(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1方向の長さを測長され得る被測長製品の製造工程において、前記被測長製品に欠陥が発生した際に、該欠陥を有する被測長製品にマーキングを施す被測長製品の検査方法であって、前記被測長製品の欠陥の有無を検出する欠陥検出工程と、前記被測長製品の少なくとも1方向の長さを測る測長工程を備え、前記欠陥検出工程により与えられる欠陥の位置情報と、前記測長工程により与えられる測長情報に基づいて、前記欠陥を有する被測長製品の長さ方向における予め定められた位置にマーキングを行うマーキング工程と、前記被測長製品を回収する回収工程を備え、該回収工程が被測長製品を一定の周期で巻き取る工程であって、前記回収工程における被測長製品の巻太りを考慮した回転周期または回転角度に基づいて、前記マーキング工程において欠陥を有する被測長製品にマーキングを施す位置を決定することを特徴とする、被測長製品の検査方法。
更に、前記被測長製品を搬送する搬送工程を備え、前記被測長製品が、少なくとも搬送工程による搬送中は途切れることなく連続的に製造される製品であることを特徴とする請求項1に記載の被測長製品の検査方法。
少なくとも1方向の長さを測長され得る被測長製品の製造装置において、前記被測長製品に欠陥が発生した際に、該欠陥を有する被測長製品にマーキングを施す被測長製品の検査装置であって、前記被測長製品の欠陥の有無を検出する欠陥検出ユニットと、前記被測長製品の少なくとも1方向の長さを測る測長ユニットを備え、前記欠陥検出ユニットにより与えられる欠陥の位置情報と、前記測長ユニットにより与えられる測長情報に基づいて、前記欠陥を有する被測長製品の長さ方向における予め定められた位置にマーキングを行うマーキングユニットと、前記被測長製品を回収する回収ユニットを備え、該回収ユニットが被測長製品を一定の周期で巻き取るユニットであって、前記回収ユニットにおける被測長製品の巻太りを考慮した回転周期または回転角度に基づいて、前記マーキングユニットが欠陥を有する被測長製品にマーキングを施す位置を決定することを特徴とする、被測長製品の検査装置。
更に、前記被測長製品を搬送する搬送ユニットを備え、前記被測長製品が、少なくとも搬送ユニットによる搬送中は途切れることなく連続的に製造される製品であることを特徴とする請求項6に記載の被測長製品の検査装置。
【背景技術】
【0002】
繊維やファイバ、中空糸膜に代表される糸条など(以降、単に糸条と記す場合もある)は過去より糸条単独で糸条製品として、もしくは糸条を主要な構成部材として製造される最終製品として色々な分野や用途において利用、活用されてきた。とりわけ複数の糸条を束ねて得られる糸条束は糸条単独の場合に比べて製品としての性能を飛躍的に大きくできる場合が多く、糸条束自体を束状製品として、もしくは束状製品を主要な構成部材として製造される最終製品が広く利用されるようになってきた。
【0003】
ここで、高機能な束状製品を構成する糸条として注目を浴びているものとしては、高強度・低重量が特徴の炭素繊維や情報化社会を支える光ファイバ、各種フィルターに利用される中空糸膜などが挙げられる。これらは、既に述べたように糸条単独よりも束状製品として用いられることで飛躍的な性能を発揮できるものであるが、一方で糸条単独ではなく複数本の糸条を組み合わされたトータルの束状製品として性能を保証されるべきものであり、その製造、管理においてはより一層の注意を要するものである。
【0004】
具体的に下水処理や海水淡水化などの水処理に用いられる中空糸膜フィルター(以下、モジュールと記す場合もある)の例を挙げて説明する。一般的な中空糸膜フィルターでは、ケースと呼ばれる樹脂製や金属製の容器の中に中空糸膜の糸条束が格納されており、容器の中に流入させた原水を中空糸膜の外側(もしくは内側)から内側(もしくは外側)へ通すことで原水に対して濾過効果が発揮され、容器の外側へ不純物が除去された濾過水を流出させる仕組みとなっている。
【0005】
このモジュールの濾過性能を決定付ける要素は多々あるが、特に重要なものは中空糸膜束の量と欠陥中空糸膜の混入有無の二つである。
【0006】
中空糸膜束の量としては、最終製品たるモジュールの用途や顧客の要求性能によって以下に挙げる複数の物理量の中から少なくとも一つが選ばれることが一般的である。すなわち、モジュールに含まれる全ての中空糸膜を対象とした、総本数、総外径値、代表外径値、総表面積、代表表面積、総重量および代表重量などが挙げられる(以下、これらの一部、もしくは全てを含めて管理量と記す場合もある)。この管理量が所定の値を下回るとモジュールは充分な濾過性能を発揮することができない。
【0007】
一方、欠陥中空糸膜としては、その表面にキズ、欠損、異物、凹み、膨らみ、巨大穴等を含むものや、その形状の過太り(薄膜)、過細り(厚膜)、つぶれ・扁平、ねじれ、閉塞等が挙げられる(以下、これらの一部、もしくは全てを含めて欠陥と記す場合もある)。欠陥中空糸膜がモジュールを構成する中空糸膜束に含まれている場合もモジュールは充分な性能を発揮することができないばかりか、少数の欠陥中空糸膜が混入していたことが原因でモジュール全体の製品寿命を縮めてしまう可能性がある(欠陥部分の破損による原水の濾過水への混ざり込み等)。
【0008】
ここで中空糸膜束の製造方法としては、原料を口金によって中空形状に成形した後、様々な処理を施した後で回転カセによって巻き取り、巻き取られた糸条全てを予め定められた位置で切断する方式が一般的である。また製造コストを抑えるため、複数本の中空糸膜をひとつのラインで同時に成形し、同一の回転カセに巻き取ることもごく一般的であり、ひとつのラインで製造できる本数が増せば増すほど効率的な製造工程となる。
【0009】
しかし実際には中空糸膜束を製造する過程において上述したような欠陥が生じる可能性がある。
【0010】
