【文献】
Part 11: Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) Specifications,ANSI/IEEE Std 802.11,1999 edition(R2003),2003年 6月,P.3,34,35,37,43,44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
IEEE802.15.4g(非特許文献1)では、一般的な無線データ通信のためのMAC(Media Accsess Controll;媒体アクセス制御)プロトコル規格(以下、「15.4通常プロトコル」と呼ぶ)を規定している。IEEE802.15.4e(非特許文献2)では、上記規格を様々なアプリケーションに対応させるための拡張規格を規定しており、拡張規格の中に、省電力データ通信のための規格として、CSL(Coordinated Sampled Listening)及びRIT(Receiver Initiated Transmission)を規定している。省電力データ通信のための拡張規格を、以下では「CSLプロトコル」と呼ぶこととする。
【0003】
図7は、15.4通常プロトコルに係る状態遷移図である。15.4通常プロトコルでは、受信待ちにおける状態は「15.4受信待ち状態」ST11の1つしかない。送信の際には「15.4送信状態」ST12となり、フレーム送信を実施する。フレームを受信しているときには「15.4受信状態」ST13となる。なお、初期状態は「15.4受信待ち状態」ST11である。
【0004】
図8は、CSLプロトコルに係る状態遷移図である。CSLプロトコルでは、受信待ちの状態として、「CSL受信待ち状態」ST21と「CSL受信休止状態」ST22の2つの状態があり、一定期間の経過毎にこれら2つの状態間ST21及びST22間で遷移する。送信時には「CSL送信状態」ST23となり、送信先のノードが「CSL受信待ち状態」ST21のときにフレームが届くように、CSL独自の方法でフレーム送信を実施する。フレーム受信をしているときには「CSL受信状態」ST24となる。「CSL受信待ち状態」ST21及び「CSL受信休止状態」ST22は、他ノードからのフレームを受信できる状態か否かが異なる。初期状態は「CSL受信休止状態」ST22である。
【0005】
15.4通常プロトコルとCSLプロトコルとは、異なるMACプロトコルであって、フレーム送信方法及び受信待ち時の動作などが違う。そのため、15.4通常プロトコルを採用しているノードとCSLプロトコルを採用しているノードとの間では通信できない。
【0006】
IEEE802.15.4gはスマートメータのための無線通信規格として制定されたものである。スマートメータの情報は、有用なので、FAN(Field Area Network)やHAN(Home Area Network)などの複数のネットワーク経由で、データセンターなどに収集される。
【0007】
FANは、規模が大きく、MACレイヤでのレイテンシが重要なので「15.4通常プロトコル」を利用している。逆に、HANは、省電力機能が重要なので「CSLプロトコル」を利用している。どちらのネットワークにも属する必要がある場合、スマートメータは、複数のMACプロトコルを利用できる必要がある。
【0008】
1つの無線ノード(無線通信装置、例えば、スマートメータ)で複数のMACプロトコルを動作させる場合、
図9に示すように、通常は、動作させる数の無線通信部101−1、101−2を無線ノード100に用意することが考えられる。その理由の一つは、1つの無線通信部で複数のMACプロトコルを適用して通信を実施することが難しいからである。1つの無線通信部で複数のMACプロトコルを動作させることは通常実施しない。MACプロトコル毎に無線通信部101−1、101−2を用意することにより、それぞれの無線通信部101−1、101−2は独立して動作するので、結果として1つの装置で複数のMACプロトコルを同時に利用できる。
【0009】
図9の構成及び動作を、以下に、簡単に説明する。
【0010】
無線ノード100は、装置制御部106と、2つの無線通信部101−1、101−2を有する。
図9で示している無線通信部101−1、101−2はそれぞれ、MACレイヤ及び物理レイヤの処理を行う部分として書き出している。第1の無線通信部101−1は、15.4通常プロトコル制御部102及びフレーム通信部103を有する。第2の無線通信部101−2は、CSLプロトコル制御部104及びフレーム通信部105を有する。
【0011】
