特許第6163789号(P6163789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163789可変ノズルユニット及び可変容量型過給機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163789
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】可変ノズルユニット及び可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   F02B37/24
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-40734(P2013-40734)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-169642(P2014-169642A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 智裕
(72)【発明者】
【氏名】淺川 貴男
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 健一
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−187015(JP,A)
【文献】 特開2010−169101(JP,A)
【文献】 特表2011−515608(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005171(WO,A1)
【文献】 特開2010−229908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/12,37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変する可変ノズルユニットにおいて、
前記可変容量型過給機におけるタービンハウジング内に配設され、複数の支持穴が円周方向に沿って形成され、前記タービンインペラの軸方向の一方側の側面における前記支持穴の径方向外側に複数のガイド爪が円周方向に間隔を置いて一体形成され、各ガイド爪が先端側に断面U字状のガイド溝を有したベースリングと、
前記ベースリングに円周方向に沿って配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに正逆方向へ回動可能であり、前記軸方向の一方側の側面に対応する前記支持穴に回動可能に支持されるノズル軸が形成された複数の可変ノズルと、
複数の前記ガイド爪の前記ガイド溝に前記タービンインペラの軸心周りに正逆方向へ回動可能に支持され、前記可変ノズルと同数の係合部が円周方向に沿って設けられ、回動アクチュエータの駆動によって正逆方向へ回動する駆動リングと、
基端部が各可変ノズルの前記ノズル軸に連結され、先端部が対応する前記係合部に係合し、円周方向に隣接する前記ガイド爪間に位置し、前記軸方向の一方側の側面が前記ガイド爪の前記軸方向の一方側の側面よりも前記軸方向の他方側に位置する同期リンク部材と、を具備した、可変ノズルユニット。
【請求項2】
前記ベースリングにおける前記軸方向の一方側の側面の内縁部に、前記軸方向の一方側へ突出した環状の連結凸部が複数のガイド爪の基部を連結するように形成されている、請求項1に記載の可変ノズルユニット。
【請求項3】
各ガイド爪の前記ガイド溝が旋削加工によって形成されている、請求項1又は請求項2に記載の可変ノズルユニット。
【請求項4】
前記駆動リングに前記可変ノズルと同数の前記係合部の他に別の係合部が設けられ、
前記可変容量型過給機の固定部に前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに回動可能に設けられ、一端部が前記回動アクチュエータに接続された駆動軸と、
基端部が前記駆動軸の他端部に連結され、先端部が前記駆動リングの前記別の係合部に係合した駆動リンク部材と、を具備した、請求項1から請求項3のうちのいずれか1項の請求項に記載の可変ノズルユニット。
【請求項5】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する可変容量型過給機において、
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項の請求項に記載の可変ノズルユニットを具備した、可変容量型過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニット等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可変容量型過給機に装備される可変ノズルユニットについて種々の開発がなされており、本願の出願人も既に可変ノズルユニットについて開発して出願している(特許文献1及び特許文献2等参照)。そして、その先行技術に係る可変ノズルユニットの具体的な構成は、次のようになる。
【0003】
可変容量型過給機におけるタービンハウジング内には、ベースリングがタービンインペラと同心状に配設されており、このベースリングには、複数の支持穴が円周方向に等間隔に貫通形成されている。また、ベースリングには、複数の可変ノズルがタービンインペラを囲むように円周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズルは、タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。更に、各可変ノズルにおけるタービンインペラの軸方向の一方側の側面には、ノズル軸が一体形成されており、各ノズル軸は、ベースリングの対応する支持穴に回動可能に貫通支持されている。
【0004】
