(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被験者の頭部に互いに所定間隔を隔てるように配置される複数の計測プローブによる複数の計測点での所定の計測範囲の計測に際して、重複部分を含むように前記計測範囲を分割した複数の部分領域毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うための計測手段と、
前記複数の部分領域のそれぞれの前記重複部分の計測データに基づいて複数の前記部分領域毎の計測データを統合し、前記計測範囲全体にわたる単一の統合データを生成するデータ統合手段とを備える、光計測装置。
前記データ統合手段は、前記重複部分の計測データ同士が互いに略一致するように前記部分領域の計測データを補正することにより、複数の前記部分領域毎の計測データを統合するように構成されている、請求項1に記載の光計測装置。
前記係数算出手段は、互いに重複する複数の前記部分領域のうち、一方の前記重複部分の計測データと、他方の前記重複部分の計測データに前記補正係数を乗じたデータとの誤差が最小となる値を、前記補正係数として算出するように構成されている、請求項3に記載の光計測装置。
前記重複部分は、前記部分領域の前記重複部分以外の非重複部分に含まれる前記計測点数よりも少ない数の、複数の計測点を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光計測装置。
前記計測手段は、少なくとも、計測データのサンプリング間隔と、タスク期間およびレスト期間を含む計測プロトコルとが同一の計測条件で、前記複数の部分領域毎の計測を行うように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光計測装置。
被験者の頭部に互いに所定間隔を隔てるように配置される複数の計測プローブによる複数の計測点での所定の計測範囲の計測に際して、重複部分を含むように前記計測範囲を分割した複数の部分領域毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うステップと、
前記複数の部分領域のそれぞれの前記重複部分の計測データに基づいて複数の前記部分領域毎の計測データを統合し、前記計測範囲全体にわたる単一の統合データを生成するステップとを備える、光計測方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、計測プローブ間の距離が一定に定まるため、光脳機能計測において一度に計測可能な計測範囲の広さは、計測プローブ(計測点)の数によって決定される。そのため、装置の計測プローブ数ではカバーできない広い計測範囲の計測を行うためには、異なる計測範囲で複数回の計測を行う必要がある。その場合、計測データの解析もそれぞれの計測毎に別個に行う必要があることから、煩雑であるとともに統一的なデータ解析が困難となっていた。このように、従来、計測プローブ(計測点)の数によって計測範囲が制約されているため、計測プローブの数に応じた計測範囲よりも広い範囲の計測を行うことを可能にするという課題が存在する。このような課題は、十分な計測プローブ数を確保することが困難な、小型で携帯可能タイプの光計測装置において顕著である。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、計測プローブの数に応じた計測範囲よりも広い範囲の計測を行うことが可能な光計測装置および光計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における光計測装置は、被験者の頭部に互いに所定間隔を隔てるように配置される複数の計測プローブによる複数の計測点での所定の計測範囲の計測に際して、重複部分を含むように計測範囲を分割した複数の部分領域毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うための計測手段と、複数の部分領域のそれぞれの重複部分の計測データに基づいて複数の部分領域毎の計測データを統合し、計測範囲全体にわたる単一の統合データを生成するデータ統合手段とを備える。
【0009】
この発明の第1の局面による光計測装置では、上記のように、重複部分を含むように計測範囲を分割した複数の部分領域毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うための計測手段と、複数の部分領域のそれぞれの重複部分の計測データに基づいて複数の部分領域毎の計測データを統合し、計測範囲全体にわたる単一の統合データを生成するデータ統合手段とを設ける。これにより、部分領域のそれぞれにおいて、同じ計測点について同一の計測条件で計測した重複部分の計測データに基づいて、個別に計測した部分領域毎の計測データを統合することができる。その結果、光計測装置で計測可能な広さの部分領域毎の計測データから、より広い計測範囲全体にわたる単一の統合データを得ることができる。これにより、計測プローブの数に応じた計測範囲よりも広い範囲の計測を行うことができる。この効果は、十分な計測プローブ数を確保することが困難な、小型で携帯可能なタイプの光計測装置に本発明を適用する場合に特に有効である。また、単純に複数回の計測を行う場合には計測データ解析も別個に行う必要があるのに対して、本発明によれば、広い計測範囲全体にわたる単一の統合データによって、計測データ解析を、容易に、かつ、計測範囲全体にわたって統一的に行うことが可能となる。
【0010】
