特許第6164370号(P6164370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164370
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】チェンソー
(51)【国際特許分類】
   B27G 19/06 20060101AFI20170710BHJP
   B27B 17/02 20060101ALI20170710BHJP
   B27B 17/08 20060101ALI20170710BHJP
   B23D 57/02 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B27G19/06 Z
   B27B17/02
   B27B17/08 Z
   B23D57/02
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-542535(P2016-542535)
(86)(22)【出願日】2015年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2015071815
(87)【国際公開番号】WO2016024486
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-163246(P2014-163246)
(32)【優先日】2014年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博幸
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−279882(JP,A)
【文献】 特開平9−70715(JP,A)
【文献】 実開平5−404(JP,U)
【文献】 特開2007−111945(JP,A)
【文献】 特開2012−121305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27G 19/06
B23D 57/02
B27B 17/02
B27B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、前記駆動源を収容するハウジングと、前記ハウジングから前方に延びるように取り付けられるガイドバーと、前記駆動源によって駆動されるスプロケットと、前記スプロケットと噛合しながら前記ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、前記ハウジングに設けられるブレーキレバーと、前記スプロケットを覆うように設けられるサイドカバーと、を有するチェンソーであって、前記ブレーキレバーが解除位置にあるときに、前記サイドカバーの前記ハウジングからの取り外しが制限されることを特徴とするチェンソー。
【請求項2】
前記サイドカバーに係止部を設け、前記ブレーキレバーに係合片を設け、前記ブレーキレバーの移動に伴う係合片の移動によって、前記係止部と前記係合片の係合又は係合解除の状態にすることを特徴とする請求項1に記載のチェンソー。
【請求項3】
前記ブレーキレバーは前記ハウジングに設けられた揺動軸を中心に所定角度だけ揺動可能に設けられ、前記揺動軸は前記スプロケットの回転軸と平行に形成され、前記ブレーキレバーが制動位置にあるときに、前記駆動源の回転を停止させる停止機構、又は/及び、前記スプロケットの回転を停止させる機械式ブレーキ、を作動させることを特徴とする請求項2に記載のチェンソー。
【請求項4】
前記サイドカバーには、取り付け時に前記ブレーキレバーの揺動軸と平行な面が形成され、前記面に前記係止部としての貫通穴が形成され、前記サイドカバーには、前記揺動軸を中心に周方向に所定距離だけ移動するものであって前記貫通穴に係合される係合片が形成され、ブレーキが解除位置にあるときには前記係合片が前記貫通穴に位置することにより前記サイドカバーの取り外しが制限されることを特徴とする請求項2又は3に記載のチェンソー。
【請求項5】
前記サイドカバーを取り外した状態においては、前記ブレーキレバーを制動位置から解除位置に移動できないようにするロック手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のチェンソー。
【請求項6】
前記駆動源は電気式のモータであり、前記ブレーキレバーが制動位置にある際に前記モータへの電力供給を停止させるスイッチを設けたことを特徴とする請求項5に記載のチェンソー。
【請求項7】
前記ブレーキレバーの移動時に前記スイッチを操作するロッドを有し、前記ロック手段は、前記ロッドの移動を阻止するように設けられるロックバーであることを特徴とする請求項6に記載のチェンソー。
【請求項8】
前記サイドカバーには、前記ガイドバーを前後させることによって前記ソーチェンの張り具合を調整する張力調整手段の操作手段が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のチェンソー。
【請求項9】
前記ハウジングには、フロントハンドルとリアハンドルが設けられ、ブレーキレバーは、所定の間隔を有するようにフロントハンドルの前方側に設けられ、前記ブレーキレバーは、解除位置と制動位置の各位置で安定して保持されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のチェンソー。
【請求項10】
