(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔1 第1実施形態〕
〔1.1 システムの全体構成について〕
図1は、第1実施形態に係るセンサシステムの全体構成を示す図である。図中、センサシステム1は、センサシート2と、静電容量検出装置3とを備えている。
センサシート2は、面状に形成されたエラストマー製の誘電層と、誘電層を挟むように当該誘電層の表裏面に形成されている一対の電極層と備えており、面状に形成された容量素子を構成している。
このセンサシート2は、当該センサシート2の表裏面に平行な方向(面方向)に沿って変形(伸縮)可能に形成されている。センサシート2は、面方向に変形する際、誘電層の面方向の変形に追従して電極層の面積に変化が生じる。このため、センサシート2の静電容量は、当該センサシート2の変形に応じて変化する。
センサシート2は、その静電容量が当該センサシート2の変形に応じて変化するという特性を利用して、例えば、人体の関節部分等、測定対象物の可動部分に取り付けられて、その可動部分の可動状態を把握するために用いられる。
【0021】
センサシート2は、測定対象物の可動部分に、当該可動部分の可動に応じて変形するように取り付けられる。センサシート2は、可動部分が可動すると、それに応じて自身も変形し、その変形に応じて静電容量が変化する。
よって、センサシート2が取り付けられた状態で可動部分を可動させ、可動部分の状態と、センサシート2の静電容量との相関関係を予め把握しておけば、センサシート2の静電容量に基づいて測定対象物の可動状態を把握することができる。
このように、センサシート2は、当該測定対象物の可動部分の可動状態を示す情報を静電容量として出力するように構成されている。つまり、このセンサシート2は、測定対象物等、外部からの入力に応じて静電容量が変化する静電容量型センサを構成している。
【0022】
静電容量検出装置3は、センサシート2の静電容量を検出する機能を有している。静電容量検出装置3は、センサシート2の一方側の電極層に所定周期のキャリア電圧を印加し、このキャリア電圧に応じてセンサシート2の他方側の電極層から出力されるセンサ出力信号を検出する。
静電容量検出装置3は、検出したセンサシート2のセンサ出力信号に対して、各種信号処理を施すことによって、検出したセンサシート2の静電容量の変化を表す検出結果信号を出力する。
静電容量検出装置3は、上記検出結果信号を当該静電容量検出装置3に接続された情報処理装置4に与える。
【0023】
情報処理装置4は、静電容量検出装置3から与えられた検出結果信号に基づいて、測定対象物の可動部分の可動状態を示す情報を生成し、当該情報処理装置4の操作者に向けて出力する。
【0024】
〔1.2 センサシートの構成について〕
図2(a)は、センサシート2の一例を示す斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA−A線断面図である。
図2(a)及び(b)に示すように、センサシート2は、シート状の誘電層11と、誘電層11の表面(おもて面:
図2中、上側)に形成された表側電極層12Aと、誘電層11の裏面(
図2中、下側)に形成された裏側電極層12Bと、一端が表側電極層12Aに連結された表側配線13Aと、一端が裏側電極層12Bに連結された裏側配線13Bと、表側配線13Aの他端に取り付けられた表側接続端子14Aと、裏側配線13Bの他端に取り付けられた裏側接続端子14Bと、誘電層11の表側及び裏側のそれぞれに積層された表側保護層15A及び裏側保護層15Bと、裏側保護層15Bに積層された粘着層18を備える。
【0025】
誘電層11は、エラストマー製のシート状物であり、例えば、その厚みは、例えば、10〜1000μmに設定されている。誘電層11は、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとの間に介在しており、容量素子における誘電体としての機能を有している。
誘電層11は、エラストマーと他の任意成分とを含むエラストマー組成物を用いて形成されており、その表裏面の面積が変化するように可逆的に変形することができる。
上記エラストマーとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が用いられ、これらのなかではウレタンゴムやシリコーンゴムが好ましく、ウレタンゴムがより好ましい。
【0026】
両電極層12A、12Bは、導電材料を含有する導電組成物からなる。両電極層12A、12Bは、互いに同一組成の導電性組成物から構成されていてもよいし、互いに異なる組成の導電性組成物から構成されていてもよい。
