(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エポキシ基を有する物質(A)が、エチレン・グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン・グリシジルメタクリレート・酢酸ビニルコポリマー、エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸メチルコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるコポリマーである、請求項1に記載のタイヤインナーライナー用シート。
前記ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する物質(B)が、フェノール樹脂、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、無水マレイン酸変性エチレンオクテンゴム、無水マレイン酸変性PE(ポリエチレン)、無水マレイン酸変性PP(ポリプロピレン)、エチレン・酢酸ビニルコポリマーの部分ケン化物、無水マレイン酸変性SEBS(完全水添スチレン系エラストマー)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のタイヤインナーライナー用シート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[タイヤ]
本開示において、「タイヤ」とは、特に言及がない場合、空気入りタイヤをいう。本開示における「空気入りタイヤ」の限定されない一実施形態の構造について、
図1を用いて説明する。
図1は、限定されない一実施形態の空気入りタイヤの半分を示す模式的断面図である。
【0014】
空気入りタイヤ1は、これらに限定されないが、乗用車用、トラック・バス用、重機用等として用いることができる。空気入りタイヤ1は、トレッド部2とサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部にわたって設けられ、両端を折り返してビードコア5を係止するカーカス6と、該カーカス6のクラウン部外側に2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。カーカス6のタイヤ半径方向内側には一方のビード部4から他方のビード部4に亘るインナーライナー9が配置されている。ベルト層7は、スチールコード又はアラミド繊維等のコードよりなる2枚のプライを、タイヤ周方向に対してコードが通常5〜30°の角度になるようにプライ間で相互に交差するように配置される。またカーカスはポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードがタイヤ周方向にほぼ90°に配列されており、カーカスとその折り返し部に囲まれる領域には、ビードコア5の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス8が配置される。なお、インナーライナー9とカーカス6との間に、インスレーションが配置されていてもよい。
【0015】
本開示にかかるタイヤは、後述する本開示にかかるインナーライナー用シートを備えるタイヤを含む。本開示にかかるタイヤの限定されない一実施の形態は、
図1のインナーライナー9として本開示にかかるインナーライナー用シートを用いたものである。
【0016】
[タイヤインナーライナー用シート]
本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートは、ガスバリア層及び接着層を含む2層以上を有する構成であって、前記ガスバリア層と前記接着層とが架橋反応により層間架橋されている。前記層間架橋の架橋は、限定されない一態様において加硫架橋を含まない非加硫架橋であり、その他の一態様において、加硫架橋及び非加硫架橋を含む。
【0017】
本開示における「タイヤインナーライナー用シート」の限定されない一又は複数の実施形態の構造について、
図2及び3を用いて説明する。
図2及び3は、本開示にかかる限定されない一実施の形態のタイヤインナーライナー用シートの一例の断面図である。
図2に示すタイヤインナーライナー用シート20は、カーカスゴム又はインスレーションに接着する接着層22と、それに接するガスバリア層21とを含む。そして、ガスバリア層21と接着層22とが架橋反応により層間架橋されている。
図3に示すタイヤインナーライナー用シート30は、カーカスゴム又はインスレーションに接着する2層からなる接着層(32及び33)と、それに接するガスバリア層31とを含む。そして、ガスバリア層31と接着層32とが架橋反応により層間架橋されている。接着層32と接着層33とは、層間架橋されてもよく、されなくてもよい。
【0018】
[層間架橋]
本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートにおける層間架橋は、一態様において、エポキシ基を有する物質(A)(以下、「架橋剤(A)」ともいう)と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する物質(B)(以下、「架橋剤(B)」ともいう)との架橋反応により形成されたものである。
【0019】