駆動源と、前記駆動源を収容するハウジングと、前記ハウジングから前方に延びるように取り付けられるガイドバーと、前記駆動源によって駆動されるスプロケットと、前記スプロケットと噛合しながら前記ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、前記ハウジングに設けられるブレーキレバーと、前記スプロケットを覆うように設けられるサイドカバーと、を有するチェンソーであって、前記サイドカバーが前記ハウジングから取り外されている状態において、前記ブレーキレバーの移動を制限するロック手段を設けたことを特徴とするチェンソー。
【請求項11】
前記サイドカバーは、前記ブレーキレバーによるブレーキが制動位置にあるときに前記ハウジングへの取り付け及び取り外しが可能であり、前記ブレーキが解除位置にあるときに前記サイドカバーの前記ハウジングからの取り外しが不能とされることを特徴とする請求項10に記載のチェンソー。
【請求項12】
駆動源と、前記駆動源を収容するハウジングと、前記ハウジングから前方に延びるように取り付けられるガイドバーと、前記駆動源によって駆動されるスプロケットと、前記スプロケットと噛合しながら前記ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、前記ハウジングに設けられるブレーキレバーと、前記スプロケットを覆うように設けられるサイドカバーと、を有するチェンソーであって、前記ブレーキレバーに連動して前記ソーチェンの回転を阻止する機械的なブレーキ手段を有し、前記ブレーキ手段が制動状態の時のみ前記サイドカバーが前記ハウジングから取り外し可能とされ、前記サイドカバーが前記ハウジングから取り外された状態では前記ブレーキ手段が制動状態を維持するようにしたことを特徴とするチェンソー。
【請求項13】
駆動源と、前記駆動源を収容するハウジングと、前記ハウジングから前方に延びるように取り付けられるガイドバーと、前記駆動源によって駆動されるスプロケットと、前記スプロケットと噛合しながら前記ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、前記ハウジングに設けられるブレーキレバーと、前記スプロケットを覆うように設けられるサイドカバーと、を有するチェンソーであって、前記ブレーキレバーが制動位置にあるときにのみ、前記サイドカバーの前記ハウジングからの取り外しを可能としたことを特徴とするチェンソー。
【請求項14】
駆動源と、前記駆動源を収容するハウジングと、前記ハウジングから前方に延びるように取り付けられるガイドバーと、前記駆動源によって駆動されるスプロケットと、前記スプロケットと噛合しながら前記ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、前記駆動源の駆動を許容する状態と、規制する状態とに切り替える駆動制御手段と、前記スプロケットを覆うように設けられるサイドカバーと、を有するチェンソーであって、前記駆動制御手段が前記駆動源の駆動を許容しているときに、前記サイドカバーの前記ハウジングからの取り外しが制限されることを特徴とするチェンソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータやエンジンを駆動源として無端状のチェンソーを回転駆動して木材等の切断を行うチェンソーに関し、特に、ブレーキレバーを前方に倒した状態(ブレーキON)でなければサイドカバーを着脱できないようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
チェンソーは動力源としてエンジンや電気モータを用いて、外歯に鋭利な刃を有するループ状のソーチェン(鎖鋸)を駆動する。ソーチェンはガイドバーとスプロケットとに掛け渡され、スプロケットを介して駆動源の回転駆動力が伝達されてガイドバーの外周縁に沿って回転する。木材等の被切断物の切断中にチェンソーのはね返りが起きた場合、ブレーキレバーの慣性力又はハンドルを握っている手首のひねりによってブレーキレバーが前方に倒され、その結果、チェンブレーキが作動してガイドバーに沿うチェンソーの回転を即座に停止させることができる。このブレーキ機構は、機械式ブレーキが用いられるが、電気モータを動力源とするチェンソーであっては、ブレーキレバーの動作による機械式ブレーキに加えて、電気モータへの電源供給を遮断するか又はブレーキ電流を流すことによる電気的ブレーキを併用するものもある。
【0003】
チェンソーにおいては、ガイドバーとスプロケットとに掛け渡されたソーチェンの張り具合を調整する張力調整機構を備える。このようなチェンソーは駆動源を収容するハウジングを備えており、ハウジングの側面には駆動源により回転駆動されるスプロケットが配置され、スプロケット付近を覆うサイドカバーがハウジングに固定される。電動式のチェンソーにおいては、サイドカバーはツールレスにて着脱できるように構成するものがあり、サイドカバーの一端側に形成された基端部をハウジングの係合部に挟み込んで、他端側を掛止部にて固定するようにしてサイドカバーがハウジングに固定されている。
【0004】
