(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[(メタ)アクリル系樹脂フィルム]
本発明の光学フィルムに用いられる(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂(以下MARと略すことがある)を含む。MARフィルムは、例えば、MARを主成分として含む樹脂成分を含有する成形材料を押出し成形にて成形して得ることができる。
【0014】
上記MARのガラス転移温度(Tg)は、115℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。上記MARフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が115℃以上であるMARを主成分として含むことにより、耐久性に優れたものとすることができる。また、上記MARのガラス転移温度(Tg)の上限値は特に制限するものではないが、成形性等の観点から、170℃以下であることが好ましい。
【0015】
上記MARとしては、従来から慣用されている任意の適切なMARを採用することができ、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体、(例えば、メタクリル酸メチルーメタクリル酸シクロヘキシル共重合耐、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。上記の中でも、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C
1−6アルキルが好ましく、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂がより好ましい。
【0016】
上記MARの具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高TgMARが挙げられる。
【0017】
また、上記MARは、耐熱性、透明性、機械的強度の点で優れることから、主鎖に環構造を有するMARであっても良い。主鎖に環構造を有するMARとしては、無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造を有するMAR(WO2007/26659号公報、WO2005/108438号公報)、無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造を有するMAR(特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報)、ラクトン環構造を有するMAR(特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報、特開2008−191426号公報)等が挙げられる。
【0018】
MARフィルム中の上記MARの含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。MARフィルム中の上記MARの含有量が50重量%未満の場合には、MARが本来有する高耐熱性、高透明性が十分に反映できないおそれがある。
【0019】
MARフィルムは、上記MAR以外に、他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩素化ビニル樹脂等のハロゲン化ビニル系重合体;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体等が挙げられる。
【0020】
MARフィルムにおける他の熱可塑性樹脂の含有割合は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜40重量%、さらに好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜20重量%である。
【0021】
MARフィルムは、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;位相差低減剤等が挙げられる。
【0022】
MARフィルムにおける添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜2重量%、さらに好ましくは0〜0.5重量%である。
【0023】
MARフィルムの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、MARと、その他の重合体や添加剤等を、任意の適切な混合方法で充分に混合し、予め熱可塑性樹脂組成物としてから、これをフィルム成形することができる。あるいは、MARと、その他の重合体や添加剤等を、それぞれ別々の溶液にしてから混合して均一な混合液とした後、フィルム成形してもよい。
【0024】
上記熱可塑性樹脂組成物を製造するには、例えば、オムニミキサー等、任意の適切な混合機で上記のフィルム原料をプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練する。この場合、押出混練に用いられる混練機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等、任意の適切な混合機を用いることができる。
【0025】
上記フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、任意の適切なフィルム成形法が挙げられる。これらのフィルム成形法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
【0026】
上記溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーター等が挙げられる。
【0027】
上記溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。成形温度は、好ましくは150〜350 ℃、より好ましくは200〜300 ℃である。
