(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施の形態について説明する。なお、実施の形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0016】
[実施の形態1]
<ウインドウ用面状発熱体の構造>
図1に、本発明の一例である実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の裏面の模式的な平面図を示す。
図1に示すように、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体は、ポリカーボネートからなる樹脂基材1と、樹脂基材1の表面の形状に沿って面状に広がるように樹脂基材1に設けられた比抵抗が一様な導電性シートからなる発熱体2と、発熱体2の両側(本実施の形態では、
図1の左右方向の両側)のそれぞれに帯状に延在する導電性の給電部3a,3bと、発熱体2の表面の中央に設けられた放熱抑制部材4とを備えている。
【0017】
ここで、樹脂基材1は、平面状または曲面状のいずれの表面を有していてもよく、樹脂基材1の表面とは反対側の面である裏面に発熱体2が設けられている。また、給電部3a,3bは、発熱体2に電流を流すことができるように、発熱体2の両側の端のそれぞれに沿って帯状に延在するように設けられている。また、放熱抑制部材4は、帯状であって、電流の流れる方向と直交する方向(本実施の形態では、
図1の上下方向)に延在するように、発熱体2の表面の中央に配置されている。
【0018】
実施の形態1のウインドウ用面状発熱体において、電流は、給電部3aまたは給電部3bから発熱体2に供給される。給電部3aまたは給電部3bから発熱体2に供給された電流により、発熱体2は、自身の電気抵抗によって発熱する。そして、発熱体2で発生した熱が樹脂基材1の表面に伝導して、ウインドウ用面状発熱体の表面が加熱されることになる。
【0019】
図2に、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の発熱体2に用いられる比抵抗が一様な導電性シートの一例である導電性メッシュの模式的な拡大平面図を示す。導電性メッシュは、複数本の第1の導電線21と、複数本の第2の導電線22とを有している。第1の導電線21はそれぞれ互いに間隔を空けて第1の方向31に沿って延在しており、第2の導電線22はそれぞれ互いに間隔を空けて第1の方向31とは異なる方向である第2の方向32に沿って延在している。
【0020】
また、複数の開口部24が形成されるように、第1の導電線21と第2の導電線22とが交差している。実施の形態1において、1本の第1の導電線21は、複数本の第2の導電線22のそれぞれと交点23で固定されており、1本の第2の導電線22は、複数本の第1の導電線21のそれぞれと交点23で固定されている。そして、隣り合う2本の第1の導電線21と、隣り合う2本の第2の導電線22とで取り囲まれた空隙の領域が開口部24となっている。
【0021】
導電性メッシュの開口率は特に限定されないが、70%以上であることが好ましい。導電性メッシュの開口率を70%以上とした場合には、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体を樹脂基材1側から見たときの第1の導電線21および第2の導電線22の視認性を低くすることができるため、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の透明性(可視光(波長360nm〜830nm)の少なくとも一部が透過する特性:可視光の透過率が向上するほど透明性が高くなる)を向上させることができる。したがって、この場合には、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体を自動車のリアウインドウ等の透明性が要求されるデフォッガ機能付きの車両用窓として好適に用いることができる。
【0022】
なお、導電性メッシュの開口率[%]は、公知の式により算出することができる。たとえば、以下の式(I)により算出することができる。なお、式(I)において、網目は隣り合う2本の導電線間の内寸d3であり、ピッチは隣り合う2本の導電線の中心間の距離d4である。
【0023】
導電性メッシュの開口率[%]=100×{(網目)/(ピッチ)}
2 …(I)
【0024】
図3に、
図2のIII−IIIに沿った模式的な断面図を示す。
図3に示すように、第1の導電線21は、ポリエステルからなる第1の芯線21aと、第1の芯線21aの外表面を被覆する銅からなる第1の被覆材21bとを有している。なお、第1の芯線21aおよび第1の被覆材21bは、それぞれ単層のみで構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。なお、第1の芯線21aおよび/または第1の被覆材21bが複数層から構成される場合には、複数層を構成するそれぞれ層の材質はすべて同一であってもよく、その少なくとも1層が異なっていてもよい。
【0025】
