(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1相対回転量から前記最終相対回転量までの前記各々の相対回転量のうち、前記第1所定相対回転量から第2所定相対回転量までの相対回転量が順次大きくなるように構成されており、
前記第1相対回転量は、前記最終相対回転量よりも小さい、請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
前記第1相対回転量から前記最終相対回転量までの前記各々の相対回転量のうち、複数の相対回転量が互いに等しくなるように構成されている、請求項1または2に記載の弁開閉時期制御装置。
前記最終相対回転量に対応する前記第n−1相対回転位相から前記ロック位相までの範囲は、前記エンジンが始動可能な相対回転位相の範囲に設定されている、請求項4に記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の油圧駆動式可変動弁装置(弁開閉時期制御装置)では、最終段目の相対回転量θ4が最も小さくなるように設定されていることから、最終段目よりも前の段目の相対回転量θ1〜θ3が、最終段目の相対回転量θ4よりも相対的に大きくなるので、その分、最終段目よりも前の段目に対応する段部にピンを係合させるために必要なベーンロータのばたつき量が大きくなる。
【0006】
ここで、カムシャフトのトルク変動によるベーンロータのばたつき量は、クランキング開始直後(クランキング開始後間もないクランキング初期)には小さく、その後、徐々に大きくなる傾向がある。すなわち、エンジン始動時には、エンジン動作時に相対回転位相を油圧で調整するための作動油がベーンロータとハウジングとにより構成される油圧室に充填されており、この充填された作動油がエンジン始動時にカムシャフトのトルク変動を利用して徐々に排出される。
【0007】
上記のように、ベーンロータのばたつき量は、クランキング開始直後(クランキング初期)の小さい状態から徐々に大きくなっていくので、最終段目よりも前の段目(たとえば、第1段目や第2段目)では、ベーンロータのばたつき量が十分に大きくなっていない場合がある。この場合に、上記特許文献1の油圧駆動式可変動弁装置のように、最終段目よりも前の段目に対応する段部にピンを係合させるために必要なばたつき量が大きいと、最終段目よりも前の段目に対応する段部にピンが係合するのに時間が掛かるので、相対回転位相を最遅角位相からエンジン始動に適したロック位相に近づけていくのに時間が掛かり、その結果、相対回転位相を速やかにエンジン始動に適したロック位相に到達させることができないという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、エンジンを始動する際に、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることが可能な弁開閉時期制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における弁開閉時期制御装置は、エンジンのクランクシャフトと同期して回転する駆動側回転部材と、駆動側回転部材と同軸上に駆動側回転部材に対して相対回転可能に配置され、エンジンの吸気弁および排気弁の少なくとも一方を開閉するカムシャフトとともに回転する従動側回転部材と、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を、ロック位相においてロックするロック機構とを備え、ロック機構は、相対回転位相がロック位相に近づく相対回転を許容し、かつ、ロック位相から離間する相対回転を規制する、規制体および規制体が係合するn数(nは
3以上の整数)の段部を含み、相対回転位相は、最遅角位相または最進角位相からロック位相に到達するまでに複数の段部に規制体が順次係合することにより段階的に規制され、最遅角位相または最進角位相からn数の段部のうちの第1段部により規制される第1相対回転位相までの第1相対回転量から、n数の段部のうちの第n−1段部により規制される第n−1相対回転位相から第n段部により規制されるロック位相までの最終相対回転量までの各々の相対回転量のうち、第1相対回転量
と最終相対回転量
とを除く第1所定相対回転量が最も小さくなるように、段部と規制体との位置関係が設定されている。
【0010】
この発明の一の局面による弁開閉時期制御装置では、上記のように、駆動側回転部材と従動側回転部材との第1相対回転量から最終相対回転量までの各々の相対回転量のうち、最終相対回転量以外の第1所定相対回転量が最も小さくなるように構成することによって、最終相対回転量が最も小さくなるように構成する場合に比べて、最終段目よりも前の段目の相対回転量が小さくなり易い。これにより、最終段目よりも前の段目において、対応する段部に規制体を係合させるために必要なばたつき量が大きくなるのを抑制することができるので、カムシャフトのトルク変動による従動側回転部材のばたつき量がクランキング開始直後(クランキング初期)の小さい状態から徐々に大きくなっていく場合においても、最終段目よりも前の段部に対応する段部に規制体を速やかに係合させることができる。これにより、相対回転位相を最遅角位相(最進角位相)から速やかにロック位相に近づけていくことができ、その結果、エンジンを始動する際に、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることができる。特に、第1段目や第2段目などの初期の段目の相対回転量が最も小さくなるようにすれば、従動側回転部材のばたつき量が小さいクランキング開始後間もないクランキング初期でも速やかに規制体を初期の段目の段部に係合させることができるので、相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。
【0012】
上記一の局面による弁開閉時期制御装置において、好ましくは、第1相対回転量から最終相対回転量までの各々の相対回転量のうち、第1所定相対回転量から第2所定相対回転量までの相対回転量が順次大きくなるように構成されて
おり、第1相対回転量は、最終相対回転量よりも小さい。このように構成すれば、最も小さい第1所定相対回転量を有する段目から段階的に順次相対回転量を大きくしていくことができるので、カムシャフトのトルク変動によるばたつき量が徐々に大きくなる傾向を有効に利用して、効率的に、相対回転位相を最遅角位相(最進角位相)からロック位相に近づけることができる。また、相対回転量を順次大きくすることにより、最遅角位相(最進角位相)からロック位相までの位相差が大きい場合にも、相対回転位相を容易にロック位相まで到達させることができる。
【0013】
上記
一の局面による弁開閉時期制御装置において、好ましくは、第1相対回転量から最終相対回転量までの各々の相対回転量のうち、複数の相対回転量が互いに等しくなるように構成されている。このように構成すれば、第1
所定相対回転量を最も小さくした分を他の段目に振り分ける場合に、均等に振り分けることができるので、特定の段目の相対回転量が過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、特定の段目に対応する段部に規制体が係合し難くなるのを抑制することができるので、これによっても、相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。また、
第1所定相対回転量を有する段目と他の段
目との相対回転量を互いに等しくして、
第1所定相対回転量を有する段目に加えて他の段目も相対回転量が最も小さくなるようにすれば、規制体をより速やかに
第1所定相対回転量を有する段
目などの初期の段部に係合させることができる。
【0014】
上記
一の局面による弁開閉時期制御装置において、好ましくは、最終相対回転量が、2番目に小さくなるように構成されている。このように構成すれば、最終段目に対応する第n−1段部から第n段部までの最終相対回転量(位相差)を小さくすることができるので、第n−1段部に規制体が係合した際に、エンジン始動に適したロック位相(第n段部での相対回転位相)により近い位置で相対回転位相を規制することができる。これにより、相対回転位相がロック位相に到達していない状態でも第n−1段部に規制されている状態であれば、エンジンを容易に始動させることができる。
【0015】
上記最終相対回転量が2番目に小さい構成において、好ましくは、最終相対回転量に対応する第n−1相対回転位相からロック位相までの範囲は、エンジンが始動可能な相対回転位相の範囲に設定されている。このように構成すれば、相対回転位相がロック位相に到達していない状態でも第n−1段部に規制されている状態であれば、エンジンを円滑に始動させることができる。
