特許第6164385号(P6164385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164385
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】電子天秤及びそれに用いられる除電器
(51)【国際特許分類】
   G01G 21/30 20060101AFI20170710BHJP
   G01G 21/28 20060101ALI20170710BHJP
   G01G 7/02 20060101ALI20170710BHJP
   G01G 23/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   G01G21/30
   G01G21/28
   G01G7/02
   G01G23/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-57623(P2017-57623)
(22)【出願日】2017年3月23日
(62)【分割の表示】特願2016-126193(P2016-126193)の分割
【原出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2017-106938(P2017-106938A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 淳史
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5317747(JP,B2)
【文献】 特許第3400784(JP,B2)
【文献】 特許第5063122(JP,B2)
【文献】 特許第5971158(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量皿と秤量機構と制御部と入力部と表示部とを有する電子天秤本体と、
風防とを備え、
前記風防が上方から電子天秤本体に配置されることにより、前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤であって、
除電器を備え、
前記除電器が前記風防に脱着可能となっており、かつ、
前記風防に取り付けられた前記除電器が、前記制御部によって制御されることが可能となっていることを特徴とする電子天秤。
【請求項2】
前記除電器は、高電圧発生器を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子天秤。
【請求項3】
前記除電器は、さらに、
前記電圧発生器により電圧が印加されることにより、イオンを生成するイオン生成用電極を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子天秤。
【請求項4】
前記イオン生成用電極は、正イオンと負イオンとを生成することを特徴とする請求項3に記載の電子天秤。
【請求項5】
計量皿と秤量機構と制御部と入力部と表示部とを有する電子天秤本体と、
風防とを備え、
前記風防が上方から電子天秤本体に配置されることにより、前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤に用いられる除電器であって、
前記風防に脱着可能となっており、かつ、
前記風防に取り付けられた際には、前記制御部によって制御されることが可能となっていることを特徴とする除電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流の影響を防止する風防を備える電子天秤及びそれに用いられる除電器に関し、その風防の内部の静電気を除電する電子天秤に関する。
【背景技術】
【0002】
実験室等では、粉体等の被測定物を計量するために電子天秤が使用されている。このとき、測定者は、電子天秤の上面に形成された計量皿の載置面に、スプーン等を用いて被測定物を載置していきながら、表示された測定結果を確認することで、目的重量の被測定物を得ている。しかし、室内に設置された空調機器から吹き出される気流の影響等を受け、測定結果が安定しないことがある。
【0003】
そこで、気流の影響を防止するための風防を備えた電子天秤が開示されている。図6は、風防を備える電子天秤の一例を示す平面図であり、図7及び図8は、図6に示す電子天秤の風防の開口部開閉部材を説明する側面図である。
電子天秤201は、計量皿40と秤量機構(図示せず)と制御部(図示せず)と入力部41と表示部42と感度校正用の内蔵分銅(図示せず)とを有する電子天秤本体210と、気流の影響を防止する風防220と、時刻を計測するタイマ(時計、図示せず)とを備える。
【0004】
