特許第6164427号(P6164427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6164427
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20170710BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20170710BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F25B43/00 E
   F25B43/00 C
   F25B43/00 D
   F04C29/04 L
   F04C29/12 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-67535(P2014-67535)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190668(P2015-190668A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 順也
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−096602(JP,A)
【文献】 実開昭62−181846(JP,U)
【文献】 実開昭59−025065(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F04C 29/04
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒吸入口と冷媒吐出口を有する密閉容器内に、シリンダ内に回転ピストンを収納してなる冷媒圧縮部と上記回転ピストンを駆動する電動機とを備える圧縮機本体と、上記冷媒吸入口に吸入される冷媒を気液分離するアキュムレータとを含み、上記アキュムレータと上記冷媒吸入口とが冷媒吸入管を介して接続されているロータリ圧縮機において、
上記冷媒吸入管の吸入口は、上記アキュムレータの内部に開口するように配置され、上記ロータリー圧縮機に冷媒を注入するインジェクション管が、上記アキュムレータの上部から挿入され、上記インジェクション管の吐出口が、上記アキュムレータの冷媒ガス空間内で上記冷媒吸入管の吸込口と対向するように引き込まれていることを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
上記インジェクション管の吐出口は、上記冷媒吸入管の吸込口の内部にまで入り込んでいることを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
上記アキュムレータ内には、フィルタと気液分離板とが上記フィルタを上として配置されており、上記インジェクション管は、上記フィルタと気液分離板とを貫通して上記冷媒ガス空間内にまで延びており、それらの貫通部分がシール手段により封止されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
上記シール手段が、上記気液分離板の貫通孔の周りに上記フィルタ側に向けて環状に形成された第1シール部材と、上記第1シール部材内に上記フィルタの厚みよりも狭い隙間をもって嵌合する上記インジェクション管側に固着された筒状の第2シール部材と、上記第1シール部材と上記第2シール部材との間に挟み込まれる上記フィルタの貫通孔の周縁部分とからなり、上記第2シール部材が上記フィルタの貫通孔の周縁部分を伴って上記第1シール部材内に圧入されることを特徴とする請求項3に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
上記インジェクション管は、その吐出口側の管端に縮径された第1絞り部を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
上記冷媒吸入管は、上記吸込口に隣接した部位に縮径された第2絞り部を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置内に含まれるロータリ圧縮機に関し、さらに詳しく言えば、低外気での暖房運転時に冷媒圧縮部に冷媒をインジェクションして吐出温度を下げる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリ圧縮機は、その基本的な構成として、円筒状のシリンダ内に、電動機により駆動される回転ピストン(ロータ)を収納してなる冷媒圧縮部を備えている。これには、通常機種において、冷媒圧縮部が一つのシングルロータ型と、冷媒圧縮部が二つのツィンロータ型とがある。
【0003】
近年、R32等のHFC冷媒、HFO冷媒、CO冷媒等の冷媒を用いた冷凍サイクル装置を特に低外気温の寒冷地において暖房機として使用する要望が高まっているが、低外気温の使用環境下では、圧縮比が高い、もしくは吸入圧力の低い運転条件となるため、吐出温度の高い領域で使用される頻度が高い。また、低外気温では、吸入圧力が低いことから、冷媒循環量が少なく暖房能力が不足しやすい、という課題もある。
【0004】
その対策として、シリンダの圧縮室(作動室)内に液冷媒をインジェクション(注入)して、冷媒の吐出温度を低減させる技術が知られている。この技術によれば、シリンダの圧縮室内に液冷媒をインジェクションすることにより、通常の冷媒吸入量にインジェクション冷媒が加えられるため、その分、凝縮器の冷媒循環量が増大して暖房能力を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、上記の従来技術によると、シリンダ(圧縮室)にインジェクション孔を設けるとともに、圧縮機の密閉容器内にインジェクション管を引き込んでインジェクション孔に接続する必要があり、構造が複雑で加工に手間がかかる、という問題がある。
【0006】