ベースリングの前記軸方向の一方側には、ガイドリングがタービンインペラと同心状に設けられており、このガイドリングの外周縁には、複数の支持爪が円周方向に間隔を置いて放射状に形成されている。また、ガイドリングにおける複数の支持爪には、駆動リングがタービンインペラの軸心周りに正逆方向へ回動可能に支持されており、この駆動リングは、回動アクチュエータの駆動によって正逆方向へ回動するものである。更に、駆動リングには、可変ノズルと同数の係合部が円周方向に等間隔に設けられている。そして、各可変ノズルのノズル軸には、同期リンク部材(ノズルリンク部材)が一体的に連結されており、各同期リンク部材の先端部は、駆動リングの対応する係合部に係合してある。
【0005】
ここで、駆動リングの正方向の回動によって、複数の同期リンク部材を正方向へ揺動させつつ、複数の可変ノズルを正方向(開方向)へ同期して回動させると、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積が大きくなるようになっている。また、駆動リングの逆方向の回動によって、複数の同期リンク部材を逆方向へ揺動させつつ、複数の可変ノズルを逆方向(閉方向)へ同期して回動させると、前記排気ガスのガス流路面積が小さくなるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−243300号公報
【特許文献2】特開2009−243431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、先行技術に係る可変ノズルユニットにあっては、前述のように、複数の可変ノズルを正逆方向へ同期して回動させるための構成として、ガイドリング、駆動リング、及び複数の同期リンク部材が必要である。そのため、可変ノズルユニットの部品点数が増えて、可変ノズルユニットの構成の複雑化及び可変ノズルユニットの製造コストの増大、換言すれば、可変容量型過給機の構成の複雑化及び可変容量型過給機の製造コストの増大を招くという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の可変ノズルユニット等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、可変容量型過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズルユニットにおいて、前記可変容量型過給機におけるタービンハウジング内に配設され、複数の支持穴が円周方向に沿って形成され、前記タービンインペラの軸方向の一方側の側面における前記支持穴の径方向外側に複数のガイド爪が円周方向に間隔を置いて一体形成され、各ガイド爪が先端側(径方向外側)に断面U字状のガイド溝を有したベースリングと、前記ベースリングに円周方向に沿って配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに正逆方向へ回動可能であり、前記軸方向の一方側の側面に対応する前記支持穴に回動可能に支持されるノズル軸が形成された複数の可変ノズルと、複数の前記ガイド爪の前記ガイド溝に前記タービンインペラの軸心周りに正逆方向へ回動可能に支持され、前記可変ノズルと同数の係合部が円周方向に沿って設けられ、回動アクチュエータの駆動によって正逆方向へ回動する駆動リングと、基端部が各可変ノズルの前記ノズル軸に連結され、先端部が対応する前記係合部に係合し、円周方向に隣接する前記ガイド爪間に位置し、前記軸方向の一方側の側面が前記ガイド爪の前記軸方向の一方側の側面よりも前記軸方向の他方側に位置する同期リンク部材(ノズルリンク部材)と、を具備したことである。

【0010】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「配設され」とは、直接的に配設されたこと、及び別部材を介して間接的に配設されたことを含む意である。また、「前記ベースリングに前記タービンインペラを囲むように円周方向に等間隔に配設され」とは、前記軸方向に離隔対向した一対のベースリング(第1ベースリングと第2ベースリング)の間に前記タービンインペラを囲むように円周方向に等間隔に配設されたことを含む意である。更に、「設けられ」とは、直接的に設けられたこと、別部材を介して間接的に配設されたこと、及び形成されたことを含む意である。
【0011】
第1の態様によると、前記可変容量型過給機の運転中、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、前記回動アクチュエータの駆動によって前記可動リングを正方向へ回動させることにより、複数の前記同期リンク部材を正方向へ揺動させながら、複数の前記可変ノズルを同期して正方向(開方向)へ回動させる。これにより、前記タービンインペラ側に供給される排気ガスの流路面積を大きくすることができる。
【0012】
一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、前記回動アクチュエータの駆動によって前記可動リングを逆方向へ回動させることにより、複数の前記同期リンク部材を逆方向へ揺動させながら、複数の前記可変ノズルを同期して逆方向(閉方向)へ回動させる。これにより、前記タービンインペラ側に供給される排気ガスの流路面積を小さくすることができる。
【0013】
前述の作用の他に、前記ベースリングの前記軸方向の一方側の側面における前記支持穴の径方向外側に複数の前記ガイド爪が円周方向に間隔を置い形成され、各ガイド爪が先端側に断面U字状の前記ガイド溝を有しているため、前記駆動リング正逆方向へ回動可能に支持するガイドリングとしての機能を前記ベースリングに付加することができる。これにより、複数の前記可変ノズルを正逆方向へ同期して回動させるための構成からガイドリングを省略することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する可変容量型過給機において、第1の態様からなる可変ノズルユニットを具備したことである。
