特許第6164013号(P6164013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164013
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20170710BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F24F13/06 A
   F24F13/14 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-203314(P2013-203314)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-68566(P2015-68566A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】上野 慎太郎
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−000540(JP,U)
【文献】 実開平04−014936(JP,U)
【文献】 特開2011−021878(JP,A)
【文献】 特開2010−117068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、同筐体の上部に吸込口を、下部に吹出口を設け、前記吸込口と前記吹出口を結ぶ送風路に送風ファンと熱交換器と、前記吸込口から吸い込まれ前記吹出口から吹き出される空気の風向を偏向する上下風向板とを備えた空気調和機において、前記吹出口は、前記筐体の底面側よりも上方に位置し、前記吹出口の周縁部から少なくとも前後にそれぞれ下方へ広がる傾斜面を備え、前記上下風向板は駆動機構により前記送風路から吊り下げられるように配置されるとともに、前記空気調和機の運転停止時に前記吹出口を覆うように近接し、運転時には前後方向へ回動することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記上下風向板は、前記空気調和機の運転停止時に、少なくとも前後に前記傾斜面に平行な風向板傾斜部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機に係り、特に吹出口と風向板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、室内の壁面に取り付けられる空気調和機の室内機は、設置する室内空間に調和するデザインが好まれている。そのため、本体色には、室内の壁紙に多く使われている白色やベージュ色などの明度の高い色が採用されている。また、形態においては、吸込口や吹出口による凹凸や部品の間に生じる隙間が目立たないように、図6に示すように室内機90の前面をフラット形状の開閉パネル91で覆い隠している。これにより、使用者には室内空間に色彩と形態が調和しているように視認され美観の向上がなされている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−083034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空気調和機が運転を開始すると、室内機90の開閉パネル91は図示しない開閉パネル用の駆動装置により上方または前方へ可動する。これにより、開閉パネル91で隠されていた吸込口92や吹出口93が現れる。特に吹出口93は上下風向板94も可動することで、吹出口93より奥に配置されている左右風向板95や上下風向板94の支軸96等が現れ非常に乱雑な印象を与える。また吹出口93は使用者が見上げた場合によく見える室内機90の前面下部に配置されていることで、室内機90の外観の印象を悪くさせていた。
【0005】
本発明は以上述べた問題点を解決し、運転停止時には吹出口と風向板が使用者から視認されず、また運転時においても、吹出口内部が視認されづらくなることで美観の向上を図る空気調和機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、筐体と、同筐体の上部に吸込口を、下部に吹出口を設け、前記吸込口と前記吹出口を結ぶ送風路に送風ファンと熱交換器と、前記吸込口から吸い込まれ前記吹出口から吹き出される空気の風向を偏向する上下風向板とを備えた空気調和機において、前記吹出口は、前記筐体の底面側よりも上方に位置し、前記吹出口の周縁部から少なくとも前後にそれぞれ下方へ広がる傾斜面を備え、前記上下風向板は駆動機構により前記送風路から吊り下げられるように配置されるとともに、前記空気調和機の運転停止時に前記吹出口を覆うように近接し、運転時には前後方向へ回動することを特徴とする。