このため従来の中空糸膜束の製造方法では、所定の回数で巻き取られた中空糸膜束に含まれる全中空糸膜の全周表面を、作業員が目視あるいは触診により検査し、欠陥の発生が認められた中空糸膜の排除を行い、かつ排除によって不足した分の中空糸膜を束に足し込むということを行っていた。
【0011】
しかし上記のような中空糸膜束の製造工程では、明らかに作業員が中空糸膜を検査する工程がボトルネックとなるため、効率的な製造を行うためには多くの作業員を雇用する必要があり、製造コストが大幅に増加する。また、人手ではひとつの中空糸膜束に含まれる全中空糸膜(数百本程度が一般的)の検査を完全に行うことは困難であるため、欠陥を見逃し、欠陥が発生している中空糸膜が最終製品に混入する可能性もあり得る。
【0012】
このような課題を解決する手段として特許文献1および2の構成が提案されている。特許文献1の方法によると、線引きされる光ファイバの内部の欠陥を欠陥検出器により検出し、その後、マーキング装置により欠陥部付近にマーキングが施される。しかしながら特許文献1の方法では、製品の欠陥位置にマーキングがなされており、作業員が排除を行う際に、マーキングを探すという工程が生じるため、従来の検査を行い、不良が認められた中空糸を抜き取るという工程からの作業量の変化は少なく、検査員を削減することは出来ない。
【0013】
さらに特許文献2の方法によると、特許文献1と同様に欠陥位置にマーキングが施された欠陥を含む光ファイバは巻取りボビン1により巻き取られるが、欠陥が巻き終わったタイミングで別のボビン2へ切り替えを行うことで、光ファイバの欠陥をボビン1の巻き終わりに捕らえている。この特許文献2の方法では、欠陥部分の排除は容易に行えるが、この方法では一つのラインに1本の糸条が走行する場合を想定している。すなわちひとつのラインに2本以上の糸条が走行する場合、ある糸条の欠陥部分だけを切除するとその他の糸条との長さが変わるため、同一の回転カセに巻き取ることができない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、被測長製品とは、少なくとも1方向の長さを測長され得る製品であり、例えば炭素繊維、光ファイバ、中空糸膜、繊維、鋼線、医療用カテーテル、フィルム、不織布、鋼板、紙等を例示することができる。また被測長製品における欠陥とは、被測長製品の外径値が過大或いは過小であるもの、被測長製品の表面にキズ、欠損、異物、凹み、膨らみ、巨大穴等を含むものや、特に中空糸膜を例とするとその形状が過太り(薄膜)、過細り(厚膜)となっているものや、つぶれ・扁平、ねじれ、閉塞等が挙げられる。
【0024】
また特に被測長製品として中空糸膜を例にあげると、中空糸膜で構成される束状製品としては、例えば、限外濾過膜、精密濾過膜、気体分離膜、パーベーパレーション膜、透析膜等を例示することができる。ただし本発明の適用は上記したような水処理や人工腎臓に用いられる中空糸膜に限定されることはなく、衣料用繊維、炭素繊維、光ファイバ、鋼線、医療用カテーテル等、実質的に複数本の糸条(被測長製品)を同時に並列で製造可能な構造の糸状の製品で構成されているものあれば、いかなる束状製品でも対象にすることができる。またフィルム、不織布、鋼板、紙等のウェブ状の製品に応用することも可能である。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、被測長製品として中空糸膜の検査方法を一例に図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
たとえば前述の中空糸膜のような糸条製品であれば、糸条製品を回転カセに巻取り、巻き取られた糸を切断して糸条束を得ることにより、糸条製品が周期的に回収される。このときに、将来的に切断される位置を考慮し被測長製品の長さ方向における予め定められた位置において、欠陥を有する糸条製品(以下、不良中空糸膜と記すことがある。)へのマーキングをすることで、全ての不良中空糸膜において長手方向の同位置にマーキングを行う。あるいは被測長製品がフィルムや不織布のようなウェブ状の製品であれば、製膜された後、たとえば板状に切断される位置を考慮して、たとえば板の角もしくは辺にあたる位置へマーキングを行う。このときマーキングは、欠陥の種類や製品中に発生している欠陥数または欠陥の程度に応じてマーキングの色あるいは数あるいは位置を変更しても良いし、記号や文字で欠陥の種類や数、程度、詳細な発生位置(座標)等の識別情報を示すことも好ましい。
【0027】
本発明の被測長製品の検査装置は、少なくとも1方向の長さを測長され得る被測長製品に欠陥が発生したとき、この欠陥を有する被測長製品にマーキングを施す被測長製品の検査装置であり、長手方向に1列または2列以上並列して連続走行する被測長製品に対して処理することができる。この検査装置は、欠陥検出ユニット、測長ユニット、マーキングユニットを有する。また搬送ユニット、回収ユニットを備えることができる。
【0028】
欠陥検出ユニットは、被測長製品の欠陥の有無を検出し、欠陥の位置情報を得る。欠陥検出ユニットは、検査ヘッド、検査制御機構から構成される。検査ヘッドは、中空糸膜(被測長製品)の単糸を監視する。検査ヘッドとしては汎用のデジタルカメラやアナログカメラ、汎用カメラ用レンズと照明を組み合わせたもの、もしくはLED照明やレーザー光を使用した形状計測センサ等が使用できる。検査制御機構は、検査ヘッドが得た情報を処理して実際に欠陥の有無を検査する。検査制御機構としては汎用PCに画像取込ボードや信号処理ボード、通信ボード、信号処理ソフトウェア、システム制御ソフトウェア等をインストールして構築したシステムや市販の画像検査システムを用いることができる。
【0029】
