(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163617
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】液体圧送装置
(51)【国際特許分類】
F16T 1/24 20060101AFI20170703BHJP
F16T 1/48 20060101ALI20170703BHJP
F16K 31/26 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
F16T1/24
F16T1/48 Z
F16K31/26 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-573370(P2016-573370)
(86)(22)【出願日】2016年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2016053018
(87)【国際公開番号】WO2016125777
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-20449(P2015-20449)
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西川 嘉晃
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−24274(JP,A)
【文献】
特開2000−146636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/24
F16T 1/48
F16K 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入して貯留される貯留空間が形成されたケーシングと、
作動気体を上記貯留空間に導入して該貯留空間の液体を排出させる給気弁と、
上記貯留空間の作動気体を排出させる排気弁と、
上記貯留空間に配置されるフロートを有し、該フロートの上昇下降に伴って変位し、該フロートが所定高位まで上昇すると上記給気弁を開弁すると共に上記排気弁を閉弁する一方、上記所定高位よりも高い上記フロートの上昇限界位置が設けられた弁作動機構と、
上記給気弁が開弁すると共に上記排気弁が閉弁してから上記フロートが上記上昇限界位置に到達するまでの該フロートを含む上記弁作動機構における部品の動き代が所定値よりも小さくなると、上記弁作動機構が劣化したと判断する劣化診断器とを備えている
ことを特徴とする液体圧送装置。
【請求項2】
液体が流入して貯留される貯留空間が形成されたケーシングと、
作動気体を上記貯留空間に導入して該貯留空間の液体を排出させる給気弁と、
上記貯留空間の作動気体を排出させる排気弁と、
上記貯留空間に配置されるフロートを有し、該フロートの上昇下降に伴って変位し、該フロートが所定低位まで下降すると上記給気弁を閉弁すると共に上記排気弁を開弁する一方、上記所定低位よりも低い上記フロートの下降限界位置が設けられた弁作動機構と、
上記給気弁が閉弁すると共に上記排気弁が開弁してから上記フロートが上記下降限界位置に到達するまでの該フロートを含む上記弁作動機構における部品の動き代が所定値よりも小さくなると、上記弁作動機構が劣化したと判断する劣化診断器とを備えている
ことを特徴とする液体圧送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体圧送装置において、
上記弁作動機構は、上記フロートが所定低位まで下降すると上記給気弁を閉弁すると共に上記排気弁を開弁する一方、上記所定低位よりも低い上記フロートの下降限界位置が設けられており、
上記劣化診断器は、上記給気弁が開弁すると共に上記排気弁が閉弁してから上記フロートが上記上昇限界位置に到達するまでの該フロートを含む上記弁作動機構における部品の動き代、および、上記給気弁が閉弁すると共に上記排気弁が開弁してから上記フロートが上記下降限界位置に到達するまでの該フロートを含む上記弁作動機構における部品の動き代の少なくとも一方が所定値よりも小さくなると、上記弁作動機構が劣化したと判断する
ことを特徴とする液体圧送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体圧送装置において、
上記弁作動機構における部品の動き代は、上記フロートの動き代である