図2に示す第1の導電線21の太さd1は特に限定されないが、0.3mm以下とすることが好ましく、0.2mm以下とすることがより好ましく、0.08mm以下とすることがさらに好ましい。第1の導電線21の太さd1を0.3mm以下、0.2mm以下および0.08mm以下とするにつれて、第1の導電線21を細くしていくことができ、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体を樹脂基材1の表面側から見たときの第1の導電線21の視認性を低くすることができるため、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の透明性を向上させることができる。したがって、この場合にも、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体を自動車のリアウインドウ等の透明性が要求されるデフォッガ機能付きの車両用窓として好適に用いることができる。なお、第1の導電線21の太さd1は、たとえば
図2に示すように、導電性メッシュの表面において、第1の導電線21の延在方向(第1の方向31)と直交する方向の長さである。
【0026】
図4に、
図2のIV−IVに沿った模式的な断面図を示す。
図4に示すように、第2の導電線22は、ポリエステルからなる第2の芯線22aと、第2の芯線22aの外表面を被覆する銅からなる第2の被覆材22bとを有している。なお、第2の芯線22aおよび第2の被覆材22bも、それぞれ単層のみで構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。なお、第2の芯線22aおよび/または第2の被覆材22bが複数層から構成される場合には、複数層を構成するそれぞれ層の材質はすべて同一であってもよく、その少なくとも1層が異なっていてもよい。
【0027】
図2に示す第2の導電線22の太さd2は特に限定されないが、0.3mm以下とすることが好ましく、0.2mm以下とすることがより好ましく、0.08mm以下とすることがさらに好ましい。第2の導電線22の太さd2を0.3mm以下、0.2mm以下および0.08mm以下とするにつれて、第2の導電線22を細くしていくことができ、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体を樹脂基材1の表面側から見たときの第2の導電線22の視認性を低くすることができるため、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の透明性を向上させることができる。したがって、この場合にも、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体を自動車のリアウインドウ等の透明性が要求されるデフォッガ機能付きの車両用窓として好適に用いることができる。なお、第2の導電線22の太さd2は、たとえば
図2に示すように、導電性メッシュの表面において、第2の導電線22の延在方向(第2の方向32)と直交する方向の長さである。
【0028】
図5に、
図2のV−Vに沿った模式的な断面図を示し、
図6に、
図2のVI−VIに沿った模式的な断面図を示す。
図5および
図6に示すように、第1の導電線21と、第2の導電線22とは、これらの交点23で、第1の芯線21aと第2の芯線22aとが熱融着することによって固定されている。
【0029】
なお、第1の導電線21と第2の導電線22との固定方法は、第1の芯線21aと第2の芯線22aとを熱融着によって固定する方法に限定されないが、第1の芯線21aと第2の芯線22aとの熱融着によって第1の導電線21と第2の導電線22とを固定した場合には、第1の導電線21と第2の導電線22とを固定するための接着材等の他の材料を用いることなく、第1の導電線21と第2の導電線22とを強固に固定することができる点で好ましい。
【0030】
図7に、
図1のVII−VIIに沿った模式的な断面図を示す。
図7に示すように、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体において、発熱体2は、樹脂基材1の裏面10bの裏面の内側の樹脂基材1の内部に埋め込まれている。また、発熱体2は、発熱体2の表面2aが樹脂基材1の表面10aの形状に沿って面状に広がるように配置されるとともに、
図7の紙面に垂直な方向に延在するように配置される。さらに、発熱体2の表面2aと反対側の面である裏面2bには、放熱抑制部材4が設置されている。
【0031】
放熱抑制部材4としては、発熱体2への通電により発熱体2から発生した熱が外部に逃げるのを抑制することができる部材であれば特に限定されず、たとえば従来から公知の蓄熱材などを用いることができる。
【0032】
図8に、
図1のVIII−VIIIに沿った模式的な拡大断面図を示す。
図8に示すように、第1の導電線21および第2の導電線22は、樹脂基材1中に埋没している。したがって、導電性メッシュ2の第1の導電線21と、第2の導電線22との交点23および開口部24も樹脂基材1中に埋没することになる。また、給電部3a,3bおよび放熱抑制部材4は、それぞれ、導電性メッシュ2の両端の第2の導電線22の第2の被覆材22bの表面と接するように設置されているが、この構成に限定されるものではない。
