(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163999
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
B25J19/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-195463(P2013-195463)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-58521(P2015-58521A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】七澤 幸二
【審査官】
中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−028875(JP,A)
【文献】
特開2012−176488(JP,A)
【文献】
特開平10−058371(JP,A)
【文献】
特開2012−240123(JP,A)
【文献】
特開2005−238428(JP,A)
【文献】
特開平05−220689(JP,A)
【文献】
特開平10−145921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部がロボット本体側に対して軸回り又は上下方向に回動自在に取り付けられ、他端部にリスト軸回り及び前記軸直角方向に回動自在なリストが取り付けられるアームを備え、前記アーム内に、前記ロボット本体側と前記リスト間を接続する第1ケーブルと、前記第1ケーブルが貫通する可撓性導管と、前記第1ケーブルに沿って、前記アームと前記リストを前記軸直角方向に回動する揺動駆動モータ間を接続する第2ケーブルと、前記第1ケーブルに沿って、前記アームと前記リストを前記軸回りに回動する回転駆動モータ間を接続する第3ケーブルと、を有する産業用ロボットであって、前記アームは前記一端部側から中空部、前記両駆動モータが配置される空間を有する切り欠き部、前記リストが取り付けられるリスト配置部が順に設けられ、前記揺動駆動モータは前記アームの前記切り欠き部に固定され、前記回動駆動モータは前記アームの前記切り欠き部に位置するとともに前記リスト側に固定されており、
前記可撓性導管は、一端が前記リストに接続され、他方側が前記中空部に設けられた固定部材に固定され、さらに、一端と他方側との中間部が前記切り欠き部に設けられた支持部材により、前記軸方向移動可能に、かつ軸直角方向への移動が制限するように支持されていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記支持部材は、前記アーム内側に固定され前記軸直角断面で四角形状であり、前記軸に対する上下辺は辺を軸とするローラ形状であることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記第3ケーブルは、前記中空部で先記固定部材に固定され、前記切り欠き部で、支持部材により、前記軸方向移動可能に、かつ軸直角方向への移動が制限するように支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第3ケーブルの軸直角方向への移動の制限は、前記軸に対する左右方向の移動より上下方向の移動が大にされていることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記可撓性導管の支持部材と前記第3ケーブルの前記切り欠き部中間部の支持部材は、一体又は共通の開口を用いていることを特徴とする請求項4記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一端部がロボット本体に対して回動自在に取り付けられ、他端部に回動自在なリストが取り付けられたアーム内にケーブルを設けた産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な産業用ロボット(以下、単に「ロボット」と記載する。)は、ロボット本体と、ロボット本体に対して回動自在に取り付けられるアームと、アームに対して回動自在に取り付けられるとともに、エンドエフェクタが取り付けられるリストとを備える。アームやリストを回動させるための駆動手段(例えば、サーボモータ)に電源を供給する電源線や、エンドエフェクタに取り付けられたエアシリンダにエアを供給するためのエアチューブ等は1本の束にまとめられて(以下、この状態のものを「ケーブル」と記載する。)、ロボット本体の内部に収容されたり、外面部に固定されたりして引き回される。
【0003】
ロボットのアームやリストは、所定の角度だけ回動自在に設けられている。アームやリストが回動したときにケーブルが極度に引っ張られると、断線等の損傷が引き起こされるおそれがある。このため、ケーブルは、アームやリストが最大に回動したときであっても損傷しないように、たるみ(余裕長さ)をもって引き回されている。しかし、このたるみが大きいと、アームやリストが回動するときの抵抗となったり、周辺の部材と緩衝としたりするおそれがある。そこで、ケーブル又はケーブルを可撓性導管で保護し、要所に支持部材を設けて、ケーブル等を固定している。しかし、アームやリストが高速で動作したときにケーブルが「あばれる」という現象が生じてしまう。さらに、ロボットの回りのケーブル引き回し空間が大きくなる。また、外観も悪い。