【0016】
上記一の局面による弁開閉時期制御装置において、好ましくは、最終相対回転量が、最も大きくなるように構成されている。このように構成すれば、最終相対回転量を大きくする分、最終段目よりも前の段目における相対回転量をより小さくすることができるので、最終段目よりも前の段目において、対応する段部に規制体を係合させるために必要なばたつき量が大きくなるのをより抑制することができる。これにより、カムシャフトのトルク変動による従動側回転部材のばたつき量がクランキング開始直後の小さい状態から徐々に大きくなっていく場合においても、相対回転位相を最遅角位相(最進角位相)から速やかにロック位相に近づけていくことができる。
【0017】
この場合、好ましくは、第n−1相対回転位相は、エンジンが始動可能な相対回転位相に設定されており、相対回転位相は、エンジンの始動時に、カムシャフトのトルク変動により最遅角位相または最進角位相から第n−1相対回転位相まで移動され、エンジンが始動した後、第n−1相対回転位相からロック位相まで油圧により移動されるように構成されている。このように構成すれば、最終相対回転量を最も大きくした場合に、最遅角位相(最進角位相)から第n−1段部に対応する第n−1相対回転位相までは、それぞれ、より小さいばたつき量で規制体が係合可能であるので、カムシャフトのトルク変動を利用して相対回転位相を速やかにロック位相に近づけることができるとともに、第n−1相対回転位相からロック位相までは、油圧を利用して相対回転位相を確実にロック位相に到達させることができる。
【0018】
なお、本出願では、上記一の局面による弁開閉時期制御装置とは別に、以下のような構成も考えられる。
【0019】
(付記項1)
すなわち、本出願の他の構成による弁開閉時期制御装置は、エンジンのクランクシャフトと同期して回転する駆動側回転部材と、駆動側回転部材と同軸上に駆動側回転部材に対して相対回転可能に配置され、エンジンの吸気弁および排気弁の少なくとも一方を開閉するカムシャフトとともに回転する従動側回転部材と、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を、ロック位相においてロックするロック機構とを備え、ロック機構は、相対回転位相がロック位相に近づく相対回転を許容し、かつ、ロック位相から離間する相対回転を規制する、規制体および規制体が係合するn数(nは自然数)の段部を含み、相対回転位相は、最遅角位相または最進角位相からロック位相に到達するまでに複数の段部に規制体が順次係合することにより段階的に規制され、最遅角位相または最進角位相からn数の段部のうちの第1段部により規制される第1相対回転位相までの第1相対回転量から、n数の段部のうちの第n−1段部により規制される第n−1相対回転位相から第n段部により規制されるロック位相までの最終相対回転量までの各々の相対回転量のうち、初期の段目における相対回転量が最も小さくなるように、段部と規制体との位置関係が設定されている。このように構成すれば、従動側回転部材のばたつき量が小さいクランキング初期でも、規制体を速やかに初期の段目の段部に係合させることができるので、相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。
【0020】
(付記項2)
上記本出願の他の構成による弁開閉時期制御装置において、好ましくは、初期の段目の相対回転量である第1相対回転量および第2段目の第2相対回転量のうちの少なくとも一方の相対回転量が最も小さくなるように構成されている。このように構成すれば、従動側回転部材のばたつき量が小さいクランキング初期でも、容易に、第1段目や第2段目の段部に規制体を速やかに係合させることができるので、相対回転位相をクランキング初期から確実にロック位相に近づけることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、エンジンを始動する際に、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1〜
図10を参照して、本発明の第1実施形態による弁開閉時期制御装置100の構成について説明する。
【0025】
第1実施形態による弁開閉時期制御装置100は、
図1〜
図3に示すように、外周部に一体的に形成されたタイミングスプロケット11を含む外部ロータ1と、吸気弁21を開閉するカムシャフト2(
図1参照)と、カムシャフト2とともに一体的に回転する内部ロータ3とを備えている。この弁開閉時期制御装置100は、自動車用のエンジン200の吸気弁21の開閉時期を制御可能に構成されている。なお、外部ロータ1は、本発明の「駆動側回転部材」の一例であり、内部ロータ3は、本発明の「従動側回転部材」の一例である。
【0026】
外部ロータ1は、クランクシャフト110と同期して回転するように構成されている。具体的には、
図1に示すように、タイミングスプロケット11およびクランクシャフト110に取り付けられたギアには、環状のタイミングチェーン111が所定の張力を有した状態で装着されている。これにより、エンジン動作時において、クランクシャフト110が回転駆動すると、外部ロータ1がタイミングチェーン111を介してクランクシャフト110に同期して回転される。また、外部ロータ1には、
図2および
図3に示すように、外周部から径方向の内側に突出する4つの突部12が一体的に設けられている。4つの突部12は、周方向に沿って互いに離間して配置されている。また、
図1に示すように、外部ロータ1の表側(カムシャフト2が配置される側とは反対側)にはフロントプレート13が設けられ、外部ロータ1の裏側(カムシャフト2が配置される側)にはリアプレート14が設けられている。フロントプレート13およびリアプレート14は、それぞれ、外部ロータ1の表面1aおよび裏面1bに当接した状態で複数のボルト120により外部ロータ1に固定的に取り付けられている。
【0027】
カムシャフト2は、
図1に示すように、カムシャフト2の先端部2aにおいて、カムシャフト2の回転軸上に配置されたボルト130により内部ロータ3に固定的に取り付けられている。これにより、カムシャフト2は、内部ロータ3と一体的に回転される。また、カムシャフト2は、エンジン動作時において、外部ロータ1の回転に伴って内部ロータ3とともに一体的に回転することによって、カムシャフト2に設けられたカムにより吸気弁21を押し下げて開弁させるように構成されている。
【0028】
カムシャフト2と一体的に回転する内部ロータ3は、
図1〜
図3に示すように、外部ロータ1と同軸上で外部ロータ1に対して相対回転可能に配置されている。また、内部ロータ3は、外部ロータ1の内側に配置されており、外周面3aが外部ロータ1の4つの突部12に対して摺動するように構成されている。また、
図2および
図3に示すように、外部ロータ1の4つの突部12と内部ロータ3の外周面3aとにより区画された4つの領域には、油圧室4が形成されている。内部ロータ3の4つの油圧室4に対応する位置には、それぞれ、ベーン溝31が形成されている。各ベーン溝31には、対応する油圧室4を周方向において進角室41と遅角室42とに仕切るベーン5が挿入されている。4つのベーン5は、それぞれ、内部ロータ3から径方向の外側に突出することにより、対応する油圧室4を進角室41と遅角室42とに仕切るように設けられている。また、ベーン5は、
図1に示すように、ベーン溝31の底部に配置された付勢部材51により径方向の外側に向かって付勢されている。これにより、ベーン5の先端部5aは、油圧室4の内周面4aに摺動可能な状態で押し付けられている。
【0029】
カムシャフト2および内部ロータ3には、
図1〜
図3に示すように、進角室41に繋がる進角通路32と、遅角室42に繋がる遅角通路33と、後述のロック機構6の段部62a〜62dに繋がるロック油通路34とが形成されている。進角通路32、遅角通路33およびロック油通路34は、それぞれ、後述する油圧回路7に接続されている。
【0030】
弁開閉時期制御装置100には、
図2〜
図8に示すように、エンジン200を始動する際に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相(クランクシャフト110とカムシャフト2との相対回転位相)を、最進角位相と最遅角位相との間に設定されたエンジン始動に適した(円滑なエンジン始動が可能な)ロック位相においてロック(保持)するロック機構6が設けられている。ロック機構6は、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を、最遅角位相からロック位相まで段階的に近づけていくように構成されている。また、ロック機構6は、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相がロック位相に近づく相対回転を許容し、かつ、ロック位相から離間する相対回転を規制する一対の規制体61aおよび61bと、一対の規制体61aおよび61bが係合する4つの段部62a〜62dとを含んでいる。
