特許第6163565号(P6163565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163565フィビュリンタンパク質変異体および対応する核酸配列
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163565
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】フィビュリンタンパク質変異体および対応する核酸配列
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/475 20060101AFI20170703BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170703BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20170703BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20170703BHJP
【FI】
   C07K14/475ZNA
   C12N15/00 A
   !A61K38/17
   !A61P35/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-555453(P2015-555453)
(86)(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公表番号】特表2016-504422(P2016-504422A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2014032597
(87)【国際公開番号】WO2014165552
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】61/807,445
(32)【優先日】2013年4月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515206089
【氏名又は名称】イーホン・ジョウ
【氏名又は名称原語表記】Yihong ZHOU
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100067035
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 光隆
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】イーホン・ジョウ
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/022157(WO,A1)
【文献】 特表2014−516053(JP,A)
【文献】 特表2006−524502(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/006477(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0129809(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0156263(US,A1)
【文献】 日薬理誌 (1996) Vol.107, pp.153-160
【文献】 Cancer Res. (2009) Vol.69, No.15, pp.6339-6346
【文献】 Cancer Res. (2006) Vol.66, No.5, pp.2621-2629
【文献】 Oncogene (2004) Vol.23, pp.9392-9400
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00
C12N 15/00
UniProt/GeneSeq
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/WPIX(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i. 配列番号1または2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;および
ii. 癌細胞浸潤の阻止および癌増殖阻止からなる群から選択される少なくとも一つの活性を有する単離ポリペプチドであって、
単離ポリペプチドのアミノ酸配列が配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する場合、配列番号1の216位から218位に相当するアミノ酸残基がアルギニン−グリシン−アスパラギン酸である、または
単離ポリペプチドのアミノ酸配列が配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する場合、配列番号2の208位から210位に相当するアミノ酸残基がアルギニン−グリシン−アスパラギン酸であ