測長ユニットは、被測長製品の少なくとも1方向の長さを測り、測長情報(被測長製品における長手方向の座標や回収量)を得る。測長ユニットは、測長ヘッド、測長演算機構から構成される。測長ヘッドの一例としては回収ユニットの回収状況や搬送ユニットの搬送状況を監視するための汎用のエンコーダや回転数を計測可能な搬送ロールが挙げられる。測長演算機構では測長情報を回収工程の回収周期と関連付けて管理することで被測長製品における絶対位置と回収周期の同期が可能となる。測長演算機構としては汎用のPCやプログラマブルコントローラーに専用のシステム制御ソフトウェアをインストールしたものなどを使用することができる。また別の例として測長演算機構が直接的に回収ユニットや搬送ユニットの制御機構から必要な測長情報を収集しても良い。更には既に上述した欠陥検出ユニットが絶え間なく被測長製品の検査を実行しているので、その検査情報から直接、マーカー制御機構へ測長情報を提供しても良い。これらのいずれの手段を用いて測長情報を得ても良いが、その測長情報は必ず回収ユニットの周期的な回収単位と関連付けられるように考慮されている必要がある。
【0030】
マーキングユニットは、欠陥検出ユニットにより与えられる欠陥の位置情報と、測長ユニットにより与えられる測長情報に基づいて、欠陥を有する被測長製品に対し、その長さ方向における予め定められた位置にマーキングを行う。マーキングユニットは、マーキングヘッド、マーカー制御機構から構成される。
【0031】
マーカー制御機構は、被測長製品が将来、周期的に回収される単位(周期長さまたは周期角度)を考慮しつつ、予め設計された中空糸膜の搬送速度や各ユニットの位置関係を踏まえた上で測長情報と欠陥の発生情報・位置情報をもとに周期的な回収単位において、予め定められた位置にマーキングを行うべくマーキングヘッドを動作させるタイミングを計る。本明細書において、この予め定められた位置をマーカーエリアということがある。マーキングヘッドはマーカー制御機構からの指令に従い、欠陥中空糸膜のマーカーエリアを狙ってマーキングを施す。
【0032】
マーキングヘッドを配置する数は、被測長製品の列の数と同数にすることができる。或いはマーキングヘッドの数を被測長製品の列の数よりも少なくすることができる。ただしマーキングヘッドの数を被測長製品の列の数よりも少なくする場合にはマーキングユニットにマーキングヘッド移動機構および移動制御機構を備える必要が生じる場合がある。マーカーヘッド・マーカー制御機構としては市販のレーザーマーカーやインクジェットプリンター、油性インクペンマーカー、ラベル貼り付け機、スタンプマーカー、焼印マーカーなどを用いることができる。またマーキングヘッド移動機構、移動制御機構としては市販の可動ステージやステージコントローラーを用いることができる。
【0033】
本発明の被測長製品へのマーキング装置は、被測長製品を搬送する搬送ユニットを備えることができる。被測長製品は、少なくとも搬送ユニットによる搬送中は途切れることなく連続的に製造される。これにより回収ユニットで回収される被測長製品が周期的な回収単位を保って回収されていることを保証することができる。搬送ユニットは、搬送ロール(駆動)、搬送ロール(フリー)、糸道ガイド、搬送ロール(駆動)制御機構から構成される。いずれも市販品を被測長製品や工程の都合に合わせてカスタマイズして使用すればよい。
【0034】
本発明の被測長製品の検査装置は、被測長製品を回収する回収ユニットを備えることができる。また回収ユニットは、連続走行する複数の被測長製品(例えば中空糸膜)を合糸しながら、束状製品にして回収することができる。回収ユニットとしては、例えば巻取回収ユニット、折返し回収ユニット、切断回収ユニットを例示することができる。
【0035】
巻取回収ユニットは、マーキングユニットを通過した被測長製品を一定の周期で巻き取るユニットである。巻取回収ユニットは、カセ、巻取回収制御機から構成される。巻取回収ユニットを使用するとき、マーキングユニットは、被測長製品の巻太りを考慮した回転周期または回転角度に基づいて、被測長製品にマーキングを施す位置を決定する。
【0036】
折返し回収ユニットは、マーキングユニットを通過した被測長製品を一定長に折り返しながら回収するユニットである。折返し回収ユニットは、折返し歯車、移動ガイド、折返し回収制御機構から構成される。折返し回収ユニットを使用するとき、マーキングユニットは、折り返し長さの周期に基づいて、被測長製品にマーキングを施す位置を決定する。
【0037】
切断回収ユニットは、マーキングユニットを通過した被測長製品を一定長に切断しながら回収するユニットである。切断回収ユニットは、回収トレー、クリップ、クリップレール、カッター、切断回収制御機構から構成される。切断回収ユニットを使用するとき、マーキングユニットは、切断長さに基づいて、被測長製品にマーキングを施す位置を決定する。
【0038】
これら回収ユニットは全て市販の回収装置を被測長製品や工程の都合(仕様および要件)に合わせてカスタマイズして使用すればよい。
【0039】
上述した被測長製品の検査装置を備える被測長製品の製造装置は、欠陥が発生している製品の排除作業の大幅な効率化が図れ、同作業の高速化あるいは作業人員の削減が可能となり、被測長製品を製造する効率を高くすることができる。
【0040】
本発明の被測長製品の検査方法は、少なくとも1方向の長さを測長され得る被測長製品の製造工程において、被測長製品に欠陥が発生したときに、欠陥を有する被測長製品にマーキングを施す被測長製品の検査方法である。この検査方法は、欠陥検出工程、測長工程、マーキング工程を備える。また搬送工程および/または回収工程を備えることができる。
【0041】
欠陥検出工程は、長手方向に1列または2列以上並列して連続走行する被測長製品に対して、欠陥の有無を検査し、欠陥の位置情報を得る。
【0042】
測長工程は、被測長製品の少なくとも1方向の長さを測り、測長情報を得る。
【0043】
マーキング工程は、欠陥検出工程により与えられる欠陥の位置情報と、測長工程により与えられる測長情報に基づいて、欠陥を有する被測長製品の長さ方向における予め定められた位置(マーカーエリア)にマーキングを行う。この方法は、被測長製品が将来、周期的に回収される単位(周期長さまたは周期角度)を考慮し、この周期的な回収単位のうち、予め定められた位置にマーキングを行うことを特徴とする。マーキングを施すマーキングヘッドの数は、被測長製品の列の数と同数、或いは被測長製品の列の数よりも少なくすることができる。
