特許第6163661号(P6163661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハヤテの特許一覧

特許6163661パネル式防護柵の横ずれ防止金具及び構造
<>
  • 特許6163661-パネル式防護柵の横ずれ防止金具及び構造 図000002
  • 特許6163661-パネル式防護柵の横ずれ防止金具及び構造 図000003
  • 特許6163661-パネル式防護柵の横ずれ防止金具及び構造 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6163661
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】パネル式防護柵の横ずれ防止金具及び構造
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   E01F7/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-207420(P2016-207420)
(22)【出願日】2016年10月23日
【審査請求日】2016年12月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516318802
【氏名又は名称】株式会社ハヤテ
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】植松嶺介
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−193285(JP,A)
【文献】 特開平04−194205(JP,A)
【文献】 特開2001−20388(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3184924(JP,U)
【文献】 特開2004−092193(JP,A)
【文献】 特開2000−054324(JP,A)
【文献】 実開平06−027911(JP,U)
【文献】 米国特許第6217007(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00−7/06
E01F 1/00、13/00−15/14
E01F 8/00−8/02
E01D 19/10
E04H 17/00−17/26
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H型鋼から成る複数の支柱を等間隔に立設し、該H型鋼から成る支柱間に矩形のパネル板を高さ方向に複数枚固定して防護柵を構成するパネル式防護柵において、前記H型鋼から成る支柱が揺動することにより矩形のパネル板が横ずれするのを防止する横ずれ防止金具であって、
前記各H型鋼から成る支柱の左右それぞれのフランジ内に嵌合するように挿入されるコ字状金具と、該コ字状金具のコ字の一辺側をパネル板に固定するボルトと、該コ字状金具の他辺側と前記フランジを挟んで対向する長尺の押圧金具と、該押圧金具と前記コ字状金具の他辺側とを前記フランジの厚み分の間隔を空けて相互に固定する締結ボルトを有することを特徴とするパネル式防護柵の横ずれ防止金具。
【請求項2】
H型鋼から成る複数の支柱を等間隔に立設し、該H型鋼から成る支柱間に矩形のパネル板を高さ方向に複数枚固定して防護柵を構成するパネル式防護柵において、前記H型鋼から成る支柱が揺動することにより矩形のパネル板が横ずれするのを防止する横ずれ防止構造であって、
第1の横ずれ防止手段として、前記各H型鋼から成る支柱の左右それぞれのフランジ内に嵌合するように挿入されるコ字状金具と、該コ字状金具のコ字の一辺側をパネル板に固定するボルトと、該コ字状金具の他辺側と前記フランジを挟んで対向する長尺の押圧金具と、該押圧金具と前記コ字状金具の他辺側とを前記フランジの厚み分の間隔を空けて相互に固定する締結ボルトを有する横ずれ防止金具を備え、