ここで、癌が、低悪性度神経膠腫、中悪性度神経膠腫、GBMを含む高悪性度神経膠腫、線維肉腫、結腸直腸癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌および鼻咽頭癌からなる群より選択される、単離ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1または2に示すアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1または2に示すアミノ酸配列と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の単離ポリペプチドをコードする配列を含む、単離核酸分子。
【請求項5】
核酸がデオキシリボース核酸である、請求項に記載の単離核酸分子。
【請求項6】
癌細胞増殖、癌細胞浸潤および/または癌の再発を阻止することによる癌治療における使用を目的とする、請求項1からのいずれか一項に記載の単離ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年4月2日出願の米国特許仮出願番号61/807445に基づく優先権を主張し、引用によりその全体を本明細書に包含させる。
【0002】
発明の分野
本発明の態様は、癌増殖阻止、癌細胞浸潤阻止および癌再発阻止の活性の一つ以上を有することにより特徴付けられる、フィビュリン3(EGF含有フィビュリン様細胞外マトリックスタンパク質1(EFEMP1)とも称される)ポリペプチド変異体およびそれをコードするヌクレオチド配列に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
フィビュリン類は、反復上皮増殖因子様ドメインおよび独特なC末端構造を有することにより特徴付けられる、分泌型糖タンパク質の7個のメンバーのファミリーである。癌におけるフィビュリンタンパク質機能の研究は、いくつかのフィビュリンタンパク質が腫瘍抑制活性を有し、いくつかが発癌性活性を有することを示している。さらに、いくつかの個々のフィビュリンタンパク質(例えば、フィビュリン3/EFEMP1)は、組織特異的態様で腫瘍抑制活性または発癌性活性を示す。
【0004】
EFEMP1腫瘍抑制機能は次の現象により示される。EFEMP1は、内皮細胞出芽の抑制を介する抗血管形成機能を有する。EFEMP1の過発現は、線維肉腫細胞の腫瘍形成能を阻害する。EFEMP1発現の低下および/またはEFEMP1プロモーターのメチル化が、肺癌、肝癌、乳癌、結腸癌、前立腺癌および鼻咽頭癌で起こる。多形神経膠芽腫、肝細胞癌および鼻咽頭癌におけるEFEMP1発現は、良好な予後と相関する。EFEMP1は、鼻咽頭癌および神経膠芽腫細胞株におけるAKTシグナル伝達活性を抑制する。
【0005】
EFEMP1発癌性機能は次の現象により示される。EFEMP1発現の増加は、子宮頚癌の予後不良と関係付けられている。臨床試験結果は、EFEMP1過発現が、乳癌の予後不良と相関することを証明した。膵臓腺癌細胞において、EFEMP1過発現は異組織(xenograft)の形成を促進する。EFEMP1は、膵臓癌細胞株におけるAKTシグナル伝達活性を促進する。ある神経膠腫細胞において、EFEMP1は、インビトロ基質特異的細胞接着を増強し、細胞運動性および分散を促進することが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まだ有効な処置が何もない致命的形態の脳腫瘍である多形神経膠芽腫(GBM)は、異なる増殖および浸潤特性を有することで特徴付けられる、多様な亜集団の細胞からなる。手術、放射線および化学療法のような処置後のGBM再発の根底にある機序は決定的には解明されていない。再発は、 神経幹細胞特性を有し、放射線および化学療法に耐性であって、神経幹細胞特性を有するGBM細胞の浸潤性亜集団(いわゆる腫瘍幹細胞)が原因であろうと推定されている。GBM増殖は、血管新生腫瘍微小環境に大きく依存するように見え、抗血管形成治療剤がGBM腫瘍増殖を一時的に抑制することが示されている。しかし、抗血管形成治療剤はGBM患者の全体的生存を改善せず、浸潤パターンが増加した腫瘍再発に終わる。これまでは、神経膠腫細胞浸潤を標的とした治療は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
過去30年間、手術後の放射線療法にテモゾロミド処置の併用が追加されたにもかかわらず、GBM癌患者について生存期間中央値の2.5ヶ月のわずかな延長しか達成されていない。本発明の目的は、GBMのような癌における癌細胞増殖、浸潤および/または再発の阻止を提供できる、癌治療剤を提供することである。従って、本発明の態様は、EGFR、AKT、タンパク質チロシンキナーゼ2(PTK2)およびNOTCHを含むタンパク質の活性および/または発現レベルを、癌細胞において調節することにより特徴付けられる、野生型EFEMP1タンパク質のアミノ酸配列変異体を提供する。癌は、低〜中悪性度神経膠腫、GBMを含む高悪性度神経膠腫、線維肉腫、結腸直腸癌、肺癌、結腸癌、肝臓癌、乳癌、前立腺癌または鼻咽頭癌であり得る。そして、癌細胞は癌幹細胞および非幹様癌細胞であり得る。

【0008】
