特許第6164024号(P6164024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164024
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/20 20060101AFI20170710BHJP
   H04N 1/409 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   G06T5/20
   H04N1/40 101D
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-209992(P2013-209992)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-75813(P2015-75813A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118108
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 洋之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信
【審査官】 佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−068252(JP,A)
【文献】 特開2012−141812(JP,A)
【文献】 特開2002−359780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 5/20
H04N 1/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像と、当該原画像の画質に影響を与える特定の成分の強調度合いを表す強調度合い情報であって第1の強調度合いが設定された強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の当該特定の成分が当該第1の強調度合いで強調されるように再現された第1の再現画像を生成する第1の再現画像生成手段と、
前記第1の再現画像の画質を表す第1の画質量を取得する第1の画質量取得手段と、
前記原画像の画質を表す第2の画質量を取得する第2の画質量取得手段と、
前記第1の画質量と、前記第2の画質量と、前記第1の強調度合いとに基づいて、前記強調度合い情報に設定された強調度合いと、前記原画像の前記特定の成分が当該強調度合いで強調されるように再現された再現画像の画質を表す画質量とを対応付けた当該原画像の画質特性を取得する画質特性取得手段と、
前記画質特性と、指定された画質を表す指定画質量とに基づいて、前記再現画像の画質を表す画質量が当該指定画質量となるために前記強調度合い情報に設定すべき第2の強調度合いを取得する強調度合い取得手段と、
前記原画像と、前記第2の強調度合いが設定された前記強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の前記特定の成分が当該第2の強調度合いで強調されるように再現された第2の再現画像を生成する第2の再現画像生成手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画質特性取得手段は、前記強調度合いと前記画質量とを線形関数で対応付けた前記画質特性を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の再現画像生成手段は、他の第1の強調度合いが設定された前記強調度合い情報に基づいて、前記原画像の前記特定の成分が当該他の第1の強調度合いで強調されるように再現された他の第1の再現画像を更に生成し、
前記第1の画質量取得手段は、前記他の第1の再現画像の画質を表す他の第1の画質量を更に取得し、
前記画質特性取得手段は、前記他の第1の画質量と、前記他の第1の強調度合いとに更に基づいて、前記画質特性を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画質特性取得手段は、前記強調度合いと前記画質量とを非線形関数で対応付けた前記画質特性を取得することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画質特性取得手段は、前記強調度合いと前記画質量とを単調増加関数及び単調減少関数の何れかで対応付けた前記画質特性を取得することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の再現画像生成手段及び前記第2の再現画像生成手段は、それぞれ、前記原画像の輝度、色度、明暗差及び周波数の少なくとも1つに関係する強調が行われた前記第1の再現画像及び前記第2の再現画像を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