第2の横ずれ防止手段として、前記高さ方向に複数枚固定されたパネル板のうち少なくとも隣接する最上段のパネル板同士を相互に固定する横ずれ防止バーを備えていることを特徴とするパネル式防護柵の横ずれ防止構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル式防護柵の横ずれ防止金具及び構造に関し、特に、地震による外力等に起因してパネル式防護柵が横方向に搖動しても、パネル板が外れ、或いは落下するのを防止可能なパネル式防護柵の横ずれ防止金具及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パネル式防護柵は、例えば、山腹等の傾斜地を通る道路の改良工事として、通行を遮断せずに、道路の山側の斜面を補強する工事を行う場合等、通常、道路の山側に仮設の防護柵を設置する場合に用いられる。このような仮設の防護柵は、単に工事現場を囲うだけでなく、山側からの落石、雪崩、崩落土砂等を受け止めて、落石等から通行人や通行車両を保護するために設置される。また、仮設の防護柵として設置されることが多いので、現場での組み立て及び分解が可能な工法が利用されることが多い。この工法は、H型鋼から成る支柱を間隔をあけて、コンクリート等の基礎に打ち込み、支柱としてのH型鋼のフランジ間に横長のパネル板としての鋼矢板パネルを積層配置するものであり、その施行方法についても多くの提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載のパネル式防護柵によれば、パネル板の左右両端の垂直面部を、H型鋼支柱の溝部の対向するフランジ面に突っ張り力を作用させる留め金具により、H型鋼支柱のフランジ面に押し付け固定する構成としている。
【0003】
一方、支柱として必要な強度を有するH型鋼は、そのフランジ部間寸法が鋼矢板の厚さの数倍程度のものとなるので、フランジ部間に嵌入させた鋼矢板を道路側のフランジ部の内面に当接する位置に固定して、各鋼矢板を段積みしなければならず、従来は、各鋼矢板を両側のH型鋼の道路側のフランジ部間に固定する手段として溶接が利用されていたが、最近では、溶接作業の手間、時間、コスト等を節減するために、各鋼矢板を両側のH型鋼の道路側のフランジ部間に固定するための金具に関しても各種の提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2記載の鋼矢板係止金具によれば、H型鋼間に吊り降ろした鋼矢板を、上下の鋼矢板の互いに隣接する折り返し部に跨がって嵌合させた係止金具を利用して、上記H型鋼の前後フランジ部の内、道路側(前側)のフランジ部に沿った姿勢に保持させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−193285号公報
【特許文献2】特開2001−123440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1記載のパネル式防護柵によれば、H型鋼支柱に溶接等の加工を施す必要がなく、材料コストが安くなる上に、施工に際してパネル板をH型鋼支柱に固定する作業は、留め金具を単にH型鋼支柱の溝部内に押し込むワンタッチ操作により能率的である。また、特許文献2記載の鋼矢板係止金具によれば、従来のように鋼矢板とH鋼とを溶接した場合と同様に、H鋼間に吊り降ろした鋼矢板がH鋼の前後フランジ部の内、道路側(前側)のフランジ部から後ろへ離間してH鋼内で倒伏し、場合によっては下側の鋼矢板の後ろ側に落ち込んでしまうのを防止することができる。従って、溶接が不要になり、H鋼間での鋼矢板の架設作業が簡単容易且つ迅速に実施可能になる。
【0006】
しかしながら、いわゆる東日本大地震及びこの地震により誘起された日本列島及びその近海のプレートに生じた歪等により、近年、震度5を超すような大きな地震が日本列島の各地で頻発し、それによる落石・崩落土砂等によっても大きな被害をもたらしている。また、余震等も長期間に頻発することから、H型鋼から成る支柱を有するコンクリート構造物でさえ被害を免れない状況になることも多い。従って、道路などに設置されるパネル式防護柵についても、単に落石等に対する強度の増強が求められるだけでなく、H型鋼から成る支柱を有するパネル式防護柵自体の故障・崩壊等を防止する必要性が高まっている。例えば、地震による横揺れが何回も加わるとH型鋼の支柱も横揺れするため、H型鋼の支柱間で鋼矢板から成るパネル板が横ずれし、前後方向に外れて落下する事故を招く虞がある。特に、上段に設置された鋼矢板から成るパネル板が外れて落下すると、道路の通行の妨げになるだけでなく、通行人や車両などに深刻な被害を及ぼしかねない事態も想定される。
