(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163706
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】中空材及び形材を切断するための鋸刃
(51)【国際特許分類】
B23D 61/14 20060101AFI20170710BHJP
B23D 61/04 20060101ALN20170710BHJP
【FI】
B23D61/14
!B23D61/04
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-106124(P2012-106124)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2012-232409(P2012-232409A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】10 2011 050 168.1
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507012559
【氏名又は名称】ウィクス−サゲンファブリック ウィルヘルム エイチ.クルマン ゲーエムベーハー アンド カンパニー ケージー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ エイチ.クールマン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック グライム
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヘンチェル
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−263327(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02841806(FR,A1)
【文献】
米国特許第06520722(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 61/14−61/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースボディ(2)と、該ベースボディ(2)に接続されている多数の歯(10)を備え、該歯がそれぞれ1つの切刃(6)を備えている、中空材及び形材を切断するための鋸刃(1)であり、
前記歯(10)は、前記ベースボディ(2)の突出部(3)によって形成されており、該突出部(3)にはそれぞれ1つのインサート(4)が固定され、該インサートは、前記突出部(3)及び前記ベースボディ(2)の材料よりも硬質の材料から作られており、
前記歯(10)の少なくとも一部は、前記ベースボディ(2)に沿って反復しているグループの中に配置され、該グループは、少なくとも3つの目立てされていない、面取りされた歯(10)からなっており、
前記グループ内の第1の歯(10)は、第1の面取り部分および第2の面取り部分を有し、前記第1の面取り部分および前記第2の面取り部分は前記鋸刃(1)の長手方向中心部(9)に対して左右対称に通っており、
前記グループ内の第2の歯(10)は前記鋸刃(1)の前記長手方向中心部(9)に対して非対称的に通る、第1の面取り部分および第2の面取り部分を有し、前記第1の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から第1の方向(15)に伸び、第1の面取り角を有し、前記第2の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から、前記第1の方向(15)とは異なる第2の方向(16)に伸び、前記第1の面取り角より大きな第2の面取り角を有しており、
前記グループ内の第3の歯(10)は、前記鋸刃(1)の前記長手方向中心部(9)に対して非対称的に通る、第1の面取り部分および第2の面取り部分を有し、前記第1の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から前記第1の方向(15)に伸び、第1の面取り角を有し、前記第2の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から、前記第1の方向(15)とは異なる前記第2の方向(16)に伸び、前記第1の面取り角より小さな第2の面取り角を有しており、
