特許第6163691号(P6163691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社岩沼精工の特許一覧

<>
  • 特許6163691-圧着端子の製造方法及び圧着端子 図000002
  • 特許6163691-圧着端子の製造方法及び圧着端子 図000003
  • 特許6163691-圧着端子の製造方法及び圧着端子 図000004
  • 特許6163691-圧着端子の製造方法及び圧着端子 図000005
  • 特許6163691-圧着端子の製造方法及び圧着端子 図000006
  • 特許6163691-圧着端子の製造方法及び圧着端子 図000007
  • 特許6163691-圧着端子の製造方法及び圧着端子 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163691
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】圧着端子の製造方法及び圧着端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20170710BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20170710BHJP
   B21D 53/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R43/16
   B21D53/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-159758(P2013-159758)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-18783(P2015-18783A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年7月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509295631
【氏名又は名称】株式会社岩沼精工
(72)【発明者】
【氏名】千葉 厚治
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩吉
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−041682(JP,A)
【文献】 特開平05−326055(JP,A)
【文献】 特開2003−025026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
B21D 53/00
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の導体に、打ち抜き加工を施すことにより、一定の間隔で切欠または貫通孔の少なくともいずれかを有する、予備加工帯状導体を得る工程と、前記予備加工帯状導体の表面に、セレーション加工を予備加工帯状導体の長さ方向に平行な方向に施すことにより、セレーション加工帯状導体を得る工程と、前記セレーション加工帯状導体に成形加工を施す工程を有することを特徴とする、圧着端子の製造方法であって、前記セレーション加工は、リンク機構によって前記予備加工帯状導体の面と垂直な力の方向を左右方向に変換することでセレーション加工刃の取付部材を前記予備加工帯状導体の長さ方向に作動させてなる、セレーション加工刃を具備する金型を用いて施されることを特徴とする、圧着端子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法によって得られるセレーション形成部を具備することを特徴とする圧着端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットワイヤの接続に用いられる圧着端子に関わるもので、圧着を行う際に、マグネットワイヤの絶縁被覆を除去する機能を有するものに関わるものである。
【背景技術】
【0002】
マグネットワイヤは、コイルとして用いる電線の総称である。導体の直径は、用途により10μm〜3mmで、導体の断面が円形のものの他、矩形のものも用いられている。また、絶縁被覆の材料は、要求される耐熱性により様々で、ホルマール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドイミドなどが用いられ、その厚さは、10〜30μmである。
【0003】
そして、表面実装型のインダクタなどを構成するマグネットワイヤの場合は、溶融した半田の槽に、端末を直接浸漬して、絶縁被覆の除去と半田付けを行うことが可能な場合もあるが、絶縁被覆を剥離してから半田付けするのが一般的で、いずれにしてもこれらの方法では、端末処理に工数を要する。
【0004】
一方で、モータなどを構成するマグネットワイヤにおいては、圧着端子により端末処理を行うのが一般的で、端子を圧着する前処理としての、端末の絶縁被覆を剥離する工程を省略するため、端子のマグネットワイヤと接する面に、セレーションと称される、尖端を有する凹凸や溝を設けることがある。このような構造の圧着端子を用いることにより、端子を端末に圧着する際に、尖端がマグネットワイヤの絶縁被覆を突き破り、導体に食い込むことで、導通を確保し、機械的な十分な接続強度を確保できる。
【0005】
セレーションを備えた圧着端子については、様々な技術が開示されている。例えば、特許文献1には、導体と接する側に、導体の長さ方向と直交する方向に、溝形状のセレーションを、少なくとも1本設け、さらに導体と直交する方向に対して斜めに、相互に交差するように、それぞれ並列に延びる複数のローレット溝を形成したアルミニウム電線用の圧着端子が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、複数の素線を撚り合わせた電線に用いる圧着端子で、セレーションとして、素線の直径より小さい直径の円筒凹部を、多数設けた形状の圧着端子が開示されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献には、セレーションの形成方法については、具体的な開示がなく、検討すべき事項が多岐に亘っていることを示唆していると考えられる。また、一般的に圧着端子の製造工程においては、専用のメッキラインや、原材料の段階でセレーション加工を施すための装置が必要となり、製造コストの観点から改善の余地が大きいと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】 特開2009−259532号公報
【特許文献2】 特開2012−186050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、汎用の装置でセレーションを備えた圧着端子を製造する方法と、当該製造方法によって得られる圧着端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題解決のため、汎用プレス機に搭載可能で、セレーション加工に使用し得る金型を検討した結果なされたものである。
【0011】
