【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2012年9月7日 株式会社ねぎしフードサービス UENO3153店への販売による公開 [刊行物等] 2012年11月21日 株式会社ねぎしフードサービス 新宿ねぎし京王フレンテ店への販売による公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱手段は、前記調理面板の表面温度が高温部及び低温部で識別できるように前記受熱板への熱供給を行い、前記高温部は前記加熱調理板の中央及び中央より奥側に対応し、前記低温部は前記加熱調理板の手前側に対応する、請求項1〜3の何れか1項に記載の調理機器。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理板は、ガス或いはヒーター等の熱源により下方から加熱させる構造となっている。また、熱源上に載置される調理用の鉄板を有する焼き機は「グリドル器」とも称され、電気式とガス式に大別される。鉄板焼きなどの板状のグリドル器の熱源としてガス式を採用した場合、ガスバーナーからの強い火炎によって鉄板が比較的短時間で調理温度に達するため、鉄板に載置される食材を短時間で調理できるといった長所がある。一方で、加熱箇所がバーナーから近傍或いは遠傍かというバーナーとの位置関係によって加熱調理板の表面温度が異なり、さらにはガスバーナーで熱された空気に流れが生じて火炎が揺らぐことや鉄板自体の厚さや材質の違いという様々な条件により、鉄板部位の温度がかなり大きくばらつくことがある。
このため、鉄板上の食材が均一に加熱されないという、いわゆる「焼きムラ」の問題が生じていた。
【0003】
この「焼きムラ」を解消するには、調理人が経験的に熱源を手動調整して温度制御を行う必要がある。そのため、随時、鉄板温度の上昇に配慮しながら温度管理を行うために手間がかかること、且つ、実際には意図した微調整ができずに加熱調理全面にわたり温度分布が不均一となるという問題があった。
【0004】
そこで、熱伝導率の悪い耐熱合金板と熱伝導率の良い銅板とを交互に積層して組み合わせた鉄板(熱板)により、加熱面の温度分布の均一性を改善しようとする加熱調理器が開示されている(例えば、下記に示す特許文献1公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の加熱調理器は、複数の金属板を積層する構造の熱板を開示するが、そもそも複数の抵抗加熱素子を熱源としており、ガス式特有の火炎の揺らぎによる焼きムラには何ら対処しているわけではない。また、引用文献1の加熱調理器は、5層構造のうち、1層目、3層目、5層目の耐熱合金板の熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有する銅板を2層目及び4層目に積層させることにより、抵抗加熱素子から出た熱を熱板面に拡散させて最上層の加熱面の温度分布を良くしようとする記載にとどまり、熱板表面の蓄熱に対する考慮は何もない。
したがって、その効果は限定的なものであり、本願発明が課題とするガス式特有の火炎の揺らぎによる焼きムラや、加熱箇所がバーナーから近傍或いは遠傍かという位置関係がもたらす温度差を改善するには不充分であった。
【0007】
そこで、本発明は上述した問題点に鑑み為されたものであり、鉄板の温度分布を鉄板全面にわたり均一にして焼きムラを無くし、且つ、加熱効率及び蓄熱性の優れたグリドル器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、グリドル器の加熱板(例えば、鉄板など)の構造を、受熱板、第1のグラファイトシート、蓄熱体、第2のグラファイトシート、及び調理面板からなるサンドイッチ構造で構成したものである。
【0009】
具体的には、本願発明の調理機器は、受熱板が被加熱物を加熱する加熱手段からの入熱を受け、受熱板の上方に載置され当該受熱板からの熱を受ける第1の熱伝導板は、
面方向の熱伝導率が
鉛直方向の熱伝導率よりも高いという熱伝導特性を利用して面方向への伝熱を促進し、第1の熱伝導板の上方に載置された蓄熱板は第1の熱伝導板からの熱を蓄積し、蓄熱板の上方に載置され当該蓄熱板からの熱を受ける第2の熱伝導板は、
面方向の熱伝導率が
鉛直方向の熱伝導率よりも高いという熱伝導特性を利用して面方向への伝熱を更に促進し、第2の熱伝導板の上方に載置される調理面板に第2の熱伝導板からの熱を伝えるという5層構造の加熱調理板を具備していることを特徴とする。
