(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔分離膜エレメント〕
本発明において、エレメントユニットは、複数の分離膜エレメントを有する。その分離膜エレメントは、平膜構造をしたエレメントであって、透過側の面同士が対向するように分離膜を貼りあわせるに際し、膜の周縁部の一部に集水部を設け、かつ集水部以外の周縁部を封止している。封止した周縁部よりも内側の分離膜の透過側表面領域に、樹脂部を配置し、この樹脂部で両側の分離膜の一部を接着させた構造を有する。
【0013】
図1(a)(b)は分離膜エレメントの実施形態を例示する断面図であり、
図1(a)は分離膜複合体の厚さ中心で膜表面と平行に切断した平面視の断面、
図1(b)は厚さ方向の断面を模式的に説明するものである。
【0014】
図1(a)(b)において、分離膜エレメント1は、封止部2、集水部3、ドット状の樹脂部4、集水流路5、分離膜6を有する。分離膜エレメント1は、2枚の分離膜6,6からなる分離膜対で構成される。分離膜6,6は、その透過側の面が互いに向き合い、所定の間隙をあけるように配置される。この間隙の周囲(周縁部)は封止されて封止部2を形成し、この周縁部より内側の分離膜6,6間の一部が樹脂部4により繋がれる。
【0015】
すなわち2枚の分離膜6,6は、所定の間隙を確保するように、その膜表面の一部が樹脂部4により接着される。分離膜6,6の間に形成された所定の間隔は、膜を透過した水が通る流路、すなわち集水流路5となり、ここを通った水は集水部3に集水され、ここから分離膜エレメント1の外部へ取り出される。集水部3を周縁部に配置することにより、ろ過機能を有する分離膜の面積を損なうことがない。
【0016】
分離膜エレメント1の周囲(周縁部)は接着樹脂、熱溶着、超音波溶着等の方法により封止され、封止部2を構成する。膜周縁部の一部には集水部3が設けられ、この集水部3は封止されない。
【0017】
ここで、周縁部における封止とは、接着、圧着、溶着、融着、折り畳み等によって、分離膜エレメントの外部の供給水(被処理水)が、分離膜エレメントの内部に周縁部から直接流入しないようにすること(つまり供給水が分離膜を透過すること以外の経路で流入しないようにすること)である。同時に、分離膜を透過した透過水が、集水部3を除き、分離膜エレメントの外部に漏れないようにすることである。
【0018】
なお、対を形成する分離膜6は、独立した2枚の分離膜の対向する縁部を封止したものでもよいし、折り畳まれた1枚の分離膜の対向する縁部を封止したものでもよい。
【0019】
樹脂部4が両方の分離膜の一部を接着する構成とは、分離膜対において、樹脂部4が、一方の分離膜6の透過側面およびそれに対向する他方の分離膜6の透過側面の両方に接着する構成を指す。すなわち、分離膜対において、一方の分離膜は他方の分離膜に、樹脂部を介して固定される。
【0020】
また「内側」は、分離膜6の透過側表面のうち周縁を除いた表面をいう。特に、分離膜が上述のとおり袋状膜を形成している場合、封止部分で囲まれた部分が「内側」に相当する。分離膜6とは、分離膜表面に供給される流体中の成分を分離し、分離膜を透過した透過流体を得るものであれば限定されない。分離膜としては、例えば、分離機能層、多孔性支持層、基材を備えることができる。
【0021】
分離膜6の透過側の面が基材で構成されるとき、基材の中に、樹脂部4の樹脂の成分が含浸していてもよい。分離膜の透過側の基材に樹脂を配置し、分離膜の分離機能層表面から加熱すると、分離膜の透過側から機能層面に向かって、樹脂の含浸が進行する。このように含浸が進行するに従い樹脂と基材との接着が強固となる。このため製造された分離膜エレメント1を洗浄するとき、薬液により透過側から洗浄しても分離膜対の間が剥離し難くなる。
【0022】
分離膜エレメント1において、分離膜6の透過側に所定の間隙を確保することにより、分離膜6を透過した透過水の流動抵抗を小さくすることができる。通常、分離膜エレメントにおいて分離膜6の透過側にスペーサ等の部材を設けないと、分離膜の透過側同士が密着するので、透過水の流動抵抗が大きくなり、その結果透過水の水量が低下する。分離膜エレメント1は、このようなスペーサ等の部材を配置せずに、分離膜間に間隙を確保し透過水の流動抵抗を小さくする。
【0023】
分離膜6,6間の透過側の間隙は、50μm以上5000μm以下の範囲が好ましい。分離膜の間隙が、5000μm以下であることで、水処理運転中のエアレーション操作時において気泡が膜面に衝突する衝撃が緩和されるので、膜の破損が抑制される。また、分離膜の間隙が、50μm以上であることで、向かい合う透過側の膜面の間に広い空間が確保されるので、透過水の流動抵抗が低減され、その結果、透過水の水量が増大する。分離膜の間隙は、さらに好ましくは500μm以上3000μm以下の範囲である。
【0024】