【0015】
第2の態様によると、第1の態様による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の前記可変ノズルを正逆方向へ同期して回動させるための構成からガイドリングを省略できるため、前記可変ノズルユニットの部品点数を減らして、前記可変ノズルユニットの構成の簡略化及び前記可変ノズルユニットの製造コストの低減、換言すれば、可変容量型過給機の構成の簡略化及び前記可変容量型過給機の製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、図6における矢視部Iの拡大図である。
図2図2は、図1における矢視部IIの拡大図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る可変ノズルユニットの大部分を示す図である。
図4図4(a)は、本発明の実施形態に係る可変ノズルユニットにおけるノズルリングを示す図、図4(b)は、図4(a)におけるIVB-IVB線に沿った断面図である。
図5図5(a)は、本発明の実施形態に係る可変ノズルユニットにおけるサポートリングを示す図、図5(b)は、図5(a)におけるVB-VB線に沿った断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図1から図6を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「R」は、右方向、「L」は、左方向である。
【0019】
図6に示すように、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0020】
可変容量型過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0021】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が設けられており、このコンプレッサハウジング11内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13がその軸心(換言すれば、ロータ軸9の軸心)S周りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサインペラ13は、ロータ軸9の右端部に一体的に連結されたコンプレッサホイール(コンプレッサディスク)15と、このコンプレッサホイール15の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のコンプレッサブレード17とを備えている。
【0022】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(空気の流れ方向の上流側)には、空気を導入するための空気導入口19が形成されており、この空気導入口19は、空気を浄化するエアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11との間におけるコンプレッサインペラ13の出口側(空気の流れ方向の下流側)には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路21が形成されている。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路23が形成されており、このコンプレッサスクロール流路23は、ディフューザ流路21に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の適宜位置には、圧縮された空気を排出するための空気排出口25が形成されており、この空気排出口25は、コンプレッサスクロール流路23に連通してあって、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0023】
図1及び図6に示すように、ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング27が設けられており、このタービンハウジング27内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ29が軸心(タービンインペラ29の軸心、換言すれば、ロータ軸9の軸心)S周りに回転可能に設けられている。また、このタービンインペラ29は、ロータ軸9の左端部に一体的に設けられたタービンホイール(タービンディスク)31と、このタービンホイール31の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のタービンブレード33とを備えている。ここで、複数のタービンブレード33の先端縁33tは、タービンハウジング27のシュラウド壁27fに覆われている。
【0024】
タービンハウジング27の適宜位置には、排気ガスを導入するためのガス導入口35が形成されており、このガス導入口35は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング27の内部におけるタービンインペラ29の入口側(排気ガスの流れ方向の上流側)には、渦巻き状のタービンスクロール流路37が形成されており、このタービンスクロール流路37は、ガス導入口35に連通してある。更に、タービンハウジング27におけるタービンインペラ29の出口側(排気ガスの流れ方向の下流側)には、排気ガスを排出するためのガス排出口39が形成されており、このガス排出口39は、排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0025】