前記第2の歯の第1の面取り部分および前記第3の歯の第1の面取り部分は、前記鋸歯(1)の正面図において、前記第2の歯および前記第3の歯の側方の一方に位置する第1の共通点となる端部を有するように構成されて、配置されており、
前記第2の歯の第2の面取り部分および前記第3の歯の第2の面取り部分は、前記鋸歯(1)の正面図において、前記第2の歯および前記第3の歯の側方の他方に位置する第2の共通点となる端部を有するように構成されて、配置されている、鋸刃(1)。
【請求項2】
前記第2の歯(10)の前記第1の面取り角が5°〜25°の間にあり、
前記第2の歯(10)の前記第2の面取り角が10°〜30°の間にあり、
前記第3の歯(10)の前記第1の面取り角が10°〜30°の間にあり、
前記第3の歯(10)の前記第2の面取り角が5°〜25°の間にあることを特徴とする、請求項1に記載の鋸刃(1)。
【請求項3】
前記第1の歯(10)が、20°〜60°の間である面取り角(w5)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋸刃(1)。
【請求項4】
前記第1の歯(10)が第1の高さを有し、前記第2の歯(10)が第2の高さを有し、前記第3の歯(10)が第3の高さを有し、前記第1の高さ、前記第2の高さ、および、前記第3の高さは、前記ベースボディ(2)から各々の前記歯(10)の頂点までの高さであり、前記第1の高さは、前記第2の高さ及び第3の高さよりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の鋸刃(1)。
【請求項5】
前記第1の高さは、前記第2の高さ及び前記第3の高さよりも、0.06mm〜0.6mm高いことを特徴とする、請求項4に記載の鋸刃(1)。
【請求項6】
前記第2の高さ及び前記第3の高さが等しいことを特徴とする、請求項4に記載の鋸刃(1)。
【請求項7】
前記グループが、さらに、2つの面取り部分を備える、目立てされていない、面取りされた第4の歯(10)を有し、前記面取り部分は、前記鋸刃(1)の前記長手方向中心部(9)に対して左右対称に通っていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の鋸刃(1)。
【請求項8】
前記第1の歯(10)が第1の高さを有し、前記第2の歯(10)が第2の高さを有し、前記第3の歯(10)が第3の高さを有し、前記第4の歯(10)が第4の高さを有しており、前記第1の高さ、前記第2の高さ、前記第3の高さ、および、前記第4の高さは、前記ベースボディ(2)から各々の前記歯(10)の頂点までの高さであり、前記第1の高さは、前記第2の高さ及び第3の高さよりも高く、前記第4の高さは前記第1の高さよりも低く、前記第2の高さ、および、前記第3の高さよりも高いことを特徴とする、請求項7に記載の鋸刃(1)。
【請求項9】
前記グループが、さらに目立てされていない、面取りされた歯(10)、すなわち、
前記鋸刃(1)の前記長手方向中心部(9)に対して非対称的に通る、第1の面取り部分および第2の面取り部分を備え、前記第1の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から第1の方向に伸び、第1の面取り角を有し、前記第2の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から、前記第1の方向とは異なる第2の方向(16)に伸び、前記第1の面取り角より小さな第2の面取り角を有している第5の歯(10)と、
前記鋸刃(1)の前記長手方向中心部(9)に対して非対称的に通る、第1の面取り部分および第2の面取り部分を備え、前記第1の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から第1の方向(15)に伸び、第1の面取り角を有し、前記第2の面取り部分は、前記長手方向中心部(9)から、前記第1の方向とは異なる第2の方向(16)に伸び、前記第1の面取り角より大きな第2の面取り角を有している第6の歯(10)と、を有していることを特徴とする、請求項7又は8に記載の鋸刃(1)。
【請求項10】
前記第5の歯(10)の前記第1の面取り角が5°〜25°の間にあり、
前記第5の歯(10)の前記第2の面取り角が20°〜50°の間にあり、
前記第6の歯(10)の前記第1の面取り角が20°〜50°の間にあり、
前記第6の歯(10)の前記第2の面取り角が5°〜25°の間にあることを特徴とする、請求項9に記載の鋸刃(1)。
【請求項11】
前記歯(10)の前記切刃(6)が、それぞれ1つの切断エッジを有し、前記切刃(6)には、それぞれの前記切断エッジにわたって広がる摩耗保護層が取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1つに記載の鋸刃(1)。