ことを特徴とする液体圧送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、作動気体を導入して液体を圧送する液体圧送装置に関し、特に寿命推定に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、蒸気システム等で発生した液体を回収し作動気体の圧力によって利用側に圧送する液体圧送装置が知られている。特許文献1の液体圧送装置は、蒸気システムで発生したドレンが流入して貯留される密閉容器と、該密閉容器に収容されたフロートと、蒸気の給気弁および排気弁とを備えている。フロートは、弁作動機構(フロートアームやスナップ機構)を介して給気弁および排気弁に連結されている。この液体圧送装置では、フロートがドレンの液位に応じて上昇下降し、そのフロートの上昇下降動作に連動して給気弁および排気弁が動作する。そして、フロートが所定高位まで上昇すると、給気弁が開弁すると共に排気弁が閉弁する。これにより、密閉容器に蒸気が導入され、密閉容器に貯留されているドレンが蒸気の圧力によって排出口から排出(圧送)される。また、フロートが所定低位まで下降すると、給気弁が閉弁すると共に排気弁が開弁する。これにより、ドレンが密閉容器に流入して貯留されると共に、密閉容器内の蒸気が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−145290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような液体圧送装置では、弁作動機構等の内部部品が磨耗や異物(錆、スケール等)の付着堆積等により劣化することは避けられない。内部部品の劣化を放置しておくと、最終的には、給気弁および排気弁の開閉動作を行うことができず、ドレン(液体)の圧送不可を招いてしまう。したがって、こうした液体の圧送不可を未然に防止するために、内部部品の劣化度を検知して液体圧送装置の寿命を予め推定することが重要となる。そこで、従来では、液体圧送装置の作動回数(例えば、給気弁および排気弁の開閉動作の回数)に基づいて液体圧送装置の寿命を推定していた。しかしながら、この推定方法では、扱っている液体の種類や状態等によって内部部品の劣化度合いが異なるため、必ずしも正確に寿命を推定することができないという問題があった。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フロートの上昇下降に伴って開閉動作を行う作動気体の給気弁および排気弁を備えた液体圧送装置に関し、寿命を正確に推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、上記目的を達成するために、給気弁および排気弁が開閉動作した位置から上昇限界位置または下降限界位置までのフロートの動き代(余裕代)がどの程度減少したかに基づいて、弁作動機構の劣化度を判断するようにした。
【0007】
具体的に、本願の液体圧送装置は、ケーシングと、給気弁および排気弁と、弁作動機構と、劣化診断器とを備えている。上記ケーシングは、液体が流入して貯留される貯留空間が形成されている。上記給気弁は、作動気体を上記貯留空間に導入して該貯留空間の液体を排出させるものである。上記排気弁は、上記貯留空間の作動気体を排出させるものである。上記弁作動機構は、上記貯留空間に配置されるフロートを有し、該フロートの上昇下降に伴って変位する。上記弁作動機構は、上記フロートが所定高位まで上昇すると上記給気弁を開弁すると共に上記排気弁を閉弁し、上記フロートが所定低位まで下降すると上記給気弁を閉弁すると共に上記排気弁を開弁する。また、上記弁作動機構は、上記所定高位よりも高い上記フロートの上昇限界位置および上記所定低位よりも低い上記フロートの下降限界位置が設けられている。上記劣化診断器は、上記給気弁が開弁すると共に上記排気弁が閉弁してから上記フロートが上記上昇限界位置に到達するまでの該フロートの動き代、および、上記給気弁が閉弁すると共に上記排気弁が開弁してから上記フロートが上記下降限界位置に到達するまでの該フロートの動き代の少なくとも一方が所定値よりも小さくなると、上記弁作動機構が劣化したと判断するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本願の液体圧送装置によれば、給気弁および排気弁の開弁時(閉弁時)からフロートが移動限界位置(上昇限界位置および下降限界位置)に到達するまでのフロートの動き代が所定値よりも小さくなると、弁作動機構が劣化したと判断するようにしたので、正確に弁作動機構の劣化を認識(察知)することができる。この弁作動機構の劣化をもって液体圧送装置の寿命を正確に推定することができる。
【0009】
弁作動機構では、連結箇所等に磨耗や異物(錆、スケール等)の付着堆積等が発生すると、各部品の変位量が減少する。例えば、貯留空間の液位に対するフロートの上昇量および下降量が減少したり、フロートの上昇下降に伴う部品の変位量が減少する。そのため、弁作動機構による給気弁および排気弁の開弁(閉弁)動作が遅れる。つまり、予め設定された所定高位よりも高い位置にフロートが到達すると、給気弁が開弁すると共に排気弁が閉弁し、予め設定された所定低位よりも低い位置にフロートが到達すると、給気弁が閉弁すると共に排気弁が開弁する。そして、フロートに関しては、給気弁および排気弁が開弁してから上昇限界位置または下降限界位置に到達するまでの動き代が減少することになる。したがって、このフロートの動き代の減少度合いを把握することにより、弁作動機構の劣化度を正確に認識(察知)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る液体圧送装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、給気弁および排気弁の概略構成を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、弁作動機構に係る動き代を説明するための図である。