特許文献1においてはソーチェンの交換時や、結合ピンの摩耗によりソーチェンの周長が延びたときなどに、ソーチェンの張り具合を調整することが開示される。ソーチェンの張り具合の調整は、サイドカバーをハウジングに固定するボルトとナットの締結を緩め、この状態で張力調整機構によりガイドバーをスプロケットに対して接近又は離反する方向に移動させることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−10281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気チェンソーのサイドカバーはツールレスであれば、別途工具を用いることなく簡単にサイドカバーを外すことができるが、サイドカバーを外した状態でトリガをオンにすればモータが回転してしまい、むき出した状態のソーチェンやスピンドルが回転してしまう恐れがあった。そこで、サイドカバー着脱時には必ず電源コードを抜いた状態で作業をするように周知されていた。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的はサイドカバーを取り外した状態でモータが回転することを確実に防止できるようにしたチェンソーを提供することにある。本発明の他の目的は、サイドカバーを外した状態では自動的にブレーキが掛かるようにして、サイドカバーを装着しない限りブレーキによる制動状態を解除できないようにして安全性を一層高めたチェンソーを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、機械的なブレーキを制動状態にした状態で無ければサイドカバーの取り外しができないようにしたチェンソーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。本発明の一つの特徴によれば、駆動源と、駆動源を収容するハウジングと、ハウジングから前方に延びるように取り付けられるガイドバーと、駆動源によって駆動されるスプロケットと、スプロケットと噛合しながらガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、ハウジングに設けられるブレーキレバーと、スプロケットを覆うように設けられるサイドカバーと、を有するチェンソーであって、ブレーキレバーが解除位置にあるときに、サイドカバーのハウジングからの取り外しが制限されるように構成した。よってブレーキをかけていない状態でサイドカバーを外すことができないので、安全にサイドカバーの着脱や、ガイドバーの調整作業を行うことができるようになった。また、サイドカバーに係止部を設け、ブレーキレバーに係合片を設け、ブレーキレバーの移動に伴う係合片の移動によって、係止部と係合片の係合又は係合解除の状態にするので、ブレーキレバーを操作して、係合解除状態にしない限りはサイドカバーを取り外すことができない。さらに、ブレーキレバーはハウジングに設けられた揺動軸を中心に所定角度だけ揺動可能に設けられ、揺動軸はスプロケットの回転軸と平行に形成され、ブレーキレバーが制動位置にあるときに、駆動源の回転を停止させる停止機構、又は/及び、スプロケットの回転を停止させる機械式ブレーキ、を作動させるように構成したので、ブレーキをかけてサイドカバーを取り外す際には、すべてのブレーキ機構が作動状態になるため安全性を一層高めることができた。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、サイドカバーには、取り付け時にブレーキレバーの揺動軸と平行な面が形成され、その面に係止部としての貫通穴が形成され、サイドカバーには、揺動軸を中心に周方向に所定距離だけ移動するものであって貫通穴に係合される係合片が形成され、ブレーキが解除位置にあるときには係合片が貫通穴に位置することによりサイドカバーの取り外しが制限されるように構成した。また、サイドカバーには、ガイドバーを前後させることによってソーチェンの張り具合を調整する張力調整手段の操作手段が設けられるので、この張力調整手段の操作する際にもサイドカバーをある程度浮かせた状態(取り外しに近い状態)にする必要があるので、張力調整の際のブレーキのかけ忘れを防止できる。駆動源が電気式のモータの時は、ブレーキレバーが制動位置にある際にモータへの電力供給を停止させるスイッチにてブレーキ機構の一つを実現すると良い。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、サイドカバーを取り外した状態においては、ブレーキレバーを制動位置から解除位置に移動できないようにするブレーキレバーのロック手段を設けた。ブレーキレバーの移動時に、モータへの電源供給を停止させるスイッチを操作するロッドを有し、ロック手段は、ロッドの移動を阻止するように設けられるロックバーにて構成される。よって、ロッドの移動を阻止するだけで容易にブレーキレバーのロック手段を実現できた。サイドカバーにはガイドバーを前後させることによってソーチェンの張り具合を調整する張力調整手段の操作手段が設けられる。ハウジングには、フロントハンドルとリアハンドルが設けられ、ブレーキレバーは、所定の間隔を有するようにフロントハンドルの前方側に設けられ、ブレーキレバーは、解除位置と制動位置の各位置で安定して保持されるように構成し、中間的な位置では固定できないようにした。尚、解除位置と制動位置だけでなく、電動工具の移動時に緩いブレーキ状態とする第三の位置にて固定できるように構成しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイドカバーの着脱時にモータが回転してしまい不意に危険な動作をする恐れが無くなるので、安全性が高く、また、作業効率の良いチェンソーを提供することができる。また、サイドカバーを装着していない状態において誤ってトリガをオンにした場合であっても、モータがいきなり回転することがないので、安全性を一層高めたチェンソーを実現できた。 本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るチェンソー1の外観形状を示す右側面図である。
