(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0010】
図1は本案発明の測定系の一実施例の説明図。
図1の記号は請求項に記述と同じである。
一般的なイヤホンのイヤピースを外した状態で、左右のイヤホンを音響的に結合させ、
測定と演算によってイヤホンの補正特性を求める手法の構成図を示す。以下の説明は、請求項の補足説明である。
【0011】
結合ピース CP は左右のイヤホンを音響的に結合する役割を持つ。
再生側イヤホンに供給する信号は電流源である。
再生側イヤホン の再生音は音響結合により、 検出側イヤホン に伝わり 検出側イヤホンは起電力を発生する。その起電力の 測定用信号 に対する関係はイヤホンの変換特性に依存する。検出側イヤホンの起電力を直接測定することはできないので、検出側イヤホンのイヤホン端子から得た電気信号から、左右のイヤホンの共通リード線の電圧降下を差し引くことで音響結合による検出側イヤホンの起電力割り出す。端末器のディジタル信号と電気信号の相互の変換を司る電子回路の特性を考慮に入れることで、測定精度を上げる。また、測定系は、測定精度を上げる目的で、片側チャンルだけを使って、電子回路系の特性とイヤホンの結合特性の双方を、スイッチにより切り換えて測定する。
【0012】
図1中、
PROGRAM は、端末器内部のディジタル信号処理部、
CTL は、測定系の操作インタフェース、制御、演算、記憶、を司る機能、
WG は、測定用のディジタル信号を発生する機能、
Eg は Wg が発生する測定用の信号であり、本案発明の実証に際しては、音響帯域のホワイトノイズを使っている。一般的には、その他に、インパルス信号、矩形波信号、正弦波スイープ信号があるが、いずれも、論理的に相互変換が可能である。ディジタル信号処理にはホワイトノイズが最も扱い安く、測定結果が人の聴覚とマッチングしていることから、
図4の測定結果にはホワイトノイズを使っている。
【0013】
START は、測定システムを起動させる端末器への合図、
BASE は、端末器の電子回路の特性測定を機能させる端末器への合図、
この時点で後述のスイッチは b と c が接続されているところの、端末器の内部電子回路の測定モードである。
請求項で記述の Eg0 を発生し、Em0 を測定することで、
端末器の内部定数 Zs*Zm 即ち Em0*{1/Eg0} 即ち Hsm0 を割り出す。
MES は、検出側イヤホンの起電測定を機能させる端末器への合図、
この時点で後述のスイッチは a と c が接続されているところの、左右のイヤホンの結合係数の測定モードである。
請求項で記述の Eg を発生し、Em を測定し、請求項で記述の、無視できる誤差を除去した後、
左右イヤホンの結合係数 Glr Rm*{1/Hsm0}*Em*{1/Eg} を求める。
【0014】
Wexp は、補正後の期待イヤホン特性
Hsm0 は、計測演算によって求めた 端末器の電子回路部の固有の特性、
k、Kmin は、イヤホンの共通リード線の電気抵抗の影響を除くための可変係数と
求めた k の値、
Pep は、測定演算によって求めたイヤホンの固有特性、
Qep は、
Pep と Wexp から求められた イヤホンの音質補正特性、
Uep は、
Pep を平滑化したイヤホンの固有特性、
Vep は、Uep と Wexp から求めた イヤホンの音質補正特性
【0015】
DEVICE は、端末器内部のディジタル信号と電気信号 の相互の変換部、
Zs は、ディジタル信号を電気信号に変換する電子回路の変換特性、
Zm は、電気信号をディジタル信号に変換する電子回路の変換特性、
Cs、Ls、Rs、Ms は、それぞれ、端末器の 左右のイヤホンの共通端子、左出力端子、右出力端子、マイクロホン入力端子である。
この測定例では、右出力は使わない。左右の使い分けはどちらでもよい。
【0016】
CONVERT は、端末器とイヤホンとの接続を変更する配線部、
SW は、測定モードの変更スイッチ、
c と b が接続されたときは Zs と Zm の測定モード、
c と a が接続されたときは 左右イヤホンの結合特性 の測定モード、
スイッチによって測定モードを切り換える理由は二つある。
第1には、通常の端末器では音響入力が一系統である。
第2には、いかなる端末器も、左右の電子回路の特性に、抵抗やコンデンサの定数のバラツキがあって、このバラツキが大きな誤差発生の要因となることから、電子回路の特性測定とイヤホンの起電力の測定の双方には、同一の入出力系統を使う。