本発明のある態様は、(i)配列番号1または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含む;および(ii)癌細胞浸潤の阻止、腫瘍増殖の阻止および癌再発の阻止からなる群から選択される少なくとも一つの活性を有する、ポリペプチドを提供する。本発明のある態様は、このようなポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0009】
本発明のある態様は、(i)配列番号1または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも約85%、約90%、約95%、約97%、約99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含む;および(ii)EGFR発現の阻止、EGFR活性の阻害、AKT発現の阻止、AKT活性の阻害、PKT2発現の阻止、PKT2活性の阻害、NOTCH発現の阻止およびNOTCH活性の阻害からなる群から選択される少なくとも一つの活性を有する、ポリペプチドを提供する。本発明のある態様は、このようなポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】フィビュリンタンパク質EFEMP1、EFEMP2およびフィビュリン5(FBLN5)のCLUSTAL Wアミノ酸配列アライメントである。
図1B】ヒト、マウスおよびラットEFEMP1タンパク質、ヒトEGFRタンパク質の4種のアイソフォームおよびEGFRの欠失変異体におけるEGFR相同領域(EHR)のCLUSTAL Wアミノ酸配列アライメントである。
【0011】
図2】FLAG標識された野生型EFEMP1タンパク質構築物E1および一連のFLAG標識されたEFEMP1タンパク質変異体構築物E2〜E11、E13〜E15およびE18のモジュラー構造の模式図である。
【0012】
図3A図2および実施例1に記載するE1〜E3、E6〜E7、E10〜E11、E13およびE15 pcDNA 3.1+構築物ならびにベクターpcDNA 3.1+(P)で安定にトランスフェクトしたU251細胞株の親培養から開始する、実施例4に記載するS.C.異種移植片アッセイからの腫瘍重量のプロットである。
図3B図2および実施例1に記載するE1、E2、E5、E11、E13、E15およびE18 pTRIPZレンチウイルス構築物ならびにベクターpTRIPZ(Vec)を感染させたU251細胞の親培養から開始する、実施例4に記載するS.C.異種移植片アッセイからの腫瘍重量のプロットである。
【0013】
図4A図2および実施例1に記載するE1〜E3、E5、E6〜E7、E9〜E10、E11およびE13〜E15 pcDNA 3.1+構築物でおよびベクターpcDNA 3.1+(Vec)で安定にトランスフェクトしたU251細胞の親培養株ならびにU251親対照細胞(P)で開始した、実施例5に記載するマトリゲル細胞浸潤アッセイからのtranswellインサートの底面の写真である。
図4B図2および実施例1に記載するE1、E2、E5、13、E15およびE18 pTRIPZレンチウイルス構築物ならびにベクターpTRIPZ(Vec)を感染させたU251神経球細胞培養から開始する、実施例5に記載するマトリゲル浸潤アッセイからの細胞浸潤のプロットである。
図4C図4Bに示すマトリゲル浸潤アッセイの細胞で行った、実施例6に記載する酵素電気泳動のゲルの写真である。
【0014】
図5図2および実施例1に記載するE1、E2、E5およびE10 pTRIPZレンチウイルス構築物を感染させた親培養U251細胞で実施した、実施例7に記載する免疫ブロットの写真である。
【0015】
図6図2および実施例1に記載するE1、E2およびE5 pTRIPZレンチウイルス構築物を感染させたU251神経球細胞培養から開始する、実施例8に記載するI.C.異種移植片アッセイからのマウスの生存プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な記載
本発明により達成される目的は、神経膠腫(例えば、多形神経膠芽腫)のような癌について、癌増殖阻止、癌細胞浸潤阻止および癌再発阻止の活性の少なくとも一つを有する、EFEMP1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列を提供することである。ある態様において、野生型EFEMP1タンパク質のアミノ酸配列変異体(EFEMP1由来腫瘍抑制タンパク質(ETSP)と称することもある)は、高速増殖性および浸潤性神経膠腫腫瘍細胞亜集団の増殖および浸潤活性を、同所性腫瘍フォーマティングで個々に、また同時に抑制する。このようなETSPは、少なくとも一部、野生型EFEMP1のアミノ酸配列相同性試験および変異体EFEMP1ポリペプチドの実験により発見された。
【0017】
図1Aは、野生型EFEMP1、EFEMP2およびフィビュリン5(FBLN5)のアミノ酸配列のCLUSTAL W(1.83)アライメントであり、これは、EFEMP1がEFEMP2およびFBLN5より長いタンパク質であるが、高度の配列類似性がこれらのタンパク質で存在することを示す。図1Aはまた、野生型EFEMP1およびFBLN5それぞれにおける、弱い(RGE)および強い(RGD)インテグリン結合部位の位置も示す。図1Bは、EFEMP1における38アミノ酸EGFR相同領域(EHR)のCLUSTAL W(1.83)アライメントである。整列させたEHRアミノ酸配列は、ヒト、マウスおよびラットEFEMP1;ヒトEGFRの4種のアイソフォーム(EGFRv1、EGFRv2、EGFRv3、EGFRv4);およびヒト癌において同定されたEGFRの欠失変異体(EGFRvIII)である。
