特許第6164009号(P6164009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164009
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   B25J19/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-201467(P2013-201467)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-66613(P2015-66613A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】七澤 幸二
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−028875(JP,A)
【文献】 特開2006−159372(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0158504(US,A1)
【文献】 特表2009−531189(JP,A)
【文献】 特開2002−086381(JP,A)
【文献】 特開2012−161903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部がロボット本体側に対して軸回り又は上下方向に回動自在に取り付けられ、他端部にリスト軸回り及び前記軸直角方向に回動自在なリストが取り付けられるアームを備え、前記アームの前記一端部側に設けられた中空部内に、前記ロボット本体側と前記リスト間を接続するケーブルが挿通された産業用ロボットであって、
前記中空部の前記一端側に前記ケーブルが挿通可能な開口部を有し、
前記ケーブルは、前記ケーブルの一端側が前記アームの基部に設けられた中継部材に接続され、
前記中継部材と前記開口部との間を一重あるいは多重に折り返して前記リスト側方向に前後動可能とした曲がり部と、
前記ケーブルを束ねる規制具と、前記中空部から前記リストに向かって挿通される他端部と、を有し、
前記規制具は前記開口部の開口より大きく、前記開口部に当接及び離接移動可能に設けられていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記規制具から他端部端までの長さは前記リストの動作によるケーブル必要長さより大きくされていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記規制具は前記ケーブルを挟んで分離・組立可能にされていることを特徴とする請求項1又は2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記規制具と前記開口部とが当接する位置で、前記規制具の中心軸と、前記開口部の中心軸とが一致するように前記規制具を誘導する誘導部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記規制具は円筒状であり、前記誘導部材は前記規制具の円筒状外周が摺接可能にされた断面U又はV又は凹字状の斜面を有することを特徴とする請求項4記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一端部がロボット本体に対して回動自在に取り付けられ、他端部に回動自在なリストが取り付けられたアーム内にケーブルを設けた産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な産業用ロボット(以下、単に「ロボット」と記載する。)は、ロボット本体と、ロボット本体に対して回動自在に取り付けられるアームと、アームに対して回動自在に取り付けられるとともに、エンドエフェクタが取り付けられるリストとを備える。アームやリストを回動させるための駆動手段(例えば、サーボモータ)に電源を供給する電源線や、エンドエフェクタに取り付けられたエアシリンダにエアを供給するためのエアチューブ等は1本の束にまとめられて(以下、この状態のものを「ケーブル」と記載する。)、ロボット本体の内部に収容されたり、外面部に固定されたりして引き回される。
【0003】
