(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強部材が、一対の前記フレーム部の一方に対応する端部と、一対の前記フレーム部の他方に対応する端部との両端部の距離を調節するネジ式の長さ調節部を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の車体補強ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1及び
図2に示すように、乗用車の車体Aが左右のサイドメンバ1と、これらのサイドメンバ1に両端が連結するクロスメンバ2とを備えて構成されている。左右のサイドメンバ1が一対のフレーム部に対応する。
【0023】
この実施形態では、本発明の車体補強ユニットBの補強部材Baが、
図1に示す如く左右のサイドメンバ1に跨る横長姿勢で備えられる形態(以下、第1装着姿勢と称する)と、
図2に示す如くクロスメンバ2の左右方向での中央位置と左側のサイドメンバ1、及び、右側のサイドメンバ1とに亘って配置される形態(以下、第2装着姿勢と称する)を示している。
【0024】
また、第2装着姿勢では、サイドメンバ1とクロスメンバ2との一方が一対のフレーム部の一方に対応し、サイドメンバ1とクロスメンバ2との他方が一対のフレーム部の他方に対応する。そして、サイドメンバ1に備えたサイドブラケット3と、クロスメンバ2に形成したセンターブラケット4とに亘って車体補強ユニットBが備えられる。
【0025】
図1及び
図2に示す車体補強ユニットBは、車体の底壁側に備えられるものであるが、本発明の車体補強ユニットBは、このような位置に配置するものに限るものではなく、車室内又は車室外の車体の前後方向に沿う領域に配置して良く、例えば、トランクルームの前部位置において縦向きの姿勢となるように補強部材Baを備える等、装着姿勢は実施形態に限るものではない。特に、本発明の車体補強ユニットBはユーザが車体Aのフレーム部1に形成されている孔部を利用して任意に取り付けることや、取り外しを可能にする。
【0026】
〔第1実施形態:第1装着形態における車体補強ユニット〕
図1及び
図3に示すように、この第1実施形態の車体補強ユニットBは、左右のサイドメンバ1の一方に支持される補強部材Baと、左右のサイドメンバ1の相対距離が縮小する縮小変位に抗する付勢力を作用させる変位抑制機構Bbと、作動減衰機構Bcとを備えている。
【0027】
補強部材Baは、主軸芯Xを中心とする円筒状の外筒11と、この外筒11の内周の雌ネジ部11aに螺合する雄ネジ部12aを外周に形成した円筒状の内筒12と、内筒12の雄ネジ部12aに螺合するロックナット13と、スライドホルダ21とを備えている。外筒11の外周には互いに並行となる第1被操作面11bが形成されている。内筒12の外周には互いに並行となる第2被操作面12bが形成されている。
【0028】
外筒11の外端には、固定ホルダ14が固設され、この固定ホルダ14には、主軸芯Xに沿って外端側ほど小径化する回転傾斜面状の第1嵌合面14aが形成され、この外端側には主軸芯Xと同軸芯で外方に突出する第1係合ロッド15が形成されている。
【0029】
変位抑制機構Bbは、内筒12の外端部に主軸芯Xに沿う方向にスライド移動自在に外嵌する有底筒状のスライドホルダ21と、このスライドホルダ21の底部と内筒12の外端との間に挟み込まれる付勢部材としての皿バネで成る複数の変位抑制バネ22とを備えて構成されている。スライドホルダ21の外端部には、主軸芯Xに沿って外端側ほど小径化するテーパ状の第2嵌合面21aが形成され、この外端には主軸芯Xと同軸芯で外方に突出する第2係合ロッド23が形成されている。
【0030】
この変位抑制機構Bbは、左右のサイドメンバ1の相対距離が縮小するように縮小変位した場合に、変位抑制バネ22の付勢力を変位に抗する力として作用させるように機能する。また、変位抑制バネ22として機能する皿バネの枚数や重ねる方向や、初期潰し高さを変更することにより付勢力の変更が可能であり、例えば、ユーザが皿バネの枚数や重ねる方向を変更することにより好みの乗り心地を現出する。このように付勢力を変更する手段は、この第1実施形態だけに限るものではなく、以下に説明する実施形態において皿バネを備えた構成に適用できる。
【0031】
作動減衰機構Bcは、スライドホルダ21の筒状部に対し、主軸芯Xに直交する姿勢となる複数の直交軸芯Yと同軸芯で穿設された孔部に嵌め込んだ付勢体としての摩擦部材24と、この摩擦部材24を内筒12の外周面に圧接させる付勢力を作用させるようにコイルバネで成るバネ体25と、バネ体25の抜け止めを行う止め輪26とで構成されている。この第1実施形態では内筒12とスライドホルダ21とが変位部材となる。