【0010】
また、グリドル器の本体内部において、ガスバーナー等の加熱手段の上方に前記5層の加熱調理板を設置しているが、加熱調理板とガスバーナーの位置関係から、加熱調理板は高温になりやすい部分と低温になりやすい部分に分かれる。そこで、本願発明の調理機器の加熱手段は、調理面板の表面温度が高温部及び低温部で識別できるように受熱板へ熱供給を行い、その高温部は加熱調理板の中央及び中央より奥側に対応し、低温部は加熱調理板の手前側に対応することを特徴とする。なお、低温部に対応する手前側とは、
図1(b)に示す電源スイッチ5を含む操作パネル側に近い加熱調理板の位置(即ち、
図1(c)のF)を意味する。
【0011】
また、本願発明の調理機器の加熱手段は、調理面板の表面温度が加熱調理板の中央及び中央より奥側に対応した高温部、加熱調理板の手前側に対応した低温部で識別できるように前記受熱板への熱供給を行うことを特徴とする。さらに、調理面板と前記受熱板との間に複数の螺合部材を設置して加熱調理板の熱変形に対応したり、受熱板、熱伝導板、蓄熱板、調理面板の少なくとも何れかの表面又は裏面は熱反射部材を付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱調理板は、受熱板、第1のグラファイトシート、蓄熱体、第2のグラファイトシート、及び調理面板からなるサンドイッチ構造で構成されているため、熱源からの熱を受ける受熱板から、食材に直接触れる調理面板への熱移動が効率的に行われるとともに、加熱調理板内の平面方向における伝熱が十分になされることで鉄板全面にわたって加熱が均一になり、焼きムラを無くすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す加熱調理板(グリドル面)2を備えたグリドル器10の上面図、正面図、側面図である。グリドル器10は、本体下部に設置したガスバーナー1、加熱調理板2、油受3、煙突カバー4、電源スイッチ5、セレクトスイッチ6、ゾーン電源スイッチ7、温度調節器8、操作ボックスカバー9を含んだ構成である。また、安全性の配慮から、過昇温度制御装置(不図示)が備えられている。
【0015】
本実施形態では、
図1(a)に示すように、ガスバーナー1は、加熱調理板2の全体を加熱するために複数のプレートを有する部分ガスバーナー1a,1b,1c,1dを並列に配置するように構成している。加熱調理板2の下方全面が加熱されるようにガスバーナー1を配置してもよいが、加熱調理板2上では複数の食材を同時に加熱することも行うことから、本実施形態では、グリドル器10の本体手前(
図1(c)のF)側の加熱調理板2の真下にガスバーナー1を配置せず、加熱調理板2のA部はガスバーナー1からの入熱を直接受けない構造にしている。例えば、肉などの食材はガスバーナー1からの熱を多く受けて高温で加熱できるグリドル器の奥側に置きながら、野菜や卵等はA部に置いて加熱して調理される。
【0016】
本実施形態の場合、ガスバーナー1として、特に限定するわけではないが、ガス赤外線バーナーを用いる。ガス赤外線バーナーは、赤外線バーナーから放射される赤外線の波長は輻射強度が高く、熱エネルギーに転換するための効率の良い熱源である。なお、加熱調理板2のサイズにあわせて部分ガスバーナーの数を変えて配置した他のグリドル器の例を
図2に示す。
【0017】
また、加熱調理板2の奥部に、例えばステンレス製(SUS430等)の適当な高さを有する煙突カバー4を配置し、ガス燃焼で発生した二酸化炭素をグリドル器10外部に排出する。さらに、左側及び/又は右側部には油受部3を備える。また、グリドル器10の手前の操作パネルには、各部分ガスバーナーのそれぞれに対応したゾーン別電源スイッチ7と、温度調節器8と、電源スイッチ5が設けられている。各加熱ゾーンは各々個別に温度の設定・制御を行うことも可能になっている。
【0018】
図3は、加熱調理板1の積層構造をあらわす。
図3に示すように、加熱調理板1は、下方から順に、受熱板11、グラファイトシート12(請求項に記載した「第1の熱伝導板」)、蓄熱板13、グラファイトシート14(請求項に記載した「第2の熱伝導板」)、調理面板15を含んだ5層の積層構造である。受熱板11は、鉄を含む圧延鋼材(例えば、SS400)の平板である。
【0019】