【0031】
一対の規制体61aおよび61bは、周方向に互いに所定距離を隔てて配置されている。また、一対の規制体61aおよび61bは、
図2および
図3に示すように、それぞれ、外部ロータ1の突部12に設けられた規制体収容部15aおよび15bに収容されている。また、一対の規制体61aおよび61bは、外部ロータ1の突部12から内部ロータ3側に突出するように、径方向に直線移動可能に構成されている。また、一対の規制体61aおよび61bは、それぞれ、スプリング63aおよび63bにより径方向の内側(内部ロータ3側)に向かって付勢されている。
【0032】
4つの段部62a〜62dは、
図2〜
図8に示すように、内部ロータ3の外周に切欠状に形成されている。具体的には、4つの段部62a〜62dのうち、最初(1番目)の段部(第1段部)62aおよび3番目の段部(第3段部)62cは、一方の規制体61aに対応する位置に設けられ、2番目の段部(第2段部)62bおよび最終(4番目)の段部(第4段部)62dは、他方の規制体61bに対応する位置に設けられている。最初の段部62aは、内部ロータ3の外周面3aから径方向内側に1段窪んだ位置に配置され、3番目の段部62cは、段部62aよりもさらに径方向内側に1段窪んだ位置に配置されている。また、2番目の段部62bは、内部ロータ3の外周面3aから径方向内側に1段窪んだ位置に配置され、最終の段部62dは、段部62bよりもさらに径方向内側に1段窪んだ位置に配置されている。
【0033】
ここで、第1実施形態では、ロック機構6は、エンジン200を始動する際に、カムシャフト2のトルク変動(交番トルク)により内部ロータ3が遅角方向S1および進角方向S2にばたつくことを利用して、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)を、最遅角位相から段階的にロック位相に近づけていき、最終的にロック位相で保持する機能を有している。具体的には、ロック機構6は、一対の規制体61aおよび61bが4つの段部62a〜62d(最初の段部62a、2番目の段部62b、3番目の段部62c、最終の段部62d)に順次係合することにより、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を4段階でロック位相に到達させるように構成されている。なお、ロック動作の詳細については後述する。
【0034】
また、第1実施形態では、一対の規制体61aおよび61bと4つの段部62a〜62dとの位置関係は、最遅角位相から最初の段部62aにより規制される相対回転位相(第1相対回転位相)までの第1段目の相対回転量(第1相対回転量)から、最終の1つ前(3番目)の段部62cにより規制される相対回転位相(第3相対回転位相)から最終の段部62dにより規制される相対回転位相(ロック位相)までの最終段目(4段目)の相対回転量(最終相対回転量)までの各々の相対回転量のうち、最終段目以外の段目(第1実施形態では第1段目)における相対回転量が最も小さくなるように設定されている。詳細には、第1段目における相対回転量が最も小さいとともに、第2段目以降最終段目までの相対回転量は、第1段目の相対回転量の2倍の大きさで互いに等しくなるように設定されている。なお、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)は、本発明の「第1所定相対回転量」の一例である。
【0035】
具体的には、この第1実施形態では、
図9に示すように、第1段目の相対回転量が相対角度(位相差)4度であり、第2段目以降最終段目までの相対回転量がそれぞれ相対角度8度である。すなわち、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)は、最遅角位相を基準として、最初の段部62aにより進角方向S2に相対角度4度の位相(第1相対回転位相)で規制され、2番目の段部62bにより進角方向S2に相対角度12度の位相(第2相対回転位相)で規制される。また、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)は、最遅角位相を基準として、3番目の段部62cにより進角方向S2に相対角度20度の位相(第3相対回転位相)で規制され、最終の段部62dおよび3番目の段部62cにより進角方向S2に相対角度28度のロック位相で規制される。なお、上記相対角度は、クランクシャフト110の回転角度を基準とした回転角(クランク角)である。
【0036】
弁開閉時期制御装置100は、
図1〜
図3に示すように、エンジン動作時に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を油圧で調整するための作動油を、油圧室4に供給または排出するための油圧回路7を備えている。油圧回路7は、油圧室4の進角室41および遅角室42に充填される作動油の量を調整して、油圧室4内におけるベーン5の位置を調整するために設けられている。具体的には、油圧回路7は、進角通路32を介して進角室41内の作動油の量を調整するとともに、遅角通路33を介して遅角室42内の作動油の量を調整するように構成されている。これにより、エンジン動作時に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が調整されてエンジン200の吸気弁21の開閉時期が変更される。
【0037】
また、油圧回路7は、上記のロック機構6によるロック動作およびロック解除動作を制御するように構成されている。具体的には、油圧回路7は、
図1に示すように、作動油とロック機構6によるロック動作用のロック油とを供給するオイルポンプ71と、スプール72aを有するソレノイド式のOCV(オイルコントロールバルブ)72と、OCV72を制御するECU(電子制御ユニット)73と、作動油およびロック油を貯留するオイルパン74とを含んでいる。進角通路32、遅角通路33およびロック油通路34は、それぞれ、OCV72に設けられた複数のポートのうちの所定のポートに接続されている。
【0038】
OCV72は、
図2、
図3および
図10に示すように、ECU73による制御に基づいて、スプール72a(
図10参照)の位置を位置W1から位置W4まで4段階に切り替えるように構成されている。これにより、進角室41および遅角室42の作動油の充填状態と、段部62a〜62dのロック油の充填状態とが調整される。具体的には、
図10に示すように、エンジン始動時に、スプール72aの位置が位置W1(ロック動作位置)に切り替えられた場合には、段部62a〜62d内のロック油がオイルパン74側に排出(ドレイン)されることにより、規制体61aおよび61bが段部62a〜62dに挿入可能な状態になる。すなわち、規制体61aおよび61bは、それぞれ、スプリング63aおよび63bの付勢力により段部62a〜62dに挿入されてロック動作が可能な状態になる。また、進角室41および遅角室42に充填された作動油もオイルパン74側に排出(ドレイン)されて油圧室4の油圧が低下する。
【0039】
エンジン動作時に、スプール72aの位置が位置W2(進角方向移動位置)に切り替えられた場合には、段部62a〜62d内にロック油が供給されることにより、規制体61aおよび61bがロック油の油圧により径方向の外側に押し戻されて規制体61aおよび61bによる相対回転位相のロック状態が解除される。そして、この位置W2では、遅角室42の作動油は排出される一方、進角室41には作動油が供給されることにより、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が進角方向S2に移動される。
【0040】
エンジン動作時またはエンジン停止時に、スプール72aの位置が位置W3(ロック解除保持位置)に切り替えられた場合には、段部62a〜62d内にロック油が供給されることにより、
図3に示すように、相対回転位相のロック状態が解除された状態で、進角室41および遅角室42への作動油の給排出が停止される。これにより、エンジン動作時またはエンジン停止時に、ロック状態が解除された状態で、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が現状の位置で保持される。
【0041】