【0033】
<ウインドウ用面状発熱体の製造方法>
図9に、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の製造方法の一例のフローチャートを示す。
図9に示すように、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の製造方法は、発熱体設置工程(S10)と給電部設置工程(S20)と放熱抑制部材設置工程(S30)とを含んでおり、発熱体設置工程(S10)と給電部設置工程(S20)と放熱抑制部材設置工程(S30)とがこの順序で行なわれる。なお、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の製造方法には、上記のS10〜S30以外の工程が含まれていてもよく、工程の順序も特に限定されない。たとえば、放熱抑制部材設置工程(S30)を行なった後に、発熱体設置工程(S10)および給電部設置工程(S20)をこの順序で行なってもよい。
【0034】
≪発熱体設置工程≫
発熱体設置工程(S10)は、樹脂基材1の表面10aの形状に沿って面状に広がるように比抵抗が一様な導電性シートからなる発熱体2を樹脂基材1に設置することにより行なわれる。樹脂基材1の裏面10bへの発熱体2の設置は、たとえば以下に詳述されるインサート成形により行なうことができる。
【0035】
まず、たとえば
図10の模式的断面図に示すように、金型41の凹部の底面41aに沿って発熱体2を設置する。ここで、発熱体2は、金型41の凹部の底面41aに沿って設置される。
【0036】
また、金型41の凹部の形状は、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の形状に応じて適宜設定することができる。たとえば、金型41の凹部の底面41aを平面状とした場合には、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の樹脂基材1の裏面10bを平面状にすることができる。また、金型41の凹部の底面41aを曲面状とした場合には、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の樹脂基材1の裏面10bを曲面状にすることができる。
【0037】
次に、たとえば
図11の模式的断面図に示すように、金型41の凹部側に、液状樹脂の注入口43を備えた別の金型42を設置する。ここで、金型42の金型41側の表面42aの形状は、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の形状に応じて適宜設定することができる。たとえば、金型42の表面42aを平面状とした場合には、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の樹脂基材1の表面10aを平面状にすることができる。また、金型42の表面42aを曲面状とした場合には、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の樹脂基材1の表面10aを曲面状にすることができる。
【0038】
次に、たとえば
図12の模式的断面図に示すように、金型42の注入口43から金型41の凹部に液状樹脂1aを注入する。液状樹脂1aは、発熱体2全体に浸透して発熱体2全体を内包するように注入される。なお、液状樹脂1aとしては、液状樹脂1aが硬化することによって樹脂基材1となる材料が用いられ、たとえば液状のポリカーボネートを用いることができる。
【0039】
次に、たとえば
図13の模式的断面図に示すように、金型41の凹部に注入された液状樹脂1aを冷却して液状樹脂1aを硬化させることにより導電性基板61を形成する。導電性基板61は、液状樹脂1aが硬化してなる樹脂基材1が、発熱体2と一体化することにより形成される。なお、液状樹脂1aの硬化方法は、上述の冷却による方法に限定されず、液状樹脂1aの性質に応じた方法を適宜用いることができる。
【0040】
次に、たとえば
図14の模式的断面図に示すように、上述のようにして形成された導電性基板61を金型41から離型する。なお、導電性基板61の金型41からの離型方法は、特に限定されず、従来から公知の方法を適宜用いることができる。
【0041】
≪給電部設置工程≫
給電部設置工程(S20)は、発熱体2に電流を流すことができるように、発熱体2の両側のそれぞれに、帯状に延在するように導電性の給電部3a,3bを設置することにより行なわれる。給電部設置工程(S20)は、たとえば
図8の模式的断面図に示すように、発熱体2の両側の端部の第2の導電線22の第2の被覆材22bの外表面に接するように給電部3a,3bを電気的かつ機械的に接続することにより行なうことができる。
【0042】
なお、給電部3a,3bの接続方法は特に限定されず、たとえば半田などの導電性接着材によって接続する方法などを用いることができる。
【0043】