【0018】
図2は、構築物E1〜E11、E13〜E15およびE18によりコードされる一連のFLAG標識されたEFEMP1タンパク質のモジュラードメインの模式図である。構築物E1は、シグナルペプチド、DSLモチーフ、挿入を有するEGF様モジュール、1〜5と番号付けされた5個のEGF様モジュールおよびフィビュリン型モジュールを含む、野生型(wt)アミノ酸配列を有する完全長EFEMP1タンパク質をコードする。
【0019】
構築物E2は、アミノ酸81〜172が欠失しており、EFEMP1特異的な、wt EFEMP1の挿入を有するEGF様モジュールが大部分除去されている、EFEMP1変異体をコードする。
【0020】
構築物E3は、アミノ酸379〜493が欠失しており、wt EFEMP1のフィビュリン型モジュールを大部分除去されている、EFEMP1変異体をコードする。
【0021】
構築物E4は、アミノ酸186がアラニンからグリシンに変えられ、wt EFEMP1の弱いインテグリン結合部位が強いインテグリン結合部位に変えられている、EFEMP1変異体をコードする。
【0022】
構築物E5は、アミノ酸379〜493が欠失しており、wt EFEMP1のフィビュリン型モジュールが大部分除去され、アミノ酸210がグルタミン酸からアスパラギン酸に変えられ、wt EFEMP1の弱いインテグリン結合部位が強いインテグリン結合部位に変えられている、EFEMP1変異体をコードする。
【0023】
構築物E6は、アミノ酸173〜213および379〜493が欠失しており、wt EFEMP1のEGF様モジュールおよびフィビュリン型モジュールが大部分除去されている、EFEMP1変異体をコードする。
【0024】
構築物E7は、アミノ酸173〜213が欠失しており、wt EFEMP1のEGF様モジュールが大部分除去されている、EFEMP1変異体をコードする。
【0025】
構築物E8は、アミノ酸379〜493が欠失しており、wt EFEMP1のフィビュリン型モジュールが大部分除去され、アミノ酸186がアラニンからグリシンに変えられ、wt EFEMP1の弱いインテグリン結合部位が強いインテグリン結合部位に変えされている、EFEMP1変異体をコードする。
【0026】
構築物E9は、アミノ酸186がアラニンからグリシンに変えられ、アミノ酸210がグルタミン酸からアスパラギン酸に変えられ、wt EFEMP1の2カ所の弱いインテグリン結合部位が2カ所の強いインテグリン結合部位に変えられている、EFEMP1変異体をコードする。
【0027】
構築物E10は、アミノ酸130がメチオニンからバリンに変更され、EGFRと配列類似性を共有する挿入を有するEGF様モジュールにおける20アミノ酸配列に位置するヒトwt EFEMP1におけるそのアミノ酸残基が、対応するマウスおよびラットEFEMP1残基に変えられている、EFEMP1変異体をコードする。
【0028】
構築物E11は、アミノ酸44〜172および379〜493が欠失しており、wt EFEMP1のDSLモチーフが一部除去され、wt EFEMP1の挿入を有するEGF様モジュールおよびフィビュリン型モジュールが大部分除去されている、EFEMP1変異体をコードする。
【0029】
構築物E13は、アミノ酸214〜493が欠失しており、wt EFEMP1のEGF様モジュール2〜5およびフィビュリン型モジュールが大部分除去されている、EFEMP1変異体をコードする。
【0030】
構築物E14は、アミノ酸214〜493が欠失しており、wt EFEMP1のEGF様モジュール2〜5およびフィビュリン型モジュールが大部分除去され、アミノ酸186がアラニンからグリシンに変えられ、wt EFEMP1の弱いインテグリン結合部位が強い結合部位に変えられている、EFEMP1変異体をコードする。
【0031】
構築物E15は、アミノ酸214〜493が欠失しており、wt EFEMP1のEGF様モジュール2〜5およびフィビュリン型モジュールの大部分が除去され、アミノ酸210がグルタミン酸からアスパラギン酸に変えられ、wt EFEMP1の弱いインテグリン結合部位が強い結合部位に変えられている、EFEMP1変異体をコードする。
【0032】
構築物E18は、アミノ酸173〜493が欠失しており、wt EFEMP1のEGF様モジュール1〜5およびフィビュリン型モジュールが大部分除去されている、EFEMP1変異体をコードする。
【0033】
U251は、ヒト多形神経膠芽腫に由来する高腫瘍形成能悪性神経膠腫細胞株である。U251を培養するための種々のプロトコールが存在する。U251の親培養は血清含有および粘着性である。U251の神経球(NS)培養は無血清および非粘着性またはフィブロネクチン固着粘着性であり、正常神経幹細胞の培養のために使用するサプリメントを用いる。U251は異なる細胞亜集団からなる。親培養において、細胞亜集団の大部分は染色体7の2個の正常コピーと1個の染色体7の7q欠失コピーを担持する。NS培養において、細胞亜集団の大部分は染色体7の1個の正常コピーと染色体7の1個の7q欠失コピーを担持する。
【0034】