なお、ネットなどの流路材を透過側内側に挟み込み流路を確保することはできるが、分離膜と流路材とが固定されていないため薬液による透過側からの洗浄では、分離膜に透過側からかかる圧力によって、分離膜で形成された袋が膨らみ、分離膜6が破損するおそれがある。分離膜6,6間に樹脂部4を介在させて接着することにより、このような破損を防ぎ薬液による透過側の洗浄も可能になる。
【0025】
分離膜6の面積に対する樹脂部の面積割合は、小さいと薬液による透過側からの洗浄で分離膜が剥がれる恐れがあり、また、大きくなると、樹脂により流路を阻害し透過水の水量が低下する。そのため、内側の樹脂部の面積割合は、1%以上70%以下の範囲が好ましい。さらに好ましくは10%以上50%以下の範囲である。
【0026】
樹脂部4の形状は特に限定されるものではなく、分離膜に投影した形状として円形、多角形、不定形などのドット状、或いは直線、曲線、波線、ジグザグなどの線状、さらに格子状に形成することができる。また、ドット状の樹脂の配置は格子点状、千鳥配列状など特に限定されない。内側の樹脂部の形状および配置を調整することにより、要求される分離特性や透過性能の条件を満足するように、分離膜エレメントを設計することができる。樹脂部の分離膜6への投影像は、不連続であることが好ましい。つまり、1枚の分離膜に、分離膜の平面方向において、2つ以上の樹脂部が間隔をおいて配置されることが好ましい。より具体的には、分離膜6の透過側表面の内側部分において、5cm四方あたり1個以上、5個以上、または10個以上の樹脂部が設けられることが好ましい。また、5cm四方あたり100個以下、50個以下、または30個以下の樹脂部が設けられることが好ましい。
【0027】
封止部2および内側の樹脂部4を構成する成分としては特に限定されないが、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンや共重合ポリオレフィンなどが好ましく、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などのポリマーも選択できる。ただし、熱可塑性重合体であれば成形が容易であるため、樹脂の形状を均一にできる。融点が高い熱可塑性重合体であると、分離膜に樹脂を接着させるときに分離機能層を溶かしてしまうおそれがあり、溶融温度が低すぎると運転中に分離膜の内側が剥がれるおそれがある。そのため、樹脂としては、融点が80℃〜200℃の範囲の熱可塑性重合体が好ましい。
【0028】
分離膜6に、封止部2および樹脂部4を接着させる方法は特に限定されないが、処理温度や選択する樹脂の種類を変更することで、要求される分離特性や透過性能の条件を満足できるように自由に樹脂の形状を調整することができる。
【0029】
なお、封止部2および樹脂部4には、同じ樹脂が適用されてもよいし、異なる樹脂が適用されてもよいし、また、封止部2は樹脂を用いず分離膜同士を直接溶着してもよい。
【0030】
なお、分離膜6を上記方法で接着することにより、接着剤が接着芯地の効果を担い、分離膜6に適度な柔軟性と剛性を与えていることも本発明における重要なポイントである。このため接着具合とともに、分離膜6の柔軟性と剛性の観点から、樹脂部の間隔、形状や材質を選択することも、状況によっては必要である。
【0031】
本発明において、分離膜は、平膜状の分離膜であり、好ましくは不織布ベースの基材の上に分離機能層を製膜したものである。
【0032】
分離膜の分離機能層の厚みは、薄すぎるとひび割れなどの欠陥が生じ、ろ過性能が落ちる場合があり、厚すぎると透水量が低下することがあるので、通常0.001〜0.5mm(1μm〜500μm)、好ましくは0.05〜0.2mm(50μm〜200μm)の範囲で選定することが好ましい。
【0033】
分離機能層としては、孔径制御、耐久性の点で架橋高分子が好ましく使用され、成分の分離性能の点で多孔性支持層上に、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなる分離機能層、有機無機ハイブリッド機能層などが積層された膜を好適に用いることができる。また、セルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリスルホン膜のような多孔性支持層であって、分離機能と支持体機能との両方を有する膜を用いることもできる。つまり、分離機能層と多孔性支持層とが、単一の層で実現されてもよい。
【0034】
本発明において分離膜としては、好ましくは基材と分離機能層とからなり、特に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる分離機能層が形成された分離膜を用いるとよい。ここで、基材と分離機能層との間には、当該分離機能層を構成する樹脂と基材とが混在する層が介在していることが好ましい。基材表面から内部にポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂が入り込むことで、いわゆるアンカー効果によって分離機能層が基材に堅固に定着され、分離機能層が基材から剥がれるのを防止できるようになる。分離機能層は、基材に対して、片面に偏って存在しても構わないし、また、両面に存在しても構わない。分離機能層は、基材に対して、対称構造であっても、非対称構造であっても構わない。また、分離機能層が基材に対して両面に存在している場合には、両側の分離機能層が、基材を介して連続的であっても構わないし、不連続であっても構わない。