Cu、Lu、Ru、Mu は配線変換部の端末器側の端子である。
Cv、Lv、Rv は配線変換部のイヤホン側の端子である。
Mv は、マイクロホン端子であるが、マイクロホンの有無にかかわらず使わない。
【0017】
EARPHONE は、計測対象のイヤホン、
Rc は、左右のイヤホンの共通リード線の電気抵抗、
Rc は、左右イヤホンの結合係数の測定上、最も大きな誤差を発生する要因である。Rc の値はイヤホンの種類によって大きく異なる。請求項に記述のように、Rc が関係する項を 極小化し、無視できるまでに小さくすることによって、左右のイヤホンの結合係数を精密に測ることができる。
補正モードで測定された Hsm0 を使って Rc が関係する項のキャンセル用信号 Ecan を発生し、Ecan 即ち k*Hsm0*Eg なる信号の k を可変し、Em に含まれる Rc が関係する項を極小化する。kmin に関しては、請求項 第7の機能 として記述。
Rl は、再生側イヤホンのリード線の電気抵抗、
Rr は、検出側イヤホンのリード線の電気抵抗、
Rl、Zl、El は、再生側イヤホンの、それぞれ、共通部を除くリード線の 電気抵抗 と電気インピーダンス と 起電力、
Rr、Zr、Er は、検出側イヤホンの、それぞれ、共通部を除くリード線の 電気抵抗
と 電気インピーダンス と 起電力、
検出側のイヤホンから発せられる再生音は Rm によって
Eg に比例した電流源として供給される。これは Rm を Rl と Zl の影響を無視できるほどに大きくすることによる。El は元々、微小であ
り、一般の供試イヤホンでは
El<<Eg*Zs となるよう測定パラメータを設計する。 である。Eg と Rm は市場で販売されている
ところの携帯端末の信号出力部の大まかな実測値とイヤホンの電気的性質の常識的範囲から設計的に決定する。
マイクロホンの起電力の検出は Zm による。
Zm の入力インピーダンスは一般的に、Rl、Zl を無視できるほど大きく、電流を消費しない。
従って、Ec と Er なる二つの起電力は 電圧として測定される。
ここで、Ec は第7の機能 で取り除かれ、Er が左右のイヤホンの音響結合による起電力として計測される。
【0018】
以上の理由によって、
検出側イヤホンの 音響結合による起電力は Eg*Hsm0*{1/Rm}*Glr として、極めて簡素に表現できることになる。
CP は、左右のイヤホンの結合ピース、
Ce、Le、Re は、左右のイヤホンの共通端子で、
それぞれ、配線変換部の Cv、Lv、Rv へ接続される。
Me は、マイクロホン端子であるが、マイクロホンの有無にかかわらず使わない。
【0019】
以下は、端末器固有の電子回路の特性 Hsm0 の計算方法についての請求項の補足説明である。
Hsm0 は 請求項において詳細を記述のように、端末器の電子回路の固有特性である ところの、信号発生系 Zs と 信号検出系 Zm の積 Zs*Zm である。
測定系が2系統ある場合は、Hsm0 は イヤホンの起電力の測定と並行して測定可能であるが、本案の特徴として、1系統の測定系で切り替えスイッチにより測定される。
さらに、Zs*Zm は Em0*{1/Eg0} で測定される。この関係式は 測定した信号 Em0 を 測定用信号 Eg0 で除して得られる定数であるが、複素数と遅延時間で表現される。周波数範囲は通常の音響信号の周波数範囲であって、一般的には20Hzか20kHzの範囲で十分である。
通常、測定用信号は音響信号帯域のホワイトノイズが用いられる。Em0 と Eg0 の遅延時間は、双方の相互相関を求めることで算出できる。
【0020】
一般的に、出力系統のアナログ変換と入力系統のディジタル変換の双方のサンプリングクロックは共通なので、演算に支障はない。極めて一部の汎用コンピューターでは双方が微弱ではあるが異なる場合があるが、これは例外であって、携帯端末装置では、例外なく、入出力の双方は同一クロックで動作する構造となっている。
【0021】
Em0 と Eg0 の遅延時間の関係を除外すると、Eg0 はホワイトノイズであって基準信号であることから、 Em0 の複素数表現またはインパルス応答表現が端末器の電子回路の特性、として表現される。
Hsm0 と Glr を求めるに必要な 相互相関と逆数と乗算などの演算の方法や手順 は信号処理の分野で公知であり、本案発名の本質ではないので、詳細説明を省略する。