【0032】
この作動減衰機構Bcは、摩擦部材24を内筒12の外面に直接的に接触させるものを想定しているが、例えば、内筒12の外面に樹脂膜を形成することにより必要とする制動力を得るように構成しても良い。このように必要とする摩擦力を得る構成は、この第1実施形態に限るものではなく、以下に説明する実施形態において同様の構成を有するものに適用できる。
【0033】
この作動減衰機構Bcは、左右のサイドメンバ1が主軸芯Xに沿って互いに接近する方向への力が作用し、内筒12とスライドホルダ21とが収縮する方向に作動する場合に、相対移動に摩擦による抵抗力を作用させ、相対移動に制動力を作用させ、この相対移動を減衰させるように機能する。
【0034】
この車体補強ユニットBでは、内筒の外周とスライドホルダ21との境界部分への塵埃の進入を阻止し、内筒12の外周への塵埃の付着を阻止するためにゴムや樹脂等の可撓性素材で成るベローズ27を備えている。
【0035】
左右のサイドメンバ1において対向する面に穿設された嵌合孔には支持部材としての支持プラグ28が嵌め込まれている。嵌合孔は前述した主軸芯Xと同軸芯に形成されるものであり、この支持プラグ28には、サイドメンバ1の嵌合孔に挿入される嵌合突出部28aと、主軸芯Xに近い位置ほど深くなる姿勢の漏斗状の凹状面28bが形成され、主軸芯Xと同軸芯となる係合孔28cが形成されている。
【0036】
このような構成から、車体補強ユニットBを左右のサイドメンバ1の間に装着する場合には、補強部材Baの主軸芯Xの方向での長さ(外筒11と内筒12との長さ)を短縮しておき、左右の第1係合ロッド15と第2係合ロッド23とを対応する支持プラグ28の係合孔28cに係合させる。
【0037】
この状態で外筒11と内筒12とを相対回転させ左右の支持プラグ28の嵌合突出部28aをサイドメンバ1の嵌合孔に嵌め込み、左右のサイドメンバ1と、左右の支持プラグ28と、固定ホルダ14と、スライドホルダ21とを主軸芯方向で密接させ、変位抑制バネ22に初期荷重を作用させる状態を作り出す。この状態でロックナット13を外筒11の内端側に当接させることで外筒11と内筒12との伸長量を固定する。このように外筒11と内筒12との相対回転により補強部材Baの長さを調節するネジ式の長さ調節部Lが構成されている。
【0038】
尚、支持プラグ28を左右のサイドメンバ1の嵌合孔に予め嵌め込んでおき、補強部材Baを伸長させることにより、第1係合ロッド15と、第2係合ロッド23とを対応する支持プラグ28の係合孔28cに係合させるように装着順序を設定しても良い。
【0039】
このように、補強部材Baを装着した状態では、固定ホルダ14の第1嵌合面14aが支持プラグ28の凹状面28bに当接し、スライドホルダ21の第2嵌合面21aが支持プラグ28の凹状面28bに当接する。更に、左右の支持プラグ28が対応するサイドメンバ1に当接する状態に達する。
【0040】
特に、支持プラグ28の凹状面28bは調芯機能を有するものであり、第1嵌合面14aと凹状面28bとが当接し、第2嵌合面21aが凹状面28bに当接することにより、当接するもの同士が主軸芯Xに近接する方向に接近し、主軸芯Xの位置が決まり、左右のサイドメンバ1に対して直交する姿勢に主軸芯Xの姿勢を保持できる。
【0041】
尚、外筒11と内筒12とを相対回転させる場合には、外筒11の第1被操作面11bと、内筒12の第2被操作面12bと、にスパナ等の工具を掛けて相対回転させる操作が行われる。また、ロックナット13もスパナ等の工具により回転操作が行われ、ロック状態に達した後には、ベローズ27の両端が固定される。
【0042】
〔作動形態〕
この第1実施形態の車体補強ユニットBでは、車体フレームに外力が作用し、左右のサイドメンバ1が互いに接近する方向に変位した場合には、スライドホルダ21に挿入される方向に補強部材Ba(外筒11と内筒12)が変位する。この変位により変位抑制機構Bbの複数の変位抑制バネ22が圧縮され、この圧縮に伴う変位抑制バネ22の付勢力が変位に抗する方向に作用して左右のサイドメンバ1の接近方向への変位を抑制する。
【0043】
この車体補強ユニットBでは、左右のサイドメンバ1が互いに接近する方向に変位し、スライドホルダ21に挿入される方向に補強部材Ba(外筒11と内筒12)が変位した場合には、この変位の際に作動減衰機構Bcの摩擦部材24が内筒12の外周に圧接して摩擦力により相対移動力に制動力を作用させて、この相対移動を減衰させ、急速な変位を抑制するだけではなく、振動を伴う場合には振幅を小さくする。