染色体7の2個の正常コピーと染色体7の1個の7q欠失コピーを担持するU251細胞は、実施例4に記載するS.C.異種移植片アッセイで速い増殖を示す。これらはまた実施例8に記載するI.C.異種移植片アッセイにおいて、浸潤性を欠くが、腫瘍塊の大部分を形成する。
【0035】
染色体7の1個の正常コピーと染色体7の1個の7q欠失コピーを担持するU251−NS細胞は、実施例5および6に記載するマトリゲル浸潤および酵素電気泳動アッセイにおいて、高レベルの浸潤性を示す。これらはまた、腫瘍幹様細胞特性を有し、実施例4に記載するS.C.異種移植片アッセイにおいて腫瘍形成能を欠く。血管内皮細胞増殖因子を過発現するようにトランスフェクトされたU251−NS細胞は、実施例4に記載する皮下(S.C.)異種移植片アッセイにおいて、腫瘍を形成する。U251−NS細胞は、実施例8に記載する頭蓋内(I.C.)異種移植片アッセイにおいて、浸潤性の腫瘍を形成する。そして、これらは、実施例8に記載するI.C.異種移植片アッセイにおいて、染色体7の2個の正常コピーと染色体7の1個の7q欠失コピーを担持するU251細胞よりも浸潤性である。
【0036】
表1は、3タイプのU251細胞培養で得られたqRT−PCR結果を記載する。第一のタイプは、図2および実施例1に記載するE1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、E13、E14、E15およびE18 pcDNA 3.1+構築物ならびにプラスミドベクターpcDNA 3.1+(Vec)で安定にトランスフェクトしたU251細胞株の親培養であった。第二のタイプは、図2および実施例2に記載するE1、E2、E5、E6、E7、E8、E11、E13、E15およびE18 pTRIPZレンチウイルス構築物ならびにプラスミドベクターpTRIPZ(Vec)を感染させたU251細胞の親培養であった。第三のタイプは、図2および実施例2に記載するE1、E2、E3、E5、E7、E8、E10、E11、E13、E15およびE18 pTRIPZレンチウイルス構築物ならびにプラスミドベクターpTRIPZ(Vec)を感染させた、U251神経球細胞(U251−NS)培養であった。PCRプライマー対の順方向プライマーをFLAGタグとアニールし、逆方向プライマーをEFEMP1のエクソン4とアニールした。
【0037】
表1の結果は、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、E13、E14、E15およびE18構築物が、U251トランスフェクタント細胞の親培養で発現されることを示す。表1の結果はまた、E1、E2、E5、E6、E7、E8、E11、E13、E15およびE18構築物が、ドキシサイクリン誘導性で、U251レンチウイルスインフェクタント細胞の親培養で発現されることも示す。E1、E2、E3、E5、E7、E8、E10、E11、E13、E15およびE18構築物は、ドキシサイクリンを含む、U251の神経球(U251−NS)培養レンチウイルスインフェクタント細胞でも発現される。
【表1】
【0038】
表2は、図2および実施例1に記載するE1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、E13、E14およびE15 pcDNA 3.1+構築物ならびにプラスミドベクターpcDNA 3.1+(Vec)で安定にトランスフェクトしたU251細胞の親培養株で開始する、実施例3に記載する足場非依存性増殖および細胞増殖軟寒天コロニー形成アッセイにより得られた結果を記載する。表2はまた、図2および実施例2に記載するE1、E2、E5、E7、E8、E10、E11、E13、E15およびE18 pTRIPZレンチウイルス構築物ならびにプラスミドベクターpTRIPZ(Vec)を感染させたU251神経球細胞(U251−NS)培養で開始した、実施例3に記載する足場非依存性増殖および細胞増殖軟寒天コロニー形成アッセイにより得られた結果を記載する。レンチウイルスインフェクタントを、導入遺伝子を発現させるためにドキシサイクリン含有培地で培養し、蛍光顕微鏡でRFP発現をアッセイすることにより発現を確認した。表2の結果は、構築物E2、E5、E6、E7、E8、E11、E13、E14およびE15から発現されたEFEMP1タンパク質変異体がU251および/またはU251−NS細胞増殖を抑制することを示す。EFEMP1タンパク質変異体E3が、U251軟寒天アッセイにおいて細胞増殖を増加させることも示す。
【表2】
【0039】
図3Aは、図2および実施例1に記載するE1、E2、E3、E6、E7、E10、E11、E13およびE15 pcDNA 3.1+構築物で安定にトランスフェクトしたU251細胞の親培養株およびU251親対照細胞(P)で開始した、実施例4に記載するS.C.異種移植片アッセイからの腫瘍重量のプロットである。この結果は、構築物E2、E3、E5、E6、E11およびE15から発現されたEFEMP1タンパク質変異体が、S.C.異種移植片アッセイにおいてU251細胞形成腫瘍を抑制することを示す。
【0040】