しかし、かかるケーブルをロボットの外部に引き回したものはロボットの回りのケーブル引き回し空間が大きくなる。また、外観も悪い。そこで、ケーブルをアーム内に納め、さらに可撓性導管内に納めて外観を改良した多数の出願がなされている。このものは、ケーブル等をアーム内に配置することにより、ケーブルの長さを短くし、アーム軸、リスト軸回転はねじれにより吸収し、リスト回転による変形量を少なくしている。また、アーム内に納めることでケーブルの軸直角方向の変形を阻止し、また、可撓性導管に通すことで、さらに変形を阻止している。さらに、特許文献1では、アーム内に設ける可撓性導管のリスト側をリストに固定し、本体アーム側をアーム軸方向に摺動(移動)可能に設け、ケーブルの引っ張り方向の力を逃がして、リスト(手首要素)が動作した場合に可撓性導管及びケーブルに無理な力が係らないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−28875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図8(a)に示すように、アーム11内の貫通孔(あるいは可撓性導管内)19にケーブル7を挿通させたものでは、ロボットのアームやリストの回動に伴い、ケーブル7が伸縮、ねじられたりする。この動作が何度も繰り返されると、図8の(b)に示されるように、ケーブル7がばらけてからみ合い、ばらけ状態のケーブル7の最大外径が貫通孔19の内径より大きくなるおそれがある。すると、ケーブル7が第1上アーム部11に衝突し、ケーブル7が損傷してしまうという問題があった。さらには、ばらけたケーブルが貫通孔に進入することができずに過度に引っ張られる。これによって、ケーブルの寿命が短くなってしまう。これを抑止するために、ケーブルに結束バンド等を巻き付けることにより、強制的に積層を保持することが考えられる。しかし、ロボットの動作により結束バンドが切断するおそれがあるため、ケーブルの可動部に結束バンドを巻き付けることは困難である。
【0006】
また、図9に示すように、アーム9を下向きにした場合、あるいはアーム9が水平に配置されている場合であってもロボットの旋回フレームが急速に回動(旋回)した場合に、ケーブル7の自重(遠心力)により、貫通孔19や可撓性導管(コイルスプリング)23内の下流側のケーブル7の湾曲部が貫通孔19や可撓性導管23内に引き込まれようとする。すると、ケーブル7の余長部7′が可撓性導管23の部分で滞留する。この状態でリスト15が回動すると、滞留状態のケーブル7の余長部7′が引っ張られたり、ねじられたりして、思いがけないトラブルが発生するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑み、他端にリストが設けられたアーム内にケーブルを挿通したロボットにおいて、ロボットの動作に伴うケーブルのばらけによる不具合の発生を防止した産業用ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、一端部がロボット本体側に対して軸回り又は上下方向に回動自在に取り付けられ、他端部にリスト軸回り及び前記軸直角方向に回動自在なリストが取り付けられるアームを備え、前記アームの前記一端部側に設けられた中空部内に、前記ロボット本体側と前記リスト間を接続するケーブルが挿通された産業用ロボットであって、前記中空部の前記一端側に前記ケーブルが挿通可能な開口部を有し、前記ケーブルは、前記ケーブルの一端側が前記アームの基部に設けられた中継部材に接続され、前記中継部材と前記開口部との間を一重あるいは多重に折り返して前記リスト側方向に前後動可能とした曲がり部と、前記ケーブルを束ねる規制具と、前記中空部から前記リストに向かって挿通される他端部と、を有し、前記規制具は前記開口部の開口より大きく、前記開口部に当接及び離接移動可能に設けられている産業用ロボットを提供することにより前述した課題を解決した。
【0009】
即ち、多数の電線、チューブ等のケーブルを規制具で束ねた状態で保持するとともに、開口部で規制具を通過不能とし、ロボットが動作してケーブルが軸方向に引っ張られたとき、規制具がアームの中空部(貫通孔)の開口部に当接し、それ以上ケーブルがリスト側に移動しないようにする。また、規制具近傍では、ケーブルは半径方向へ広がることがない。また、リスト、アームの動きによる伸縮量は一重あるいは多重に折り返した曲がり部で吸収する。なお、規制具よりリストよりの他端部は、結束バンドによりばらけ等を防止してもよいが、アームの貫通孔や可撓性導管に挿通させることにより、結束バンド等によらずケーブルのばらけを防止できる。
【0010】
また、請求項2記載の発明においては、前記規制具から他端部端までの長さは前記リストの動作によるケーブル必要長さより大きくされている産業用ロボットとした。規制具を適切な位置とすることにより、ケーブルの他端部の長さをいたずらに伸ばすことなく、ばらけ等によるケーブルの損傷を防止する。また、請求項3記載の発明においては、前記規制具は前記ケーブルを挟んで分離・組立可能とした。