原画像と、当該原画像の画質に影響を与える特定の成分の強調度合いを表す強調度合い情報であって第1の強調度合いが設定された強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の当該特定の成分が当該第1の強調度合いで強調されるように再現された第1の再現画像を生成する機能と、
前記第1の再現画像の画質を表す第1の画質量を取得する機能と、
前記原画像の画質を表す第2の画質量を取得する機能と、
前記第1の画質量と、前記第2の画質量と、前記第1の強調度合いとに基づいて、前記強調度合い情報に設定された強調度合いと、前記原画像の前記特定の成分が当該強調度合いで強調されるように再現された再現画像の画質を表す画質量とを対応付けた当該原画像の画質特性を取得する機能と、
前記画質特性と、指定された画質を表す指定画質量とに基づいて、前記再現画像の画質を表す画質量が当該指定画質量となるために前記強調度合い情報に設定すべき第2の強調度合いを取得する機能と、
前記原画像と、前記第2の強調度合いが設定された前記強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の前記特定の成分が当該第2の強調度合いで強調されるように再現された第2の再現画像を生成する機能と
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象画像の被写体領域の画質(鮮鋭度)を評価し、対象画像の高周波成分を取得し、画質の評価結果に基づいて高周波成分を変換し、変換後の高周波成分に基づいて対象画像の処理後画像を取得する画像処理装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
入力画像の輝度信号に対して階調補正を行い、入力画像の輝度信号と階調補正後の輝度信号とから輝度信号変化率を算出し、輝度信号変化率を用いて入力画像の色差信号を補正する際に、先行する入力画像に対して行なった補正結果を所定の基準にしたがって評価した評価結果に応じて、階調補正の量を制御し、輝度信号変化率を修正して色差信号の補正に用いる画像処理装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
最小のコントラスト・明度積と、別個の存在として最小のコントラスト及び明度との制約の結合が「視覚的に良好」という範囲を規定し、更に、「視覚的に理想的」と考えられる、より高いコントラスト・明度積の輪郭が存在し得ることも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−359780号公報
【特許文献2】特開2012−10227号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Daniel J. Jobson, Zia-ur Rahman and Glenn A. Woodell, 「The Statistics of Visual Representation」, Visual Information Processing XI, Proc. SPIE, vol.4736,pp.25-35,July 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、画像の画質に影響を与える特定の成分を強調する際に、画像の画質を指定された画質に近付けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、原画像と、当該原画像の画質に影響を与える特定の成分の強調度合いを表す強調度合い情報であって第1の強調度合いが設定された強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の当該特定の成分が当該第1の強調度合いで強調されるように再現された第1の再現画像を生成する第1の再現画像生成手段と、前記第1の再現画像の画質を表す第1の画質量を取得する第1の画質量取得手段と、前記原画像の画質を表す第2の画質量を取得する第2の画質量取得手段と、前記第1の画質量と、前記第2の画質量と、前記第1の強調度合いとに基づいて、前記強調度合い情報に設定された強調度合いと、前記原画像の前記特定の成分が当該強調度合いで強調されるように再現された再現画像の画質を表す画質量とを対応付けた当該原画像の画質特性を取得する画質特性取得手段と、前記画質特性と、指定された画質を表す指定画質量とに基づいて、前記再現画像の画質を表す画質量が当該指定画質量となるために前記強調度合い情報に設定すべき第2の強調度合いを取得する強調度合い取得手段と、前記原画像と、前記第2の強調度合いが設定された前記強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の前記特定の成分が当該第2の強調度合いで強調されるように再現された第2の再現画像を生成する第2の再現画像生成手段とを備えることを特徴とする画像処理装置である。