上記第1の局面による光計測装置において、好ましくは、データ統合手段は、重複部分の計測データ同士が互いに略一致するように部分領域の計測データを補正することにより、複数の部分領域毎の計測データを統合するように構成されている。このように構成すれば、別個に計測した部分領域毎の計測データの相互の重複部分の計測データを略一致させることによって、それぞれの部分領域の計測データを、同時に計測した場合と同等のデータとみなすことが可能となる。この結果、複数の部分領域の計測データを統合する場合でも、計測範囲全体を一度に計測した場合と同等の信頼性の高い統合データを得ることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、重複部分の計測データに基づいて、重複部分で互いに重複する複数の部分領域を相互に対応付ける補正係数を算出する係数算出手段をさらに備え、データ統合手段は、補正係数を用いて重複部分の計測データ同士が互いに略一致するように部分領域の計測データを補正するように構成されている。このように構成すれば、重複部分の計測データから得られた補正係数を用いることにより、部分領域全体の計測データの補正を容易に行うことができる。
【0012】
上記係数算出手段を備える構成において、好ましくは、係数算出手段は、互いに重複する複数の部分領域のうち、一方の重複部分の計測データと、他方の重複部分の計測データに補正係数を乗じたデータとの誤差が最小となる値を、補正係数として算出するように構成されている。このように構成すれば、重複部分の計測同士を精度よく近似する(略一致させる)ことができる。
【0013】
上記第1の局面による光計測装置において、好ましくは、重複部分は、部分領域の重複部分以外の非重複部分に含まれる計測点数よりも少ない数の、複数の計測点を含む。このように構成すれば、重複部分に比べて非重複部分の計測点数を多くすることができるので、その分、少ない分割数でより多くの計測点(より広い計測範囲)の計測データを得ることができる。すなわち、重複部分では、同じ位置で複数回の計測を行うことになるため、同じ分割数では非重複部分の計測点数が多いほど計測範囲が広くなる。そのため、非重複部分の計測点数が多い分、より広い計測範囲の統合データを得ることが可能となる。
【0014】
この場合、好ましくは、重複部分は、重複部分の計測点数が非重複部分の計測点数に対して所定割合の数となるように設定される。このように構成すれば、非重複部分の広さ(すなわち、計測点数の多さ)に応じた広さ(計測点数)の重複部分を設定することができる。ここで、重複部分の計測データを多くするほど、計測範囲全体を一度に計測した場合のデータに統合データを近似させることができる。一方、上記の通り、重複部分が狭いほど、少ない分割数で広い計測範囲の統合データを得ることが可能となる。そのため、非重複部分の広さに応じた適切な広さ(適切な所定割合)の重複部分を設定することによって、統合データの信頼性と、計測範囲の広さとのバランスのとれた良好な統合データを得ることが可能となる。
【0015】
上記第1の局面による光計測装置において、好ましくは、複数の部分領域毎の計測プローブの配置情報の入力を受け付ける領域設定手段をさらに備え、領域設定手段は、受け付けたそれぞれの部分領域の配置情報に基づいて、部分領域同士の重複部分における計測点を抽出するように構成されている。このように構成すれば、計測プローブの配置によって計測点の位置が決まるので、計測プローブの配置情報を入力するだけで、計測データを統合するための重複部分における計測点を決定することができる。この結果、単一の統合データによって計測データ解析を容易化するのに加えて、単一の統合データを得るための作業を簡略化することができる。
【0016】
上記第1の局面による光計測装置において、好ましくは、計測手段は、少なくとも、計測データのサンプリング間隔と、タスク期間およびレスト期間を含む計測プロトコルとが同一の計測条件で、複数の部分領域毎の計測を行うように構成されている。このように構成すれば、それぞれの部分領域の重複部分の計測データを等価なデータと見なすことができるので、統合データの信頼性を向上させることができる。また、サンプリング間隔が一致することから、計測データ同士の統合を容易に行うことができる。
【0017】
この発明の第2の局面における光計測方法は、被験者の頭部に互いに所定間隔を隔てるように配置される複数の計測プローブによる複数の計測点での所定の計測範囲の計測に際して、重複部分を含むように計測範囲を分割した複数の部分領域毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うステップと、複数の部分領域のそれぞれの重複部分の計測データに基づいて複数の部分領域毎の計測データを統合し、計測範囲全体にわたる単一の統合データを生成するステップとを備える。
【0018】
この発明の第2の局面による光計測方法では、上記のように、重複部分を含むように計測範囲を分割した複数の部分領域毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うステップと、複数の部分領域のそれぞれの重複部分の計測データに基づいて複数の部分領域毎の計測データを統合し、計測範囲全体にわたる単一の統合データを生成するステップとを設ける。これにより、部分領域のそれぞれにおいて、同じ計測点について同一の計測条件で計測した重複部分の計測データに基づいて、個別に計測した部分領域毎の計測データを統合することができる。その結果、計測プローブの数に応じた計測範囲よりも広い範囲の計測を行うことができる。また、広い計測範囲全体にわたる単一の統合データによって、計測データ解析を容易に、かつ、計測範囲全体にわたって統一的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、計測プローブの数に応じた計測範囲よりも広い範囲の計測を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、
図1〜