また、エンジン動作時に、スプール72aの位置が位置W4(遅角方向移動位置)に切り替えられた場合には、段部62a〜62d内にロック油が供給されることにより相対回転位相のロック状態が解除された状態で、進角室41の作動油は排出される一方、遅角室42には作動油が供給されることにより、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が遅角方向S1に移動される。
【0042】
ECU73は、
図1に示すように、カムシャフト2の位相を検知するカム角センサ73a、クランクシャフト110の位相を検知するクランク角センサ73b、エンジンオイルの温度を検知する温度センサ73c、クランクシャフト110の回転数(エンジン回転数)を検知する回転数センサ73dおよびIG/SW(イグニッションキースイッチ)73eから、各種検知信号を取得可能に構成されている。さらに、ECU73は、上記以外のセンサ(車速センサや水温センサなど)からも検知信号を取得可能である。また、ECU73は、カム角センサ73aによるカムシャフト2の位相の検知結果と、クランク角センサ73bによるクランクシャフト110の位相の検知結果とから、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相(クランクシャフト110とカムシャフト2との相対回転位相)を取得可能である。そして、ECU73は、上記各種センサから取得する検知信号に基づいて、OCV72のスプール72aの位置を制御することにより、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相をその時の動作状態に適した位相に調整(移動)するように構成されている。
【0043】
次に、
図4〜
図9を参照して、本発明の第1実施形態による弁開閉時期制御装置100のエンジン始動時におけるロック動作について説明する。
【0044】
まず、ECU73は、
図9に示すように、IG/SW73eからイグニッションON信号が入力されると、クランクシャフト110をクランキングする制御(クランクシャフト110をスタータモータで強制回転させる動作制御)を行うとともに、OCV72のスプール72aの位置を位置W3(ロック解除保持位置)から位置W1(ロック動作位置)に切り替える制御を行う。これにより、段部62a〜62d内のロック油と、進角室41および遅角室42の作動油とをオイルパン74に排出させて規制体61aおよび61bを段部62a〜62dに挿入可能な状態にしながら、クランクシャフト110をクランキングすることができる。この際、カムシャフト2で吸気弁21を開閉駆動させるために発生する周期的なトルク変動(交番トルク)により、内部ロータ3が外部ロータ1に対して遅角方向S1および進角方向S2に交互にばたつく。すなわち、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が遅角方向S1および進角方向S2に交互に変動する。この場合、内部ロータ3に生じる平均トルクは、クランキングによる回転動作とカムシャフト2のトルク変動とにより遅角方向S1のトルクとなり、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相は、遅角方向S1および進角方向S2に交互に変動しながら遅角方向S1に徐々に向かう傾向がある。
【0045】
そして、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が最遅角位相(相対回転位相:0度)に位置する
図4の状態において、内部ロータ3のばたつき量が第1段目における相対回転量(第1相対回転量)(相対角度4度)以上になると、
図5に示すように、スプリング63aにより付勢された一方の規制体61aが第1段目に対応する最初の段部62aに挿入(移動)されて係合される。この状態で、外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相は4度になる。ここで、第1実施形態では、第1段目の相対回転量が最も小さくなるように設定されているので、一方の規制体61aが速やかに最初の段部62aに係合される。これにより、内部ロータ3は、ロック位相に近づく進角方向S2への相対回転が許容された状態で、最初の段部62aの壁部621aが規制体61aに当接されることによりロック位相から離間する遅角方向S1への相対回転が規制される。その結果、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相は、最遅角位相を基準に進角方向S2に相対回転位相(相対角度)4度の位相で、ロック位相から離間する遅角方向S1への移動が規制される。
【0046】
外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)が最初の段部62aにより規制された状態で、内部ロータ3のばたつき量が第2段目における相対回転量(第2相対回転量)(相対角度8度)以上になると、
図6に示すように、スプリング63bにより付勢された他方の規制体61bが第2段目に対応する2番目の段部62bに挿入されて係合される。この状態で、外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相は、最遅角位相基準で12度になる。この際、内部ロータ3は、最初の段部62aにより規制される相対回転位相よりも進角方向S2側の位置において、2番目の段部62bの壁部621bが規制体61bに当接されることによりロック位相から離間する遅角方向S1への移動が規制される。これにより、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相は、最遅角位相を基準に進角方向S2に相対回転位相(相対角度)12度の位相で、ロック位相から離間する遅角方向S1への移動が規制される。
【0047】
この状態で、内部ロータ3のばたつき量が第3段目における相対回転量(第3相対回転量)(相対角度8度)以上になると、
図7に示すように、一方の規制体61aが第3段目に対応する3番目の段部62cに挿入されて係合される。この状態で、外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相は、最遅角位相基準で20度になる。この際、内部ロータ3は、2番目の段部62bにより規制される相対回転位相よりもさらに進角方向S2側の位置において、3番目の段部62cの壁部621cが規制体61aに当接されることによりロック位相から離間する遅角方向S1への移動が規制される。これにより、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相は、最遅角位相を基準に進角方向S2に相対回転位相(相対角度)20度の位相で、ロック位相から離間する遅角方向S1への移動が規制される。
【0048】
そして、内部ロータ3のばたつき量が最終段目(第4段目)における相対回転量(最終相対回転量)(相対角度8度)以上になると、
図8に示すように、他方の規制体61bが最終段目(4段目)に対応する最終の段部62dに挿入されて係合される。この状態で、外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相は、最遅角位相基準で28度(ロック位相)になる。この際、一方の規制体61aは3番目の段部62cの壁部621eに当接し、他方の規制体61bは最終の段部62dの壁部621dに当接する。これにより、内部ロータ3は、3番目の段部62cにのみ規制される相対回転位相よりもさらに進角方向S2側のロック位相において、遅角方向S1および進角方向S2の両方向の移動が規制される。その結果、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相は、最遅角位相を基準に進角方向S2に相対回転位相(相対角度)28度のロック位相で、遅角方向S1および進角方向S2の両方への移動が規制される。このようにして、第1実施形態による弁開閉時期制御装置100では、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が最遅角位相から段階的にロック位相に近づけられてロック位相(28度)でロックされる。これにより、ロック動作が完了する。
【0049】
