【実施例1】
【0026】
<X線撮影装置の全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、
図1に示すように臥位の被検体Mを載置する天板2と、天板2の上側に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下側に設けられるとともに被検体Mを透過してきたX線を検出するFPD4とを備えている。FPD4は、被検体Mの体軸方向Aまたは体側方向Sのいずれかに沿った4つの辺を有する矩形となっている。また、X線管3は、放射状に広がる四角錐状のX線ビームをFPD4に向けて照射する。FPD4は、X線ビームを全面で受光することになる。FPD4のX線を検出する検出面4aには、X線検出素子が体軸方向Aおよび体側方向Sに2次元的に配列されている。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の検出手段に相当する。
【0027】
支持部材5は、X線管3およびFPD4から構成される撮像系3,3a,4を支持している。支持部材5は、支持部材移動機構11に駆動され天板2に対し被検体Mの体軸方向Aに移動することができる。このように支持部材移動機構11は、天板2に対しX線管3とFPD4とを一体的に天板2の長手方向に移動させる機構である。このような移動をさせることにより被検体Mに対するX線撮影を行う位置が変更できる。支持部材移動制御部12は、支持部材移動機構11を制御する目的で設けられている。
図2は、支持部材移動機構11が支持部材5ごと撮像系3,3a,4を移動させる様子を示している。支持部材移動機構11が駆動したとしてもX線管3,後述のコリメータ3a,FPD4および支持部材5の位置関係に変化はない。支持部材移動機構11は、本発明の支持部材移動手段に相当し、支持部材移動制御部12は、本発明の移動制御手段に相当する。
【0028】
天板支持体7は、天板2を支持する目的で設けられている。天板支持体7は、天板移動機構9に駆動され検査室の床面に対し被検体Mの体側方向Sに移動することができる。天板2は、この天板支持体7に追従して移動することになる。このように天板移動機構9は、検査室の床面に対し天板2を天板2の短手方向に移動させる機構である。このような移動をさせることにより被検体Mに対するX線撮影を行う位置が変更できる。天板移動制御部10は、天板移動機構9を制御する目的で設けられている。
図3は、天板移動機構9がX線管3に対して天板2を移動させる様子を示している。なお天板移動機構9と支持部材移動機構11とは互いに独立しており、天板移動機構9が天板2を移動させても支持部材5の位置に変化はなく、同様に支持部材移動機構11が支持部材5を移動させても天板2の位置に変化はない。このように支持部材移動機構11は、天板2に対して支持部材5を一方向と直交する方向に移動させる構成となっている。天板移動機構9は、本発明の天板移動手段に相当し、天板移動制御部10は、本発明の移動制御手段に相当する。
【0029】
X線管3には、
図4に示すように、X線の照射範囲を制限することによりX線の広がりを制限して後述の撮影範囲の広さを変更するコリメータ3aが設けられている。コリメータ3aは、X線ビームBの中心軸Cを基準として縦方向に鏡像対称に移動する1対の遮蔽羽根3bを有し、同じくX線ビームBの中心軸を基準として横方向に鏡像対称に移動するもう1対の遮蔽羽根3bを備えている。このコリメータ3aは、遮蔽羽根3bを移動させることで、FPD4が有する検出面の全面にコーン状のX線を照射させることもできれば、たとえば、検出面の中心部分だけにファン状のX線を照射させることもできる。遮蔽羽根3bは、可動となっており、遮蔽羽根3bは移動可能となっている。遮蔽羽根移動機構13は、コリメータ3aの遮蔽羽根3bを駆動させる目的で設けられ、遮蔽羽根移動制御部14は、遮蔽羽根移動機構13を制御する目的で設けられている。遮蔽羽根移動制御部14は、本発明の移動制御手段に相当する。
【0030】
コリメータ3aにより広がりが制限されたX線ビームBは、放射状に広がりながら被検体Mに到達する。被検体MにおいてX線ビームBが到達する範囲は、被検体MにおいてX線撮影を行うときの画像化がなされる範囲である撮影範囲と一致している。撮影範囲にのみX線が到達するようにすれば、被検体MのX線被曝を最小限に抑制することができるからである。X線撮影装置1は、天板2に載置された被検体Mのうち撮影範囲に収まる部分についてにしかX線を照射しないし、画像化もしない。
