特許第6163645号(P6163645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163645
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】車両の乗降部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20170710BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B60R13/02 Z
   B62D25/20 G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-230253(P2013-230253)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89728(P2015-89728A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加納 義宏
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−032047(JP,U)
【文献】 特開平10−258670(JP,A)
【文献】 特開2009−046036(JP,A)
【文献】 米国特許第02657948(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側面のドア開口の下縁を構成するスカッフプレート部と、
前記スカッフプレート部の車幅方向内側に設けられ、乗員の片足によって同スカッフプレート部と同時に踏まれ得るフロアプレート部と、を備え、
前記スカッフプレート部と前記フロアプレート部とは一体形成されているとともに、前記スカッフプレート部及び前記フロアプレート部は、それらのプレート部の下方に位置する共通の支持パネルによって支持され
前記スカッフプレート部と前記フロアプレート部との境界には、前記フロアプレート部の方が低くなるように段差が設けられている、
車両の乗降部構造。
【請求項2】
車両側面のドア開口の下縁を構成するスカッフプレート部と、
前記スカッフプレート部の車幅方向内側に設けられ、乗員の片足によって同スカッフプレート部と同時に踏まれ得るフロアプレート部と、を備え、
前記スカッフプレート部及び前記フロアプレート部は、それらのプレート部の下方に位置する共通の支持パネルによって支持され、
車室内のフロアにはシートをスライド可能に支持するレールが車両前後方向に沿って延設され、
前記レールの上面はレールカバーによって覆われ、
前記フロアプレート部は前記レールカバーの側縁部まで延びるように配置され、
前記フロアプレート部の車両前方側の端部には、前記レールカバーの端部を覆う覆い部が一体に形成されている、
車両の乗降部構造。
【請求項3】
前記フロアプレート部の上面には、カーペットを取り付けるための取付部が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の車両の乗降部構造。
【請求項4】
前記取付部は前記フロアプレート部に対して一体的に設けられている、
請求項に記載の車両の乗降部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば側面にスライドドアを備えた車両に適用することができる車両の乗降部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両側面にスライドドアを備えたミニバン等の車両においては、ドア開口の下縁の乗降部に、合成樹脂製のスカッフプレートが設けられている。このスカッフプレートとしては、例えば特許文献1に示すように、ステップを備えたステップ付きの構造と、図4及び図5に示すように、ステップを備えないステップ無しの構造とが知られている。
【0003】
前記ステップ無し構造のスカッフプレートを備えた車両の乗降部構造では、図4及び図5に示すように、ドア開口41の下縁におけるボディパネル42上に、幅の狭いスカッフプレート43が車両前後方向に延びるように配置されている。ドア開口41と対応する2列目のシート44をスライド可能に構成した車両では、車室内のフロアにおけるボディパネル42上に、シート44をスライド可能に支持する一対のレール45が車両前後方向へ平行に延びるように配置されている。各レール45の上面には、開閉可能なレールカバー46が装着されている。車室内のフロアにおけるボディパネル42上には、スカッフプレート43及び両レールカバー46の配置箇所を除いて、軟質ウレタンフォームなどのクッション材48を介してカーペット47が敷設されている。カーペット47及びクッション材48は、カーペット47の上面とスカッフプレート43及び両レールカバー46の上面とがほぼ同一の高さとなるように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−168391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記ステップ無し構造のスカッフプレート43を備えた従来の乗降部構造においては、硬質材料よりなる幅狭のスカッフプレート43と、軟質材料よりなるカーペット47とがほぼ同一の高さ位置になるように並設されている。このため、乗員がドア開口41から乗降する際に、スカッフプレート43とその車幅方向内側のカーペット47とを片足で同時に踏むことが多い。このとき、スカッフプレート43とカーペット47との間に硬度差が存在するので、均一な踏み心地を得ることができず、違和感を覚えるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ドア開口からの乗降時に、スカッフプレートとその車幅方向内側の部分とを片足で同時に踏んだとしても、均一な踏み心地を得ることができる車両の乗降部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための車両の乗降部構造は、車両側面のドア開口の下縁を構成するスカッフプレート部と、前記スカッフプレート部の車幅方向内側に設けられ、乗員の片足によって同スカッフプレート部と同時に踏まれ得るフロアプレート部と、を備え、前記スカッフプレート部と前記フロアプレート部とは一体形成されているとともに、前記スカッフプレート部及び前記フロアプレート部は、それらのプレート部の下方に位置する共通の支持パネルによって支持され、前記スカッフプレート部と前記フロアプレート部との境界には、前記フロアプレート部の方が低くなるように段差が設けられている