【0044】
図1は、被測長製品の検査方法の実施形態の一例を示す概念図である。
【0045】
図1において、複数の被測長製品1が矢印Fの方向に連続走行する。複数の被測長製品1の上流側に検査ヘッド2、その下流に被測長製品1と同数のマーキングヘッド3が配置されている。この例では被測長製品1上の欠陥4の位置を星印で表わしている。また図示しない下流の回収工程において、将来、回収される周期的な回収単位をLで表わしている。
【0046】
欠陥検出工程では、検査ヘッド2および図示しない検査制御機構により、それぞれ被測長製品1について欠陥4の有無が検査され、欠陥4が発生した場合にはその位置情報が得られる。
【0047】
測長工程では、図示しない下流の回収工程に回収された被測長製品の回収量(=長さ)を随時測長し、マーキング工程へ情報を提供する。
【0048】
マーキング工程ではマーキングヘッド3が欠陥を有する被測長製品に対し、欠陥検出工程から得られた欠陥4の位置情報と測長工程から得られた測長情報に基づき、周期的な回収単位Lの内部に予め定められたマーキングエリア5に、マーキング6を施す。本発明の場合、回収単位L内の同一被測長製品に複数の欠陥が生じていたとしてもマーキングエリア5に施すマークは1つで良い。ただしこのマークの形状、色、サイズ、個数を制御することで回収単位L内に含まれる欠陥の素性を表すことも好ましい。
【0049】
なお上記した通り検査情報から直接、測長情報を得ても良いが、この場合には回収工程による回収周期Lと被測長製品における絶対位置の同期が取れていなければならない。具体的には、予めマーキングユニットに回収工程の回収単位Lを登録しておき、検査開始のタイミングを回収工程の回収スタートのタイミングと合わせる初期動作を行うことで可能となる。
【0050】
図1の例は、被測長製品1と同数のマーキングヘッド3を配置した例であるが、
図2〜6に示すように、マーキングヘッド3の数を被測長製品1の列の数より少なくすることができる。
【0051】
図2の実施形態において、マーキングヘッド3は、マーキングが可能なエリアが広いため、一つのマーキングヘッド3が複数の被測長製品1に対しマーキングすることができる。ただしマーキングヘッド3は、マーキング対象の被測長製品1のみにマーキングを施し、マーキング対象外の被測長製品1にはマーキングを施さないような制御ができるものでなくてはならない。例えば一般的なインクジェットマーカーであれば、マーキングしたい被測長製品1の列番に対応し、それぞれ異なった印字パターンを使用することで実現可能となる。
【0052】
図3の実施形態において、マーキングヘッド3は、マーキングヘッド移動機構9によって被測長製品1の流れ方向Fに対し斜めに横切るように移動可能に構成されている。このため、マーキングヘッド3が移動しながらマーキングすることにより、欠陥を有する被測長製品に対し所定のマーキングエリアでマーキングすることができる。なお
図3の例は、マーキングヘッド移動機構9にマーキングヘッド3を一つ取り付けた例であるが、一つのマーキングヘッド移動機構9に複数のマーキングヘッド3を取り付け、それぞれのマーキングヘッド3が、複数の被測長製品1に対しマーキングするように構成することができる。
【0053】
図4の実施形態では、
図3の例におけるマーキングヘッド3の移動量を少なくするため、被測長製品1の流れ方向に垂直な平面上で円弧の周上に、被測長製品1を配置したものである。マーキングヘッド3は、図示しない回転型のマーキングヘッド移動機構によって、マーキング方向の角度を変えながらマーキングを行う。これにより、欠陥を有する被測長製品に対し所定のマーキングエリアでマーキングすることができる。
【0054】
一方、
図5および
図6に示すように、被測長製品1がマーキングヘッドに至るまでの走行距離を、隣接する被測長製品1の走行距離と異ならせることにより、所定のマーキングエリアで欠陥を有する被測長製品1に対しマーキングすることができる。
【0055】
図5において、被測長製品の列を平面方向に広げ、糸道バッファ(被測長製品1の走行距離を調整する機構)を設けることにより、図面の下方側を走行する被測長製品1がマーキングヘッド3に至るまでの走行距離と、図面の上方側を走行する被測長製品1の走行距離とを異なるようにすることができる。このためマーキングヘッド3に至るまでに時間差が生じ、この間にマーキングヘッドは、マーキングヘッド移動機構9によって並列して配置された被測長製品1の間を移動することができる。また
図6では、被測長製品の列を上下方向に広げ、糸道バッファを設けることにより、図面の手前側を走行する被測長製品1がマーキングヘッド3に至るまでの走行距離と、図面の奥側を走行する被測長製品1の走行距離とを異なるようにすることができる。これによりマーキングヘッド3に至るまでに時間差が生じ、この間にマーキングヘッドは、マーキングヘッド移動機構9によって並列する被測長製品1の間を移動することができる。
【0056】
これら
図1〜6の構成はそれぞれ独立で、また組み合わせて採用することが可能であり、被測長製品の製造工程の都合に合わせて自由に設計可能である。また
図1〜6に示した方法以外の方法であっても実質的に、複数並列して製造される被測長製品における所定のマーキングエリア内に複数のマークを施すことのできる構成であれば本件発明に用いることができる。
【0057】
搬送工程は、本件発明の被測長製品の製造工程において、被測長製品を搬送する。被測長製品が、少なくとも搬送工程による搬送中は途切れることなく連続的に製造することができる。
【0058】
回収工程は、連続走行する1本または複数の中空糸膜(被測長製品)を合糸しながら中空糸膜(被測長製品)を回収する。回収工程としては、例えば巻取回収工程、折返し回収工程、切断回収工程を例示することができる。なおもちろん、本発明の被測長製品の製造工程においては複数の中空糸膜(被測長製品)を並列製造する場合に必ずしも合糸する必要はなく、別々に回収しても良い。
