(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機フィラー含有樹脂層は、前記基材の一方の面側に設けられ、前記粘着剤層は、前記無機フィラー含有樹脂層における前記基材とは反対の面側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
前記無機フィラー含有樹脂層は、活性エネルギー線硬化性成分および前記無機フィラーを含有する組成物を硬化させた材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
〔粘着シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1Aは、基材11と、基材11の一方の面側に設けられた無機フィラー含有樹脂層12と、無機フィラー含有樹脂層12における基材11とは反対側に設けられた粘着剤層13と、粘着剤層13における無機フィラー含有樹脂層12とは反対側に設けられた剥離シート14とから構成される。
【0022】
また、
図2に示すように、本実施形態に係る粘着シート1Bは、基材11と、基材11の一方の面側に設けられた無機フィラー含有樹脂層12と、基材11における無機フィラー含有樹脂層12とは反対側に設けられた粘着剤層13と、粘着剤層13における無機フィラー含有樹脂層12とは反対側に設けられた剥離シート14とから構成される。
【0023】
また、
図3に示すように、本実施形態に係る粘着シート1Cは、基材11と、基材11の両方の面側にそれぞれ設けられた2つの無機フィラー含有樹脂層12と、無機フィラー含有樹脂層12の一方における基材11とは反対側に設けられた粘着剤層13と、粘着剤層13における無機フィラー含有樹脂層12とは反対側に設けられた剥離シート14とから構成される。
【0024】
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cでは、絶縁性を有する基材11が設けられていることにより、通常の環境下、すなわち、基材11の炭化や燃焼・分解が生じない温度および絶縁破壊が生じない電気的負荷の環境下において、良好な絶縁性が発揮される。さらに、粘着シート1A,1B,1Cが高温に曝され、基材11や無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクス(有機成分)が炭化等した場合であっても、無機フィラー含有樹脂層12中の無機フィラーが絶縁性の膜として残存するため、粘着シート1A,1B,1C自体の絶縁性が確保される。また、粘着シート1A,1B,1Cに部分的に高い電圧が印加されて、粘着シート1A,1B,1Cに対して厚み方向に電流が流れ、基材11における当該電流の経路が導体路に変化し、さらに無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクスが当該電流の経路に沿って炭化等した場合であっても、当該経路に無機フィラーが絶縁体として存在するため、粘着シート1A,1B,1C自体の絶縁性が確保される。これらにより、粘着シート1A,1B,1Cが使用される電子部品では、短絡や熱暴走の発生が抑制される。さらに、粘着シート1Aおよび1Cは、貼付対象とされる電子部品により近い位置に無機フィラー含有樹脂層が確保されることとなり、絶縁破壊による導体路の迂回経路がより形成されづらいため好ましい。
【0025】
1.基材
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cにおいて、基材11は絶縁性を有する。基材11が絶縁性を有することで、通常の環境下での使用において、粘着シート1A,1B,1Cが絶縁性を発揮することができる。
【0026】
また、基材11は、絶縁破壊を生じる最小の電圧が高いことが好ましく、例えば、当該電圧が、1kV以上であることが好ましく、特に2kV以上であることが好ましく、さらには5kV以上であることが好ましい。当該電圧が1kV以上であることにより、基材11の絶縁破壊が生じ難く、粘着シート1A,1B,1Cの信頼性が高いものとなる。
【0027】
さらに、基材11は、UL94規格の難燃レベルV−0を満たす難燃性を有することが好ましい。基材11がこのような難燃性を有することにより、粘着シート1A,1B,1Cを使用している電子部品が発熱した場合であっても、基材11の変性や変形が抑制される。また、電子部品に不具合が発生し、過度に発熱した場合であっても、基材11の発火や燃焼が抑制される。
【0028】
基材11の材料は、絶縁性を発揮できるものであれば特別に限定されず、絶縁破壊を生じる最小の電圧、誘電正接、難燃性、耐熱性、耐溶剤性等の観点から適宜選択できる。特に、基材11としては、樹脂フィルムを使用することが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等の樹脂フィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中でも、耐熱性が高く、絶縁破壊を生じる最小の電圧が高く、誘電正接が小さいという観点から、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルムまたはポリエーテルエーテルケトンフィルムを使用することが好ましく、特に、高い耐熱性を示すポリイミドフィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書において、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0029】
基材11の厚さは、2μm以上であることが好ましく、特に6μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。また、基材11の厚さは、200μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。基材11の厚さが2μm以上であることにより、基材11に適度な剛性が付与され、基材11に無機フィラー含有樹脂層12を形成する際に硬化収縮が発生した場合であってもカールの発生が効果的に抑制される。また、基材11の厚さが200μm以下であることにより、粘着シート1A,1B,1Cが適度な柔軟性を有し、段差が存在する面に粘着シート1A,1B,1Cを貼付する場合であっても、当該段差に対して良好に追従することができる。
【0030】
2.無機フィラー含有樹脂層
(1)無機フィラー含有樹脂層の組成
無機フィラー含有樹脂層12は、絶縁性の無機フィラーを含有する。無機フィラー含有樹脂層12が絶縁性の無機フィラーを含有することで、高温により基材11や無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクスが炭化や燃焼・分解した場合であっても、無機フィラー含有樹脂層12中の無機フィラーが絶縁性の膜として残存する。さらに、基材11に絶縁破壊が生じ、さらには無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクスが絶縁破壊の経路に沿って炭化等した場合であっても、当該経路に無機フィラーが絶縁体として存在する。これらによって、粘着シート1A,1B,1C自体の絶縁性が確保される。
【0031】
無機フィラー含有樹脂層12は、有機成分と無機フィラーとを含有する組成物(以下「無機フィラー含有樹脂層用組成物」ということがある。)から形成されることが好ましい。特に、無機フィラー含有樹脂層は、耐熱性の観点からハードコート層であることが好ましい。当該ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性成分と無機フィラーとを含有する組成物を硬化させた材料からなることが好ましい。なお、