表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは、同一の平面視形状を有しており、誘電層11を挟んで表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは全体が対向している。センサシート2は、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとの対向した部分が容量素子として機能する。
なお、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは、必ずしも誘電層を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していればよい。
【0027】
上記導電材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、導電性高分子等を単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。上記導電材料としては、カーボンナノチューブが好ましい。導電性及び伸縮性に優れた電極層を形成するのに適しているからである。
上記導電性組成物は、カーボンナノチューブ等の導電材料以外に、例えば、バインダー成分を含有していてもよい。
上記バインダー成分はつなぎ材料として機能し、上記バインダー成分を含有させることにより、誘電層との密着性、及び、電極層自体の強度を向上させることができる。
【0028】
なお、両電極層12A、12Bと、両接続端子14A、14Bとを接続している両配線13A、13Bも、両電極層12A、12Bと同様の導電性組成物から構成されている。
【0029】
表側配線13Aを介して表側電極層12Aに接続されている表側接続端子14Aは、例えば、銅板等を用いて形成された板状の部材であり、外部に露出して設けられ、静電容量検出装置3から延びる接続線が接続される。
また、裏側配線13Bを介して裏側電極層12Bに接続されている裏側接続端子14Bも、銅板等を用いて形成された板状の部材であり、外部に露出して設けられ、静電容量検出装置3から延びる接続線が接続される。
センサシート2は、表側接続端子14Aによって静電容量検出装置3から与えられるキャリア電圧を受け付け、裏側接続端子14Bからキャリア電圧に応じたセンサ出力信号を出力する。
【0030】
両保護層15A、15Bは、電極層12A、12B等を電気的に絶縁し外部環境から保護するために設けられている。また、両保護層15A、15Bは、センサシート2全体としての強度や耐久性を高める補強部材としての機能も有している。
この保護層15A、15Bの材質は特に限定されず、その要求特性に応じて適宜選択することができる。保護層15A、15Bの材質の具体例としては、誘電層11の材質と同様のエラストマー組成物等が挙げられる。
【0031】
粘着層18は、センサシート2を測定対象物に貼り付けるために設けられた層であり、測定対象物の可動部分表面に貼り付けられたときに、可動部分の動作に応じて変形可能な程度に貼り付くことができる程度の粘着力を有している。
【0032】
センサシート2は、誘電層11がエラストマー製のため、上述のように、面方向に変形(伸縮)可能である。誘電層11が面方向に変形した際には、その変形に追従して表側電極層12A及び裏側電極層12B、並びに、表側保護層15A及び裏側保護層15Bが変形する。
そして、センサシート2の変形に伴い、上記検出部の静電容量が誘電層11の変形量と相関をもって変化する。よって、静電容量の変化を検出することで、センサシート2の変形状態を把握することができる。
【0033】
〔1.3 静電容量検出装置3の構成について〕
図3は、静電容量検出装置3の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、静電容量検出装置3は、センサシート2に所定周期でキャリア電圧を印加するための電圧供給部20を備えている。
電圧供給部20は、矩形波生成部21と、第1ローパスフィルタ(LPF:Low pass filter)部22とを備えている。
矩形波生成部21は、所定周期の矩形波を生成する機能を有している。矩形波生成部21は、生成した矩形波にバイアス電圧を与えて0Vを中心に振幅する波形に変換する。矩形波生成部21は、変換した矩形波を第1ローパスフィルタ部22に与える。
第1ローパスフィルタ部22は、所定の遮断周波数よりも低い周波数帯域の信号を通過させることで、与えられた矩形波を正弦波に近似した信号波に変換する機能を有している。つまり、矩形波生成部21が生成する矩形波は、第1ローパスフィルタ部22を通過することで、正弦波に近似した信号波に変換される。