図2】本発明の実施例に係るチェンソー1の外観形状を示す左側面図である。
図3図1のサイドカバー(ライトカバー5)の単体の右側面図である。
図4】ブレーキレバーによるブレーキ機構の構造を示すための部分図(一部断面図)である(ブレーキをかけていない状態)。
図5図4の停止スイッチ操作機構の形状を示す図であって、(1)はロッド33の右側面図、(2)はロッド33の上面図、(3)は(1)のB−B部の断面図である。
図6図1のブレーキレバー20付近の部分上面図であり、(2)は(1)のC部の拡大図である。
図7】ブレーキレバー20によるブレーキ機構の構造を示すための部分図(一部断面図)である(ブレーキをかけた状態)。
図8図7のD−D部の断面図である。
図9図8の部分拡大図であり、ロッド33とロックバー34の動作状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。本実施例においては、駆動源として電気モータを用いたチェンソーにて説明するが、動力源として内燃機関を用いるエンジンチェンソーであっても同様に適用できる。本明細書では、図中にて方向を示すように、チェンソー1を保持した作業者から見た方向を基準にして、図1のように前後上下を定義し、ソーチェン12が取り付けられる側、即ち作業者の右手側を右側として説明する。
【0014】
図1は本実施例に係るチェンソー1の外観形状を示す右側面図である。チェンソー1は、外部から電源コード19によって供給される電力により駆動される図示しない電気モータにより駆動されるものであって、本体部の前方にガイドバー11が突出するように固定される。ガイドバー11の周縁には、複数の鋭利な刃が所定の間隔で外向きに突出するループ状となった無端の鎖鋸つまりソーチェン12が巻回され、ソーチェン12を高速で回転させることによって木や枝などの切断が可能となる。モータハウジング2はモータを収容するものであって、ライトカバー5の内側に位置するフレーム3(図1では符号を付していない)の後方側に取り付けられる。モータハウジング2は、合成樹脂の一体成形によって左右に分割可能に形成しても良いし、モータを収容する筒状のケースに、リアハンドル部を取り付けるような分割形式にしても良いし、その組立て構造は任意である。フレーム3は、チェンソー1の基本的な骨格部分であって、減速ギヤ等の駆動伝達機構を収容し、ガイドバー11やサイドカバー類を取り付ける部分である。このフレーム3、モータハウジング2、サイドカバー(ライトカバー5、後述するレフトカバー6)によって、チェンソー1の外枠を構成する筐体部分、即ち広義の「ハウジング」が形成される。モータハウジング2の後方の上側部分には、リアハンドル2aが設けられる。フレーム3の上側から左側方にかけてはフロントハンドル7が設けられ、フロントハンドル7の前方側にはブレーキレバー20が設けられる。ブレーキレバー20は、フロントハンドル7の左右に延びる部分とほぼ平行になるように所定距離を隔てて配置され、作業者の手に枝や切断物などがあたらないように保護するハンドガードの役割を果たすと共に、ブレーキレバー20を前方側に傾けることによりソーチェン12の回転を即座に停止させる停止機構の操作レバーとなる。停止機構は、例えば電気的及び機械式ブレーキ機構で実現でき、ブレーキレバー20はこれらブレーキ機構の動作レバーの役割を果たす。
【0015】
モータハウジング2の右側であって、ソーチェン12を回転させる駆動機構(後述)を覆うようにライトカバー5が設けられる。ライトカバー5の内側には、ガイドバー11の前後方向位置を調整しつつ固定する固定部が収容され、ライトカバー5の外側には、固定部を前後方向に移動させることによりソーチェン12の張り具合を調整する張力調整手段を構成するテンションダイヤル58と、固定用ノブ57が設けられる。固定用ノブ57は、少し緩めた状態でテンションダイヤル58を回転可能にでき、締め付けることによってテンションダイヤル58を回転不能に固定できる。固定用ノブ57を複数回回転させて緩めることにより、ライトカバー5と後述する固定用ボルト10の螺合状態を解消させて、ライトカバー5を取り外すことができる。
【0016】
リアハンドル2aは、作業者が把持するためのハンドルであり、作業者は例えば右手でリアハンドル2aを把持して、左手でフロントハンドル7を把持して作業を行う。リアハンドル2aの下側には、モータ(図示せず)をオン又はオフさせるためのスイッチレバーであるトリガ8が設けられる。フレーム3の前方側には丸太等の切断時にガイドをするためのスパイク13が設けられる。
【0017】
図2は、本発明の実施例に係るチェンソー1の外観形状を示す左側面図である。フレーム3の上側から左側の下端付近にまでフロントハンドル7が延びるように配置される。また、フレーム3の左側にはレフトカバー6が装着される。レフトカバー6の内側には切欠きから一部が露出するオイルタンク15が設けられる。オイルタンク15は、回転するソーチェン12に潤滑用に供給されるオイルを貯蔵するもので、オイルキャップ16を外すことにより、オイルタンク15に給油することができる。レフトカバー6は、ネジやボルト等の工具を用いて取り外しをするような構成とすると良い。
【0018】