なお、ベアリングハウジング3の左側面には、タービンインペラ29側からの熱を遮蔽する環状の遮熱板41が設けられており、ベアリングハウジング3の左側面と遮熱板41の外縁部との間には、皿バネ又は波ワッシャ等の環状の付勢部材43が設けられている。
【0026】
可変容量型過給機1は、タービンインペラ29側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズルユニット45を装備しており、この可変ノズルユニット45の構成の詳細は、次のようになる。
【0027】
図1から図4(a)(b)に示すように、タービンハウジング27内には、第1ベースリングとしての第1ノズルリング47がタービンインペラ29と同心状に配設されており、この第1ノズルリング47には、複数の支持穴49が円周方向に等間隔に貫通形成されている。また、第1ノズルリング47の内縁部は、遮熱板41の外縁部(外縁側の段部)に嵌合してある。
【0028】
第1ノズルリング47の右側面(タービンインペラ29の軸方向の一方側の側面)における支持穴49の径方向外側には、複数のガイド爪51が円周方向に間隔を置いて放射状に一体形成されている。また、各ガイド爪51は、先端側(径方向外側)に、旋削加工によって形成された断面U字状のガイド溝53を有してあって、複数のガイド爪51のガイド溝53の底面53bは、タービンインペラ29の軸心(第1ノズルリング47の軸心)Sを中心とする同一の円周C上に位置している。更に、第1ノズルリング47の右側面の内縁部(内周面側)には、右方向(前記軸方向の一方側)へ突出した環状の連結凸部55が複数のガイド爪51の基部を連結するように形成されている。
【0029】
図1から図3に示すように、第1ノズルリング47に左右方向(前記軸方向)に離隔対向した位置には、第2ベースリングとしての第2ノズルリング57が円周方向に並んだ複数(3つ以上)の連結ピン59を介して第1ノズルリング47と一体的かつ同心状に設けられている。ここで、複数の連結ピン59は、第1ノズルリング47の対向面(前記軸方向の他方側の側面)と第2ノズルリング57の対向面(前記軸方向の一方側の側面)との間隔を設定する機能を有している。なお、前述の特許文献1及び特許文献2に示すように、第2ノズルリング57が複数のタービンブレード33の先端縁33tを覆うシュラウド部を有するようにしても構わない。
【0030】
図1及び図2に示すように、第1ノズルリング47の対向面と第2ノズルリング57の対向面との間には、複数の可変ノズル61がタービンインペラ29を囲むように円周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズル61は、タービンインペラ29の軸心Sに平行な軸心周りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。また、各可変ノズル61の右側面(前記軸方向の一方側の側面)には、ノズル軸63が一体形成されており、各ノズル軸63は、第1ノズルリング47の対応する支持穴49に回動可能に支持されている。更に、第1ノズルリング47の対向面と第2ノズルリング57の対向面との間の適宜位置には、複数の可変ノズル61が所定の回動位置を越えて正方向(開方向)へ回動することを規制するストッパピン(図示省略)が設けられている。なお、各可変ノズル61は1つのノズル軸63を有してあるが、各可変ノズル61の左側面(前記軸方向の他方側の側面)に別のノズル軸(図示省略)が一体形成され、各別のノズル軸が第2ノズルリング57の別の支持穴(図示省略)に回動可能に支持されるようにしても構わない。
【0031】
第1ノズルリング47の対向面の反対面側(前記軸方向の一方側)には、環状の収容室65が区画形成されており、この収容室65内には、複数の可変ノズル61を同期して正逆方向(開閉方向)へ回動させるための構成が配設されている。そして、複数の可変ノズル61を同期して正逆方向へ回動させるための構成は、次のようになる。
【0032】
図1から図3に示すように、第1ノズルリング47の複数のガイド爪51のガイド溝53には、駆動リング67がタービンインペラ29の軸心(第1ノズルリング47の軸心)S周りに回動可能に案内支持されており、この駆動リング67は、電動モータ又は負圧シリンダ等の回動アクチュエータ69の駆動によって正逆方向へ回動するものである。また、駆動リング67の内縁部には、径方向外側へ窪みかつ可変ノズル61と同数の係合凹部(係合部)71が形成されており、駆動リング67の内縁部の適宜位置には、径方向外側へ窪んだ別の係合凹部(別の係合部)73が等間隔に形成されている。更に、各可変ノズル61のノズル軸63には、同期リンク部材(ノズルリンク部材)75の基部が一体的に連結されており、各同期リンク部材75の先端部は、駆動リング67の対応する係合凹部71に係合してある。
【0033】
可変容量型過給機1の固定部であるベアリングハウジング3の左側部には、駆動軸77がタービンインペラ29の軸心に平行な軸心周りに回動可能にブッシュ79を介して設けられており、この駆動軸77の右端部(一端部)は、動力伝達機構81を介して回動アクチュエータ69に接続されている。また、駆動軸77の左端部(他端部)には、駆動リンク部材83の基端部が一体的に連結されており、この駆動リンク部材83の先端部は、駆動リング67の別の係合凹部(別の係合部)73に係合してある。
【0034】
図1図2図3、及び図4(a)(b)に示すように、第1ノズルリング47の対向面の反対面(前記軸方向の一方側の側面)には、第1ノズルリング47よりも大径のサポートリング85が一体的に設けられており、このサポートリング85の内縁部は、複数の連結ピン59の右端部(一端部)のかしめ結合によって第1ノズルリング47の対向面の反対面に一体的に接合されている。また、サポートリング85の内周面には、第1ノズルリング47の対向面の反対面に一体的に接合するための複数の接合片87が径方向内側へ突出しかつ円周方向に間隔を置いて一体形成されており、各接合片87には、連結ピン59の左端部を挿通させるための挿通穴89が貫通形成されている。更に、サポートリング85の外縁部は、ベアリングハウジング3にタービンハウジング27との協働により挟持された状態で取付けられている。ここで、サポートリング85の外縁部がベアリングハウジング3に取付けられることにより、可変ノズルユニット45の大部分がタービンハウジング27内に配設されるようになっている。