【
図4】
図4は、劣化診断器による診断動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0012】
本実施形態の液体圧送装置1は、例えば蒸気システムに設けられ、蒸気の凝縮によって発生したドレン(復水)を回収してボイラーや廃熱利用装置に圧送するものである。つまり、本実施形態ではドレンが本願の請求項に係る液体に相当する。
図1に示すように、液体圧送装置1は、密閉容器であるケーシング10と、給気弁20および排気弁30と、弁作動機構40とを備えている。
【0013】
ケーシング10は、本体部11と蓋部12とがボルトによって結合され、ドレン(液体)が流入して貯留される貯留空間13が内部に形成されている。蓋部12には、ドレンが流入する液体流入口14と、ドレンが排出される液体排出口15と、蒸気が導入される気体導入口16と、蒸気が排出される気体排出口17とが設けられている。本実施形態では、蒸気が本願の請求項に係る作動気体に相当する。液体流入口14は蓋部12の上部寄りに設けられ、液体排出口15は蓋部12の下部に設けられている。気体導入口16および気体排出口17は、何れも蓋部12の上部に設けられている。これら液体流入口14等は、何れも貯留空間13と連通している。
【0014】
図2にも示すように、気体導入口16には給気弁20が設けられ、気体排出口17には排気弁30が設けられている。給気弁20および排気弁30は、それぞれ気体導入口16および気体排出口17を開閉するものである。給気弁20は、蒸気を気体導入口16から貯留空間13に導入することによって貯留空間13のドレンを液体排出口15から排出させる。排気弁30は、貯留空間13に導入された蒸気を気体排出口17から排出させる。
【0015】
給気弁20は、弁ケース21、弁体22および昇降棒23を有する。弁ケース21は軸方向に貫通孔を有し、該貫通孔の上側には弁座24が形成されている。弁ケース21の中間部には、貫通孔と外部とが連通する開口25が形成されている。弁体22は、球状に形成されており、昇降棒23の上端に一体的に設けられている。昇降棒23は、弁ケース21の貫通孔に上下動可能に挿入されている。給気弁20は、昇降棒23が上昇すると弁体22が弁座24から離座して気体導入口16が開放され、昇降棒23が下降すると弁体22が弁座24に着座して気体導入口16が閉じられる。
【0016】
排気弁30は、弁ケース31、弁体32および昇降棒33を有する。弁ケース31は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔のやや上側には弁座34が形成されている。弁ケース31には、貫通孔と外部とが連通する開口35が形成されている。弁体32は、略半球状に形成されており、昇降棒33の上端に一体的に設けられている。昇降棒33は、弁ケース31の貫通孔に上下動可能に挿入されている。排気弁30は、昇降棒33が上昇すると弁体32が弁座34に着座して気体排出口17が閉じられ、昇降棒33が下降すると弁体32が弁座34から離座して気体排出口17が開放される。
【0017】
排気弁30の昇降棒33の下端には、弁操作棒36が連結されている。つまり、排気弁30の昇降棒33は弁操作棒36の上下動に伴って上下動する。また、弁操作棒36には、給気弁20の昇降棒23の下方領域まで延びる連設板37が取り付けられている。給気弁20の昇降棒23は、弁操作棒36が上昇すると連設板37によって押し上げられて上昇し、弁操作棒36が下降すると連設板37も下降するので自重で下降する。つまり、弁操作棒36が上昇すると、給気弁20は開く(開弁する)一方、排気弁30は閉じ(閉弁し)、弁操作棒36が下降すると、給気弁20は閉じる(閉弁する)一方、排気弁30は開く(開弁する)。
【0018】
弁作動機構40は、ケーシング10内に設けられ、弁操作棒36を上下動させて給気弁20および排気弁30を開弁および閉弁させるものである。弁作動機構40は、フロート41およびスナップ機構50を有する。
【0019】
フロート41は、球形に形成され、レバー42が取り付けられている。レバー42は、ブラケット44に設けられた軸43に回転可能に支持されている。レバー42には、フロート41側とは反対側の端部に軸45が設けられている。スナップ機構50は、フロートアーム51、副アーム52、コイルばね53、2つの受け部材54,55を有する。フロートアーム51は、一端部がブラケット59に設けられた軸58に回転可能に支持されている。なお、両ブラケット44,59は互いにねじによって結合され蓋部12に取り付けられている。フロートアーム51の他端部は、溝51aが形成されており、その溝51aにレバー42の軸45が嵌っている。この構成により、フロートアーム51はフロート41の上昇下降に伴い軸58を中心として揺動する。