【0004】
そこで、ケーブルをアーム内に納め、より好ましくはさらに可撓性導管内に納めた多数の出願がなされている。このものは、ケーブル等をアーム内に配置することにより、ケーブルの長さを短くし、アーム軸、リスト軸回転はねじれにより吸収し、リスト回転による変形量を少なくしている。また、アーム内に納めることでケーブルの軸直角方向の変形を阻止し、また、可撓性導管に通すことで、さらに変形を阻止している。さらに、特許文献1では、アーム内に設ける可撓性導管のリスト側をリストに固定し、本体アーム側をアーム軸方向に摺動(移動)可能に設け、ケーブルの引っ張り方向の力を逃がして、リスト(手首要素)が動作した場合に可撓性導管及びケーブルに無理な力が係らないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−28875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかるアーム内蔵形のものは、アームやリストが高速で作動すると、ケーブルがあばれる。また、合わせて可撓性導管もあばれてしまうという問題があった。また、アームは操作性、メンテナンス、軽量化、駆動モータの取り付け等のため一部が切り欠けられ開口しており、ケーブルは必ずしもアーム内に閉じ込められてはいない。また、特許文献1のものでは、可撓性導管が片持ち状態で保持され、軸方向に自由端があるので、遠心力により、可撓性導管は引っ張られるため長さが長くなる。このため、ますますあばれてしまうという問題があった。また、外装形の場合の様に可撓性導管を固定するとその利点がそがれてしまうという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑み、ロボットが高速で動作したときであってもケーブルが損傷しないようにするとともに、外観を悪化させることなくケーブルの引き回し作業が容易になるロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、一端部がロボット本体側に対して軸回り又は上下方向に回動自在に取り付けられ、他端部にリスト軸回り及び前記軸直角方向に回動自在なリストが取り付けられるアームを備え、前記アーム内に、前記ロボット本体側と前記リスト間を接続する第1ケーブルと、前記第1ケーブルが貫通する可撓性導管と、前記第1ケーブルに沿って、前記アームと前記リストを前記軸直角方向に回動する揺動駆動モータ間を接続する第2ケーブルと、前記第1ケーブルに沿って、前記アームと前記リストを前記軸回りに回動する回転駆動モータ間を接続する第3ケーブルと、を有する産業用ロボットであって、前記アームは前記一端部側から中空部、前記両駆動モータが配置される空間を有する切り欠き部、前記リストが取り付けられるリスト配置部が順に設けられ、前記揺動駆動モータは前記アームの前記切り欠き部に固定され、前記回動駆動モータは前記アームの前記切り欠き部に位置するとともに前記リスト側に固定されており、前記可撓性導管は、一端が前記リストに接続され、他方側が前記中空部に設けられた固定部材に固定され、さらに、一端と他方側との中間部が前記切り欠き部に設けられた支持部材により、前記軸方向移動可能に、かつ軸直角方向への移動が制限するように支持されている産業用ロボットを提供することにより前述した課題を解決した。
【0009】
即ち、切り欠き部はリストに近いのでねじり、曲げの影響が大きい。そこで、少なくとも切り欠き部に可撓性導管を設け、第1ケーブルを保護する。さらに、切り欠き部に可撓性導管をある程度移動可能に支持する支持部材を設ける。一方、中空部では、ケーブル及び可撓性導管の全部又は一部は回りを囲まれ、リストより距離があるので、固定部材又は支持部材の必要性は少ない。しかし、切り欠き部での可撓性導管の安定性を確保するため、中空部に固定部材を設け、可撓性導管を固定する。固定部材は中空部の端部に設け、支持部材は切り欠き部の中間部に設けるのが好ましい。支持部材は可撓性導管がねじり、伸縮、前後移動が可能な程度の隙間をもたせればよい。
【0010】
なお、第1ケーブル及び可撓性導管の中心はアーム軸心と同芯又は軸芯に沿ってほぼ一直線上に配置される。また、可撓性導管は、両端を軸方向回転方向に自在に接続、或いは一端を固定、または、両側をアーム側及びリストに対しそれぞれ固定されていてもよい。また、可撓性導管は固定部材を端部としてもよいが、さらに延出して中空部内、さらにはアーム端に達してもよい。
【0011】
リストから遠い中空部では、第1ケーブルや可撓性導管の移動制限は、主としてねじり可能であれば十分である。切り欠き部では、リストの軸回転、揺動の影響が大きい。そこで、請求項2記載の発明においては、前記支持部材は、前記アーム内側に固定され前記軸直角断面で四角形状であり、前記軸に対する上下辺は辺を軸とするローラ形状である産業用ロボットとした。