【0007】
そこで、パネル式防護柵について、仮に大きな地震等による外力が加わっても、単に落石等に対する強度を補強してあるだけでなく、H型鋼から成る支柱間でパネル板が横ずれするのを有効に防止できる技術の開発が切望されている。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題点を解消し、パネル式防護柵について、仮に大きな地震等による外力が加わっても、単に落石等に対する強度を補強してあるだけでなく、H型鋼から成る支柱間でパネル板が横ずれするのを有効に防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、仮に大きな地震等による外力が加わっても、単に落石等に対する強度を補強してあるだけでなく、H型鋼から成る支柱間でパネル板が横ずれするのを有効に防止できる構造について鋭意研究を重ねた結果、ことが可能なことを見出した。
【0010】
即ち、上記目的を達成するため、本発明の第1の様相は、H型鋼から成る複数の支柱を等間隔に立設し、該H型鋼から成る支柱間に矩形のパネル板を高さ方向に複数枚固定して防護柵を構成するパネル式防護柵において、前記H型鋼から成る支柱が揺動することにより矩形のパネル板が横ずれするのを防止する横ずれ防止金具であって、前記各H型鋼から成る支柱の左右それぞれのフランジ内に嵌合するように挿入されるコ字状金具と、該コ字状金具のコ字の一辺側をパネル板に固定するボルトと、該コ字状金具の他辺側と前記フランジを挟んで対向する長尺の押圧金具と、該押圧金具と前記コ字状金具の他辺側とを前記フランジの厚み分の間隔を空けて相互に固定する締結ボルトを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の様相は、H型鋼から成る複数の支柱を等間隔に立設し、該H型鋼から成る支柱間に矩形のパネル板を高さ方向に複数枚固定して防護柵を構成するパネル式防護柵において、前記H型鋼から成る支柱が揺動することにより矩形のパネル板が横ずれするのを防止する横ずれ防止構造であって、第1の横ずれ防止手段として、前記各H型鋼から成る支柱の左右それぞれのフランジ内に嵌合するように挿入されるコ字状金具と、該コ字状金具のコ字の一辺側をパネル板に固定するボルトと、該コ字状金具の他辺側と前記フランジを挟んで対向する長尺の押圧金具と、該押圧金具と前記コ字状金具の他辺側とを前記フランジの厚み分の間隔を空けて相互に固定する締結ボルトを有する横ずれ防止金具を備え、第2の横ずれ防止手段として、前記高さ方向に複数枚固定されたパネル板のうち少なくとも隣接する最上段のパネル板同士を相互に固定する横ずれ防止バーを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パネル式防護柵について、仮に大きな地震等による外力が加わっても、単に落石等に対する強度を補強してあるだけでなく、H型鋼から成る支柱間でパネル板が横ずれするのを有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が適用される一般的なパネル式防護柵を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るパネル式防護柵の横ずれ防止金具の基本構成を示す図であり、その平面図を示す。
図3】本発明の第2の実施形態に係るパネル式防護柵の横ずれ防止構造を示す図であり、その正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の理解を容易にするために、本発明の前提である一般的なパネル式防護柵の概略について、図1を参照しつつ説明しておく。図1に示すように、パネル式防護柵110は、H型鋼支柱112を間隔をあけて土中のコンクリート基礎114に打ち込み、各H型鋼支柱112間に横長のパネル板である矢板鋼パネル116を、例えば、図1に示すものでは、6段に積層配置している。図1において手前側が道路側、奥側が山側である。図示した各段の矢板鋼パネル116は、例えば、図示しない留め金具を用いてH型鋼支柱112間に固定される。留め金具の代わりに、又はそれに加えてワイヤーロープ等によりH型鋼支柱112間に固定されるものもある。図1に示す一般的なパネル式防護柵110では、H型鋼支柱112にナット溶接等の加工を施す必要がなく、材料コストが安くなる上に、施工に際して矢板鋼パネル116をH型鋼支柱112に固定する作業は、留め金具等を用いて比較的簡単な操作により能率的である。また、溶接が不要になるので、H型鋼支柱112間での矢板鋼パネル116の架設作業が簡単容易且つ迅速に実施可能である。