図3Bは、図2および実施例2に記載するE1、E2、E5、E11、E13、E15およびE18 pTRIPZレンチウイルス構築物ならびにプラスミドベクターpTRIPZ(Vec)を感染させたU251細胞の親培養で開始した、実施例4に記載したS.C.異種移植片アッセイからの腫瘍重量のプロットである。マウスにドキシサイクリン含有水を1日目から実験の間中与えた。RFP発現は得られた腫瘍で示された。この結果は、構築物E2、E5、E15およびE18から発現されたEFEMP1タンパク質変異体が、S.C.異種移植片アッセイにおいてU251細胞形成腫瘍を抑制することを示す。
【0041】
図4Aは、図2および実施例1に記載するE1、E2、E3、E5、E6、E7、E9、E10、E11、E13、E14およびE15 pcDNA 3.1+構築物およびプラスミドベクターpcDNA 3.1+(Vec)で安定にトランスフェクトしたU251細胞の親培養株ならびにU251親対照細胞(P)で開始する、実施例5に記載するマトリゲル細胞浸潤アッセイからの細胞プレートの写真である。この結果は、構築物E3、E11およびE15から発現されたEFEMP1タンパク質変異体は、マトリゲルアッセイにおけるU251細胞の浸潤性を抑制することを示す。
【0042】
図4Bは、図2および実施例2に記載するE1、E2、E5、E13、E15およびE18 pTRIPZレンチウイルス構築物をおよびプラスミドベクターpTRIPZ(Vec)を感染させたU251神経球細胞(U251−NS)培養で開始する、実施例5に記載するマトリゲル浸潤アッセイにおける細胞浸潤のプロットである。レンチウイルスインフェクタントを、導入遺伝子を発現させるためにドキシサイクリン含有培地で培養し、蛍光顕微鏡でRFP発現をアッセイすることにより発現を確認した。この結果は、構築物E5から発現されたEFEMP1タンパク質変異体はU251−NS細胞浸潤を有意に抑制し、一方、野生型EFEMP1ならびに構築物E1、E15およびE18から発現されたEFEMP1タンパク質変異体はU251−NS細胞浸潤を有意に促進することを示す。
【0043】
図4Cは、図4Bに示すマトリゲル浸潤アッセイの細胞で行った、実施例6に記載する酵素電気泳動の2個のゲルの写真である。この結果は、U251−NS神経膠腫細胞が、酵素電気泳動アッセイで検出して、活性MMP2(〜67kD)を分泌することを示す。MMP2は神経膠腫細胞で高度に発現されるプロテアーゼであり、細胞浸潤を担う。また、構築物E5から発現されるEFEMP1タンパク質変異体は、U251−NS神経膠腫細胞の活性化MMP2産生を有意に阻害し、一方、野生型EFEMP1ならびに構築物E1、E15およびE18から発現されたEFEMP1タンパク質変異体は、U251−NS神経膠腫細胞の活性化MMP2産生を有意に促進することも示される。
【0044】
図5は、図2および実施例1に記載するE1、E2、E5およびE10 pTRIPZレンチウイルス構築物を感染させた親培養U251細胞で行った、実施例7に記載する免疫ブロットの写真である。レンチウイルスインフェクタントを、導入遺伝子を発現させるためにドキシサイクリン含有培地で3日間培養し、蛍光顕微鏡でRFP発現をアッセイすることにより発現を確認した。神経膠腫の約40%がEGFRを過発現し、EGFR活性化は、細胞生存および増殖増強と機能的に相関する。NOTCH1発現の増加によるNotchシグナル伝達活性化は、癌幹細胞の共通特性である。この結果は、E5構築物から発現されたEFEMP1タンパク質変異体がU251細胞においてタンパク質レベルでEGFRおよびNOCTH1発現を減少させることを示す。ACTB発現レベルを、等タンパク質負荷を示すために使用した。
【0045】
図6は、図2および実施例1に記載したE1、E2およびE5 pTRIPZレンチウイルス構築物を感染させたU251神経球細胞(U251−NS)培養で開始した、実施例8に記載する頭蓋内異種移植片アッセイからのマウスで実施したカプランマイヤー生存プロットである。マウスにドキシサイクリン含有水を1日目から実験の間中与えた。RFP発現は得られた腫瘍で示された。この結果は、E5構築物から発現されたEFEMP1タンパク質変異体が、生存が有意に伸びたことにより測定して、U251−NS細胞の腫瘍形成能を阻止することが示され、生存期間中央値は2倍を超える。
【0046】
まとめると、上記データおよび結果は、E5 EFEMP1タンパク質変異体が強力なETSPであることを示す。FLAG標識E5 EFEMP1タンパク質変異体のアミノ酸配列を配列番号1に示す。非FLAG標識E5 EFEMP1タンパク質変異体のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【実施例】
【0047】
実施例1
EFEMP1欠失/変異構築物。図2に示し、上に記載したE1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、E13、E15およびE18野生型および変異体EFEMP1タンパク質をコードする発現構築物を、EFEMP1の2個の別々のcDNAフラグメントのクローニングおよび/またはライゲーションのための制限部位を作るために設計したプライマーを用いて、PCRにより製造した。PCR産物をTA−クローニングベクターpCR4.0にクローン化し、配列を確認し、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1+(Life Technologies)およびレンチウイルスベクターpTRIPZにサブクローニングした。シャトルベクターは、赤色蛍光タンパク質(RFP)のための同じプロモーター下、pTRIPZ(Thermo Scientific)におけるEFEMP1野生型および変異体タンパク質の発現のための配列内リボソーム進入部位を導入するために製造されている。