即ち、本発明は、帯状の導体に、打ち抜き加工を施すことにより、一定の間隔で切欠または貫通孔の少なくともいずれかを有する、予備加工帯状導体を得る工程と、前記予備加工帯状導体の表面に、セレーション加工を予備加工帯状導体の長さ方向に平行な方向に施すことにより、セレーション加工帯状導体を得る工程と、前記セレーション加工帯状導体に成形加工を施す工程を有することを特徴とする、圧着端子の製造方法である。
【0012】
また、本発明は、前記セレーション加工が、前記予備加工帯状導体の面と垂直な方向に負荷される力の方向がリンク機構により変換され、前記予備加工帯状導体の長さ方向に動作する部材に取り付けられてなる、セレーション加工刃を具備する金型を用いて施されることを特徴とする、前記の圧着端子の製造方法である。
【0013】
また、本発明は、帯状の導体に、打ち抜き加工により、一定の間隔で切欠または貫通孔の少なくともいずれかを形成し、長さ方向に平行な方向にセレーション加工を施し、成形加工を施すことにより得られることを特徴とする圧着端子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による圧着端子の製造方法においては、金型の準備が必要な他は、汎用の装置が使用可能であることから、製造コスト低減に寄与するところは大きいと言える。また。セレーション加工は、キャリアを備えた状態で行うことから、メッキ工程には、汎用メッキラインを用いることができるので、これも製造コスト低減の要因となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】 セレーション加工を施した圧着端子の成形加工前の一例を示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)はAA断面図。
図2図1に例示した圧着端子を用いて、マグネットワイヤの端末を処理した状態を示す図で、図2(a)は平面図、図2(b)はBB断面図、図2(c)はCC断面図。
図3】 セレーション加工装置の一例を示す図。
図4】 セレーション加工装置で加工される前後の帯状導体の形状を示す図で、別工程で切欠きと貫通孔を打ち抜いた、予備加工帯状導体の一部。
図5】 セレーション加工装置で加工される前後の帯状導体の形状を示す図で、第一のプレス機でセレーション加工を施した、セレーション加工帯状導体の一部。
図6】 セレーション加工装置で加工される前後の帯状導体の形状を示す図で、第二のプレス機で成形加工を施した圧着端子の前駆体。
図7】 本発明に用いられるセレーション加工刃の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、具体的な図を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る方法によって、セレーション加工を施した圧着端子の成形加工前の一例を示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)はAA断面図である。図1において、1aは成形前の圧着端子、2aは成形前のセレーション形成部である。本発明によって、得ることが可能なセレーションの断面形状の一例を、図1(b)に基づいて説明すると、バリ、つまり尖端部の高さ;d1は、0.020mm以上であり、バリ頂点から底部までの深さ;d2は、0.15mm以上、セレーション角度;θは、15±5°、セレーションのピッチ;w1は、0.53±0.1mm、セレーションの底面幅;w2は、0.15±0.1mmである。
【0018】
また、図2は、図1に例示した圧着端子を用いて、マグネットワイヤの端末を処理した状態を示す図で、図2(a)は平面図、図2(b)はBB断面図、図2(c)はCC断面図である。図2において、1bは圧着処理を施した圧着端子、2bは圧着処理を施したセレーション形成部、3はマグネットワイヤである。
【0019】
図2に示したように、セレーション形成部2bはマグネットワイヤ3の外周を包み込むように圧着され、セレーションの尖端部分はマグネットワイヤの絶縁被覆(図示せず)を突き破って、マグネットワイヤ導体部分に食い込むので、電気的な接続が確保されるとともに、セレーション形成部2bとマグネットワイヤ3は機械的に強固に固定接続される。
【0020】
図3は、本発明に係るセレーション加工装置の一例を示す図である。図4において、4は原材料である帯状の導体の送り出し装置、5は別工程で予備的な打抜加工を施した予備加工帯状導体、6はセレーション加工を施すための第一のプレス機、7は金型のリンク機構、8はセレーション加工用金型、9はセレーション加工刃の取付部材、10はセレーション加工を施したセレーション加工帯状導体、11は成形加工を施すための第二のプレス機、12は成形加工用金型である。
【0021】
図3に示したように、電磁モータなどで作動するプレス機の図における上下動が、リンク機構7により図における左右の方向に変換され、セレーション加工刃の取付部材は図における左右方向、つまり、予備加工帯状導体5の長さ方向に作動する。この際、予備加工帯状導体5は金型に付属する固定ピンなどで固定し、セレーション加工が施される。
【0022】
図4ないし図6は、図3に示したセレーション加工装置で加工される前後の帯状導体の形状を示す図である。図4は、別工程で切欠きと貫通孔を打ち抜いた、予備加工帯状導体5の一部であり、13aはキャリアとなる部分である。図5は、第一のプレス機6でセレーション加工を施した、セレーション加工帯状導体10であり、14はセレーション、13bはキャリアとなる部分である。
【0023】
図6は、第二のプレス機11で成形加工を施した圧着端子の前駆体であり、1cは成形処理を施した圧着端子、13cはキャリアである。この状態でキャリアを活用することにより、汎用のメッキラインで圧着端子のメッキを施すことができる。また、第二のプレス機11で、キャリア13cを切断し、個片の圧着端子を得ることもできる。
【0024】
図7は、本発明に用いられるセレーション加工刃の一例を示す図である。図7において、15はセレーション加工刃である。この例においては、4本の溝状セレーションを形成し得るセレーション加工刃を示したが、刃の構成により、形成し得るセレーションの数を、一定範囲内で任意に設定できるのは勿論である。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、汎用の装置を用いて、セレーション加工が施された圧着端子を製造することが可能となり、製造コスト低減に寄与することが可能となる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは、論を俟たない。
【符号の説明】
【0026】
1a・・・成形前の圧着端子 1b・・・圧着処理を施した圧着端子
1c・・・成形処理を施した圧着端子 2a・・・成形前のセレーション形成部
2b・・・圧着処理を施したセレーション形成部 3・・・マグネットワイヤ
4・・・送り出し装置 5・・・予備加工帯状導体 6・・・第一のプレス機
7・・・金型のリンク機構 8・・・セレーション加工用金型
9・・・セレーション加工刃の取付部材 10・・・セレーション加工帯状導体
11・・・第二のプレス機 12・・・成形加工用金型
13a,13b・・・キャリアとなる部分 13c・・・キャリア
14・・・セレーション 15・・・セレーション加工刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7