【0059】
巻取回収工程は、マーキング工程を通過した被測長製品を一定の周期で巻き取る工程である。巻取回収工程を実施するとき、マーキング工程では、被測長製品の巻太りを考慮した回転周期または回転角度に基づいて、被測長製品にマーキングを施す位置を決定する。巻太りは予めカセの回転回数から予測値を準備しておいても良いし、巻太りに併せてカセの回転速度を調整する巻取制御機構から情報を得ても良いし、カセに備えられた測長ヘッドによってカセの回転の一周期が変化していくことから随時、計算して求めても良い。
【0060】
図7(a)(b)は、巻取回収工程を用いた被測長製品へのマーキング方法の実施形態の一例を示す概念図である。
図7(a)は側面図、
図7(b)は上面図であり、検査ヘッド2、マーキングヘッド3、検査制御機構7、マーカー制御機構8、巻取回収制御機構24、測長ヘッド50、測長演算機構51は
図7(a)のみに記した。
【0061】
図7(a)(b)において、10は中空糸膜の単糸、11は単糸が複数本あわさった合糸中空糸膜、12は回収された合糸中空糸膜束、22は巻取回収装置、23はカセ、231、232、233はそれぞれカセ1番位置、カセ2番位置、カセ3番位置、25は合糸ガイド、26はロール、37は糸道ガイドである。
【0062】
欠陥検出ユニットは検査ヘッド2、検査制御機構7を少なくとも含む。測長ユニットは測長ヘッド50、測長演算機構51を少なくとも含む。マーキングユニットは、マーキングヘッド3、マーカー制御機構8を少なくとも含む。
【0063】
搬送ユニットは図示しない搬送ロール(駆動)、搬送ロール(フリー)、搬送ロール(駆動)制御機構、糸道ガイド37を少なくとも含む。回収ユニットは巻取回収装置22、カセ23、合糸ガイド25、ロール26を少なくとも含む。
【0064】
まず
図7(a)(b)に示すとおり、上流工程から搬送されてきた中空糸膜の単糸10は糸道ガイド37によって走行位置を規定され、合糸ガイド25によって単糸同士があわさって合糸中空糸膜11となり、ロール26に押し付けられつつ、巻取回収装置22のカセ23によって巻き取られ、合糸中空糸膜束12となる(なお本発明の説明においては3本の中空糸膜の単糸10が合糸されている場合を例として挙げているが、合糸される中空糸膜の単糸10の本数は3本に限定されるものではない)。このカセ23により巻き取られる1周当たりの長さが、周期的な回収単位Lに相当する。この周期的な回収単位Lは、合糸中空糸膜11がカセ23に巻き取られるのに伴う巻き太りを考慮して決めることができる。
【0065】
ここでカセ23は
図7(b)のカセ1番位置231、カセ2番位置232、カセ3番位置233に示すように複数の巻き取りポジションを持っていても良く、これらポジションに順次、また同時に合糸中空糸膜11を巻き取ることができる(合糸中空糸膜11のみならず中空糸膜の単糸10についても適用可能であることは既に上記した通りである)。またカセ23は回転軸と同方向に移動可能なように構成されており、当該移動によってカセ1番位置231(カセ2番位置232、カセ3番位置233)内に幅方向均一に合糸中空糸膜11を巻き取る、あるいは巻き取り完了後に引き続いて巻取りを継続するためにカセ位置を隣へ移動するものである。なお当該実施の形態についてはカセ位置が3つの例を示したが、カセ位置の数は必ずしも3つに限定されるものではない。またカセ23を回転軸と同方向に移動する例を示したが、カセ23は回転軸と同方向には固定されており、合糸ガイド25をカセの回転軸と同方向に移動させる方式でも同様の効果が得られる。カセ23に所定量だけ合糸中空糸膜束12を巻き取った後、合糸中空糸膜束12は合糸中空糸膜11とつながっている部分を切断され、カセ23ごと次の切断工程へ搬出される。なお合糸中空糸膜11がこの後も連続して上流から搬送されてくる場合にはすぐに新たな空のカセ23をセットして巻取りを開始し、製造を継続する。
【0066】
中空糸膜の欠陥の有無は、
図7(a)に示すように検査ヘッド2および検査制御機構7として、例えば汎用のデジタルカメラ方式画像検査システムを用いて監視する。検査ヘッド2たるデジタルカメラは複数本、並列して搬送される中空糸膜の単糸10を撮像し、撮像した画像を検査制御機構7に送信し、各中空糸膜の単糸10の欠陥の有無を判定し、欠陥の位置情報を作成する。
【0067】
次に測長ユニットでは測長ヘッド50が、カセが一回転する毎にカセの基準位置を周期的に検知し、測長演算機構51へ毎回送信する。測長演算機構51はこの周期信号を捕らえ、周期信号の時間的間隔が回収単位Lであると認識し、マーキング工程へ測長情報として提供する。このとき測長ヘッド50としては市販のエンコーダを用いることが好ましい。
【0068】
マーキング工程においてマーキングヘッド3は、検査制御機構7および測長演算機構51と通信可能に構成されたマーカー制御機構8によって制御され、検査制御機構7が不良として判定した中空糸膜の単糸10に対し、測長演算機構51から得た測長情報をもとに周期的な回収単位L毎のマーキングエリアにマーキングを施す。
【0069】
さて次に、
図7(a)(b)に示した巻取回収工程に続く、切断工程について
図8を参照して説明する。ここではわかりやすさのためにカセ位置が1つの場合についてのみ説明するが、カセ位置が複数の場合には以下の手順をカセ位置の数だけ増やせば良い。
図8(a)に示すとおり、まずはカッター40に対してカセ23を固定する。その後、カッター40近傍の(回収工程では上流に当たる)位置を結束具41で吊り上げロープ42と結束する。吊り上げロープ42はクレーンレール43に備えられたクレーン44で巻き上げられるように構成されている。その後、
図8(b)に示すとおりカッター40をポジション401へ移動させることで合糸中空糸膜束12をまとめて切断し、中空糸膜束13を得る。中空糸膜束13はその端部を結束具41で吊り上げロープ42と結束されているため、クレーン44を巻き上げ動作させることでカセ23から徐々に取り外されていく。最終的には