【0031】
<本発明の最も特徴的な構成>
本発明におけるX線撮影装置は、被検体Mに対する撮影範囲の位置を簡便に調整できるようになっているのでこれについて説明する。
図5は、天板2に載置された被検体Mを示している。
図5においては、撮影範囲R1の位置は未調整の状態となっており、撮影範囲R1は、撮影の目的に適した位置とはなっていない。
【0032】
本発明においては、撮影範囲R1の位置調整が未完了となっている状態で、プレビュー画像Pvが撮影される。このプレビュー画像Pvは、被検体Mのうち撮影範囲R1に収まる部分についてX線撮影がされた透視像である。そして、このプレビュー画像Pvは、比較的低い線量で撮影される。具体的な線量としては、従来より行われている動画撮影(ライブ像撮影)における一フレームを撮影するときに被検体Mに照射されるX線の線量と同程度である。
図6の左側は、プレビュー画像Pvが表示部25に表示される様子を表している。このプレビュー画像Pvは、正確な診断に用いることができるほど鮮明な被検体像を写し込んではいないものの、撮影範囲R1における被検体Mの輪郭と被検体Mの椎骨などの内部構造を大まかに写し込んだものとなっている。表示部25にプレビュー画像Pvが表示されるときには、マウスカーソルcが重畳表示される。フットスイッチ29は、プレビュー画像Pvの撮影の指示を術者に入力させる目的で設けられている。表示部25は、本発明の表示手段に相当し、フットスイッチ29は、本発明のプレビュー撮影指示入力手段に相当する。
【0033】
続いて、術者がプレビュー画像Pvを用いて行う撮影範囲の調整方法について説明する。術者は、まずプレビュー画像Pvを視認して、被検体Mのどの部分が撮影範囲の中心となって欲しいかを検討する。そして、術者はプレビュー画像Pv上の一点を選択して、この一点が撮影範囲の中心として欲しい旨をX線撮影装置1に伝達するのである。この画像上の一点の選択には、X線撮影装置1に付属のマウス30が用いられる。術者は、マウス30を通じてプレビュー画像Pv上のマウスカーソルcを移動させることができる。術者が、プレビュー画像Pv上のある位置までマウスカーソルcを移動させ、この部分で選択の確定を示すクリックを行うと、プレビュー画像Pvにおいてマウスカーソルcがある位置が選択される。
図6の右側は、術者がプレビュー画像Pvの一点を選択した状態を表している。術者により選択された一点は、選択点pとして表すものとする。この様にしてマウス30は、表示部25に表示されたプレビュー画像Pv上の一点を術者に選択させることにより、被検体Mの一部分を選択させる。マウス30は、本発明の部分選択入力手段に相当する。
【0034】
術者がプレビュー画像Pv上の一点を選択するときに有効なのが、プレビュー画像Pvに写り込んでいる被検体Mの像である。例えば、X線撮影が被検体Mの3番目の椎骨の観察を目的とする場合、術者は、プレビュー画像Pvの端部に移り込んでいる3番目の椎骨を撮影範囲の中心として欲しいことを示す選択点pとして容易に設定することができる。
【0035】
マウス30を通じた術者の入力は、入力データとして移動距離算出部16に送られる。移動距離算出部16は、入力データを基にプレビュー画像Pvの中心点oと選択点pとの位置関係を把握して、天板支持体7および支持部材5の移動距離を算出する。この移動距離は、撮影範囲を移動させるときの具体的な移動量を表したものとなっている。
【0036】
移動距離算出部16の実際の動作を説明する。術者によるマウス30の操作は、移動距離算出部16に送られている。移動距離算出部16は、術者が選択点pを選択した際に、選択点pのプレビュー画像Pv上の位置を示す位置データを算出する。この位置データは、