【0011】
また、請求項4記載の発明においては、前記規制具と前記開口部とが当接する位置で、前記規制具の中心軸と、前記開口部の中心軸とが一致するように前記規制具を誘導する誘導部材を設けた。さらに、請求項5に記載の発明においては、前記規制具は円筒状であり、前記誘導部材は前記規制具の円筒状外周が摺接可能にされた断面U又はV又は凹字状の斜面を有するものとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、多数の電線、チューブ等のケーブルを規制具で束ね、ケーブルが軸方向に引っ張られたとき、規制具によりケーブルがリスト側に移動しないようにしたので、ロボットのリストが回動してケーブルが引っ張られても、開口部に進入することはない。また、ケーブルが必要以上に引っ張られることはない。また、規制具近傍では、ケーブルは半径方向へ広がることがないので、ケーブルが半径方向(ケーブルの軸直角方向)に広がること、即ち「ばらける」ことが防止される。そして、規制具よりも上流側(曲がり部)でケーブルがばらけたとしても、そのばらけた状態のケーブルが開口部に進入することが防止される。また、ケーブルの余長部が可撓性導管等の部分で滞留することがない。あるいは、滞留量が少ないので、ねじれや引っ張りによるケーブルや可撓性導管等の部品の破損が少ない。
【0013】
また、請求項2記載の発明においては、規制具から他端部端までの長さはリストの動作によるケーブル必要長さより大きくしたので、ケーブルが最大に引っ張られても、規制具が開口部に衝突することはなく、ケーブルに過度の引張り力が作用することはない。
【0014】
さらに、請求項3記載の発明においては、規制具はケーブルを挟んで分離・組立可能とした。例えば、規制具は、ケーブルを挟み込んで固定する一対の半割りリング体とすることができる。そして、その半割りリング体は、組み合わされた状態で円筒形状を成し、その外径は開口部の開口よりも大とすることができる。これにより、規制具を後付けで(例えば、ケーブルを引き回した後で)取り付けることができる。そして、この規制具は、組み合わされた状態で円筒形状を成すことが望ましい。これにより、規制具の上下左右が問題にならなくなるため、組付けが容易である。更に、規制具の外径を開口部の開口よりも大きくすることで、規制具が開口部に進入することを防止できる。
【0015】
さらに、請求項4記載の発明においては、規制具と開口部の中心軸とを一致するように規制具を誘導する誘導部材を設けるので、規制具の動作がケーブルの軸方向だけに限定され、ケーブルの半径方向に動作しなくなる。この結果、ケーブルの挙動がより安定する。また、請求項5に記載の発明においては、規制具を円筒状とし、誘導部材を規制具の円筒状外周が摺接可能にされた断面U又はV又は凹字状の斜面としたので、規制具が開口部から遠い部分では、自由に曲げられ無理な力がかからない。規制具が開口部に近づくに従って、斜面に沿って規制具がケーブルの半径方向(ケーブルの軸直角方向)に移動して開口部と規制部の中心軸が一致した位置で規制具と開口部とが当接する。また、当接部は片当たりが少なく常に一定の当たりとなり、衝撃も少なく、安定した動作となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態を示す産業用ロボットの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態を示す産業用ロボットの平面図である。
図3】要部左側面図である。
図4】本発明の実施の形態を示す産業用ロボットのケーブルの中継部、曲がり部、開口部近傍の斜視図である。
図5】本発明の実施の形態を示す産業用ロボットの要部右側面透視図である。
図6】本発明の実施の形態を示す産業用ロボットの動作を示す(a)は開口部と規制具とが離隔した状態、(b)は、開口部と規制具とが当接した状態を示す説明図である。
図7】本発明の他の実施の形態を示す上アームが下方に向かって鉛直に配置された産業用ロボットの左側面図である。
図8】従来の産業用ロボットの動作を示す(a)はケーブルが良好な状態、(b)は、ケーブルがばらけた状態を示す説明図である。