図8(c)に示すとおり中空糸膜束13は完全にカセ23から取り外され、かつクレーン44がクレーンレール43に沿って移動することで次の排除工程へ搬送される。
【0070】
排除工程とは、検査工程によって異常を含むと判定された糸条を中空糸膜束13から排除する工程である。この排除工程において、不良中空糸膜にマーキングが施されていることで主に人手に頼る排除工程での不良中空糸膜の排除作業が効率化される。
【0071】
折返し回収工程は、マーキング工程を通過した被測長製品を一定長に折り返しながら回収する工程である。折返し回収工程を実施するとき、マーキング工程では、折返し長さの周期に基づいて、被測長製品にマーキングを施す位置を決定する。
【0072】
図9(a)(b)は、折返し回収工程を用いた被測長製品へのマーキング方法の実施形態の一例を示す概念図である。
図9(a)は側面図、
図9(b)は上面図であり、検査ヘッド2、マーキングヘッド3、検査制御機構7、マーカー制御機構8、折返し回収制御機構36、測長演算機構51は
図9(a)のみに記した。
【0073】
図9(a)(b)において、合糸中空糸膜11は回転する折返し歯車34に移動ガイド35によって所定の長さで折り返しながら回収され、合糸中空糸膜束12″となる。この所定の折り返し長さが、周期的な回収単位Lに相当する。
【0074】
なお合糸中空糸膜11のみならず中空糸膜の単糸10についても適用可能であることは既に上記した通りである。
図9(b)に示すとおり折返し回収装置33は、支点合糸ガイド251を支点に移動ガイド35によって、合糸中空糸膜11をポジション351、352、353へ振り、移動ガイド35と同期して回転する折返し歯車341、342の所定の歯に合糸中空糸膜11を掛けつつ合糸中空糸膜束12″として継続回収する。
【0075】
折返し歯車34に所定量だけ合糸中空糸膜束12″を回収した後、合糸中空糸膜束12″は片側端部を図示しない結束具によって結束され、かつ結束具より端ともう一方の端部を図示しない切断具で切断された状態でクレーンに吊り下げられて排除工程へと搬出される。従って回収手段として切断回収を採用する際には切断工程における中空糸膜束を切断する段階は不要となる。
【0076】
中空糸膜の欠陥の有無は、
図9(a)に示すように検査ヘッド2および検査制御機構7として、例えば汎用のデジタルカメラ方式画像検査システムによって監視する。検査ヘッド2たるデジタルカメラは複数本、並列して搬送される中空糸膜の単糸10を撮像し、撮像した画像を検査制御機構7に送信し、各中空糸膜の単糸10の欠陥の有無を判定し、欠陥の位置情報を作成する。
【0077】
次に測長ユニットでは測長機能つきロール26′が、被測長製品1の搬送に連動して回転しつつ測長演算機構51へ測長機能つきロール26′自身の回転数として測長情報を常時送信する。測長演算機構51はこの回転数信号を捕らえ、予め回収単位Lに相当する回転数信号(の整数倍)がカウントされる時間的間隔が回収単位Lであると認識し、マーキング工程へ測長情報として提供する。このとき測長機能つきロール26′の回転数カウント手段としても市販のエンコーダを用いることができる。
【0078】
マーキング工程においてマーキングヘッド3は、検査制御機構7および測長演算機構51と通信可能に構成されたマーカー制御機構8によって制御され、検査制御機構7が不良として判定した中空糸膜の単糸10に対し、測長演算機構51から得た測長情報をもとに周期的な回収単位L毎のマーキングエリアにマーキングを施す。
【0079】
本発明によれば上記した巻取回収工程の例と同様に、回収工程として折返し回収工程を採用した場合においても、後に続く排除工程において、不良中空糸膜のマーキングエリア5にマーキングが施されていることで主に人手に頼る排除工程での不良中空糸膜の排除作業が大幅に効率化される。
【0080】
切断回収工程は、マーキング工程を通過した被測長製品を一定長に切断しながら回収する工程である。切断回収工程を実施するとき、マーキング工程では、回収単位Lに相当する単位切断長さに基づいて、被測長製品にマーキングを施す位置を決定する。
【0081】
図10(a)(b)は、切断回収工程を用いた被測長製品へのマーキング方法の実施形態の一例を示す概念図である。
図10(a)は側面図、
図10(b)は上面図であり、検査ヘッド2、マーキングヘッド3、検査制御機構7、マーカー制御機構8、切断回収制御機構32は
図10(a)のみに記した。
【0082】
図10(a)(b)において、合糸中空糸膜11はカッター31によって所定の長さに切断されて切断回収装置27の回収トレー28に回収され、合糸中空糸膜束12′となる。この切断する所定の長さが、周期的な回収単位Lに相当する。
【0083】
なお合糸中空糸膜11のみならず中空糸膜の単糸10についても適用可能であることは既に上記した通りである。切断にあたり合糸中空糸膜11はクリップ29によって固定される。
図10(b)に示すとおり、クリップ291〜296はクリップレール30上を特定の間隔を保ちながら合糸中空糸膜11と同じ速度で旋回しつつ、合糸中空糸膜11をクリップ292の位置で掴み、その状態を保持しつつ移動できるものである。その結果、
図10(b)の通り、3つのクリップ291、292、296で合糸中空糸膜11を保持したタイミングでカッター31により切断する。その直後、クリップ291、296を開放することで合糸中空糸膜束11を回収トレー28に収めるが、クリップ292は合糸中空糸膜11を掴んだまま、クリップ292の位置へ移動を継続する。この動作を繰り返し、合糸中空糸膜束12′を継続回収する。
【0084】
回収トレー28に所定量だけ合糸中空糸膜束12′を回収した後、合糸中空糸膜束12′は片側端部を図示しない結束具によって結束され、その後、クレーンに吊り下げられて排除工程へと搬出される。従って回収手段として切断回収を採用する際には切断工程における中空糸膜束を切断する段階は不要となる。
【0085】
中空糸膜の欠陥の有無は、