電子天秤本体210は、扁平なハウジング10aと、ハウジング10aの上面の前部側に設けられた入力部41及び表示部42と、ハウジング10aの上面の中央部に設けられた計量皿40と、ハウジング10aの内部に収納された秤量機構、制御部及び内蔵分銅とを備える。計量皿40は、上方から視ると例えば直径8〜9cmの円形状の載置面を有する。これにより、被測定物が載置面に載置されるようになっている。
【0005】
風防220は、ガラス製の四角形の前側壁30aと、ガラス、金属又はプラスチック製の四角形の後側壁230bと、前側壁30aの四隅と後側壁230bの四隅との間で互いに平行に形成された四本のガイド柱部30cとを有する枠体(側壁)30と、ガラス製の四角形の上側開口部開閉部材21と、ガラス製の四角形の右側開口部開閉部材22と、ガラス製の四角形の左側開口部開閉部材23とを有する。
4本のガイド柱部30cには、上側開口部開閉部材21と右側開口部開閉部材22と左側開口部開閉部材23とを前後方向にスライドさせることができる溝が形成されており、この溝に、上側開口部開閉部材21の左右端部が挿入されることで、上側開口部開閉部材21が前後方向に移動可能となるように枠体30の上面に取り付けられ、右側開口部開閉部材22の上下端部が挿入されることで、右側開口部開閉部材22が前後方向に移動可能となるように枠体30の右側面に取り付けられ、左側開口部開閉部材23の上下端部が挿入されることで、左側開口部開閉部材23が前後方向に移動可能となるように枠体30の左側面に取り付けられる。
なお、上側開口部開閉部材21が、枠体30の上面に取り付けられることにより、上壁として働くことになる。
【0006】
これにより、測定者は、上側開口部開閉部材21を後方向にスライドさせることで、図8に示すように枠体30の上側開口部を開けたり、図7に示すように前方向にスライドさせることで上側開口部を閉じたりすることができるようになっている。また、右側開口部開閉部材22を後方向にスライドさせることで、図8に示すように枠体30の右側開口部を開けたり、図7に示すように前方向にスライドさせることで右側開口部を閉じたりすることができるようになっている。さらに、左側開口部開閉部材23を後方向にスライドさせることで、枠体30の左側開口部を開けたり、前方向にスライドさせることで、左側開口部を閉じたりすることができるようになっている。また、モータ駆動で自動的に開閉する風防もある。
【0007】
このような風防220が上方から電子天秤本体210に載置されることにより、風防220の内部に計量皿40が配置される。そして、例えば、測定者は、右側開口部開閉部材22を後方向にスライドさせることで、右側開口部等を開けることにより、計量皿40の載置面の中央部にスプーン等を用いて被測定物を載置し、計量皿40に被測定物を載置した後には、右側開口部開閉部材22を前方向にスライドさせることで、右側開口部等を閉じることにより、表示部42に表示された測定結果を確認する。
【0008】
しかし、被測定物が帯電していると、被測定物と風防220との間に静電誘導によるクーロン力が発生し、測定結果が被測定物本来の質量に対して誤差を含んだものとなる。例えば、冬場の太平洋側地域のような低湿度の環境、或いはウイルスや細菌等の繁殖を抑える環境を維持するため、湿度が20〜30%以下に設定されているクリーンルーム等においては、被測定物の帯電により数十mgの計量誤差が発生することがある。
よって、静電気の影響を避けるために、除電機能を用いて帯電した被測定物にイオンを吹き付けることで、静電気を中和して低減させることが実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−190600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、被測定物の静電気だけでなく、風防220自体の静電気が問題になることがある。また、電子天秤201では、温度の変化等により被測定物の荷重と平衡させる電磁力(磁束密度の温度変化による影響)の変化や秤量機構のわずかな伸縮等が起こり、その結果、測定結果に誤差を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、出願人は、電子天秤の風防内部の静電気を低減する方法について検討した。その結果、除電器(イオナイザ)を風防に脱着可能とすることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の電子天秤は、計量皿と秤量機構と制御部と入力部と表示部とを有する電子天秤本体と、風防とを備え、前記風防が上方から電子天秤本体に配置されることにより、前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤であって、除電器を備え、前記除電器が前記風防に脱着可能となっており、かつ、前記風防に取り付けられた前記除電器が、前記制御部によって制御されることが可能となっているようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子天秤によれば、除電器によって風防内部の静電気を低減することができる。