【請求項12】
前記摩耗保護層が、TiN、TiCN、TiAIN、CrN、または、DLCである硬質材料を有していることを特徴とする、請求項11に記載の鋸刃(1)。
【請求項13】
前記第1の歯(10)が第1の高さを有し、前記第5の歯(10)が第5の高さを有し、前記第6の歯(10)が第6の高さを有しており、前記第1の高さ、前記第5の高さ、および、前記第6の高さは、前記ベースボディ(2)から各々の前記歯(10)の頂点までの高さであり、
前記第1の高さは、前記第5の高さ及び前記第6の高さよりも、0.02mm〜0.2mm高いことを特徴とする、請求項9に記載の鋸刃(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空材及び/又は形材を切断するための鋸刃に関する。この鋸刃は、ベースボディと、このベースボディに接続されている多数の歯を備えており、これらの歯はそれぞれ切刃を備えている。これらの歯はベースボディの突出部によって形成されており、突出部にはそれぞれ1つのインサートが固定され、このインサートは、突出部及びベースボディの材料よりも硬質の材料から作られている。歯の少なくとも一部は、ベースボディに沿って反復しているグループの中に配置されており、このグループは最低3つの目立てされていない歯からなる。
【0002】
この種の鋸刃は、特に、歯が連続して直線状に配置されている長い帯ノコとして、弓ノコ刃又は丸ノコ刃としても形成することができる。ベースボディは金属からなり、歯は少なくとも部分的に硬質金属又は硬質金属インサートからなるのが好ましく、それにより、この鋸刃は金属材料の切断に特に良く適する。
【背景技術】
【0003】
ベースボディと、このベースボディに接続されている多数の歯(切刃付き)と、を備える鋸刃は、特許文献1から知られている。歯は、ベースボディに沿って反復しているグル−プの中に配置され、このグループは、目立てされていない、面取りされた少なくとも3つの歯を有し、これらの歯は異なる幅と高さとを備えている。グループ内の全ての歯は、鋸刃の長手方向中心部に対して左右対称に通る、それぞれ2つの面取り部分を有している。目立てされていない歯を備えるこの特殊なグループ化方法により、鋸刃が横に逸れる危険のない安定した直進動作での高い切断性能が生じ、このことによって、この鋸刃は、目立てさた歯を備える鋸刃又は仮切刃及び本切刃技術による鋸刃などの周知の鋸刃とは明らかに一線を画している。
【0004】
もう1つの比較可能な鋸刃が、特許文献2から知られている。
【0005】
さらに、ベースボディと、このベースボディに接続されている多数の歯(切刃付き)と、を備える鋸刃が特許文献3から知られている。これらの歯は、目立てされていない状態、左側へ目立てされている状態、右側へ目立てされている状態が交互に形成されている。この意味において、全ての歯、又は少なくとも目立てされた歯は、同じ幅と高さとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第4200423A1号
【特許文献2】独国特許出願公開第4300622A1号
【特許文献3】独国特許出願公開第10030168A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特に金属製の中空材及び形材をとりわけ良好に切断するのに適した鋸刃を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、本発明に基づき独立請求項の特徴により解決される。
【0009】
その他の好ましい本発明に基づく実施形態は、従属請求項に示されている。
【0010】
本発明は、中空材及び形材を切断するための鋸刃に関する。この鋸刃は、ベースボディと、このベースボディに接続されている多数の歯を備えており、これらの歯はそれぞれ切刃を備えている。これらの歯はベースボディの突出部によって形成されており、突出部にはそれぞれ1つのインサートが固定され、このインサートは、突出部及びベースボディの材料よりも硬質の材料から作られている。歯の少なくとも一部は、ベースボディに沿って反復しているグループの中に配置されており、このグループは最低3つの、目立てされていない、面取りされた歯からなる。グループ内の第1の歯は2つの面取り部分を有し、これらの面取り部分は鋸刃の長手方向中心部に対して左右対称に通っている。グループ内の第2の歯は、鋸刃の長手方向中心部に対して非対称的に通る、2つの面取り部分を有している。第1の面取り部分は、長手方向中心部から第1の方向に伸び、第1の面取り角を有し、第2の面取り部分は、長手方向中心部から第2の方向に伸び、