【0035】
分離機能層と基材で形成された分離膜において、基材は、分離機能層を支持して分離膜に強度を与える機能をもつ。基材を構成する材質としては、有機基材、無機基材等、特に限定されないが、軽量化しやすい点から、有機基材が好ましい。有機基材としては、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維からなる織編物や不織布があげられる。なかでも、密度の制御が比較的容易な不織布が特に好ましい。
【0036】
分離膜6としては、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜のいずれにも適用することができる。また、分離対象物質の大きさに応じて適当な一種以上の膜を選択、組み合わせればよいが、下廃水処理用としては特に限外ろ過膜、精密ろ過膜が好ましい。
【0037】
なお、分離膜6を透過した水は、集水流路5を通って集水部3に集められ、集水部3に取り付けられた集水ノズル7を経由して分離膜エレメントの系外に取り出される。集水部から透過水を容易かつ確実に取り出すため、集水部に中空状の集水ノズルを配置することが好ましい。
【0038】
図2に、分離膜エレメント1と集水ノズル7を並べて示す。また
図3には、集水ノズル7の平面図(a)および正面図(b)を示す。
【0039】
図2に示すように、膜周縁の封止部2の一部に集水部3が設けられ、この集水部3に集水ノズル7が配置される。上述した通り集水部3は封止されておらず、集水ノズル7を取り付けた後、封止される。集水ノズル7は、集水流路5と分離膜エレメント1の外部とを連通する。集水ノズル7の設置に必要な幅等は、取り付ける集水ノズル7の大きさや分離膜エレメント1の大きさ等から総合的に判断して決めれば良いが、通常は集水ノズル7の筒状部の直径として0.3cmから3cm程度である。集水ノズル7は、分離膜エレメント1から透過水を取り出す目的が達成されるのであれば、特に構造、材質など限定されるものではなく、例えば樹脂製のチューブを用いることができる。
【0040】
図3(a)(b)は、本発明で使用する集水ノズルの実施形態の一例である。集水ノズル7は、上部および下部の中空部材により構成されている。集水ノズル7の下部は2枚の湾曲面を中空になるように配置し、その下方を開放し上方を略平面で閉じるとともに、この上方の平面の略中央に開口を有し、この開口に断面形状が円形または楕円状である筒状部(上部中空部材)を接続し構成されている。集水ノズル7を
図3に示すような形状にすることにより、分離膜エレメント1の集水部3への取り付けに伴う皺を発生させないで、集水ノズル7と封止部2とを封止させることが可能である。封止の方法としては、熱溶着による方法、接着剤を使用する方法などが考えられるが、封止方法は特に限定されるものではない。封止をより確実なものとするため、熱溶着と接着剤を併用する方法も考えられる。取り付け部分の形状としては、特に形状は限定されるものではないが、分離膜エレメント1の大きさ、集水ノズル7の大きさや形状等から適切なものを選定すればよい。
【0041】
次に、この分離膜エレメント1を複数枚束ねてモジュール化したエレメントユニットの実施形態を説明する。本発明において分離膜エレメントは支持板を無くしたエレメントであるため、エレメント全体の厚さを薄くすることができる。このため、エレメントユニットとして設置面積あたりの膜面積(分離膜の充填率)を高くすることが可能である。しかしながら、分離膜エレメント1には、集水ノズル7が取り付けられている。このため膜の部分よりむしろ、集水ノズルをどう配置し、分離膜エレメント1の充填率を上げるのかが課題となる。そこで、本発明のエレメントユニットは、隣同士の分離膜エレメントの集水ノズルが干渉しないように配置させることを特徴とする。
【0042】
図4(a)(b)に2枚の分離膜エレメント1a,1bを示す。両者の違いは、集水ノズル7の取り付け位置であり、(a)の分離膜エレメント1aにおける集水ノズル7の位置と、(b)の分離膜エレメント1bにおける集水ノズル7の位置とを異ならせている。集水ノズルの設置位置を互い違いにすることにより、熱可塑性重合体に組み立てるとき、隣接する分離膜エレメントの集水ノズル同士の干渉を避けることができるため、分離膜エレメント同士の間隔を狭くとって配置することが可能となる。分離膜エレメント1aおよび1bを交互に複数枚並べ、上部から見たエレメントユニットの実施形態を
図4(c)に示す。なお、
図4(a)〜(c)は一例を示したものであり、集水ノズル7が干渉しないように配置できるのであれば、この構造に限ったものではない。
【0043】
ここで