【0008】
同構成によれば、乗員がドア開口から乗降する際に、共通の支持パネル上に支持されたスカッフプレート部とフロアプレート部とを片足で同時に踏んだとしても、違和感を覚えることはほとんどない。すなわち、スカッフプレート部及びフロアプレート部は共にパネル材から構成されているので、従来構成のスカッフプレート部及びカーペットとは異なり、両部材間に大きな硬度差を生じることはほとんどない。よって、スカッフプレート部とフロアプレート部とを片足で同時に踏んだ場合でも、均一な踏み心地を確保することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドア開口からの乗降時に、スカッフプレート部とその車幅方向内側の部分とを片足で同時に踏んだとしても、均一な踏み心地を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の車両の乗降部構造を示す要部斜視図。
図2図1の2−2線における部分断面図。
図3図1の3−3線における部分断面図。
図4】従来の車両の乗降部構造を示す要部斜視図。
図5図4の5−5線における部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両の乗降部構造の一実施形態を、図1図3に従って説明する。
図1及び図2に示すように、車両11の側面には、車両前後方向にスライド可能なスライドドア13が取り付けられており、同スライドドア13によって車両11の側面のドア開口12が開閉可能とされている。ドア開口12の下縁における金属製のボディパネル14上には、合成樹脂製の支持パネル15が車両前後方向に延びるように配置されている。支持パネル15は、その下面に突出された複数のリブ151またはボスを介してボディパネル14上に支持されるとともに、図示しないボルト等によりボディパネル14に対して固定されている。
【0012】
図1図3に示すように、前記支持パネル15上には、ドア開口12の下縁を構成するスカッフプレート部16が車両前後方向に延びるように配置されている。スカッフプレート部16の車幅方向内側において支持パネル15上には、乗員の片足によってスカッフプレート部16と同時に踏まれ得るフロアプレート部17が車両前後方向に延びるように配置されている。スカッフプレート部16とフロアプレート部17とは、合成樹脂により一体形成されている。そして、図2及び図3に示すように、スライドドア13がドア開口12を閉じる位置にスライドされたとき、スライドドア13のドアトリム131がスカッフプレート部16の上方に配置されるようになっている。
【0013】
図1及び図2に示すように、前記スカッフプレート部16及びフロアプレート部17は、それらの下面に突出して形成された複数のボス161,171を介して支持パネル15上に支持されている。両プレート部16,17の下面には、複数のクリップ18が間隔をおいて一体的に突設されている。支持パネル15の上面において各クリップ18と対応する位置には、複数のボス19が一体に突出して形成されている。各ボス19の頂部には、クリップ18に係合可能な係合孔20が形成されている。そして、各クリップ18が係合孔20に係合されることによって、両プレート部16,17が支持パネル15に対して固定されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、車室内のフロアにおけるボディパネル14上には、前記ドア開口12と対応する2列目のシート21をスライド可能に支持するための一対の金属製のレール22が車両前後方向へ平行に延びるように配置されている。図1図3に示すように、各レール22の上面には、レール22内へのゴミ等の侵入を防止するための合成樹脂製の開閉可能なレールカバー23が装着されている。そして、前記フロアプレート部17が同フロアプレート部17の車幅方向内側に位置するレールカバー23の側縁部まで延びるように配置されている。車室内のフロアにおけるボディパネル14上には、両レールカバー23の配置箇所を除いて、カーペット24が敷設されている。ボディパネル14とカーペット24との間には軟質なクッション材241が介設されている。カーペット24及びクッション材241は、カーペット24の上面とレールカバー23の上面とがほぼ同一の高さとなるように設けられている。
【0015】
図1図3に示すように、前記フロアプレート部17の上面には、カーペット25を取り付けるための複数の取付部26が間隔をおいて一体的に設けられている。図2に示すように、カーペット25の下面における各取付部26と対応する位置には、取付部26に対して係脱可能な複数の係合部27が突設されている。そして、各係合部27が取付部26に係合されることによって、カーペット25がフロアプレート部17上に着脱可能に取り付けられるようになっている。取付部26と係合部27とによってスナップボタンが構成されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、前記スカッフプレート部16とフロアプレート部17との境界には、フロアプレート部17の方が低くなるように段差28が形成されている。そして、フロアプレート部17上に薄手のカーペット25が取り付けられた状態において、両プレート部16,17間の段差28により、カーペット25の厚みが吸収されて、カーペット25とスカッフプレート部16との境界における上面間の高低差が低減されるようになっている。