装置制御部106は、ノード全体の様々な制御を行うものであるが、以下では、本発明の特徴と関係する制御について説明する(本発明の特徴と無関係な制御の説明は省略する)。装置制御部106は、フレーム送信時には、15.4通常プロトコルを適用して送信するかCSLプロトコルを適用して送信するかを判断し(例えば、他ノードが対応できるMACプロトコル情報を管理しており、今回の送信フレームの宛先ノードに応じて適用するMACプロトコルを決定する)、判断の結果に応じて、送信するフレームを15.4通常プロトコル制御部102若しくはCSLプロトコル制御部104へ渡す機能と、15.4通常プロトコルで受信したフレームを15.4プロトコル制御部102から受け取る機能と、CSLプロトコルで受信したフレームをCSLプロトコル制御部104から受け取る機能などを担っている。
【0012】
15.4通常プロトコル制御部102は、装置制御部106の制御下で、15.4通常プロトコルに則ってフレーム送信をフレーム通信部103へ依頼する機能と、フレーム通信部103で受信したフレームを15.4通常プロトコルに則って処理して装置制御部106へ必要な情報を通知する機能を担っている。15.4通常プロトコル制御部102における状態遷移は、上述した
図7に示した通りである。
【0013】
CSLプロトコル制御部104は、装置制御部106の制御下で、CSLプロトコルに則ってフレーム送信をフレーム通信部105へ依頼する機能と、フレーム通信部105で受信したフレームをCSLプロトコルに則って処理して装置制御部106へ必要な情報を通知する機能を担っている。CSLプロトコル制御部104における状態遷移は、上述した
図8に示した通りである。
【0014】
フレーム通信部103及びフレーム通信部105はそれぞれ、15.4通常プロトコル若しくはCSLプロトコルで適用するフレームフォーマット(後述する
図4参照)に沿ったフレームの送受信を実施する機能を担っている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による無線通信装
置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
ここで、実施形態の無線通信装置は、15.4通常プロトコルに則ったフレーム通信にも、CSLプロトコルに則ったフレーム通信にも対応しなければならない装置である。実施形態の無線通信装置は、例えば、FANを構成するノードにもHANを構成するノードにもなり得るものである。
【0024】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す一部の構成部分は、ハードウェアによって形成されても良く、また、CPUが実行するソフトウェア(ファームウェアなどを含む)として形成されても良いが、機能的には
図1で表すことができる。
【0025】
図1において、実施形態の無線通信装置200は、無線通信部201と装置制御部204とを有している。
【0026】
装置制御部204は、
図9に示した装置制御部106とほぼ同様な機能を担っているが、この実施形態の場合、MACプロトコル制御部が一つしかないために、装置制御部106と以下のような点で異なっている。装置制御部202は、フレーム送信時には、15.4通常プロトコルを適用して送信するかCSLプロトコルを適用して送信するかを判断する。この実施形態の装置制御部106は、判断の結果を明確にして、送信するフレームをマルチMACプロトコル制御部202へ渡す。また、装置制御部204は、マルチMACプロトコル制御部202が15.4通常プロトコルに則って受信したフレームを受け取ると共に、マルチMACプロトコル制御部202がCSLプロトコルに則って受信したフレームを受け取る。このフレームの受領時には、マルチMACプロトコル制御部202から適用されたMACプロトコルの情報も併せて受け取る。
【0027】
無線通信部201は、MACレイヤ及び物理レイヤの処理を行う部分であり、マルチMACプロトコル制御部202とフレーム通信部203とを有する。この実施形態の場合、
図9に示した装置とは異なり、15.4通常プロトコルにもCSLプロトコルにも対応できる唯一の無線通信部201が設けられている。
【0028】
マルチMACプロトコル制御部202は、15.4通常プロトコル若しくはCSLプロトコルに則った制御を実施するものである。例えば、マルチMACプロトコル制御部202は、装置制御部204から適用するMACプロトコルが明記されたフレームの送信要求が与えられた際には、明記された15.4通常プロトコル若しくはCSLプロトコルを適用してフレーム送信を実施するように制御する。
【0029】
図2は、マルチMACプロトコル制御部202におけるMACプロトコル制御に係る状態遷移図であり、上述した
図7及び
図8における同一状態には同一符号を付して示している。マルチMACプロトコル制御部202は、