これらの架橋剤の組み合わせは、接着層に用いる樹脂とガスバリア層に用いる樹脂とをTダイ押出機で共押出によって積層することを含むタイヤインナーライナー用シートの製造方法に適用できる。限定されない一実施形態において、架橋剤(A)を含む接着層に用いる樹脂と、架橋剤(B)を含むガスバリア層に用いる樹脂とをTダイ押出機で共押出によって積層することで架橋反応を行わせ層間架橋を形成する。或いは、限定されない一実施形態において、架橋剤(B)を含む接着層に用いる樹脂と、架橋剤(A)を含むガスバリア層に用いる樹脂とをTダイ押出機で共押出によって積層することで架橋反応を行わせ層間架橋を形成する。そして、この層間架橋により、高温での接着層の溶融流動化を抑制でき、タイヤ内におけるガスバリア層と接着層との剥離の発生を抑制できる。また、前記層間架橋は、一又は複数の実施形態において、接着層とカーカスゴム又はインスレーションとの剥離の発生を抑制できる。但し、本開示における層間架橋の形成方法及び/又は本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートの製造方法はこれらに限定されない。
【0020】
本開示において「架橋剤(A)を含有するガスバリア層」とは、架橋剤(A)を含むガスバリア層に用いる樹脂から形成されたガスバリア層であって、架橋剤(A)の官能基(エポキシ基)の全部又は一部が前記層間架橋を形成している状態のガスバリア層を含む。同様に「架橋剤(B)を含有する接着層」とは、架橋剤(B)を含む接着層に用いる樹脂から形成された接着層であって、架橋剤(B)の官能基の全部又は一部が前記層間架橋を形成している状態の接着層を含む。
【0021】
したがって、本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートは、一又は複数の実施形態において、ガスバリア層と接着層とを有し、前記ガスバリア層と前記接着層とが架橋反応により層間架橋されており、前記ガスバリア層が架橋剤(A)を含有し、前記接着層が架橋剤(B)を含有するタイヤインナーライナー用シートである。また、本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートは、その他の一又は複数の実施形態において、ガスバリア層と接着層とを有し、前記ガスバリア層と前記接着層とが架橋反応により層間架橋されており、前記ガスバリア層が架橋剤(B)を含有し、前記接着層が架橋剤(A)を含有するタイヤインナーライナー用シートである。
【0022】
[エポキシ基を有する物質(A)/架橋剤(A)]
本開示において、架橋剤(A)としては、エポキシ基を有する公知の又は今後開発される架橋剤が使用できる。ガスバリア層が架橋剤(A)を含有する場合、架橋剤(A)はガスバリア層に用いる樹脂と相溶性を有することが好ましい。また、接着層が架橋剤(A)を含有する場合、架橋剤(A)は接着層に用いる樹脂と相溶性を有することが好ましい。限定されない一又は複数の実施形態において、架橋剤(A)は、エチレン・グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン・グリシジルメタクリレート・酢酸ビニルコポリマー、エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸メチルコポリマー、又は、これらの組み合わせである。架橋剤は、一種類でもよく、二種類以上を組み合せて使用してもよい。
【0023】
[ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する物質(B)/架橋剤(B)]
本開示において、架橋剤(B)としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する公知の又は今後開発される架橋剤が使用できる。ガスバリア層が架橋剤(B)を含有する場合、架橋剤(B)はガスバリア層に用いる樹脂と相溶性を有することが好ましい。また、接着層が架橋剤(B)を含有する場合、架橋剤(B)は接着層に用いる樹脂と相溶性を有することが好ましい。限定されない一又は複数の実施形態において、架橋剤(B)は、フェノール樹脂、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、無水マレイン酸変性エチレンオクテンゴム、無水マレイン酸変性PE(ポリエチレン)、無水マレイン酸変性PP(ポリプロピレン)、エチレン・酢酸ビニルコポリマーの部分ケン化物、無水マレイン酸変性SEBS(完全水添スチレン系エラストマー)、又はこれらの組み合わせである。架橋剤は、一種類でもよく、二種類以上を組み合せて使用してもよい。
【0024】
[ガスバリア層]
ガスバリア層としては、ガスバリア性を有するポリマーシートが使用でき、一又は複数の実施形態において、タイヤの軽量化の観点から、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIBS層(特開2012−31362参照)、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含むSIB層、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物を含む層、ブチルゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物を含む層、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を含む層(特開2009−220793参照)、又は、PVOH(ポリビニルアルコール)を含む層、エチレンーシクロオレフィン共重合体を含む層、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む層、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含む層、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂を含む層、ポリエチレンナフタレート樹脂を含む層などが挙げられる。