図3は取り外したライトカバー5の右側面図である。フレーム3には、ソーチェン12を駆動するスプロケット(後述)等を覆うようにライトカバー5が着脱自在に装着され、ライトカバー5は、フレーム3から延在するねじ部材(図4にて後述する固定用ボルト10)に螺合させるためのナットが鋳込まれ、ライトカバー5に対して相対回転可能な固定用ノブ57を含んで構成される。ライトカバー5の後方側には2つの爪部52cが形成され、爪部52cがフレーム3の図示しない凹部に係合することによりライトカバー5の後方側が係合又は掛止され、前方側は固定用ノブ57によりフレーム3にボルト固定される。本実施例においては、ライトカバー5の上側には、左右方向に平行に延びる平らな上面51が形成され、上面51のブレーキレバー20と近接する位置には貫通穴51aが形成される。尚、図3では貫通穴51aの形状がどうなるかを示すために、貫通穴51aの形成される上面51付近だけは部分的に断面図として図示している。貫通穴51aの前方側においては、ブレーキレバー20の揺動軸(後述)部分の右側側面を覆うように上方向に突出させた軸カバー部52aが形成される。
【0019】
ライトカバー5の右側面52上であって前よりの部分には、ソーチェン12の張り具合を調整する張力調整手段の操作手段となるテンションダイヤル58が設けられる。テンションダイヤル58は、矢印マーク53bの+側に回すことによりガイドバー11を前方に移動させてソーチェン12の張りを強くすることができ、−側に回すことによりガイドバー11を後方に移動させて張りを弱くすることができる。テンションダイヤル58を回す際は、固定用ノブ57を緩める必要があり、張りの調整が終わったら固定用ノブ57を十分に締め付けることにより、テンションダイヤル58が回転できないようになり、ガイドバー11はフレーム3に安定して固定される。つまり、固定用ノブ57はガイドバー11とテンションダイヤル58を挟持した形で固定用10と螺合される。ライトカバー5の右側面52の後方側の、モータハウジング2との接合面付近には、モータを冷却させた風が排出される風窓52bが形成される。ライトカバー5のテンションダイヤル58の上方、やや後方側にはソーチェン12の移動方向を示す矢印マーク53aが表示される。
【0020】
図4は、ブレーキレバー20によるブレーキ機構の構造を示すための部分図(一部断面図)であって、ブレーキをかけていない状態を示す図である。回転軸25は、図示しないモータによって回転駆動される出力軸であり、モータの出力を減速機構、又は、出力軸の方向を変えるギヤ機構等の動力伝達機構を介して接続される。回転軸25にはソーチェン12と噛合するスプロケット26が設けられ、ソーチェン12の回転が何らかの理由によって急激に停止した場合に、モータを破損しないように図示しないクラッチ機構が設けられる。スプロケット26の前方側には、ガイドバー11を固定するための固定用ボルト10と、潤滑用のオイル吐出口14が設けられる。ソーチェン12をガイドバー11とスプロケット26に装着するときには、ガイドバー11に形成された長穴に固定用ボルト10を貫通させて位置決めし、ライトカバー5の内側に形成されたピンをガイドバー11に合わせて取り付け、固定用ノブ57を締め付け直前まで締めてからテンションダイヤル58を回してソーチェン12の張り具合を調整する。調整が完了したら固定用ノブ57を所定の強さで締め付けることにより、ガイドバー11をフレーム3に固定する。
【0021】
ブレーキレバー20は、フレーム3に設けられた揺動軸21を中心に所定角度だけ前後方向に揺動可能に設けられるものであり、駆動源の回転を止めるブレーキ手段と、ソーチェンの回転を止める機械ブレーキ手段の操作レバーとなる。図4に示すブレーキレバー20の位置がチェンソー1で作業する際の通常位置(ブレーキの解除位置)であって、点線20’で示すブレーキレバー20の位置がブレーキを動作させる位置(制動位置)である。ブレーキレバー20を軸支する揺動軸21は、ソーチェン12を回転駆動させるスプロケット26の回転軸25と平行になるように、その軸方向がチェンソー1の左右方向になるように形成される。ブレーキレバー20の揺動軸21を隔てた反対側は揺動アーム22が設けられ、揺動アーム22の先端にはピン部と作用する連結部31が形成される。連結部31には、モータを停止させるスイッチ40を操作するためのロッド33が接続され、ロッド33の移動方向と平行方向にバネ32が設けられる。バネ32により、ロッド33のガタツキが防止される。本実施例では、ブレーキレバー20を矢印24の方向に移動をさせるときには、ある程度の力を要するようにして意図しないブレーキをかける誤動作が無いようにした。また、一旦ブレーキをかけて点線20’の位置にブレーキレバー20を移動させたときには、その位置にて安定して保持されるようにし、ブレーキレバー20が通常位置と制動位置との間の中間位置で止まらないように構成した。この中間位置で止まらないような構成の実現機構は、バネやリンク手段を用いた公知の機構にて実現できるのでその説明は省略する。
【0022】
ロッド33の後端付近に設けられるスイッチ40は、ブレーキレバー20の操作に伴って前後方向に移動するロッド33によって操作されるもので、モータの停止スイッチとして機能する。図4の通常位置(ブレーキ解除位置)ではスイッチ40がONとなって図示しないモータの回転を許容し、作業者がトリガ8を操作することによってモータが回転する。一方、ブレーキレバー20が図4の位置から点線の位置(20’)に移動されると、スイッチ40がOFFとなって図示しないモータの回転が阻止される。スイッチ40はモータへの電源供給ラインに直列に接続することができ、点線で示す制動位置(20’)においては、スイッチ40によってモータへの電源供給ラインが遮断されるように配線すれば、ブレーキレバー20が制動位置にあるときに作業者がトリガ8を操作してもモータは回転しない。以上のように、本実施例におけるブレーキ機構の一つは、ブレーキレバー20を操作することによってスイッチ40をオフにさせるという電気式のブレーキ機構で実現されるが、これに加えて機械式のブレーキ機構も連動して作動するように構成される。