請求項2に記載の発明は、前記画質特性取得手段は、前記強調度合いと前記画質量とを線形関数で対応付けた前記画質特性を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第1の再現画像生成手段は、他の第1の強調度合いが設定された前記強調度合い情報に基づいて、前記原画像の前記特定の成分が当該他の第1の強調度合いで強調されるように再現された他の第1の再現画像を更に生成し、前記第1の画質量取得手段は、前記他の第1の再現画像の画質を表す他の第1の画質量を更に取得し、前記画質特性取得手段は、前記他の第1の画質量と、前記他の第1の強調度合いとに更に基づいて、前記画質特性を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項4に記載の発明は、前記画質特性取得手段は、前記強調度合いと前記画質量とを非線形関数で対応付けた前記画質特性を取得することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置である。
請求項5に記載の発明は、前記画質特性取得手段は、前記強調度合いと前記画質量とを単調増加関数及び単調減少関数の何れかで対応付けた前記画質特性を取得することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像処理装置である。
請求項6に記載の発明は、前記第1の再現画像生成手段及び前記第2の再現画像生成手段は、それぞれ、前記原画像の輝度、色度、明暗差及び周波数の少なくとも1つに関係する強調が行われた前記第1の再現画像及び前記第2の再現画像を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像処理装置である。
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、原画像と、当該原画像の画質に影響を与える特定の成分の強調度合いを表す強調度合い情報であって第1の強調度合いが設定された強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の当該特定の成分が当該第1の強調度合いで強調されるように再現された第1の再現画像を生成する機能と、前記第1の再現画像の画質を表す第1の画質量を取得する機能と、前記原画像の画質を表す第2の画質量を取得する機能と、前記第1の画質量と、前記第2の画質量と、前記第1の強調度合いとに基づいて、前記強調度合い情報に設定された強調度合いと、前記原画像の前記特定の成分が当該強調度合いで強調されるように再現された再現画像の画質を表す画質量とを対応付けた当該原画像の画質特性を取得する機能と、前記画質特性と、指定された画質を表す指定画質量とに基づいて、前記再現画像の画質を表す画質量が当該指定画質量となるために前記強調度合い情報に設定すべき第2の強調度合いを取得する機能と、前記原画像と、前記第2の強調度合いが設定された前記強調度合い情報とに基づいて、当該原画像の前記特定の成分が当該第2の強調度合いで強調されるように再現された第2の再現画像を生成する機能とを実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、画像の画質に影響を与える特定の成分を強調する際に、画像の画質を指定された画質に近付けることができる。
請求項2の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、画像の画質を指定された画質に近付けるための強調度合いを簡単に求めることができる。
請求項3の発明によれば、画像の画質に影響を与える特定の成分を強調する際に、画像の画質を指定された画質により一層近付けることができる。
請求項4の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、画像の画質を指定された画質に近付けるための強調度合いを正確に求めることができる。
請求項5の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、画像の画質を指定された画質に近付けるために用いる強調度合いを容易に1つに決定することができる。
請求項6の発明によれば、画像の輝度、色度、明暗差及び周波数の少なくとも1つに関係する強調を行う際に、画像の画質を指定された画質に近付けることができる。
