することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の技術問題を解决するための技術案は、上部硬質材料及び下部硬質材料を含み、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に、入口及び出口を有する溝が形成され、前記上部硬質材料及び下部硬質材料の少なくとも1つが透明材であるマイクロ流体細胞の捕捉チップにおいて、前記溝の入口から出口までの高さが高い点から低い点へと次第に過渡し楔状となり、又は溝の一部の領域が楔状となり、前記溝の最低点が少なくとも1つの標的細胞のサイズに近似し又は未満であるマイクロ流体細胞の捕捉チップを提供するものである。
【0012】
本発明のさらなる改善としては、前記溝は、幅が0.05〜200mmであり、長さが1〜500mmである。
【0013】
本発明のさらなる改善としては、前記溝の上下の底面に、ナノTiO
2、SiO
2又はFe
2O
3の等のナノ粒子層や、ナノファイバ層、細胞と接触面との摩擦抵抗の増大のためのマイクロナノ構造が1層堆積される。
【0014】
本発明のさらなる改善としては、前記上部硬質材料又は下部硬質材料の少なくとも1つの表面に免疫仕上げを行い、少なくとも1つの標的細胞の分子特異性を認識できる。
【0015】
本発明のさらなる改善としては、前記溝の入口において、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に厚さ50〜200μmの鋼板が塞がれ、前記溝の出口において、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に厚さ1〜50μmの鋼板が塞がれ、前記溝が前記2つの鋼板の間に形成される。
【0016】
本発明のさらなる改善としては、前記上部硬質材料及び下部硬質材料の何れも、ガラス又はアクリル材料である。
【0017】
本発明の技術問題を解决するための別の技術案は、
上部硬質材料と下部硬質材料とを重ねる工程1と、
前記上部硬質材料と下部硬質材料が重なった一端に厚鋼板を塞いで締め具で括り付け、前記上部硬質材料と下部硬質材料が重なった他端に薄鋼板を塞いで締め具で括り付け、前記上部硬質材料と下部硬質材料との間に楔状溝を形成する工程2と、
前記上部硬質材料及び下部硬質材料の側辺をポリジメチルシロキサンで封止しベーキングして、ヒト液体のサンプルが前記上部硬質材料及び下部硬質材料の側辺から流れ出さないようにする工程3と、
更に、前記楔状溝の両端をポリジメチルシロキサンで封止してベーキングし、厚鋼板に貫通孔を設けて前記楔状溝の入口を形成し、薄鋼板に貫通孔を設けて前記楔状溝の出口を形成し、ヒト液体のサンプルが前記楔状溝の入口から流れ込んで、前記楔状溝の出口から流れ出すようにする工程4と、を備えるマイクロ流体細胞の捕捉チップの製作方法を提供するものである。
【0018】
本発明の製作方法のさらなる改善としては、前記楔状構造の入口及び出口に、それぞれヒト液体のサンプルを通過させる孔針を挿す工程5を更に備える。
【0019】
本発明の製作方法のさらなる改善としては、厚鋼板の厚さは50〜200μmであり、薄鋼板の厚さは1〜50μmである。
【0020】
本発明の製作方法のさらなる改善としては、前記溝は、幅が0.005〜200mmであり、長さが1〜500mmである。
【0021】
本発明の製作方法のさらなる改善としては、工程1において、前記上部硬質材料及び下部硬質材料の表面に、ナノTiO
2、SiO
2又はFe
2O
3等のナノ粒子層や、ナノファイバ層、細胞と接触面との摩擦力の増大に寄与するマイクロナノ構造が1層堆積される。
【0022】
本発明の製作方法のさらなる改善としては、前記上部硬質材料又は下部硬質材料の少なくとも1つの表面に免疫仕上げを行い、少なくとも1つの標的細胞の分子特異性を認識できる。
【0023】
本発明の製作方法のさらなる改善としては、前記少なくとも1つの表面に仕上げを行う工程としては、無水エタノールで4%の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン溶液を調合してチップの溝に満たし、常温で1時間反応させた後、無水エタノールで5分間洗浄する工程1と、ジメチルスルホキシドで蛋白質架橋剤の4−マレイミド酪酸−N−スクシンイミジルを1μmol/mLの溶液に調合してチップの溝に注入し、常温で45min反応させた後、無水エタノールで5分間洗浄する工程2と、リン酸塩緩衝液で50μg/mLのストレプトアビジン溶液を調合してチップの溝に注入して、4℃の冷蔵庫において一晩反応させた後でpH=7.2〜7.4のリン酸塩緩衝液で5分間洗浄する工程3と、上皮細胞接着分子溶液をチップの溝に注入し、常温で1〜2時間静置反応させた後、PBSで溝を5分間洗浄する工程4と、を含む。
【0024】