≪放熱抑制部材設置工程≫
放熱抑制部材設置工程(S30)は、給電部3aから発熱体2に供給された電流によって発熱体2から発生した熱が逃げるのを抑制することができるように、発熱体2の表面の一部に放熱抑制部材4を設置することにより行なうことができる。放熱抑制部材設置工程(S30)は、たとえば
図8の模式的断面図に示すように、発熱体2の中央の第2の導電線22の第2の被覆材22bの外表面に接するように放熱抑制部材4を設置することにより行なうことができる。
【0044】
なお、放熱抑制部材4の設置方法は特に限定されず、たとえば従来から公知の絶縁性接着材によって接着する方法などを用いることができる。
【0045】
<作用効果>
実施の形態1のウインドウ用面状発熱体においては、
図1に示すように、発熱体2の裏面の中央に、局所的に、発熱体2への電流の供給により発熱体2から発生した熱が外部に逃げるのを抑制する放熱抑制部材4が設置されている。したがって、給電部3aまたは給電部3bから発熱体2に電流を供給した場合には、放熱抑制部材4が設置されている発熱体2の裏面の中央の領域(以下、「裏面中央領域」という。)は、その両側の領域(
図1の放熱抑制部材4の上下方向の両側の領域)と比べて、発熱体2から発生した熱が外部に逃げにくくなるため、局所的に温度が上昇する。
【0046】
裏面中央領域の温度の上昇によって、裏面中央領域の比抵抗が局所的に上昇する。そして、発熱体2の全体に均一な電流が流れると、比抵抗が上昇した裏面中央領域の発熱量が、裏面中央領域以外の領域の発熱量よりも大きくなる。これにより、発熱体2の裏面中央領域に対応する実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の表面中央のみを局所的に加熱することができる。
【0047】
これは、オームの法則により、発熱量Qは、電流Iの2乗と、比抵抗Rとの積(Q=I
2×R)で表わされることから、比抵抗の高い裏面中央領域の発熱量を局所的に大きくすることができることによるものである。
【0048】
その後は、
図15に示すように、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の表面中央以外の箇所も加熱され、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の面全体が加熱される。
【0049】
また、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体においては、従来の特許文献1に記載の方法のようにレーザビームを用いて130℃以上といった高温に加熱する工程が必要ないため、基材として樹脂基材1を用いることができる。
【0050】
以上の理由により、実施の形態1においては、樹脂基材1を用いた場合でも、所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができるウインドウ用面状発熱体およびウインドウ用面状発熱体の製造方法を提供することができる。
【0051】
なお、従来の特許文献1においては、通電する前に予め発熱体の比抵抗を局所的に高くしておくことによって、当該発熱体の比抵抗が高い箇所の発熱量を局所的に大きくしている。一方、実施の形態1においては、比抵抗の温度依存性を利用して、通電前には発熱体2の比抵抗を変化させず、通電時に発熱体2の比抵抗を局所的に高くすることによって、局所的に発熱量を大きくしている。したがって、従来の特許文献1と実施の形態1とは技術的思想が全く異なっている。
【0052】
また、実施の形態1のウインドウ用面状発熱体においては、発熱体2の温度が10℃上昇した場合には、発熱体2の電気抵抗が3%〜5%上昇するため、発熱体2への通電後の60秒以内に、放熱抑制部材4の設置領域とそれ以外の領域との間に10℃〜20℃の温度差を出すことによって、局所的な発熱による実施の形態1のウインドウ用面状発熱体の表面の早急な視界の確保の効果がより顕著となる。
【0053】
<その他の形態>
上記においては、樹脂基材1がポリカーボネートからなる場合について説明したが、樹脂基材1は、ポリカーボネートに限定されず、ポリカーボネート以外の樹脂も用いることができる。しかしながら、樹脂基材1は、ポリカーボネートを含むことがより好ましい。樹脂基材1としてポリカーボネートを用いた場合には、樹脂基材1の透明性を向上させることができるとともに、樹脂基材1の耐久性も向上させることができる。
【0054】
上記においては、第1の導電線21の第1の芯線21aおよび第2の導電線22の第2の芯線22aがポリエステルからなる場合について説明したが、ポリエステルに限定されず、たとえば樹脂、ガラスまたは金属などの材料を適宜用いることができる。なかでも、第1の芯線21aおよび第2の芯線22aは、同一の樹脂からなることが好ましい。この場合には、第1の芯線21aと第2の芯線22aとの熱融着により、第1の導電線21と第2の導電線22とを強固に固定することができる。
【0055】
上記においては、第1の導電線21の第1の被覆材21bおよび第2の導電線22の第2の被覆材22bが銅からなる場合について説明したが、銅に限定されず、たとえば銅と銅以外の金属との2層構造からなる金属層等の導電性材料を適宜用いることができる。