本実施例におけるグラファイトシート12は、東洋炭素製の厚み1.0mm程度の黒鉛シートである「PERM-FOIL(R)」を使用する。一般に、黒鉛シートは高い熱伝導率を有するが、特に「PERM-FOIL(R)」の熱伝導率は、厚さ方向5W/(M・K)に対し、面方向は200W/(M・K)であり、面方向の熱伝導率は厚さ方向に比べて40倍ほど優れている。このような熱伝導異方性を持つグラファイトシートの特性により、加熱調理板1の熱を面方向に効率的に伝搬させる。また、グラファイトシート12は、耐熱温度が400℃以上であり、且つ圧縮復元率も高いため、受熱板11に熱応力変形が生じても追従することが可能である。
【0020】
蓄熱板13は、加熱調理板1が積層構造であるためにガスバーナー1からの入熱が調理面板15に到達するまでの間に徐々に減衰してしまうことを極力防止するため、及び調理面板15が加熱された後もその加熱状態をできるだけ効率的に長時間維持できるようにするために用いている。蓄熱板13の一例は、アルミ板やジルコニウム銅を材質とする金属材が挙げられる。特に、ジルコニウムは、保温ベストやウィンドブレーカーの蓄熱素材として用いられているように蓄熱性に優れており、またジルコニウム銅は、鉄入銅、錫入銅、クロム鋼などの他の一般金属に較べて硬さがあり加熱調理板1に適している。なお、蓄熱板としてSS400板を使用することもある。本実施形態の場合、最上層の調理面板15はSS400板を使用した。
【0021】
次に、上述のように構成されたグリドル器10の熱伝達作用を説明する。操作パネルのゾーン別電源スイッチ7をオンにすると、供給されたガスがヒーター点火方式により点火燃焼され、受熱板11はガスバーナー1からの燃焼熱(入熱)を受ける。なお、本実施形態では、説明の簡略化のため、
図1(a)の示す部分ガスバーナー1a,1b,1c,1dのすべてを燃焼させ、加熱調理板2の全面を加熱するものとして説明する。
【0022】
受熱板11の入熱は受熱板11の上層に設置した第1のグラファイトシート12に伝わる。グラファイトシート12は、温度が上昇するに伴い、入熱を積層構造のさらに上層である蓄熱板13に移動させるが、上述した熱伝導異方性により積層構造の垂直方向のみならず、グラファイトシート内(すなわち、水平方向)で迅速に伝熱させる。したがって、グリドル器10の水平面全体をムラ無く加熱させることができる。
【0023】
さらに、第1のグラファイトシート12に伝わった熱は蓄熱板13へと移動する。蓄熱板13の高い熱伝導性は、調理面板15が所望の高温状態に達した後は、その温度状態を少ない加熱で維持することができ効率的な熱使用を可能にする。また、蓄熱板13を用いることにより、調理面板15の温度変化をできるだけ小さくすることが可能となる。その結果、調理人による勘や経験に基づいて調理面板15の表面温度を微妙に調整することが不要となり、従来の加熱調理板の温度調整よりも調理人の作業負担を軽減する効果もある。
【0024】
またさらに、蓄熱板13へ伝わった熱は、その上層に配置された第2のグラファイトシート14へと移動する。グラファイトシート14は、上述したグラファイトシート12と同じ東洋炭素製の厚み1.0mm程度の黒鉛シートである「PERM-FOIL(R)」であり、したがって同一の熱伝達特性を有している。本実施形態の加熱調理板2は、厚さ方向に対して面方向の熱伝導率が40倍もあるという熱伝導異方性が特徴のグラファイトシート層を内部に複数含み、積層構造として構成していることが特徴である。このような鉛直方向の熱伝導のみならず、面方向に対し大きな熱伝導特性を有する複数のグラファイトシート層が生み出す平面的な熱の広がりが従来の加熱調理器より格段に優れるという利点は、上記特許文献1に記載の加熱調理器を含む従来のグリドル器からは奏されることはない。
【0025】
最終的に、第2のグラファイトシート14の熱は最上層の調理面板15へと伝搬し、調理面板上に載置された食材を加熱する。なお、調理面板15の平面視内側の部位に調理エリア2aが形成される(
図7参照)。
【0026】
また、加熱調理板2は、ガスバーナー1によって熱せられて高温になると熱応力によって歪み、加熱前の板形状と比べると変形が生じてくることがある。この熱応力変形をできるだけ抑えるため、本実施形態の加熱調理板2の場合、
図3に示すように、最上層の調理面板15と最下層の受熱板11を、複数の螺合部材(ボルト及びナット)16で接合させる。本実施形態の場合、ボルトは調理面板15の裏面に溶接接合し、最下層の受熱板11の裏面でナットをはめ込む。なお、螺合部材の数は、加熱調理板2の大きさにあわせて適宜調整される。
【0027】