【0044】
〔第2実施形態:第2装着形態における車体補強ユニット〕
前述した第1実施形態の車体補強ユニットBとは異なり、車体補強ユニットBに対して圧縮する方向と伸長する方向との何れの力が作用する場合にも、変位抑制機構Bbがその変位に抗する力を作用させ、作動減衰機構Bcがその変位を減衰させるように構成されている。特に、この第2装着形態では車体補強ユニットBの主軸芯Xが車体Aの前後方向に対して傾斜する姿勢であるため、左右のサイドメンバ1が内外に変位する場合と、サイドメンバ1が前後方向に変位する場合との何れの場合にも機能する。
【0045】
図2及び
図4に示すように、この第2実施形態の車体補強ユニットBでは、補強部材Baが第1実施形態と同様に外筒11と内筒12とロックナット13とを備えて構成されている。外筒11の外端には固定ホルダ14が固設され、この固定ホルダ14には、主軸芯Xに沿って外端側ほど小径化するテーパ状の第1嵌合面14aが形成され、この外端側には主軸芯Xと同軸芯で外方に突出する第1係合ロッド15が形成されている。更に、第1係合ロッド15の外周にはネジ部が形成されている。
【0046】
この車体補強ユニットBでは、第1係合ロッド15が係合する支持部材としての支持プラグ28を有し、この支持プラグ28の嵌合突出部28aの外周にはネジ面が形成され、係合孔28cの内周にはネジ面が形成されている。
【0047】
また、補強部材Baの内筒12の外端に連結プレート31を介してネジ軸32を主軸芯Xに沿って突出形成している。このネジ軸32には変位抑制機構Bbを構成する付勢部材としての皿バネで成る複数の変位抑制バネ22が、サイドブラケット3のプレート部3aを挟む位置に外嵌され、この複数の変位抑制バネ22より外端には平ワッシャ33が外嵌し、複数のナット34が螺合する。
【0048】
このように複数の変位抑制バネ22を有する構成により変位抑制機構Bbが構成されている。この変位抑制機構Bbは、左右のサイドメンバ1の相対距離が拡大する方向に拡大変位した場合には、第1の付勢部材としての外側の変位抑制バネ22が相対距離の拡大に抗する(抑制する)付勢力を作用させる。また、左右のサイドメンバ1の相対距離が縮小する方向に縮小変位した場合には、第2の付勢部材としての内側の変位抑制バネ22が相対距離の縮小に抗する(抑制する)付勢力を作用させるように機能する。尚、以下に説明する各実施形態に示す変位抑制バネ22においてもフレーム部の相対距離の拡大に抗する方向に付勢力を作用させるものが第1の付勢部材であり、フレーム部の相対距離の縮小に抗する方向に付勢力を作用させるものが第2付勢部材である。
【0049】
更に、補強部材Baの内筒12の外端部に主軸芯Xに沿う方向にスライド移動自在に外嵌するためスライド支持体36を備え、このスライド支持体36はサイドブラケット3に連結するためのフランジ部36aが形成されている。この第2実施形態では内筒12とスライド支持体36とが変位部材となる。
【0050】
スライド支持体36の筒状部には、主軸芯Xと直交する姿勢となる直交軸芯Yと同軸芯で穿設された孔部に嵌め込んだ摩擦部材24と、この摩擦部材24を内筒の外周面に圧接させる付勢力を作用させるバネ体25と、バネ体25の抜け止めを行う止め輪26とを備えることにより作動減衰機構Bcが構成されている。
【0051】
また、車体補強ユニットBは、外筒11の内部空間と、内筒12の内部空間とにゴムやスポンジ等の振動を抑制する防振部材37を内装している。
【0052】
この構成から、固定ホルダ14の第1係合ロッド15のネジ面を支持プラグ28の係合孔28cのネジ部に螺合した状態で、支持プラグ28の嵌合突出部28aをセンターブラケット4の嵌合孔に挿通し、この嵌合突出部28aのネジ面に固定ナット28dを螺合することにより、この補強部材Baの一端側がセンターブラケット4に固定される。この状態で第1係合ロッド15のネジ面に脱落防止ナット15aを螺合させることにより確実な固定が行われる。
【0053】
このように一端が固定された状態で、内筒12の外端側にスライド支持体36を外嵌し、変位抑制バネ22がサイドブラケット3のプレート部3aを挟む位置に配置される状態でネジ軸32をサイドブラケット3のプレート部3aの貫通孔に挿通し、このネジ軸32の外端位置に平ワッシャ33を配置し、複数のナット34を固定する。また、複数のナット34を操作することによりプレート部3aを挟む位置に配置される変位抑制バネ22の荷重を同時に等しく調節することが可能である。この構成においても、外筒11と内筒12との相対回転により補強部材Baの長さを調節するネジ式の長さ調節部Lが構成されている。