【0056】
また、上記においては、第1の芯線21aと第2の芯線22aとの熱融着によって第1の導電線21と第2の導電線22とが固定されている場合について説明したが、第1の導電線21と第2の導電線22とは固定されていなくてもよい。また、たとえば、第1の方向31に延在する第1の導電線21と、第1の方向31とは異なる第2の方向32に延在する第2の導電線22とが平織りや綾織りなどの製織によって構成されていてもよい。
【0057】
また、上記においては、発熱体2の一例として複数の開口部24を有する導電性メッシュを挙げたが、発熱体2は、比抵抗が一様な導電性シートであればよく、たとえば開口部を有しないITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電膜であってもよい。なお、比抵抗が一様な導電性シートは、導電性シートの全体にわたって比抵抗が実質的に均一であれば、必ずしも完全に均一でなくてもよい。
【0058】
また、導電性メッシュや透明導電膜などの発熱体2は、その全部が樹脂基材1の裏面10bの内側の樹脂基材1の内部に埋没していてもよく、その少なくとも一部が樹脂基材1の裏面10bから外部に露出していてもよい。
【0059】
また、給電部3としては、導電性メッシュや透明導電膜などの発熱体2に電流を流すことができるものであれば特に限定されず、たとえば金属などの導電性材料を適宜用いることができる。
【0060】
[実施の形態2]
図16に、本発明の他の一例である実施の形態2のウインドウ用面状発熱体の裏面の模式的な平面図を示す。実施の形態2のウインドウ用面状発熱体は、発熱体2の一部を切り欠いた切り欠き部5を有している点に特徴がある。
【0061】
実施の形態2のウインドウ用面状発熱体においては、発熱体2の周縁の一部を切り欠いた切り欠き部5が形成されている発熱体2の裏面の中央の領域(発熱体2の電流の流れる方向と直交する方向において、切り欠き部5に隣接する発熱体2の領域;以下、「裏面中央領域5a」という。)が、その両側の領域5b(
図16の切り欠き部5の左右方向の両側の発熱体2の領域)と比べて、発熱体2の幅(
図16の上下方向の幅)が狭くなっている。そのため、発熱体2の裏面中央領域5aの比抵抗が局所的に高くなる。
【0062】
そして、実施の形態2のウインドウ用面状発熱体の給電部3aまたは給電部3bから電流を供給した場合には、発熱体2の全体に均一な電流が流れ、比抵抗が上昇した裏面中央領域5aの発熱量が、裏面中央領域以外の領域5bの発熱量よりも大きくなる。これにより、当該裏面中央領域5aに対応する実施の形態2のウインドウ用面状発熱体の表面中央のみを局所的に加熱することができる。
【0063】
その後は、
図17に示すように、実施の形態2のウインドウ用面状発熱体の表面中央以外の箇所も加熱され、実施の形態2のウインドウ用面状発熱体の面全体が加熱される。
【0064】
また、実施の形態2のウインドウ用面状発熱体において、切り欠き部5は導電性メッシュ2の切断等によって容易に形成することができ、従来の特許文献1に記載の方法のようにレーザビームを用いて130℃以上といった高温に加熱する工程が必要ないため、基材として樹脂基材1を用いることができる。
【0065】
以上の理由により、実施の形態2においても、樹脂基材1を用いた場合でも、所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができるウインドウ用面状発熱体を提供することができる。
【0066】
さらに、実施の形態2においては、実施の形態1のように放熱抑制部材4といった他の部材を用いる必要がないという点でも利点がある。
【0067】
実施の形態2のウインドウ用面状発熱体は、たとえば以下のようにして作製することができる。まず、周縁の一部を切り欠いた切り欠き部5が形成された導電性メッシュからなる発熱体2を準備する。その後は、実施の形態1と同様に、発熱体設置工程(S10)および給電部設置工程(S20)を経ることによって、実施の形態2のウインドウ用面状発熱体を作製することができる。なお、発熱体2の切り欠き部5の形成方法は特に限定されず、たとえば従来から公知の切断方法によって導電性メッシュの周縁の一部を切断することなどによって行なうことができる。
【0068】
実施の形態2における上記以外の説明は実施の形態1と同様であるため、その説明については繰り返さない。
【0069】
[付記]
(1)本発明の一例である第1の態様によれば、平面状または曲面状の表面を有する樹脂基材と、樹脂基材の表面の形状に沿って面状に広がるように設けられた比抵抗が一様な導電性シートからなる発熱体と、発熱体に電流を流すことができるように、発熱体の両側のそれぞれに帯状に延在するように設けられた導電性の給電部とを備え、発熱体は、給電部から発熱体に電流を流したときに、発熱体の比抵抗が局所的に上昇する局所的比抵抗上昇部を有するウインドウ用面状発熱体を提供することができる。本発明の第1の態様のウインドウ用面状発熱体においては、発熱体に設けられた局所的比抵抗上昇部によって、ウインドウ用面状発熱体の表面の所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができる。また、従来の特許文献1に記載の方法のようにレーザビームを用いて130℃以上といった高温に加熱する工程が必要がないため、基材として樹脂基材を用いることもできる。