【0023】
機械式のブレーキ機構は、スプロケット26と同じ回転軸25に円筒状のブレーキドラム27を設けて、ブレーキドラム27の外周面に巻きバネ式のブレーキバンド28を沿わせるようにする。ブレーキバンド28の一端側はフレーム3側にネジ29にて固定され、他方側は揺動アーム22の移動に伴い移動するリンク機構(図示しない)によって、ブレーキバンド28を引っ張る方向又は緩める方向に移動させる。ブレーキレバー20が通常位置にあるときは、ブレーキバンド28が矢印37bの方向に移動され、ブレーキバンド28がブレーキドラム27の外周面を締めつけないようにされる。ブレーキレバー20が制動位置(20’)に移動されると、ブレーキバンド28が矢印37bと反対方向に引っ張られることにより、ブレーキバンド28がブレーキドラム27の外周面を締めつけることにより、ブレーキバンド28とブレーキドラム27の摩擦力によってブレーキドラム27の回転を瞬時に停止させることができる。ブレーキドラム27は、スプロケット26と共に回転軸25に固定され、スプロケット26とブレーキドラム27は相対回転できないので、ブレーキドラム27が停止することによりソーチェン12の回転移動も瞬時に停止させることができる。
【0024】
ライトカバー5の上面51に形成された貫通穴51aには、ブレーキレバー20の後方側に形成された爪部20aが係合する。図4のブレーキ解除位置にあるときは爪部20aが貫通穴51aを十分貫通してハウジングの内部空間まで入り込んでいる状態となる。このブレーキレバー20が通常位置の状態では、ライトカバー5の右方向(脱着方向)への移動を阻止されるので、ライトカバー5をフレーム3から取り外すことができないことになる。
【0025】
次に図5を用いて、図4の停止スイッチ操作機構の詳細形状を説明する。図5(1)は、連結部31とロッド33の単体の右側面図である。ロッド33は、ブレーキレバー20の揺動に伴って前後方向に移動する棒状の部材であり、その前端側に揺動アーム22と連結される連結部31が形成される。連結部31とロッド33は合成樹脂の一体成形によって製造しても良いし、それぞれを別体部品にて製造して連結させるようにしても良い。連結部31は、ロッド33が前後方向に移動するためのカム穴31aを形成するもので、左右側面視でみると上下方向に長い長円状に形成される。カム穴31aが形成される。カム穴31aには、揺動アーム22の係合片23(後述する図7参照)が係合するように位置づけられる。また、連結部31にはバネ32を保持するためのバネ案内片31bが形成される。
【0026】
図5(2)は、連結部31とロッド33とスイッチ40の上面図である。ここで、ロッド33の主要の機能は、ブレーキレバー20の揺動に伴いスイッチ40をオン又はオフするための操作棒であり、後端側の形状が、スイッチ40のプランジャ40aを押圧するための作用部33aと、プランジャ40aを開放するための凹部33bにて構成される。ロッド33とスイッチ40との位置関係は、スイッチ40がONになっている状態であり、この状態ではモータと電源が接続された状態であるので、作業者がトリガ8を操作することでモータを回転させることができる。一方、(2)の状態からロッド33が後方に移動すると、凹部33bがプランジャ40aと対向する位置に移動するので、プランジャ40aは図示しないバネの作用によって通常位置(スイッチ40がOFFの位置であってプランジャ40aが突出する状態)に戻るため、スイッチ40がOFFになってモータと電源との接続を切断する。
【0027】
図5(3)は(1)のB−B部の断面図である。ロッド33はプラスチック等の合成樹脂の成形によって製造され、軽量化を図りつつ強度向上させるために断面形状を横に倒した“H”の字形に形成し、左側と右側の側部に軸方向に連続する凹部33d、33eが形成される。ロッド33の下側の一部には突起部33cが形成されるが、突起部33cは、後述するロックバー34によりブレーキレバー20の移動を許容又は阻止するために形成されるものである(その詳細は後述する)。
【0028】
図6はチェンソー1のブレーキレバー20付近の部分上面図であり、(2)は(1)のC部の拡大図である。(1)の上面図で理解できるようにフレーム3の右側にはライトカバー5が取り付けられ、左側にはレフトカバー6が取り付けられる。ブレーキレバー20は、フレーム3の上面から上側に延在するように設けられ、その揺動軸21(図4参照)の軸心が左右方向に水平に延びるように配置される。揺動軸21の後方側であって、点線Cで囲む部分には、ブレーキレバー20に形成された2つの爪部20aが、ライトカバー5に形成された2つの貫通穴51aと係合した状態にある。ここでは、係合片である爪部20aと、係止部である貫通穴51aをそれぞれ2つずつ形成して、それらが係合状態にあるときにはライトカバー5の取り外し方向(フレーム3から右方向、回転軸25の軸方向)への移動ができないように構成される。本実施例では、ライトカバー5を強引に取り外しができないように、貫通穴51aと爪部20aを2組設けたが、これらは1組でも良いし、3組以上設けるようにしても良い。また、貫通穴51aは必ずしも貫通している必要は無く、爪部20aによる係止状態を維持できるなら、上面から内部に十分窪んだ溝部又は凹部にて形成しても良い。また、本実施例では凸状部分(爪部20a)をブレーキレバー20側に形成し、凹状部分(貫通穴51a)をライトカバー5側に形成したが、これらの関係を逆にして、ライトカバー5側に凸状部分を形成し、ブレーキレバー20側に凹状部分を形成するようにしても良い。さらに、サイドカバー5とブレーキレバー20の係合関係は、ブレーキレバーが解除位置にあるときにサイドカバーのハウジングからの取り外しが制限されるような機械的なロック機構が実現できるならば、凸状部分や凹状部分でなくて他の機構、他の構造を用いて本発明を実施しても良い。