第1実施形態では、上記のように、外部ロータ1と内部ロータ3との第1段目の相対回転量(第1相対回転量)から最終段目の相対回転量(最終相対回転量)までの各々の相対回転量のうち、最終段目の相対回転量以外の相対回転量(第1実施形態では第1段目の相対回転量)が最も小さくなるように構成することによって、最終段目の相対回転量が最も小さくなるように構成する場合に比べて、最終段目よりも前の段目の相対回転量が小さくなり易い。これにより、最終段目よりも前の段目において、対応する段部に規制体を係合させるために必要なばたつき量が大きくなるのを抑制することができるので、カムシャフト2のトルク変動による内部ロータ3のばたつき量がクランキング開始直後(クランキング初期)の小さい状態から徐々に大きくなっていく場合においても、最終段目よりも前の段部に対応する段部に規制体61a(61b)を速やかに係合させることができる。これにより、相対回転位相を最遅角位相から速やかにロック位相に近づけていくことができ、その結果、エンジン200を始動する際に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることができる。
【0050】
特に、第1実施形態のように、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さくなるように設定すれば、内部ロータ3のばたつき量が小さいクランキング開始後間もないクランキング初期でも速やかに規制体61aを最初の段部62aに係合させることができるので、より速やかにロック位相に到達させることができる。
【0051】
また、第1実施形態では、第2段目以降最終段目まで相対回転量が互いに等しくなるように構成する。これにより、第1段目の相対回転量を最も小さくした分を他の段目に振り分ける場合に、第2段目以降の全ての段目に均等に振り分けることができるので、特定の段目の相対回転量が過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、特定の段目に対応する段部に規制体61a(61b)が係合し難くなるのを抑制することができるので、これによっても、相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。
【0052】
特に、この第1実施形態の構成は、クランキング開始直後のカムシャフト2のトルク変動によるばたつき量が第2段目の相対回転量(第2相対回転量)未満であるとともに、規制体61aが最初の段部(第1段部)62aに係合された後、ばたつき量が安定して第2段目の相対回転量以上を確保可能である場合に有効である。
【0053】
(第2実施形態)
次に、
図11を参照して、本発明の第2実施形態による弁開閉時期制御装置100aについて説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、第1段目から最終段目(第4段目)までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量が最も小さく、かつ、第2段目の相対回転量が2番目に小さいとともに、第3段目および最終段目の相対回転量が互いに等しくなるように設定されている。
【0054】
第2実施形態では、
図11に示すように、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3(
図2および
図3参照)との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)が4段階でロック位相に到達されてロック位相においてロックされるように構成されている。また、最遅角位相を基準として、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さくなるように設定されている。なお、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)は、本発明の「第1所定相対回転量」の一例である。また、第2段目の相対回転量(第2相対回転量)は、第1段目の相対回転量の2倍の大きさで、かつ、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、2番目に小さくなるように設定されている。また、第3段目および最終段目の相対回転量は、第1段目の相対回転量の3倍の大きさで互いに等しくなるように設定されている。具体的には、第1段目の相対回転量が相対角度(位相差)4度であり、第2段目の相対回転量が相対角度8度であるとともに、第3段目および最終段目の相対回転量がそれぞれ相対角度12度である。また、ロック位相は36度である。
【0055】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0056】
第2実施形態では、上記のように、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さいとともに、第2段目の相対回転量(第2相対回転量)が2番目に小さくなるように構成することによって、初期の段目の相対回転量を小さくすることができるので、内部ロータ3のばたつき量が小さいクランキング初期でも、規制体61a(61b)を速やかに初期の段目の段部に係合させることができ、その結果、より速やかにロック位相に到達させることができる。また、第3段目および最終段目の相対回転量が互いに等しくなるように構成する。これによって、第1段目および第2段目の相対回転量を小さくした分を第3段目および最終段目の段目に均等に振り分けることができるので、第3段目および最終段目の相対回転量が過度に大きくなることなく、第3段目および最終段目の段部に対して規制体61a(61b)が係合し易くなり、その結果、相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。
【0057】
特に、この第2実施形態の構成は、クランキング開始直後のカムシャフト2のトルク変動によるばたつき量が第2段目の相対回転量(第2相対回転量)未満であるとともに、規制体61aが最初の段部(第1段部)62aに係合された直後のばたつき量が第2段目の相対回転量以上第3段目の相対回転量(第3相対回転量)未満であり、かつ、規制体61bが2番目の段部(第2段部)62bに係合された後、ばたつき量が安定して第3段目の相対回転量以上を確保可能である場合に有効である。
【0058】
また、第2実施形態の構成でも、上記第1実施形態と同様に、最終段目以外の段目(第1段目)における相対回転量が最も小さくなるように構成することによって、最終段目よりも前の段部に対応する段部に規制体61a(61b)を速やかに係合させることができるので、エンジン200を始動する際に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることができる。
【0059】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0060】
(第3実施形態)
次に、
図12を参照して、本発明の第3実施形態による弁開閉時期制御装置100bについて説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、第1段目から最終段目(第4段目)までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目から最終段目まで相対回転量が順次大きくなるように設定されている。
【0061】
第3実施形態では、
図12に示すように、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3(
図2および
図3参照)との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)が4段階でロック位相に到達されてロック位相においてロックされるように構成されている。また、最遅角位相を基準として、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さく、第1段目から最終段目まで相対回転量が順次大きくなるように設定されている。詳細には、第2段目、第3段目および最終段目の相対回転量は、それぞれ、第1段目の相対回転量の2倍、2.5倍および3倍の大きさに設定されている。具体的には、第1段目の相対回転量が相対角度(位相差)4度であり、第2段目の相対回転量(第2相対回転量)が相対角度8度であり、第3段目の相対回転量(第3相対回転量)が相対角度10度であるとともに、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)が相対角度12度である。また、ロック位相は34度である。なお、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)は、本発明の「第1所定相対回転量」の一例であり、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)は、本発明の「第2所定相対回転量」の一例である。
【0062】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