【0034】
なお、本実施形態の静電容量検出装置3が装置全体として、所定のバイアス電圧を与えることによって所定の中間基準電圧で動作するように構成した場合には、電圧供給部20は、振幅中心が中間基準電圧となる波形を有する信号波を生成する。
【0035】
電圧供給部20は、第1ローパスフィルタ部22によって変換された正弦波に近似した信号波をキャリア電圧としてセンサシート2に印加する。
第1ローパスフィルタ部22は、接続線23を介してセンサシート2の表側接続端子14A(
図2参照)に接続されている。よって、キャリア電圧は、接続線23を通じてセンサシート2に印加される。
【0036】
正弦波に近似した信号波であるキャリア電圧の振幅電圧V
0、及び周波数f
0は、センサシート2の静電容量等に応じて予め設定した値とされている。
矩形波生成部21が生成する矩形波の波形や、第1ローパスフィルタ部22の特性は、振幅電圧V
0、周波数f
0が予め設定された値とされたキャリア電圧が得られるように設定されている。
【0037】
このようにして、電圧供給部20は、所定周期のキャリア電圧を生成し、生成したキャリア電圧をセンサシート2に印加する。
【0038】
センサシート2の裏側接続端子14B(
図2参照)は、接続線24を介して静電容量検出装置3の変換部25に接続されている。
センサシート2は、電圧供給部20からのキャリア電圧の印加に応じてセンサ出力信号を変換部25に与える。
変換部25は、キャリア電圧の印加に応じてセンサシート2から出力される電流信号であるセンサ出力信号を電圧信号に変換する機能を有している。
【0039】
図4は、変換部25の構成例を示す図である。
図4に示すように、変換部25は、オペアンプ25aと、抵抗素子25bとを備えている。なお、
図4では、変換部25の他に、センサシート2及び電圧供給部20も示している。
【0040】
オペアンプ25aの反転入力端子には、センサシート2が接続されている。また、オペアンプ25aの非反転入力端子は接地されている。
抵抗素子25bは、オペアンプ25aの出力端子と反転入力端子との間に接続されており、帰還抵抗としての機能を有している。
オペアンプ25aは、抵抗素子25bに流れる電流とセンサシート2に流れる電流とが等しくなるように調整する。
【0041】
ここで、キャリア電圧を下記式(1)とした場合、センサシート2に流れる電流Iは、下記式(2)で表される。
キャリア電圧V
C = V
0sin(2πf
0t) ・・・(1)
電流I = j2πf
0CV
0sin(2πf
0t) ・・・(2)
【0042】
なお、上記式(1)中、V
0はキャリア電圧の振幅電圧、f
0はキャリア電圧の周波数、tは時間を示す。また、上記式(2)中、jは虚数、Cはセンサシート2の静電容量を示す。
上述のように、オペアンプ25aは、抵抗素子25bに流れる電流とセンサシート2に流れる電流とが等しくなるように調整されるので、オペアンプ25aの出力電圧V
outは、下記式(3)で表される。
出力電圧V
out = j2πf
0CRV
0sin(2πf
0t)
・・・(3)
【0043】
なお、上記式(3)中、Rは、抵抗素子25bの抵抗値を示す。
上記式(3)に示すように、オペアンプ25aの出力電圧V
outの振幅は、センサシート2の静電容量Cに比例する。よって、オペアンプ25aの出力電圧V
outの振幅からセンサシート2の静電容量Cの変化を求めることができる。また、キャリア電圧の振幅電圧V
0と、オペアンプ25aの出力電圧V
outとの比からセンサシート2の静電容量Cを求めることもできる。
【0044】
以上のように、変換部25は、センサシート2から出力されるセンサ出力信号としての電流Iを電圧信号としての出力電圧V
outに変換する。上記式(2)、(3)に示すように、センサ出力信号としての電流I及び出力電圧V
outは、センサシート2の静電容量Cを示す情報を振幅として有している。
【0045】
図5(a)は、キャリア電圧の一例を示す図である。
図5(a)中、縦軸は電圧、横軸は時間(t)を示している。
図5(a)に示すように、キャリア電圧V
Cは、振幅電圧がV
0で一定とされた信号波として出力される。なお、キャリア電圧V
Cは、上述したように正弦波に近似した信号波として生成される。
本実施形態において、キャリア電圧の周波数f
0は、例えば、5kHzに設定される。
【0046】
図5(b)は、
図5(a)のキャリア電圧の印加によってセンサシート2から出力されるセンサ出力信号が変換部25によって変換されたときの出力の一例を示す図である。
なお、