【0012】
切り欠き部の可撓性導管を支持する支持部材は、四角形状とし、軸直角方向では可撓性導管がねじり、伸縮、前後移動が可能な程度の隙間とする。さらに、上下方向辺をローラとし、リストの揺動方向の影響を吸収する。これにより可撓性導管の曲げ、伸縮、ねじりを許容する。なお、ローラは非回転でもよいが回転できるようにするのが好ましい。
【0013】
一方、第3ケーブルはリスト側の駆動モータに接続され、第1ケーブルよりも短い。そこで、請求項3に記載の発明においては、前記第2ケーブルは、前記中空部で先記固定部材に固定され、前記切り欠き部で、支持部材により、前記軸方向移動可能に、かつ軸直角方向への移動が制限するように支持されている産業用ロボットとした。さらには、第3ケーブルは第1ケーブル及び可撓性導管とは別に可撓性導管に沿って配置する。なお、固定部材及び支持部材は、可撓性導管用支持部材と同様、固定部材を中空部の端部とし、支持部材を切り欠き部の中間部に設けるのが好ましい。
【0014】
また、請求項4記載の発明においては、前記第3ケーブルの軸直角方向への移動の制限は、前記軸に対する左右方向の移動より上下方向の移動が大にされている産業用ロボットとした。また、支持部材を共通とすることもできる。そこで、請求項5記載の発明においては、前記可撓性導管の支持部材と前記第3ケーブルの前記切り欠き部の支持部材は、一体又は共通の開口を用いている産業用ロボットとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、中空部に可撓性導管を固定する固定部材、切り欠き部に可撓性導管を支持する支持部材を設け、可撓性導管の軸方向移動可能に、軸直角方向への移動を制限し、可撓性導管のねじり、伸縮、前後移動を可能とし、第1ケーブルを保護するので、第1ケーブルのあばれを中空部及び可撓性導管で吸収し、可撓性導管のあばれを支持部材で吸収することができる。また、第1ケーブルは振動やあばれがないので、損傷することも少ない。また、支持部材もロボットアーム内の切り欠き部、切り欠き部近傍に取り付けられるので、ロボットの外観もすっきりし、メンテナンスも容易である。
【0016】
また、請求項2記載の発明においては、支持部材の上下方向辺をローラとし、リストの揺動方向の影響を吸収し、可撓性導管の曲げ、伸縮、ねじりを許容したので、動作範囲を狭くすることなく、高速運転でもケーブル等があばれることがない。
【0017】
また、請求項3に記載の発明においては、第2ケーブルも、中空部の固定部材と切り欠き部の支持部材により、軸直角方向への移動を制限したので、あばれたり、振動したりすることが少ない。また、請求項4記載の発明においては、第2ケーブルの上下方向の移動を大としたので、リストの揺動を吸収する。さらに、請求項5記載の発明においては、可撓性導管の支持部材と第2ケーブルの切り欠き部の支持部材を一体又は共通の開口を用いたので、小型、安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態を示す産業用ロボットの斜視図である。
【
図2】
図1の一部を破断した産業用ロボットの要部の拡大斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態を示す切り欠き部の支持部材の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明の実施の形態を示す産業用ロボット100(溶接ロボット)の全体構成について説明する。
図1に示すように、例えば床面等の設置面に設置されるベース1にフレーム2が載置されている。このフレーム2は、ベース1の上面に配置される基板部3と、基板部3から起立する起立板部4とを備える。また、基板部3の上面には、フレーム2の全体を水平面内(床面と平行な面内)で回動させるためのモータ(図示せず)が取り付けられている。モータのモータ軸を所定方向に回転させることにより、フレーム2は床面に垂直に設けられた第1回動軸線5を中心に回動する。
【0020】
フレーム2の起立板部4に、本体側アーム(下アーム)6の下端部が片持ち状態で取り付けられている。下アーム6は、ベース2から引き回されるケーブル7(
図2参照)を通過させることができるように、中空形状となっている。下アーム6は、フレーム2の起立板部4に支持されて、第2回動軸線8を中心に回動自在である。
【0021】