【0008】
さらに、前記上下風向板は、前記空気調和機の運転停止時に、少なくとも前後に前記傾斜面に平行な風向板傾斜部を備えた態様も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明の空気調和機は、吹出口と風向板が筐体の底面側よりも上方に位置し、運転停止時に吹出口を上下風向板で覆うことで、吹出口と風向板が使用者から視認されない。また運転時においても、吹出口内部が視認されづらくなることで美観の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による空気調和機の室内機の運転停止時の外観図である。
図2】本発明による空気調和機の室内機の運転時の外観図である。
図3】本発明による空気調和機の室内機の縦断面図であり、(a)は運転停止状態を示す図で、(b)は上下風向板の移動を説明する図である。
図4】本発明による空気調和機の室内機の冷房運転状態を示す図であり、(a)は第1例の上下風向板の位置を示す縦断面図で、(b)は第2例の上下風向板の位置を示す縦断面図で、(c)は正面から冷気が吹出されたイメージ図である。
図5】本発明による空気調和機の室内機の暖房運転状態を示す図であり、(a)は第3例の上下風向板の位置を示す縦断面図で、(b)は第4例の上下風向板の位置を示す縦断面図で、(c)は正面から暖気が吹出されたイメージ図である。
図6】従来例による空気調和機の室内機の外観図で、(a)は運転停止時の図で、(b)は運転時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明に係わる空気調和機は、屋外に設置される室外機(図示なし)と、空調室内に設置される室内機1とが冷媒配管を介して接続されて冷凍サイクルを構成する。図1は空調室の天井T近くの壁面Kに取り付けられた運転停止時の室内機1の外観図であり、図2は運転時の室内機1の外観図であり、図3は室内機の縦断面図である。室内機1は、横長の直方体状に形成された筐体10を有する。また、室内機1は、横長の直方体状に限定はされず、底面の外周縁部が水平面上に位置すれば、いかなる形でもよい。
【0013】
なお、図1において室内機1の壁面K側にある面を背面とし、その対面を前面とし、天井T側にある面を天面とし、天面の対面を底面とし、図1の右側の側面を右側面とし、右側面の対面を左側面として以下説明する。また、内部部品についても同様に説明する。
【0014】
筐体10の前面と左右側面と天面は、前面パネル11と背面パネル12で覆われる。前面パネル11と背面パネル12は筐体10の右側面と左側面の中央を通る分割線で前後に分割される。前面パネル11と背面パネル12の天面(上部)は開口部を備え、これが吸込口14となる。
また、筐体10は背面パネル12を備えず前面パネル11が奥行のある箱状で壁面K近傍まで形成する構成でもよい。
【0015】
筐体10の底面は、底面パネル20で覆われるが、これに限らず、底面パネル20を用いずに後述するケーシング30が筐体10の底面まで形成する構成でもよく、また、前面パネル11と背面パネル12がそれぞれ底面パネル20まで兼ねる構成でもよい。
底面パネル20は、筐体10の長手方向に平行な横長矩形状の吹出口16を備える。吹出口16は運転停止時に後述する上下風向板40で覆われて隠される。
【0016】
前面パネル11は平面状の前面と左右角隅に曲面を備え、下端の底面パネル20との合わせ目を覆う飾り板15を備える。室内機1の運転時には飾り板15の前面右隅が複数箇所発光する。これが運転状態を知らせる表示部151となる。
【0017】