【0028】
上記Tダイ法でフィルム成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取り付け、当該Tダイによりフィルムを製膜した後、フィルムを巻取ることでロール状のフィルムを得ることができる。
【0029】
MARフィルムは、未延伸フィルムまたは延伸フィルムのいずれでもよい。延伸フィルムである場合は、1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸フィルムである場合は、同時2軸延伸フィルムまたは逐次2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸した場合は、機械的強度が向上し、フィルム性能が向上する。
【0030】
延伸温度は、フィルム原料である熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度近傍であることが好ましく、具体的には、好ましくは(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+100℃)、より好ましくは(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+80℃)の範囲内である。延伸温度が(ガラス転移温度−30℃)未満であると、充分な延伸倍率が得られないおそれがある。逆に、延伸温度が(ガラス転移温度+100℃)超えると、樹脂組成物の流動(フロー)が起こり、安定な延伸が行えないおそれがある。
【0031】
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍、より好ましくは1.3〜10倍である。延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸に伴う靭性の向上につながらないおそれがある。延伸倍率が25倍を超えると、延伸倍率を上げるだけの効果(靱性の向上)が認められないおそれがある。
【0032】
延伸速度は、一方向で、好ましくは10〜20,000%/min、より好ましく100〜10,000%/minである。延伸速度が10%/min未満であると、充分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるおそれがある。延伸速度が20,000%/minを超えると、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがある。
【0033】
MARフィルムは、その光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)等を行うことができる。熱処理の条件は、任意の適切な条件を採用し得る。
【0034】
MARフィルムの厚さは、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満であると、光学フィルムとしての十分な強度が得られなくなるおそれがある。厚さが200μmを超えると、透明性が低下し、光学フィルムとしての使用に適さなくなるおそれがある。
【0035】
MARフィルムの表面の濡れ張力は、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、さらに好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が少なくとも40mN/m以上とすることにより、MARフィルムと易接着層との接着強度がさらに向上する。表面の濡れ張力を調整するために、任意の適切な表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、コロナ放電処理、プラズマ処理である。
【0036】
[易接着層]
上記易接着層は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるウレタン樹脂と(メタ)アクリロニトリル系微粒子とを含むことを特徴とする。上記微粒子は、透明性に優れ、ヘイズを生じず、着色もないので、例えば、偏光子保護フィルムとして使用した場合、偏光子の光学特性に与える影響が小さいという利点を有する。
【0037】
一般に、易接着層の強度および易接着性は、微粒子を配合することにより低下する。しかしながら、本発明の易接着層は、ウレタン樹脂と(メタ)アクリロニトリル系微粒子とを含むことにより、易接着層の強度および易接着性を向上させることができる。この理由は明らかではないが、本発明者らが推察するに、(メタ)アクリロニトリルの電子求引性の官能基であるニトリル基とウレタン樹脂中のカルボニル基あるいはカルボキシル基との間に静電的な力が働くことにより易接着層の強度が向上し、さらには、当該ニトリル基と易接着層に隣接する層との間においても静電的な力が働き、易接着性が向上するものと考える。
【0038】
上記ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリオールとしては、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、任意の適切なポリオールを採用することができる。例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは単独、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記ウレタン樹脂は、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールから選ばれる1種、或いは2種以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるものであることが好ましい。上記のポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるウレタン樹脂は、極性が大きく、分子中にカルボニル基を多数有することから、より効果的に易接着層の強度及び易接着性を向上させることができる。また、これらの中でも、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるウレタン樹脂は、特に極性が大きいことから好ましい。