図11を参照して、本発明の一実施形態による光計測装置100の全体構成について説明する。本実施形態では、光計測装置100は、近赤外分光法(NIRS)による光計測(脳機能計測)を行う脳機能計測装置である。
【0023】
図1に示すように、光計測装置100は、光計測ユニット1と、制御ユニット2とから構成されている。光計測装置100は、光ファイバを介して接続された計測プローブ3(送光プローブ3aおよび受光プローブ3b)を用いて、被験者の脳活動を計測する機能を有する。
【0024】
光計測装置100の送光プローブ3aおよび受光プローブ3bは、それぞれ、被験者の頭部に装着されたプローブ固定用のホルダ4に取り付けられることにより、被験者の頭部表面上の所定位置に配置される。そして、光計測装置100は、送光プローブ3aから近赤外光の波長領域の計測光を照射し、被験者の頭内で反射した計測光を受光プローブ3bに入射させて検出することにより、計測光の強度(受光量)を取得する。取得した計測光の強度に基づいて、脳活動に伴うヘモグロビン量(酸素化ヘモグロビン、脱酸素化へグロビンおよび総ヘモグロビン)の変化を取得することができる。これにより、光計測装置100は、脳活動に伴うヘモグロビン量の変化、すなわち血流量の変化や酸素代謝の活性化状態を非侵襲で取得することが可能である。光計測では、送光プローブ3aおよび受光プローブ3bのペアによって構成される計測点毎に、脳活動が計測される。計測データは、脳機能計測におけるレスト期間に対するタスク期間の相対的なヘモグロビン変化量として取得される。なお、計測チャンネル6は、本発明の「計測点」の一例である。
【0025】
図2に示すように、ホルダ4は、等間隔D(たとえば3cm)で行列状に配列された多数の取付穴4aを有しており、それぞれの取付穴4aに1つずつ計測プローブ3を挿入して固定することが可能となっている。このため、隣接する送光プローブ3aと受光プローブ3bとは、所定間隔Dを隔てるように配置される。送光プローブ3aおよび受光プローブ3bは、各取付穴4aに対して、行および列の各方向に交互に並ぶように配置される。これにより、隣接する送光プローブ3aと受光プローブ3bとの間に計測点(計測チャンネル6、
図5参照)が形成される。使用者は、計測したい部位(前頭部、頭頂部、側頭部、後頭部など)に応じて取付穴4aへのプローブ配置を決定し、計測プローブ3をホルダ4に取り付ける。
【0026】
次に、光計測装置100の装置構成について詳細に説明する。
【0027】
図3に示すように、光計測ユニット1は、被験者によって携行可能に構成された小型の携帯型ユニットとして構成されている。また、複数の光計測ユニット1と制御ユニット2とは、相互通信が可能なように無線接続されている。これにより、光計測装置100では、脳機能計測中も被験者が制御ユニット2の近傍位置に拘束されることなく、被験者が光計測ユニット1を携行して自由に移動可能であり、日常生活に近い環境で脳機能計測を行うことが可能である。
【0028】
光計測ユニット1は、光ファイバ5を介して接続された送光プローブ3aおよび受光プローブ3bを備えている。光計測ユニット1には、それぞれ複数の送光プローブ3aおよび受光プローブ3bが接続可能である。光計測ユニット1は、たとえば、8本の送光プローブ3aおよび8本の受光プローブ3bの、合計16本の計測プローブ3を備えている。各8本の送光プローブ3aおよび受光プローブ3bでは、最大の計測チャンネル数(計測点数)は、23(
図6および
図7参照)である。
【0029】
光計測ユニット1は、携行可能なサイズの筐体10内に、光源11と、光検出部12と、光源駆動部13と、A/D変換器14と、本体制御部15と、通信部16と、記憶部17とを備えている。
【0030】
光源11は、光ファイバ5を介して送光プローブ3aに計測光を出力するように構成されている。光源11は、半導体レーザーやLEDなどからなり、近赤外光の波長領域で複数波長の計測光を出力可能に構成されている。光検出部12は、APD(アバランシェフォトダイオード)や光電子増倍管などからなり、受光プローブ3bに入射した計測光を、光ファイバ5を介して検出するように構成されている。その結果、光検出部12は、検出した計測光に応じた受光量信号を出力する。光源駆動部13は、本体制御部15からの制御信号に従って光源11を点灯および消灯させるように構成されている。A/D変換器14は、光検出部12の受光量信号を所定のデジタル信号に変換して、本体制御部15へ出力するように構成されている。本体制御部15は、設定されたサンプリング期間や計測チャンネル数などの計測条件と、計測光の出力強度および光検出部12の検出感度などに関する計測パラメータとに従って、光源11(光源駆動部13)および光検出部12の動作制御を行う。
【0031】
本体制御部15は、CPUやメモリなどから構成されるコンピュータであり、計測用プログラムを実行することにより、上記した光計測ユニット1の各部を制御するように構成されている。これにより、本体制御部15は、計測動作の実行、得られた受光量信号に基づく計測データの制御ユニット2へのなどの制御を行う。
【0032】
通信部16は、無線の通信モジュールからなり、通信部16は、制御ユニット2の後述する通信部24との間で相互に無線通信可能に構成されている。記憶部17は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなる。記憶部17には、脳機能計測の計測データなどが格納される。光計測ユニット1は、通信部16により計測データを制御ユニット2にリアルタイムで送信するほか、計測データを記憶部17に記録しておくことが可能である。
【0033】