【0029】
図7は、ブレーキレバー20によるブレーキ機構の構造を示すための部分図(一部断面図)であり、図4の状態からブレーキレバー20を実線状態から矢印24に示すように前方側に移動させた後の状態(制動状態)を示す。ここでは、ブレーキレバー20が前方側に移動したため、ブレーキレバー20と一体に形成される揺動アーム22が、揺動軸21を中心にして図中時計回りに回転するため、揺動アーム22に先端(揺動軸21と離れた端部)に形成される係合片23の位置が変わる。係合片23は連結部31の上下方向に長く形成される長円形の溝であるカム穴31aに係合するため、係合片23と連結部31の相対位置が変更され、その結果、連結部31は矢印36aのように後方側に所定距離だけ移動することになる。ロッド33と連結部31は固定されるため、連結部31を矢印36aのように移動させるとロッド33は矢印36bのように後方に移動する。このロッド33の後方への移動によって、ロッド33の後端位置が距離Lだけ後方に移動して、図中に示す制動時の後端位置になる。この際、ロッド33の凹部33b(図5(2)参照)がスイッチ40のプランジャ40aと対向する位置に来るので、プランジャ40aはバネ力により凹部33bの窪み内に突出することによりスイッチ40がOFFとなる。よって、図示しないモータに対する電力供給が遮断されるため、モータが回転していた場合には、モータが停止する。
【0030】
通常、回転するモータに供給される電源を遮断しても、モータの回転は直ちに停止するのでは無く、慣性によってある程度回転を続ける。しかしながら、本実施例では、ブレーキバンド28を用いた機械的なブレーキ機構を併用しているので、ブレーキレバー20を図7のように制動位置に移動させると、ブレーキバンド28を矢印37の方向に引っ張る力が発生し、ブレーキバンド28がブレーキドラム27を締め付けることにより、スプロケット26の回転していた場合には直ちに停止し、ソーチェン12の回転移動が停止する。ここで、ブレーキレバー20を前方に移動させると、爪部20aも移動するため、爪部20aが貫通穴51aから離れる方向に移動するため、爪部20aによるライトカバー5との係合状態が解除され、即ち、ロック状態が解除される。この状態で、固定用ノブ57を複数回、例えば8回転程度回転させて固定用ボルト10との螺合状態を解除し、ライトカバー5を回転軸25の軸方向右方向に移動させることにより、ライトカバー5を取り外すことができる。装着時には逆の操作をすれば、ライトカバー5を取り付けることができるが、ここでもブレーキレバー20を矢印24のように前方側に倒しておくことが必要である。
【0031】
このように本実施例では、ライトカバー5を取り外した状態で作業者がトリガ8を操作しても、停止スイッチたるスイッチ40がOFF状態を維持するためモータが回転することはない。しかしながら、ライトカバー5を取り外した状態にてブレーキレバー20を後方側の通常位置(ブレーキ解除位置)に移動させることができると、モータを起動できることになる。そこで本実施例では、ライトカバー5を装着しない限りブレーキレバー20を制動位置から通常位置(解除位置)に移動できないように制限するロック手段を設けた。このロック手段は、いわゆるブレーキ動作の維持手段であって、ライトカバー5が取り外された状態では、ブレーキレバー20自体を操作できないようにして制動位置を維持するようにし、ブレーキの解除ができないようにした。ブレーキを解除するには、ライトカバー5を正しく装着する必要がある。ロック手段を実現するために、ロッド33が前後方向に移動できないようにするロックバー34を追加した。ロックバー34の移動方向は、ロッド33の移動方向と直交するように設けられる。
【0032】
図8図7のD−D部の断面図である。ロックバー34はレフトカバー6の円筒形の取付部6aにて保持される棒状の部材であって、その長手方向がスプロケット26の回転軸25と平行になるように形成される。ロックバー34は、ライトカバー5をフレーム3に装着した際に、ライトカバー5に形成された押圧部54によって左方向に押しまれる。ロックバー34は、ロッド33の下側に位置してお互いに直交するように配置される。ロックバー34の一部には、切欠き部34aが形成される。一方、ロッド33の一部であって、ロックバー34と交差する部分には突起部33cが形成される。ここで、ライトカバー5がフレーム3に装着されることによって、ロックバー34がライトカバー5と一体に形成された押圧部54によって押し込まれた際に、ロックバー34のほぼ中央付近に形成された切欠き部34aがロッド33の下側に位置するようになる。この切欠き部34aの位置と、ロッド33との位置関係によってブレーキレバー20の移動を制限することができる。その制限状態を図9にて説明する。
【0033】