請求項7の発明によれば、画像の画質に影響を与える特定の成分を強調する際に、画像の画質を指定された画質に近付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態における画像処理装置の機能構成例を示したブロック図である。
図2】再現パラメータαが最大値に近付くにつれて画質量Qが収束する場合のαとQとの関係を示した図である。
図3】再現パラメータαが最大値に近付くにつれて画質量Qが低下する場合のαとQとの関係を示した図である。
図4】画質予測パラメータ値として1つの値が用いられた場合の原画像画質量及び予測画質量を示した図である。
図5】画質予測パラメータ値として1つの値が用いられた場合の線形の予測特性を示した図である。
図6】画質予測パラメータ値として複数の値が用いられた場合の線形の予測特性を示した図である。
図7】画質予測パラメータ値として複数の値が用いられた場合の非線形の予測特性を示した図である。
図8】予測特性を用いて指定画質量から画質制御パラメータ値を予測する方法を示した図である。
図9】再現パラメータαが最大値に近付くにつれて予測特性と真の特性との間にズレが生ずる場合に予測特性を用いて指定画質量から画質制御パラメータ値を予測する方法を示した図である。
図10】再現パラメータαが最大値に近付くにつれて予測特性と真の特性との間にズレが生ずる場合におけるズレを吸収した予測特性を示した図である。
図11】本発明の実施の形態における画像処理装置の動作例を示したフローチャートである。
図12】本発明の実施の形態における画像処理装置のハードウェア構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
[発明の背景]
画像強調は、輝度又は色度に関する補正又は強調を行うことを基本とし、原画像の特性を強調することで、好ましい再現画像に仕上げるものである。画像強調には、ガンマ補正、彩度強調、帯域強調、コントラスト強調、ダイナミックレンジ補正、視認性の向上等がある。
【0013】
このような画像強調における再現上の制御パラメータ(以下、「再現パラメータ」という)をソフトウェア内部で機械的に決定することはある。その場合、再現上の基準となる値が必要であり、例えば画質に関する値がこれに含まれると考えられる。但し、画像から算出可能な画質に関する値は、画像のコントラストに基づく値等、あくまで物理量である。従って、画質がどのようになれば好ましく思えるかの心理実験も行われており、心理量と物理量との対応関係から、好ましい物理量の範囲が提示されている。
【0014】
しかしながら、このように好ましい物理量の範囲が提示されたとしても、様々な画像に合わせて再現パラメータを決定することは考えられていない。
【0015】
そこで、本実施の形態では、画像に合わせて、所望の画質を再現するための再現パラメータを予測する。
【0016】
[実施の形態の構成]
図1は、本発明の実施の形態における画像処理装置10の機能構成例を表すブロック図である。図示するように、本実施の形態における画像処理装置10は、予測再現部11と、画質量算出部12a,12bと、画質特性予測部13と、画質制御パラメータ値算出部14と、画像再現部15とを備える。尚、図中、原画像は、RGB画像、L*a*b**画像、HSV画像等の如何なる画像でもよい。
【0017】
予測再現部11は、原画像に対して画質予測用の画像再現を行うことにより、画質を予測するための再現画像(以下、「予測再現画像」という)を生成する。具体的には、後述する再現パラメータに画質予測用のパラメータ値(以下、「画質予測パラメータ値」という)を設定して、予測再現画像を生成する。尚、予測再現部11は、後述する画像再現部15と同等のものである。以下では、予測再現部11と画像再現部15とは同じ処理を行うものとして説明を行う。
【0018】
予測再現部11が行う処理は画像強調とする。画像強調としては、帯域強調、コントラスト強調、輝度強調、視認性向上等の強調が考えられる。このうち、帯域強調は、周波数に関係する強調の一例であり、コントラスト強調は、明暗差に関係する強調の一例である。また、上記画像強調は、一般化して、画像の画質に影響を与える特定の成分の強調ということができる。本実施の形態では、このような画像強調を以下の再現式で行うものとしてまとめて説明を行う。
【0019】
【数1】
【0020】
ここで、I(x,y)は原画像の画素値を表し、輝度成分であるものとする(HSVであればV、YCbCrであればY、L*a*b*であればL*)。I(x,y)は画像強調を最大限に行った場合の画素値を表す。I^(x,y)は再現画像の画素値を表し、予測再現部11が画像再現を行う際には、予測再現画像の画素値に相当する。また、αは再現上の強調度合いを表す再現パラメータ(強調度合い情報)であり、予測再現部11が画像再現を行う際には、図1の画質予測パラメータ値(第1の強調度合い)が設定される。I^(x,y)は、α=1の場合、最大限の画像強調が行われた場合の画素値となり、α=0の場合、原画像の画素値となる。本実施の形態において、αは0から1までの如何なる値でもよいものとする。尚、本明細書では、ハット記号を、数式中では文字の真上に付すが、文中では文字の後ろに付すものとする。