図2に示すような状態遷移ルールに従って、MACプロトコル制御を実施する。
【0030】
マルチMACプロトコル制御部202におけるMACプロトコル制御に係る状態遷移は、
図7に示した15.4通常プロトコルの状態遷移と
図8に示したCSLプロトコルの状態遷移とを融合させたものである。融合方法は、CSLプロトコルにおける「CSL受信休止状態」ST22と15.4通常プロトコルの「15.4受信待ち状態」ST11とを兼ね備えた「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30を設け、この「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30を介して、15.4通常プロトコルの状態遷移と15.4通常プロトコルの状態遷移とを連結したものである。なお、
図2における初期状態は「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30である。この明細書においては、上述のように、15.4通常プロトコルの状態遷移とCSLプロトコルの状態遷移とを融合させた状態遷移に従った制御を行うMACプロトコルを「マルチMACプロトコル」と呼んでいる。
【0031】
図3は、CSLプロトコルに従った省電力データ通信の様子を示すタイミングチャートである。
【0032】
CSL受信休止状態ST22において送信ようとするトラフィックが生じたノード(送信ノード)は、CSL送信状態ST23に遷移し、送信の起動要求を送信しては宛先からの起動応答を確認する動作を繰り返す。宛先のノード(受信ノード)は、間欠的に(周期Tで)、CSL受信待ち状態ST21になり、その間はCSL受信休止状態ST22をとる。受信ノードがCSL受信待ち状態ST21のときに起動要求を受信すると、CSL受信状態ST24に遷移し、起動応答を送信ノードに返信し、それに応じて送信ノードが送信したデータフレームを順次受信し、送信された全てのデータフレームの受信が完了すると、ACK信号を送信ノードに送信した後、CSL受信休止状態ST22に遷移する。
【0033】
図3から明らかなように、CSL受信待ち状態ST21間のCSL受信休止状態ST22としてかなりの時間を割いて省電力化を計っている。CSL受信休止状態ST22としてかなりの時間が割かれているため、実施形態のように、CSLプロトコルにおける「CSL受信休止状態」ST22が、15.4通常プロトコルの「15.4受信待ち状態」ST11を兼ねるようにしても、15.4通常プロトコルのフレーム送信方式で送信されたフレームを適切に受信することができる。また、
図3から明らかなように、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30に割かれている待ち時間(言い換えると、「CSL受信休止状態」ST22に割かれている休止時間)が経過したときには、CSL受信待ち状態ST21に遷移するので、CSLプロトコルを適用している他のノードからCSLプロトコルの「CSL送信状態」でフレームが送信されても、そのCSLプロトコルのフレームを受信することができる。
【0034】
図4は、IEEE802.15.4のデータフレームで規定されたパケット構造(フレームフォーマット)を示す説明図である。この規定によるフレームフォーマットでは、フレームは、プリアンブルとMACサブレイヤとでなる。プリアンブルは、プリアンブル・シーケンスとフレームデリミタ開始位置とフレーム長とでなる。MACサブレイヤは、フレームコントロールと、シーケンス番号と、アドレス情報と、データと、FCSとでなる。アドレス情報は、送信元のPAN_ID(=Parsonal Area Network ID;ノードがどのネットワークに属しているかを識別するためのID)及びアドレスと、宛先のPAN_ID及びアドレスとでなる。
【0035】
IEEE802.15.4gで規定された15.4通常プロトコルも、IEEE802.15.4eで規定されたCSLプロトコルも、より上位の規定であるIEEE802.15.4を準拠しており、従って、15.4通常プロトコル及びCSLプロトコルのフレームフォーマットは共通している。15.4通常プロトコル及びCSLプロトコルのフレームフォーマットが共通していることにより、唯一の無線通信部201によって、15.4通常プロトコル及びCSLプロトコルに対応できる。
【0036】
なお、「15.4通常プロトコル」に係るフレーム送信の際には、PAN_IDや後述する通信チャネルに「15.4通常プロトコル」を適用する場合のPAN_IDや通信チャネルを設定し、「CSLプロトコル」に係るフレーム送信の際には、PAN_IDや後述する通信チャネルに「CSLプロトコル」を適用する場合のPAN_IDや通信チャネルを設定する。PAN_IDの設定は、後述する15.4送信状態処理部202eやCSL送信状態処理部202fが行い、通信チャネルの設定は、マルチMACプロトコル制御部202からの情報を受けてフレーム通信部203が行う。