図4(a)(b)に記載した分離膜エレメント1aおよび1bは、長方形の平膜状分離膜の一つの角をとり、傾斜辺11を有する形状にし、この傾斜辺に集水部および集水ノズル7を配置した例である。この配置に限ったものではないが、このように傾斜辺11を設け、傾斜辺11上に集水ノズル7を配置することにより、集水ノズルの取り付け場所の位置決めがしやすくなるという製作上のメリットの他、集水管を膜エレメントの横側に設置し、この集水管と各集水ノズルとをチューブ等で接続する場合に、集水ノズルに無理な力がかからないようにし、集水ノズルの接着が剥がれたり破壊されるのを防ぐというメリットがある。
【0044】
図5(a)にこの実施形態に係る分離膜エレメントの一例、
図5(b)にエレメントユニットの実施形態の一例を示す。
【0045】
図5(a)において、分離膜エレメント1の端部(角部)近くの4ヶ所に貫通孔8が配置される。貫通孔の数は、エレメントの大きさなどにより適当数開ければよい。分離膜が略四角形である場合、分離膜の面方向において外側の四隅に貫通孔を設けることが好ましい。貫通孔は、例えばハトメを打つことにより形成すると、貫通孔の周囲が補強され、耐久性の点では好ましい。貫通孔を有する分離膜エレメントは、
図5(b)に示すように、複数枚が、それぞれの集水ノズル7が重なり合わないように配列してまとめられ、隣接する貫通孔8に例えばシャフト9を貫通させてエレメントユニットとすることができる。このような構造をとることにより、エレメントユニットを構成する部材を大幅に削減することが可能となる。併せて、分離膜エレメント、エレメントユニットや分離膜モジュールには適度な剛性とともに曝気のエネルギーを逃がすような柔軟性が加わり、MBRに使用したとき下部からの曝気等に対し優れた耐久性を有する。
【0046】
図6は、本発明のエレメントユニットを構成する分離膜エレメントの他の実施形態の一例を、分離膜エレメントの厚さ方向中心の平面で切断して示す断面図である。また分離膜エレメント1とともに、集水管27およびチューブ26を記載する。
【0047】
集水ノズル7は、チューブ26を介して集水管27が接続される。集水管27の下流側に吸引ポンプ(図示せず)が接続され、分離膜エレメント1内部に陰圧をかけ、透過水を取り出す。
【0048】
図6において、分離膜エレメント1は、主として2枚の平膜状の分離膜6を、透過側の面が互いに対向するように配置した分離膜対で構成し、この分離膜対の周縁部が封止された袋状の構造をしている。分離膜エレメント1は、その分離膜の面方向において外側の端部に貫通孔8を代表とする懸架部を有する。貫通孔8は、その縁部が封止されており、分離膜エレメントの外部と内部とを遮断するように構成される。
【0049】
または、
図7(a)に示すように、貫通孔8を封止部2および/または樹脂部4’により囲むように構成させてもよい。また
図7(b)に示すように、封止部2の端部での断面積を大きくとり、その内部に貫通孔8を形成してもよい。
【0050】
このように貫通孔8の縁部を封止することにより、分離膜エレメントの外部の被処理水が貫通孔8から内部へ漏れ込んだり、内部の透過水が外部へ漏れ出たりすることがない。また貫通孔8の数として、
図6では4つの貫通孔が設けられているが、この例に限定されるものではなく、エレメントの大きさ、形状などにより適宜設定することができる。貫通孔8の位置についても特に限定されるものではない。貫通孔8は、例えばハトメなどの止め金具を打つことにより穴の周囲が補強されることが、耐久性の点では好ましい。止め金具の材質はステンレス、アルミ、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂など任意のものが使用できる。
【0051】
なお、分離膜エレメント1をシャフト9へ懸架する懸架部の構造について、特に貫通孔に限定されず、
図8に示すような、上支持構造(
図8(a))や、切り欠き構造(
図8(b))でも構わない。
図8(a)に示した懸架部の上支持構造は、分離膜エレメント1の左右の両端の上方部に突出部51を形成し、この突出部51がシャフト9の上側に支持されるようにして固定する構造である。また
図8(b)に示した懸架部の切り欠き構造は、分離膜エレメント1の左右の両端部にシャフト9を収容する切り欠き部52を形成し、この切り欠き部52にシャフト9を貫通させて固定する構造である。突出部51および切り欠き部52の形状、位置および数は適宜、決めることができる。
【0052】
図9は本発明の分離膜モジュールの実施形態の一例を示す斜視図である。
図9において、分離膜モジュール21は、エレメントブロック22、エアレーションブロック23および集水管27により構成される。エレメントブロック22は、筐体32の内側に、上述したエレメントユニット10を収容する。エレメントユニット10は、分離膜エレメント1の貫通孔8にそれぞれシャフト9を通すようにして、分離膜エレメント1を複数平行に並べることで構成されている。このエレメントブロック22の下方にはエアレーションブロック23が配設されている。エアレーションブロック23は、ブロワ(図示せず)に連結されている散気装置(図示せず)からなる。活性汚泥槽内の被処理水中に沈められた分離膜モジュール21のエレメントブロック22に向けて下方のエアレーションブロック23から空気が噴出される。