図7に示すように、プレビュー画像Pvの中心点oを原点としたときの選択点pの縦方向に係る位置データdyと横方向に係る位置データdxとから構成されている。移動距離算出部16は、位置データdx,dyを基にプレビュー画像Pvにおいて中心の位置にない選択点pが、撮影範囲の中心に位置するようにするにはどの程度撮影範囲を被検体Mに対して移動させればよいかを示す移動距離を算出する。このとき算出された移動距離は、体側方向Sについての撮影範囲の移動距離を示す移動距離データdSと、体軸方向Aについての撮影範囲の移動距離を示す移動距離データdAとから構成されている。実施例1におけるプレビュー画像Pvは、縦方向が被検体Mの体軸方向Aに相当し、横方向が被検体Mの体側方向Sに相当している。従って、移動距離データdSは、位置データdxから算出され、移動距離データdAは、位置データdyから算出されることになる。
【0037】
移動距離算出部16が位置データdx,dyを基に移動距離データdA,dSを算出するには、位置データと移動距離との間の比率raが用いられる。この比率raは、プレビュー画像Pvを構成する画素1ピクセルが被検体Mにおいてどの程度の距離に相当するかを示すものである。移動距離算出部16は、この比率raを基に、位置データdx,dyが示すピクセル数が被検体Mにおいてどの程度の距離に相当するかを認識して移動距離データdA,dSを算出する。この比率raは、予め比率算出部15が算出したものである。
【0038】
図8は、比率算出部15が比率raを算出する方法について説明している。
図8においては、簡単のため、コリメータ3aの遮蔽羽根3bは全開の状態となっており、FPD4の全面を用いてプレビュー画像Pvの撮影がなされたものとする。この場合、プレビュー画像Pvは、そのままFPD4の検出面4aの形状を表している。このときのFPD4の検出面4aの幅を幅W1とする。この幅W1は、撮影範囲の大きさを表しており、この幅W1の両端は、プレビュー画像Pv上の両端に相当している。プレビュー画像Pv上の両端の間に並べられる画素の数は予め分かっているので、これを基に幅W1がプレビュー画像Pvを構成する画素の何個分に相当するかを知ることができる。例えば、幅W1が1,000ピクセルに相当するものとする。
【0039】
X線撮影の際、この幅W1に被検体Mの像がどのように写り込むかを考える。被検体Mの像は、FPD4に拡大されて写り込んでいる。X線は平行光ではなく、X線管3の焦点を中心に放射状に広がる光だからである。従って、FPD4における幅W1に写り込む被検体Mの幅W2は、幅W1よりも狭くなっているはずである。比率算出部15は、幅W2の具体的な長さを幾何学的な計算により算出する。とはいえ、被検体Mには厚みがあるので、幅W2を求めるのには工夫が必要である。この点、実施例1に係る比率算出部15は、天板2からX線管3に向けて10cm離れた位置にある仮想平面sを被検体Mの位置であるものとして動作する。比率算出部15が幅W2を算出するときに用いる定数は、具体的には、幅W1の距離と、X線管3の焦点からFPD4までの距離と、X線管3から天板2までの距離である。この幅W2の範囲に位置する被検体Mは、X線により幅W1の範囲まで広げられた状態でFPD4に投影され、1,000ピクセルの幅を有するプレビュー画像Pvとして画像化される。すなわち、被検体Mの幅W2は、プレビュー画像Pv上の1,000ピクセルに相当するというわけである。
【0040】
比率算出部15は、幅W2の算出の後、プレビュー画像Pvにおける1,000ピクセルが幅W2に相当することを利用して、プレビュー画像Pvを構成する画素1ピクセルが被検体Mにおいてどの程度の距離に相当するかを示す比率raを算出する。
【0041】
このような比率raを用いて移動距離算出部16が算出した移動距離データdA,dSのうち、体側方向Sに係る移動距離データdSは、天板移動制御部10に送られる。同様に、体軸方向Aに係る移動距離データdAは、支持部材移動制御部12に送られる。天板移動制御部10および支持部材移動制御部12は、これら移動距離データdA,dSに基づいて、支持部材5および天板支持体7を移動させることにより、被検体Mに対する撮影範囲の移動を実現する。天板移動制御部10は、被検体Mに対する撮影範囲の移動のうち撮影範囲の体側方向Sに関する移動を担当する。支持部材移動制御部12は、被検体Mに対する撮影範囲の移動のうち体軸方向Aに関する移動を担当する。
【0042】
図9は、天板移動制御部10および支持部材移動制御部12が協働でした被検体Mに対する撮影範囲の移動の結果を表している。撮影範囲は、これら制御部10,12によりプレビュー画像Pvが撮影された当初の撮影範囲R1から撮影範囲R2まで移動される。このとき撮影範囲R1の中心q1は、プレビュー画像Pvにおいては中心点o(