【0015】
しかしながら、図1に示す一般的なパネル式防護柵110では、落石等に対する強度の増強は図れても、H型鋼支柱112を有するパネル式防護柵110自体の故障・崩壊等を防止するための工夫が不十分であり、例えば、地震による横揺れが何回も加わるとH型鋼支柱112も横揺れするため、H型鋼支柱112間で鋼矢板パネル116が横ずれし、前後方向に外れて落下する事故を招く虞れを否定できない。特に、上段に設置された矢板鋼パネル116Uが外れて落下すると、道路の通行の妨げになるだけでなく、通行人や車両などに深刻な被害を及ぼしかねない事態も想定される。そこで、本発明者は、パネル式防護柵について、仮に大きな地震等による外力が加わっても、単に落石等に対する強度を補強してあるだけでなく、H型鋼から成る支柱間で矢板鋼パネルが横ずれするのを有効に防止できる技術の開発を始め、比較的簡単な構成でも、H型鋼から成る支柱間で矢板鋼パネルが横ずれするのを防止できる金具について試作・試験を重ねた結果、以下の実施形態の横ずれ防止金具の構成を案出した。
【0016】
以下、図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る横ずれ防止金具について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るパネル式防護柵の横ずれ防止金具の基本構成を示す図であり、その平面図を示す。本実施形態の横ずれ防止金具10は、図2に示すように、H型鋼から成る複数の支柱(H型鋼支柱)112を等間隔に立設し、H型鋼支柱112間に矩形のパネル板である矢板鋼パネル16を高さ方向に複数枚固定して防護柵を構成するパネル式防護柵において、H型鋼支柱112が揺動することにより矩形の矢板鋼パネル16が横ずれするのを防止する金具である。本実施形態の横ずれ防止金具10は、各H型鋼支柱112の左右それぞれのフランジ112F内に嵌合するように挿入されるコ字状金具20と、コ字状金具20のコ字の一辺側20Aを矢板鋼パネル16に固定するボルトとしての蝶ネジ(ウイングボルト)22と、コ字状金具20の他辺側20Bとフランジ112Fを挟んで対向する長尺の押圧金具24と、押圧金具24とコ字状金具20の他辺側20Bとをフランジ112Fの厚み分の間隔Gを空けて相互に固定する締結ボルト26を有する。ここで、コ字状金具20は、矩形のパネル板である矢板鋼パネル16の1枚の高さよりは小さい、例えば、十数cmの高さ(幅)を有しており、コ字の一辺側、他辺側とは、それぞれコ字状金具を平面又は断面で見た場合の一辺側、他辺側という意味である。従って、その高さ(幅)を含めて表現すれば、コ字の一面側、他面側と言うこともできる。尚、蝶ネジ(ウイングボルト)22による矢板鋼パネル16への固定を容易にするため、コ字状金具20のコ字の一辺側20Aを貫通するボルト穴22Gは、余裕を持たせた横長の溝状に形成されている。また、締結ボルト26による押圧金具24とコ字状金具20の他辺側20Bとの締結固定を容易にするため、押圧金具24とコ字状金具20の他辺側20Bをそれぞれ貫通するボルト穴26Gは、余裕を持たせた横長の溝状に形成されている。
【0017】