【0021】
I(x,y)からI(x,y)への変換として考えられる処理及びその組み合わせとしては、例えば、以下のような処理が挙げられる。ここでは、後述する画質特性の予測が似ているのでこれら6つの処理を示すが、本実施の形態は、これら6つの処理の本質を損なわないものであれば、如何なる処理にも適用可能である。
(1)ガンマカーブ強調
(2)帯域強調
(3)レティネックス原理による視認性向上
(4)ガンマカーブ強調と帯域強調との組み合わせ
(5)ガンマカーブ強調とレティネックス原理による視認性向上との組み合わせ
(6)帯域強調とレティネックス原理による視認性向上との組み合わせ
【0022】
本実施の形態では、原画像の特定の成分が第1の強調度合いで強調されるように再現された第1の再現画像の一例として、予測再現画像を用いており、第1の再現画像を生成する第1の再現画像生成手段の一例として、予測再現部11を設けている。
【0023】
画質量算出部12aは、予測再現画像の画質量(以下、「予測画質量」という)を算出し、画質量算出部12bは、原画像の画質量(以下、「原画像画質量」という)を算出する。本実施の形態では、例として、画質量を以下のように定義するものとする。
【0024】
【数2】
【0025】
ここで、Qは画像に関する物理量である画質量を表す。また、Iの上にバーが付された記号は、全画素の画素値の平均値を表す。更に、σの上にバーが付された記号は、画像の局所領域ごとの画素値の分散を画像の全領域で平均して得られた値を表す。例えば、画像を複数のブロックに分割し、各ブロックにおける画素値の分散を画像の全領域で平均して得られた値を用いればよい。この値は、コントラストの指標にもなる。
【0026】
本実施の形態では、第1の再現画像の画質を表す第1の画質量の一例として、予測画質量を用いており、第1の画質量を取得する第1の画質量取得手段の一例として、画質量算出部12aを設けている。また、原画像の画質を表す第2の画質量の一例として、原画像画質量を用いており、第2の画質量を取得する第2の画質量取得手段の一例として、画質量算出部12bを設けている。
【0027】
画質特性予測部13は、画質量算出部12aが算出した予測画質量(予測再現画像のQ)と、画質量算出部12bが算出した原画像画質量(原画像のQ)と、予測再現部11が使用した画質予測パラメータ値とに基づいて、αとQとの関係を画質特性として予測する。
【0028】
例えば、実験的に、再現パラメータαの多くの値について数式2で画質量を算出した場合、前述した(1)〜(6)の例では、αとQとの関係は図2のようになることが多い。即ち、(1)〜(6)のような処理は、コントラスト又は輝度平均を高める要素を含んでおり、αが最大値に近付くにつれて、変換後の画素値も最大値に近づくため、Qは収束していく。
【0029】
また、処理によっては、αが大きくなると、輝度平均は高まるがコントラストが低下することがあり、αとQとの関係は図3のようになることもある。即ち、αが最大値に近付くにつれて、Qは低下することもある。
【0030】
画質特性予測部13は、図2又は図3のような画質特性を予測する(以下、ここで予測された画質特性を「予測特性」ともいう)。予測再現部11が画質予測パラメータ値として1つの値を用いた場合は、図4のような原画像画質量及び予測画質量が得られる。原画像画質量はα=0の場合のQである。また、予測画質量は、図4では、α=0.2の場合のQとしている。
【0031】
αとQとの関係を表す予測特性としては、例えば、以下のような線形式で表されるものが考えられる。このような予測特性が最もシンプルであり、後段でも扱い易い。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、m,nは定数である。α=0のときのQと、α=0.2のときのQとが既知なので、m,nは容易に求められる。この数式3を用いることにより、図5のような予測特性が得られる。
【0034】
一方、予測再現部11は画質予測パラメータ値として複数の値を用いてもよい。即ち、図6のように複数の予測画質量を用いてもよい。図6において、例えば、左側の予測画質量が第1の画質量の一例であり、この予測画質量の元となる予測再現画像が第1の再現画像の一例であり、この予測再現画像を生成するために用いた画質予測パラメータ値が第1の強調度合いの一例であるとすると、右側の予測画質量は他の第1の画質量の一例となり、この予測画質量の元となる予測再現画像は他の第1の再現画像の一例となり、この予測再現画像を生成するために用いた画質予測パラメータ値は他の第1の強調度合いの一例となる。また、この場合、数式3は、図6のように回帰分析により得られる。具体的には、原画像画質量を通り、複数の予測画質量の両方から同程度に近い直線を、予測特性とする。