第1の面取り角より大きな第2の面取り角を有している。グループ内の第3の歯は、鋸刃の長手方向中心部に対して非対称的に通る、2つの面取り部分を有している。第1の面取り部分は、長手方向中心部から第1の方向に伸び、第1の面取り角を有し、第2の面取り部分は、長手方向中心部から第2の方向に伸び、
第1の面取り角より小さな第2の面取り角を有している。
【0011】
第2の歯の第1の面取り角は、この場合、第3の歯の第2の面取り角と同じであり得るが、必ずしも同じでなくともよい。第2の歯の第2の面取り角は、第3の歯の第1の面取り角と同じであり得るが、必ずしも同じでなくともよい。
【0012】
本発明に基づく鋸刃の歯は、グループ化方法の特殊な形態という意味で形成及び配置され、このグループ化方法に従って、このグループは少なくとも3つの歯を有している。このグループは鋸刃の長さに沿って反復し、必要に応じて、別の歯を間に挟んでいる。このような特殊なグループ化方法は、いわゆる仮切刃及び本切刃技術、及び目立てなしの歯、左側へ目立てした歯、右側へ目立てした歯による単純な反復配置とは区別することができる。
【0013】
「第1の歯」、「第2の歯」などの意味における歯の名称は、第1に、歯を区別するためにのみ用いられ、必ずしも、鋸刃に配置されている歯の順番を意味しているのではない。しかし、歯が正確にこの順番で(必要に応じて、別の歯を間に挟んで)配置されていることもあり得る。
【0014】
その特殊な形状により、この新しい鋸刃は、特に金属製の中空材及び形材をとりわけ良好に切断するのに適している。しかし、このことは、この鋸がその他のワークピースには使用できないという意味ではない。鋸刃の歯は、例えばシングル断面、層断面又は束断面などの任意の形材の細断、また、特に中空材及び/又は形材として形成されている鋼材の細断に適するように形成されている。
【0015】
この鋸刃は、特に、歯が連続して直線状に配置されている長い帯ノコとして、弓ノコ刃又は丸ノコ刃としても形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
グループ内に、目立てされていない、左右対称に面取りされた歯を備える鋸刃に対して、中空材又は形材を切断する場合、この新しい鋸刃の形状は、刃の一部に様々に取り付けられた面取り部によって、鋸刃がワークピースの切断経路を貫通するか、又は切断経路から出る際にバリをクリーンに、均等に切り離す。
【0017】
すなわち鋸刃の効果的な切断に必要な快削が、歯の面取り部の特殊な研磨面により、従ってこれらの歯の切刃によって生じる。
【0018】
従来技術において目立てにより歯を突出させる上での欠点は、目立ての公差によって不均等な歯の突出が生じ、それによって切断経路が様々な形状になり、バリの付着した切断を引き起こす可能性があることである。細断する容量の分割と切断力の歯への配分は、様々に行われる。このことにより、鋸刃の望ましい直進動作が妨げられる結果となり得る。そのため、切断した表面の質も低下する。さらに、鋸刃のベースボディは、目立てによる長手方向中心部からの傾斜によって弱くなるため、大きな切断出力によって細断する際に生じる大きな力がベースボディに伝達されなくなり、歯の欠落又はサポート材の破損を生じるおそれがある。
【0019】
これに対して、本発明による鋸刃には多くの利点がある。歯又はそれらの切刃は、バリの発生が非常に少ない、振動のない切断が達成されるように形成されている。このことによって、切断したワークピースの後処理が回避又は軽減される。極めて均等な幅の切断経路を実現し、逸脱を回避するために、歯は目立てされていない。その代わり、歯の一部が非対称な研磨面を有しており、このことによって、非常に正確な切断(すなわち形状のずれが少ない)と、バリの少ない切断とが実現され、鋸刃の長い使用期間にわたって、滑らかにクリーンカットされた表面を保証することができる。この新しい鋸刃の製造は、追加の目立て工程が省略されるため、目立てされた鋸刃に比べ低コストである。
【0020】
歯の配置又は順番に関しては、多くの可能性がある。鋸刃の振動感受性を改善するため、歯の配分、すなわち隣接する歯と歯の間の距離を様々に変化させ、例えばその距離を不統一に又は不規則に形成することができる。
【0021】
歯は、正の切断角、特に約1°〜20°、特に約10°の切断角を有しているのが好ましい。
【0022】