【0053】
隣接する分離膜エレメント1間には、被処理水および空気の流路を確保するため、クリアランス保持部材28が設けられている。クリアランス保持部材28は、特に限定されるものではないが、耐久性および衝撃吸収性の観点から、ポリウレタン製のワッシャやカラー、またはニトリルゴムやシリコンゴムに代表されるゴム製ワッシャやカラーなどが好適に使用される。このようなクリアランス保持部材28を配置することで、分離膜エレメントや分離膜モジュールには適度な剛性とともに曝気のエネルギーを逃がすような柔軟性が加わり、下部のエアレーションブロック23からの曝気に対する優れた耐久性を示すこととなる。
【0054】
また、分離膜エレメント1の端部(
図9の例では4隅)の貫通孔8を通したシャフト9はシャフト保持部33により筐体32に接続、固定されている。シャフト保持部33の固定部を解除することにより、シャフト9は分離膜モジュール全長に対して略平行な方向(膜エレメントの平膜に垂直な方向)にスライド可能な構造となっている。
【0055】
シャフト9と筐体32の接続は、シャフト保持部33を筐体32に設置し、シャフト保持部33の内部にシャフト9を通すようにする。またシャフト保持部33の止めネジ機構の操作により、シャフト9のスライドを可能としている。ただし、シャフト9と筐体32の接続は、特にこれに限定されるものではなく、筐体32のフレームにシャフトを通すための穴を設け、C形、E形止め輪を使用するなど、その形式および方法は任意で構わない。筐体フレームおよびシャフト保持部の材質は、ステンレス、アルミなどの各種金属、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能であるが、耐食性および剛性の高いステンレス材が好適に使用される。
【0056】
このようなエレメントブロック構成の場合、例えば、分離膜が破損し、ろ過機能をなくした故障した膜エレメントが両端に発生したときでも、シャフト9をスライドさせることにより、故障した膜エレメントを簡便に抜き取ることができる。抜き取り後のスペースについては、新品もしくは補修後の膜エレメントを再装填することが可能であり、もしくはシム、ワッシャなどに代表されるスペーサを装填することもできる。つまり、エレメントブロック全体の分解を必要とせず、簡便に故障した膜エレメントの交換・メンテナンスが可能となる。
【0057】
つぎに、本発明を構成するシャフトの好適な構成について説明する。シャフト9は複数の単位シャフト31を繋ぎ合せることにより構成することが望ましい。単位シャフト31の連結方法は、隣接する単位シャフト31同士を接続するシャフトジョイント34を用いることができる。例えば、
図10(b)に示すように、両端部が段付きの単位シャフト31を、セットカラーに代表されるシャフトジョイント34により連接させ固定させる方法が簡便で好適に使用できる。また単位シャフト31の外径とセットカラーの外径とを略同一にすることが好ましく、
図10(a)に示すように、連結したシャフト9を分離膜エレメント1の貫通孔に通し、スムーズにスライドさせることができる。ただし、隣接する単位シャフト同士の連結方法として、キーセットタイプやピン止めタイプなど、その他方法も任意に選択可能である。
【0058】
シャフト9および単位シャフト31の材質はステンレス、アルミなどの各種金属、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能であるが、耐食性および剛性の高いステンレス材が好適に使用される。また連結の機能が果たせるのであれば、中実および中空シャフト、どちらのシャフトを使用してもよく、シャフト形状について、丸形状に限定されず、楕円、略四角形状など任意形状でも構わない。
【0059】
さらに、単位シャフトは、膜エレメントを懸架させられる構成であれば、シャフト、パイプ等の剛性棒に限らず、針金、紐等のフレキシブル棒でも構わない。この場合、フレキシブル棒を連結出来るように各端部にジョイント部を設けることが望ましい。
【0060】
これら単位シャフト31を連結したシャフト9を使用して構成されたエレメントブロックの場合、例えば、分離膜が破損し、ろ過機能をなくした故障した膜エレメントが一部に発生したときでも、シャフト保持部33の固定部を解除し、シャフト9の連結部35を破損エレメントの周辺にスライドさせ、連結部35と単位シャフト31とを分離することにより、故障した膜エレメントを簡便に抜き取ることができる。抜き取り後のスペースについては、前記同様、新品もしくは補修後の膜エレメントを再装填することが可能であり、もしくはシム、ワッシャなどに代表されるスペーサを装填することもできる。つまり、エレメントブロック全体の分解を必要とせず、簡便に任意の膜エレメントのメンテナンスが可能となる。
【0061】
また、単位シャフト31の長さおよび本数について、