【0040】
上記ウレタン樹脂は、分子中にアニオン性官能基を有することが好ましい。アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール系水酸基等が挙げられる。アニオン性官能基を有するウレタン樹脂は、例えば、上記ポリオールと上記イソシアネートとに加え、鎖延長剤としてアニオン性官能基を有するジオール等を反応させることにより得られる。
【0041】
上記ウレタン樹脂は、分子中にアニオン性官能基としてカルボキシル基を有することが特に好ましい。カルボキシル基を有することにより、他の機能性フィルムとの密着性(特に、高温・高湿下における)に優れた光学フィルムを提供することできる。カルボキシル基を有するウレタン樹脂は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとに加え、遊離カルボキシル基を有する鎖延長剤を反応させることにより得られる。遊離カルボキシル基を有する鎖延長剤は、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸等が挙げられる。ジヒドロキシカルボン酸は、例えば、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)等のジアルキロールアルカン酸が挙げられる。これらは単独、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記ウレタン樹脂の数平均分子量は、好ましくは5000〜600000、さらに好ましくは10000〜400000である。上記ウレタン樹脂の酸価は、好ましくは10以上、さらに好ましくは10〜50、特に好ましくは20〜45である。酸価がこのような範囲内であることにより、他の機能性フィルムとの密着性に優れる。
【0043】
上記ウレタン樹脂の製造方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、上記各成分を一度に反応させるワンショット法、段階的に反応させる多段法が挙げられる。ウレタン樹脂がカルボキシル基を有する場合、多段法を用いるのが好ましい。多段法を用いることにより、カルボキシル基を容易に導入することができる。なお、上記ウレタン樹脂の製造に際し、任意の適切なウレタン反応触媒を用いることができる。
【0044】
上記(メタ)アクリロニトリル系微粒子は、単量体の(メタ)アクリロニトリルを重合または(メタ)アクリロニトリルと他の単量体とを共重合させて得られる。他の単量体としては、共重合可能な限り、任意の適切な単量体を採用することができる。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびモノまたはジエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、 α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体等が挙げられる。これらは単独、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記(メタ)アクリロニトリル系微粒子が(メタ)アクリロニトリルと他の単量体との共重合である場合、(メタ)アクリロニトリルを主成分とすることが好ましい。
【0045】
上記微粒子の平均粒子径は、好ましくは50〜350nm、より好ましくは75〜300nm、さらに好ましくは100〜250nmである。このような粒子径の微粒子を用いることにより、易接着層表面に適切に凹凸を形成して、MARフィルムと易接着層および/または易接着層どうしの接触面における摩擦力を効果的に低減することができ、ブロッキングを抑制することができる。
【0046】
MARフィルムの表面に易接着層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、易接着層は、ウレタン樹脂と(メタ)アクリロニトリル系微粒子とを含む易接着組成物をアクリル樹脂フィルムの表面に塗布して、当該組成物の塗布膜を形成した後、形成した塗布膜を乾燥させて形成することが好ましい。
【0047】
上記易接着組成物は、水系の組成物であることが好ましく、水系の組成物は、有機系溶剤に比べて、易接着層を形成する際に生じる環境への負荷が小さく、作業性に優れる。水系の組成物は、例えば、ウレタン樹脂の分散体である。ウレタン樹脂の分散体は、典型的には、ウレタン樹脂のエマルジョンである。ウレタン樹脂のエマルジョンは、乾燥により樹脂層となる。また、当該エマルジョンに含まれる微粒子は、そのまま樹脂層に残留する。
【0048】
上記易接着組成物が水系の場合、好ましくは、上記ウレタン樹脂の製造において中和剤を用いる。中和剤を用いることにより、水中におけるウレタン樹脂の安定性が向上し得る。中和剤としては、例えば、アンモニア、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。これらは単独、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
上記易接着組成物が水系の場合、ウレタン樹脂の製造に際し、好ましくは、上記ポリイソシアネートに対して不活性で、水と相溶する有機溶剤を用いることができる。当該有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジオキサン、テトラハイドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。これらは単独、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