次に、制御ユニット2は、CPUなどから構成される制御部21および解析部22と、HDDなどからなる記憶部23と、無線の通信モジュール(または外部接続の無線通信ユニット)からなる通信部24とを備えたコンピュータ(PC)である。制御部21および解析部22は、それぞれ、記憶部23に格納された制御プログラムをCPUが実行することによって実現される機能ブロックとして構成されている。なお、制御部21および解析部22は、機能ブロックとしてではなく、専用のハードウェア(専用CPU)により構成されてもよい。また、制御ユニット2は、液晶ディスプレイなどからなる表示部25と、キーボードやマウスなどからなる操作入力部26とを備えている。
【0034】
制御ユニット2の各部は、制御部21により制御される。制御部21は、通信部24を介して光計測ユニット1の計測データを取得するように構成されている。解析部22は、記憶部23に記録された計測データ(後述する統合データ23b)に対する画像化(グラフ化)処理や、統計処理等を施すための演算処理を行う。
【0035】
記憶部23は、制御プログラム23aや、計測条件およびパラメータなどの各種情報を記憶する。また、記憶部23は、計測結果としての統合データ23bを記憶するように構成されている。また、通信部24は、光計測ユニット1の通信部16との相互通信により、計測条件および計測パラメータや計測データなどの情報伝送を行うように構成されている。
【0036】
ここで、計測チャンネル(計測点)と、計測範囲との関係について説明する。たとえば
図5に示すように、14本の送光プローブ3aと、13本の受光プローブ3bとを用いる場合、最大で42点の計測チャンネル6での計測を一度に行うことが可能となる。送光プローブ3aおよび受光プローブ3bの間隔(距離Dとする)は一定となっているため、送光プローブ3aおよび受光プローブ3bの数が決まると、被験者の頭部において一度に計測可能な計測範囲MAの広さ(面積)も決まることになる。すなわち、
図5の場合、計測範囲MAは、横8D×縦2Dに相当する広さとなる。
図5では、3行9列のプローブ配置であるが、行列の数を変更しても計測範囲MAの広さに大きな違いは生じない。
【0037】
したがって、たとえば
図6および
図7に示すように、各8本の送光プローブ3aおよび受光プローブ3bでは、最大23点の計測チャンネル6しか構成することができないため、
図5の計測範囲MA(42ch)を一度に計測することはできない。また、計測データは、
図8に示すようにレスト期間Rに対するタスク期間Tの相対的なヘモグロビン変化量として取得されるため、別個に行った計測データを単純に結合することはできない。被験者の状態が時々刻々と変化し、たとえ計測データ(ヘモグロビン変化量)が同値でも、ベースライン(レスト期間Rのヘモグロビン量に相当)が変化している場合には同じデータとして扱うことはできないためである。
【0038】
そこで、本実施形態では、光計測装置100は、計測範囲MAを分割した複数の部分領域A毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うように構成されている。そして、光計測装置100は、部分領域A毎に得られた計測データを統合して、一度に計測可能な計測チャンネル数よりも多い計測チャンネル数の計測データを含んだ統合データ23bを生成するように構成されている。以下では、分割の一例として、
図5の計測範囲MAを、
図6の部分領域A1と
図7の部分領域A2とに2分割する場合について説明する。
【0039】
具体的に、
図4に示すように、本実施形態では、制御部21は、CPUが記憶部23に記憶された制御プログラム23aを実行することによって、領域設定部31、計測部32、係数算出部33、および、データ統合部34として機能するように構成されている。これらの各部の処理によって、統合データ23bの生成が行われる。なお、領域設定部31、計測部32、係数算出部33、および、データ統合部34は、機能ブロックとしてではなく、それぞれ専用のハードウェア(専用CPU)により構成されてもよい。領域設定部31、計測部32、係数算出部33、および、データ統合部34は、それぞれ、本発明の「領域設定手段」、「計測手段」、「係数算出手段」、および、「データ統合手段」の一例である。
【0040】
領域設定部31は、
図6および
図7に示すように、複数の部分領域A毎の計測プローブ3の配置情報41の入力を受け付けるように構成されている。領域設定部31は、操作入力部26(
図3参照)を介したユーザの入力操作や記憶部23からの情報読み込みにより、配置情報41の入力を受け付ける。具体的には、領域設定部31は、計測範囲MAを分割した部分領域A1における各計測プローブ3の配置情報41と、部分領域A2における各計測プローブ3の配置情報41とを、それぞれ取得するように構成されている。なお、最終的な計測範囲MA(
図5参照)の配置情報自体は、計測条件として制御部21に設定される。これにより、領域設定部31は、設定された計測範囲MAに対して、どのようなプローブ配置の部分領域A1および部分領域A2に分割するかの配置情報41を取得する。
【0041】
個々の部分領域Aは、ユーザによって、隣接する部分領域Aとの重複部分B1と、他の部分領域Aとは重複しない非重複部分B2とを含むように設定される。
図6の部分領域A1では、1ch〜19chの計測チャンネル6が非重複部分B2に含まれ、20ch〜23chの計測チャンネル6が重複部分B1に含まれる。
図7の部分領域A2では、5ch〜23chの計測チャンネル6が非重複部分B2に含まれ、1ch〜4chの計測チャンネル6が重複部分B1に含まれる。
【0042】
部分領域A(A1、A2)は、光計測ユニット1で一度に計測可能な広さ(計測チャンネル数)に設定される。重複部分B1は、非重複部分B2に含まれる計測チャンネル数よりも少ない数の、複数の計測チャンネル6(重複チャンネルCとする)を含むように設定される。また、重複部分B1は、重複部分B1の計測チャンネル数が非重複部分B2の計測チャンネル数に対して所定割合の数となるように設定される。すなわち、重複部分B1の広さ(計測チャンネル数)は、非重複部分B2の広さ(計測チャンネル数)に応じた広さとなるように設定される。なお、