図10(a)に示すように検査ヘッド2および検査制御機構7として、例えば汎用のデジタルカメラ方式画像検査システムによって監視する。検査ヘッド2たるデジタルカメラは複数本、並列して搬送される中空糸膜の単糸10を撮像し、撮像した画像を検査制御機構7に送信し、各中空糸膜の単糸10の欠陥の有無を判定し、欠陥の位置情報を作成する。
【0086】
次に測長ユニットとしては欠陥検出ユニットおよび回収ユニットの機能を代用する。すなわち、欠陥検出ユニットは絶え間なく被測長製品の検査を実行しているので、その検査情報から直接、マーカー制御機構8へ測長情報を提供し、かつ回収ユニットはマーカー制御機構8へ被測長製品の回収開始のタイミングを提供することでマーキング工程はマーカーエリアを認識してマーキングを行うことができる。
【0087】
マーキングヘッド3は、検査制御機構7、切断回収制御機構32と通信可能に構成されたマーカー制御機構8によって制御され、検査制御機構7が不良として判定した中空糸膜の単糸10に対し、周期的な回収単位L毎のマーキングエリアにマーキングを施す。
【0088】
本発明によれば上記した巻取回収工程および折返し回収工程の例と同様に、回収工程として切断回収工程を採用した場合においても、後に続く排除工程において、不良中空糸膜のマーキングエリア5にマーキングが施されていることで主に人手に頼る排除工程での不良中空糸膜の排除作業が大幅に効率化される。
【0089】
以上に示したように本発明の被測長製品の製造方法は、上述した被測長製品の製造装置を使用し、高品質の被測長製品を、効率的かつ安定的に製造することができる。
【実施例】
【0090】
<実施例1>
図1、
図7および
図8に示す構成で中空糸膜束の製造を行った。なお同時に並列製造する単糸は3本とし、
図1においては図面左手から3本を対象とした(残りの5本は欠条)。搬送ユニットは市販の駆動ロールをモーターとインバーターで制御し、一部をフリーロールでつなぐ構成とした。マーキングユニットとしては市販のインクジェットプリンターを採用し、マーキングヘッドとしてのインクノズルを各単糸に対応した数(本実施例では3門)だけ設置するとともにこのインクジェットプリンターを、ラダー言語を用いて自作した制御ソフトウェアを搭載した市販のプログラマブルコントローラーで制御することとした。回収ユニットとしては自作した制御ソフトウェアを搭載した市販のプログラマブルコントローラーで制御される巻取回収装置を採用し、カセとしては1周が1.4mのものを使用した。欠陥検出ユニットとしては市販のLED照明、デジタルラインセンサカメラ、汎用カメラ用レンズ、画像取込ボード、信号処理ボード、汎用PCとC言語を用いて自作したシステム制御ソフトウェアを用いた。測長ユニットとしては市販のエンコーダによってカセ1周の回転を検知するものとし、ラダー言語を用いて自作した制御ソフトウェアを搭載したプログラマブルコントローラーで制御することとした。なお欠陥検出ユニットの汎用PC、測長ユニット、マーキングユニット、回収ユニットのプログラマブルコントローラーはお互いが情報通信可能なように構成されている。
【0091】
中空糸膜の製造条件としては外径の設計値を1425μmとした。また回収ユニットによって回収された中空糸膜束が最終製品たる水処理のモジュールに組み込まれた後に、そのモジュールの性能を保証するために求められる総表面積の規格値は4.02m
2であることが定められている。ここで、回収単位Lが1400mmで、642本の単糸で中空糸膜束を構成すれば総表面積は4.0216806m
2となって規格値を満足することになるので、合糸3本の製造条件においてはカセを214回転させることとした。またマーキングエリアは切断工程で合糸中空糸膜束が切断される位置を基準(0mm)として、300〜500mmに設定した。
【0092】
このような条件の下で中空糸膜束の製造を実行した。すると、あるロットの製造状態において欠陥検出ユニットは不良中空糸膜(キズ)を5個、不良中空糸膜(異物)を35個、不良中空糸膜(膨らみ)を2個、検出した。また測長ユニットは製造装置の運転開始にあわせ、カセ1周毎にカセの基準点が所定の位置を通過したことを測長情報としてマーキングユニットへ伝え、マーキングユニットは欠陥検出ユニットからの欠陥情報を得て欠陥を含む中空糸の単糸に対して、回収単位Lを考慮したマーキングエリアにマーキングを行った。なお回収単位Lの間に同一の単糸に複数個の欠点が発生した場合もマーキングはひとつで良いとの条件で運転していたため、最終的には合計で39個のマーキングが施された。
【0093】
カセに巻き取られて回収完了した合糸中空糸膜束は、切断工程において端部を結束具によって束ねられた中空糸膜束とされ、クレーンに吊り下げられて排除工程へ運搬された。排除工程では専任の作業員が中空糸膜束の切断位置を基準(0mm)として、300〜500mmの位置を集中的に確認して39個のマーキングを発見し、642本の単糸から39本の単糸を排除した。またマーキングの位置精度も確認したが、回収終了時には巻太りが生じていたにもかかわらず、39個のマーキングは全て所定のマーキングエリア内に存在していた。その後、欠陥を含まないことが事前に確認されている単糸39本を当該中空糸膜束に足し込んだ。
【0094】
以上のように製造された中空糸膜をモジュールに組込み、モジュール出荷前の最終検査を実施したところ、これらモジュールの濾過性能は十分であった。
【0095】
<実施例2>
上記実施例1において、ある時期に、製造効率を向上させるため並列製造する単糸を3本から8本へと増量し、なおかつ製膜速度・搬送速度も従来比20%増速する設備改造工事を実施した。また同時期に工程数を減らすために切断工程を排除する目的で回収工程も
図10に示す切断回収へ変更した。
【0096】
これに伴いマーキングユニットにおいては
図3に示すようにマーキングノズル3門をそれぞれ個別に駆動できる3台の1軸可動ステージに取り付け(ここで