図7参照)に相当し、撮影範囲R2の中心q2は、プレビュー画像Pvにおいては術者が選択した選択点p(
図7参照)に相当する。すなわち、天板移動制御部10および支持部材移動制御部12は、高線量での撮影である本撮影に先立ち、マウス30を通じて術者により選択された被検体Mの一部分が撮影範囲の中心となるように天板移動機構9および支持部材移動機構11を制御する。
【0043】
図10は、本発明に係る操作卓26を表している。操作卓26には、X線管3の管電圧、管電流などの設定値を表示する表示パネルや、撮影開始の指示を行うボタンなどが配列されている。実施例1の構成において特徴的なのは、
図9で説明した撮影範囲の移動の実行の指示を術者にさせる位置合わせ開始ボタン26aが設けられていることにある。すなわち、実施例1の構成によれば、術者がマウス30を通じてプレビュー画像Pv上の選択点pを選択すると直ちに撮影範囲の移動が実行されるのではなく、選択点pの選択後、術者が位置合わせ開始ボタン26aを押下することで初めて撮影範囲の移動が実行されるようになっている。この様に、位置合わせ開始ボタン26aは、天板移動制御部10および支持部材移動制御部12に対して術者による制御開始の指示を入力させる。位置合わせ開始ボタン26aは、本発明の制御開始指示手段に相当する。
【0044】
主制御部27(
図1参照)は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することによりX線管3のX線照射を制御するX線管制御部6および各部10,12,14,15,16,21を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、プレビュー撮影時のX線管3の制御条件および本撮影時のX線管3の制御条件などの装置制御に関する情報の一切を記憶する。画像生成部21は、FPD4より出力されたX線の検出データを基にプレビュー画像PvまたはX線画像P1を取得する。
【0045】
<X線撮影装置の動作>
続いて、X線撮影装置の動作について説明する。本発明に係るX線撮影装置を用いて被検体Mの撮影を行うには、まず天板2に被検体Mが載置される(被検体載置ステップS1)。そして、術者は、操作卓26を通じて、撮影範囲に対する被検体Mの位置を調整する(被検体位置調整ステップS2)。この術者による位置調整は、例えば、X線管3に付属の可視光源から発せられた可視光が用いられる。この可視光は、X線管3のX線の発生点(焦点)から放射状に広がり、天板2上の被検体Mを照らすように工夫がされている。したがって、被検体Mに可視光が届く範囲は、X線撮影の撮影範囲と一致している。このようなX線管3からの可視光照射は、被検体Mの大まかな位置合わせに有効である。
【0046】
しかしながら、可視光照射だけで被検体Mの位置合わせを完了させることは難しい。可視光線を用いた被検体Mの位置合わせは、被検体Mの内部構造を基にしたものではないからである。例えば、被検体Mの3番目の椎骨が画像の中心に来るようなX線撮影を行おうとしても、可視光線の照射段階においては、術者はこの椎骨がどこに位置するのかを正確に知る術はない。したがって、術者は、被検体Mの外見から3番目の椎骨はこの辺りであろうと予想して被検体Mの位置合わせをするしかないわけである。被検体Mのより正確な位置合わせには、後述のプレビュー撮影を実行する必要がある。
【0047】
術者がフットスイッチ29を押下すると、X線撮影装置1は、プレビュー画像Pvの撮影を開始する(プレビュー撮影指示ステップS3)。このプレビュー画像Pvは、ライブ像撮影時における1フレーム分の撮影と同様な撮影様式に基づいて行われる。ライブ像は、連続的な撮影であるから、1フレーム分の撮影に用いられるX線の線量はかなり低く抑えられている。したがって、プレビュー画像Pv撮影時におけるX線の線量もかなり少ない。X線管制御部6は、プレビュー撮影の際、記憶部28に記憶されたプレビュー画像Pv撮影用の制御条件に従ってX線管3を制御する。撮影されたプレビュー画像Pvは、表示部25に表示される。プレビュー画像Pvは、的確な診断に用いることができるほど被検体Mを鮮明に写し込んではいなものの、被検体Mの大まかな内部構造を知るには十分なものとなっている。
【0048】