図5〜
図7では、重複チャンネルCの番号を囲み文字で示している。
図6および
図7に示した例では、重複部分B1の計測チャンネル数が4、非重複部分B2の計測チャンネル数が19の、合計23チャンネルである。
【0043】
計測チャンネル数の割合については、非重複部分B2の計測チャンネル数に対する重複部分B1の計測チャンネル数の割合を、1/9以上とすることが好ましい。後述するように、重複部分B1の計測チャンネル数が多い程、計測データの補正の精度を向上させることが可能である一方、個々の部分領域Aがカバーする範囲としては狭くなって同じ分割数での計測範囲MAが狭くなる。したがって、計測データの補正の精度と計測範囲MAの広さとの両立を図るため、重複部分B1の計測チャンネル数の割合は、1/9以上を確保しつつ、1/9に近づけることが好ましい。なお、計測範囲MAの分割数は、最小で2である。そのため、光計測ユニット1の計測プローブ3の数(部分領域Aの最大計測チャンネル数)を考慮して、所望の計測範囲MAを2分割した場合でも重複部分B1の計測チャンネル数を十分に確保できる場合には、この割合を1/9よりも大きくすればよい。この結果、
図6および
図7に示した例における重複部分B1の計測チャンネル数の割合は、4/19=1/4.75である。計測範囲MAを2分割した場合に重複部分B1の計測チャンネル数の割合が1/9を下回る場合や、2分割では計測範囲MAをカバーできない場合には、重複部分B1の計測チャンネル数の割合を1/9以上にすることが可能な分割数を検討すればよい。
【0044】
領域設定部31は、受け付けたそれぞれの部分領域Aの配置情報41に基づいて、部分領域A同士の重複部分B1における計測チャンネル6を抽出するように構成されている。すなわち、領域設定部31は、隣接する部分領域A1の計測プローブ3の配置と部分領域A2の計測プローブ3の配置とを比較して、互いに重複している計測チャンネル6を、重複チャンネルCとして抽出する。
【0045】
図4に示すように、計測部32は、計測範囲MA全体の計測に際して、重複部分B1を含むように計測範囲MAを分割した複数の部分領域A毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うように構成されている。具体的には、計測部32は、少なくとも、計測データのサンプリング間隔と、タスク期間およびレスト期間を含む計測プロトコルとが同一の計測条件で、複数の部分領域A毎の計測を行うように構成されている。
【0046】
計測プロトコルは、タスク期間Tの長さ(秒)、レスト期間Rの長さ(秒)、タスクとレストとの反復回数や、タスク内容などを含む。これらの計測条件を同一にすることにより、各部分領域Aで得られる計測データを、実質的に等価なデータと見なせるようになる。計測部32は、計測条件に従って光源11(光源駆動部13)および光検出部12の動作制御を行うことにより、部分領域Aに含まれる各計測チャンネル6(重複チャンネルCを含む)の計測データを取得する。計測部32は、部分領域Aの数(計測範囲MAの分割数)に応じた回数の計測を実施することにより、計測範囲MA全体にわたる個々の部分領域Aの計測データを取得する。
【0047】
図4に示すように、係数算出部33は、重複部分B1に含まれる重複チャンネルCの計測データに基づいて、重複部分B1で互いに重複する複数の部分領域Aを相互に対応付ける補正係数Kを算出するように構成されている。補正係数Kは、重複(隣接)する部分領域A同士を統合する際の、一方の部分領域A(A1)の計測データに対する他方の部分領域A(A2)の計測データの補正乗数である。係数算出部33は、互いに重複する複数の部分領域Aのうち、一方の重複部分B1の計測データと、他方の重複部分B1の計測データに補正係数Kを乗じたデータとの誤差が最小となる値を、補正係数Kとして算出するように構成されている。
【0048】
たとえば、
図6および
図7の例では、係数算出部33は、一方の部分領域A1の重複チャンネルC(20ch〜24ch)の計測データと、他方の部分領域A2の重複チャンネルC(1ch〜4ch)の計測データとに基づいて、補正係数Kを算出する。まず、係数算出部33は、
図8に示すように、部分領域A1の4つの重複チャンネルC(20ch〜24ch)の計測データを加算平均して、部分領域A1の重複チャンネルデータ42aを算出する。また、係数算出部33は、部分領域A2の4つの重複チャンネルC(1ch〜4ch)の計測データを加算平均して、部分領域A2の重複チャンネルデータ42bを算出する。係数算出部33は、これらの部分領域A1の重複チャンネルデータ42a(関数Fとする)と部分領域A2の重複チャンネルデータ42b(関数Gとする)とに基づいて、補正係数Kを算出する。
【0049】
補正係数Kとしては、計測データの全区間(全計測時間)で一定の値を補正係数Kとして採用することができる。また、補正係数Kは、計測時間に応じて変化する値(時間の関数)であってもよい。
【0050】
補正係数Kを一定値とする場合、係数算出部33は、所定の区間(所定の時間間隔)において、重複チャンネルデータ42bに補正係数Kを乗じたデータ(K×G)と、重複チャンネルデータ42a(F)との誤差(差分)が最小となるような補正係数K(K≒F/G)の値を決定する。所定の区間は、具体的には、タスク期間Tである。補正係数Kの算出は、最小二乗法などの統計的手法による。
図9に、重複チャンネルデータ42a(F)と、補正前の重複チャンネルデータ42b(G)および補正後の重複チャンネルデータ42b(K×G)との一例を示す。
【0051】