上記易接着組成物が水系の場合、微粒子は水分散体として配合されていることが好ましい。微粒子の水分散体を配合した水系の易接着組成物は、易接着層形成時の作業性により優れ得る。
【0051】
上記易接着組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。当該架橋剤は、任意の適切な架橋剤を採用することができる。具体的には、上記ウレタン樹脂がカルボキシル基を有する場合、架橋剤としては、好ましくは、カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマーが挙げられる。カルボキシル基と反応し得る基としては、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基等が挙げられる。好ましくは、架橋剤は、オキサゾリン基を有する。これらの中でも、オキサゾリン基を有する架橋剤は、上記ウレタン樹脂と混合したときの室温でのポットライフが長く、加熱することによって架橋反応が進行するため、作業性が良好となる。
【0052】
上記易接着組成物は、任意の適切な添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、例えば、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0053】
上述したように、易接着組成物は、好ましくは水系である。易接着組成物におけるウレタン樹脂の濃度は、好ましくは1.5〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。易接着組成物におけるウレタン樹脂の濃度が上記範囲であれば、易接着層形成時の作業性に優れることから好ましい。また、易接着組成物が架橋剤を含む場合、易接着組成物中の架橋剤(固形分)の含有量は、ウレタン樹脂(固形分)100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。1重量部以上とすることにより、偏光子との密着性に優れ、30重量部以下とすることにより、易接着層に位相差が発現するのを抑制することができる。易接着組成物中の微粒子(固形分)の含有量は、ウレタン樹脂(固形分:架橋剤を含む場合は架橋剤をも含めた固形分)100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。具体的には、易接着層における微粒子の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。このような範囲に設定することにより、易接着層表面に適切に凹凸を形成して、MARフィルムと易接着層および/または易接着層どうしの接触面における摩擦力を効果的に低減し、ブロッキング抑制能に優れるとともに、易接着層の強度と易接着性が向上し、他の機能性フィルムとの接着力を十分に確保することができる。また、偏光子保護フィルムとして使用した場合、偏光板の光学特性に与える影響をより抑制することができる。
【0054】
上記易接着層の厚みは、任意の適切な値に設定することができる。好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜1.0μmである。このような範囲に設定することにより、他の機能性フィルムとの密着性に優れ、易接着層に位相差が発現するのを抑制することができる。
【0055】
易接着層の厚さdと、易接着層に含まれる微粒子の平均粒子径rとの比r/dは、0.3〜1.4が好ましく、0.4〜1.1がより好ましく、0.5〜1.0がさらに好ましい。このような範囲に設定することにより、本発明の光学フィルムにおける耐ブロッキング性を確実とすることができる。易接着層の厚さdに比べて微粒子の粒子径rが、上記比r/dの範囲を超えて小さい場合、易接着層に含まれるが易接着層の表面に露出しない微粒子、すなわち耐ブロッキング性の向上に寄与しないが光学フィルムのヘイズ率を上昇させるおそれがある。易接着層の厚さdに比べて微粒子の平均粒子径rが、上記比r/dの範囲を超えて大きい場合、易接着層の強度が低下し、微粒子が易接着層から脱落しやすくなるおそれがある。
【0056】
[光学フィルム]
図1に本発明の光学フィルムの一例を示す。
図1に示す光学フィルム1は、MARフィルム2の一方の表面に易接着層3が形成された構造を有する。MARフィルム2および易接着層3の具体的な構成については上述のとおりである。なお、本発明の光学フィルムは、MARフィルムの双方の表面に易接着層が形成されていてもよい。
【0057】
本発明の光学フィルムのヘイズ率としては1.0%以下であることが好ましい。なお、ヘイズ率はJISK7105の規定に基づいて測定される。
【0058】
本発明の光学フィルムの易接着層表面における静摩擦係数としては、0.1〜0.60であることが好ましく、0.1〜0.55であることがより好ましく、0.1〜0.50であることがさらに好ましい。静摩擦係数が上記範囲であれば、フィルムの巻き取り時に生じるブロッキングの抑制能に優れ得る。
【0059】
本発明の光学フィルムは、ロールに巻回する際の耐ブロッキング性に優れるため、ロールに巻回されていてもよい(フィルムロールであってもよい)。本発明の光学フィルムのフィルムロールは、耐ブロッキング性に優れるため、光学フィルムの巻き取り時および後加工の繰り出し時において、フィルムのハンドリング性に優れ得る。
【0060】
本発明の光学フィルムにおける易接着層が形成されている表面と反対側の表面には、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層等が挙げられる。
【0061】
本発明の光学フィルムは、例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムである。また、上記の中でも、偏光子保護フィルムとして使用することが特に好ましい。本発明の光学フィルムが示す位相差は、アクリル樹脂フィルムの組成および延伸状態により制御することができる。本発明の光学フィルムは、光学的に等方なフィルムであっても良く、光学的に異方性を有する(例えば、位相差のような複屈折を発現する)フィルムであっても良い。