【0035】
或いは、この場合は、αとQとの関係を以下のように非線形関数Fで近似してもよい。
【0036】
【数4】
【0037】
このF(α)の具体例としては、以下のような式が挙げられる。
【0038】
【数5】
【0039】
ここで、m,m,mは二次式の係数である。この場合も、複数の点について回帰分析を行うことにより、係数m,m,mは算出される。但し、数式5を用いる場合は、3つの係数があるので、原画像画質量を含めて、少なくとも3つの画質量が必要である。このようにして算出された非線形関数F(α)の形状を図7に示す。尚、F(α)は、後段でQからαを逆算することを考えると、単調増加関数又は単調減少関数としておくのが望ましい。図7では、F(α)を単調増加関数としている。
【0040】
以上のように、画質特性予測部13が算出する画質特性は、αとQの対応関係を表す直線又は曲線となる。
【0041】
本実施の形態では、原画像の画質特性を取得する画質特性取得手段の一例として、画質特性予測部13を設けている。
【0042】
画質制御パラメータ値算出部14は、実際に画質を制御するために再現パラメータに設定されるパラメータ値(以下、「画質制御パラメータ値」という)を予測する。具体的には、指定画質量Qdegが与えられると、画質特性予測部13が算出した画質特性に基づいて、指定画質量Qdegから画質制御パラメータ値αoptを予測する。
【0043】
この場合、指定画質量Qdegとしては、任意の値を与えるとよい。例えば、Qと心理量との関係から、望ましいものがあれば、それを与えればよい。尚、本実施の形態において、Qはあくまで物理量であり、Qが最大であれば画質が良いというわけではない。望ましいQの値が存在し、その値を与えた場合のαの値を予測するものとする。
【0044】
例えば、数式3のような線形式で表される予測特性が得られた場合は、最も扱いやすく、αopt図8のように算出すればよい。ここで、真の特性が、図9に破線で示すように、αがQを最大にする値より大きくなるにつれて、Qが小さくなるような形状をしている場合を考える。このような場合であっても、Qが最大のときに画質が好ましくなるとは考え難い。また、Qが小さくなっていくのはコントラストが低下することを意味するので、αがQを最大にする値よりも大きくなると画質が好ましくなるとも考え難い。従って、Qが最大になるまでの区間に好ましい画質量があると考えられるので、この区間で指定画質量Qdesを与えればよく、線形予測でも対応可能である。
【0045】
尚、図9では、αがQを最大にする値より大きい場合に予測特性と真の特性との間にズレが生ずるが、数式4及び数式5のような非線形式で表される予測特性とし、図10のように、ズレを吸収するようにしてもよい。このように非線形式で予測特性が表される場合、画質制御パラメータ値αoptは探索によって求めることになる。例えば、以下の式を、αに適当な初期値を与えて、ニュートン法の枠組みで解くようにするとよい。
【0046】
【数6】
【0047】
以上により、画質制御パラメータ値算出部14は、再現画像の画質量が指定画質量Qdesとなる画質制御パラメータ値αoptを算出する。
【0048】
本実施の形態では、再現画像の画質を表す画質量が指定画質量となるために強調度合い情報に設定すべき第2の強調度合いの一例として、画質制御パラメータ値を用いており、第2の強調度合いを取得する強調度合い取得手段の一例として、画質制御パラメータ値算出部14を設けている。
【0049】
画像再現部15は、この画質制御パラメータ値αoptを用いて、以下の再現式で再現画像を生成する。
【0050】
【数7】
【0051】
ここで、I^(x,y)は数式1の場合と同じく再現画像の画素値を表すが、この数式7では、画像再現部15が生成する再現画像の画素値に相当する。
【0052】
尚、本実施の形態における再現式は、数式1及び数式7に限ったものではない。画像強調を行う再現式の本質(原画像と最大限の画像強調を行った画像との間で制御する)を損なわなければ、如何なる再現式を採用してもよい。
【0053】
本実施の形態では、原画像の特定の成分が第2の強調度合いで強調されるように再現された第2の再現画像の一例として、再現画像を用いており、第2の再現画像を生成する第2の再現画像生成手段の一例として、画質制御パラメータ値算出部14を設けている。
【0054】