図5(b)は、センサシート2を変形させ当該センサシート2の静電容量を経時的に変化させたときにおけるセンサ出力信号の例を示している。
【0047】
変換部25によって出力電圧V
outに変換されたセンサ出力信号は、
図5(b)に示すように、センサシート2の静電容量が経時的に変化することで、振幅電圧が経時的に変動している。
上述したように、オペアンプ25aの出力電圧V
outの振幅は、センサシート2の静電容量Cに比例するため、センサシート2の静電容量Cの変化が出力電圧V
outの振幅に表れている。
つまり、
図5(b)に示すセンサ出力信号の包絡線Eがセンサシート2の静電容量Cの変化を表している。
なお、キャリア電圧の周波数が5kHzに設定されていることより、変換部25によって変換された後のセンサ出力信号は、キャリア電圧の周波数f
0と同じ5kHzの周波数成分と、センサシート2の静電容量Cの変化を示す成分を含んでいる。センサ出力信号に含まれている静電容量Cの変化を示す成分の周波数は、下記式(4)のように表すことができる。
センサ出力信号に含まれている静電容量Cの変化を示す成分の周波数 =
f
0 ± f
e ・・・(4)
なお、式(4)中、f
eは、キャリア電圧によって変調されていない状態での静電容量Cの変化を示す成分の周波数である。
【0048】
以上のように、変換部25は、キャリア電圧の印加に応じてセンサシート2から出力される電流信号であるセンサ出力信号を電圧信号である出力電圧V
outに変換する。
【0049】
図3に戻って、変換部25は、電圧信号である出力電圧V
outに変換したセンサ出力信号を当該変換部25の後段に接続されているフィルタ部26に与える。
【0050】
フィルタ部26は、ハイパスフィルタ(High pass filter)によって構成されている。フィルタ部26は、予め設定された遮断周波数より高い周波数帯域の信号成分の通過を許容することで、センサ出力信号を通過させる機能を有している。また、フィルタ部26は、前記遮断周波数よりも低い周波数帯域に存在するノイズ成分の通過を制限し除去する機能を有している。本実施形態のフィルタ部26は、オペアンプを用いた3次のハイパスフィルタを用いて構成されている。
【0051】
図6(a)は、変換部25から出力されるセンサ出力信号の一例を示す図である。
図6(a)に示すセンサ出力信号は、例えば、
図5(b)のセンサ出力信号と比較して、振幅の中心が時間軸方向に沿って緩やかに変動している。つまり、
図6(a)に示すセンサ出力信号には、当該センサ出力信号の周波数よりも低い周波数の低周波ノイズが加わっている。
また
図6(a)に示すセンサ出力信号には、高周波ノイズも加わっている。
つまり、フィルタ部26には、ノイズ成分が加わっているセンサ出力信号が与えられる。
【0052】
図6(b)は、
図6(a)に示すセンサ出力信号に加わっているノイズ成分のみを示した図である。
図6(b)中、低周波ノイズは、主な成分として、センサシート2の周囲の環境に起因して生じる環境ノイズを含んでいる。
本実施形態の環境ノイズは、例えば、センサシート2の周囲に設置された電気製品や、自システムが有する直流電源等が発する電磁波の影響によって生じるノイズである。周囲の電気製品や直流電源等に起因する環境ノイズは、センサシート2等を介してセンサ出力信号に加わる。
このような電気製品等が発するノイズには、商用電源の周波数成分が含まれている。さらに、直流電源が備えるコンバータ等が発するノイズには、商用電源から得た交流を整流する際に生じるリップルに起因するノイズ成分や、スイッチングによるノイズ成分が含まれている。このような、交流を整流する際に生じるノイズには、商用電源の周波数の2倍の周波数成分が含まれている。よって、環境ノイズの周波数は、50〜120Hzとなっている。
【0053】
図6(b)中、高周波ノイズは、スパイク状に表れており、キャリア電圧の周波数f
0よりも高い周波数のノイズとしてセンサ出力信号に加わっている。このような高周波ノイズは、静電容量検出装置3が有する各構成要素に起因して発生したり、外部から混入したりすることによって、センサ出力信号に加わっている。
【0054】
ここで、フィルタ部26の遮断周波数f
C1は、環境ノイズの周波数である50〜120Hzよりも高く、かつキャリア電圧の周波数f
0よりも低く設定されている。より詳細には、キャリア電圧の周波数f
0から、センサシート2の静電容量Cの変化を示す成分として取得したい周波数を減算した周波数をf
gとすると、フィルタ部26の遮断周波数f
C1は、周波数f
gよりも低く設定されている。より具体的に、フィルタ部26の遮断周波数f
C1は、3kHzに設定されている。