【0054】
また、スライド支持体36のフランジ部36aをサイドブラケット3のプレート部3aに対して固定ボルト38により固定し、サイドブラケット3をサイドメンバ1に固定することにより車体補強ユニットBの装着が完了する。
【0055】
このように車体補強ユニットBを車体Aに取り付ける場合には、サイドメンバ1に対するサイドブラケット3の取付位置を移動させることにより、外筒11と内筒12との相対回転量を少なくすることも可能となる。
【0056】
尚、この第2実施形態においても、外筒11と内筒12とを相対回転させる場合には、外筒11の第1被操作面11bと、内筒12の第2被操作面12bと、にスパナ等の工具を掛けて相対回転させる操作が行われる。また、ロックナット13もスパナ等の工具により回転操作が行われ、ロック状態に達した後には、ベローズ27の両端が固定される。
【0057】
〔作動形態〕
この第2実施形態の車体補強ユニットBでは、車体補強ユニットBに対して主軸芯Xに沿う方向に圧縮する方向と、離間する方向との何れの方向に外力が作用した場合でも、2箇所の変位抑制機構Bbのうちの一方の(第1付勢部材又は第2付勢部材として機能する)変位抑制バネ22が圧縮されるため、この圧縮に伴う変位抑制バネ22の付勢力が変位に抗する方向に作用して変位を抑制する。
【0058】
また、車体補強ユニットBを主軸芯Xに沿う方向に圧縮する方向と、離間する方向との何れの方向に外力が作用した場合でも、内筒12とスライド支持体36との相対的な変位の際に作動減衰機構Bcの摩擦部材24が内筒12の外周に圧接して制動力により相対移動力を減衰させ、急速な変位を抑制し、振動を伴う場合には振幅を小さくする。
【0059】
特に、補強部材Baの内部に防振部材37を内装しているので、補強部材Baが主軸芯Xに対して直交する方向に振動する状況でも、防振部材37が振動を抑制することができる。
【0060】
この第2実施形態の車体補強ユニットBは、第2装着形態に限らず、第1装着形態で装着して用いることも可能である。
【0061】
本発明の車体補強ユニットBは第1実施形態と第2実施形態との構成に限るものではなく、以下に示す実施形態のように構成することも可能である。また、以下に示す何れの実施形態の構成であっても、第1装着形態、第2装着形態以外の装着形態で車体Aに備えることが可能である。
【0062】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態では、
図5に示すように、補強部材Baが主筒体41の内部に、主軸芯Xと同軸芯で軸体42を配置して構成されている。軸体42は主軸芯Xと同軸芯上に配置された軸状であり、中央には大径部42aが形成されている。主筒体41の端部の厚肉部41aを挟む位置に付勢部材としての複数の変位抑制バネ22を配置し、これらの変位抑制バネ22に挿通する位置に軸体42を配置し、この軸体42の端部のネジ部に調節ナット43を螺合させることで2箇所の変位抑制機構Bbが構成されている。この第3実施形態では主筒体41と軸体42とが変位部材となる
【0063】
この変位抑制機構Bbは、主筒体41と軸体42とが主軸芯Xに沿う方向で延びる方向に変位した場合には、調節ナット43からの圧力により主筒体41の外側の複数の変位抑制バネ22が圧縮される。これとは逆に、主筒体41と軸体42とが主軸芯Xに沿う方向で圧縮する方向に変位した場合には、軸体42の大径部42aからの圧力により主筒体41の内側の変位抑制バネ22が圧縮される。
【0064】
なお、この変位抑制機構Bbは、調節ナット43による締め込み量の調節により、2箇所の変位抑制バネ22の圧縮量を同時に調節して、変位に抗する力の強さの調節を行うことも可能である。
【0065】
筒状体としての主筒体41の内面と、軸状体としての軸体42の内面との間に密着する状態で筒状で柔軟に変形し得る可撓性の減衰筒状体44を備え、この減衰筒状体44の位置を決める保持体45を主筒体41の端部に螺合させることで作動減衰機構Bcが構成されている。
【0066】
この作動減衰機構Bcは、主筒体41と軸体42とが主軸芯Xに沿う方向で延びる方向と圧縮する方向との何れの方向に相対変位した場合でも、減衰筒状体44が主軸芯Xの方向に圧縮された際の粘弾性力により、相対移動力を減衰させることになる。
【0067】