【0062】
[偏光板]
図2に本発明の偏光板の一例を示す。
図2に示す偏光板10は、MARフィルム2の一方の表面に易接着層3を有する偏光子保護フィルム4の易接着層側の表面に接着剤5を介し、偏光子6が積層された構造を有する。なお、図示しないが、偏光板10は、偏光子6の偏光子保護フィルム4と反対側に、接着剤層を介して積層された第2の偏光子保護フィルムを有していても良い。
【0063】
上記偏光板は、MARフィルムの表面に易接着層を有する偏光子保護フィルムの易接着層表面に接着剤層を介して偏光子が積層された構造を有する。当該偏光子保護フィルムに形成された易接着層は、易接着層の強度および易接着性に優れる為、偏光子と偏光子保護フィルムとの密着性及び耐久性に優れる偏光板とすることができる。また、偏光子保護フィルムの易接着層に含まれる有機微粒子の平均粒子径が可視光波長よりも小さい為、粒子による光散乱を抑制でき、光学特性に優れる偏光板とすることができる。
【0064】
上記偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子を採用することができる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80 μm程度である。
【0065】
上記接着剤層を形成する接着剤としては、任意の適切な接着剤を採用することができる。好ましくは、接着剤層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤組成物から形成される。
【0066】
上記第2の偏光子保護フィルムとしては、任意の適切な保護フィルムを採用することができる。第2の偏光子保護フィルムを形成する材料の代表例としては、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが挙げられる。第2の偏光子保護フィルムは、上述したMARフィルムと同様の材料で形成されていてもよい。
【0067】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の偏光板を備える。画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED)のような自発光型表示装置、液晶表示装置(LCD)に使用できる。液晶表示装置(LCD)は、液晶セルと、当該液晶セルの少なくとも片側に配置された上記偏光板とを有する。
【0068】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に制限するものではなく、公知の方法により製造することができるものであるが、例えば、MARフィルムの少なくとも一方の表面に、ウレタン樹脂と(メタ)アクリロニトリル系微粒子とを含む易接着組成物を塗布して当該易接着組成物の塗布膜を形成し(塗布工程)、形成した塗布膜を乾燥させて、上記微粒子を含む易接着層を上記表面に形成(乾燥工程)することが好ましい。
【0069】
塗布工程において易接着組成物を塗布する方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法等が挙げられる。塗布工程において形成する塗布膜の厚さは、当該塗布膜が易接着層となったときに必要な厚さに応じて、適宜調整することができる。
【0070】
(メタ)アクリル樹脂フィルムにおける易接着組成物が塗布される表面は、表面処理が施されていることが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理であることが好ましい。コロナ放電処理を施すことにより、MARフィルムと易接着層との密着性を向上させることができる。コロナ放電処理は、任意の適切な条件で施すことができる。コロナ放電電子照射量としては、例えば、10〜150W/m
2/minであることが好ましく、10〜100W/m
2/minであることがさらに好ましい。
【0071】
乾燥工程は、特に制限するものではなく、従来公知の方法を用いることができる。乾燥温度としては、代表的には50℃以上、好ましくは90℃以上、さらに好ましくは110℃以上である。乾燥温度をこのような範囲とすることにより、耐色性(特に、高温高湿下における)に優れた光学フィルムとすることができる。乾燥温度の上限は、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。
【0072】
本発明の光学フィルムの製造方法によって、未延伸のMARフィルムから延伸フィルムである光学フィルムを製造する場合、ならびに一軸延伸されたMARフィルムから二軸延伸フィルムである光学フィルムを製造する場合、これらのMARフィルムをいずれかの時点で延伸する必要がある。MARフィルムの延伸は、易接着層の形成前に行っても良く、易接着層の形成後に行っても良い。また、易接着層の形成と、MARフィルムの延伸とを同時に行っても良い。
【0073】
易接着層の形成と、MARフィルムの延伸とを同時に行う場合、例えば、塗布工程の後に、易接着組成物の塗布膜を形成したMARフィルムを加熱雰囲気下で延伸すればよい。延伸のために当該フィルムに加える熱により、MARフィルムの表面に形成された易接着組成物の塗布膜が乾燥し、易接着層となる。このようにすれば、フィルムの延伸処理と易接着組成物の乾燥とを同時に実施できることから生産性に優れることから好ましい。なお、通常、光学フィルムに使用されるMARは、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上である場合が多く、上述した延伸温度は、易接着組成物の塗布膜から易接着層が形成されるのに十分高い温度である。
【0074】
本発明の偏光板は、代表的には、上記光学フィルムと上記偏光子とを接着剤層を介して積層することにより製造される。ここで、上記光学フィルムを、その易接着層が偏光子側となるように積層する。具体的には、偏光子または光学フィルムのいずれか一方の片側に上記接着剤組成物を塗布した後、偏光子と光学フィルムとを貼り合わせて乾燥させる方法が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