よって、上記ノイズが加わったセンサ出力信号が、変換部25からフィルタ部26に与えられると、フィルタ部26は、キャリア電圧の周波数f
0周辺の周波数帯域に存在するセンサ出力信号については通過を許容し、周波数が50〜120Hzの環境ノイズを主成分として含む低周波ノイズについては通過を阻止する。
よって、フィルタ部26を通過した後のセンサ出力信号からは、低周波ノイズが除去される。
【0055】
図6(c)は、
図6(a)に示すセンサ出力信号をフィルタ部26に与えたときの当該フィルタ部26からの出力を示す図である。
図6(c)に示すセンサ出力信号は、振幅の中心が0V近傍でほぼ一定の状態で振幅電圧が経時的に変動しており、低周波ノイズが除去されている。
一方、フィルタ部26の遮断周波数よりも高い周波数である高周波ノイズについては、除去されず、センサ出力信号に加わったままである。
【0056】
図3に戻って、フィルタ部26は、ノイズが加わっているセンサ出力信号が変換部25から与えられると、上述のように、低周波ノイズを除去した後のセンサ出力信号を当該フィルタ部26の後段に接続されている整流部27に与える。
【0057】
整流部27は、オペアンプを用いた半波整流回路によって構成されており、フィルタ部26から与えられるセンサ出力信号を半波整流する。
さらに、整流部27の後段には、第2ローパスフィルタ部28が接続されている。
第2ローパスフィルタ部28は、予め設定された遮断周波数より低い周波数帯域の信号を通過させることで、半波整流後のセンサ出力信号に含まれる成分である、静電容量を示す成分の通過を許容する。また、第2ローパスフィルタ部28は、キャリア電圧の周波数成分及び高周波ノイズを除去する機能を有している。本実施形態の第2ローパスフィルタ部28は、オペアンプを用いた3次のローパスフィルタを用いて構成されている。
【0058】
図7(a)は、
図6(c)に示すセンサ出力信号を整流部27に与えたときの出力を示す図である。
図7(a)に示すように、整流部27は、フィルタ部26から与えられるセンサ出力信号を半波整流し出力する。
この
図7(a)に示す半波整流されたセンサ出力信号には、上述の高周波ノイズが加わっている。
よって、整流部27は、高周波ノイズが加わっている、半波整流されたセンサ出力信号を第2ローパスフィルタ部28に与える。
【0059】
第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数f
C2は、高周波ノイズやキャリア電圧の周波数f
0よりも低く設定されている。つまり、第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数f
C2は、静電容量を示す成分を残しつつ、キャリア電圧の周波数成分及び高周波ノイズを除去しうる値に設定されている。
よって、高周波ノイズが加わっている、半波整流されたセンサ出力信号が第2ローパスフィルタ部28に与えられると、第2ローパスフィルタ部28は、静電容量を示す成分については通過を許容し、高周波ノイズや、残存すると静電容量を示す成分に対してリップルを生じさせるキャリア電圧の周波数成分の通過を阻止する。
これによって、第2ローパスフィルタ部28を通過した後の信号波からは、高周波ノイズ及びキャリア電圧の周波数成分が除去される。
【0060】
なお、
図7(a)に示す半波整流されたセンサ出力信号は、フィルタ部26によって低周波ノイズが除去されている。よって、第2ローパスフィルタ部28では、この低周波ノイズの通過を制限することについて考慮する必要がない。このため、本実施形態の第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数f
C2は、低周波ノイズ(環境ノイズ)の周波数である50〜120Hzよりも高く設定されている。
【0061】
このため、上記従来例のように、所定周波数である商用電源の周波数のノイズを除去するために整流器後段のローパスフィルタの遮断周波数を商用電源の周波数よりも低く設定し当該ノイズの通過を制限する場合と比較して、本実施形態では、第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数f
C2をより高く設定することができる。この結果、センサシート2の静電容量Cの変化に対するセンサ出力信号の応答性が低下するのを抑制できる。
【0062】
図7(b)は、
図7(a)に示すセンサ出力信号を第2ローパスフィルタ部28に与えたときに当該第2ローパスフィルタ部28から出力される信号波を示す図である。
図7(b)中、線
図Fは、第2ローパスフィルタ部28から出力される信号波を示している。
線
図Fは、