図9図8の部分拡大図であり、ロッド33とロックバー34の動作状況を説明するための図である。(1)がライトカバー5が正しく装着されているときの状況を示し、(2)がライトカバー5が取り外されている状況を示す。本実施例のチェンソー1では、レフトカバー6の内壁側に形成される円筒形の取付部6aに棒状のロックバー34が設けられる。ロックバー34はバネ35によって付勢されることにより、長手方向(ここでは左右歩行)に所定距離だけ移動可能なようにして固定される。(1)に示すようにライトカバー5が装着されると、ライトカバー5の内壁側に形成された押圧部54がロックバー34を点線34’の位置から(1)に示す実線の位置にまで、バネ35の付勢力に抗して移動される。ロックバー34の長手方向中央付近の上側であってロッド33の近傍には、ロックバー34の側面視で凹状に切りかかれた切欠き部34aが形成される。一方、ロッド33の一部には下方向に突出する略直方体の突起部33c(図5も参照)が形成される。ここで、図9(1)から理解できるように、ライトカバー5が装着されると突起部33cが切欠き部34aの内部を通って前後方向に移動可能なような位置関係となる。これは、ライトカバー5が装着されるとブレーキレバー20の移動が許容されることを意味する。
【0034】
図9(2)は、ライトカバー5を取り外した状態を示している。ここで注意することは、ライトカバー5はブレーキレバー20を前方に倒して制動位置(図7に示す位置)にした状態で無いと取り外し又は装着ができない。図7で示すロッド33とロックバー34の位置関係を見ると、ロッド33の突起部33cがロックバー34の後方側に位置することになる。この状態は図9(2)で示すとおりであるが、ライトカバー5が取り外されていると、ライトカバー5に形成された押圧部54が矢印38aの方向にロックバー34の先端から離れるため、ロックバー34がバネ35の付勢力によって矢印38bの方向に移動する。ロックバー34の長手方向の中央付近にはストッパ34bが設けられているため、ストッパ34bがフレーム3に形成された貫通穴付近に当接することによりロックバー34の突出位置が決定される。この位置関係においては、ロックバー34の切欠き部34aは突起部33cの後方側に位置するが、ブレーキレバー20をブレーキ解除位置に移動しようとしてもロッド33の突起部33cがロックバー34に干渉して移動できないため、ブレーキレバー20の操作ができない。つまり、ライトカバー5を外した状態(ブレーキレバー20は制動位置)では、ブレーキレバー20が操作できないことになる。以上のように本実施例では、サイドカバーたるライトカバー5が、ハウジングから取り外されている状態において、ブレーキレバー20の移動を制限するロック手段を実現したので、ライトカバー5を取り外した状態において、何らかの理由によって駆動源が起動してしまうという誤動作の恐れを取り除くことができる。また、ライトカバー5を取り外した状態ではスプロケット26の回転が機械式ブレーキにより阻止された状態が維持されるので、スプロケット26が空回りすることが無く、ソーチェン12の取り付け及び取り外し動作がやり易くなる。
【0035】
本実施例では、サイドカバーを取り外している際にブレーキレバー20が操作できないようにしたロック手段を、ロッド33に設けられた突起部33cと、新たに設けられるロックバー34を用いて実現したが、ロック手段の構成は本実施例の構成だけに限られずに、その他の機械的な工夫を用いて、サイドカバーを取り外した際にはブレーキレバー20が、制動位置から移動できないように構成できれば、他の構成によるロック手段であっても良い。尚、サイドカバーの取り外しを専用の電気的なスイッチを用いて検出し、サイドカバーが非装着状態ではモータが回転しないように構成することも考えられるが、その場合であっても、サイドカバー(特にライトカバー5)の装着及び取り外しの際には、ブレーキレバー20を制動位置にするように構成して、必ず機械的なブレーキ(ブレーキバンド28を用いたブレーキ機構)を稼働させるように構成することが重要である。
【0036】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。上述の実施例ではチェンソーの例で説明したが、ハンドブレーキレバーとサイドカバーを有する作業機器であれば、同様に適用することが可能である。また、上述の実施例では、ブレーキレバー20の爪部20aとライトカバー5の貫通穴51aとの係合状態によって、ブレーキの解除位置では、ライトカバー5を取り外し及び装着ができないようにしたが、この取り外し及び装着ができないようにする機構は、貫通穴51aと爪部20aだけでなく、その他の装着構造や、形状の工夫、サイドカバーの固定部材の改良によって実現しても良い。
【符号の説明】
【0037】
1…チェンソー、2…モータハウジング、2a…リアハンドル、3…フレーム、3b…ロックバー保持部、5…ライトカバー、6…レフトカバー、6a…取付部、7…フロントハンドル、8…トリガ、10…固定用ボルト、11…ガイドバー、12…ソーチェン、13…スパイク、14…オイル吐出口、15…オイルタンク、16…オイルキャップ、19…電源コード、20…ブレーキレバー、20a…爪部、21…揺動軸、22…揺動アーム、23…係合片、25…回転軸、26…スプロケット、27…ブレーキドラム、28…ブレーキバンド、29…ネジ、31…連結部、31a…カム穴、31b…バネ案内片、32…バネ、33…ロッド、33a…作用部、33b…凹部、33c…突起部、33d,33e…凹部、34…ロックバー、34a…切欠き部、34b…ストッパ、35…バネ、40…スイッチ、40a…プランジャ、51…上面、51a…貫通穴、52…右側面、52a…軸カバー部、52b…風窓、52c…爪部、53a,53b…矢印マーク、54…押圧部、57…固定用ノブ、58…テンションダイヤル
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9