これらの歯は様々な幅と、好ましくは様々な高さも有することができる。このような配置は、幅及び高さの漸次的変化とも呼ばれる。従って、それぞれの歯には、切断経路の特定の部分が割り当てられる。左右対称な第1の歯の高さは、0.02mm〜0.2mm、特に0.03mmであることができ、非対称的な第2及び第3の歯の高さよりも高い。左右対称な第1の歯の面取り角は20°〜60°の範囲にあり、特に約45°である。非対称的な歯は5°〜45°の面取り角を有し、この場合、面取り角が全体的に互いに調整され、切断中に歯に作用する負荷がほぼ均等に配分されるようにされている。上述した面取り角により、それぞれの歯の角は非常に安定する。
【0023】
歯のグループは、1つ又は複数の目立てされておらず、面取りされた歯を有することができる。第5の歯がそれに含まれ、この第5の歯は、鋸刃の長手方向中心部に対して非対称的に通る、2つの面取り部分を有している。第1の面取り部分は、長手方向中心部から第1の方向に伸び、第1の面取り角を有しており、第2の面取り部分は、長手方向中心部から第2の方向に伸び、
第1の面取り角より小さな第2の面取り角を有している。第6の歯は、鋸刃の長手方向中心部に対して非対称的に通る、2つの面取り部分を有している。第1の面取り部分は、長手方向中心部から第1の方向に伸び、第1の面取り角を有しており、第2の面取り部分は、長手方向中心部から第2の方向に伸び、
第1の面取り角より大きな第2の面取り角を有している。目立てされていない、非対称的に面取りされた歯の数を増やすことにより(必要に応じて、その他の左右対称に面取りされた歯を配置して)、切断経路においてそれぞれの歯によって切断される範囲がさらに小さくなるため、切断力が均等に配分され、それぞれの歯に作用する力はより小さくなり、切断された表面の質がさらに改善される。このことは、面取り角が互いに適切に適合及び調整されることにより達成される。この場合、目立てされていない、非対称的に面取りされた歯がグループ内にあり、それらの面取り角の配置は、もう一方の歯と全く逆に配置されているのが好ましい。言い換えると、第1の歯はその切刃の左部分に第1の面取り角を有し、切刃の右部分には別の第2の面取り角を有しており、一方、別の第2の歯はその切刃の左部分に第2の面取り角を有し、切刃の右部分には第1の面取り角を有している。目立てされていない、左右対称に面取りされた多数の歯は、好ましくは同一の面取り角、特に約45°の面取り角を有し、異なる高さ及び/又は幅を有している。
【0024】
この鋸刃は、硬質金属を装着したインサート付き鋸刃として形成され、インサートはベースボディの突出部に固定されている。これらの硬質金属インサートにより、硬度が増強され、高速度鋼(HSS)に比べて鋸刃使用時の耐摩耗性を向上させることができる。これらのインサートは鋳物として形成されており、独立したエレメントとして製造され、引き続き、特に溶接又はハンダ付けによってベースボディに永久接続される。
【0025】
鋸刃の歯は、幾何学的に決められた切刃形状を備える切刃を有している(幾何学的に決められていない切刃形状を備える切刃とは異なる。DIN8580を参照)。鋸刃の切刃は、硬質金属、特にウォルフラム及び/又はコバルトを混ぜて合金にした鋼からなるのが好ましい。この場合、ウォルフラムは実質的な硬質材料であり、コバルト(及び必要に応じてその他の合金エレメント)はバインダである。しかし、例えば高速度鋼(HSS)も使用することができる。
【0026】
硬度と耐摩耗性をさらに向上させるため、鋸刃に、少なくとも部分的に摩耗保護層を取り付けることができる。この場合、摩耗保護層は、切刃の少なくとも切断エッジにわたって広がり、切刃は、必要に応じてあらかじめ丸み付けが行われ、摩耗保護層がより接着しやすくされている。この摩耗保護層により、特に硬度が増加するため、切断時の摩耗に対する抵抗が改善され、それによって鋸刃の耐用年数も上昇する。さらに、摩耗保護層の摩擦係数は比較的小さいものを選択することができるため、切断時のメタルチップの排出が有利になり、鋸刃の加熱が抑えられる。これによって、同時に、摩耗保護層を取り付けない帯ノコに比べ、切断力が軽減される。
【0027】
この摩耗保護層は、硬質材料からなる。硬質材料とは、特に、TiN、TiCN、TiAIN、CrN、DLCを意味する。摩耗保護層は、単層又は多層に形成され得る。単層構造の場合、摩耗保護層は、特にTiN、TiCN、TiAIN又はCrNからなる。例えば2層、3層又は4層などの複数の異なる層も、全体として摩耗保護層を形成することができる。このような多層構造の場合、少なくとも1つの中間層は、特にTiN、TiCN、TiAIN又はCrNからなり、中間層の上に配置される表面の層は特にDLCからなる。摩耗保護層は、物理蒸着(PVD)によって形成されるのが好ましい。多層構造の場合、このことは、表面層にも、少なくとも1つの中間層にも該当する。