補正係数Kを時間関数とする場合、係数算出部33は、重複チャンネルデータ42aの任意の時間ウィンドウ(全波形から所定時間分の一部を切り取ったもの)の移動平均Fm(t)と、重複チャンネルデータ42bの任意の時間ウィンドウの移動平均Gm(t)とを求める。そして、係数算出部33は、K(t)≒Fm(t)/Gm(t)となるような補正係数K(t)を求める。なお、時間ウィンドウの範囲は、所定の時間値(sec)またはデータ点数(2048点など)である。
図10に、算出した補正係数K(t)の一例を示す。また、
図11に重複チャンネルデータ42a(F)と、補正前の重複チャンネルデータ42b(G)および補正後の重複チャンネルデータ42b(K(t)×G)との一例を示す。
【0052】
図4に示すように、データ統合部34は、複数の部分領域Aのそれぞれの重複部分B1(重複チャンネルC)の計測データに基づいて複数の部分領域A毎の計測データを統合し、計測範囲MA全体にわたる単一の統合データ23bを生成するように構成されている。また、データ統合部34は、重複部分B1(重複チャンネルC)の計測データ同士が互いに略一致(近似)するように部分領域Aの計測データを補正することにより、複数の部分領域A毎の計測データを統合するように構成されている。
【0053】
データ統合部34は、最初に計測された部分領域A(A1)の計測データに合わせるように、後に計測された部分領域A(A2)の計測データに補正係数Kを乗じて補正していくことにより、統合データ23bを生成する。また、データ統合部34は、重複部分B1(重複チャンネルC)については、相互の部分領域Aの計測データの加算平均を重複チャンネルCの計測データとして統合するように構成されている。
【0054】
図6の部分領域A1および
図7の部分領域A2の計測データを統合して、
図5の計測範囲MAの統合データ23bを生成する場合、データ統合部34は、以下のようにして統合データ23bを生成する。以下では、統合データ23bのXch(X=1〜42)のデータをPs(X)、部分領域A1のYch(Y=1〜23)の計測データをP1(Y)、部分領域A2のZch(Z=1〜23)の計測データをP2(Z)として表す。
1:統合データ23bの1ch〜19chでは、Ps(X)=P1(Y)とする。ここで、X=Y=1〜19である。
2:統合データ23bの20ch〜23chでは、Ps(X)=(P1(Y)+K×P2(Z))/2とする。ここで、Y=20〜23、Z=1〜4である。
3:統合データ23bの24ch〜42chでは、Ps(X))=K×P2(Z)とする。ここで、Z=5〜23である。
【0055】
たとえば、統合データ23bの22chのデータPs(22)は、(P1(22)+K×P2(3))/2となる。以上のようにして、データ統合部34は、計測範囲MAの全体にわたる各計測データ(1ch〜42ch)をまとめて、単一の統合データ23bとして生成する。データ統合部34は、生成した統合データ23bを単一の計測データファイルとして記憶部23に記憶させる。
【0056】
ここで、部分領域A1の計測データと部分領域A2の計測データとは、個別に取得されることから、それぞれの計測データの間には必ず変動要因が存在する。しかし、同一の被験者に対して、同一の計測条件でそれぞれの計測を行う場合には、1回目の部分領域A1の計測と、2回目の部分領域A2の計測との間の時間間隔も、計測プローブ3の配置を変更するだけの比較的短時間とすることができる。そのため、重複チャンネルデータ42bを補正係数Kにより補正して、重複チャンネルデータ42aと略一致させることにより、これらの計測データを等価なデータと見なすことが可能である。この結果得られた補正係数Kによって部分領域A2の計測データP2(Z)を補正することによって、統合データ23bに含まれる部分領域A1の計測データP1(Y)と、部分領域A2の計測データP2(Z)とを、実際上要求される精度範囲で同等のデータとして取り扱う(統合する)ことが可能となる。これにより、光計測ユニット1に備えられた計測プローブ3では一度に計測することができない広い計測範囲MAの計測データを、統合データ23bとして統一的に取り扱い解析することが可能となる。
【0057】
次に、
図4、
図6〜
図8および
図12を参照して、本実施形態の光計測装置100による統合データ23bの生成処理について説明する。以下の制御処理は、光計測装置100の制御部21(領域設定部31、計測部32、係数算出部33、および、データ統合部34)(
図4参照)によって実行される。
【0058】
まず、
図12のステップS1において、制御部21の計測プログラムが起動される。ステップS2において、制御部21は、計測条件および計測パラメータを設定する。制御部21は、操作入力部26を介したユーザの入力操作や記憶部23からの情報読み込みにより、計測条件および計測パラメータを取得する。制御部21は、サンプリング期間および計測プロトコルと、計測チャンネル数(計測範囲MA)などの計測条件と、計測光の出力強度および光検出部12の検出感度などに関する計測パラメータを、通信部24を介して光計測ユニット1に送信する。
【0059】
ステップS3において、領域設定部31は、計測プローブ3の分割配置条件を設定する。すなわち、領域設定部31は、操作入力部26(
図4参照)を介したユーザの入力操作や記憶部23からの情報読み込みにより、部分領域A毎の計測プローブ3の配置情報41(
図6および
図7参照)の入力を受け付ける。この結果、計測範囲MAの分割回数(部分領域Aの数)と、部分領域A毎の計測チャンネル6の数および配置が決定する。
【0060】
ステップS4において、領域設定部31は、部分領域A毎の配置情報41を比較して、重複部分B1(重複チャンネルC)を抽出する。
図6および
図7の例では、領域設定部31は、部分領域A1の20ch〜24chと、部分領域A2の1ch〜4chとを、重複チャンネルCとして自動抽出する。
【0061】