第3実施形態では、上記のように、第1段目から最終段目まで相対回転量が順次大きくなるように構成する。これにより、最も小さい相対回転量を有する第1段目から段階的に順次相対回転量を大きくしていくことができるので、カムシャフト2のトルク変動によるばたつき量が徐々に大きくなる傾向を有効に利用して、効率的に、相対回転位相を最遅角位相からロック位相に近づけることができる。また、相対回転量を順次大きくすることにより、最遅角位相からロック位相までの位相差が大きい場合にも、相対回転位相を容易にロック位相まで到達させることができる。
【0064】
特に、この第3実施形態の構成は、クランキング開始直後のカムシャフト2のトルク変動によるばたつき量が第2段目の相対回転量(第2相対回転量)未満であり、規制体61aが最初の段部(第1段部)62aに係合された直後のばたつき量が第2段目の相対回転量以上第3段目の相対回転量(第3相対回転量)未満であるとともに、規制体61bが2番目の段部(第2段部)62bに係合された直後のばたつき量が第3段目の相対回転量以上最終段目(第4段目)の相対回転量(最終相対回転量)未満であり、かつ、規制体61aが3番目の段部(第3段部)62cに係合された後、ばたつき量が安定して最終段目の相対回転量以上を確保可能である場合に有効である。
【0065】
また、第3実施形態の構成でも、上記第1実施形態と同様に、最終段目以外の段目(第1段目)における相対回転量が最も小さくなるように構成することによって、最終段目よりも前の段部に対応する段部に規制体61a(61b)を速やかに係合させることができるので、エンジン200を始動する際に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることができる。
【0066】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
(第4実施形態)
次に、
図13を参照して、本発明の第4実施形態による弁開閉時期制御装置100cについて説明する。この第4実施形態では、上記第1実施形態と異なり、第1段目から最終段目(第4段目)までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目および第2段目の相対回転量が互いに等しくかつ最も小さくなるように設定されている。
【0068】
第4実施形態では、
図13に示すように、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3(
図2および
図3参照)との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)が4段階でロック位相に到達されてロック位相においてロックされるように構成されている。また、最遅角位相を基準として、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)と第2段目の相対回転量(第2相対回転量)とが互いに等しく、かつ、最も小さくなるように設定されている。なお、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)および第2段目の相対回転量(第2相対回転量)は、本発明の「第1所定相対回転量」の一例である。また、第3段目および最終段目の相対回転量は、第1段目(第2段目)の相対回転量の3倍の大きさで互いに等しくなるように設定されている。具体的には、第1段目および第2段目の相対回転量がそれぞれ相対角度(位相差)4度であり、第3段目および最終段目の相対回転量がそれぞれ相対角度12度である。また、ロック位相は32度である。
【0069】
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
第4実施形態では、上記のように、第1段目と第2段目との相対回転量を互いに等しくして、第1段目に加えて第2段目も相対回転量が最も小さくなるように構成する。これにより、カムシャフト2のトルク変動によるばたつき量がクランキング開始直後(クランキング初期)の小さい状態においても、規制体61a(61b)をより速やかに第1段目および第2段目の初期の段部に係合させることができるので、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。また、第3段目および最終段目の相対回転量が互いに等しくなるように構成する。これによって、第1段目および第2段目の相対回転量を小さくした分を第3段目および最終段目の段目に均等に振り分けることができるので、第3段目および最終段目の相対回転量が過度に大きくなることなく、第3段目および最終段目の段部に対して規制体61a(61b)が係合し易くなり、その結果、相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。
【0071】
また、第4実施形態の構成でも、上記第1実施形態と同様に、最終段目以外の段目(第1段目)における相対回転量が最も小さくなるように構成することによって、最終段目よりも前の段部に対応する段部に規制体61a(61b)を速やかに係合させることができる。
【0072】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
(第5実施形態)
次に、
図14を参照して、本発明の第5実施形態による弁開閉時期制御装置100dについて説明する。まず、第5実施形態による弁開閉時期制御装置100dの内容を説明する前に、第5実施形態の前提となる技術について説明する。
【0074】
従来、エンジンストール(エンジンの突然の停止)が発生するか否かを予測して、エンジンストールが発生すると予測した場合に、クランク軸(駆動側回転部材)と吸気側カム軸(従動側回転部材)との相対回転位相をエンジン始動に適した初期位相(ロック位相)に移動させるとともに、エンジンが停止しないように、変速機構をニュートラル状態に移行させる制御を行う技術が知られている(たとえば、特開2012−13051号公報参照)。
【0075】
しかしながら、上記従来の構成では、変速機構がニュートラル状態になる前にエンジンがストールしてしまう場合があり、この場合には、クランク軸と吸気側カム軸との相対回転位相を初期位相(ロック位相)まで到達させることができない場合があると考えられる。
【0076】
そこで、この第5実施形態では、エンジンストール時に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相をエンジン始動に適したロック位相に到達させることができない場合(非正常時)でも、エンジンを容易に再始動させることが可能な構成について説明する。この第5実施形態では、上記第1実施形態と異なり、第1段目から最終段目(第4段目)までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さく、かつ、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)が2番目に小さくなるように設定されている。なお、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)は、本発明の「第1所定相対回転量」の一例である。
【0077】
第5実施形態では、
図14に示すように、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3(
図2および
図3参照)との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)が4段階でロック位相に到達されてロック位相においてロックされるように構成されている。また、エンジンストールが発生すると予測された場合には、エンジン200が停止しないように、図示しない変速機構がニュートラル状態に移行される。また、第5実施形態による弁開閉時期制御装置100dは、エンジン動作時(運転中)において、エンジンストールが発生すると予測された場合に、油圧室4(
図2および
図3参照)の作動油の油圧を利用して、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相をエンジン始動に適したロック位相に移動させるように構成されている。これにより、
図14に2点鎖線で示すように、エンジン200が停止する前に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相をロック位相に到達させることが可能である。
【0078】