本発明の製作方法のさらなる改善としては、前記上部硬質材料及び下部硬質材料の何れも、ガラス又はアクリル材料である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、非侵入式で患者からヒト液体のサンプルを得て、ヒト液体のサンプルを微小溝のチップの入口から注入し、微小溝の高さが楔状となるように分布しているので、標的細胞が溝を通過する場合に自動的な分離・濃縮が達成される。本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップは、構造が簡単で、製作しやすく、コストが低く、異なったサイズや特異性分子発現を有する細胞を迅速で効率よく分離・濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップの実施例の構造模式図である。
【
図2】本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップの縦断面を拡大した模式図である。
【
図3】本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップの細胞分離の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、技術案及びメリットをより明らかにするために、以下、添付図面及び実施例に沿って、本発明を更に詳しく説明する。ここで述べた具体的な実施例は、本発明を解釈するためのものだけであり、本発明を制限するためのものではないことは理解されるべきである。
【0028】
図1〜
図3に示すように、本発明の実施例では、マイクロ流体細胞200を捕捉するためのマイクロ流体細胞の捕捉チップ100を提供する。当該マイクロ流体細胞の捕捉チップ100は、上部透明ガラス10及び下部透明ガラス20を含み、当該上部透明ガラス10と下部透明ガラス20との間に、入口32及び出口34を有し、入口32から出口34までの高さが高い点から低い点へと次第に過渡し楔状となり又は溝の一部の領域が楔状となり、最低点が少なくとも1つの標的細胞のサイズに近似し又は未満である溝30が形成される。本実施例において、マイクロ流体細胞200は、循環腫瘍細胞である。本実施例において、本発明のこれらの透明ガラスに限定されず、例えば、アクリル材料のような透明の硬質材料によって取って代わられてもよく、また、上部透明ガラス及び下部透明ガラスも1つの透明の硬質材料及び1つの非透明の硬質材料によって取って代わられてもよく、つまり、両者の一方が透明の硬質材料であればよい。
【0029】
当該溝30は、幅が0.05〜200mmであり、長さが1〜500mmである。当該上部透明ガラス10又は下部透明ガラス20の少なくとも1つの表面に表面仕上げを行ってもよい。当該少なくとも1つの表面に表面仕上げを行う工程としては、無水エタノールで4%の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−Mercaptopropyl Trimethoxysilane;MPTMS)溶液を調合してチップの溝に満たし、常温で1時間反応させた後、無水エタノールで5分間洗浄する工程1と、ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide;DMSO)で蛋白質架橋剤の4−マレイミド酪酸−N−スクシンイミジル(4‐gamma-maleimidobutyric acid N-succinimidyl ester;GMBS)を1μmol/mLの溶液に調合してチップの溝に注入し、常温で45min反応させた後、無水エタノールで5分間洗浄する工程2と、リン酸塩緩衝液(Phosphate Buffered Saline;PBS)で50μg/mLのストレプトアビジン(streptavidin;SA)溶液を調合してチップの溝に注入し、そして4℃の冷蔵庫に置いて一晩反応させた後でPBS(リン酸塩緩衝液、pH=7.2〜7.4)溶液で5分間洗浄する工程3と、上皮細胞接着分子(Anti‐EpCAM)溶液をチップの溝に注入し、常温で1〜2時間静置反応させた後、PBSで溝を5分間洗浄する工程4と、を含む。表面仕上げされた後、少なくとも1つの標的細胞の分子特異性抗体を認識できる。当該溝30の入口32において、当該上部透明ガラス10と下部透明ガラス20との間に厚さ50〜200μmの鋼板40が塞がれ、当該溝30の出口34において、当該上部透明ガラス10と下部透明ガラス20との間に厚さ1〜50μmの鋼板40が塞がれ、当該溝が当該2つの鋼板40の間に形成される。
【0030】
本発明の実施例は、ヒトの有機液体サンプルから細胞を分離・濃縮可能なマイクロ流体細胞の捕捉チップを提供し、当該マイクロ流体細胞の捕捉チップ100内の溝30の高さが一定の規律で変化し、且つ溝30の上下の底面が特別に処理(つまり、当該溝の上下の底面のガラス表面に、厚さ5〜200nmの、TiO
2、SiO
2又はFe
2O
3等のナノフィルムや、ナノファイバ、細胞と接触面との摩擦力の増大に寄与するマイクロナノ構造が1層堆積)されることで、標的細胞の捕捉効率が向上する。本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップは、構造が簡単で、製作しやすく、コストが低く、異なったサイズや特異性分子発現を有する細胞を迅速で効率よく分離・濃縮することができる。