下アーム6の上端部に、アーム(上アーム)9が片持ち状態で取り付けられている。上アーム9は、下アーム6と連結される第1上アーム部11と、第1上アーム部11の一端部から延設される第2上アーム部12とを備える。上アーム9は、下アーム6に連結された状態で、第3回動軸線13を中心に回動する。そして、第2上アーム部12は、第1上アーム部11に対して、第4回動軸線14を中心に回動自在である。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、第2上アーム部12の右半部(第1上アーム部11と連結される側の端部)には、筒状の貫通穴26が開けられた中空部(円筒部)15が形成されている。第2上アーム部12における中空部15の左側の部分は、下辺部と手前側(正面側)の側壁部が削られていて、切り欠き部16を形成している。切り欠き部16の奥側の側壁部(奥壁部)に揺動駆動モータ27が取付けられる。そして、第2上アーム部12の左半部(第1上アーム部11と連結される側と反対側の端部)は、切り欠き部16の奥壁部が延設されて、リスト配置部17が形成されている。
【0023】
リスト配置部17に、片持ち状態でリスト18が取り付けられている。リスト18は、減速機(図示せず)を介して第2上アーム部12のリスト配置部17と連結され、リスト配置部17に対して第5回動軸線19を中心に揺動(回動)自在とされる本体部21と、減速機22を介して本体部21と連結され、本体部21に対して第6回動軸線23を中心に回動自在とされる円板状のフランジ部24とから成る。フランジ部24にエンドエフェクタ(図示せず)が取り付けられる。フランジ部24の軸心部には貫通孔25が設けられていて、上アーム9から引き回されるケーブル7が通される。
【0024】
前述したように、本実施例のロボット100は、第1ないし第6の回動軸線5,8,13,14,19,23が設けられた6軸の多関節ロボットである。ロボット100のケーブル7は、ロボット100の外部からベース1内に引き込まれ、フレーム2、下アーム6、上アーム9及びリスト18を通って、エンドエフェクタに引き回される。ただし、本明細書では上アーム9からリスト18までの間のケーブル7の引回しについてのみ説明し、それ以外の部分におけるケーブル7の引回しの説明及び図示を省略する。
【0025】
次に、第2上アーム部12の切り欠き部16について説明する。
図2に示されるように、第2上アーム部12の中空部15には、上アーム9の第4中心軸線14と同軸に筒状の貫通孔26が形成されている。そして、第2上アーム部12の切り欠き部16の奥壁部には、リスト18を回動させるための揺動駆動モータ27が取り付けられている。揺動駆動モータ27は、モータ軸(図示せず)を第4回動軸線14と直交する形で取り付けられている。また、リスト18の本体部21には、モータ軸の中心線を第6回動軸線23と平行に配置する形で、フランジ部24を回動させるための回転駆動モータ28が取り付けられている。
【0026】
上アーム9の切り欠き部16における貫通孔26の出口部分には、固定部材(ブラケット)29が取り付けられている。このブラケット29に可撓性導管(コイルばね)31の本体側端部が固着されている。なお、可撓性導管は本体側にさらに延出するようにしてもよい。可撓性導管31の内径は、ケーブル7の外径よりも大きい。可撓性導管31は第4回動軸線14及び第6回動軸線23と略同軸に配置されていて、その他端部は、リスト18のフランジ部24の貫通孔25に接続される状態で固定されている。第2上アーム部12の中空部15の貫通孔26を通されたケーブル7aは、可撓性導管31に通され、そのままリスト18のフランジ部24の貫通孔25に通されて引き出される。
【0027】
図2に示されるように、第2上アーム部12の切り欠き部16の奥壁部には、支持部材(ガイド部)32が取り付けられている。支持部材32は、
図3に示されるように、可撓性導管31の上下に、可撓性導管31と軸直角に配置される2本の第1ガイドローラ33,34と、上下の第1ガイドローラ33,34の手前側に各第1ガイドローラ33,34と直角に配置される2本の第2ガイドローラ35,36とを備える。これらのガイドローラ33,34,35,36は、それぞれ独立して回転自在である。上下の第1ガイドローラ33,34は、それらの間隔が可撓性導管31の外径よりも少し大きくなるように配置されている。また、第2上アーム部12の切り欠き部16の奥壁部から奥側の第2ガイドローラ35までの間隔は、可撓性導管31の外径よりも少し大きい。このため、可撓性導管31を、切り欠き部16の奥壁部、上下の第1ガイドローラ33,34及び奥側の第2ガイドローラ35とで囲まれる空間(略正方形の空間)に配置することができる。そして、2本の第2ガイドローラ35,36は、所定の間隔をもって配置されている。
【0028】
図2及び
図3に示されるように、本実施例のロボット100の第2上アーム部12に引き回されるケーブル7は、第2上アーム部12の中空部15の貫通孔26を通って可撓性導管31に通され、さらにリスト18のフランジ部24の貫通孔25に通される主ケーブル7aと、中空部15の貫通孔26を通って、可撓性導管31に通されずに可撓性導管31の側方を通り、揺動駆動モータ27に接続される第2ケーブル7bと、同じく可撓性導管31に通されずに可撓性導管31の側方を通り、ガイド部32の2本のガイドローラ35,36との間を通って回転駆動モータ28に接続される第3ケーブル7cと、を備える。ここで、