また、第5実施形態では、最遅角位相を基準として、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さく、第1段目から最終段目の1つ前の第3段目まで相対回転量が順次大きくなるように設定されている。なお、第3段目の相対回転量(第3相対回転量)は、本発明の「第2所定相対回転量」の一例である。また、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)が2番目に小さくなるように設定されている。すなわち、最終段目の相対回転量は、カムシャフト2のトルク変動による内部ロータ3のばたつき量を考慮して最も小さくなるように設定された第1段目の相対回転量よりは大きいものの、第2段目および第3段目の相対回転量よりは小さくなるように設定されている。
【0079】
また、上記のように、最終の段目の相対回転量を2番目に小さくなるように設定することにより、最終段目の相対回転量に対応する相対回転位相(第3相対回転位相からロック位相まで)の範囲は、エンジン200が始動可能な相対回転位相の範囲に設定されている。また、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量は、エンジンストールが発生すると予測された後、変速機構がニュートラル状態に移行されるまでの時間や、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を油圧によりロック位相に移動させる際の応答速度、および、エンジン始動可能な相対回転位相の範囲などを考慮して設定されている。具体的には、第1段目の相対回転量が相対角度(位相差)4度であり、第2段目の相対回転量(第2相対回転量)が第1段目の相対回転量の2倍の相対角度8度である。また、第3段目の相対回転量(第3相対回転量)が第1段目の相対回転量の2.5倍の相対角度10度であり、最終段目の相対回転量が第1段目の相対回転量の1.5倍の相対角度6度である。また、ロック位相は28度である。
【0080】
なお、第5実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0081】
第5実施形態では、上記のように、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さいとともに、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)が2番目に小さくなるように構成する。これにより、最終段目に対応する最終の1つ前の段部(第3段部)62cから最終の段部(第4段部)62dまでの相対回転量(位相差)を小さくすることができるので、最終の1つ前の段部62cに規制体61aが係合した際に、エンジン始動に適したロック位相(最終の段部での相対回転位相)により近い位置で相対回転位相を規制することができる。これにより、変速機構がニュートラル状態になる前にエンジン200が停止して、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相をエンジン始動に適したロック位相に到達させることができなかった場合(非正常時)でも、最終の1つ前の段部62cに規制されている状態であれば、エンジン200を容易に再始動させることができる。
【0082】
また、第5実施形態では、上記のように、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)に対応する相対回転位相(第3相対回転位相からロック位相まで)の範囲を、エンジン200が始動可能な相対回転位相の範囲に設定する。これにより、相対回転位相がロック位相に到達していない状態でも最終の1つ前の段部(第3段部)62cに規制されている状態であれば、エンジン200を確実かつ円滑に始動させることができる。
【0083】
また、第5実施形態の構成でも、上記第1実施形態と同様に、最終段目以外の段目(第1段目)における相対回転量が最も小さくなるように構成することによって、最終段目よりも前の段部に対応する段部に規制体61a(61b)を速やかに係合させることができるので、エンジン200を始動する際に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることができる。
【0084】
なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0085】
(第6実施形態)
次に、
図15を参照して、本発明の第6実施形態による弁開閉時期制御装置100eについて説明する。この第6実施形態では、上記第1実施形態と異なり、最終の1つ前の3番目の段部62cに対応する相対回転位相が、エンジン200が始動可能な相対回転位相に設定されている。
【0086】
第6実施形態では、
図15に示すように、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3(
図2および
図3参照)との相対回転位相(外部ロータ1に対する内部ロータ3の相対回転位相)が4段階でロック位相に到達されてロック位相においてロックされるように構成されている。また、最遅角位相を基準として、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さく、第1段目から最終段目まで相対回転量が順次大きくなるように設定されている。すなわち、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)が最も大きくなるように設定されている。詳細には、第2段目、第3段目および最終段目の相対回転量は、それぞれ、第1段目の相対回転量の2倍、2.5倍および4.5倍の大きさに設定されている。具体的には、第1段目の相対回転量が相対角度(位相差)4度であり、第2段目の相対回転量(第2相対回転量)が相対角度8度である。また、第3段目の相対回転量(第3相対回転量)が相対角度10度であり、最終段目の相対回転量が相対角度18度である。また、ロック位相は40度である。なお、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)は、本発明の「第1所定相対回転量」の一例であり、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)は、本発明の「第2所定相対回転量」の一例である。
【0087】
また、最終段目の起点となる相対回転位相である、最終の1つ前の3番目の段部(第3段部)62cに対応する相対回転位相(第3相対回転位相)は、エンジン200が始動可能な相対回転位相に設定されている。詳細には、3番目の段部62cに対応する相対回転位相は、極低温(約−30℃)時においてもエンジン200が完爆可能(エンジン200がスタータモータなしで自発駆動可能)な位相に設定されている。これにより、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相が3番目の段部62cに対応する相対回転位相まで移動した後は、エンジン200が始動されて油圧室4の油圧が利用可能となるので、油圧により外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を容易に移動させることが可能である。そして、第6実施形態による弁開閉時期制御装置100eは、エンジン始動時に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を、カムシャフト2のトルク変動により最遅角位相から最終の1つ前の3番目の段部62cに対応する相対回転位相まで移動させ、エンジン200が始動した後、3番目の段部62cに対応する相対回転位相からロック位相まで油圧により移動させるように構成されている。
【0088】
また、最終の1つ前のエンジン始動可能な3番目の段部62cよりも遅角側の段部(最初の段部62aおよび2番目の段部62b)に対応する相対回転位相は、極低温(約−30℃)時において、エンジン始動が不可能であるか、または、エンジン始動してもラフアイドル状態(エンジン200の振動が正常始動時よりも大きい状態)になる相対回転位相に設定されている。すなわち、最初の段部62aおよび2番目の段部62bに対応する相対回転位相では、極低温時において、正常にエンジン始動することができない。
【0089】
なお、第6実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0090】
第6実施形態では、上記のように、最終段目の相対回転量(最終相対回転量)が最も大きくなるように構成する。これにより、最終段目の相対回転量を大きくする分、最終段目よりも前の段目における相対回転量をより小さくすることができるので、最終段目よりも前の段目において、対応する段部に規制体61a(61b)を係合させるために必要なばたつき量が大きくなるのをより抑制することができる。これにより、カムシャフト2のトルク変動による内部ロータ3のばたつき量がクランキング開始直後の小さい状態から徐々に大きくなっていく場合においても、相対回転位相を最遅角位相から速やかにロック位相に近づけていくことができる。