ステップS5において、計測部32は、計測開始指示を受け付けたか否かを判断する。操作入力部26を介したユーザの入力操作により、計測開始指示を受け付けた場合、ステップS6に進む。計測開始指示を受け付けていないと判断した場合、計測部32は、ステップS5の判断を繰り返すことにより待機する。この際、ユーザは、ホルダ4に計測プローブ3を取り付けて、部分領域A1の配置情報として設定した配置を実現してから、計測開始指示を入力する。
【0062】
計測開始指示を受け付けると、ステップS6において、計測部32は、光計測ユニット1に計測開始指示を送信する。これにより、光計測ユニット1は、ステップS2において設定された計測条件に従って計測を実施するとともに、得られた計測データを制御ユニット2に送信する。計測部32は、通信部24を介して取得した計測データを部分領域A1の計測データとして記憶部23に記憶させる。
【0063】
ステップS7において、計測部32は、計測を終了するか否かを判断する。計測部32は、操作入力部26を介したユーザの入力操作(計測終了の操作)、または、予め設定された所定時間経過などに基づいて、計測終了の判断を行う。計測を終了すると判断するまでは、計測が続行されるとともにステップS7の判断が繰り返される。計測を終了すると判断した場合、計測部32は、ステップS8において、計測終了の指示を光計測ユニット1に送信する。この結果、1回目の(部分領域A1の)計測が終了する。
【0064】
ステップS9において、計測部32は、分割回数分の計測が完了したか否かを判断する。すなわち、計測部32は、全ての部分領域Aについての計測が完了したか否かを判断する。計測が完了していない場合、処理がステップS5に戻り、計測部32は、次(2回目)の部分領域A2の計測を開始する。ユーザは、ステップS5において、ホルダ4の計測プローブ3の配置を変更し、部分領域A2の配置情報として設定した配置を実現してから、計測開始指示を入力する。ステップS5〜S9の処理を繰り返すことにより、計測部32は、部分領域A毎の同一の計測条件での計測データを、個別に取得する。ステップS9において計測部32が分割回数分の計測が完了したと判断した場合、処理がステップS10に進む。
【0065】
ステップS10では、係数算出部33が、重複部分B1(重複チャンネルC)の計測データに基づいて補正係数Kを算出する。すなわち、係数算出部33は、
図8に示すように、部分領域A1の重複チャンネルデータ42aと部分領域A2の重複チャンネルデータ42bとを算出する。そして、係数算出部33は、重複チャンネルデータ42aと重複チャンネルデータ42bとに基づいて、補正係数Kの値を決定する。
【0066】
図12のステップS11において、データ統合部34は、補正係数Kを用いて部分領域Aの計測データを補正し、複数の部分領域A毎の計測データを統合する。データ統合部34は、2回目以降に計測された部分領域Aの計測データに補正係数Kを乗じて補正する。また、データ統合部34は、重複部分B1(重複チャンネルC)については、相互の部分領域Aの計測データの加算平均を重複チャンネルCの計測データとして統合する。これにより、部分領域A毎の計測データ(各23ch)から、計測範囲MA(42ch)の全体にわたる単一の統合データ23bが生成される。そして、ステップS12において、データ統合部34は、生成した統合データ23bを記憶部23に記憶させる。
【0067】
以上により、光計測装置100による統合データ23bの生成処理が完了する。この結果、ユーザは、制御ユニット2の解析部22によるデータ解析の際に、単一の統合データ23bに対して統一的な解析処理を行うことが可能となる。
【0068】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0069】
本実施形態では、上記のように、重複部分B1を含むように計測範囲MAを分割した複数の部分領域A毎に、同一の計測条件で個別に計測を行うための計測部32と、複数の部分領域Aのそれぞれの重複部分B1の計測データに基づいて複数の部分領域A毎の計測データを統合し、計測範囲MA全体にわたる単一の統合データ23bを生成するデータ統合部34とを設ける。これにより、部分領域Aのそれぞれにおいて、同じ計測チャンネル6について同一の計測条件で計測した重複部分B1の計測データに基づいて、個別に計測した部分領域A毎の計測データを統合することができる。その結果、光計測装置で計測可能な広さの部分領域A毎の計測データから、より広い計測範囲MA全体にわたる単一の統合データ23bを得ることができる。これにより、計測プローブ3の数に応じた計測範囲MAよりも広い範囲の計測を行うことができる。この効果は、十分な計測プローブ3の数を確保することが困難な、小型で携帯型の光計測ユニット1を備えた光計測装置100において特に有効である。また、単純に複数回の計測を行う場合には計測データ解析も別個に行う必要があるのに対して、本実施形態の光計測装置100によれば、広い計測範囲MA全体にわたる単一の統合データ23bによって、計測データ解析を、容易に、かつ、計測範囲MA全体にわたって統一的に行うことが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、重複部分B1の計測データ同士が互いに略一致するように部分領域Aの計測データを補正することにより、複数の部分領域A毎の計測データを統合するようにデータ統合部34を構成する。これにより、それぞれの部分領域Aの計測データを、同時に計測した場合と同等のデータとみなすことが可能となる。