【0012】
本発明の布帛に、遠赤外線偽装性および可視偽装性、近赤外線偽装性を付与するために、布帛の少なくとも片面に金属粒子含有樹脂層および着色剤含有樹脂層が積層される。
該金属粒子含有樹脂層の金属粒子を形成する金属としては、チタン、ステンレス、ニッケル、クロム、金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム等や、これらの合金等が適宜使用される。その中でも加工性および遠赤外線偽装性の面から、チタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銅、銀から選ばれる少なくとも1種の金属及びその合金が好ましく用いられる。更に好ましくは一般的に原料入手が容易であり、安価で更に粒子径やその形状のコントロールが容易なアルミニウムの使用が望ましい。またこれら金属へ耐薬品性や洗濯性を付与するために、金属粒子の表面を樹脂で完全に被覆させ
る。この被覆剤としてアクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、ベンゾグアナミン系、メラミン系、エポキシ系等の樹脂が適時使用される。その中でも耐久性、加工性および遠赤外線偽装性の面より、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニル、酢酸ビニルなどの樹脂を用いることが好ましい。また、より金属への耐薬品性や洗濯性を付与するために樹脂被覆前
に、より安定な無機材料等で金属を事前に処理してもよい。無機材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミ、ジルコン、モリブデン、クロムおよびリン酸およびこれらを含む複合酸化物が適時使用されるが、より安価で加工性に優れる酸化ケイ素を用いることが好ましい。これら金属粒子の形状としては、円盤状であっても、薄板状であってものよい。これらの中でも、加工性および遠赤外線偽装性の面から円盤状が好ましく用いられる。金属粒子径は1〜50μmである。ここで粒子径が1〜50μmであるとは、全粒子の90重量%以上がこの範囲に含まれることを意味する。
金属粒子径とは、上記の樹
脂で完全に被覆された場合、その被覆された状態における径を指す。50μmを超える粒子が多すぎると加工性と耐久性に問題が生じる場合があり、1μm未満が多すぎる場合は遠赤外線偽装性が不十分となる場合がある。これら金属は金属粒子含有樹脂層中の20〜80重量%を占めることが望ましい。20重量%未満の場合は遠赤外線偽装性が不十分となる傾向があり、80重量%を超えると加工性や耐久性等が低下する傾向がある。かかる金属粒子含有樹脂層を形成する樹脂としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、繊維素系、エポキシ系、アルキド系、ロジン系、メラミン系樹脂等を、硬化剤としてポリイソシアネート系、カルボジイミド系、シラノール系、金属キレート系硬化剤を用いて硬化したものが好ましく使用される。これらの中でも基布への接着性、柔軟性及び洗濯性の面からウレタン系、ポリエステル系樹脂に、ポリイソシアネート系硬化剤を用いる方法が好ましく使用される。また、使用される溶媒は水系でも溶剤系であってもよい。これらからなる金属粒子含有樹脂の処理液を、プリント(顔料捺染)方式、噴霧方式、印刷方式等で布帛上に塗布し、乾燥することで金属粒子含有樹脂層は形成されるが、布帛の柔軟性を損なわないため、印刷方式が好ましい。特に通気性を損ないにくいことや布帛の凹凸にムラなく印刷できることから、凸版(フレキソ)印刷が好ましく用いられる。また塗工量としては基布1m
2あたり乾燥皮膜2g〜15gの塗工量が望ましい。15gを超える場合は基布の柔軟性と通気性が低下する場合があり、2g未満の場合は遠赤外線偽装性が低下する場合がある。
【実施例】
【0020】
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0021】
なお、実施例中における特性は、下記の方法により求めた。
【0022】
(1)通気度、通気性
JIS L 1096:8.27.1 A法(フラジール形法:試験差圧125Pa)に準じ通気度の測定を行い、通気性について次の基準で判定した。
【0023】
1.0cc/cm
2/s以上 ○
0〜1.0cc/cm
2/s ×
(2)洗濯耐久性
JIS L 0217:103法に準じ、10回の繰り返し洗濯処理を行ない、布帛の表面状態を観察し、次の基準で判定した。
【0024】
外観検査:
変化無し ○
一部樹脂剥がれ・色落ち有り △
樹脂剥がれ・色落ち大 ×
性能評価:洗濯前後の上記(3)で測定される熱放射率の変化率が
10%未満 ○
10%以上20%未満 △
20%以上 ×
(3)平均熱放射率
各色につき2箇所ずつD and S AERD熱放射率計(Devices Servicens社製)にて測定し、その平均値を算出した。洗濯前および洗濯後のサンプルを本方法で評価し、洗濯前の平均熱放射率を「放射率」、洗濯後の平均熱放射率を「洗濯後の放射率」とし、{(放射率-洗濯後の放射率)/放射率}×100(絶対値)を「放射率の変化率」として算出した。
【0025】
(4)偽装性
試料を樹木の前に吊るし、背景との混和をA〜Cの条件で確認し、次の基準で偽装性を判定した。洗濯前と洗濯後に確認した。
【0026】
識別困難 ○
偽装効果有り △
識別容易 ×
A.遠赤外線偽装性
検出波長8〜14μmの赤外線画像装置(遠赤外線カメラ)を用いて、100mの距離から観察し、上記基準にて判定した。
【0027】
B.近赤外線偽装性
近赤外線カメラを用いて、100mの距離から観察し、上記基準にて判定した。
【0028】
C.可視偽装性
目視で100mの距離から観察し、上記基準にて判定した。
【0029】
(5)限界酸素指数
JIS L 1091 E法により測定した。
【0030】
(6)ストレッチ性
JIS L 1096 B法(織物の定荷重法)により測定した。
【0031】
(7)引張強度
JIS L 1096 A法(ラベルドストリップ法)により測定した。
【0032】
実施例1
メタアラミド繊維(ノーメックス)100%の綿番手40番双糸を経糸とし、メタアラミド繊維(ノーメックス)と40デニールのポリウレタン弾性糸(ライクラ)からなる綿番手40番双糸のコアスパンヤーン糸を緯糸としてなるメタアラミド繊維95重量%、ポリウレタン弾性糸5重量%からなる目付け565g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、生アルミを粉砕して得たアルミ粒子の表面をアクリル樹脂で
完全に被覆し、粒子径10〜16μmの被覆アルミニウム粒子を得た。これをウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/m
2となるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により熱セット後の生地に3度塗布し、乾燥した。次いで、アルミニウム含有樹脂層上に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により塗布、乾燥し、迷彩模様を有する着色剤含有樹脂層を形成して難燃性、ストレッチ性、偽装性を持つ布帛を得た。