図3に示される粘着シート1Cでは、2つの無機フィラー含有樹脂層12のそれぞれの組成が、同じであってもよく、あるいは、異なっていてもよい。
【0032】
(1−1)活性エネルギー線硬化性成分
活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線の照射により硬化して所望の硬度を発揮するものであれば特に限定されない。
【0033】
具体的な活性エネルギー線硬化性成分としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマー、活性エネルギー線硬化性ポリマー等が挙げられるが、中でも多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーであることが好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系プレポリマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0034】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
一方、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。プレポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性ポリマーとしては、例えば、側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下「活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)」という。)を使用することができる。活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものが好ましい。上記不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基などが好ましく挙げられる。
【0037】
本実施形態の無機フィラー含有樹脂層12がハードコート層である場合、当該ハードコート層を構成する活性エネルギー線硬化性成分は、硬化後のガラス転移点が130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、ガラス転移点が観測されないものであることが特に好ましい。活性エネルギー線硬化性成分のガラス転移点が上述の通りであることにより、ハードコート層の耐熱性が優れたものとなり、このようなハードコート層が設けられた粘着シート1A,1B,1Cを含む電子部品の性能および安全性も優れたものとなる。
【0038】
なお、本実施形態のハードコート層にて活性エネルギー線硬化性成分を2種以上使用する場合、それらの活性エネルギー線硬化性成分は、互いに相溶性に優れたものであることが好ましい。
【0039】
(1−2)その他の有機成分
活性エネルギー線硬化性成分以外に使用することのできる有機成分としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。当該成分を配合することにより、無機フィラー含有樹脂層12と基材11との密着性をより高いものにすることができる。かかる有機成分の具体例としては、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルフォン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れたポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0040】
(1−3)無機フィラー
無機フィラー含有樹脂層12における無機フィラーの含有量は、0.5〜50g/m
2であることが好ましく、特に0.5〜10g/m
2であることが好ましく、さらには0.5〜2g/m
2であることが好ましい。無機フィラーの含有量が0.5g/m
2以上であることで、高温により基材11や無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクスが炭化や燃焼・分解した場合であっても、無機フィラー含有樹脂層12中の無機フィラーが絶縁性の膜として良好に残存する。さらに、基材11に絶縁破壊が生じ、さらには無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクスが絶縁破壊の経路に沿って炭化等した場合であっても、当該経路に無機フィラーが絶縁体として良好に存在する。これらにより、粘着シート1A,1B,1C自体の絶縁性を効果的に確保することできる。また、無機フィラーの含有量が50g/m
2以下であることで、製造コストが過度に高いものとなることが回避され、さらに、無機フィラー含有樹脂層用組成物を用いた層形成が容易になる。無機フィラー含有樹脂層12における無機フィラーの含有量は、無機フィラー含有樹脂層用組成物中の無機フィラーの添加量や無機フィラー含有樹脂層12の厚さを調整することで、適宜調整することができる。
【0041】
無機フィラー含有樹脂層用組成物を使用して無機フィラー含有樹脂層12を形成する場合、無機フィラー含有樹脂層用組成物中における無機フィラーの含有量は、1〜99質量%であることが好ましく、特に10〜90質量%であることが好ましく、さらには45〜75質量%であることが好ましい。
【0042】
無機フィラーは、絶縁性を有するものであれば制限されない。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ベーマイト、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄(III)、炭化珪素、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、ベーマイト、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が好ましく、絶縁性の観点からシリカおよびアルミナが好ましく、特にシリカが好ましい。
【0043】
また、無機フィラーは、表面修飾されていることが好ましい。好ましい表面修飾されている無機フィラーとしては、反応性シリカを例示することができる。
【0044】
本明細書において「反応性シリカ」とは、活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子をいう。上記活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(反応性シリカ)は、例えば、通常、平均粒径0.5〜500nm程度、好ましくは平均粒径1〜200nmのシリカ微粒子表面のシラノール基に、当該シラノール基と反応し得る官能基(例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基等)を有する活性エネルギー線硬化性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。なお、上記活性エネルギー線硬化性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基やビニル基を好ましく挙げることができる。
【0045】
シラノール基と反応し得る官能基を有する活性エネルギー線硬化性不飽和基含有有機化合物としては、例えば一般式(I)
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2はハロゲン原子、
【化2】
で示される基である。)