【0037】
また、各受信待ち状態ST30、ST21では、PAN_IDや後述する通信チャネルを対応するMACプロトコルの設定にして、フレームを待ち受けることを要する。
【0038】
以上から明らかなように、無線通信部201が、
図2に示す状態遷移図に示す状態遷移の制御(MACプロトコル制御)を行うマルチMACプロトコル制御部202を有するので、1つの無線通信部201で「15.4通常プロトコル」と「CSLプロトコル」の2つのMACプロトコルに対応することができる。
【0039】
図2に示すように、マルチMACプロトコル制御部202におけるMACプロトコル制御に係る状態は、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30、「15.4送信状態」ST12、「15.4受信状態」ST13、「CSL受信待ち状態」ST21、「CSL送信状態」ST23、「CSL受信状態」ST24の計6状態がある。マルチMACプロトコル制御部202は、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202a、CSL受信待ち状態処理部202b、CSL受信状態処理部202c、15.4受信状態処理部202d、15.4送信状態処理部202e、CSL送信状態処理部202fを有する。
【0040】
15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aは、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30における処理を担当するものであるが、基本的には、15.4通常プロトコルにおける受信待ち状態(「15.4受信待ち状態」ST11)の処理を実行するものである。従って、15.4受信待ち状態処理部202aは、フレーム通信部203から15.4通常プロトコルに則ったフレームの受信起動があったときには15.4受信状態処理部202dに処理権を移譲し、装置制御部204から15.4通常プロトコルに則ったフレームの送信起動があったときには15.4送信状態処理部202eに処理権を移譲する。この実施形態の場合、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aは、装置制御部204からCSLプロトコルに則ったフレームの送信起動があったときにはCSL送信状態処理部202fに処理権を移譲し、15.4受信待ち状態ST11になった時点から、フレームの受信起動も送信起動もなく所定時間を経過したときには、CSL受信待ち状態処理部202bに処理権を移譲するという、「CSL受信休止状態」ST22における処理も行う。
【0041】
なお、送信待ちの15.4プロトコルに則ったフレームデータやCSLプロトコルに則ったフレームデータは、装置制御部204及びマルチMACプロトコル制御部202のいずれでバッファリングしておくようにしても良い。
【0042】
CSL受信待ち状態処理部202bは、基本的には、CSLプロトコルにおける受信待ち状態(「CSL受信待ち状態」ST21)の処理を実行するものである。従って、CSL受信待ち状態処理部202bは、フレーム通信部203からCSLプロトコルに則ったフレームの受信起動があったときにはCSL受信状態処理部202cに処理権を移譲する。CSLプロトコルでは、「CSL受信待ち状態」ST21において所定時間が経過したときには、「CSL受信休止状態」ST22に遷移することになっているが、この実施形態の場合、CSL受信待ち状態処理部202bは、CSLプロトコルに則ったフレームの受信起動もなく所定時間を経過したときには、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aに処理権を移譲する。
【0043】
CSL受信状態処理部202cは、基本的には、CSLプロトコルにおける受信状態(「CSL受信状態」ST24)の処理を実行するものである。但し、この実施形態の場合、「CSL受信休止状態」ST22が存在しないので、CSL受信状態処理部202cは、CSLプロトコルに則ったフレームの受信処理が完了したときには、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aに処理権を移譲する。
【0044】