図11を用いて説明する。前述したメンテナンス機能を満足させるためには、単位シャフト31の長さをS、分離膜モジュール一つにかかわる単位シャフト本数をN、分離膜モジュール全長をLとした場合、これらの関係が、S≧L/(N−1)で規定されることが好ましい。複数の単位シャフト31の長さSは、前記式を満たす限り、互いに同じでも異なってもよい。例えば、
図11において、モジュール全長Lを100cm、単位シャフト本数Nを3本とした場合、単位シャフト長さSは少なくとも50cm必要となる。これはすなわち、分離膜モジュール全長Lに対するシャフト9のスライド代A(シャフト保持部33から外れることのないスライド量)が、シャフトの連結部35から抜き取りたい故障した分離膜エレメント1xまでの距離Bより大きいことを意味する。スライド代Aが距離Bより小さいと、シャフト9がモジュール内で滑落し、機能を果たすことができなくなる。なお、ここでの単位シャフト長さSは、分離膜モジュール全長Lに対して略平行な方向の長さであり、分離膜モジュール全長Lは集水管の長手方向と略平行な方向の長さである。
【0062】
さらに、別の実施形態として、シャフト9の両端部が、隣り合う分離膜モジュール21同士が連接可能に成るよう構成することができる。ここで隣り合うシャフト9を連接可能にする構成とは、上述した単位シャフト31の連結方法と同様にすることができる。
【0063】
図12(a)は、シャフト9で構成された分離膜モジュール21を2基連接させた場合の分離膜モジュールユニット36を、
図12(b)は、分離膜モジュール21を、3基連接させた場合の分離膜モジュールユニット37を示す。分離膜モジュールユニット37では、分離膜モジュール1基にかかるシャフト9として、単位シャフト31が2つ連結されて構成され(N=2)、かつ単位シャフト長さS、単位シャフト本数N、分離膜モジュール全長Lとの関係が、S≧L/(N−1)の関係を満たしている。このように、単位シャフト31を連結したシャフト9を接続させることにより、複数の分離膜モジュールを簡便にユニット化させることができる。
【0064】
図12(a)の場合、例えば、分離膜が破損し、ろ過機能をなくした故障した分離膜エレメント1が、各分離膜モジュール21両端に発生したときでも、シャフト9をスライドさせることにより、当該膜エレメントを簡便に抜き取ることができる。抜き取り後のスペースについては、新品もしくは補修後の膜エレメントを再装填することが可能であり、もしくはシム、ワッシャなどに代表されるスペーサを装填することもできる。つまり、分離膜モジュールユニット36全体の分解を必要とせず、簡便に両端の膜エレメントのメンテナンスが可能となる。またシャフト9のどちらかの端部に、別のシャフトを接続することにより、既存のシャフト連結部35を破損したエレメントの周辺にスライドさせることができる。
【0065】
図12(b)の場合、S≧L/(N−1)の規定上、分離膜モジュール21の両側にスペースが生じてしまうが、スペースに見合った複数枚の分離膜エレメント1およびクリアランス保持部材28を装填することで、膜エレメントの充填率を下げることなく、分離膜モジュールユニットを構成させることができる。
【0066】
またこの場合、例えば、分離膜が破損し、ろ過機能のなくなった分離膜エレメント1が分離膜モジュールユニット37の任意位置に発生したときでも、シャフト9の連結部35を破損エレメントの周辺にスライドさせ、連結部35を解除することにより、当該分離膜エレメントを簡便に抜き取ることができる。抜き取り後のスペースについては、前記同様、新品もしくは補修後の膜エレメントを再装填することが可能であり、もしくはシム、ワッシャなどに代表されるスペーサを装填することもできる。つまり、分離膜モジュールユニット全体の分解を必要とせず、簡便に任意の膜エレメントのメンテナンスが可能となる。
【0067】
本発明の分離膜モジュールから分離膜エレメントを着脱する方法は、シャフトの連結部を着脱しようとする分離膜エレメントの近くまでスライド(移動)させ、連結部を分離し、その分離した端部から、分離膜エレメントの懸架部を抜き差しすることにより、分離膜エレメントを個別に着脱することができる。これにより分離膜モジュールのメンテナンス、すなわち故障した膜エレメントの交換または取り出しを容易にすることができる。
【0068】
さらに、
図12(a)(b)に示す各分離膜モジュールユニット36,37を浸漬槽に浸漬する際、重機作業が必要となる。この場合、シャフト連結のみでは接合強度が低いため、連結部材38を使用して各筐体32同士を接合すると良い。連結部材38および筐体同士の接合方法は任意で構わないが、ステンレス製のプレート、アングルなどを使用したボルトナット方式が好ましい。
【0069】
次に
図13は本発明の分離膜モジュールの実施形態の別の一例を示す斜視図である。
図13において、分離膜モジュール121は、