【0031】
本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップ100は、当該細胞を非手動的に分離・濃縮する。当該細胞は、液体の流れに基づいてマイクロ流体細胞の捕捉チップにおいて自動に分離・濃縮する。本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップは、少なくとも1種の追跡子で当該細胞をマーク・認識する。本発明は、非侵入式で患者からヒト液体のサンプルを得て、ヒト液体のサンプルをマイクロ流体細胞の捕捉チップ100の入口32から注入し、溝30の高さが楔状となるように分布するので、標的細胞が溝30を通過する際に自動的な分離・濃縮が達成される。
【0032】
本発明は、更に、
上下の2つの透明ガラス10、20を重ねる工程1と、
2つのガラスが重なった一端に厚さ50〜200μmの精密鋼板40を塞いで締め具で括り付け、2つのガラスが重なった他端に厚さ1〜50μmの精密鋼板を塞いで締め具で括り付け、2つのガラスの間に楔状溝30を形成する工程2と、
2つのガラスの側辺をポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane;PDMS)で封止して、加熱ステージにおいてベーキングし、ヒト液体のサンプルがガラスの側辺から流れ出さないようにする工程3と、
更に、当該楔状溝の両端をポリジメチルシロキサンで封止しベーキングし、両端に孔を抜けて、ヒト液体のサンプルが
図1に示す楔状溝30の入口32から流れ込んで出口34から流れ出すようにする工程4と、
図1に示す楔状溝30の入口32及び出口34のそれぞれにヒト液体のサンプルを通過させる孔針を挿す工程5と、
を備えるマイクロ流体細胞の捕捉チップの製作方法を提供する。これにより、当該マイクロ流体細胞の捕捉チップは、製作終了である。
【0033】
実験原理:
(1)
図1に示すように、本発明では、楔状溝の構造に設計し、2つのガラスの間に溝幅0.05〜200mm、溝長さW〜500mmの楔状溝を形成し、
(2)本発明の楔状溝の入口高さが50〜200μmで、出口高さが1〜50μmであり、ヒト液体のサンプルが入口を介して楔状溝に流れ込むと、流体空間の制限で、ヒト液体のサンプルに伴って流れ込んだ標的捕捉細胞が特定の位置で挟まれ、
(3)この実験の基本的な考え方は、検出される患者のヒト液体のサンプルが本発明の楔状マイクロ流体細胞の捕捉チップを通過し、最終に異なったサイズの標的細胞が溝を通過する際に自動的な分離・濃縮を達成するものである。
【0034】
実験工程:
(1)発明の製作方法によって、
図1に示す微小流動つきの楔状循環腫瘍細胞の捕捉チップを製作する。
(2)検出されるヒト液体のサンプルを上記チップの入口から注入し、チップの出口で標的細胞が分離したヒト液体のサンプルを収集する。
(3)続いて、入口でリン酸塩緩衝溶液(つまり、PBS溶液、pH=7.2〜7.4、NaCl 137mmol/L、KC1 2.7mmol/L、Na
2HPO
4 4.3mmol/L、KH
2PO
4 1.4mmol/L)を加えて洗浄する。
(4)続いて、入口で追跡標識物(例えば、DAPI又はHoechst染料のような細胞核染色用の蛍光色素)や免疫試薬を選択して加え、標的細胞を認識する。
(5)入口でPBSを更に加えて洗浄する。
(6)チップを顕微鏡に置いて捕捉した標的細胞を観察する。
【0035】
実験効果分析
(1)、
図2に示すように、それぞれ領域1、領域2、領域3、領域4の4つの観測点を選択し、標的細胞の上記チップでの分離・濃縮が見られる。
(2)、上記4つの領域の4つの観測点で観測した標的細胞の分布により、標的細胞の分離・濃縮は、標的細胞のサイズと楔状溝のサイズとの相互作用の結果であり、大サイズの細胞が出口から離れた箇所に濃縮され、小サイズの細胞が出口に近い箇所に濃縮されることが見られる。
(3)、本実験は、異なったサイズの標的細胞の分離、捕捉を達成でき、操作が簡単で、再現性が高い。
(4)、本実験装置に使用する楔状マイクロ流体細胞の捕捉チップは、構造が簡単で、製作しやすく、コストが低く、異なったサイズや特異性分子発現を有する細胞を迅速で効率よく分離・濃縮することができる。
【0036】
本発明によれば、非侵入式で患者からヒト液体のサンプルを得て、ヒト液体のサンプルを微小溝のチップの入口から注入する。微小溝の高さが楔状となるように分布しているので、標的細胞が溝を通過する際に、標的細胞の自動的な分離・濃縮が達成される。本発明のマイクロ流体細胞の捕捉チップは、構造が簡単で、製作しやすく、コストが低く、異なったサイズや特異性分子発現を有する細胞を迅速で効率よく分離・濃縮することができる。
【0037】
以上は、本発明の好ましい実施例だけであり、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神や原則で加えた如何なる修正や、同等な取替え及び改善等の何れも、本発明の保護範囲に含まれる。