【0033】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例1の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性、および難燃性、ストレッチ性が認められ、通気性・洗濯耐久性とも優れていた。
比較例1
メタアラミド繊維(ノーメックス)100重量%の綿番手40番双糸を経糸とし、メタアラミド繊維(ノーメックス)100重量%からなる綿番手40番双糸を緯糸としてなるメタアラミド繊維100%からなる目付け570g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、実施例1と同様のフレキソ印刷を行い、難燃性、偽装性を持つ布帛を得た。
【0034】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例1の偽装布帛は難燃性、偽装性、通気性、洗濯耐久性とも優れていたが、ストレッチ性が著しく低下した。
【0035】
比較例2
メタアラミド繊維(ノーメックス)100%の綿番手40番双糸を経糸とし、メタアラミド繊維(ノーメックス)と40デニールのポリウレタン弾性糸(ライクラ)からなる綿番手40番双糸のコアスパンヤーン糸を緯糸としてなるメタアラミド繊維85重量%、ポリウレタン弾性糸15重量%からなる目付け553g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、実施例1と同様のフレキソ印刷を行い、難燃性、偽装性を持つ布帛を得た。
【0036】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例2の偽装布帛は難燃性、偽装性、通気性・洗濯耐久性、ストレッチ性とも優れていたが、引張強度およびが著しく低下した。
【0037】
比較例3
実施例1と同一のメタアラミド繊維95重量%、ポリウレタン弾性糸5重量%からなる目付け565g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、表面をアクリル樹脂で被覆したアルミニウム箔を裁断して得たアルミニウム材料を得た。このアルミニウム材料は樹脂で被覆されていない部分が存在した。これをウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/m
2となるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により3度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例3の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、通気性も十分であったが、洗濯耐久性が満足するレベルにはなかった。
【0038】
実施例2
実施例1と同一のメタアラミド繊維95重量%、ポリウレタン弾性糸5重量%からなる目付け565g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、生アルミを粉砕して得たアルミ粒子の表面を、アルコキシシランの加水分解反応によって生成したシリカで
完全に被覆した後アクリル保護層施し、粒子径7〜13μmの被覆アルミニウム粒子を得た。しかる後、ウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が3g/m
2となるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により1度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例2の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、通気性・洗濯耐久性、難燃性、ストレッチ性とも優れていた。
【0039】
実施例3
実施例1と同一のメタアラミド繊維95重量%、ポリウレタン弾性糸5重量%からなる目付け565g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、生アルミを粉砕して得たアルミ粒子の表面を、アルコキシシランの加水分解反応によって生成したシリカで
完全に被覆し、粒子径10〜16μmの被覆アルミニウム粒子を得た。しかる後、ウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/m
2となるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により3度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例3の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、通気性・洗濯耐久性とも優れていた。
比較例4
実施例1と同一のメタアラミド繊維95重量%、ポリウレタン弾性糸5重量%からなる目付け565g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。一方、ポリエステルフィルム上に離型層を介して真空蒸着により、アルミニウムの膜厚が0.05μmになるように蒸着加工を施した上に、接着層として5μmの膜厚を有するポリウレタン系樹脂を塗布した。しかる後、上記フィルム上に形成されたアルミニウム薄膜層を、接着層を介してかかる織物表面に転写した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成を実施した。
【0040】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例4の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、洗濯耐久性も十分であったが、通気性がなかった。
【0041】
比較例5
実施例1と同一のメタアラミド繊維95重量%、ポリウレタン弾性糸5重量%からなる目付け565g/m
2の2/1ツイル組織の織物を常法により精練・熱セットした。次いで、スパッタリング装置を用い、この織物の表面に、アルミニウムの膜厚が0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中で蒸着加工を施し、織物表面にアルミニウム薄膜層を形成した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成を実施した。
【0042】
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例5の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が洗濯前では認められ、通気性も十分であったが、洗濯耐久性がなかった。
【0043】
【表1】