【0014】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記風防は、上壁と当該上壁の周縁部から下方に向かって下設された側壁とを有し、当該上壁又は側壁には開口部と当該開口部を開閉可能とする開口部開閉部材とが形成されているようにしてもよい。
また、上記の発明において、前記除電器が前記風防の内部から取り外し可能となっているようにしてもよい。
そして、上記の発明において、前記除電器は、電圧発生器と、前記電圧発生器により電圧が印加されることにより、イオンを生成するイオン生成用電極とを備えるようにしてもよい。
さらに、上記の発明において、前記イオン生成用電極は、正イオンと負イオンとを生成するようにしてもよい。
【0015】
そして、本発明の除電器は、計量皿と秤量機構と制御部と入力部と表示部とを有する電子天秤本体と、風防とを備え、前記風防が上方から電子天秤本体に配置されることにより、前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤に用いられる除電器であって、前記風防に脱着可能となっており、かつ、前記風防に取り付けられた際には、前記制御部によって制御されることが可能となっているようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である電子天秤の一例を示す平面図。
図2図1に示す側面図。
図3図1に示す電子天秤のブロック図。
図4】イオナイザの一例を示す平面図。
図5】イオナイザの一例を示す底面図。
図6】風防を備える電子天秤の一例を示す平面図。
図7図6に示す電子天秤の風防の開口部開閉部材を説明する側面図。
図8図7同様の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である電子天秤の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す側面図である。また、図3は、図1に示す電子天秤のブロック図である。なお、上述した従来の電子天秤201と同様のものについては、同じ符号を付している。
電子天秤101は、計量皿40と秤量機構80と制御部150と入力部41と表示部42とを有する電子天秤本体110と、気流の影響を防止する風防20と、時刻を計測するタイマ(時計)45と、イオナイザ(除電器)60とを備える。
【0019】
ここで、図4は、イオナイザ60の一例を示す平面図であり、図5は、イオナイザ60の一例を示す底面図である。イオナイザ60は、直方体状のハウジング70を有し、ハウジング70には、高電圧発生器を制御するためのスイッチ73と吸気口71と放出口72とが形成されている。また、ハウジング70の内部には、図示は省略するが、高電圧発生器と、電圧が印加されることによりイオンを生成するイオン生成用電極と、空気を送風するファンとを備えている。
【0020】
吸気口71は、ハウジング70の上面に配置され、例えば平面視すると30mm×30mmの正方形状の開口であり、開口にはメッシュサイズが1.5mm角程度の埃除去用のフィルタ(図示せず)が設置されている。また、放出口72は、ハウジング70の下面に配置され、例えば平面視すると30mm×30mmの正方形状の開口となっている。
【0021】
ファンは、空気の流れを作るためのものであり、例えば風量が0.04m/分程度である小型ファンが挙げられる。これにより、ファンが回転すると、吸気口71から放出口72へ空気の流れが生じることになる。
高電圧発生器は、+入力リード線と−入力リード線との間に印加された入力電圧を、圧電トランスで昇圧し、交流化して出力する。
【0022】
イオン生成用電極は、針端を形成し、これを放出口72に向けた針状電極としてある。これにより、高電圧出力線で交流電圧が印加されることにより、負イオンと正イオンとが交互に生成される。アース用電極についても、針端を形成し、これらを放出口72に向けてある。なお、イオン生成用電極及びアース用電極とは、吸気口71と放出口72との間に配置され、かつ、ファンの下流に配置されているので、ファンからの送風により、放出口72からイオン含有空気が放出されていくことになる。
【0023】
このようなイオナイザ60によれば、測定者はスイッチ73をONにすることにより、高電圧発生器に入力電圧を印加することで、イオン生成用電極の先端に電界が集中して、先端にコロナ放電を発生する。その結果、イオン生成用電極からイオンが生成する。このようにして生成したイオンを、ファンによって対象物(被測定物等)に吹き付けることで、対象物の静電気を中和して低減させることができる。