図7(a)に示すセンサ出力信号から高周波ノイズ及びキャリア電圧の周波数成分が除去されることで、
図7(a)のセンサ出力信号の包絡線を表している。
上述したように、センサ出力信号は、その振幅によってセンサシート2の静電容量Cの変化を表している。よって、この
図7(b)中の線
図Fは、センサシート2の静電容量Cの変化を表している。
【0063】
図3に戻って、第2ローパスフィルタ部28は、半波整流されたセンサ出力信号が整流部27から与えられると、
図7(b)に示すセンサシート2の静電容量Cの変化を表す信号波を検出結果信号として当該第2ローパスフィルタ部28の後段に接続されている出力部29に与える。
【0064】
出力部29は、第2ローパスフィルタ部28から与えられる検出結果信号に対して増幅やゲインの調整といった信号処理を行い、信号処理がなされた検出結果信号を情報処理装置4へ与える。
【0065】
情報処理装置4は、例えば、コンピュータ等によって構成されており、与えられた検出結果信号に対して処理を行い、センサシート2の静電容量Cの値を求めたり、測定対象物の可動部分の可動状態を示す情報を生成し、検出結果に関する結果情報を生成する。
情報処理装置4は、生成した結果情報を当該情報処理装置4の操作者に向けて出力する。
【0066】
なお、本実施形態では、第2ローパスフィルタ部28が、検出結果信号を出力部29に与える場合を示したが、第2ローパスフィルタ部28と、出力部29との間に、検出結果信号を増幅する増幅器と、不完全微分回路とを設けてもよい。
この場合、増幅器は、検出結果信号を増幅することで、微小な変化の検出が可能となる。また、不完全微分回路は、増幅した検出結果信号のレベルに電圧オフセットを合わせるように動作する。
【0067】
〔1.4 効果について〕
本実施形態の静電容量検出装置3は、静電容量型センサであるセンサシート2に所定周期のキャリア電圧を印加する電圧供給部20と、キャリア電圧の印加に応じてセンサシート2から出力される電流信号であるセンサ出力信号を電圧信号に変換する変換部25と、電圧信号に変換された前記センサ出力信号を整流する整流部27と、整流部27によって整流されたセンサ出力信号に含まれるキャリア電圧の周波数成分を除去する第2ローパスフィルタ部28と、変換部25と整流部27との間に接続され、前記センサ出力信号を通過させるフィルタ部26と、を備え、フィルタ部26は、信号成分の通過を許容する周波数帯域の下限である遮断周波数f
C1が、センサシート2の周囲の環境ノイズの周波数である商用電源の周波数よりも高く設定され、第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数f
C2は、商用電源の周波数よりも高く設定されている。
【0068】
上記のように構成された静電容量検出装置3によれば、変換部25と整流部27との間に接続され、遮断周波数f
C1が商用電源の周波数よりも高く設定されたフィルタ部26を備えているので、センサ出力信号に商用電源の周波数のノイズが加わったとしても、フィルタ部26によって当該ノイズを除去することができる。
また、整流部27後段の第2ローパスフィルタ部28においては、商用電源の周波数のノイズがフィルタ部26によって除去されているので、商用電源の周波数のノイズを除去する必要がない。従って、当該第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数f
C2を、商用電源の周波数よりも高く設定することができる。この結果、上記従来例と比較して、第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数f
C2をより高く設定することができる。従って、センサシート2の静電容量Cの変化に対するセンサ出力信号の応答性が低下するのを抑制することができる。
また、第2ローパスフィルタ部28によって、高周波ノイズ及びキャリア電圧の周波数成分を除去することができる。
以上のように、本実施形態の静電容量検出装置3によれば、センサシート2の静電容量Cの変化に対する応答性の低下を抑制しつつ、当該センサシート2のセンサ出力信号に含まれている商用電源等に起因する環境ノイズを除去することができる。これに加えて、高周波ノイズも除去することができる。
【0069】
〔2 第2実施形態〕
図8は、第2実施形態に係るセンサシステムのブロック図である。図中、本実施形態のセンサシステム40は、試料50の表面に光を照射する照射装置41と、光検出装置42とを備えている。光検出装置42の後段には、情報処理装置が接続されている。情報処理装置は、光検出装置42が出力する検出結果信号を受け付け、試料50の表面50aの変化の有無や、塵埃の付着の有無等、表面状態に関する結果情報を生成する。