で表される化合物等が好ましく用いられる。
【0046】
このような化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−イミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル酸誘導体を用いることができる。これらの(メタ)アクリル酸誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
このような反応性シリカと、前述した多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーとを含有する有機無機ハイブリッド材料(オルガノシリカゾル)としては、例えば商品名「オプスターZ7530」、「オプスターZ7524」、「オプスターTU4086」、「オプスターZ7537」(以上、JSR社製)等を使用することができる。
【0048】
好ましい無機フィラーのその他の例としては、アルミナセラミックナノ粒子、シリカ表面のシラノール基がむき出しのままのシリカ微粒子が分散媒中にコロイド状態で懸濁しているシリカゾル、シリカ表面のシラノール基がシランカップリング剤等で表面処理されたオルガノシリカゾル等が挙げられる。
【0049】
本実施形態において用いる無機フィラーは、平均粒径が1〜1000nmであることが好ましく、10〜500nmであることが特に好ましく、20〜200nmであることがさらに好ましい。無機フィラーの平均粒径が1nm以上であることで、無機フィラー含有樹脂層用組成物を硬化させた無機フィラー含有樹脂層12が、より安定的な絶縁性を有するものとなる。また、無機フィラーの平均粒径が1000nm以下であることで、無機フィラー含有樹脂層用組成物中における無機フィラーの分散性が優れたものとなり、基材11上に無機フィラー含有樹脂層12を形成した際に、無機フィラー含有樹脂層12における基材11とは反対側の面における凹凸の発生を効果的に防止することができる。さらに、当該面上に粘着剤層13を形成することで、粘着剤層13における無機フィラー含有樹脂層12とは反対側の面において非常に高い平滑性を得ることができる。これにより、粘着剤層13は被着体に対して優れた密着性を発揮することができる。なお、無機フィラーの平均粒径は、ゼータ電位測定法によって測定したものとする。
【0050】
(1−4)その他の成分
本実施形態の無機フィラー含有樹脂層12を形成するための組成物は、上述した成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、光重合開始剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、有機系充填材等が挙げられる。
【0051】
無機フィラー含有樹脂層12をハードコート層とする場合、当該ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性成分と共に、光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としては、使用する活性エネルギー線硬化性成分の光重合開始剤として機能するものであれば特に限定されないが、例えば、アシルホスフィンオキサイド系化合物、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等が挙げられる。具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン―1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが例示できる。
【0052】
上記光重合開始剤の含有量は、通常は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、特に1〜15質量部であることが好ましい。
【0053】
(2)無機フィラー含有樹脂層としてのハードコート層の物性
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cでは、無機フィラー含有樹脂層12をハードコート層とする場合、基材11上に形成された状態における当該ハードコート層のJIS K5600−5−4に準拠して測定される鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、特にH以上であることが好ましい。ハードコート層がこのような鉛筆硬度を有することで、優れた耐熱性を発揮することができる。なお、ハードコート層の鉛筆硬度の上限値は特に制限されないものの、段差に対する優れた追従性が得られる観点から、9H以下であること好ましく、特に6H以下であることが好ましく、さらには3H以下であることが好ましい。なお、
図3に示される粘着シート1Cでは、2つのハードコート層のそれぞれの鉛筆硬度が、同じであってもよく、あるいは、異なっていてもよい。なお、ハードコート層の鉛筆硬度は、後述する試験例に示す通りである。
【0054】
(3)無機フィラー含有樹脂層の厚さ
無機フィラー含有樹脂層12の厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、無機フィラー含有樹脂層12の厚さは、10μm以下であることが好ましく、特に7μm以下であることが好ましく、さらには4μm以下であることが好ましい。無機フィラー含有樹脂層12の厚さが0.1μm以上であることにより、高温により基材11が炭化や燃焼・分解したり、基材11が絶縁破壊した場合であっても、無機フィラーによる絶縁性を効果的に発揮することができる。また、無機フィラー含有樹脂層12の厚さが10μm以下であることにより、粘着シート1A,1B,1Cが適度な柔軟性を有し、段差が存在する面に粘着シート1A,1B,1Cを貼付する場合であっても、粘着シート1A,1B,1Cが当該段差に対して良好に追従することができる。なお、
図3に示される粘着シート1Cでは、2つの無機フィラー含有樹脂層12のそれぞれの厚さが、同じであってもよく、あるいは、異なっていてもよい。
【0055】
3.粘着剤層
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cにおいて、粘着剤層13は、少なくとも一方の面における最外層(剥離シートを除く)として設けられる。なお、
図1〜3にそれぞれ示される粘着シート1A,1B,1Cは、一層の粘着剤層13を有するものの、粘着剤層13をさらにもう一層設けてもよい。例えば、
図1に示される粘着シート1Aでは、基材11における無機フィラー含有樹脂層12とは反対側の面に粘着剤層13を追加してもよい。また、
図2に示される粘着シート1Bでは、無機フィラー含有樹脂層12における基材11とは反対側の面に粘着剤層13を追加してもよい。さらに、
図3に示される粘着シート1Cでは、図中上側の無機フィラー含有樹脂層12における基材11とは反対側の面に粘着剤層13を追加してもよい。
【0056】
(1)粘着剤層の組成
粘着剤層13を構成する粘着剤としては特に限定されず、難燃性、耐熱性、絶縁性等の観点から適宜選択することができる。特に、粘着剤層13を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤およびウレタン系粘着剤が好ましい。中でも、無機フィラー含有樹脂層12や電極等との密着性、後述する粘着剤層13の120℃における貯蔵弾性率や粘着力の微妙な調整の容易さ等の観点から、特にアクリル系粘着剤が好ましい。
【0057】
(1−1)アクリル系粘着剤