【0022】
以下は、左右のイヤホンの音響結合係数 Glr を求めるに際し、測定結果から 最も実用的に必要充分な Em を測定する方法についての請求項の補足説明である。
ここでは、 前もって計測されている Hsm0 を使って、
Ecan 即ち k*Hsmo*Eg なる信号を 再生側イヤホンに供給する信号 Eg とは別に、信号処理内部で発生させる。
Ecan は遅延時間に誤差が生じないよう、あらかじめ正確に k*Hsm0*Eg となるよう、設計的に信号を作る。Eg を連続的に発生させながら、k を可変し、リアルタイムに kmin を求めるか、あらかじめ決められた時間、信号を記録しておいて、一括して kmin を求めるか、いずれかの方法がある。端末器の場合は演算部をリアルタイムに動作させるか、またはリアルタイムと同様に動作させるには面倒な手続が必要とされることから、記録した計測信号について一括演算処理する方法が便利である。
kmin を求めるには、k を可変し、請求項に記述の ABS(Em−Ecan) が最小になる k を求めることで必要充分である。
【0023】
Hsm0 や Glr を校正するラメーターの一つである遅延時間が、1サンプリングクロック単位ではない場合、例えば、
信号出力と信号入力がサンプリング周期に半サイクルのずれがある場合、
約30マイクロ秒から100マイクロ秒の音響結合による伝搬遅延時間がある場合、
が想定されるが、この遅延時間のサンプリング周期の半端の分を算出する場合、サンプリングポイントにある時刻の前のサンプリング時刻と次のサンプリング時刻を分割する比率よって、前のサンプリング値と次のサンプリング値のウェイトによって、その時刻のサンプリング値を近似値として算出することができる。
【0024】
以下は、請求項に記述の Pep*Pep と Qep と Uep*Uep と Vep に関する補足説明である。
左右のイヤホンを音響結合して一方を再生側、他方を検出側 とすることで、測定したイヤホンの結合特性からイヤホンの再生特性を割り出す場合、同じ変換特性を保つイヤホン
がカスケードに接続されることから、結合特性が再生特性の自乗に依存する性質に基づくことによる。同様なことであるが、再生特せいの自乗は結合特性に対応する。
【0025】
以下は、比例項の除去に関する請求項の補足説明である。
請求項に 比例項の除去 という記述があるが、これは、音響特性を横の周波数軸と縦の強度軸の双方の対数での表現が人の感性に対応していることに起因するものである。
イヤホンの音響特性 Pep または Uep に 特定の比例係数を乗算することは 対数軸では全帯域で一定値を加算することと同じであることから、
Pep または Uep に含まれる 比例係数をどのような値に決定しようと、音質を特徴付ける特性のパターンは縦軸に並行移動するだけで音質特性の本質は変わらない。仮に、結論づけられた
Pep または Uep が比例係数を持っていたとしても、最終的には感度調整という方法によって、実用段階で調整される。
従って、Em−Ecan に含まれる {1/Rm} の項を無視することができる。
【0026】
Qep は {1/Pep} として表現されるところの、Pep の逆関数である。
一般的に任意の Pep に関して、その逆関数が実現可能な定数として算出できる、とは限らない。しかし、複数個ではあるが有数のフィルターの種類とパラメーターを調整することで、限られた条件内で、最も近いフィルターを構成することができる。
たとえば、12個の二次のフィルターのパラメーターを調整し、近似させることもできるし、例え1個の二次のフィルターでも、それなりに、最も近いパラメーターを決定することができる。
Pep に対応する インパルス応答を算出することで、そのインパルス応答から逆関数を算出することもできる。また、与えられたタップ数と可変範囲の範囲で、FIRフィルターのタップの係数を調整し、Pep の逆関数を求めることができる。
逆数に関しては、1/Rm、1/Eg0、1/Hsm0、1/Eg、1/Uep、も同様である。
Uep の場合は Pep の平滑化特性 であることから、逆数を得る計算行程で有限でない項が現れることは実応用面で極めて希であり、事実上皆無である。このことは請求項2に記述の Pep の平滑化は極めて有効な方法である。
逆数を求める具体的計算手順は公知であり、本案発明の本質には属さないことから、詳細説明を省略する。