また、本実施の形態で算出する画質量としては、少なくとも輝度とコントラストとを含む物理量を採用すれば、上述したような画質特性が得られる。従って、このような本質から外れないものであれば、如何なる物理量を画質量として採用してもよい。
【0055】
図11は、本発明の実施の形態における画像処理装置10の動作例を表すフローチャートである。
【0056】
原画像が入力されると、まず、予測再現部11が、画質予測パラメータ値が設定された再現パラメータを用いて、原画像に対し、画像強調を伴う画像再現を行うことにより、予測再現画像を生成する(ステップ101)。そして、画質量算出部12aが、ステップ101で生成された予測再現画像の画質量である予測画質量を算出する(ステップ102)。また、画質量算出部12bが、原画像の画質量である原画像画質量を算出する(ステップ103)。ここで、ステップ101乃至ステップ103はこの順序で実行されることとしたが、如何なる順序で実行されてもよい。或いは、ステップ101及びステップ102の少なくとも1つのステップと、ステップ103とは、並行に実行されるものであってもよい。
【0057】
次に、画質特性予測部13が、ステップ102で算出された予測画質量と、ステップ103で算出された原画像画質量と、ステップ101で用いられた再現パラメータに設定されていた画質予測パラメータ値とに基づいて、再現パラメータと画質量との対応関係である画質特性を予測する(ステップ104)。
【0058】
次いで、画質制御パラメータ値算出部14が、指定画質量を与えられると、ステップ104で予測された画質特性に基づいて、画質量を指定画質量とするために再現パラメータに設定すべき画質制御パラメータ値を算出する(ステップ105)。
【0059】
最後に、画像再現部15が、ステップ105で生成された画質制御パラメータ値が設定された再現パラメータを用いて、原画像に対し、画像強調を伴う画像再現を行うことにより、再現画像を生成する(ステップ105)。
【0060】
[画像処理装置のハードウェア構成]
本実施の形態における画像処理装置10は、例えばPCにインストールされた画像処理ソフトウェアとしても実現され得るが、典型的には、画像読取り及び画像形成を行う画像処理装置10として実現される。
【0061】
図12は、このような画像処理装置10のハードウェア構成例を示した図である。図示するように、画像処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)21と、RAM(Random Access Memory)22と、ROM(Read Only Memory)23と、HDD(Hard Disk Drive)24と、操作パネル25と、画像読取部26と、画像形成部27と、通信インターフェース(以下、「通信I/F」と表記する)28とを備える。
【0062】
CPU21は、ROM23等に記憶された各種プログラムをRAM22にロードして実行することにより、後述する各機能を実現する。
【0063】
RAM22は、CPU21の作業用メモリ等として用いられるメモリである。
【0064】
ROM23は、CPU21が実行する各種プログラム等を記憶するメモリである。
【0065】
HDD24は、画像読取部26が読み取った画像データや画像形成部27における画像形成にて用いる画像データ等を記憶する例えば磁気ディスク装置である。
【0066】
操作パネル25は、各種情報の表示やユーザからの操作入力の受付を行うタッチパネルである。ここで、操作パネル25は、各種情報が表示されるディスプレイと、指やスタイラスペン等で指示された位置を検出する位置検出シートとからなる。
【0067】
画像読取部26は、紙等の記録媒体に記録された画像を読み取る。ここで、画像読取部26は、例えばスキャナであり、光源から原稿に照射した光に対する反射光をレンズで縮小してCCD(Charge Coupled Devices)で受光するCCD方式や、LED光源から原稿に順に照射した光に対する反射光をCIS(Contact Image Sensor)で受光するCIS方式のものを用いるとよい。
【0068】
画像形成部27は、記録媒体に画像を形成する。ここで、画像形成部27は、例えばプリンタであり、感光体に付着させたトナーを記録媒体に転写して像を形成する電子写真方式や、インクを記録媒体上に吐出して像を形成するインクジェット方式のものを用いるとよい。
【0069】
通信I/F28は、ネットワークを介して他の装置との間で各種情報の送受信を行う。
【0070】
尚、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
10…画像処理装置、11…予測再現部、12a,12b…画質量算出部、13…画質特性予測部、14…画質制御パラメータ値算出部、15…画像再現部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12