術者がマウス30を通じてプレビュー画像Pvのうちの例えば3番目の椎骨の一点を選択すると(画像部分選択ステップS4),移動距離算出部16は、この術者の入力に基づいて、3番目の椎骨上にある選択点pの位置を示す位置データdx,dy算出する。そして、移動距離算出部16は、位置データdx,dyおよびプレビュー画像Pv上のピクセル数と被検体上の距離との対応関係を示す比率raとを基に撮影範囲の移動距離を示す移動距離データdA,dSを算出する。X線撮影装置1はこの状態で待機する。
【0049】
術者が操作卓26の位置合わせ開始ボタン26aを押下すると、天板移動制御部10および支持部材移動制御部12は、移動距離データdA,dSに従い協働で被検体Mに対する撮影範囲の移動を実行する(移動指示ステップS5)。このとき、撮影範囲の中心は術者の思惑通り被検体Mの3番目の椎骨となっている。
【0050】
術者が操作卓26を通じて本撮影の開始を指示すると、X線管3からプレビュー撮影の時よりも高線量のX線が出力され、診断用のX線画像P1が取得される(本撮影指示ステップS6)。X線管制御部6は、本撮影の際、記憶部28に記憶された本撮影用の制御条件に従ってX線管3を制御する。撮影されたX線画像P1は、表示部25に表示される。X線画像P1は、的確な診断に用いることができるほど被検体Mを鮮明に写し込んでいる。
【0051】
図12は、本撮影で得られたX線画像P1を表している。
図12を参照すれば分かるように、術者がプレビュー画像Pvの一点を選択することで指定した被検体Mの部分がX線画像P1の中心に位置している。術者が画像部分選択ステップS4においてプレビュー画像Pv上の3番目の椎骨を選択点pとしていたとすると、X線画像P1に写り込む3番目の椎骨は、画像の中心に位置していることになる。
【0052】
以上のように本発明の構成によれば、従来の撮影手法と比べて被検体Mへの放射線の被曝量を抑制することができる。すなわち、本発明の構成によれば、一枚のプレビュー画像Pvにより確実に撮影範囲を術者の所望通りとすることができる。プレビュー画像Pvは、ライブ像の撮影とは異なり、撮影時間が短いのでそれだけ被検体Mに照射される放射線の線量を抑制できるのである。
【0053】
また、本発明の構成によれば、プレビュー画像Pv上の一点を術者に選択させることにより、撮影範囲の位置合わせが行われる。すなわち、術者により選択されたプレビュー画像Pv上の一点に相当する被検体Mの一部分が撮影範囲の中心となるように撮影範囲が移動されるのである。この様にすることで、ライブ像を撮影しなくても撮影範囲の位置調整を確実に実行することができる。
【0054】
また、本発明の構成のように位置合わせ開始ボタン26aを備えるようにして撮影範囲の移動に術者の許可が必要な構成とすれば、術者の意図に反して放射線撮影装置の各部が移動してしまうことが抑制され、より安全な放射線撮影装置が提供できる。
【実施例2】
【0055】
続いて、実施例2に係るX線撮影装置1の構成について説明する。実施例2に係るX線撮影装置1は、実施例1に係るX線撮影装置1と同様な構成となっているので、共通する部分については説明を省略する。
【0056】
実施例2に係るX線撮影装置1は、プレビュー画像Pvを用いた選択点pの選択方法が異なる。すなわち、実施例2に係るX線撮影装置1においては、術者にプレビュー画像Pv上における2点を指定させることにより、実施例1で説明した選択点pを選択させるようになっている。実施例2において術者が指定する2点については、実施例1の選択点pと区別する目的で第1指定点r1および第2指定点r2と呼ぶことにする。プレビュー画像Pvの指定点r1,r2を術者が指定する様子は、実施例1におけるマウス30を用いた選択点pの選択と同様である。実施例2に係るマウス30は、表示部25に表示されたプレビュー画像Pv上の2カ所を選択させることにより、選択された2カ所を結ぶ直線を対角線とするプレビュー画像Pv上の四角形の領域が術者により選択された矩形領域Dであるものとして動作する。
【0057】
図13は、表示部25に表示されたプレビュー画像Pv上の指定点r1,r2を術者が指定し終えた状態を表している。移動距離算出部16は、指定点r1,r2を術者が指定した際に、指定点r1,r2を結ぶ直線を対角線とする矩形領域Dを認定する。その四角形は2辺がプレビュー画像Pvの縦方向と平行となっており、もう2辺がプレビュー画像Pvの横方向と平行となっている。つまり、実施例2におけるマウス30は、プレビュー画像Pv上の矩形領域Dを術者に選択させることにより、被検体Mの関心部位を選択させる。