主筒体41のうち変位抑制機構Bbが配置された側の外周のネジ部に対して、ブラケット筒46が螺合し、このブラケット筒46は主筒体41のネジ部に螺合するブラケットナット47により固定されている。ブラケット筒46には連結用プレート46aが備えられている。この第3実施形態でも、主筒体41に対するブラケット筒46の相対回転により補強部材Baの長さを調節するネジ式の長さ調節部Lが構成されている。
【0068】
前述したように、車体補強ユニットBは第1装着形態と第2装着形態との何れの形態で車体に装着されても良く、例えば、第1装着形態で装着される場合には連結用プレート46aが一方のサイドメンバ1に連結し、軸体42の外端部が他方のサイドメンバ1に連結することになる。
【0069】
〔作動形態〕
この第3実施形態の車体補強ユニットBでは、車体補強ユニットBに対して主軸芯Xに沿う方向に圧縮する方向と、離間する方向との何れの方向に外力が作用した場合でも、2箇所の変位抑制機構Bbのうちの一方の変位抑制バネ22が圧縮されるため、この圧縮に伴う変位抑制バネ22の付勢力が変位に抗する方向に作用して変位を抑制する。
【0070】
また、車体補強ユニットBを主軸芯Xに沿う方向に圧縮する方向と、離間する方向との何れの方向に外力が作用した場合でも、主筒体41と軸体42との相対変位の際に作動減衰機構Bcの減衰筒状体44の粘弾性力により相対移動力を減衰させるのである。
【0071】
〔第4実施形態〕
この第4実施形態では、
図6に示すように、補強部材Baが筒状となる筒状ケースとしての主ケース51の内部に、主軸芯Xと同軸芯でロッド状の軸状部52を配置して構成されている。第2装着形態で車体Aに備える場合には、主ケース51の端部の筒状部51aをサイドブラケット3のプレート部3aの貫通孔に挿通し、この筒状部51aの外面のネジ部に連結ナット53を螺合させて、この主ケース51をサイドブラケット3に固定している。
【0072】
軸状部52は、主軸芯Xに沿う方向の中央位置に大径領域52aを形成しており、一方の軸状部52を主ケース51の筒状部51aに挿通している。主ケース51の内部で筒状部51aの内端側と、筒状部51aの外端より外側で軸状部52に外嵌する位置とに付勢部材としての複数の変位抑制バネ22を配置し、これらの変位抑制バネ22に挿通する軸状部52の外端のネジ部に複数の調圧ナット54を螺合させることで2箇所の変位抑制機構Bbが構成されている。この第4実施形態では主ケース51と軸状部52とが変位部材となる。
【0073】
この変位抑制機構Bbは、主ケース51と軸状部52とが主軸芯Xに沿う方向で延びる方向に変位した場合には、連結ナット53からの圧力により主ケース51の外側の複数の変位抑制バネ22が圧縮される。これとは逆に、主ケース51と軸状部52とが主軸芯Xに沿う方向で圧縮する方向に変位した場合には、軸状部52の大径領域52aからの圧力により主筒体41の内側の変位抑制バネ22が圧縮される。
【0074】
主ケース51の内面には変位抑制バネ22が配置方向に近接するほど(一端側ほど)小径となる摩擦面としてのテーパ状内面51sが形成され、このテーパ状内面51sに接触するテーパ状の外周面を有するチャック部材55が軸状部52の大径領域52aに外嵌されている。更に、チャック部材55の外周面をテーパ状内面51sに圧接させる方向に付勢力を作用させる付勢機構としての圧縮コイルバネ56を備え、この圧縮コイルバネ56の付勢力を調節するように主ケース51の端部に螺合する調節リング57とこの調節リング57を固定する保持ナット58を調節リング57の外周に螺合させている。
【0075】
このテーパ状内面51sと、チャック部材55と、軸状部52と、圧縮コイルバネ56とを備え、主ケース51と軸状部52との主軸芯Xに沿う方向への相対変位に制動力を作用させる機能部分により作動減衰機構Bcが構成されている、
【0076】
チャック部材55は、
図7に示すように、圧縮コイルバネ56から作用する付勢力により外径が変化できるように、主軸芯Xに沿う姿勢のスリット55sが形成されている。また、車体補強ユニットBは、軸状部52の延出端をクロスメンバ2や、センターブラケット4に連結する構成が採用される。
【0077】
〔作動形態〕
この第4実施形態の車体補強ユニットBでは、車体補強ユニットBに対して主軸芯Xに沿う方向に圧縮する方向と、離間する方向との何れの方向に外力が作用した場合でも、2箇所の変位抑制機構Bbのうちの一方の変位抑制バネ22が圧縮されるため、この圧縮に伴う変位抑制バネ22の付勢力が変位に抗する方向に作用して変位を抑制する。