【0091】
また、第6実施形態では、上記のように、最終の1つ前の段部(第3段部)62cに対応する相対回転位相(第3相対回転位相)をエンジン200が始動可能な相対回転位相に設定する。そして、エンジン200の始動時に、カムシャフト2のトルク変動により最遅角位相から最終の1つ前の段部62cに対応する相対回転位相まで移動させ、エンジン200が始動した後、最終の1つ前の段部62cに対応する相対回転位相からロック位相に油圧により移動させる。これにより、最終段目の相対回転量を最も大きくした場合に、最遅角位相から最終の1つ前の段部62cに対応する相対回転位相までは、それぞれ、より小さいばたつき量で規制体61a(61b)が係合可能であるので、カムシャフト2のトルク変動を利用して相対回転位相を速やかにロック位相に近づけることができる。また、最終の1つ前の段部62cに対応する相対回転位相からロック位相までは、油圧を利用して相対回転位相を確実にロック位相に到達させることができる。
【0092】
また、第6実施形態の構成でも、上記第1実施形態と同様に、最終段目以外の段目(第1段目)における相対回転量が最も小さくなるように構成することによって、最終段目よりも前の段部に対応する段部に規制体61a(61b)を速やかに係合させることができるので、エンジン200を始動する際に、外部ロータ1と内部ロータ3との相対回転位相を速やかにロック位相に到達させることができる。
【0093】
なお、第6実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0094】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0095】
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、本発明のカムシャフトの一例として、エンジンの吸気弁を開閉するカムシャフトを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エンジンの排気弁を開閉するカムシャフトであってもよいし、吸気弁および排気弁の両方を開閉するカムシャフトであってもよい。
【0096】
また、上記第1〜第6実施形態では、第1段目から最終段目(第4段目)までの各々の段目の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さくなるように設定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1段目から最終段目までの各々の段目の相対回転量のうち、最終相対回転量以外であれば、第1段目以外の段目における相対回転量が最も小さくなるように設定してもよい。たとえば、第2段目または第3段目の相対回転量が最も小さくなるように構成してもよい。
【0097】
また、上記第1〜第6実施形態では、規制体を内部ロータ(従動側回転部材)の径方向に移動させることにより段部に係合させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、規制体を従動側回転部材の回転軸が延びる方向に沿って移動させることにより段部に係合させるようにしてもよい。
【0098】
また、上記第1〜第6実施形態では、規制体を外部ロータ(駆動側回転部材)に設けるとともに、段部を内部ロータ(従動側回転部材)に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、規制体を従動側回転部材に設けるとともに、段部を駆動側回転部材に設けるようにしてもよい。
【0099】
また、上記第1〜第6実施形態では、外部ロータ(駆動側回転部材)と内部ロータ(従動側回転部材)との相対回転位相を最遅角位相から4段階でロック位相に到達させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、最遅角位相からロック位相まで段階的に規制される構成であれば、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を最遅角位相からロック位相まで、4段階以外の段階数で到達させるようにしてもよい。たとえば、
図16に示す変形例による弁開閉時期制御装置100fのように、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を最遅角位相から6段階でロック位相に到達させてもよい。このように6段階でロック位相に到達させる場合には、最遅角位相からロック位相までの位相差が大きい(
図16では位相差を58度に設定している)場合にも、4段階でロック位相に到達させる場合に比べて段目が多くなる分、容易にロック位相まで到達させることができる。
【0100】
また、この変形例では、
図16に示すように、第1段目から最終段目(第6段目)までの各々の相対回転量のうち、第1段目の相対回転量(第1相対回転量)が最も小さく(4度)、かつ、第1段目から第4段目まで相対回転量が順次大きくなる(第2段目(8度)、第3段目(10度)、第4段目(12度))ように設定している。このように構成すれば、初期の段目(第1段目や第2段目)の相対回転量を小さくすることができるので、ばたつき量が小さいクランキング初期でも、規制体を速やかに初期の段目の段部に係合させることができ、その結果、より速やかにロック位相に到達させることができる。また、最も小さい相対回転量を有する第1段目から第4段目まで段階的に順次相対回転量を大きくしていくことができるので、カムシャフトのトルク変動によるばたつき量が徐々に大きくなる傾向を有効に利用して、効率的に、相対回転位相を最遅角位相からロック位相に近づけることができる。また、第4段目以降最終段目までの相対回転量を互いに等しく(12度)することによって、第1段目から第3段目までの相対回転量を小さくした分を第4段目以降最終段目までに均等に振り分けることができるので、第4段目以降の相対回転量が過度に大きくなることなく、第4段目以降の段部に対して規制体が係合し易くなり、その結果、相対回転位相をより速やかにロック位相に到達させることができる。
【0101】
特に、この
図16に示した変形例の構成は、クランキング開始直後のカムシャフトのトルク変動によるばたつき量が第2段目の相対回転量(第2相対回転量)(相対角度8度)未満であり、規制体が最初の段部(第1段部)に係合された直後のばたつき量が第2段目の相対回転量以上第3段目の相対回転量(第3相対回転量)(相対角度10度)未満であるとともに、規制体が2番目の段部(第2段部)に係合された直後のばたつき量が第3段目の相対回転量以上第4段目の相対回転量(第4相対回転量)(相対角度12度)未満であり、かつ、規制体が3番目の段部(第3段部)に係合された後、ばたつき量が安定して第4段目の相対回転量以上を確保可能である場合に有効である。
【0102】
なお、
図16に示した変形例のように、段階数を増加させると、段目が多くなる分、容易にロック位相まで到達させることができるという効果を得ることができる一方で、段部が増加した分、構造が複雑化する。これに対して、上記第1〜第6実施形態では、最遅角位相からロック位相までの段階数を4段階と少なくすることにより、段階数が多い場合に比べて、段部の数を増やす必要がない分、構造を簡素化することができるとともに、ロック機構が大型化するのを抑制することができる。
【0103】
また、上記第1〜第6実施形態では、外部ロータ(駆動側回転部材)と内部ロータ(従動側回転部材)との相対回転位相を最遅角位相から段階的にロック位相に到達させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を最進角位相から段階的にロック位相に到達させる構成であってもよい。すなわち、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を制御するための作動油の油圧が発生していない状態で、トーションスプリングなどの付勢力により相対回転位相を強制的に最進角位相に移動させるような構成においても、本発明を適用可能である。
【0104】
また、上記第1〜第6実施形態では、一対の規制体を用いて、最遅角位相から段階的にロック位相に到達させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、最遅角位相から段階的にロック位相に到達させることが可能であれば、1つまたは3つ以上の規制体を用いて、最遅角位相から段階的にロック位相に到達させる構成であってもよい。