【0058】
そして、移動距離算出部16は、矩形領域Dの中心を選択点pと認定する。したがって、移動距離算出部16は、選択点pが撮影範囲の中心となるように、移動距離データdA,dSを算出するのである。この算出の具体的方法は
図7,
図8を用いて既に説明済みである。このように、実施例2におけるマウス30は、矩形領域Dの中心が術者に選択された選択点pであるものとして動作する。
【0059】
術者が行う指定点r1,r2の指定は、上述のように撮影範囲の中心をどこにするかを指定する意味があるのと同時に、撮影範囲の大きさ自体を指定する意味もある。つまり、術者が指定点r1,r2を指定すると、プレビュー画像Pv全域を写し出せるほど広かった撮影範囲が指定された矩形領域Dとなるまで縮小されるのである。この撮影範囲の縮小を実現するには、コリメータ3aの開度を変更しなければならない。
【0060】
そこで、実施例2における移動距離算出部16は、コリメータ3aの遮蔽羽根3bの移動距離も算出するようにしている。すなわち、移動距離算出部16は、撮影範囲の移動距離を示す移動距離データdA,dSを算出するのに合わせて遮蔽羽根3bの移動距離を示す移動距離データdCも算出する。
【0061】
移動距離算出部16が遮蔽羽根3bの移動に係る移動距離データdCを算出する方法について説明する。移動距離算出部16は、プレビュー画像Pv上の指定点r1,r2の位置データを取得する。この位置データは、指定点r1,r2がプレビュー画像Pvの縦横においてどこに位置するを表している。従って、位置データは、指定点r1,r2の縦方向に係る位置データdy1,dy2と、指定点r1,r2の横方向に係る位置データdx1,dx2とから構成される。そして、移動距離算出部16は、これら位置データに基づいて、矩形領域Dの縦幅がプレビュー画像Pvの縦幅の何パーセントに当たるかを算出し、同様に矩形領域Dの横幅がプレビュー画像Pvの横幅の何パーセントに当たるかを算出する。
【0062】
移動距離算出部16は、算出された上述のパーセンテージに基づいて、遮蔽羽根3bの移動距離を算出する。例えば、矩形領域Dの縦幅がプレビュー画像Pvの縦幅の50パーセントであったとする。移動距離算出部16は、このとき、プレビュー画像Pv撮影時のコリメータ3aの開度を100パーセントとして、この開度が50パーセントとなるように遮蔽羽根3bの移動距離を算出する。プレビュー画像Pv撮影時におけるコリメータ3aの開度は、FPD4の検出面4a全面にX線が入射させるのに必要な最小の開度となっている。移動距離算出部16は、算出結果の移動距離を示す移動距離データdCを遮蔽羽根移動制御部14に送出する。移動距離算出部16は、矩形領域Dの横幅についても同様の動作をする。
【0063】
図14は、遮蔽羽根移動制御部14が移動距離データdCに従ってコリメータ3aの開度を調節している様子を示している。このコリメータ3aの開度の調節により、X線管3より発せられるX線は広がりが制限されて、FPD4の一部にしか到達しなくなる。FPD4においてX線が到達する領域の幅W3は、矩形領域Dの指定を通じて術者が指定したものである。すなわち、FPD4の幅W1に対する幅W3の比は、プレビュー画像Pvの縦幅に対する矩形領域Dの縦幅の縦幅に等しくなっているのである。遮蔽羽根移動制御部14は、矩形領域Dの横幅についても同様の動作をする。このようにして遮蔽羽根移動制御部14は、被検体Mの関心部位のみに放射線が照射されるようにコリメータ3aを制御する。
【0064】
ところで、コリメータ3aの遮蔽羽根3bの移動は鏡像対象となっている。このことあらすると、コリメータ3aを構成する4枚の遮蔽羽根3bを互いに独立に移動させなければ、矩形領域DのみにX線が照射されるようにX線ビームの絞り込みを行えないのではないかという疑問が浮かぶ。