この結果、複数の部分領域Aの計測データを統合する場合でも、計測範囲MA全体を一度に計測した場合と同等の信頼性の高い統合データ23bを得ることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、重複部分B1の計測データに基づいて、重複部分B1で互いに重複する複数の部分領域Aを相互に対応付ける補正係数Kを算出する係数算出部33を設けるそして、補正係数Kを用いて重複部分B1の計測データ同士が互いに略一致するように部分領域Aの計測データを補正するようにデータ統合部34を構成する。これにより、重複部分B1の計測データから得られた補正係数Kを用いることによって、部分領域A全体の計測データの補正を容易に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、互いに重複する複数の部分領域Aのうち、一方の重複部分B1の計測データと、他方の重複部分B1の計測データに補正係数Kを乗じたデータとの誤差が最小となる値を、補正係数Kとして算出するように係数算出部33を構成する。これにより、重複部分B1の計測同士を精度よく近似する(略一致させる)ことができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、部分領域Aの重複部分B1以外の非重複部分B2に含まれる計測チャンネル数よりも少ない数の、複数の計測チャンネル6(重複チャンネルC)を重複部分B1に含める。これにより、非重複部分B2の計測チャンネル数が多くなる分、少ない分割数でより多くの計測チャンネル6(より広い計測範囲MA)の計測データを得ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、重複部分B1の計測チャンネル数が非重複部分B2の計測チャンネル数に対して所定割合の数となるように重複部分B1を設定する。これにより、非重複部分B2の広さ(すなわち、計測チャンネル数の多さ)に応じた広さ(計測チャンネル数)の重複部分B1を設定することができる。ここで、重複部分B1の計測データを多くするほど、計測範囲MA全体を一度に計測した場合のデータに統合データ23bを近似させることができる。そのため、非重複部分B2の広さに応じた適切な広さ(適切な所定割合)の重複部分B1を設定することによって、統合データ23bの信頼性と、計測範囲MAの広さとのバランスのとれた良好な統合データ23bを得ることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、複数の部分領域A毎の計測プローブ3の配置情報41の入力を受け付ける領域設定部31を設ける。そして、領域設定部31を、受け付けたそれぞれの部分領域Aの配置情報41に基づいて、部分領域A同士の重複部分B1における計測チャンネル6を抽出するように構成する。これにより、計測プローブ3の配置情報41を入力するだけで、重複部分B1における計測チャンネル6(重複チャンネルC)を決定することができる。この結果、単一の統合データ23bを得るための作業を簡略化することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、計測データのサンプリング間隔と、タスク期間Tおよびレスト期間Rを含む計測プロトコルとが同一の計測条件で、複数の部分領域A毎の計測を行うように計測部32を構成する。これにより、それぞれの部分領域Aの重複部分B1の計測データを等価なデータと見なすことができるので、統合データ23bの信頼性を向上させることができる。また、サンプリング間隔が一致することから、計測データ同士の統合を容易に行うことができる。
【0077】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0078】
たとえば、上記実施形態では、携帯型の光計測ユニット1と、制御ユニット2とを備えた光計測装置の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筐体内に光計測ユニットと制御ユニットとを内蔵した大型の光計測装置に本発明を適用してもよい。
【0079】
また、上記実施形態において示した計測範囲MA、計測プローブ3の配置、計測チャンネル6の数および重複チャンネルCの数は、あくまでも一例である。これらの計測範囲MA、計測プローブ3の配置、計測チャンネル6の数および重複チャンネルCの数は、上記した以外の構成であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、計測範囲MAを部分領域A1と部分領域A2とに2分割する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、計測範囲を何分割してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、係数算出部により補正係数Kを算出する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補正係数を算出せずに部分領域毎のデータを補正してもよい。本発明では、部分領域毎の重複チャンネルの計測データに基づいて、互いの重複チャンネルの計測データ同士を略一致させるように、部分領域の各計測データを補正するものであれば、どのような補正方法を用いてもよい。たとえば、独立成分分析ICAや、主成分分析PCAなどと呼ばれる統計的手法を用いて計測データを補正してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、統合データ23bのうち、重複部分B1(重複チャンネルC)のデータについては、相互の部分領域A1およびA2の計測データ(部分領域A2については、補正係数Kを乗じた値)の加算平均を採用する例について示したが、本発明はこれに限られない。重複部分については、部分領域A1の計測データをそのまま用いてもよいし、部分領域A2の計測データに補正係数を乗じた値を用いてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。