15.4受信状態処理部202dは、基本的には、15.4通常プロトコルにおける受信状態(「15.4受信状態」ST13)の処理を実行するものであり、15.4通常プロトコルに則ったフレームの受信処理が完了したときには、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aに処理権を移譲する。
【0045】
15.4送信状態処理部202eは、基本的には、15.4通常プロトコルにおける送信状態(「15.4送信状態」ST12)の処理を実行するものであり、15.4通常プロトコルに則ったフレームの送信処理が完了したときには、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aに処理権を移譲する。
【0046】
CSL送信状態処理部202fは、基本的には、CSLプロトコルにおける送信状態(「CSL送信状態」ST23)の処理を実行するものである。但し、この実施形態の場合、「CSL受信休止状態」ST22が単独では存在しないので、CSL送信状態処理部202fは、CSLプロトコルに則ったフレームの送信処理が完了したときには、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aに処理権を移譲する。
【0047】
フレーム通信部203は、15.4通常プロトコルに係るフレームの送受信やCSLプロトコルに係るフレームの送受信を行うものである。15.4通常プロトコル及びCSLプロトコルの無線チャネルとして同じ無線チャネルを適用しても良いが、この実施形態では、15.4通常プロトコルに則ったフレームの通信用の無線チャネルと、CSLプロトコルに則ったフレームの通信用の無線チャネルとが異なるものとしている。例えば、無線チャネルがキャリア周波数で区別されるものであれば、15.4通常プロトコルに則ったフレームの通信時のキャリア周波数と、CSLプロトコルに則ったフレームの通信時のキャリア周波数とが異なる。フレーム送信時には、マルチMACプロトコル制御部202による無線チャネルの設定に従って、フレーム通信部203はフレームの送信を行う。また、フレームの受信待ち状態では、フレーム通信部203は、マルチMACプロトコル制御部202からの設定に従って、15.4通常プロトコルに係る無線チャネル又はCSLプロトコルに係る無線チャネルのいずれかの無線チャネルのフレームを待ち受ける。
【0048】
(A−2)実施形態の動作
次に、実施形態の無線通信装置200の動作を、主に
図2の状態遷移図を参照しながら説明する。
【0049】
無線通信装置200は、通常、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30を取っており、前回の「CSL受信待ち状態」ST21から所定時間(以下、この所定期間を「CSL受信待ち状態周期」と呼ぶ;
図3のT参照)が経過すると、「CSL受信待ち状態」ST21に遷移し、「CSL受信待ち状態」ST21に割かれている所定時間の間に、CSLプロトコルに係るフレームの受信起動の要求が他ノードから到来しない場合には、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30に戻る。すなわち、フレームの送受信が必要ない場合には、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30及び「CSL受信待ち状態」ST21間で交互に遷移する。
【0050】
「CSL受信待ち状態」ST21の際には、CSLプロトコル用のフレーム通信設定(通信チャネルの設定やPAN_IDの設定)になっており、「CSL送信状態」ST23の他ノードから送信されたフレームが受信可能であり、そのようなフレームの受信起動が到来した場合には、無線通信装置200は、「CSL受信状態」ST24に遷移してフレームの受信を行い、フレーム受信が完了すると、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30へ戻る。ここでの「フレーム受信完了」とは、CSLプロトコルに則ってフレームを正常に受信した場合だけでなく、受信エラーが生じてその受信動作を終了させる場合も含む。後者の例としては、FCSを利用したチェックで誤りが検出された場合を挙げることができる。
【0051】
「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30の際には、15.4通常プロトコル用のフレーム通信設定(通信チャネルの設定やPAN_IDの設定)になっており、「15.4送信状態」ST12の他ノードから送信されたフレームが受信可能であり、そのようなフレームの受信起動が到来した場合には、無線通信装置200は、「15.4受信状態」ST13に遷移してフレームの受信を行い、フレーム受信が完了すると、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30へ戻る。ここでの「フレーム受信完了」とは、15.4通常プロトコルに則ってフレームを正常に受信した場合だけでなく、受信エラーが生じてその受信動作を終了させる場合も含む。