図13によれば矩形領域Dは、プレビュー画像Pvの中心に位置していないからである。しかし実際には実施例2の構成の実現には遮蔽羽根3bの移動を鏡像対象とすることで十分である。実施例2の構成によれば、コリメータ3aの開度調節で撮影範囲を縮小させる際、天板移動制御部10および支持部材移動制御部12が撮影領域の自体を被検体Mに対し移動させる。すなわち、天板移動制御部10および支持部材移動制御部12は、撮影領域を選択点pが中心に来るように移動させるのである。この後、遮蔽羽根3bを鏡像対象に移動させていくと、撮影領域は、選択点pを中心点として左右対称の状態を維持したまま次第に狭くなる。このまま撮影領域を次第に縮小させていくと、矩形領域DにのみX線が照射される場合が出てくる。選択点pは、矩形領域Dの中心点でもあるからである。撮影領域を具体的にどの程度狭くすればよいかは、上述の移動距離算出部16が算出する移動距離データdCが表している。
【0065】
この様な遮蔽羽根移動制御部14の開度の調節は、術者が位置合わせ開始ボタン26aを通じて撮影範囲の位置調整の実行の指示がなされて初めて行われる。したがって、遮蔽羽根移動制御部14は、天板移動機構9および支持部材移動機構11が制御される際に、遮蔽羽根移動機構13の制御するように構成される。
【0066】
図15は、実施例2に係る本撮影で得られたX線画像P2を表している。
図12におけるX線画像P2の中心には、術者がプレビュー画像Pvの2点を指定することで選択した被検体Mの部分が位置している。そして、X線画像P2は、プレビュー画像Pv(
図13参照)と比べて、被検体Mの像が拡大されている。これは、本撮影の撮影範囲がプレビュー撮影の撮影範囲よりも狭いことに起因している。したがって、プレビュー画像PvとX線画像P2とを比較すると、X線画像P2は、写り込む被検体Mの形にだけに注目すれば、プレビュー画像Pvにおける矩形領域Dを抜き出して拡大したような画像となっている。とはいえ、X線画像P2は、プレビュー画像Pvと比べて高線量のX線により撮影されたものであるので、プレビュー画像Pvよりも画質がよい。
【0067】
以上のように、プレビュー画像Pv上の矩形領域の選択を通じて術者に被検体Mの関心部位を選択させ、被検体Mの関心部位のみに放射線が照射されるようにコリメータ3aの開度が調節されるようにすれば、撮影範囲の移動のみならず撮影範囲の縮小もより簡単に行うことができる。
【0068】
本発明は上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0069】
(1)上述の実施例の構成では、プレビュー画像Pvに基づいて撮影範囲が移動され、本撮影が行われるようになっていたが本発明はこの構成に限られない。すなわち、プレビュー画像Pvに基づいて撮影範囲の移動がなされた後、もう一度プレビュー画像Pvを取得し、この撮影結果に基づいて、撮影範囲が術者の思い通りの移動されたかを確認する構成とすることができる。すなわち、天板移動制御部10および支持部材移動制御部12は、マウス30による選択の完了後、術者によりフットスイッチ29を通じたプレビュー撮影の指示がなされると、再びプレビュー撮影が実行されるのに先立ち、マウス30を通じて術者により選択された被検体Mの一部分が撮影範囲の中心となるように動作する。
【0070】
図16は、本変形例に係る動作を説明するフローチャートである。
図16を見れば分かるように、本変形例に係るX線撮影装置1は、最初のうちは
図11で説明した各ステップと共通した動作をする。そして、本変形例によれば、移動指示ステップS5の後、プレビュー撮影指示ステップT6が実行される。このステップは、実施例1で説明したプレビュー撮影指示ステップS3と同様である。こうして、表示部25には、最新のプレビュー画像Pvが表示される。術者は、プレビュー画像Pvで示された撮影範囲が所望なものとなっていることを確認する。その後、動作は本撮影指示ステップT7に移行する。このステップは実施例1で説明した本撮影指示ステップS6と同様である。プレビュー撮影指示ステップT6の後、プレビュー画像Pvで示された撮影範囲が術者の所望なものとなってない場合は、
図11で説明したステップS4〜S5をやり直すことできる。
【0071】
本変形例のように示すようにプレビュー画像Pv上の術者の選択の終了後、術者が再びプレビュー撮影の実行を指示すると、撮影に先立って撮影範囲の移動がなされるようにすれば、プレビュー画像Pv上の術者の選択により撮影範囲が意図通りとなっているかを術者が確認することができる。術者は撮影範囲の移動が正しく行われたことを確認して本撮影を実行させることができる。