さらに、積層構造における各層の面(表面、裏面、又は表裏の両面)に耐熱性のセラミック系部材(例えば、セラミック塗料)を付着し、熱伝達において生じる熱
放射をできるだけ回避するようにしてもよい。
【0028】
<測定実験結果>
次に、第1及び第2のグラファイトシート12,14及び蓄熱板13を含む加熱調理板2の効果確認を評価したので以下に説明する。グラファイトシートも蓄熱板も存在しない1層構造である調理面板15(
図3(c))、最上層の調理面板15と最下層の受熱板11の間に1層のグラファイトシート12を介在させるが蓄熱板13を含まない3層構造の調理面板(
図3(b))、実施の形態の
図3(a)に示すグリドル器10の加熱調理板2と同じ5層構造の調理面板をそれぞれ製作して実験を行った。
【0029】
図4〜
図7は、各層構造の調理面板の複数の測定点の表面温度を計測して得られた結果をグラフ化したものである。複数の測定点は、
図7に示すとおり、CH1〜CH12の合計12点を設定した。
図4は、
図3(c)に示す1層構造の調理面板の下面からガスバーナー1の熱を与えたときの表面温度の経時変化をあらわす。
図5は、
図3(b)に示す3層構造の調理面板の表面温度の経時変化をあらわす。また、
図6は、本実施の形態の
図3(a)に示すグリドル器10の加熱調理板2と同じ5層構造の調理面板の表面温度の経時変化をあらわしている。また、中心位置Cには温度調節センサを取付け、調理面板が所定の温度を超えるとガスバーナー1からの入熱が遮断されるように設計されている。
【0030】
図4〜
図6において、横軸は入熱後の時間経過、縦軸は計測された各測定点(CH1〜CH12)での温度値を示す。各測定点に対応した太線若しくは細線の実線,点線,波線により区別して表示している(測定点と線種の対応づけは各図の右部の表示を参照されたい)。
【0031】
まず、1層構造の測定結果である
図4を参照すると、各測定点は、点火後約11分半(時点T
A1)で最高温度にほぼ到達していることがわかる。温度調節センサの温度調整値を200℃に設定したため、温度調節センサが200℃オーバーを検知すると、ガスバーナー1からの入熱を遮断して温度を下降させ、その後に入熱を受け入れて再び温度を上げるという温度制御が繰り返される。事実、測定点2、測定点7、測定点5に対応するCH2,CH7,CH5の測定温度が示すとおり、15分以降になると波打ち状態の細かな温度調整がされていることがわかる。
【0032】
上述したように、調理面板2の奥側又は中央は高温加熱用であるので、低温加熱用の手前側(CH3,CH6,CH9,CH12)に較べ、プロットした全時間にわたり高温を保持している。また、高温グループ(CH1,CH2,CH4,CH5,CH7,CH8,CH10,CH11)の時点T
A1における最大温度差(CH2−CH10)は約45℃であった。一方、低温グループ(CH3,CH6,CH9,CH12)の時点T
A1における最大温度差(CH9−CH6)は約30℃であった。低温グループの場合、時点T
A1以降もその温度は微増するものの、ほぼ横ばいで推移した。また、点火後30分手前の時点T
B1では、高温グループの最大温度差は時点T
A1よりも小さくなっているがそれでも約30℃あり、低温グループの時点T
B1での最大温度差は約15℃であった。したがって、調理面板15上に食材を置いて加熱した場合、特に、高温部では焼きムラが生じる。
【0033】
次に、3層構造の測定結果である
図5を参照すると、15分手前(時点T
A3)で、
図4に示す1層構造と同じ最高温度に達している。加熱調理板が3層構造であり厚みが増した分熱容量が増加し、最上層に熱が伝わるまでの時間が
図4に示す1層構造よりも要している。3層構造の加熱調理板は、時点T
A3での最低温度(CH6)が上がっているため、全測定点にわたる最大温度差が小さくなっている。これは、1層構造には存在していないグラファイトシート12が温度差を小さくする効果があることを示している。
グループ毎でみると、時点T
A3における高温グループ内の最大温度差(CH2−CH10)は約38℃あった。確かに1層構造の約45℃と比較すると小さくなったものの、CH10及びCH11がいわば中間グループを形成して高温グループ中の他の測定点の温度値に追従しなかったために38℃という差があった。低温グループ内の最大温度差は約15℃であった。また、時点T
B3の最大温度差は、特に低温グループ内で縮小していることが明らかになったが、高温グループに関しては1層構造に比べて顕著に温度差が小さくなったとまでは言えないことがわかる。
【0034】