【0025】
ガスバリア層における架橋剤(A)又は(B)の含有量は、一又は複数の実施形態において、ガスバリア性の維持及び架橋形成の観点から、ガスバリア層全体に対して5質量%以上が好ましく、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上である。また、同様の観点から、20質量%以下が好ましく、より好ましくは17質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0026】
ガスバリア層におけるガスバリア性を有するポリマーの含有量、及び、ガスバリア層におけるスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物、ブチルゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物、EVOH、PVOH、エチレンーシクロオレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、又はこれらの組み合わせの含有量は、一又は複数の実施形態において、ガスバリア性の維持の観点から、ガスバリア層全体に対して60質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また、ガスバリア性の維持及び架橋形成の観点から、97質量%以下が好ましく、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは91質量%以下である。
【0027】
ガスバリア層の厚さは、一又は複数の実施形態において、ガスバリア性の維持の観点から10μm以上が好ましく、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは250μm以上である。また、タイヤ軽量化の観点から600μm以下が好ましく、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは450μm以下である。
【0028】
[接着層]
接着層としては、カーカスゴム又はインスレーションとの接着を提供できるポリマーシートが使用でき一又は複数の実施形態において、タイヤの軽量化の観点から、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIS層、スチレン−イソプレンジブロック共重合体を含むSI層、ポリブタジエンを含む層、エチレンプロピレンジエンゴムを含む層、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物を含む層、ブチルゴム及びその臭素化物又は塩素化物を含む層、ブタジエンゴムを含む層、クロロプレンゴムを含む層、及び、アクリロニトリルブタジエンゴムを含む層などが挙げられる。
【0029】
接着層における架橋剤(A)又は(B)の含有量は、一又は複数の実施形態において、架橋形成の観点から、接着層全体に対して10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、タイヤ軽量化の観点から、60質量%以下が好ましく、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0030】
接着層におけるカーカスゴム又はインスレーションとの接着を提供できるポリマーの含有量、及び、接着層におけるスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−イソプレンジブロック共重合体、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンゴム、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物、ブチルゴム及びその臭素化物又は塩素化物、又はこれらの組み合わせの含有量は、一又は複数の実施形態において、カーカスゴム又はインスレーションとの接着性の維持の観点から、接着層全体に対して40質量%以上が好ましく、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。また、架橋形成の観点から、90質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0031】
接着層の厚さは、一又は複数の実施形態において、カーカスゴム又はインスレーションとの接着性維持の観点から10μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上である。また、タイヤ軽量化の観点から300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。接着層は、
図3に示す通り、二層又はそれ以上に積層してもよい。
【0032】
なお、本開示に係るタイヤインナーライナー用シートは、2層以上のガスバリア層、及び2層以上の接着層を有していてもよく、また、基本的な性能を損なわない範囲で、他の樹脂層を有していてもよく、前記他の樹脂層は、架橋剤(A)又は架橋剤(B)を有していてもよい。この場合、ガスバリア層と接着層の層間のみならず、ガスバリア層と他の樹脂層、接着層と他の樹脂層、及び他の樹脂層間の層間においても、架橋剤(A)及び架橋剤(B)の架橋反応により層間架橋されていてもよい。例えば、
図3に示すタイヤインナーライナー用シート30において接着層32が架橋剤(A)を含む場合、接着層33が架橋剤(B)を含むことにより、接着層32と接着層33とが架橋剤(A)及び架橋剤(B)の架橋反応により層間架橋されうる。
【0033】
[タイヤインナーライナー用シートの製造方法]