各コ字状金具20は、鋼板の打ち抜き、折り曲げ加工により製作したもので、図2に示すように、上面から見て、H型鋼支柱112の左右それぞれのフランジ112F内に嵌合するように、それぞれ反対側を向いたコ字形の断面形状を有している。各コ字状金具20は、H型鋼支柱112のウェブ112Wと平行に配置された中間平板部20Cと、この中間平板部20Cから矢板鋼パネル16側に略直角に折れ曲がった一辺側20Aと、中間平板部20Cから反対側に略直角に折れ曲がった他辺側20Bを有している。中間平板部20Cは、H型鋼支柱112のウェブ112Wと当接していても良いし、図2に示すように、僅かに間隔Sを空けて平行に配置されていても良い。また、コ字状金具20には、中間平板部20Cと一辺側20Aとの境界を画す直角部にはリブ20D、中間平板部20Cと他辺側20Bとの境界を画す直角部にはリブ20Eが、それぞれ形成されている。これらのリブ20D、リブ20Eは、パネル式防護柵に、例えば、地震による横揺れが何回も加わり、H型鋼支柱112も横揺れする場合に、コ字状金具20自体の強度を高めてコ字形状を保持すると共に、各H型鋼支柱112の左右それぞれのフランジ112F内で、矢板鋼パネル16がその厚み方向に搖動してコ字状金具20の一辺側20Aと他辺側20Bとが相互に開閉方向の応力を受ける場合にコ字形状の保持、更にはコ字状金具20自体の破損等を防止することに寄与し得る。
【0018】
尚、図示しないが、本実施形態の横ずれ防止金具10は、例えば、下から2段目の各矢板鋼パネル16と各H型鋼支柱112間、最上段の各矢板鋼パネル16と各H型鋼支柱112間の2つの段の矢板鋼パネル16について使用されている。さて、パネル式防護柵に、例えば、地震による横揺れが加わるとH型鋼支柱112も横揺れするため、H型鋼支柱112間で矢板鋼パネル16も横方向に搖動し易くなる。ところが、本実施形態の横ずれ防止金具10では、中間平板部20CがH型鋼支柱112のウェブ112Wと当接し、或いは、図2に示すように、僅かに間隔を空けて平行に配置されているので、隣接して取付けられた2つの横ずれ防止金具10それぞれのコ字状金具20の中間平板部20CがH型鋼支柱112のウェブ112Wに当接し、或いは横方向にずれてもウェブ112Wに衝突して当接するので、横方向の移動はかかる範囲内に規制される。この結果、H型鋼支柱112間で矢板鋼パネル16が横ずれし、前後方向に外れて落下するのを未然に防止することができる。特に、上段に設置された矢板鋼パネル16Uが外れて落下するのを有効に防止できるので、上段に設置された矢板鋼パネル116Uが外れて落下することで道路の通行の妨げになり、或いは、通行人や車両などに深刻な被害を及ぼす事故を防止可能になる。
【0019】
続いて、図3を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るパネル式防護柵の横ずれ防止構造を示す図であり、その正面図を示す。図3に示すように、本実施形態の横ずれ防止構造30は、複数のH型鋼支柱112を等間隔に立設し、これらH型鋼支柱112間に矩形のパネル板である矢板鋼パネル16を高さ方向に複数枚固定して防護柵を構成するパネル式防護柵において、H型鋼支柱112が揺動することにより矩形の矢板鋼パネル16が横ずれするのを防止する。本実施形態の横ずれ防止構造30は、第1の横ずれ防止手段として、図2に示した第1の実施形態の横ずれ防止金具10を有している。即ち、本実施形態の横ずれ防止構造30は、第1の横ずれ防止手段として、各H型鋼支柱112の左右それぞれのフランジ112F内に嵌合するように挿入されるコ字状金具20と、コ字状金具20のコ字の一辺側20Aを矢板鋼パネル112に固定するボルトとしての蝶ネジ(ウイングボルト)22と、コ字状金具20の他辺側20Bとフランジ112Fを挟んで対向する長尺の押圧金具24と、押圧金具24とコ字状金具20の他辺側20Bとをフランジ112Fの厚み分の間隔Gを空けて相互に固定する締結ボルト26を有している。コ字状金具20のその他各部の構成は、図2に示した第1の実施形態のものと全く同様である。
【0020】
また、本実施形態の横ずれ防止構造30は、第2の横ずれ防止手段として、高さ方向に複数枚固定された矢板鋼パネル16のうち少なくとも隣接する最上段の矢板鋼パネル16U同士を相互に固定する横ずれ防止バー32を備えている。即ち、本実施形態のパネル式防護柵の横ずれ防止構造30は、例えば、各々縦1mで横2.5mの5枚の矢板鋼パネル16を5段に積層配置しており、図3において手前側が道路側、奥側が山側である。尚、本実施形態の横ずれ防止構造30では、最下層の矢板鋼パネル16の上角部と、下から4層目の矢板鋼パネル16の上角部(5層目の矢板鋼パネル16の下側)の2箇所に横ずれ防止金具10を設置している。また、高さ方向に5枚固定された矢板鋼パネル16のうち隣接する最上段の矢板鋼パネル16U(即ち、5層目の矢板鋼パネル16)同士を相互に固定するように横ずれ防止バー32が、パネル間の開きを防止し横ずれの防止を強化するための補助バーとして取付けられている。さて、パネル式防護柵に、例えば、地震による横揺れが加わるとH型鋼支柱112も横揺れするため、H型鋼支柱112間で矢板鋼パネル16も横方向に搖動し易くなる。ところが、本実施形態の横ずれ防止構造30では、第1の横ずれ防止手段として隣接するH型鋼支柱112間に高さ方向に2箇所取付けられた横ずれ防止金具10が、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0021】