【0020】
また、フロートアーム51には軸56が設けられている。副アーム52は、上端部が軸58に回転可能に支持され、下端部に軸57が設けられている。受け部材54はフロートアーム51の軸56に回転可能に支持され、受け部材55は副アーム52の軸57に回転可能に支持されている。両受け部材54,55の間には、圧縮状態のコイルばね53が取り付けられている。また、副アーム52には軸61が設けられ、その軸61に弁操作棒36の下端部が連結されている。
【0021】
こうして構成された弁作動機構40は、フロート41の上昇下降に伴って変位し、弁操作棒36を上下動させて給気弁20および排気弁30を開閉させる。具体的に、液体圧送装置1では、ドレンが貯留空間13に溜まっていない場合、フロート41は貯留空間13の底部に位置する。この状態において、弁操作棒36は下降しており、給気弁20は閉じられ排気弁30は開いている。そして、蒸気システムでドレンが発生すると、そのドレンは液体流入口14から流入して貯留空間13に溜まる。貯留空間13にドレンが溜まっていくに従って、フロート41は上昇する。なお、貯留空間13ではドレンが溜まっていくにつれて蒸気が気体排出口17から排出される。そして、フロート41が所定高位(通常反転高位)まで上昇すると、スナップ機構50によって弁操作棒36が上昇する。これにより、給気弁20が開くと共に排気弁30が閉じる。
【0022】
給気弁20が開くと、蒸気システム内の蒸気(高圧蒸気)が気体導入口16から流入して貯留空間13の上部(ドレンの上方空間)に導入される。そうすると、貯留空間13に溜まっているドレンは、導入された蒸気の圧力によって下方へ押されて液体排出口15から排出される。つまり、貯留空間13のドレンが圧送される。液体圧送装置1によって圧送されたドレンは、ボイラーや廃熱利用装置に供給される。ドレンの排出によって貯留空間13のドレン液位が低下すると、フロート41は下降する。そして、フロート41が所定低位(通常反転低位)まで下降すると、スナップ機構50によって弁操作棒36が下降する。これにより、給気弁20が閉じると共に排気弁30が開く。そうすると、ドレンが液体流入口14から流入して貯留空間13に溜まると共に、貯留空間13の蒸気が気体排出口17から排出される。
【0023】
さらに、本実施形態の液体圧送装置1は、
図1に示すように、開閉検出器71と、位置検出器72と、劣化診断器73とを備え、上述した弁作動機構40の劣化を診断(検出)するように構成されている。
【0024】
開閉検出器71は、ケーシング10の本体部11の上部に設けられ、貯留空間13に連通している。開閉検出器71は、液体圧送装置1の作動に伴って発生する音や振動、超音波を検出することにより、給気弁20および排気弁30が開弁または閉弁したことを検出するものである。液体圧送装置1において、作動に伴う音や振動、超音波の大きさ(レベル)は、給気弁20が開弁すると共に排気弁30が閉弁するとき、給気弁20が閉弁すると共に排気弁30が開弁するときに最大となる。開閉検出器71は、検出している音等が最大になったことをもって、給気弁20等の開弁または閉弁を検出することができる。
【0025】
位置検出器72は、ケーシング10の本体部11のやや中央に設けられ、フロート41の位置を検出するものである。位置検出器72は、先端がフロート41に接する状態で設けられたレバー72aを有している。位置検出器72のレバー72aは、フロート41に接しながら、フロート41の上昇下降に伴って回動する。
【0026】
劣化診断器73は、給気弁20および排気弁30が開弁(閉弁)してからフロート41が移動限界位置に到達するまでのフロート41の動き代(余裕代)が、どの程度減少したかによって弁作動機構40の劣化を診断するように構成されている。つまり、劣化診断器73は、給気弁20が開弁すると共に排気弁30が閉弁してからフロート41が高位側の移動限界位置に到達するまでのフロート41の動き代、および、給気弁20が閉弁すると共に排気弁30が開弁してからフロート41が低位側の移動限界位置に到達するまでのフロート41の動き代の少なくとも一方が、所定値よりも小さくなると、弁作動機構40が劣化したと判断するように構成されている。
【0027】
図3に示すように、弁作動機構40では、フロート41がこれ以上は移動(変位)できないという高位側および低位側の移動限界位置がある。高位側の移動限界位置(
図3において上側の移動限界位置)は、上述した所定高位よりも高い位置であり、本願の請求項に係る上昇限界位置に相当する。低位側の移動限界位置(
図3において下側の移動限界位置)は、上述した所定低位よりも低い位置にあり、本願の請求項に係る下降限界位置に相当する。給気弁20が開弁すると共に排気弁30が閉弁した位置(
図3に示す給気弁開位置、排気弁閉位置)から高位側の移動限界位置までのフロート41の移動距離が上述した動き代(余裕代)である。また、給気弁20が閉弁すると共に排気弁30が開弁した位置(