【0024】
風防20は、ガラス製の四角形の前側壁30aと、ガラス、金属又はプラスチック製の四角形の後側壁30bと、前側壁30aの四隅と後側壁30bの四隅との間で互いに平行に形成された四本のガイド柱部30cとを有する枠体(側壁)30と、ガラス製の四角形の上側開口部開閉部材21と、ガラス製の四角形の右側開口部開閉部材22と、ガラス製の四角形の左側開口部開閉部材23とを有する。
後側壁30bの前面中央部には、イオナイザ60が脱着可能な凹部となる除電器取付部31が形成されている。これにより、測定者は、イオナイザ60のハウジング70の上面を、後側壁30bの前面に向かって差し込むことにより、除電器取付部31にイオナイザ60を取り付けることができるようになっている。そして、イオナイザ60が除電器取付部31に取り付けられたきには、電子天秤本体110の制御部150はスイッチ73のON/OFFを制御できるようになっている。スイッチ73がONにされると、イオナイザ60で生成したイオンは、帯電した風防20等に吸い寄せられることで、風防20等の静電気を中和して低減させることができる。また、測定者は、イオナイザ60を除電器取付部31から引き抜くことにより、除電器取付部31からイオナイザ60を取り外すことができるようになっている。
【0025】
秤量機構80は、支点88により揺動可能に支持されたレバー84と、レバー84の他端部に固着された電磁力発生装置の可動電磁コイル87と、ハウジング10aに固定された永久磁石86と、レバー84の他端部の位置を検出するようにハウジング10aに固定された光学的位置センサ85と、永久磁石86の温度を検出する温度センサ44と、レバー84の温度を検出する温度センサ(図示せず)とを備える。
【0026】
制御部150は、CPU151とメモリ46とを備え、CPU151が処理する機能をブロック化して説明すると、入力部41で入力された入力信号に基づいてイオナイザ60のスイッチ73のON/OFFを制御する除電器制御部151aと、計量を行う計量部51dとを有する。
【0027】
計量部51dは、光学的位置センサ85で検出された検出信号に基づいて、レバー84の他端部の変位を算出して、レバー84の他端部の変位が0になるように、可動電磁コイル87に供給する電流の大きさを決定するとともに、レバー84の他端部の変位が0となる平衡状態において、可動電磁コイル87に流れる電流の大きさから計量皿40に載置された被測定物Sの荷重を求める制御を行う。
【0028】
除電器制御部151aは、入力部41で入力された入力信号に基づいてイオナイザ60のスイッチ73のON/OFFを制御する。具体的には、入力部41から除電開始予定時刻信号(例えば12時45分)と除電終了予定時刻信号(例えば12時55分)とを受信したときには、除電開始予定時刻(例えば12時45分)にイオナイザ60のスイッチ73をONにし、除電終了予定時刻(例えば12時55分)にイオナイザ60のスイッチ73をOFFにする。このとき、イオナイザ60が作動する時間は、オゾン濃度が高くなると、腐食と環境基準とに適合できなくなるため、上限(例えば10分)を設けるとよい。
【0029】
以上のように、本発明の電子天秤101によれば、風防20の内部の静電気を低減することができる。このとき、風防20の内部に被測定物Sを載置してもよい。これにより、休憩時間等に風防20の内部と被測定物Sの除電を行うことができるので、休憩時間終了後(例えば13時)から計量作業をスムーズに開始することができる。
【0030】
<他の実施形態>
(1)上述した電子天秤101において、1組の除電開始予定時刻信号と除電終了予定時刻信号とが入力される構成としたが、複数組の除電開始予定時刻信号と除電終了予定時刻信号とが入力されるような構成としてもよい。
(2)上記イオン生成用電極は、正イオンと負イオンとが別々の放電電極で生じる(放電針を偶数本備え、各針で+イオン、−イオンのみを放出する)DC方式、正イオンと負イオンとを同じ電極から生成する(1本の針から+、−イオンを放出する)AC方式のどちらでもよい。
(3)上述した電子天秤101において、イオナイザ60はファンを備える構成としたが、ファンを備えない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の電子天秤は、例えば風防内部の静電気を低減するために利用される。
【符号の説明】
【0032】
20 風防
21 上壁(上側開口部開閉部材)
22 右側開口部開閉部材
23 左側開口部開閉部材
30 側壁
40 計量皿
41 入力部
42 表示部
45 時計
60 イオナイザ(除電器)
80 秤量機構
101 電子天秤
110 電子天秤本体
150 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8