図9】従来の産業用ロボットのアームのリスト側を下向きにした状態における一部を破断した要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明の実施の形態を示す産業用ロボット100(溶接ロボット)の全体構成について説明する。図1及び図2に示されるように、例えば床面等の設置面に設置されるベース1にフレーム2が載置されている。このフレーム2は、ベース1の上面に配置される基板部3と、基板部3から起立する起立板部4とを備える。また、基板部3の上面には、フレーム2の全体を水平面内(床面と平行な面内)で回動させるためのモータ(図示せず)が取り付けられている。モータのモータ軸を所定方向に回転させることにより、フレーム2は床面に垂直に設けられた第1回動軸線5を中心に回動する。
【0018】
フレーム2の起立板部4に、下アーム6の下端部が片持ち状態で取り付けられている。下アーム6の側部には、ベース2から引き回されるケーブル7(詳細は後述する。)が配置される。下アーム6は、フレーム2の起立板部4に支持されて、第2回動軸線8を中心に回動自在である。
【0019】
下アーム6の上端部に、上アーム9が片持ち状態で取り付けられている。上アーム9は、下アーム6と連結される第1上アーム部11と、第1上アーム部11の一端部から延設される第2上アーム部12とを備える。第1上アーム9部11は、下アーム6に連結された状態で、第3回動軸線13を中心に回動する。そして、第2上アーム部12は、第1上アーム部11に対して、第4回動軸線14を中心に回動自在である。
【0020】
図1及び図2に示されるように、第2上アーム部12の前端部には、片持ち状態でリスト15が取り付けられている。リスト15は第5回動軸線16を中心に、第2上アーム部12に対して回動自在である。また、リスト15の先端部には、エンドエフェクタ取付部17が取り付けられている。エンドエフェクタ取付部17は、第6回動軸線18を中心に、リスト15に対して回動自在である。
【0021】
第2上アーム部12の後半部(第1上アーム部11の側)は中空部を形成し円筒形状となっていて、第2上アーム部12を長手方向に沿って貫通する貫通孔19が設けられている。貫通孔19は、円孔、角孔のいずれであってもよい。ベース1から下アーム6の側部を通って第1上アーム部11に引き回されたケーブル7は、中継部材26、27に一度中継され、さらに曲がり部7aを形成して、第2上アーム部12の貫通孔19を通ってリスト15に引き回される。また、第2上アーム部12の前半部の側部は切除されていて、この切除された部分にリスト15を回動(揺動)させるためのモータ21と、エンドエフェクタ取付部17を回動させるためのモータ22とが配置されている。また、貫通孔19の延長線上には、貫通孔19を通って引き回されたケーブル7を通すとともに、貫通孔19の出口部からリスト15までの空間部を案内するための可撓性導管(ガイドスプリング)23が取り付けられている。
【0022】
前述したように、本実施例のロボット100は、第1ないし第6の回動軸線5,8,13,14,16,18が設けられた6軸の多関節ロボットである。ロボット100のケーブル7は、ロボット100の外部からベース1内に引き込まれ、フレーム2で立ち上がり、下アーム6の側部、第1上アーム部11の上部(基部)に設けられた中継部材26,27、曲がり部7a、第2上アーム部12の貫通孔19から可撓性導管(ガイドスプリング)23及びリスト15を通って、エンドエフェクタ取付部17に引き回される。
【0023】
図1に示されるように、ベース1から下アーム6の側部を通って立ち上がるケーブル7は、電線24とチューブ25に分岐する。電線24は中継ボックス(中継部材)26に進入し、チューブ25は中継コネクタ(中継部材)27に連結される。そして、図3及び図4に示されるように、中継ボックス26から突出された電線24aと、中継コネクタ27を介して各チューブ25に接続されたチューブ25aは、サドル28の部分で集合し、再び一体化する。
【0024】
図4及び図5に示されるように、サドル28よりも下流側に配置されるケーブル7aは、所定の曲率をもって曲げられながら、曲がり部7aを形成し、下方に下ろされ、第1上アーム部11の貫通孔19に挿通される。そして、図1及び図2に示されるように、下流側のケーブルの他端部7bは、そのまま貫通孔19を通過し、ガイドスプリング23及びリスト15を通って、エンドエフェクタ取付部17に引き回される。
【0025】
図4及び図5に示されるように、第1上アーム部11の端面部には、ケーブル7aを支持する誘導部材(ブラケット)29が取り付けられている。このブラケット29は、上面が開放されていて、両側の壁部29a,29bが下面に向かうにつれて徐々に狭くなる形状、即ち断面視において略V字状、あるいは斜め凹(皿)状となっている。なお、図3においてはブラケット29の図示は省略している。