【0070】
照射装置41は、試料50の表面に照射する光源であるLED(Light Emitting Diode)45と、このLED45を制御する点灯制御部46とを備えている。
LED45は、試料50の表面に光を照射可能に設けられている。点灯制御部46は、試料50の表面に対して所定周期で点滅する点滅光が照射されるようにLED45を制御する。
【0071】
光検出装置42は、照射装置41が照射した光が試料50の表面で反射した反射光を検出する装置であり、反射光を受光する受光部47と、変換部25と、フィルタ部26と、整流部27と、第2ローパスフィルタ部28と、出力部29とを備えている。
受光部47は、PD(Photo Diode)によって構成されており、受光した反射光の受光強度に応じた電流信号であるセンサ出力信号を出力する。受光部47は、後段の変換部25に接続されており、センサ出力信号を変換部25に与える。
【0072】
変換部25、フィルタ部26、整流部27、第2ローパスフィルタ部28、及び出力部29は、上記第1実施形態と同様の構成である。
よって、各部は、反射光の受光強度に応じた電流信号であるセンサ出力信号を電圧信号に変換し、電圧信号に変換されたセンサ出力信号から反射光の受光強度の変化を検出し、受光強度の変化を表す信号波を検出結果信号として出力部29の後段に接続されている情報処理装置に与える。
【0073】
図9(a)は、LED45と、受光部47とを試料50に設置したときの態様を示す図である。
図9(a)中、一点鎖線は、光線を示している。
図9(a)において、LED45は、点滅光の照射角度が試料50の表面50aに対して平行に近い角度となるように設置されている。また、受光部47は、試料50の表面50aのLED45からの点滅光が照射されている照射範囲の直上に配置されている。
【0074】
点滅光は、表面50aに対して平行に近い角度で照射されているため、点滅光が表面50aで反射する反射光も表面50aに対して平行に近い角度で反射する。
このため、例えば、
図9(a)に示すように、表面50a上に何も無ければ、受光部47に向けて反射光が直接照射されることはない。
よって、この場合、受光部47で受光される反射光の受光強度は低く表れる。
【0075】
図9(b)は、試料50の表面50aに塵埃が付着しているときの態様を示す図である。
図9(b)において、塵埃55が表面50aに塵埃が存在している場合、点滅光は、塵埃に照射されるので、散乱光を生じさせる。
この散乱光は、反射光と異なり、周囲に散乱する。このため、受光部47は、反射光の受光強度よりもより高い受光強度で散乱光を受光する。
つまり、表面50aに塵埃が無い場合では、光検出装置42が検出する受光強度は相対的に低く、表面50aに塵埃が存在する場合では、光検出装置42が検出する受光強度は相対的に高くなる。
本実施形態のセンサシステム40は、このような受光強度の相違によって、試料50の表面50aの変化の有無や、塵埃の付着の有無等、表面状態を検出する。
【0076】
ここで、例えば、
図9(b)に示すように、センサシステム40による表面状態の検出を蛍光灯60による照明環境の下で行う場合、光検出装置42の受光部47は、蛍光灯60の直接光や、反射光を受光してしまう。
これにより、受光部47が出力するセンサ出力信号に、表面50aの表面状態を示す情報以外に照明からの光を受光することによるノイズが加わることがある。
このような、照明からの光に起因するノイズは、センサ周囲の環境に起因して生じる環境ノイズである。
【0077】
蛍光灯は、商用電源の周波数(50〜60Hz)で点滅を繰り返しているものがあり、このような場合、受光部47が出力するセンサ出力信号に加えられる環境ノイズの周波数は、50〜60Hzとなる。
【0078】
これに対して、本実施形態においても、変換部25と整流部27との間に接続され、遮断周波数f
C1が商用電源の周波数よりも高く設定されたフィルタ部26を備えているので、センサ出力信号に環境ノイズとして商用電源の周波数のノイズが加わったとしても、フィルタ部26によって当該ノイズを除去することができる。
【0079】
〔その他〕
本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記第1実施形態のセンサシステムでは、センサシート2を人体の関節部分等、測定対象物の可動部分に取り付け、その可動部分の可動状態を測定するように構成した場合を例示した。この場合の環境ノイズの周波数は、50〜120Hzとなる。
【0080】