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有することが好ましく、特に、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体が架橋剤によって架橋されたものを含有することが好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマーとして、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応する官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体であることが特に好ましい。
【0059】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40〜99質量%含有することが好ましく、特に50〜90質量%含有することが好ましく、さらには75〜85質量%含有することが好ましい。
【0061】
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内にヒドロキシ基を有するモノマー(ヒドロキシ基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体におけるヒドロキシ基の架橋剤との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体におけるカルボキシ基の架橋剤との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを0.1〜40質量%含有することが好ましく、特に0.5〜20質量%含有することが好ましく、さらには1.0〜4.0質量%含有することが好ましい。反応性官能基含有モノマーの含有量が0.1質量%以上であることにより、後述の架橋剤を介して架橋構造を構築することにより得られる粘着剤の凝集力を、効果的に向上させることができる。また、当該含有量が40質量%以下であることにより、所望の粘着性が得られ易い。
【0066】
上記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は30万〜250万であることが好ましく、特に40万〜190万であることが好ましく、さらには70万〜160万であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量が30万以上であると、粘着剤層13の耐久性が優れたものとなる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量が250万以下であると、良好な塗工性が得られる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0069】
なお、上記アクリル系粘着剤において、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
架橋剤としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。なお、架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でもヒドロキシ基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0072】
架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることが好ましく、さらには1〜3質量部であることが好ましい。
【0073】
重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体と、架橋剤とを含有する粘着性組成物を加熱等すると、架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成する反応性官能基含有モノマーの反応性官能基と反応する。これにより、架橋剤によって(メタ)アクリル酸エステル重合体が架橋された構造が形成され、得られる粘着剤のゲル分率を所望の値にすることができ、粘着剤の凝集力、ひいては強度や耐久性が向上する。
【0074】
上記アクリル系粘着剤には、所望により、通常使用されている各種添加剤、例えば屈折率調整剤、帯電防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、光硬化剤、光重合開始剤などを添加することができる。
【0075】
(1−2)シリコーン系粘着剤
シリコーン系粘着剤は、オルガノポリシロキサン、特に付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有することが好ましい。付加型オルガノポリシロキサンは、シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0076】
シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、次の平均単位式(II)で示される化合物であって、かつ分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する化合物であることが好ましい。
R
1aSiO
(4−a)/2・・・(II)
(式中、R
1は互いに同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0077】
上記R
1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、硬化時間の短さおよび生産性の点から、ビニル基が好ましい。
【0078】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中にSiH基を有する。上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基とが反応することにより、両者は付加反応し、付加型オルガノポリシロキサンが得られる。
【0079】
付加型オルガノポリシロキサンは、白金触媒の存在下で良好に硬化するため、上記シリコーン系粘着剤は、白金触媒を含有することが好ましい。白金触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフェン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等を例示することができる。
【0080】
上記シリコーン系粘着剤中における白金触媒の含有量は、付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.01〜3質量部であることが好ましく、特に0.05〜2質量部であることが好ましい。白金触媒の含有量が上記の範囲内にあることにより、塗工を妨げることなく、付加型オルガノポリシロキサンを硬化させ、粘着剤層13を形成することができる。
【0081】
付加型オルガノポリシロキサンには、粘着力を高めるため、分子中に3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン)を含有させることができる。
【0082】
上記シリコーン系粘着剤中における3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンの含有量は、付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して0〜100質量部であることが好ましく、特に5〜70質量部であることが好ましく、さらには10〜50質量部であることが好ましい。
【0083】
(1−3)ゴム系粘着剤
ゴム系粘着剤は、ゴム弾性成分としてのA−B−A型ブロック共重合体と、粘着付与剤と、所望によりさらに、劣化防止のために抗酸化剤を含有するのが好ましい。