図4に示されるように、第1(主)ケーブル7aは、複数本の第1ケーブル37(本実施例の場合、3本)、同じく信号線ケーブル38(本実施例の場合、4本)、同じく給排水及びエア供給のためのチューブ39(本実施例の場合、計7本)が1つに束ねられた形態である。第1ケーブル7aの外径がもっとも大きく、第2ケーブル(揺動駆動モータケーブル)7b、第3ケーブル(回転駆動モータケーブル)7cの外径は小さい。
【0029】
本実施例のロボット100の場合、揺動駆動モータ27は、ガイド部32よりも第2上アーム部12の中空部15に近い側に取り付けられている。このため、第2ケーブル7bは、ガイド部32を通ることなく直接に揺動駆動モータ27に接続されている。揺動駆動モータ27は第2上アーム部12に固定状態で取り付けられているため、第1ケーブル7bは第2上アーム部12と一体に動作する。これに対して回転駆動モータ28は、ガイド部32よりも遠い側(リスト18に近い側)に取り付けられている。このため、回転駆動モータケーブル7cは、ガイド部32における2本の第2ガイドローラ35,36の間を通って回転駆動モータ28に接続されている。リスト18は第5回動軸線19を中心に回動するため、回転駆動モータケーブル7cは所定のたるみ(余裕)をもって回転駆動モータ28に接続されている。
【0030】
リスト18が第5回動軸線19を中心に回動すると、第1ケーブル7aが引っ張られる。従来のロボットのように、ケーブルが上アーム9の周囲に引き回されている場合、リストの回動に伴いケーブルに不自然な力が作用してしまうため、ケーブルを損傷しやすい。これに対して、本実施例のロボット100の第1ケーブル7aは、第1上アーム部11からほぼ一直線の状態で配置されるため、リスト18の回動に伴って第1ケーブル7aに作用する引張り力は常に一定であり、第1ケーブル7aを損傷しにくい。しかも、第1ケーブル7aの周囲は中空部15、可撓性導管31によって覆われているため、第1ケーブル7aと周辺部材が接触することはなく、第1ケーブル7aの被覆が損傷することもない。また、第1ケーブル7aは第6回動軸線23と略同軸に配置されているため、リストのフランジ部24が第6回動軸線23を中心に回動したときの第1ケーブル7aのねじれは最小で済む。さらに、本実施例のロボット100は、リスト18に引き回される第1ケーブル7a(外径が大きなケーブル)のみを一直線状態で引き回し、揺動、回転駆動モータ27,28へ接続される外径の小さい第2ケーブル7b、回転駆動モータケーブル7cは、第1ケーブル7aと別に引き回している。これにより、第1ケーブル7aの外径が細くなり、その引回しが容易になるとともに、第1ケーブル7aが損傷しにくくなる。
【0031】
そして、本実施例のロボット100では、リスト18の回動に伴って力がかかる第1ケーブル7aと回転駆動モータ28の第3ケーブル7cはいずれも支持部材32によってガイドされ、かつ一定範囲内に規制されている。これにより、第1ケーブル7aと回転駆動モータ28の第3ケーブル7cが動作中のロボット100の振動等によりあばれることが防止される。
【0032】
ケーブル7を引き回すとき、最も外径が大きくなる第1ケーブル7aは一直線状に配置される。このため、第1ケーブル7aを曲げる手間が不要となり、第1ケーブル7aの引回し作業が容易である。また、第2、第3ケーブル7b,7cは細いため、曲げて引回す作業は容易である。
【0033】
また、第1ケーブル7aは、第2上アーム部12の貫通穴26と可撓性導管31に収容された状態となり、外部から視認されなくなる。このため、ロボット100の外観が良好である。
【0034】
本実施の形態のロボット100では、支持部材32を構成する第1ガイドローラ33,34と第2ガイドローラ35,36が一体に設けられている。これにより、省スペース化が図られる。しかし、第1ガイドローラ33,34と第2ガイドローラ35,36は別々に設けられていてもよい。
【0035】
支持部材32を構成する一対の第1ガイドローラ33,34は、可撓性導管31をガイドするためのものである。そして、支持部材32を構成する一対の第2ガイドローラ35,36は、回転駆動モータ28の第3ケーブル7cをガイドするものである。しかし、第3ケーブル7cを一対の第2ガイドローラ35,36の間を通さずに、支持部材32を構成する一対の第1ガイドローラ33,34の間に通す構成(即ち、ガイド部32をケーブルガイド部とする構成)としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
6 本体側アーム(下アーム)
7 ケーブル
7a 第1ケーブル(主ケーブル)
7b 第2ケーブル(揺動駆動モータケーブル)
7c 第3ケーブル(回動駆動モータケーブル)
9 アーム(上アーム)
15 中空部
16 切り欠き部
17 リスト配置部
18 リスト
19 軸直角方向揺動軸
26 リスト回動軸
27 揺動駆動モータ
28 回転駆動モータ
29 固定部材(ブラケット)
31 可撓性導管(コイルばね)
32 支持部材(ガイド部)
33、34 ローラ(第1ガイドローラ)
35,36 第2ガイドローラ
100 産業用ロボット