【0078】
また、車体補強ユニットBを主軸芯Xに沿う方向に圧縮する方向と、離間する方向との何れの方向に外力が作用した場合でも、軸状部52の変位に伴いチャック部材55は、圧縮コイルバネ56によって主ケース51のテーパ状内面51sに押圧されることによって大径領域52aの外径面とチャック部材55の内径面55fとの間で接触面圧が発生している。よって、主ケース51と軸状部52との相対移動力を摩擦減衰させ、急速な変位を抑制し、振動を伴う場合には振幅を小さくする。この制動力(減衰力)は調節リング57の操作により圧縮コイルバネ56からチャック部材55に作用する付勢力の調節により変更が可能となる。
【0079】
〔第5実施形態〕
この第5実施形態では、
図8に示すように、第4実施形態の車体補強ユニットBの構成の調節リング57に代えて、止め輪(スナップリング)59で固定されるバネ受部材60を備えた点が異なっている。
【0080】
このような構成により、第4実施形態と同様な作動形態を呈する。特に、この第5実施形態では、作動減衰機構Bcから作用する制動力(減衰力)は一定となるが、調節リング57を備えずに済むため、構成が簡素化し、コストの低減に繋がる。
【0081】
〔第6実施形態〕
この第6実施形態は、第4実施形態の車体補強ユニットBと比較して作動減衰機構Bcの構成が異なっている。つまり、
図9に示すように、軸状部52の大径領域52aと一体的に主軸芯Xに沿って変位する筒状で樹脂製のカラー部材65を備えている。また、主ケース51の筒状部には、主軸芯Xと直交する姿勢の直交軸芯Yと同軸芯で穿設された孔部に嵌め込んだ押圧部材24と、この押圧部材24をカラー部材65の外周面に圧接させる付勢力を作用させる皿バネで成るバネ体25と、バネ25体の付勢力を調節するように主ケース51の筒状部に螺合する調節ボルト66と、この調節ボルト66の外周のネジ部に螺合して調節状態を維持する調節維持ナット67とを備えており、これらによって作動減衰機構Bcが構成されている。
【0082】
この第6実施形態の作動減衰機構Bcは、第1実施形態と第2実施形態との作動減衰機構Bcとは異なり、調節ボルト66の操作によりバネ体25から押圧部材24に作用する付勢力を調節してカラー部材65と軸状部52の大径領域52aとの間の制動力(減衰力)を調節できる構成が採用されている。また、この作動減衰機構Bcは、調節ボルト66を取り外してバネ体25を構成する皿バネの枚数の変更により制動力を調節することが可能となり、このカラー部材65として摩擦係数が異なるものに変更することにより必要とする制動力を得ることも可能となる。
【0083】
この第6実施形態によると、変位抑制機構Bbが第4実施形態と同様に機能するものであるが、作動減衰機構Bcは第1実施形態と同様に機能することになる。
【0084】
〔第7実施形態〕
この第7実施形態は、
図10に示すように、第4実施形態に一部類似する構成を有するものである。つまり、主ケース51の内部に軸状部52を主軸芯Xと同軸芯で、この主軸芯Xに沿って相対移動自在に収容している。この軸状部52の大径領域52aにチャック部材55を備え、このチャック部材55の外周面を主ケース51のテーパ状内面51sに接触させるように構成している。
【0085】
また、この第7実施形態では、軸状部52の大径領域52aを主軸芯Xに沿う方向から挟み込む位置に付勢部材としての圧縮コイルバネで成る変位抑制バネ22を備えており、軸状部52の一方の端部のみ主ケース51から外部に延出し、この延出端をナット等でサイドメンバ1やサイドブラケット3等に連結するように構成されている。
【0086】
更に、主ケース51の開放側に配置される変位抑制バネ22のバネ受けの機能と、チャック部材55に付勢力を作用させる圧縮コイルバネ56のバネ受けとの機能とを有する中間支持体68を主ケース51に螺合連結している。また、この中間支持体68の外面側には、ロッド状部68aが突出形成され、このロッド状部68aが他方のサイドメンバ1やセンターブラケット4等に連結される。
【0087】
この第7実施形態では、変位抑制バネ22が圧縮コイルスプリングで構成されているため、大きい作動ストロークでの作動が可能となり、中間支持体68による螺合深さの調節により一対の変位抑制バネ22と、圧縮コイルバネ56からチャック部材55に作用する付勢力を同時に調節できる。
【0088】
〔第8実施形態〕
この第7実施形態は、第6実施形態と共通する構成に加えて、変位抑制機構Bbから作用する付勢力を解除する付勢力解除部Bdを備えた構成を有している。つまり、