【0084】
A−B−A型ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−オレフィン−スチレン共重合体,ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0085】
ゴム系粘着剤中におけるゴム弾性成分の含有量は、5〜50質量%であるのが好ましく、特に7〜45質量%であるのが好ましい。ゴム弾性成分の含有量が5質量%以上であることで、ゴム系粘着剤の凝集力を高く維持することができ、ゴム弾性成分の含有量が50質量%以下であることで、粘着層の粘着力を適度に高いものとすることができる。
【0086】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油系樹脂、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0087】
ゴム系粘着剤中における粘着付与剤の含有量は、10〜70質量%であるのが好ましく、特に15〜60質量%であるのが好ましい。粘着付与剤の含有量が10質量%未満であると、粘着層の粘着力が低下し、粘着付与剤の含有量が70質量%を超えると、ゴム系粘着剤の凝集力が低くなり過ぎるおそれがある。
【0088】
抗酸化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、メルカプトベンゾイミダゾール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェノール)シクロヘキサン、フェニル−β−ナフチルアミン等が挙げられる。
【0089】
抗酸化剤を使用する場合、ゴム系粘着剤中における抗酸化剤の含有量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、特に0.2〜5質量%であるのが好ましい。
【0090】
(2)粘着剤/粘着剤層の物性
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cでは、粘着剤層13の120℃における貯蔵弾性率は、1〜500kPaであることが好ましく、特に10〜200kPaであることが好ましく、さらには40〜100kPaであることが好ましい。当該貯蔵弾性率が上記範囲であることにより、比較的高い温度の条件下であっても粘着剤層13は十分な硬さを有する。そのため、粘着シート1A,1B,1Cに圧力が加わる場合であっても、粘着剤層13が変形しにくく、粘着剤層13が基材11および無機フィラー含有樹脂層12からはみ出しにくい。これにより、粘着剤層13に起因して電子部品の不具合が生じることが抑制される。なお、粘着剤層13の120℃における貯蔵弾性率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0091】
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cでは、粘着剤層13を構成する粘着剤のゲル分率は、20〜100%であることが好ましい。特に、粘着剤層13を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤である場合には、ゲル分率が、20〜98%であることが好ましく、特に50〜95%であることが好ましく、さらには70〜85%であることが好ましい。ゲル分率が20%以上であることにより、粘着剤の凝集力が十分なものとなる。また、ゲル分率が98%以下であることにより、粘着シート1A,1B,1Cが適度な柔軟性を有し、段差が存在する面に粘着シート1A,1B,1Cを貼付する場合であっても、当該段差に対して良好に追従することができる。なお、ゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0092】
(3)粘着剤層の厚さ
粘着剤層13の厚さは、1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましく、さらには4μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層13の厚さは、50μm以下であることが好ましく、特に15μm以下であることが好ましく、さらには9μm以下であることが好ましい。粘着剤層13の厚さが1μm以上であることにより、粘着シート1A,1B,1Cは十分な粘着力を発揮することができる。また、粘着剤層13の厚さが50μm以下であることにより、粘着剤層13中の残留溶剤や気泡の混入等を防ぎ、上述した貯蔵弾性率や後述する粘着力の調整が容易となる。
【0093】
4.剥離シート
剥離シート14は、粘着シート1A,1B,1Cの使用時まで粘着剤層を保護するものであり、粘着シート1A,1B,1Cを使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cにおいて、剥離シート14は必ずしも必要なものではない。
【0094】
剥離シート14としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0095】
剥離シート14の剥離面(粘着剤層13と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系等の剥離剤が挙げられる。
【0096】
剥離シート14の厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0097】
5.粘着シートの物性等
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cのアルミニウム板に対する粘着力は、0.1〜20N/25mmであることが好ましく、特に0.5〜10N/25mmであることが好ましく、さらには1〜5N/25mmであることが好ましい。ここでいう粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定した粘着力をいい、詳細な測定方法は後述する試験例にて示す通りである。
【0098】
剥離シートを含まない粘着シート1A,1B,1Cの厚さは、5〜250μmであることが好ましく、特に10〜110μmであることが好ましく、さらには15〜45μmであることが好ましい。
【0099】
〔粘着シートの製造方法〕
本実施形態に係る粘着シート1Aは、例えば、基材11と無機フィラー含有樹脂層12との積層体、および粘着剤層13と剥離シート14との積層体をそれぞれ作製し、無機フィラー含有樹脂層12と粘着剤層13とが接するようにこれらの積層体を貼合することで製造することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る粘着シート1Bは、例えば、基材11と無機フィラー含有樹脂層12との積層体、および粘着剤層13と剥離シート14との積層体をそれぞれ作製し、基材11と粘着剤層13とが接するようにこれらの積層体を貼合することで製造することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る粘着シート1Cは、例えば、基材11の両面に無機フィラー含有樹脂層12が形成された積層体、および粘着剤層13と剥離シート14との積層体をそれぞれ作製し、無機フィラー含有樹脂層12の一方と粘着剤層13とが接するようにこれらの積層体を貼合することで製造することができる。
【0102】
なお、無機フィラー含有樹脂層12と粘着剤層13との密着性を向上させる観点から、これらのいずれかの層の貼合する面または両方の層の貼合する面に対し、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を行ってから両層を貼合することも好ましい。