製造例1
メタクリル系樹脂[Tg:135℃]のペレットを、単軸押出機(φ=20.0mm、L/D=25)及びコートハンガータイプTダイ(幅150mm)を用いて280 ℃で溶融押出し、押出物を110 ℃に保持した冷却ロールを用いて冷却して、厚さ100μmのメタクリル系樹脂フィルムを形成した。
【0077】
製造例2
ウレタン樹脂[第一工業製薬製、スーパーフレックス210、固形分35重量%]10g、アクリロニトリル系微粒子(微粒子A)を含むエマルジョン[積水化学工業製、ADVANCELL NS K−001、平均粒子径150nm、固形分20重量%]0.22gおよび純水30gを混合して、エマルジョン状の分散体である易接着組成物(1)を得た。
【0078】
製造例3
前記微粒子Aを含むエマルジョンの量を0.44gに増やした以外は製造例2と同様にして易接着組成物(2)を得た。
【0079】
製造例4
前記微粒子Aを含むエマルジョンの量を1.09gに増やした以外は製造例2と同様にして易接着組成物(3)を得た。
【0080】
製造例5
前記微粒子Aを含むエマルジョンの量を2.19gに増やした以外は製造例2と同様にして易接着組成物(4)を得た。
【0081】
製造例6
ウレタン樹脂[第一工業製薬製、スーパーフレックス210、固形分35重量%]に代えてウレタン樹脂[DIC製、ハイドランAP−40N、固形分35重量%]を用いた以外は製造例2と同様にして易接着組成物(5)を得た。
【0082】
製造例7
前記微粒子Aを含むエマルジョンに代えてアクリロニトリル系微粒子(微粒子B)を含むエマルジョン[東洋紡製、タフチックF−120、平均粒子径200nm、固形分20重量%]を用いた以外は製造例2と同様にして易接着組成物(6)を得た。
【0083】
製造例8
前記微粒子Aを含むエマルジョン0.22gに代えてコロイダルシリカ微粒子(微粒子C)を含むエマルジョン[扶桑化学工業製、クォートロンPL−7、平均一次粒子径75nm、固形分25重量%]0.88gを用いた以外は製造例2と同様にして易接着組成物(7)を得た。
【0084】
製造例9
微粒子Cを含むエマルジョンの量を1.75gに増やした以外は製造例8と同様にして易接着組成物(8)を得た。
【0085】
製造例10
前記微粒子Aを含むエマルジョン0.22gに代えてコロイダルシリカ微粒子(微粒子D)を含むエマルジョン[扶桑化学工業製、クォートロンPL−20、平均一次粒子径220nm、固形分20重量%]1.09gを用いた以外は製造例2と同様にして易接着組成物(9)を得た。
【0086】
製造性11
前記微粒子Dを含むエマルジョンの量を2.19gに増やした以外は製造例10と同様にして易接着組成物(10)を得た。
【0087】
製造性12
前記微粒子Dを含むエマルジョンを使用しない以外は、製造例10と同様にして、エマルジョン状の分散体である易接着組成物(11)を得た。
【0088】
実施例1
製造例1で作成したメタクリル系樹脂フィルムの一方の表面に、製造例2で作成した易接着組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布した後、熱風乾燥機に投入して100℃で90秒間乾燥した。次に、テーブル延伸機を用いて当該フィルムを一軸延伸(延伸倍率:2.5倍)し、厚さ40μmのメタクリル系樹脂フィルムの表面に、ウレタン樹脂と微粒子とを含む厚さ0.3μmの易接着層を有する光学フィルムを得た。易接着層における微粒子の含有量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、1.25重量部であった。
【0089】
実施例2〜6、比較例1〜5
易接着組成物(1)の代わりに、表1に示す易接着組成物を用いた以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。易接着層における、ウレタン樹脂100重量部に対する微粒子の含有量(重量部)は、表1に示す通りである。
【0090】
各実施例および比較例で得られた光学フィルムについて、以下に示す評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)静摩擦係数(易接着層とMARフィルムとの間)
測定装置:トライボギア TYPE14[新東科学製]
ガラス板上に固定した各実施例および比較例で得られた光学フィルムと、10mm φのステンレス製の円盤に固定した製造例1で得られたメタクリル系樹脂フィルムを密着させ、円盤に固定したアクリル樹脂フィルムの上から200gの加重をかけて6.0mm/分の速度で水平方向に移動させたときの動き出しの最大負荷から静摩擦係数を求めた。
(2)密着性
各実施例および比較例で得られた光学フィルムの易接着層側に、ポリビニルアルコール系接着剤組成物を塗布し、当該接着剤組成物を介して厚さ30μmのヨウ素系偏光子と積層した後、熱風乾燥機(70 ℃)に投入して5分乾燥し、偏光子と貼り合わせた積層体を得た。上記で得られた積層体から25mm ×250mmの寸法のサンプル片を切り出し、光学フィルムの表面に粘着加工を施し、ガラス板に貼り付けた。その後、積層体の偏光子を掴み、日本接着剤工業規格JAI 13−1996の浮動ローラー法に準じて、90度でのはく離接着強さを測定した。なお、はく離接着強さの単位を(N/25mm)として表した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、ウレタン樹脂とアクリロニトリル系微粒子とを含む易接着層を有する実施例1乃至6の光学フィルムは、耐ブロッキング性に優れるとともに、微粒子を含まない比較例5の光学フィルムと比べ、他の機能性フィルムとの密着性が高い結果を示した。一方、ウレタン樹脂とコロイダルシリカ微粒子とを含む易接着層が形成された比較例1乃至4の光学フィルムは、耐ブロッキング性には優れるが、微粒子を配合しない比較例5と比べ、他の機能性フィルムとの密着性が低い結果を示した。