本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートの製造方法の限定されない一実施形態としては、架橋剤(A)(又は(B))を含む接着層に用いる樹脂と、架橋剤(B)(又は(A))を含むガスバリア層に用いる樹脂とをTダイ押出機で共押出により接着層とガスバリア層とを積層すること、及び、これらを冷却ロール上で常温に冷却することにより製造できる。架橋剤(A)と架橋剤(B)との架橋反応は、架橋反応が生じる温度で共押出して積層することで行なわせることができる。或いは、接着層とガスバリア層をそれぞれ形成したのち、それらを架橋反応が生じる温度で張り合わせることで行わせることができる。
【0034】
架橋剤の架橋反応温度は、使用する架橋剤の組み合わせに応じて適宜選択できる。限定されない一又は複数の実施形態において、架橋反応を起こす観点から、190℃以上、200℃以上、210℃以上、又は220℃以上が挙げられ、シートに使用している材料の熱安定性の観点から300℃以下が挙げられる。
【0035】
本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートにおいて、ガスバリア層と接着層との100℃での平均接着力が0.2N/mm以上であることが好ましい。
【0036】
[タイヤの製造方法]
本開示にかかるタイヤの製造方法は、一実施の形態において、タイヤの製造方法は以下の工程を含む。
本開示にかかるインナーライナー用シートをインナーライナーに用いた生タイヤを準備する;
前記生タイヤを金型に装着し、ブラダーにより加圧しつつ加硫して加硫タイヤを得る;
前記加硫タイヤを50〜120℃で10〜300秒間冷却する。
【0037】
(生タイヤを準備する工程)
本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートは生タイヤのインナーライナー部に配置される。
図2のタイヤインナーライナー用シート20を配置する場合、接着層22がカーカスゴム6の内側のタイヤ内面に接着されるように、接着層22をタイヤ半径方向外側に向けて配置する。この配置により、優れた耐空気透過性及び耐久性を有することができる。また、インナーライナー9とカーカス6との間に、インスレーションが配置されている場合も、接着層22が、インスレーションに接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置することにより、インナーライナー9とインスレーションとの接着強度を高めることができる。
【0038】
なお、本開示のタイヤにおいて、タイヤ内圧を保持する気体としては、その機能を発揮できる気体であればいずれも用いることができ、例えば、空気、窒素、ヘリウム等が挙げられる。
【0039】
本開示にかかるタイヤは、本開示にかかるタイヤインナーライナー用シートを具えることで、車走行時に接着層とガスバリア層の層間での剥離が抑制され、耐久性に優れる。
【0040】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0041】
<1> ガスバリア層と接着層とを有し、
前記ガスバリア層と前記接着層とが架橋反応により層間架橋されている 、タイヤインナーライナー用シート。
<2> 前記層間架橋は、エポキシ基を有する物質(A)と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する物質(B)との架橋反応により形成されたものである、<1>記載のタイヤインナーライナー用シート。
<3> 前記ガスバリア層が、エポキシ基を有する物質(A)を含有し、
前記接着層が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する物質(B)を含有する、<1>又は<2>に記載のタイヤインナーライナー用シート。
<4> 前記エポキシ基を有する物質(A)が、エチレン・グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン・グリシジルメタクリレート・酢酸ビニルコポリマー、エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸メチルコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるコポリマーである、<2>又は<3>に記載のタイヤインナーライナー用シート。
<5> 前記ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する物質(B)が、フェノール樹脂、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、無水マレイン酸変性エチレンオクテンゴム、無水マレイン酸変性PE(ポリエチレン)、無水マレイン酸変性PP(ポリプロピレン)、エチレン・酢酸ビニルコポリマーの部分ケン化物、無水マレイン酸変性SEBS(完全水添スチレン系エラストマー)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、<2>から<4>のいずれかに記載のタイヤインナーライナー用シート。
<6> 前記ガスバリア層が、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIBS層、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含むSIB層、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物を含む層、ブチルゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物を含む層、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を含む層、及び、PVOH(ポリビニルアルコール)を含む層からなる群から選択される層である、<1>から<5>のいずれかに記載のタイヤインナーライナー用シート。