【0103】
基材11と無機フィラー含有樹脂層12との積層体は、例えば、次のように作製することができる。まず、基材11の一方の主面に対して、無機フィラー含有樹脂層用組成物と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を塗布し、乾燥させる。塗布剤の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、マイヤーバー法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。乾燥は、例えば80〜150℃で30秒〜5分程度加熱することによって行うことができる。
【0104】
その後、上記塗布剤を乾燥させてなる層に活性エネルギー線を照射することにより、当該層を硬化させて無機フィラー含有樹脂層12を形成する。活性エネルギー線としては、例えば、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを使用でき、具体的には、紫外線や電子線などを使用することができる。特に、取扱いが容易な紫外線が好ましい。紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50〜1000mW/cm
2程度であることが好ましい。また、光量は、50〜10000mJ/cm
2であることが好ましく、80〜5000mJ/cm
2であることがより好ましく、200〜2000mJ/cm
2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10〜1000krad程度が好ましい。
【0105】
粘着剤層13と剥離シート14との積層体は、例えば以下のように作製することができる。
【0106】
アクリル系粘着剤を使用して粘着剤層13を形成する場合、上述のアクリル系粘着剤および所望により溶剤を含有する塗布溶液を、剥離シート14の剥離面に塗布し、加熱処理を行って、塗膜を形成する。形成された塗膜は、養生期間が不要な場合は、そのまま粘着剤層13となり、養生期間が必要な場合は、養生期間経過後に粘着剤層13となる。
【0107】
上記加熱処理は、塗布溶液の希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。アクリル系粘着剤が、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体および架橋剤を含有する場合、加熱処理により、架橋剤によって(メタ)アクリル酸エステル重合体が架橋された構造が形成される。
【0108】
シリコーン系粘着剤を使用して粘着剤層13を形成する場合、例えば、付加型オルガノポリシロキサンと、所望により3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンと、白金触媒とを、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、キシレン等の溶媒で10〜60質量%程度に希釈した塗布溶液を、剥離シート14の剥離面に塗布し、加熱して硬化させることで、粘着剤層13を形成することができる。加熱温度は、90〜180℃程度であることが好ましく、加熱時間は1〜5分間程度であることが好ましい。
【0109】
本実施形態に係る粘着シート1Aの他の製造方法としては、基材11上に無機フィラー含有樹脂層12および粘着剤層13を順に形成することで、粘着シート1Aを製造してもよい。また、本実施形態に係る粘着シート1Bの他の製造方法としては、基材11のそれぞれの面に、無機フィラー含有樹脂層12および粘着剤層13を形成することで、粘着シート1Bを製造してもよい。また、本実施形態に係る粘着シート1Cの他の製造方法としては、基材11の両面に無機フィラー含有樹脂層12を形成した後、無機フィラー含有樹脂層12の一方に対して粘着剤層13を積層することで、粘着シート1Cを製造してもよい。
【0110】
〔粘着シートの使用方法〕
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cは、電子部品に好ましく使用することができる。電子部品の例としては、フレキシブルプリント基板、電池、リジッド基板、モーター等が挙げられる。特に、粘着シート1A,1B,1Cは、電子部品において、電流が流れる導電体に接触した状態で使用することができる。この場合、粘着シート1A,1B,1Cの粘着剤層13側の面を当該導電体に貼付してもよく、あるいは、基材11側の面を当該導電体に接触させてもよい。さらには、粘着シート1A,1B,1Cの両面を導電体に接触させてもよい。粘着シート1A,1B,1Cは、例えば、電子部品において、電気回路といった導電体を保護する目的で使用することができる。また、粘着シート1A,1B,1Cは、電子部品において、電極といった導電体を固定する目的で使用することができる。
【0111】
本実施形態に係る粘着シート1A,1B,1Cでは、絶縁性の基材11が設けられていることにより、通常時において良好な絶縁性を有する。さらに、高温により基材11や無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクスが炭化や燃焼・分解した場合であっても、無機フィラー含有樹脂層12中の無機フィラーが絶縁性の膜として残存するため、粘着シート1A,1B,1C自体の絶縁性が確保される。また、粘着シート1A,1B,1Cに部分的に高い電圧が印加されて、粘着シート1A,1B,1Cに対して厚み方向に電流が流れ、基材11における当該電流の経路が導体路に変化し、さらに無機フィラー含有樹脂層12中のマトリクスが当該電流の経路に沿って炭化等した場合であっても、当該経路に無機フィラーが絶縁体として存在するため、粘着シート1A,1B,1C自体の絶縁性が確保される。これらにより、粘着シート1A,1B,1Cが使用される電子部品では、短絡や熱暴走の発生が抑制される。
【0112】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0113】
例えば、粘着シート1A,1B,1Cにおいて、剥離シート14は省略されてもよい。また、粘着シート1A,1B,1Cにおいて、基材11と無機フィラー含有樹脂層12との間には、その他の層が設けられてもよい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0115】
〔実施例1〕
1.基材上における無機フィラー含有樹脂層の形成
活性エネルギー線硬化性成分としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(硬化後にガラス転移点が観測されない材料)40質量部と、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部と、無機フィラーとしてのオルガノシリカゾル(日産化学社製,商品名「MEK−ST」;平均粒径30nm)60質量部(固形分換算値;以下同じ)とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の無機フィラー含有樹脂層用塗布液を調製した。
【0116】
基材としてのポリイミドフィルム(東レデュポン社製,商品名「カプトン100H」,厚さ25μm,UL94規格の難燃レベルV−0)の一方の面に、上記塗布液をナイフコーターで塗布した後、70℃で1分間乾燥させた。次に、その塗膜に対して紫外線(照度230mW/cm
2,光量510mJ/cm
2)を照射することにより、当該塗膜を硬化させた。これにより、基材の一方の面に、2.0g/m
2の無機フィラーを含有する厚さ2μmの無機フィラー含有樹脂層が形成された第1の積層体を得た。