【0052】
「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30の際に、装置制御部204から、15.4通常プロトコルを適用してのフレーム送信要求があれば、マルチMACプロトコル制御部202は、「15.4送信状態」ST12に遷移させて、基本的には、15.4通常プロトコルに則ったフレーム送信を実施し、フレーム送信の完了後、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30へ戻る。このフレーム送信時においては、15.4通常プロトコル用の送信に係るフレーム通信設定(通信チャネルの設定やPAN_IDの設定)を行ってから、フレーム送信を実施する。ここでの「フレーム送信完了」とは、15.4通常プロトコルに則ってフレームを正常に送信できた場合だけでなく、エラーが生じて送信動作を終了させる場合も含む。例えば、フレーム送信後に宛先ノードからのACK信号を所定時間だけ待っていたが、到来しないようなエラーが生じたときもフレーム送信を終了させる。
【0053】
この実施形態の場合、15.4送信状態処理部202eが実行する「15.4送信状態」ST12における処理に関し、以下のような特有な処理が含まれている。
【0054】
特有な処理は、フレーム送信完了時点を推定し、その推定結果に応じて、フレーム送信の実行有無を決定する処理である。
図5は、この特有な処理を示すフローチャートである。
【0055】
「15.4送信状態」ST12に遷移すると、まず、開始時にフレーム送信完了の時点を推定し(ステップS100)、推定したフレーム送信完了時点が、前回の「CSL受信待ち状態」ST21から「CSL受信待ち状態周期」だけ経過させた次回の「CSL受信待ち状態」ST21への遷移時点より前であるか否かを判別する(ステップS101)。
【0056】
なお、時点間の比較ではなく、フレーム送信が完了するまでの期間と、次回の「CSL受信待ち状態」ST21への遷移時点に移行するための残り期間との比較を行うようにしても良い。フレーム送信の完了時点(完了までの期間)の推定には、フレームの「フレーム長から算出する方法」、「予め定めておいた所定期間を利用して求める方法」、「今までのフレーム長の中の最大フレーム長を適用して算出する方法」などのいずれを適用するようにしても良い。また、上記では、「15.4送信状態」ST12に遷移してから
図5に示す処理を行うものを示したが、「15.4送信状態」ST12に遷移することなく、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30における処理として、
図5に示す処理を実行するようにしても良い。
【0057】
推定したフレーム送信完了時点が、次回の「CSL受信待ち状態」ST21への遷移時点より前である場合には、宛先ノードに向けてフレームを実際に送信する(ステップS102)。
【0058】
これに対して、推定したフレーム送信完了時点が、次回の「CSL受信待ち状態」ST21への遷移時点以降である場合には、フレームを実際に送信することなく、送信エラー(この場合の送信エラーを擬制送信エラーと呼ぶこともある)を設定して、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30に戻る(ステップS103)。この場合の擬制送信エラーも、装置制御部204などの上位レイヤの装置へ通知する。上位レイヤ装置へ通知する際に、一般的な送信エラーではなく、擬制送信エラーであることを明確にして通知することが好ましい。
【0059】
図5に示す処理により、フレーム送信のために、次回の「CSL受信待ち状態」ST21への遷移がスキップされるようなことを未然に防止することができる。言い換えると、CSLプロトコルの規定に違反するようなことを回避することができる。
【0060】
「15.4送信状態」ST12で送信エラーや擬制送信エラーが生じたときには、フレームの再送を行う。
【0061】
「15.4送信状態」ST12が送信エラー(擬制送信エラーを除く)で終わった場合には、15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aが、フレームの再送タイミングを制御する。
図6は、この制御処理を示すフローチャートである。なお、フレームの再送タイミングの制御を、上位レイヤに係る処理部(装置制御部204やそれより上位の処理部)が実行するようにしても良い。
【0062】