図11に示すように、主ユニットP(第2変位部材の一例)の軸状部52の延出端に連なる位置に付勢力解除部Bdが備えられる副ユニットQ(第1変位部材の一例)を配置している。
【0089】
主ユニットPは第6実施形態の車体補強ユニットBと共通する構成を有している。また、副ユニットQは、第1補強体71と第2補強体72と第3補強体73とを主軸芯Xに沿って配置して構成されている。この第8実施形態では、主ユニットPと副ユニットQとで車体補強ユニットBが構成されている。特に副ユニットQの第1補強体71と第2補強体72と第3補強体73とで補強部材Baが構成されている。
【0090】
第1補強体71は一方が先細で他方が開放する筒状に形成され、この筒状の部位の内周に雌ネジ領域71aが形成されている。第2補強体72は第1補強体71の雌ネジ領域71aに螺合する雄ネジ領域72aを一端に形成し、これらを螺合させている。
【0091】
また、第2補強体72の他端の内周に雌ネジ部を形成した筒状に形成され、この雌ネジ部に対して、第3補強体73の外周に形成した雄ネジ部に螺合させ、この雄ネジ部に螺合する調節量固定ナット74を備えている。この第3補強体73の外端にはサイドメンバ1等と連結するためのロッド73aが突設されている。この構成から第2補強体72と第3補強体73とを、主軸芯Xを中心にして相対回転させることにより、これらの長さの調節が可能となり、調節量固定ナット74調節した長さの固定が可能となる。
【0092】
また、第1補強体71と第2補強体72とを、主軸芯Xを中心にして相対回転させることにより、これらが主軸芯Xに沿う方向に相対的に変位し、第1補強体71の内部に備えたクランプ部材75が軸状部52に連結する状態と、連結が解除される状態とが作り出される。この状態の切換の構成が、変位抑制機構Bbから作用する付勢力を解除する付勢力解除部Bdとして機能する。
【0093】
第1補強体71の先細り側には、
図11〜
図13に示すように、外端側ほど小径となるテーパ状内面となる摩擦面71sが内面に形成され、クランプ部材55の内面に摩擦面55fが形成されている。この第1補強体71の内部には摩擦面71sに接触する斜め姿勢の傾斜面を有する複数のクランプ部材75と、この複数のクランプ部材75の周方向での中間に配置されるゴムや樹脂等の可撓性素材で成る複数の中間部材76と、複数のクランプ部材75に当接するリング状のスペーサ77とを備えている。この複数のクランプ部材75と、複数の中間部材76と、スペーサ77とが付勢力解除部Bdとして機能する。
【0094】
〔作動形態〕
この第8実施形態の車体補強ユニットBでは、主ユニットPの変位抑制機構Bbが変位に抗する方向に付勢力を作用させ、作動減衰機構Bcが相対移動を減衰させる機能を現出する。
【0095】
そして、第1補強体71と第2補強体72とを、主軸芯Xを中心にして相対回転させ、雌ネジ領域71aと雄ネジ領域72aとの機能により夫々が接近する方向(主軸芯Xに沿って収縮する方向)に作動した場合には、スペーサ77に対して第2補強体72の端部が当接して、複数のクランプ部材75を第1補強体71の摩擦面71sに接触させる。この接触状態では、摩擦面71sに案内される状態、複数のクランプ部材75の摩擦面75fが軸状部52の外周に圧着するため、第1補強体71とクランプ部材75と軸状部52とが一体化することになり、補強部材Baに伝えられる変位力を主ユニットPの変位抑制機構Bbに伝えて変位に抗する力を作用させることが可能となる。
【0096】
これとは逆に、第1補強体71と第2補強体72とを、主軸芯Xを中心にして相対回転させ、雌ネジ領域71aと雄ネジ領域72aとの機能により夫々が離間する方向(主軸芯Xに沿って伸長する方向)に作動した場合には、スペーサ77から複数のクランプ部材75に作用する押圧力が解除される。この状態では、中間部材76からの弾性力(反発力)により複数のクランプ部材75が軸状部52の外周から離間するため、第1補強体71が軸状部52から離間することになり、補強部材Baに伝えられる変位力は変位抑制機構Bbに伝えられることはない。
【0097】
このように第8実施形態では、サイドメンバ1等から作用する変位力を、変位抑制機構Bbに伝えて、この変位を良好に抑制し、かつ、作動減衰機構Bcにより良好に減衰する状態を現出する状態に作り出す。また、付勢力解除部Bdが変位抑制機構Bbに対して変位力を伝えない状態を作り出すことも可能にしているのである。
【0098】
〔第9実施形態〕
この第9実施形態は、第8実施形態で示した付勢力解除部Bdの変形例を示している。つまり、