【0117】
2.剥離シート上における粘着剤層の形成
アクリル酸ブチル77質量部、アクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸3質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この重合体の分子量を後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は90万であった。次に、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,商品名「BHS8515」)2.2質量部と、架橋剤としてのアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)(綜研化学社製,商品名「M−5A」)0.3質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の粘着剤層用塗布液を調製した。
【0118】
得られた塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,商品名「PET251130」)の剥離処理面にナイフコーターで塗布したのち、120℃で1分間加熱処理した。これにより、剥離シートの剥離処理面に、厚さ5μmのアクリル系粘着剤からなる粘着剤層が積層された第2の積層体を得た。
【0119】
3.粘着シートの作製
上記の通り作製した第1の積層体の無機フィラー含有樹脂層側の面と、上記の通り作製した第2の積層体の粘着剤層側の面とを貼合し、粘着シートを得た。
【0120】
〔実施例2〕
ポリアミドイミド樹脂(東洋紡社製,商品名「バイロマックスCHX02」)45質量部と、無機フィラーとしてのオルガノシリカゾル(日産化学社製,商品名「MEK−ST」)60質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の無機フィラー含有樹脂層用塗布液を調製した。当該無機フィラー含有樹脂層用塗布液を使用したこと以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、この粘着シートにおける、無機フィラー含有樹脂層中の無機フィラーの含有量は、1.2g/m
2であった。
【0121】
〔実施例3〕
シリコーン系粘着剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,商品名「SD-4584」)100質量部と、触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,商品名「CAT−SRX−212」)0.5質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の粘着剤層用塗布液を調製した。当該粘着剤層用塗布液およびポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をフッ素系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,商品名「PET50FD」)を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0122】
〔実施例4〕
ポリイソブチレン(日本ブチル社製,商品名「Exxon Butyl 268」)100質量部と、メタクリロイル基含有ポリイソプレンゴム(クラレ社製,商品名「UC−203」)5質量部と、脂肪族系石油樹脂(日本ゼオン社製,商品名「クイントンA100」)20質量部とを混合し、トルエンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の粘着剤層用塗布液を調製した。当該粘着剤層用塗布液を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0123】
〔実施例5〕
活性エネルギー線硬化性成分としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部と、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部と、無機フィラーとしてのアルミナセラミックナノ粒子(ビックケミージャパン社製,商品名「NANOBYK−3601」)60質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の無機フィラー含有樹脂層用塗布液を調製した。当該無機フィラー含有樹脂層用塗布液を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、この粘着シートにおける、無機フィラー含有樹脂層中の無機フィラーの含有量は、2.2g/m
2であった。
【0124】
〔実施例6〕
アクリル酸ブチル60質量部、アクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸20質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この重合体の分子量を後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は60万であった。当該(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,商品名「BHS8515」)2.2質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の粘着剤層用塗布液を調製した。当該粘着剤層用塗布液を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0125】
〔実施例7〕
アクリル酸ブチル99質量部およびアクリル酸4−ヒドロキシブチル1質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この重合体の分子量を後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は150万であった。当該(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,商品名「BHS8515」)2.2質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の粘着剤層用塗布液を調製した。当該粘着剤層用塗布液を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0126】
〔実施例8〕
活性エネルギー線硬化性成分としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部と、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部と、無機フィラーとしての反応性シリカ(表面にアクリロイル基を有するシリカ微粒子であって、表面修飾前のシリカ微粒子の平均粒径が15nmであるもの)60質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度20質量%の無機フィラー含有樹脂層用塗布液を調製した。当該無機フィラー含有樹脂層用塗布液を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、この粘着シートにおける、無機フィラー含有樹脂層中の無機フィラーの含有量は、2.0g/m
2であった。
【0127】
〔実施例9〕