【0027】
以下は スムーシングされた
Pep を元にスムーシングを作用させた Uep の算出方法に関する 請求項2 の補足説明である。
特定の周波数上の特性の、その付近の平均を取る方法に関して、
人の聴覚が周波数軸に対しても強度に対しても対数的に表現されることから、対数周波数軸の範囲で対数強度を平均化する方法が一般的である。
最も簡単な方法として、フーリエ変換された周波数軸は通常リニア尺度であることから、対数軸に換算して平均化するには、その周波数の付近において、対数軸でのウェイトが必要である。その一つの方法として特定の係数、たとえば、オクターブを対数的に 8分割 あるいは 16分割 あるいは 32分割 し、それらの周波数軸上の強度の相乗平均または加算平均を求める。それを全周波数帯で実行し、全体のスムースな特性を求める。強度の相乗平均または相加平均を求める際、求める周波数からの離れる程度にウェイトを設ける手法もある。
【0028】
また、特定の周波数範囲で、表現可能な曲線の条件群を設定し、その条件群の制約の範囲内で表現できる曲線であって、元の特性に最も近い曲線を求める方法がある。表現可能な曲線の条件とは、例えば、曲線の次数を設定し、曲線が決定される関数表現のパラメーター群と、その関数の制約条件である境界条件群によって曲線を求める。
その求め方についても幾つかの方法があって、最小自乗法のような手法を利用して一義的に期待する特性に最も近い曲線を表現するパラメーター群を求める方法もあれば、適応制御的に、パラメーターを操作しながら最も近い曲線を表現するパラメーター群を探し当てる方法もある。境界条件とは、範囲内の特性の 両端の値、傾斜値、最大傾斜値 などがある。いずれにしてもこれらのスムーシングの方法は公知あり、本案の本質とするところではないので、詳細説明を省略する。
【0029】
以上の説明と請求項での記述のように、
解決しようとする課題 第1、第2、第3 が 解決するための手段 第1、第2、第3、第4、第5 によって 解決される。
【0030】
図2は簡素化した原理説明のブロック図である。請求項と
図1は測定精度を高めるための信号処理の構造を正確に記述するものであるが、
図2は以下のように、計測に不要な項を設計的に取り除くことで、実用的なわかりやすく簡素に表現したものである。測定精度を上げるために、信号源を電流源とすることによって、不要な多くのファクターを無視できる測定系とすることができる。さらに、電子回路の特性を知ることで、適応制御によって、端末器で測定はできないが、測定対象には不要なファクターを取り除くことができ、端末器だけの機能で、左右のイヤホンの結合係数を測定できる。記号と演算の表現式は請求項と同じである。
【0031】
再生側イヤホンには電流源信号が加えられるので、検出側のイヤホン端子の起電力はディジタル化された段階で 共通リード線の電圧降下 と 検出側イヤホンの音響結合による起電力の和 となる。
Ec*Zm は測定された Hsm0 を利用して、係数 k による適応制御により 生成した 信号 Ecan によって 相殺される。
結果、 Er の項である Glr*Eg*Zs*Zm*{1/Rm} 即ち
Glr*Eg*Hsm0*{1/Rm} が測定値から演算行程を経て抽出される。
ここで、 Rm は比例係数なので、音質補正とは無関係のファクターであり、削除することができる。
Eg と Hsm0 は測定系では既知のファクターであり、結果、
Glr を Rm*{1/Hsm0}*{Em−Ecan}*{1/Eg} として求めることができる。Glr は、比例係数であるところの Rm を除いて、他の全てのファクターは 完全に既知の設計値 と 精密な実測値で表現されることを示す。
【0032】
本案の重要なところは、
測定によって、端末器の電子回路特性を既知の定数とすること、
検出側イヤホンへの電気信号を電流源とすること、
端末器のマイク入力がイヤホンにくらべ高インピーダンスであることを利用すること、
適応制御によって、計測できないファクターである イヤホンの共通リード線の電気抵抗 のファクターを高精度で取り除くこと、
である。
【0033】
図3は、左右のイヤホンのリード線が一部を共有する場合の音響結合の説明図。
一般的なイヤホンのイヤピースを装着した状態で、左右のイヤホンを音響的に結合した状態を示す。