【0048】
実施例2
U251レンチウイルスインフェクタント。U251(親および神経球培養)レンチウイルスインフェクタントを、HEK293とプラスミドDNA構築物(レンチウイルスベクターpTRIPZ空ベクターまたはpTRIPZ−EFEMP1構築物E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、E13、E15およびE18を、それの生成された構築物であるpsAX2およびpCMV−VSV−Gと共に)の同時導入によりレンチウイルスで産生した。U251レンチウイルスインフェクタントは、選択抗生物質(1.25μg/mlピューロマイシン)の存在下1〜2週間培養し、ドキシサイクリン(1μg/ml)を添加して、倒立蛍光顕微鏡検査を用いる生存細胞におけるRFP発現を介した感染の成功をモニターすることによる非感染細胞の除去後に確立した。
【0049】
U251安定トランスフェクタント。U251安定トランスフェクタントを、プラスミドDNA構築物(pcDNA3.1ベクターまたはpcDNA−E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、E13およびE15)でトランスフェクトし、コロニーを形成させるために選択抗生物質(400μg/mlネオマイシン)下で培養して、確立した。個々のコロニーをピペットチップで採り、6ウェルプレートに移して、コロニーを拡張させた。
【0050】
実施例3
軟寒天コロニー形成アッセイ。800〜1000細胞を、5%ウシ血清または実施例10に記載するNS培養のためのマイトジェンサプリメントを添加したDMEM/F12中、1mlの0.3%軟寒天と混合し、同培地中の固化した0.5%軟寒天上に広げた(6ウェルプレートの4個の角のウェルにおいて1ウェルあたり1ml)。同培地の1mlを2週間後および3週間後に添加し、コロニー数を4倍レンズの顕微鏡下に4週間後計数した。細胞は、U251対照細胞および構築物E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、E13、E14、E15またはpcDNA空ベクター(Vec)で安定にトランスフェクトしたU251細胞であった。細胞を、ドキシサイクリン含有培地で培養して、導入遺伝子発現を発現させた。各ウェルのコロニーの総数を4倍レンズの顕微鏡下で計数し、Vec対照(纏めて設定)からの平均コロニー数に対して正規化した。平均(Ave)および標準偏差(SD)は、4個の独立したウェル上に形成されたコロニーに基づいた。5〜10個の代表的コロニーを測定し、コロニーの直径により等級付けした。1+(〜10μm)、2+(〜20μm)、3+(30〜40μm)、4+(40〜60μm)、5+(50〜100μm)、6+(100〜200μm)。
【0051】
実施例4
皮下(S.C.)異種移植片アッセイ。U251HFレンチウイルスインフェクタント細胞株pTRIPZ−vecおよびpTRIPZ−E1、E2、E5、E11、E13、E15およびE18の親培養を1μg/mlドキシサイクリンを含む培地で培養した。14倍希釈マトリゲル(元の濃度9〜12mg/ml)を含む50μl DMEM/F12中の2.5×10 U251HFレンチウイルスインフェクタント細胞を、4〜6週齢の雌ヌードマウス(系統NCrNu−M、Taconic, Hudson, NY)の左右の大腿の両側の前部に皮下注射した。注射したマウスに、注射の日から1μg/mlドキシサイクリンを含む水を与えた。腫瘍を注射25日後に摘出し、秤量し、t検定(対応、両側)により解析した。
【0052】
実施例5
マトリゲル浸潤アッセイ。9〜12mg/mlマトリゲルを氷上または4℃で融解した。10ml氷冷無血清培地を融解マトリゲルに添加した。融解マトリゲルを氷冷SF−DMEM/F12で希釈し、transwell(12ウェル;8μm)に200μl添加し、室温で>1時間インキュベートすることにより、プレートを調節した。細胞播種前に、非結合物質を穏やかに吸引して除いた。マトリゲルコーティングは無色であり、不可視である。100mm皿で80〜90%コンフルエンシーまで増殖させた細胞を、10ml PBSで洗浄することにより剥離し、2ml 0.05%トリプシン−EDTAで30秒消化させ、トリプシンを除去し、ボトルを軽打することにより細胞を剥離し、10ml培養培地を添加し、ピペット中を上下させ、細胞を15mlチューブに移すことにより、細胞を調製した。次いで細胞を遠沈させ、10〜15ml SF培地に再懸濁し、10μlを取って、血球計数器で細胞を計数した。次いで、5×10細胞を遠沈し、5ml SF培地に1×10/mlで再懸濁した。5×10細胞を被覆transwellに添加し、1ml 0.05%CS培地を底ウェルに添加した。COインキュベーター中で播種し、そこでプレートを24時間培養した。
【0053】