第1の積層体の基材側の面と、第2の積層体の粘着剤層側の面とを貼合した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0128】
〔実施例10〕
第1の積層体の基材側の面と、第2の積層体の粘着剤層側の面とを貼合した以外、実施例2と同様にして粘着シートを製造した。
【0129】
〔比較例1〕
第1の積層体の替わりに、基材としてのポリイミドフィルム(東レデュポン社製,商品名「カプトン100H」,厚さ25μm)を使用し、その基材の一方の面と、第2の積層体の粘着剤層側の面とを貼合した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0130】
〔試験例1〕(粘着力の測定)
粘着シートの粘着力は、以下に示す操作以外、JIS Z0237:2009に準じて測定した。
【0131】
実施例または比較例で得られた粘着シートを幅25mm、長さ250mmに裁断した後、剥離シートを剥離することで試験片を得た。この試験片の露出した粘着剤層を、23℃、50%RHの環境下で、被着体としてのアルミニウム板に2kgゴムローラーを用いて貼付した後、同環境下に20分放置した。その後、万能型引張試験機(オリエンテック社製,テンシロンUTM−4−100)を用いて、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで試験片を上記アルミニウム板から剥離することにより、その粘着力(N/25mm)を測定した。この測定値を粘着力とした。結果を表1に示す。
【0132】
〔試験例2〕(絶縁破壊電圧の測定)
実施例または比較例の粘着シートの製造に使用した基材について、JIS C2107の項目17「絶縁耐力」に準じて、絶縁破壊を生じる最小の電圧(以下「絶縁破壊電圧」という場合がある。)を測定した。具体的には、まず、基材を300mm×300mmに裁断して、試験片を得た。次に、当該試験片の両面を、耐電圧測定器(計測技研社製,商品名「AC耐電圧試験器7220」)の電極で挟んだ。このとき、電極が試験片の中央に接するようにした。次に、電流を10mAとし、電圧を0Vから絶縁破壊が生じるまで、500V/sの速度で昇圧させた。このときに測定された、絶縁破壊が生じた電圧を記録した。結果を表1に示す。
【0133】
〔試験例3〕(通常時の絶縁性の評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートの剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層をアルミニウム板に貼合して、試験片を得た。その後、デジタルハイテスタ(日置電機社製,商品名「3802−50」)を用いて、この試験片の粘着シート側の面とアルミニウム板側の面との間の抵抗値を測定した。これにより、粘着シートの厚み方向の抵抗値を測定した。
【0134】
測定された粘着シートの厚み方向の抵抗値に基づいて、以下の判断基準により、粘着シートの通常時の絶縁性を評価した。評価結果を表1に示す。
○…粘着シートの厚み方向の抵抗値が1.0×10
10Ω以上
×…粘着シートの厚み方向の抵抗値が1.0×10
10Ω未満
【0135】
〔試験例4〕(加熱後の絶縁性の評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートの剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層をアルミニウム板に貼合して、試験片を得た。この試験片を、800℃の窒素雰囲気環境下にて1時間加熱した。その後、デジタルハイテスタ(日置電機社製,商品名「3802−50」)を用いて、この試験片の粘着シート側の面とアルミニウム板側の面との間の抵抗値を測定した。これにより、粘着シートの厚み方向の抵抗値を測定した。
【0136】
測定された粘着シートの厚み方向の抵抗値に基づいて、以下の判断基準により、粘着シートの加熱後の絶縁性を評価した。評価結果を表1に示す。
○…粘着シートの厚み方向の抵抗値が1.0×10
10Ω以上
×…粘着シートの厚み方向の抵抗値が1.0×10
10Ω未満
【0137】
〔試験例5〕(絶縁破壊後の絶縁性の評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートの剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層をアルミニウム板に貼合して、試験片を得た。この試験片に対して、10kVの電圧を印加した。その後、デジタルハイテスタ(日置電機社製,商品名「3802−50」)を用いて、この試験片の粘着シート側の面とアルミニウム板側の面との間の抵抗値を測定した。これにより、粘着シートの厚み方向の抵抗値を測定した。
【0138】
測定された粘着シートの厚み方向の抵抗値に基づいて、以下の判断基準により、粘着シートの絶縁破壊後の絶縁性を評価した。評価結果を表1に示す。
○…粘着シートの厚み方向の抵抗値が1.0×10
10Ω以上
×…粘着シートの厚み方向の抵抗値が1.0×10
10Ω未満
【0139】
〔試験例6〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例の粘着シートの製造において、第2の積層体の粘着剤層側の面と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,商品名「PET251130」)の剥離処理面とを貼合して、両面を剥離シートで保護された粘着剤層単独からなる測定用シートを得た。
【0140】
得られた測定用シートを80mm×80mmのサイズに裁断し、粘着剤層の両面を保護する剥離シートを剥がし、ポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、酢酸エチルに25℃で24時間浸漬させた。その後、粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)を、(M2/M1)×100という計算式から算出した。結果を表1に示す。
【0141】
〔試験例7〕(貯蔵弾性率の測定)
実施例または比較例で得られた第2の積層体から剥離シートを剥がし、粘着剤層を厚さ0.6mmになるように複数層積層した。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ0.6mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0142】
上記サンプルについて、JIS K7244−6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,MCR300)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(MPa)を測定した。測定結果を表1に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:120℃
【0143】
〔試験例8〕(鉛筆硬度の評価)
実施例および比較例の粘着シートの製造の際に得られた第1の積層体における無機フィラー含有樹脂層について、JIS K 5600−5−4に準じ、鉛筆硬度を測定した。測定には、鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製,製品名「No.553−M」)を使用し、引っかき速度は、1mm/秒とした。結果を表1に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
表1から明らかなように、実施例に係る粘着シートは、比較例に係る粘着シートとは異なり、高温に曝した後および絶縁破壊を生じさせた後においても、良好な絶縁性を示した。