このような高温グループと低温グループという2つのグループへの収れんは、本実施形態と同じ5層構造についての実験結果を示す
図6をみると顕著にあらわれてくる。
図6を参照すると、高温グループの最高温度に到達するまでの時間は約16分半(時点T
A5)であり、最大温度差は約13℃である。つまり、1層構造の45℃、3層構造の38℃と比較すると格段に温度差が小さくなっている。また、時点T
A5における低温グループの温度差は図示するとおり殆どなく、これも1層構造及び3層構造と比較すると顕著な相違を生じさせている。さらに、時点T
B5においても、高温グループ及び低温グループともに1層構造及び3層構造に較べて温度差は縮小した。なお、
図6において、CH10は測定ミスのため測定値が得られなかったためプロットしていない。
【0035】
さらに、最高温度に到達した時点T
A5から時点T
B5までの高温グループの経時的な温度推移をみると、5層構造の加熱調理板の場合、1層構造又は3層構造とは異なり、高温保持のための波打つような温度変動、すなわち、設定温度(200℃)近くに保たれる時間が長くなり、時点T
A5以降の温度下降曲線が比較的緩やかになっている。
【0036】
したがって、最上層の調理面板15と最下層の受熱板11の間に2層のグラファイトシート12,14が含まれ、さらにグラファイトシート間に蓄熱板13が介在された5層構造の調理面板2は、高温グルーブ及び低温グループの何れにおいても、調理面板15の特定の場所が他の場所に較べて大きな温度差が生じるような加熱状態にならず、均一な熱伝導を生み出すことを実証することができた。
【0037】
よって、本実施形態のグリドル器10が備える5層の積層構造を特徴とする加熱調理板2によれば、ガスバーナー1からの燃焼熱は、その熱分布が第1のグラファイトシート12により均一になる(第1段階の均一熱拡散)とともに、第2のグラファイトシート14の存在により、更に熱分布を均一にさせる(第2段階の均一熱拡散)。このような第1段階及び第2段階の熱拡散手段は、調理面板15上で高温部内及び低温部内のいずれであっても熱が均一に分布することを促すものである。また、蓄熱板13は、調理面板15を所定の温度を保つ上で効果的な役割を果たす。
その結果、調理面板15の中央部に限らず端部であっても、調理面板上に載置された食材に均一且つ十分に熱が伝わるとともに設定温度が効率的に保持され、食材がムラ無く加熱されて焼きムラが生じることはない。
【0038】
また、本実施例の加熱調理板1は、受熱板11、第1のグラファイトシート12、蓄熱体13、第2のグラファイトシート14、及び調理面板15からなる5層の積層構造を示したが、層の数がこれに限定されるわけではない。例えば、第3、第4、又はそれ以上のグラファイトシート層や、1層のみならず複数層の蓄熱体13を更に積層させることで、上述した本願発明の効果をより奏させることも可能である。
【0039】
また、本実施形態は、説明の関係上、長方形の金属板などを重ね合わせた積層構造の加熱調理板2を開示したが、この形状に限定されるわけではない。グリドル器の用途や形状によっては、円形や楕円の形状を含む任意の形状の加熱調理板が本発明の範囲に含まれる。調理面板15の材質に限定はなく、SS400板の使用の他に、錆防止のためにステンレス板などを用いてもよい。
【0040】
また、厚さ方向の熱伝導率に対して面方向の熱伝導率が40倍(2桁倍)という東洋炭素製のグラファイトシート12,14を使用した本実施形態の例を記載したが、熱伝導率の比率を1桁倍又は3桁倍以上の熱伝導異方性をもつ黒鉛シートを採用することも適宜あり得る。さらに、グラファイトシート12,14は、加熱調理板2の平面全体を一枚形状で覆うように配置されている必要はない。例えば、各グラファイトシートを、例えば部分ガスバーナー毎(或いは、部分ガスバーナーの更に一部分)のユニット単位に分割し、加熱調理板2の一部について、本発明の作用効果が奏されるようにしてもよい。
【0041】
なお、本実施例では、複数の部分ガスバーナーを使用して説明したが、加熱調理板の大きさにあわせて部分ガスバーナーの数が決定され、単一の部分ガスバーナーの場合もある。また、熱源としてガス式の火炎バーナーを用いたが、本発明に係る複数層構造による加熱調理板自体の特徴は、一般のコイル式ヒーターやシーズヒータなどの電気式の熱源であってもよく、任意の電気式熱源より加熱される受熱板が調理面板に対して下から上の方向へ、且つ、積層構造の各板層における平面的な熱の広がりが格段に優れるという本発明の効果に変りはない。