マトリゲルを透過した細胞を、次のとおりHEMA3 CMSで染色した。0.5mlの定着性染料をプレートのウェルに添加し、0.2mlをtranswellに添加した。20分後染料を除いた。次いで、0.5mlの赤色染料をプレートのウェルに添加し、0.2mlをtranswellに添加した。20分後染料を除いた。次いで、0.5mlの暗青色染料をプレートのウェルに添加し、0.2mlをtranswellに添加した。20分後染料を除いた。水に浸したQチップをマトリゲル膜の除去に使用し、これを空気乾燥した。乾燥した膜をスライドに載せ、封入剤を添加した。次いで、カバースライドを上に乗せ、20倍レンズを使用する顕微鏡を用いて、各フィルターで10枚の写真を撮った。次いで、撮影した写真に基づき細胞を計数し、1に設定した対照(Vec)と比較し、t検定(対応、両側)により解析した。
【0054】
実施例6
ゼラチン酵素電気泳動アッセイ。構築物pTRIPZ−E1、E2、E5、E13、E15またはE18細胞からの野生型EFEMP1および変異体EFEMP1タンパク質を発現するNS培養したU25Fレンチウイルスインフェクタント細胞ならびにNS培養U251HF対照、pTRIPZ−vec細胞の条件培地を、1μg/mlドキシサイクリン含有無血清DMFM/F12培地で48時間増殖し、次のとおり回収した。細胞を遠沈し、0.3ml上清を1.5mlチューブに移した。タンパク質を1.2ml冷アセトンの添加により上清から沈殿させた。沈殿を、4K RPMで5分、4℃で直ぐに回転させた。条件培地タンパク質(CM−P)を100μl 1×RIPA+1×プロテアーゼ阻止剤カクテルに再懸濁した。2μlのCM−Pを採り、BIO−RADタンパク質アッセイでタンパク質濃度を決定した。再懸濁したCM−Pを80℃で保存した。
【0055】
2〜4μgのCM−Pを1×RIPAおよび2×サンプル緩衝液(100μl 10%BB、10ml グリセロール、1g SDS、7.5ml 1M Tris.HCl pH6.8、無菌ddHOを50mlまで添加)と混合し、短く回転させ、1×Tris−グリシン−SDSランニング緩衝液中の酵素電気泳動ゲルに充填した。ゲルを、室温で90Vで2時間流した。ゲルを2.5%Triton X-100で1〜2時間、RTで穏やかに振盪させながら数回線上した。次いで、ゲルを一夜、37℃でプロテアーゼ反応緩衝液(50mM Tris (pH=7.5)、10mM CaCl、150mM NaCl)中インキュベートした。次いで、ゲルを30分、Coomassie Blue R-250(ddHO中0.1%クーマシーブルー、10%酢酸、10%イソプロパノール)で、穏やかに振盪しながら染色した。次いで、ゲルを10%酢酸、30%メタノール溶液で3回、20分染色し、2枚のセロハン紙の間で一夜乾燥させた。
【0056】
実施例7
免疫ブロット法。全細胞ライセートの30〜40μgタンパク質を、1×Tris−グリシン−SDSランニング緩衝液中の8%SDS−PAGEゲルに充填した。ゲルを、室温で、90Vで2時間流し、ニトロセルラー膜に移した。5%脱脂乳で1時間ブロットを遮断し、次いで、EGFR(1:1000希釈)またはNOTCH1(1:1000希釈)に対するウサギ一次抗体を含む1%BSA中で、一夜インキュベートした。次いで、1×TBSTで1時間洗浄し、抗ウサギIgG HRP結合二次抗体(1:10,000希釈)と1時間インキュベートした。ECL検出キットを使用して、免疫ブロットのシグナルを展開させた。
【0057】
実施例8
頭蓋内(I.C.)異種移植片アッセイ。神経膠腫細胞(1×10/3μl DMEM/F12)を、IACUC承認手術法に従い、4〜6週齢、雌ヌードマウス(系統NCrNu−M、Taconic, Hudson, NY)の前頭葉に注射した。I.C.植え込み後、瀕死の徴候(せむし様姿勢、著しい体重減少および歩行障害)についてマウスを連日モニターし、定期的に体重測定した。脳損傷症状(運動失調、半身麻痺など)および/または20%体重減少を発症したとき、マウスを屠殺し、翌日を生存分析のための生存日として記録した。
【0058】
実施例9
U251の親培養。U251細胞を、通常の組織培養処理皿で、5%ウシ血清および1×ペニシリン−ストレプトマイシン添加DMEM/F12培地中、37℃、5%COで、湿潤チャンバーで培養した。
【0059】
実施例10
U251のNS培養。U251細胞を、寒天(1%)被覆皿で、20ng/ml EGF、20ng/ml bFGF、0.3%B27および1×ペニシリン−ストレプトマイシン添加DMEM/F12培地中、37℃、5%COで、湿潤チャンバーで培養した。
【0060】
次の刊行物は、その全体を引用により本明細書に包含させる。
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Thermo Scientific Open Biosystems Expression Arrest TRIPZ Lentiviral shRNAmir; Technical Manual.
【0061】
本開示は、ある態様および実施例の状況で提供されているが、本開示は具体的に記載されたポリペプチドおよび核酸配列の態様を超えて拡張されることは当業者には理解される。従って、本開示は例示的であり、ここでの態様の具体的開示に限定することを意図しない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]