筐体10の内部には、図3に示すように筐体10の長手方向と平行に配置されたクロスフローファン型の送風ファン17と、送風ファン17の周囲を囲む2段の前方熱交換器181と後方熱交換器182とからなる熱交換器18とを備える。熱交換器18と吸込口14の間にはフィルタ13を備える。また、吸込口14と吹出口16を結ぶ送風路19の送風ファン17から吹出口16までを形成するケーシング30を備える。送風ファン17は筐体10内の右側で図示しないファンモータに軸支される。ファンモータと熱交換器18はケーシング30に支持される。ケーシング30は、送風ファン17に空気を導く背面側のリアガイダ311から吹出口16までを結ぶ下壁31と、送風ファン17に空気を導く前面側のスタビライザ321から吹出口16までを結ぶ上壁32とで送風路19の一部を形成する。上壁32は前方熱交換器181のドレンパン322を兼ね、下壁31のリアガイダ311から背面側に延出する壁が後方熱交換器182のドレンパン312となる。
【0018】
送風ファン17と吹出口16の間の送風路19内には左右風向板50が設けられる。左右風向板50は送風ファン17の軸方向に対し垂直方向に平行に複数配置され、左右風向板50の前方を駆動軸(図示なし)に軸支され、左右風向板50の後方を下壁31に軸支される。駆動軸(図示なし)が左右へ移動することで左右風向板50の前方が移動して、吹出口16から吹き出される空気の流れを左右方向に偏向する。
【0019】
室内機10は図示しないファンモータにより送風ファン17が回転することで吸込口16から取り入れられた室内空気を、熱交換器18で冷媒と熱交換して冷気Cまたは暖気Wに換え、左右風向板50と後述する上下風向板40で風向調整をして吹出口16から空調室に吹き出す。
【0020】
底面パネル20は図3において底面の下端の外周縁部201から高さh1上方の位置に前述した吹出口16を備える。吹出口16の周囲には、吹出口16の周縁部161から下方へ広がる傾斜面21を備える。傾斜面21は平面状の前スロープ211と後スロープ212と図1に示す右スロープ213と左スロープ214と、これらを繋ぐ四方の角部とからなる。また少なくとも傾斜面21は、前スロープ211と後スロープ212だけでもよい。また、傾斜面21は平面状ではなく、用途に合わせ曲面状に形成されてもよい。
図1図3において傾斜面21は、底面パネル20の下端の外周縁部201と連結しているが、これに限らず底面パネル20の底面に水平面を設け、水平面上に凹部を設け、凹部の周囲が傾斜面21となる構成でもよい。
【0021】
図3において吹出口16の下方で底面の下端の外周縁部201から高さh2で少なくとも傾斜面21の前スロープ211と後スロープ212にそれぞれ近接する位置に上下風向板40が配置される。上下風向板40は平板形状であるが、これに限らず前後方向で下方へ膨出させた断面円弧形状でもよい。また、図3では上下風向板40は配置された状態で前後が水平であるが、これに限らず前方または後方へ傾斜した形状でもよい。上下風向板40の奥行方向の幅d2は吹出口16の奥行方向の幅d1よりも大きく、上下風向板40は少なくとも前後に傾斜面21の前スロープ211と後スロープ212にそれぞれ平行な風向板傾斜部41を備える。
また図示はしないが、上下風向板40は傾斜面21の右スロープ213と左スロープ214にそれぞれ近接する位置に配置され、右スロープ213と左スロープ214にそれぞれ平行な風向板傾斜部41を備える。
【0022】
空気調和機の運転停止時には、上下風向板40は吹出口16の周縁部161を覆うように近接させて位置することにより、吹出口16は外部から見えなくなる。また、上下風向板40の周囲は傾斜面21に合わせ傾斜していることから傾斜面21との隙間が小さく目立たなくなり、これにより空気調和機の使用者には吹出口16が視認されなくなるとともに、一見すると傾斜面21と上下風向板40は別部品ではなく一体であるように見える。これにより、外観の印象がよくなり美観が向上される。
【0023】
次に上下風向板40の駆動機構4について説明する。駆動機構4は、上壁32から下方に向かって突設されるアーム支持部42と、アーム支持部42の内部に収納されるアーム43と、ドレンパン322の下でアーム支持部42の対面に設けた駆動装置44とからなる。
上下風向板40は吹出口16側の面に2か所アーム受部45を備える。アーム43は上下風向板側の先端に回転軸431を備え、回転軸431をアーム受部45に軸支させる。これにより図3(b)に示すように駆動装置44がアーム支持部42の内部に収納されるアーム43を上下に移動させることで、上下風向板40は上下に移動可能となる。また、アーム支持部42内には風向変更ワイヤー(図示なし)も収納し、風向変更ワイヤーで上下風向板40の前後の角度を回動させることができる。