【0028】
歯は、その幅、面取り角、及び面取りの長さに関して、非常に様々な形にすることができる。例えば少なくとも歯の一部及び特にいわゆる案内歯は、鋸刃のベースボディよりも幅広くならないように形成することができる。このことは、例えば比較的大きな面取り角によって達成される。そのような歯は、歯のグループ内においてゼロ幅を有している。
【0029】
本発明の有利な発展形態は、請求項、明細書及び図に示されている。明細書の冒頭で示された、特徴及び複数の特徴の組合せの利点は単なる例であって、代替として又は追加的に作用することができ、これらの利点が、必ずしも本発明に基づく実施形態によって達成される必要はない。その他の特徴は、図(特に示されている形状及び複数の構成部品の相対的寸法ならびに相対的配置及び接続)を参照することができ、本発明の様々な実施形態の特徴の組合せ又は様々な請求項の特徴の組合せも、請求項の参照請求項が選択されていたとしても同様に可能であり、これをもって提案される。このことは、個々の図に示されている特徴、又はそれらの説明で言及される特徴にも該当する。これらの特徴は、様々な請求項の特徴と組み合わせることも可能である。同様に、請求項に記載されている、本発明のさらなる実施形態の特徴は廃止することもできる。
【0030】
請求項及び明細書の中で、数に関して示されている特徴は、正確にその数か、又は示された数よりも大きい数があることを意味しており、「少なくとも」という副詞の明確な使用を必要としない。すなわち、例えば1つの切刃について言及された場合、このことは、ちょうど1つの切刃、2つの切刃又はそれより多い切刃があることを意味している。これに対して、特徴の正確な数だけが示される場合は、それぞれの特徴の前に「正確な」という形容詞が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下に、図に示された好ましい実施例を使って、本発明をさらに詳しく説明する。
【0032】
【
図1】新しい鋸刃の第1の実施例の一部の側面図である。
【
図4】
図1による新しい鋸刃の歯の実施例を前から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、新しい鋸刃1の第1の実施例の側面図を示している。
図2は、鋸刃1を上から見た図を示している。
図1及び2に示されている鋸刃1又はその構成部品のその他の外観は
図3及び4に示されている。
図4a〜4fは、この場合、
図3による鋸刃1の6つの歯10を個々に示している。
【0034】
以下に、
図1〜4を用いて鋸刃1を説明する。
【0035】
図1及び2は鋸刃1の一部のみを示しており、この部分は、
図1及び2において左右にも、下方へも引き続き広がっている。
図1及び2では、鋸刃1が、長手方向中心部を備える長い帯ノコとして形成されている。長手方向中心部9は、鋸刃1の長さに沿って中心部で伸びており、このことは、
図2及び3を合わせて見ることによって(それぞれの符号9を参照)理解することができる。しかし、鋸刃1は、丸ノコ又は短い弓ノコであることも可能であろう。この鋸刃1自体は金属からなり、金属の切断に用いられる。
【0036】
鋸刃1はベースボディ2を有しており、このベースボディについては一部だけが示されている。このベースボディ2は多数の突出部3を有し、これらの突出部にはそれぞれ1つのインサート4が固定されている。インサート4は、鋸刃1の突出部3及びベースボディ2の材料よりも硬い材料からなる。好ましくは、インサート4の材料は硬質金属である。突出部3とインサート4との間には、接合面5があり、この接合面でインサート4が突出部3に(特にハンダ付け又は溶接によって)固定接続されている。鋸刃1は、インサート4がよく分かるように1:1の縮尺では表示されていない。インサート4は、突出部3に比べ、実質的に明らかに小さい。
【0037】
インサート4を備える突出部3は、切刃6とチップ形成面7とを備える歯10を形成している。さらに、それぞれの歯10は、歯背面11、歯胸面12、歯底面13、自由面14を有している。
【0038】
歯10の少なくとも一部は、ベースボディ2に沿って反復しているグループの中に配置されており、このグループは少なくとも3つの、目立てされていない、面取りされた歯10からなる。
図3の上部には、特に、多数の歯10への有効な切刃部分の分割が斜線によって示されており、これらの歯は、それぞれ、切断経路の特定の帯状部分に割り当てられており、その箇所でのみチップを取り除く。
【0039】
特に