15.4受信待ち・CSL受信休止状態処理部202aは、再送待ち時間をタイマの計時時間として設定した後(ステップS150)、再送待ち時間を計時させ(ステップS151)、再送待ち時間の計時が終了したときに、フレームの再送(送信)を開始させるため、「15.4送信状態」ST12に遷移させる(ステップS152)。
【0063】
この実施形態の場合、送信エラー(擬制送信エラーを除く)時の再送待ち時間として、「CSL受信待ち状態周期」若しくはそれより長い時間を適用する。これにより、再送前に、「CSL受信待ち状態」ST21へ遷移することを保証し、再送時に、「CSL受信待ち状態」ST21になっていないようにし、更なる再送を防止するようにする(すなわち、再送回数を抑えるようにする)。
【0064】
「15.4送信状態」ST12が擬制送信エラーで終わった場合における再送処理も、上述した
図6の処理とほぼ同様である。しかしながら、適用する再送待ち時間が、一般的な送信エラー時における再送待ち時間と異なっている。例えば、次回の「CSL受信待ち状態」ST21へ遷移し、その次回の「CSL受信待ち状態」ST21においてフレームの受信起動がなくて「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30に戻ると仮定し、その仮定下における「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30へ戻る時点までを、擬制送信エラー時における再送待ち時間として設定するようにすれば良い。このように、擬制送信エラー時における再送待ち時間を、一般的な送信エラー時の再送待ち時間と異なるようにしたのは、仮に、擬制送信エラー時の再送待ち時間として、「CSL受信待ち状態周期」を設定した場合には、フレーム再送処理時おいても、推定したフレーム送信(再送)完了時点が、次回の「CSL受信待ち状態」ST21への遷移時点以降となって、再び擬制送信エラーとして扱うようになるためである。
【0065】
「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30の際に、装置制御部204から、CSLプロトコルを適用してのフレーム送信要求があれば、基本的には、マルチMACプロトコル制御部202は、「CSL送信状態」ST23に遷移させて、CSLプロトコルに則ったフレーム送信を実施し、フレーム送信の完了後、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30へ戻る。このフレーム送信時においては、CSLプロトコル用の送信に係るフレーム通信設定(通信チャネルの設定やPAN_IDの設定)を行ってから、フレーム送信を実施する。
【0066】
なお、
図2では、「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30から「CSL送信状態」ST23に遷移する場合のみを示しているが、「CSL受信待ち状態」ST21において、CSLプロトコルを適用してのフレーム送信要求があれば、「CSL送信状態」ST23に遷移させるようにしても良い。この場合、「CSL受信待ち状態」ST21から「15.4受信待ち・CSL受信休止状態」ST30への復帰を待たずに、CSLプロトコルに則ったフレーム送信を実施できるようになる。
【0067】
(A−3)実施形態の効果
上記実施形態によれば、1つの無線通信部を用いて、15.4通常プロトコル及びCSLプロトコルといった2つのMACプロトコルに対応することができる。その結果、実施形態の無線通信装置を小
型、安価なものとすることができる。
【0068】
(B)他の実施形態
上記実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0069】
上記実施形態においては、再送待ち時間が固定時間であるものを示したが、オペレータが外部から設定可能とするようにしても良い。設定値は、任意であるが、上述したように、当該無線通信装置における「CSL受信待ち状態周期」を設定することは好ましい。また、外部設定としても、そのときのデフォルト時間を当該無線通信装置における「CSL受信待ち状態周期」を設定することは好ましい。
【0070】
上記実施形態においては、フレーム再送に待ち時間以外の条件を設定していないものを示したが、フレーム再送時刻が、15.4フレームの宛先ノードがCSL受信待ち状態にない時刻になっていることを条件とするようにしても良い。宛先ノードの「CSL受信待ち状態」ST21への遷移時刻までの残り時間を調べる機能を用いて、宛先ノードがCSL受信待ち状態にない時刻を確認するようにすれば良い。IEEE802.15.4eのノードは、MACレイヤを管理するための情報をMAC PIB(PAN Information Base)というデータベースで管理しており、この設定値を、制御チャネルを利用して調べる機能がIEEE802.15.4eで規定されている。