尚、駆動機構4はこれに限らずダンパーを使った機構でもよく、さらにアーム43ではなくワイヤーだけを使った機構でも可能である。この場合は、ワイヤーがアームよりも細く見えにくくなることから、運転時も吹出口16から上下風向板40を吊っているものが見えず、上下風向板40が宙に浮いているように見え、さらに美観が向上する。
また、アーム支持部42は上壁32から突設されるとしたが、これに限らず下壁31から突設されてもよいし、また上壁32と下壁31を連結して設けてもよい。
【0024】
次に冷房運転状態について図4を基に説明する。冷房運転が開始されると、上下風向板40は駆動機構4によってアーム43が降下し底面パネル20の外周縁部201近傍まで下がる。図4(a)(c)では上下風向板40は水平状態である。冷気C1はケーシング30の上壁32と底面パネル20の前スロープ211に沿って前方に導かれる。また、後スロープ212によって壁面Kに向かっても冷気C2が吹出され、壁面Kに沿って壁面Kを冷やし部屋全体を冷房する。さらに上下風向板40はアーム43によって吊下げられた状態であることから、右側方と左側方にも冷気C4が吹き出される。
部屋全体が冷房されると、図4(b)に示すように、上下風向板40は若干前方が下方へ傾斜するように駆動機構4によって回動する。冷気C3は前方に遠くまで吹き出される。
【0025】
次に暖房運転状態について図5を基に説明する。暖房運転が開始されると、上下風向板40は駆動機構4によって底面パネル20の外周縁部201よりも下の位置まで下降される。図5(a)(c)では上下風向板40は水平状態である。吹き出される口は冷房運転状態よりも開口されていることから、暖気W1はケーシング30の上壁32と底面パネル20の前スロープ211に沿って冷気C1よりも下方に導かれる。また、後スロープ212によって壁面Kに向かっても暖気W2が吹出されるが、やはり冷気C2よりも下に吹出され、壁面Kに沿って壁面Kを温め部屋全体を暖房する。さらに上下風向板40はアーム43によって吊下げられた状態であることから、右側方と左側方にも暖気W4が吹き出される。
部屋全体が暖房されると、図5(b)に示すように、上下風向板40は冷房運転時に比べ前方が大きく下方へ傾斜するように駆動機構4によって回動する。上下風向板40はケーシング30の上壁32と平行になる位置まで回動し、上下風向板40の後端は吹出口16の周縁部161と連なる位置まで上がる。これにより、送風路10が延長した状態となり、暖気W3は下方に吹き出される。
【0026】
図4(a)の冷房運転状態および図5(a)暖房運転状態のいずれも使用者の位置からは吹出口16は上下風向板40により隠されているように見え、図2のように内部までは視認されにくくなる。また、同様に図4(b)の冷房運転状態および図5(b)暖房運転状態においても、吹出口16自体が筐体10の奥側に位置し、且つ左右風向板50が吹出口16よりもさらに奥まった位置にあることから、吹出口16の内部までは視認されにくくなる。
【0027】
以上の構成により、室内機1の運転停止時には、上下風向板40は吹出口16を覆い隠すように位置することにより、吹出口16は見えなくなる。さらに、上下風向板40の周囲は傾斜面21に合わせ傾斜していることから傾斜面21との隙間が小さく目立たなくなり、これにより空気調和機の使用者には吹出口16が視認されなくなるとともに、傾斜面21と上下風向板40は別部品ではなく一体であるように見え、美観が向上される。
また、室内機1は、運転時においても吹出口16が筐体10の奥側に位置することから、吹出口16の内部までは視認されにくくなり、美観の向上が図れる。
さらに、従来例のように運転時において開閉パネルを可動しなくても美観を維持でき、さらに大型部品である開閉パネル用の駆動装置も必要としないことでコストの削減にもなる。
【符号の説明】
【0028】
1:室内機、10:筐体、11:前面パネル、12:背面パネル、14:吸込口、15:飾り板、16:吹出口、161:周縁部、17:送風ファン、18:熱交換器、19:送風路
20:底面パネル、201:外周縁部、21:傾斜面
30:ケーシング、31:下壁、32:上壁
4:駆動機構、40:上下風向板、41:風向板傾斜部、42:アーム支持部、43:アーム、431:回転軸、44:駆動装置、45:アーム受部
K:壁面、T:天井、C1・C2・C3・C4:冷気、W1・W2・W3・W4:暖気
図1
図2
図3
図4
図5
図6