即ち、各横ずれ防止金具10の中間平板部20CがH型鋼支柱112のウェブ112Wと当接し、或いは、図2に示すように、僅かに間隔を空けて平行に配置されているので、隣接して取付けられた2つの横ずれ防止金具10それぞれのコ字状金具20の中間平板部20CがH型鋼支柱112のウェブ112Wに当接し、或いは横方向にずれてもウェブ112Wに衝突して当接するので、横方向の移動はかかる範囲内に規制される。この結果、H型鋼支柱112間で矢板鋼パネル16が横ずれし、前後方向に外れて落下するのを未然に防止することができる。また、下から4層目の矢板鋼パネル16の上角部(5層目の矢板鋼パネル16の下側)の箇所に取付けられた横ずれ防止金具10により、特に、最上段に設置された矢板鋼パネル16Uが外れて落下するのを有効に防止できる。
【0022】
更に、本実施形態の横ずれ防止構造30では、第2の横ずれ防止手段として高さ方向に5枚固定された矢板鋼パネル16のうち隣接する最上段の矢板鋼パネル16U(即ち、5層目の矢板鋼パネル16)同士を相互に固定するように横ずれ防止バー32が、パネル間の開きを防止し横ずれの防止を強化するために取付けられているので、最上段に設置された矢板鋼パネル116Uが外れて落下することで道路の通行の妨げになり、或いは、通行人や車両などに深刻な被害を及ぼす事故を十分有効に防止可能である。尚、図3に示すパネル式防護柵では、図1に示した一般的なパネル式防護柵と同様の図示しない留め金具を用いて各段の矢板鋼パネル16をH型鋼支柱112間に固定しているが、本実施形態の横ずれ防止構造30では、上述した横ずれ防止金具10及び横ずれ防止バー32が取付けられているので、これらが横ずれ防止だけでなく、矢板鋼パネル16をH型鋼支柱112間に固定する強度の強化にも役立つという効果が得られる。一方、横ずれ防止金具10及び横ずれ防止バー32が設けられている分、留め金具を使用する箇所を少なくでき、費用が低減され、物流コストも抑えることも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上に述べた実施形態では、本発明を落石、雪崩、崩落土砂等から道路の通行人や通行車両を保護する防護柵に適用したが、本発明は、特許請求の範囲の記載の範囲内で、その他の用途のパネル式防護柵にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 横ずれ防止金具、 16 矢板鋼パネル、 20 コ字状金具、
20A コ字の一辺側、 20B コ字の他辺側、 22 蝶ネジ(ウイングボルト)、
24 押圧金具、 26 締結ボルト、 30 横ずれ防止構造、32 横ずれ防止バー、
112 H型鋼支柱、112F フランジ、 G 間隔

【要約】
【課題】パネル式防護柵について、H型鋼から成る支柱間でパネル板が横ずれするのを有効に防止できる技術を提供する。
【解決手段】H型鋼から成る複数の支柱を等間隔に立設し、該H型鋼から成る支柱間に矩形のパネル板を高さ方向に複数枚固定して防護柵を構成するパネル式防護柵において、前記H型鋼から成る支柱が揺動することにより矩形のパネル板が横ずれするのを防止する横ずれ防止金具であって、前記各H型鋼から成る支柱の左右それぞれのフランジ内に嵌合するように挿入されるコ字状金具と、該コ字状金具のコ字の一辺側をパネル板に固定するボルトと、該コ字状金具の他辺側と前記フランジを挟んで対向する長尺の押圧金具と、該押圧金具と前記コ字状金具の他辺側とを前記フランジの厚み分の間隔を空けて相互に固定する締結ボルトを有する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3