図3はノズル1門分を表す)、なおかつ1軸可動ステージは単糸中空糸膜の走行方向Fに対して斜めに配した。3門のノズルはそれぞれ8本の単糸中空糸膜に対して3本、2本、3本をノズル自身のマーキング担当分とするように設定した。また、20%増速された搬送速度に対応して充分に余裕を持ってマーキングエリアにマーキングを行うため、搬送ユニットも
図6のように単糸中空糸膜の列を上下方向に広げて糸道バッファを設けるように構成した(正確には端から3本、2本、3本のグループ毎に適正な糸道バッファを設計した)。
【0097】
また測長ユニットにおいてもカセの回転をエンコーダによって監視する方式を取りやめ、切断回収制御機構として採用したプログラマブルコントローラー(制御用の自作ソフトをインストールしたもの)が制御するクリップの回転周期を測長情報としてマーキングユニットに提供する方式とした(なお他の構成は実施例1と同様とする)。
【0098】
実施例1で述べたように中空糸膜の製造条件としては外径の設計値を1425μmとし、最終製品たるモジュールの性能を保証するための中空糸膜束の総表面積の規格値は4.02m
2であることから、回収単位Lが1400mm、642本以上の単糸で中空糸膜束を構成する必要がある。これに並列製造を8本で行うことを考慮し、回収ユニット(切断回収)による回収は81回と設定した。
【0099】
このような条件の下で中空糸膜束の製造を実行した。すると、あるロットの製造状態において欠陥検出ユニットは不良中空糸膜(キズ)を2個、不良中空糸膜(異物)を25個、不良中空糸膜(欠損)を4個、不良中空糸膜(凹み)を10個、検出した。また測長ユニットの機能を兼ねた回収ユニットは製造装置の運転開始にあわせ、切断1回毎にその実行実績を測長情報としてマーキングユニットへ伝え、マーキングユニットは欠陥検出ユニットからの欠陥情報を得て欠陥を含む中空糸の単糸に対して、回収単位Lを考慮したマーキングエリアにマーキングを行った。なお回収単位Lの間に同一の単糸に複数個の欠点が発生した場合もマーキングはひとつで良いとの条件で運転していたため、最終的には合計で37個のマーキングが施された。
【0100】
回収トレーに納められて回収完了した合糸中空糸膜束は、回収工程において端部を結束具によって束ねられた中空糸膜束とされ、クレーンに吊り下げられて排除工程へ運搬された。排除工程では専任の作業員が中空糸膜束の切断位置を基準(0mm)として、300〜500mmの位置を集中的に確認して37個のマーキングを発見し、648本の単糸から37本の単糸を排除した。またマーキングの位置精度も確認したが、従来比20%増速された搬送速度での運転、かつ8本の並列製造に対し3門のインクジェットノズルでマーキングを行ったにもかかわらず、37個のマーキングは全て所定のマーキングエリア内に存在していた。その後、欠陥を含まないことが事前に確認されている単糸31本を当該中空糸膜束に足し込んだ(モジュール性能を正常に発揮するには中空糸膜束は642本の単糸で構成されていれば良い)。
【0101】
以上のように製造された中空糸膜をモジュールに組込み、モジュール出荷前の最終検査を実施したところ、これらモジュールの濾過性能は十分であった。
【0102】
<比較例1>
一方、実施例1と同様の製造状態において本発明を構成する検査、マーキングを行うことなく中空糸膜束を製造し、本発明の効果を確認した。つまり排除工程では、排除工程に搬送されてきた単糸642本で構成された中空糸膜束の全体を専用の作業員がまず検査し、欠陥を発見した場合には当該中空糸膜を中空糸膜束から排除するという作業を行った。
【0103】
その結果、実施例1の場合と比べて格段に広い範囲を、肉眼で見えがたく、またその有無・種類が未知の微細な欠陥の発見を目的として検査する、という必要が生じてしまったため、ひとつの中空糸膜束の検査と不良中空糸膜の排除を完了するまでに実施例1の作業時間に対して10倍以上の時間がかかってしまった。
【0104】
また作業員にかかる身体的、精神的負担も大きく、作業の品質を落とさないために格段に多くの休憩時間を必要とした。
【0105】
更にはこのように時間的、体力的な面に配慮して作業を行ったにもかかわらず、人間特有の作業品質ムラが発生してしまい、あるロットにおいては重大欠陥である不良中空糸膜(巨大孔)を作業者が見逃してしまった。この結果、この不良中空糸膜を含んだまま製造されたモジュールの出荷前の最終検査を実施したところ、当該モジュールにおいては所定の濾過性能が得られなかった。このため当該モジュールは分解され、原因特定のための解析を行われた後、廃棄処分となった。
【0106】
<比較例2>
また、実施例1の製造状態において本発明を構成する検査、マーキングと異なる従来の構成の検査、マーキングを行うことで中空糸膜束を製造し、本発明の効果を確認した。つまりマーキング工程では、検査装置が欠点を検出した箇所にマーキングを行い、排除工程では、排除工程に搬送されてきた単糸642本で構成された中空糸膜束の全体に対し、専用の作業員がまずマーキング有無チェックを行い、マーキングを発見した場合には当該中空糸膜を中空糸膜束から排除するという作業を行った。
【0107】
その結果、比較例1と比較して肉眼で確認しやすいマーキングを探せば良いため、多少の作業負荷は軽減されたが、依然として実施例1の場合と比べて格段に広い範囲を、その有無が未知のマーキングの発見を目的としてチェックを行う、という必要が生じてしまったため、ひとつの中空糸膜束の検査と不良中空糸膜の排除を完了するまでに実施例1の作業時間に対して8倍程度の時間がかかってしまった。
【0108】
なお、比較例2ではいかなる欠点に対しても同様のマーキングを施したため、マーキングチェックは比較例1における検査に比べれば簡単で、かつ確実性の高い作業であり、幸いにも比較例2において不良中空糸膜の見逃しは発生しなかった。
【0109】
しかし、中空糸膜束全体に対して均一に注意力を利かせて観察する必要があるということについては実質的に比較例1と変わることがないため、作業員にかかる身体的、精神的負担の軽減には繋がらず比較例1とほぼ同等の休憩時間を必要とした。