【0026】
図4及び図5に示されるように、ケーブル7aには、第1上アーム部11の貫通孔19の入口の開口部11aの直前で、規制具31が取り付けられている。規制具31は一対の半割りリング体となっている。この規制具(半割りリング体)31は、ケーブル7aの外径よりも少し小さい内径を有する円筒体を半径方向で2分割し、それらを一体に連結したものである。半割りリング体31の外径は、第1上アーム部11の貫通孔19の開口部11aの開口よりも少し大きい。このため、規制具31が開口部11aから貫通孔19に進入することはない。規制具31の外径は誘導部材(ブラケット)29の両側の壁部29aの傾斜角度に対応しており、規制具31がブラケット29の底部29bに接触した状態で、規制具31の外周面(側面)とブラケット29の両壁部29aの内面との間に僅かな隙間ができる。このため、規制具31は、外周面をブラケット29の壁部29aに規制されながらその軸方向に移動可能である。換言すれば、ブラケット29により、規制具31がケーブル7aの半径方向(軸直角方向)に移動することが規制されている。また、開口部11aと規制具31の中心が一致するようにされる。
【0027】
規制具(半割りリング体)31の軸方向の中央部には、全周に亘って溝部31aが形成されている。この半割りリング体31は、ケーブル7aを挟み込んだ状態でその溝部31aに巻回された結束バンド(図示せず)を締め込むことにより一体に固定される。規制具(半割りリング体)31は半割り形状となっているため、ケーブル7の引き回しが終了した後であってもケーブル7に組み込むことができるという利点を有する。本実施例では、半割りリング体31を結束バンドで連結しているが、ボルト(図示せず)で連結してもよい。
【0028】
曲がり部のケーブル7aは規制部31に支持されているため、ケーブル7aとブラケット29の底部29bとが直接的に接触することはない。この結果、ケーブル7aとブラケット29とが擦れて、曲がり部のケーブル7aを損傷することが防止される。
【0029】
かかるケーブル7の動作について説明する。図7の(a)に示されるように、ケーブル7aに規制具(半割りリング体)31が取り付けられているため、ロボット100の動作に伴ってケーブル7bが伸縮しても、少なくとも第1上アーム部11の開口部11aと規制具31の対向端面との間では距離がないので、貫通ケーブル7aがばらけるおそれはない。もし、規制具31の反対側の端面とサドル28との間の曲がり部のケーブル7aがばらけたとしても、この部分が貫通孔19に進入することはないため、問題は生じない。
【0030】
ここで、第1上アーム部11における貫通孔19の開口部(入口部)11aから規制具31の対向端面までの距離Lは、リスト15が回動することによってケーブル7bを引っ張る長さよりも長い位置となるようにすることが望ましい。これにより、ケーブル7bが最大に引っ張られた場合にも、規制具31の対向端面と開口部11aとが衝突することが回避され、衝突音が発生しない。
【0031】
次に本発明の他の実施の形態について説明する。他の実施の形態は、図8に示されるように、ロボット100の下アーム6が第2回動軸線8を中心に回動し、上アーム9が鉛直に配置されたものである。他の実施の形態においては、規制具31が第1上アーム部11の貫通孔19の開口部11aに当接し、曲がり部のケーブル7aが貫通孔19に引き込まれるのを防止している。このため、図8に示されるように、サドル28よりも下流側の曲がり部のケーブル7aは、そのままの状態で保持されるため、可撓性導管23内の部分にケーブルの他端(余長)部7bが滞留することはなく、ケーブルの損傷やアームの異常の発生を防止する。また、アーム9が鉛直に配置された場合の他、上アーム9が水平に配置されている場合、ロボット100のフレーム2が急速に回動(旋回)した場合にも同様な効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0032】
6 下アーム(ロボット本体側)
7 ケーブル
7a 曲がり部(のケーブル)
7b (ケーブルの)他端部
9 (上)アーム
11 一端部(アームの基部)
11a 開口部
12 中空部
15 リスト
16 軸直角方向
18 リスト軸回
26、27 中継部材
29 誘導部材(ブラケット)
31 規制具(半割りリング体)
100 産業用ロボット
L 規制具と開口部の対向端面の距離


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9