図3及び4で分かるように、前述の例におけるグループは、6つの異なる歯C1、C2、C3、C4、C5、C6を有している。左右には全部で5つの異なる面取り角w1、w2、w3、w4、w5があり、これらは分かりやすくするために
図3の左側にのみ示されている。しかし、これらの面取り角は、(別の歯10では部分的に)図の右側にもある。
【0040】
第1の歯C1は最も高く、最も細い歯であり、いわゆる案内歯である。グループ内の第1の歯C1は、2つの面取り部分FC1
1とFC1
2とを有し、これらの部分は面取り角w5によって鋸刃1の長手方向中心部9に対して左右対称に通っている。
【0041】
グループ内の第2の歯C2は、鋸刃1の長手方向中心部9に対して非対称的に通る、2つの面取り部分FC2
1及びFC2
2を有している。第1の面取り部分FC2
1は、長手方向中心部9から第1の方向15に伸び、第1の面取り角w2を有しており、第2の面取り部分FC2
2は、長手方向中心部9から第2の方向16に伸び、
第1の面取り角より大きな第2の面取り角w4を有している。
【0042】
グループ内の第3の歯C3は、鋸刃1の長手方向中心部9に対して非対称的に通る、2つの面取り部分FC3
1及びFC3
2を有している。第1の面取り部分FC3
1は、長手方向中心部9から第1の方向15に伸び、第1の面取り角w4を有しており、第2の面取り部分FC3
2は、長手方向中心部9から第2の方向16に伸び、
第1の面取り角より小さな第2の面取り角w2を有している。
【0043】
グループ内の第4の歯C4は、2つの面取り部分FC4
1とFC4
2とを有し、これらの部分は面取り角w5によって鋸刃1の長手方向中心部9に対して左右対称に通っている。
【0044】
グループ内の第5の歯C5は、鋸刃1の長手方向中心部9に対して非対称的に通る、2つの面取り部分FC5
1及びFC5
2を有している。第1の面取り部分FC5
1は、長手方向中心部9から第1の方向15に伸び、面取り角w3を有しており、第2の面取り部分FC5
2は、長手方向中心部9から第2の方向16に伸び、
第1の面取り角より小さな第2の面取り角w1を有している。
【0045】
グループ内の第6の歯C6は、鋸刃1の長手方向中心部9に対して非対称的に通る、2つの面取り部分FC6
1及びFC6
2を有している。第1の面取り部分FC6
1は、長手方向中心部9から第1の方向15に伸び、面取り角w1を有しており、第2の面取り部分FC6
2は、長手方向中心部9から第2の方向16に伸び、
第1の面取り角より大きな第2の面取り角w3を有している。
【0046】
目立てされていない歯10と部分的に異なる非対称的な面取り角とを備えるこの特殊なグループ化方法におけるこの種の歯10の配置によって、中空材又は形材を切断する場合、鋸刃1の直進動作での非常に優れた切断性能と、非常に正確かつバリの少ない切断と、滑らかにクリーンカットされた表面とが、鋸刃1の長い使用期間にわたって達成される。
【0047】
図3には、さらに、歯10の高さの違いh1、h2、h3が示されている。
【0048】
まとめると、図示されている好ましい実施例においては以下の値となっている。
この場合、以下のことが該当し得る。
【0049】
図3に示されているように、この好適な例では、グループがC1−C2−C3−C4−C5−C6の歯の順番からなる。このグループが鋸刃1のその他の部分で反復されるが、別の歯10を間に入れることも可能であり、及び/又はグループの配置を変えることも可能である。その他の配置例は、C1−C5−C6−C4−C2−C3、C1−C6−C5−C4−C2−C3、C1−C6−C5−C4−C3−C2、C1−C5−C6−C4−C3−C2である。
【符号の説明】
【0050】
1 鋸刃
2 ベースボディ
3 突出部
4 インサート
5 接合面
6 切刃
7 チップ形成面
8 チップ形成エレメント
9 長手方向中心部
10 歯
11 歯背面
12 歯胸面
13 歯底面
14 自由面
15 第1の方向
16 第2の方向
C1 第1の歯
C2 第2の歯
C3 第3の歯
C4 第4の歯
C5 第5の歯
C6 第6の歯
FC1
1 第1の歯の第1の面取り部分
FC1
2 第1の歯の第2の面取り部分
FC2
1 第2の歯の第1の面取り部分
FC2
2 第2の歯の第2の面取り部分
FC3
1 第3の歯の第1の面取り部分
FC3
2 第3の歯の第2の面取り部分
FC4
1 第4の歯の第1の面取り部分
FC4
2 第4の歯の第2の面取り部分
FC5
1 第5の歯の第1の面取り部分
FC5
2 第5の歯の第2の面取り部分
FC6
1 第6の歯の第1の面取り部分
FC6
2 第6の歯の第2の面取り部分
w1 第1の面取り角
w2 第2の面取り角
w3 第3の面取り角
w4 第4の面取り角
w5 第5の面取り角