1 と 2 は、それぞれ左と右のイヤホン、3 は結合ピース、4 は測定用の電気信号の入力方向、5 は左のイヤホンの再生音が右のイヤホンに伝わる方向、6 は右のイヤホンの端子信号、7 はイヤホンプラグ、8 は左右のイヤホンのリード線の分岐点、9 は左右のイヤホンの共通リード線の部分、10 は左右のリード線の共通端子、11 は左のイヤホンのリード線、21 は右のイヤホンのリード線、12 は左イヤホンのリード線の端子、22 は右イヤホンのリード線の端子である。
左右のグランド線を共有している部分の長さはイヤホンの種類によっても異なる。中には、グランド線の共有部分がない種類もある。一般的には、イヤホンプラグの内部や携帯端末の内部の配線にも左右のグランド線の共有部分があるので、厳密には、全てのイヤホンでグランド線の共有部分が存在する、と考えられる。
【0034】
イヤホンによっては、マイクロホンを付属しているものがあるが、マイクロホンの有無にかかわらず、マイクロホン系統の端子は測定系に接続しない。
【0035】
図4は 本案の一実施例による、4種類の市販のイヤホンの 特性の補正 と 演算途中の特性と 補正特性 と 補正後の再生特性 を示す。
細かく、刃こぼれのような大半のギザギザの特性は入力信号がホワイトノイズであることによるもので、測定対象のイヤホンの特性ではない。中には、局部共振による極めて細かいリップルも含まれている。いずれにしても、細かい音質特性については、一般の音楽のリスニングで感じるものではない。期待再生特性 Wexp が 1 即ち、期待特性が平坦の場合である。特性図の 40Hz 以下の周波数帯域での著しい低音減衰は 特性の観測に使ったモニター用の FFT の特性であって、演算結果そのものを示すものではない。
【0036】
図4(a)は、市場では最も安価で、低音再生の強度が小さい一例
図4(b)は、市場では比較的高価で、低音再生の強度が大きい一例
図4(c)は、市場で最も高価な、一例
図4(d)は、市場で最も普及している価格の一例の測定結果、
【0037】
a1、b1、c1、d1 は、共通リード線の電圧降下を補正せずに測定した検出側イヤホンの端子電圧の測定結果、
a2、b2、c2、d2 は、共通リード線の電圧降下を差し引いた、補正後の検出側イヤホンの起電力から求めた イヤホン固有の再生特性、
a3、b3、c3、d3 は、測定演算の結果から求めたイヤホン固有の再生特性を期待特性に補正を作用させた再生特性、
a4、b4、c4、d4 は、測定演算の結果から求めたイヤホン固有の再生特性から期待特性への補正特性である。
【0038】
4種類のイヤホンはそれぞれ特徴があり、実使用状態でもそれぞれの音質に顕著な相違が
ある。4種類のいずれも、Wexp が 1 の場合であることから、特性が平坦となるように補正されているが、補正後の音質にどのような音質が求められるかは、ユーザーの好みに依存することから、一般的には Wexp は任意の音質特性である。
また、イヤホンの装着状態によって、装着の深さは特に低音再生特性に大きく影響し、装着状態の角度は高音再生に大きく影響を及ぼす。このような理由から、期待特性は基本的に規準装着状態を想定した特性、または、幾つかの使用状態に対応した特性が望ましい。
補正後の特性は完全に平坦な特性ではないが、どの程度平坦にするか、一般的にはどの程度、期待特性に近づけるかについては、その程度に善し悪しがある。細かい凹凸は局部共振や装着状態による定在波などに依存し、実使用状態において不安定な特性の部類に入る。不安定な特性は音質に良い結果を生まない。いずれの補正結果の例も、高域で小刻みな波を残しているが、これ以上の細かい補正は実用上、音質的にも意味を持たない。
図3は、実用的な範囲の適度な精度での補正例である。
【解決手段】PRRGAMは、端末器内部のディジタル信号処理部、DEVICEは、端末器内部のディジタル信号と電気信号の相互の変換部、CONVERTは、端末器とイヤホンとの接続を変更する配線部、EARPHONEは、計測対象のイヤホンである。左右のイヤホンとマイクロホンの入出力端子を電気的結合し、プレーヤーが持つ伝達特性を1系統の出力と1系統の入力で測定し、左右のイヤホンを音響的に結合させる。左右の一方で電流駆動による測定用信号を再生し、他方で再生音をマイクロホン入力で検出し、測定系の固有の特性を補正の上、左右のイヤホンの共有リード線の電圧降下を、差し引き左右のイヤホンの音響結合特性を求め、音響結合特性から、期待する再生特性へと変換するイヤホンの固有特性の補正特性を求める。