【0071】
上記実施形態においては、「15.4受信状態」ST13の最中に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達しても「CSL受信待ち状態」T21に遷移させず、「15.4送信状態」ST12の最中に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達しないようにフレームの送信(再送)タイミングを操作するものを示したが、これに代えて、「15.4送信状態」ST12又は「15.4受信状態」ST13の最中に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達した場合には、フレームの送信又は受信を中断して、「CSL受信待ち状態」ST21に遷移させるようにしても良い。
【0072】
このような変形実施形態によれば、CSLプロトコルに則って他ノードが送信したフレームを確実に受信することができるようになる。
【0073】
上述のようなフレームの送信又は受信を中断する具体的な方法としては、以下のような方法を挙げることができる。
【0074】
第1は、現状態が「15.4送信状態」ST12であろうと「15.4受信状態」ST13であろうと、「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達すると、現状態を中断させて、「CSL受信待ち状態」ST21へ遷移させる。
【0075】
第2は、現状態が「15.4受信状態」ST13の場合に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達すると現状態を中断させるが、現状態が「15.4送信状態」ST12の場合に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達しても、現状態を継続させて「CSL受信待ち状態」ST21への遷移をスキップさせる。
【0076】
第3は、現状態が「15.4送信状態」ST12の場合に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達すると現状態を中断させて送信エラーとするが、現状態が「15.4受信状態」ST12の場合に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達しても、現状態を継続させて「CSL受信待ち状態」ST21への遷移をスキップさせる。
【0077】
第4は、「15.4受信状態」ST13の最中に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達すると現状態を中断させて「CSL受信待ち状態」T21に遷移させ、「15.4送信状態」ST12の最中に「CSL受信待ち状態」ST21への遷移タイミングに到達しないようにフレームの送信(再送)タイミングを操作する。
【0078】
なお、1回程度のスキップでは、実際上、CSLプロトコルに則った通信にほとんど悪影響を与えることがない。
【0079】
上記実施形態の方法も含めた5種類の方法からいずれか一つをオペレータが設定可能とするようにしても良い。このような設定内容は、例えば、装置制御部204を介して、マルチMACプロトコル制御部202に設定される。
【0080】
また、例えば、アプリケーション(プログラム)に、上述した5つの方法の中から適用する方法を記述しており、適用する方法を、上位レイヤの処理部が装置制御部204を介して、マルチMACプロトコル制御部202に設定するようにしても良い。
【0081】
上記実施形態では、「マルチMACプロトコル」に対応している無線通信装置を示したが、上位レイヤ若しくは外部から、「マルチMACプロトコル」、「15.4通常プロトコル」、「CSLプロトコル」のいずれを適用するかを設定し得るようにしても良い。選択可能なMACプロトコルもこれら3種類に限定されず、他の規格などで規定されているMACプロトコルが含まれていても良い。
【0082】
上記説明では、本発明に係る無線通信装置の用途例としてスマートメータに言及したが、本発明に係る無線通信装置の用途がスマートメータに限定されないことは勿論である。
【0083】
また、上記実施形態では、2つのMACプロトコルが、IEEE802.15.4gが規定の「15.4通常プロトコル」と、IEEE802.15.4eが規定の省電力データ通信のための「CSLプロトコル」であるものを示したが、2つのMACプロトコルは、上記と同様な関係にあるものであればこれに限定されるものではない。