図3に示す排気弁開位置、給気弁閉位置)から低位側の移動限界位置までのフロート41の移動距離が上述した動き代(余裕代)である。
【0028】
劣化診断器73は、開閉検出器71および位置検出器72の検出信号が入力され、その検出信号に基づいて
図4に示す診断動作を行う。先ず、劣化診断器73は、開閉検出器71の検出信号に基づいて、給気弁20または排気弁30が閉弁(開弁)したことを検知する(ステップST1)。続いて、劣化診断器73は、位置検出器72の検出信号に基づいて、フロート41の動き代を検出する(ステップST2)。具体的に、劣化診断器73は、給気弁20または排気弁30が閉弁(開弁)した時点、即ちステップST1で検知した時点のフロート41の位置を検知し、その位置から移動限界位置までの距離を算出する。
【0029】
続いて、劣化診断器73は、ステップST2で検出したフロート41の動き代に基づいて、弁作動機構40が劣化しているか否かを判断(診断)する。具体的に、劣化診断器73は、フロート41の動き代が、予め設定された所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップST3)。そして、劣化診断器73は、フロート41の動き代が所定値以上であると、弁作動機構40は未だ大丈夫(交換するほどの劣化度合いではない)と判断する(ステップST4)。また、劣化診断器73は、フロート41の動き代が所定値よりも小さいと、弁作動機構40は劣化(寿命が低下)していると判断する(ステップST5)。こうして、弁作動機構40の劣化を正確に認識(察知)することができる。
【0030】
弁作動機構40では、フロート41やスナップ機構50における連結箇所等に磨耗や異物(錆、スケール等)の付着堆積等が発生して劣化すると、各部品の変位量が減少する。例えば、貯留空間13のドレンの液位に対するフロート41の上昇量および下降量が減少したり、フロート41の上昇下降に伴うスナップ機構50のフロートアーム51等の変位量が減少する。そのため、弁作動機構40による給気弁20および排気弁30の開弁(閉弁)動作が遅れる。つまり、
図3に示す「給気弁開位置、排気弁閉位置」が所定高位よりも高い位置にずれ、
図3に示す「排気弁開位置、給気弁閉位置」が所定低位よりも低い位置にずれる。このずれ量は、弁作動機構40の劣化度が増大するほど大きくなる。そして、給気弁20および排気弁30の開弁(閉弁)動作が遅れるほど、即ち「排気弁開位置、給気弁閉位置」等がずれるほど、上述したフロート41の動き代(余裕代)は減少していく。したがって、上述したようにフロート41の動き代の減少度合いを把握することにより、弁作動機構40の劣化を正確に認識(察知)することができる。
【0031】
以上のように、上記実施形態の液体圧送装置1によれば、給気弁20および排気弁30の開弁時(閉弁時)からフロート41が移動限界位置(上昇限界位置および下降限界位置)に到達するまでのフロート41の動き代が所定値よりも小さくなると、弁作動機構が劣化したと判断するようにした。したがって、正確に弁作動機構40の劣化を認識(察知)することができる。そして、この弁作動機構40の劣化判断をもって液体圧送装置1の寿命を正確に推定することができる。
【0032】
なお、上記実施形態の液体圧送装置1では、給気弁20および排気弁30の開弁時(閉弁時)からフロート41が移動限界位置に到達するまでのフロート41の動き代を検出するようにしたが、本願に開示の技術はこれに限らず、弁作動機構40における他の部品の動き代を検出するようにしてもよい。例えば、本願の液体圧送装置1は、フロート41の上昇下降に伴って(連動して)変位するスナップ機構50のフロートアーム51の動き代を検出し、そのフロートアーム51の動き代が所定値(上述した所定値とは異なる値)よりも小さくなると、弁作動機構40が劣化したと判断するようにしてもよい。つまり、弁作動機構40では各部品がフロート41の上昇下降に伴って変位するものであるため、フロート41以外の部品の動き代に基づいて弁作動機構40の劣化を判断することは、結果的に、フロート41の動き代に基づいて弁作動機構40の劣化を判断していることになり、本願請求項に記載の技術思想の範囲にある。
【0033】
また、上記実施形態の液体圧送装置1では、作動気体を蒸気としたが、本願に開示の技術はその他の気体を用いてもよいことは勿論である。
【0034】
また、上記実施形態の液体圧送装置1は、圧送する液体をドレンとしたが、本願に開示の技術はその他の液体を圧送するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願は、作動気体を導入して液体を圧送する液体圧送装置について有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 液体圧送装置
10 ケーシング
13 貯留空間
20 給気弁
30 排気弁
40 弁作動機構
41 フロート
73 劣化診断器