<7> 前記接着層が、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIS層、スチレン−イソプレンジブロック共重合体を含むSI層、ポリブタジエンを含む層、エチレンプロピレンジエンゴムを含む層、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴム又はその臭素化物若しくは塩素化物を含む層、ブチルゴム及びその臭素化物又は塩素化物を含む層、ブタジエンゴムを含む層、クロロプレンゴムを含む層、及び、アクリロニトリルブタジエンゴムを含む層からなる群から選択される層であるである、<1>から<6>のいずれかに記載のタイヤインナーライナー用シート。
<8> <1>から<7>のいずれかに記載のタイヤインナーライナー用シートを備えるタイヤ。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本開示を説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0043】
表1に示す配合処方に従って各樹脂を混合した後、Tダイ押出機(スクリュー径:φ40mm、L/D:28)を用いて共押出を行い、厚み200μmの接着層22及び厚み400μmのガスバリア層21からなる総厚み600μmのシートを作製した。
【0044】
(実施例1)
接着層22として、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(日本ゼオン株式会社製、品番:クインタック3620)、無水マレイン酸変性EPDM(デュポン株式会社製、品番:フサボンドN416、架橋剤(B))、及びフェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、品番:PR−19900、架橋剤(B))を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:240℃)に投入した。また、ガスバリア層21として、スチレン−イソブチレンースチレン共重合体(カネカ株式会社製、シブスター102T)、及びエチレン・グリシジルメタクリレートコポリマー(住友化学株式会社製、品番:ボンドファストE、架橋剤(A))を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:180℃)に投入した。接着層22とガスバリア層21はTダイス(ダイス温度:240℃)で積層された後、冷却ロール(温度:25℃)で冷却、固化することにより得られた。
【0045】
(比較例1:架橋剤(A)なし)
接着層22として、スチレンーイソプレンースチレン共重合体(日本ゼオン株式会社製、品番:クインタック3620)、無水マレイン酸変性EPDM(デュポン株式会社製、架橋剤(B))、及びフェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、品番:PR−19900、架橋剤(B))を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:240℃)に投入した。また、ガスバリア層21として、スチレン−イソブチレンースチレン共重合体(カネカ株式会社製、シブスター102T)を押出機(シリンダー温度:180℃)に投入した。接着層22とガスバリア層21はTダイス(ダイス温度:240℃)で積層された後、冷却ロール(温度:25℃)で冷却、固化することにより得られた。
【0046】
(比較例2:架橋剤(B)なし)
接着層22として、スチレンーイソプレンースチレン共重合体(日本ゼオン株式会社製、品番:クインタック3620)を押出機(シリンダー温度:240℃)に投入した。また、ガスバリア層21として、スチレン−イソブチレンースチレン共重合体(カネカ株式会社製、シブスター102T)、及びエチレン・グリシジルメタクリレートコポリマー(住友化学株式会社製)を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:180℃)に投入した。接着層22とガスバリア層21はTダイス(ダイス温度:240℃)で積層された後、冷却ロール(温度:25℃)で冷却、固化することにより得られた。
【0047】
[剥離力の評価]
実施例1及び比較例1,2のタイヤインナーライナー用シートについて以下の条件で剥離力を測定した。その結果を下記表1に示す。
(剥離力評価方法)
ガスバリア層21と接着層22を、それぞれTダイ押出機を用いて1mm厚みのシートとして成形した。このガスバリア層21の2枚と接着層22の2枚との間の一部に、めくり口となるようにPTFEシートを1cm程度の長さで挿入し、ガスバリア層21の2枚と接着層22の2枚の両外側を金属メッシュで挟み込み、240℃、5分、5MPaの条件で2層シート厚みが0.34mmとなるように貼り合わせて接着力評価用のサンプルとした。100℃において1分間保持した後、T型引張り剥離試験(500mm/分)により剥離力を測定することで平均層間接着力とした。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示す通り、接着層とガスバリア層間が架橋された実施例1のタイヤインナーライナー用シートは、比較例1及び2に比べて接着層とガスバリア層との100℃での接着力が向上した。