図9の分離膜モジュール21とほぼ同様の構成を有する。ただし、分離膜モジュール121は、複数のエレメントユニット10を収容できる筐体132を備える。分離膜モジュール121は、エレメントブロック122、エアレーションブロック23および集水管(図示せず)により構成される。エレメントブロック122は、エレメントユニット10およびエレメントユニット10を出し入れ可能に収容する筐体132により構成される。このエレメントブロック122の下方にはエアレーションブロック23が配設されている。エアレーションブロック23はブロワ(図示せず)に連結された散気装置(図示せず)から構成される。活性汚泥槽内の被処理水中に沈められた分離膜モジュール121のエレメントブロック122に向けて下方のエアレーションブロック23から空気が噴出される。
【0070】
図14は
図13の分離膜モジュール121に適用されるエレメントユニット10の実施形態の一例を示す斜視図である。
【0071】
エレメントユニット10は、上述した分離膜エレメント1の貫通孔にそれぞれシャフトを通すようにして、分離膜エレメント1を複数平行に並べることで構成されている。隣接する分離膜エレメント1間には、被処理水および空気の流路を確保するため、クリアランス保持部材28(
図9)が設けられている。
【0072】
また集水ノズル7が、貫通孔8の位置と干渉しないように、分離膜エレメント1の側面に配列されている。「干渉しないように」とは、集水ノズル7が、貫通孔8とは離間するように設けられること、つまり異なる位置に設けられることを意味する。集水ノズル7が集水流路5に連通するのに対して、貫通孔8は、透過水の漏れ防止のために、封止部2または樹脂部4’等によって集水流路5とは隔離されることが好ましい(
図7(a)および
図7(b))。よって、集水ノズル7と貫通孔8とは、離間するように設けられることが好ましい。
【0073】
エレメントユニット10の両端部には、筐体132に収容する際のハンドリング性等を考慮して側板41が備えられている。また、これら各部位を固定するための固定部材42がシャフト9もしくは側板41部に備えられている。
【0074】
エレメントユニット10を構成する分離膜エレメント1の枚数は、10〜150枚と任意に設定可能であるが、筐体132への出し入れ時のハンドリング性を考慮すると20〜50枚が好ましい。膜エレメント形状は、特に限ったものではないが、略四角形状のものが好適に使用される。
【0075】
分離膜エレメント1の懸架部、クリアランス保持部材28については前述の通りである。
【0076】
側板41の厚みは、特に限定されるものではないが、2〜10mmあればよく、分離膜エレメント1の充填率を上げることを考慮して、2〜5mmの範囲が好適に使用される。側板41形状は任意で構わないが、隣接する膜エレメントが曝気エアにより揺動し接触する際に、膜表面を傷付ける可能性のある突起等がないフラットバー(平鋼)が好ましい。
【0077】
また、エレメントユニット10を筐体132に収容する際のハンドリング性を考慮して、側板41には取手が備えられている(図示せず)。取手の形状は任意でよく、楕円、略四角形状など任意形状を側板から切り抜き形成してもよいし、金属等の部材で構成される取手を別途側板41に設置してもよい。側板41および取手の材質はステンレス、アルミなどの各種金属、PP樹脂、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能であるが、耐食性、重量、および耐摩耗性の観点からPP樹脂が好適に使用される。
【0078】
固定部について
図14では、シャフト9端部をネジ構造とし、複数の分離膜エレメント1および側板41を介して、両端部を締結ナット等の固定部材42で締め付け固定している。別の固定方法として、カラー等によるセット止め、シャフト部に溝を切りC形、E形止め輪を使用するなど、任意に選択可能である。構成を簡素化し製作コストを抑えることが出来るという観点から、シャフト9端部のネジ部をナット締結により固定する方法が好適に使用できる。この場合、シャフト9端部はネジ構造にしなければならないが、寸切りボルト等に代表される全ネジ構造でもよいし、シャフト端部のみをねじ切りする構造でもよい。また、ナット等の固定部材42については、シャフト9もしくは側板41に直接接合していてもよいし、分離していてもよい。
【0079】
筐体132には、上面または側面の少なくとも一方に、エレメントユニット10を出し入れ可能な開口部43を有する。このような構造にすることで、エレメントユニット10毎に筐体132部より着脱可能となるため、メンテナンスおよび膜エレメントの交換または取り出しを容易にすることができる。さらに、エレメントユニット10を主に構成する分離膜エレメント1は、支持板の無い構造であるため、その重量は約100〜500gと軽く、ユニットとしても、約5〜25kg(乾重量/膜エレメント枚数50枚の場合)である。そのため、重機等を用いずにエレメントユニットの出し入れを容易に行うことができ、メンテナンスおよび膜エレメントの交換または取り出し時の大きなメリットとなる。
【0080】
エレメントユニット10と開口部43との空隙の距離は、エレメントユニット10が開口部43から出し入れ可能な間隔であれば特に限定されるものではないが、例えば2〜10mmにすることができる。分離膜エレメント1の充填率を上げることを考慮すると2〜5mmがさらに好ましい。