図14に示すように、補強部材Baが筒状の第1部材81(第1変位部材の一例)と、棒状の第2部材82(第2変位部材の一例)と、筒状の第3部材83とを主軸芯Xに沿って配置した構成を有している。
【0099】
第1部材81と第3部材83との外端位置には端部ホルダ84が備えられ、この端部ホルダ84に突設した端部軸85を対応するサイドメンバ1やブラケット類の孔部に挿通している。端部ホルダ84には外端側ほど小径化する回転傾斜面状の端部当接面84aが形成されている。
【0100】
サイドメンバ1やブラケット類に形成された孔部には、端部軸85が挿通可能な開口を有した支持プレート86が配置され、この支持プレート86には、端部ホルダ84の端部当接面84aが嵌り込む案内面86aが形成され、この案内面86aと端部当接面84aとに挟まれる位置にウレタンゴムシートのように柔軟な樹脂で成る可撓性の緩衝板87が挟み込まれている。
【0101】
特に、第3部材83とフレーム部との間には付勢部材としての皿バネで成る複数の変位抑制バネ22が配置されている。これにより変位抑制機構Bbが構成されている。
【0102】
第2部材82の一方の端部を第3部材83に内嵌し、夫々が溶接固定されている。また、第2部材82の他方の端部を第1部材81に対し主軸芯Xに沿う方向に往復移動自在に挿入している。この挿入部分に対して主軸芯Xと直交する姿勢で通過するカム軸芯Zを設定し、このカム軸芯Zと同軸芯となる孔部を第1部材81に形成し、この孔部に対してブッシュ91を介して回動自在にカム軸92が支持されている。カム軸92の外端にはハンドル93を備え、このハンドル93を備えている。
【0103】
カム軸92の中間部分には断面形状が楕円形等のカム部92aが形成され、第2部材82にはカム軸92が挿通する孔状のカム面82aが形成されている。この構成からハンドル93によりカム軸92を回動操作した場合には、カム軸芯Zを中心にしたカム軸92の回動によりカム部92aとカム面82aとの当接状態が変化し第1部材81に対する第2部材82の主軸芯Xに沿う方向への変位を実現する。
【0104】
〔作動形態〕
この第9実施形態の車体補強ユニットBでは、第1実施形態の作動形態と同様に圧縮方向への変位に対して変位抑制機構Bbが変位に抗する方向に付勢力を作用させる。
【0105】
また、車体補強ユニットBを左右のサイドメンバ1やブラケット類に支持した状態において、ハンドル93を回動操作して第1部材81と第3部材83とを主軸芯Xに沿って伸長する方向に作動させることが可能である。この操作を行った場合には、
図15に示すように、変位抑制機構Bbの変位抑制バネ22が、サイドメンバ1やブラケット類と支持プレート86との間に変位抑制機構Bbの複数の変位抑制バネ22が挟み込まれる状態に達する。これにより、補強部材Baを圧縮する方向に外力が作用した場合には、変位抑制バネ22が変位に抗する力を作用させることになる。
【0106】
これとは逆に、ハンドル93を回動操作して第1部材81と第3部材83とを主軸芯Xに沿って収縮する方向に作動させることも可能である。この操作を行った場合には、
図16に示すように、変位抑制機構Bbの変位抑制バネ22から付勢力作用しない状態に達する。これにより、補強部材Baを圧縮させる方向に外力が作用した場合でも、変位抑制機構Bbが機能することはない。
【0107】
特に、この第9実施形態では、端部ホルダ84と支持プレート86との間に挟み込まれた緩衝板87が弾性変形可能であるため、荷重変動等に起因する振動を減衰させ乗り心地を向上させる。
【0108】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0109】
(a)押圧部材24を有する作動減衰機構Bcでは、一方の変位部材の外面を被摩擦面とした場合に、他方の変位部材に対して押圧部材24を備えるように構成することが可能であり。
図3の構成と比較すると、
図3のスライドホルダ21の内周を被摩擦面にし、内筒12に対して押圧部材24と、バネ体25(付勢体)を備えるように構成しても良い。このように構成する場合に、被摩擦面に樹脂膜を形成しても良い。
【0110】
(b)
図3及び
図4に示す第1実施形態の車体補強ユニットBの作動減衰機構Bcを備えずに車体補強ユニットBを構成することも可能である。
【0111】
(c)第1実施形態の車体補強ユニットBでは左右のサイドメンバ1等に対して第1係合ロッド15と第2係合ロッドとをさせていたが、これに代えて車体補強ユニットBの両端をサイドメンバ1等に連結固定(例えば、ネジ、カシメ、溶接、接着等)しても良い。