【0035】
なお、図1及び図2に示すように、第2ノズルリング57の内周面とタービンハウジング27の適宜箇所との間には、第2ノズルリング57の対向面の反対面側からの排気ガスの漏れを抑える複数のシールリング91が設けられている。
【0036】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
ガス導入口35から導入した排気ガスをタービンスクロール流路37を経由してタービンインペラ29の入口側から出口側へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ29と一体的に回転させることができる。これにより、空気導入口19から導入した空気を圧縮して、ディフューザ流路21及びコンプレッサスクロール流路23を経由して空気排出口25から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)することができる。
【0038】
可変容量型過給機1の運転中に、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、回動アクチュエータ69の駆動によって駆動軸77を一方向へ回動させて、駆動リンク部材83を一方向へ揺動させつつ、駆動リング67を正方向へ回動させる。これにより、複数の同期リンク部材75を正方向へ揺動させながら、複数の可変ノズル61を同期して正方向(開方向)へ回動させて、複数の可変ノズル61の開度を大きくすることができる。よって、タービンインペラ29側に供給される排気ガスの流路面積(流量)を大きくして、タービンインペラ29側に多量の排気ガスを供給することができる。
【0039】
エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、回動アクチュエータ69の駆動によって駆動軸77を他方向へ回動させて、駆動リンク部材83を他方向へ揺動させつつ、駆動リング67を逆方向へ回動させる。これにより、複数の同期リンク部材75を逆方向へ揺動させながら、複数の可変ノズル61を同期して逆方向へ回動させて、複数の可変ノズル61の開度を小さくすることができる。よって、タービンインペラ29側に供給される排気ガスの流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高くして、タービンインペラ29の仕事量を十分に確保することができる(可変容量型過給機1の通常の作用)。
【0040】
前述の作用の他に、第1ノズルリング47の右側面における支持穴49の径方向外側に複数のガイド爪51が円周方向に間隔を置いて放射状に一体形成され、各ガイド爪51が先端側に断面U字状のガイド溝53を有しているため、駆動リング67をタービンインペラ29の軸心S周りに正逆方向へ回動可能に支持するガイドリングとしての機能を第1ノズルリング47に付加することができる。これにより、複数の可変ノズル61を正逆方向へ同期して回動させるための構成からガイドリングを省略することができる。
【0041】
各ガイド爪51のガイド溝53が旋削加工によって形成されているため、複数のガイド爪51のガイド溝53の底面53bを同一の円周C上に高精度に位置させることができる。また、第1ノズルリング47の右側面の内縁部に環状の連結凸部55が複数のガイド爪51の基部を連結するように形成されているため、複数のガイド爪51の剛性を高めて、可変容量型過給機1の運転中における複数のガイド爪51の変形を抑制することができる。
【0042】
従って、本発明の実施形態によれば、複数の可変ノズル61を正逆方向へ同期して回動させるための構成からガイドリングを省略できるため、可変ノズルユニット45の部品点数を減らして、可変ノズルユニット45の構成の簡略化及び可変ノズルユニット45の製造コストの低減、換言すれば、可変容量型過給機1の構成の簡略化及び可変容量型過給機1の製造コストの低減を図ることができる。
【0043】
また、複数のガイド爪51のガイド溝53の底面53bを同一の円周C上に高精度に位置させると共に、可変容量型過給機1の運転中における複数のガイド爪51の変形を抑制できるため、駆動リング67の回動動作を安定させて、可変ノズルユニット45の信頼性(動作の信頼性)、換言すれば、可変容量型過給機1の信頼性を向上させることができる。
【0044】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0045】
1 可変容量型過給機
3 ベアリングハウジング(可変容量型過給機1の固定部)
9 ロータ軸
11 コンプレッサハウジング
13 コンプレッサインペラ
27 タービンハウジング
29 タービンインペラ
45 可変ノズルユニット
47 第1ノズルリング(第1ベースリング)
49 第1ノズルリングの支持穴(第1ベースリングの支持穴)
51 ガイド爪
53 ガイド爪のガイド溝
53b ガイド爪のガイド溝の底面
55 連結凸部
57 第2ノズルリング(第2ベースリング)
59 連結ピン
61 可変ノズル
63 ノズル軸
65 収容室
67 駆動リング
69 回動アクチュエータ
71 係合凹部(係合部)
73 別の係合凹部(別の係合部)
75 同期リンク部材
77 駆動軸
83 駆動リンク部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6