一方、センサシステムの測定対象としては、人体の関節部分の動作といった比較的緩やかに変位するものだけではない。測定対象によっては、当該測定対象そのものの動作による変位以外に、測定対象そのものに起因して不要なノイズが与えられる場合がある。このような場合、環境ノイズは、上記第1実施形態において示したような商用電源の周波数に基づいて定まる周波数に限定されるものではない。
【0081】
例えば、センサシステムによって、テニスラケットによる打球時のガットの伸縮変形動作を測定する場合、当該ガットは、ガット全体がラケット面として伸縮変形動作する以外に、ガットそのものが振動等によって変位が生じることがある。このようなガットそのものの振動の周波数は5kHz程度となる。
このような、ガット全体の伸縮変形動作以外の変位は、ガット全体の伸縮変形動作とは関係が低く、ノイズとなってセンサ出力信号に表れる。
【0082】
よって、上記のように、センサシステムによってテニスラケットのガットの伸縮変形動作を測定する場合においては、環境ノイズの周波数を5kHz未満とし、これに応じてフィルタ部26や、第2ローパスフィルタ部28の遮断周波数を設定する。
これにより、テニスラケットのガットの伸縮変形動作を測定する際における環境ノイズを除去することができる。
【0083】
また、上記第1実施形態では、キャリア電圧の周波数を5kHzとした場合を例示したが、このキャリア電圧の周波数は、フィルタ部26によって除去したいノイズの周波数よりも高い周波数に設定されていればよく、例えば、フィルタ部26によって除去したいノイズの周波数の10倍以上に設定することができる。
【0084】
また、上記第1実施形態では、面状に形成されて面方向に伸縮変形する容量素子であるセンサシート2を静電容量型センサとして用いた場合を例示したが、例えば、可動側の電極と、固定側の電極とを備え、加速度等の外部からの入力によって可動側の電極が可動することで、両電極間の静電容量を変化させるように構成された静電容量型センサにも用いることができる。
【0085】
また、上記第1実施形態では、正弦波に近似した信号波をキャリア電圧として用いたが、正弦波に近似せず、矩形波のままキャリア電圧として用いてもよい。但し、矩形波をキャリア電圧として用いた場合、センサシート2の出力が必要以上に大きくなり、変換部25に過大な電流が流れるおそれが生じる。よって、キャリア電圧としては、正弦波、又は正弦波に近似した信号波であることが好ましい。
なお、センサ出力信号は、キャリア電圧の印加に応じて出力されるため、キャリア電圧に含まれるノイズ成分を含む場合がある。
このため、上記第1実施形態では、電圧供給部20は、所定周期の矩形波を生成する矩形波生成部21と、前記矩形波を正弦波に近似した信号波に変換するフィルタ部である第1ローパスフィルタ部22とを備え、前記信号波をキャリア電圧としてセンサシート2に印加している。
これにより、キャリア電圧に含まれるノイズを低減することができるので、第2ローパスフィルタ部28によるキャリア電圧の周波数成分の除去が容易となる。従って、センサ出力信号に含まれるノイズをより効果的に除去することができる。
【0086】
また、上記各実施形態では、フィルタ部26にハイパスフィルタを用いた場合を示したが、ハイパスフィルタに代えてバンドパスフィルタを用いることもできる。この場合、信号成分の通過を許容する周波数帯域の下限である低域側の遮断周波数を環境ノイズの周波数よりも高く設定して用いる。
【0087】
また、上記各実施形態では、フィルタ部26に3次のハイパスフィルタを用いた場合を示したが、例えば、3次以外の1次や2次のハイパスフィルタを用いてもよい。
なお、2次以上のハイパスフィルタは、そのフィルタ特性が1次のハイパスフィルタと比較してより急峻な特性となるので、必要な周波数帯域の信号だけを通過させるように設定することがより容易となる。
また、フィルタ部26と同様、第2ローパスフィルタ部28についても上記実施形態では3次のローパスフィルタを用いた場合を示したが、3次以外の1次や2次のローパスフィルタを用いてもよい。2次以上のローパスフィルタは、そのフィルタ特性が1次のハイパスフィルタと比較してより急峻な特性となるので、この場合も必要な周波数帯域の信号だけを通過させるように設定することがより容易となる。
【0088】
また、上記各実施形態では、整流部27が半端整流する場合を示したが、整流部27を全波整流するように構成してもよい。この場合、整流部27が出力する整流されたセンサ出力信号の振幅を示す値が、半端整流した場合の2倍となる。このため、センサ出力信号に含まれる静電容量を示す成分が増加し、その後に第2ローパスフィルタ部28においてキャリア電圧の周波数成分の除去が容易となる。