【0070】
(2)本発明の第1の態様において、局所的比抵抗上昇部は、給電部から発熱体に電流を流すことによって発熱体から発せられた熱が逃げるのを抑制する放熱抑制部材が設けられた発熱体の部分であってもよい。この場合には、放熱抑制部材が設けられている発熱体の部分はその他の部分と比べて発熱体から発生した熱が外部に逃げにくくなるため、局所的に温度が上昇し、当該部分の比抵抗が局所的に上昇する。そして、発熱体の全体に均一な電流が流れると、比抵抗が上昇した部分の発熱量が、それ以外の部分の発熱量よりも大きくなる。したがって、この場合にも、ウインドウ用面状発熱体の表面の所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができる。
【0071】
(3)本発明の第
2の態様において、局所的比抵抗上昇部は、発熱体の電流の流れる方
向と直交する方向において、発熱体の周縁の一部を切り欠いた切り欠き部に隣接する発熱
体の部分であってもよい。この場合には、切り欠き部に隣接する発熱体の部分は、その他
の部分と比べて発熱体の幅が局所的に狭くなっているため、電流の流れる方向と直交する
方向において切り欠き部に隣接する発熱体の部分の比抵抗が局所的に高くなる。そして、
発熱体の全体に均一な電流が流れると、比抵抗が上昇した部分の発熱量が、それ以外の部
分の発熱量よりも大きくなる。したがって、この場合にも、ウインドウ用面状発熱体の表
面の所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができる。
【0072】
(4)本発明の第
3の態様において、導電性シートは、互いに間隔を空けて延在する複
数本の第1の導電線と、互いに間隔を空けて延在する複数本の第2の導電線とを含み、開
口部が形成されるように第1の導電線と第2の導電線とが交差してなる導電性メッシュで
あってもよい。この場合にも、樹脂基材を用いた場合でも、所望の箇所を優先して加熱し
、その後面全体を加熱することができるウインドウ用面状発熱体を提供することができる
。
【0073】
(5)本発明の第
3の態様において、第1の導電線は、第1の方向に延在し、第2の導
電線は、第1の方向とは異なる第2の方向に延在しており、導電性メッシュは、第1の導
電線と第2の導電線とが製織されて構成されていてもよい。この場合にも、樹脂基材を用
いた場合でも、所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができるウイ
ンドウ用面状発熱体を提供することができる。
【0074】
(6)本発明の第
3の態様において、第1の導電線は、第1の芯線と、第1の芯線の外
表面を被覆する第1の被覆材とを有し、第2の導電線は、第2の芯線と、第2の芯線の外
表面を被覆する第2の被覆材とを有しており、第1の芯線および第2の芯線は、樹脂を含
み、第1の被覆材および第2の被覆材は、導電性材料を含み、第1の導電線と第2の導電
線とが固定されていてもよい。この場合にも、樹脂基材を用いた場合でも、所望の箇所を
優先して加熱し、その後面全体を加熱することができるウインドウ用面状発熱体を提供す
ることができる。
【0075】
(7)本発明の第1
〜第3の態様において、導電性シートは透明導電膜であってもよい。この場合にも、樹脂基材を用いた場合でも、所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができるウインドウ用面状発熱体を提供することができる。
【0076】
(8)本発明の他の一例である第
4の態様によれば、本発明の第1
〜第3の態様のウインドウ用面状発熱体を含む車両用窓を提供することができる。本発明の第
4の態様の車両用窓は本発明の第1の態様のウインドウ用面状発熱体を含むため、所望の箇所を優先して加熱し、その後面全体を加熱することができる樹脂ウインドウとすることができる。樹脂ウインドウはガラスウインドウと同等の透明性を有しながら、大幅に軽量化することができるため、車両用窓として非常に有用である。特に、実施の形態1および実施の形態2のウインドウ用面状発熱体は、表面の中央を優先的に加熱して、その後面全体を加熱していくことができることから、車両用窓のなかでも自動車のリアウインドウに好適である。なお、車両用窓は、自動車等の車両に用いられる窓である。すなわち、本発明の第
4の態様の車両用窓は、本発明の第1
〜第3の態様のウインドウ用面状発熱体自体が自動車のリアウインドウ等の車両用の窓として用いられることを意味している。
【0077】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の各実施の形態の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。