【0017】
図1及び図3に示すように、前記フロアプレート部17における車両前方側の端部には、覆い部29が車幅方向内側に向かって一体に突出して形成されている。そして、支持パネル15上にスカッフプレート部16及びフロアプレート部17が固定された状態で、この覆い部29により、同フロアプレート部17の車幅方向内側に隣接するレールカバー23の車両前方側の端部が覆われるようになっている。なお、一対のレール22における車幅方向外側のレールカバー23の上記端部が、上記覆い部29により覆われる一方、車幅方向内側のレールカバー23の車両前方側の端部は、専用の端部カバー30により覆われている。
【0018】
以上説明した本実施形態に係る車両の乗降部構造によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)車両11の乗降部構造は、車両側面のドア開口12の下縁を構成するスカッフプレート部16と、そのスカッフプレート部16の車幅方向内側に設けられ、乗員の片足によって同スカッフプレート部16と同時に踏まれ得るフロアプレート部17と、を備えている。スカッフプレート部16及びフロアプレート部17は、それらのプレート部16,17の下方に位置する共通の支持パネル15によって支持されている。
【0019】
こうした構成によれば、乗員がドア開口12から乗降する際に、共通の支持パネル15上に支持されたスカッフプレート部16とフロアプレート部17とを片足で同時に踏んだとしても、違和感を覚えることはほとんどない。すなわち、スカッフプレート部16及びフロアプレート部17はともに合成樹脂のパネル材から構成されているので、従来構成のスカッフプレート部及びカーペットとは異なり、両部材間に大きな硬度差を生じることはほとんどない。よって、フロアプレート部17上に薄いカーペット25が取り付けられていても、スカッフプレート部16とフロアプレート部17とを片足で同時に踏んだ場合でも、均一な踏み心地を確保することができる。
【0020】
(2)前記スカッフプレート部16とフロアプレート部17とが一体に形成されている。こうした構成によれば、両プレート部16,17を1つの部品として構成することができて、部品点数を削減することができ、構造及び組み立ての簡略化を図ることができる。
【0021】
(3)車室内のフロアにシート21をスライド可能に支持するレール22が車両前後方向に沿って延設されるとともに、そのレール22の上面がレールカバー23によって覆われ、前記フロアプレート部17がレールカバー23の側縁部まで延びている。こうした構成によれば、レールカバー23とフロアプレート部17との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0022】
(4)前記フロアプレート部17の上面に、カーペット25を取り付けるための取付部26が設けられている。こうした構成によれば、必要に応じて取付部26により、フロアプレート部17の上面にカーペット25を容易に着脱可能に取り付けることができる。
【0023】
(5)前記取付部26がフロアプレート部17に対して一体的に設けられている。こうした構成によれば、フロアプレート部17の上面に取付部26を組み付け固定する必要がなく、取付部26の構成を簡略化することができる。
【0024】
(6)前記スカッフプレート部16とフロアプレート部17との境界に、フロアプレート部17の方が低くなるように段差28が設けられている。こうした構成によれば、フロアプレート部17上にカーペット25を取り付けた場合、両プレート部16,17間の段差28によりカーペット25の厚みを吸収することができる。よって、カーペット25とスカッフプレート部16との境界において、それらの上面間に高低差が生じることを抑制することができる。
【0025】
(7)前記フロアプレート部17に、レールカバー23の端部を覆うための覆い部29が一体に形成されている。こうした構成によれば、部品点数を削減することができて、構造及び組み付けの簡略化を図ることができる。
【0026】
<変形例>
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記実施形態に代えて、ボディパネル14をスカッフプレート部16及びフロアプレート部17の下方まで延設し、その延設部により両プレート部16,17を支持する支持パネルを構成することもできる。
【0027】
・前記実施形態において、スカッフプレート部16とフロアプレート部17との境界に設けられた段差28を省略することもできる。
・前記実施形態において、フロアプレート部17上に設けられたカーペット25用の取付部26を、マジックファスナ等の他の部材によって構成することもできる。
【0028】
・前記実施形態において、フロアプレート部17上のカーペット25用の取付部26を省略することもできる。また、フロアプレート部17上のカーペット25を省略することもできる。
【0029】
・前記実施形態において、レールカバー23の端部を覆う覆い部29をフロアプレート部17と別体に構成することもできる。
・前記実施形態に代えて、スカッフプレート部16とフロアプレート部17とを別体で構成することもできる。
【符号の説明】
【0030】
11…車両、12…ドア開口、13…スライドドア、14…ボディパネル、15…支持パネル、16…スカッフプレート部、17…フロアプレート部、18…クリップ、20…係合孔、21…2列目のシート、22…レール、23…レールカバー、25…カーペット、26…取付部、27…係合部、28…段差、29…覆い部。
図1
図2
図3
図4
図5