【0081】
また、
図15に示すように、エレメントユニット10を出し入れする際、シャフト9の端部ないしは固定部材42を通過せしめるための溝ガイド44(切り欠きガイド)を筐体132に備えることが好ましい。こうすることで、エレメントユニット10を懸架させる際の位置決めになるとともに、ハンドリング性が向上する。さらには、エレメントユニット10と開口部43の空隙の距離を狭くすることも可能となるため、分離膜エレメント1の充填率をさらに上げることができる。
【0082】
筐体132にはシャフト9を利用してエレメントユニット10を懸架させることができるユニット懸架部を有する。具体的には、
図13に示すように、シャフト9と直交する筐体132のフレームの面に凹部45を設け、凹部45に嵌ったシャフト9をシャフト押さえ具(図示略)により上方から押さえ把持するとよい。ただし、ユニット懸架部の構成はこれに限ったものではなく、
図8に示すような他の懸架構成に応じた把持方法も任意に選択可能である。
【0083】
フレームおよびシャフト押さえ具等の筐体132を構成する主要構造材の材質は、ステンレス、アルミなどの各種金属、PP樹脂、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能である。
【0084】
図16は、本発明の分離膜モジュールの実施形態の別の一例を示す斜視図である。
筐体232は、エレメントユニット10を鉛直または水平方向に複数積載できる構造である。各エレメントユニットは複数の開口部43を介して略水平方向または略鉛直方向に抜き出し可能な位置に配置されている。
図16では、3基の並列したエレメントユニットを鉛直方向に2段配置した例を示したが、特にこれに限定されず、浸漬する槽のサイズ、要求される処理能力、等々により任意に設定することが可能である。特に、鉛直方向に多段にエレメントユニットを積載する際には、省スペース化が図れるとともに、エレメントユニット下方から散気される曝気エアの占める単位面積当たりの膜面積を大幅に上げることができるため省エネルギー化も図れる。
【0085】
本実施形態では、単体または複数のエレメントユニット10を、筐体32内に設けられた並列および鉛直多段に設けられた開口部43を介して個別に出し入れ可能に配設することによりエレメントブロック22を構成する。このため、エレメントブロック22内での煩雑な切り離し作業を伴うことなく、エレメントユニット10を個別に、簡便に出し入れすることができるのでメンテナンス及び膜交換時の作業性を向上させることが出来るとともに、作業時間を大幅に短縮できる。また、分離膜エレメント1を支持板のない構造とするため、ユニット化させた場合においても、従来の支持板有りの分離膜エレメントに比べ大幅に軽量化を図ることが可能であり、筐体32を構成するフレームの構造を簡素化することができ、モジュールとしての製造コストを大幅に下げることができる。
【実施例】
【0086】
従来品としてABS樹脂製の支持板を有する分離膜エレメントと、本発明の構成を有する分離膜エレメントと、それぞれの分離膜エレメントを100枚配列して構成したエレメントユニットを収容した分離膜モジュールを製作し比較した。その結果を表1に表す。なお、使用する分離膜の種類および平面サイズ(0.5m×1.4m)は同じとした。
【0087】
本発明の構成を有する分離膜エレメントは、
図1の模式的に示した形態を有し、樹脂部が直径約3.0mm、高さ約2.5mmの円柱状に形成した。分離膜の周縁を幅約20mmの封止部で封止するとともに、周縁の一部に幅約35mmの集水部を、隣接する分離膜エレメント間で重ならない位置の組み合わせになるように形成した。この集水部に
図3の形状を有するポリエチレン樹脂製の集水ノズルを挿入した後、封止した。
【0088】
本発明の構成を有するエレメントユニットは上記分離膜エレメントの端部に貫通孔(直径約20mm)を形成し、隣接する集水ノズルが重ならないように配列しながら貫通孔に通し棒を通すことにより製作した。
【0089】
表1の結果から明らかなように、本発明の分離膜エレメントは、従来の分離膜エレメントに比べ、エレメントの厚さが半分に、エレメントの重量が1/4になった。また分離膜モジュール全体としての重量は1/4以下となった。また分離膜エレメントの束を支える筺体についてみると、重量を1/5程度にすることが可能になった。分離膜エレメント重量を下げることにより、筺体の簡素化が図れている。最後に膜の充填率についてみると、本発明の分離膜モジュールは、従来の分離膜モジュールに比べ、膜充填率が1.3倍となった。これは分離膜エレメントが薄くなったことと併せて、集水ノズルを干渉しないように配置したことによる。
【0090】
【表1】
【0091】
なお、分離膜モジュール耐久性については、実際に本発明の分離膜エレメント(支持板レスエレメント)を配置したMBR用試作モジュールの数ヶ月の運転した結果から、支持板レスエレメントは曝気のエネルギーをうまく逃がすことができており、分離膜エレメントが破損することはなかった。