また、インジェクションオフ時には、そのインジェクション孔の部分がいわゆるデッドボリュームとなり、圧縮効率が低下する、という別の問題もある。さらには、小型の機種においては、シリンダの仕切板の板厚がインジェクション管を接続するには薄すぎることから、インジェクション管を接続できない、という問題もある。
【0007】
そこで、特許文献1には、アキュムレータから圧縮機の冷媒圧縮部に至る冷媒吸入管の露出しているL字状の配管部分にインジェクション管を接続し、冷媒吸入管を介して冷媒圧縮部に液冷媒を注入することが提案されている。
【0008】
これによれば、シリンダ(圧縮室)にインジェクション孔を設ける必要がないため、インジェクションオフ時の圧縮効率が低下することはない。インジェクション管を冷媒吸入管に接続するだけでよく、加工も容易に行える。また、小型で仕切板の薄い圧縮機にもインジェクション管を接続することができる。
【0009】
しかしながら、圧縮開始前(圧縮室が蒸発器側からのガス冷媒を吸入している状態、すなわち圧縮室がアキュムレータと連通している状態の時)に液冷媒をインジェクションするため、冷媒循環量を増大させる効果がさほど得られず、暖房能力が不十分となりやすい、という問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−245837号公報(段落〔0043〕,図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、インジェクション冷媒を冷媒吸入管を介して圧縮機に供給する方式でありながら、低外気温での暖房運転時に、圧縮機に吸入される冷媒流量を増大させて、暖房能力を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、冷媒吸入口と冷媒吐出口を有する密閉容器内に、シリンダ内に回転ピストンを収納してなる冷媒圧縮部と上記回転ピストンを駆動する電動機とを備える圧縮機本体と、上記冷媒吸入口に吸入される冷媒を気液分離するアキュムレータとを含み、上記アキュムレータと上記冷媒吸入口とが冷媒吸入管を介して接続されているロータリ圧縮機において、上記冷媒吸入管の吸入口は、上記アキュムレータの内部に開口するように配置され、上記ロータリー圧縮機に冷媒を注入するインジェクション管が、上記アキュムレータの上部から挿入され、上記インジェクション管の吐出口が、上記アキュムレータの冷媒ガス空間内で上記冷媒吸入管の吸込口と対向するように引き込まれていることを特徴としている。
【0013】
本発明において、上記アキュムレータ内には、フィルタと気液分離板とが上記フィルタを上として配置されており、上記インジェクション管は、上記フィルタと気液分離板とを貫通して上記冷媒ガス空間内にまで延びており、異物が気液分離室内に紛れ込まないようにするため、それらの貫通部分がシール手段により封止されていることが好ましい。
【0014】
上記シール手段は、好ましくは、上記気液分離板の貫通孔の周りに上記フィルタ側に向けて環状に形成された第1シール部材と、上記第1シール部材内に上記フィルタの厚みよりも狭い隙間をもって嵌合する上記インジェクション管側に固着された筒状の第2シール部材と、上記第1シール部材と上記第2シール部材との間に挟み込まれる上記フィルタの貫通孔の周縁部分とからなり、上記第2シール部材が上記フィルタの貫通孔の周縁部分を伴って上記第1シール部材内に圧入されるとよい。
【0015】
本発明の好ましい態様によると、上記インジェクション管は、その吐出口側の管端に縮径された第1絞り部を備え、また、上記冷媒吸入管は、上記吸込口に隣接した部位に縮径された第2絞り部を備える。また、上記インジェクション管は、上記冷媒吸入管の上記第2絞り部内にまで入り込んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インジェクション管をアキュムレータの上部から引き込んで、冷媒ガス空間内で冷媒吸入管の吸込口と対向させ、好ましくはインジェクション管および/または冷媒吸入管に絞り部を形成することにより、インジェクション管から冷媒流が高速で噴出するに伴って、その周囲の静圧が低下し、アキュムレータ内部のガス冷媒が冷媒吸入管に吸い込まれるエジェクタ効果によって、圧縮機内に供給される冷媒流量が増大し、その分、暖房能力が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るロータリ圧縮機を一部断面として示す正面図。
図2】(a)上記ロータリ圧縮機を含む冷凍サイクルの一例を示す模式図、(b)冷凍サイクルの別の例におけるインジェクション管の配管部分を示す模式図。
図3】上記ロータリ圧縮機が備えるアキュムレータの内部構造を示す模式図。
図4】(a)本発明の要部であるエゼクタ効果を発揮する第1の構成例を示す模式的な断面図、(b)その第2の構成例を示す模式的な断面図。
図5】アキュムレータ内でのインジェクション管のシール部を示す模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図1ないし図6により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
図1を参照して、この実施形態に係るロータリ圧縮機10は、基本的な構成として、圧縮機本体11と、圧縮機本体11に付設されるアキュムレータ12とを備え、図2に示す冷媒回路RC内に組み込まれる。
【0020】
圧縮機本体11は、円筒状の容器本体111に上蓋112aと下蓋112bとを被せてなる密閉容器110を備え、その内部には、冷媒圧縮部115と電動機113とが収納されている。
【0021】
この実施形態において、冷媒圧縮部115には、第1冷媒圧縮部115aと第2冷媒圧縮部115bの上下2段に配置された2つの冷媒圧縮部が含まれ、その各々は、円筒状のシリンダ116と、シリンダ116内に収納されたロータとしての回転ピストン117とから構成されている。
【0022】
第1冷媒圧縮部115a側の回転ピストン117と、第2冷媒圧縮部115b側の回転ピストン117は、電動機113の回転駆動軸113aに偏心させて固着され、180゜の位相をもって回転駆動される。
【0023】
容器本体111の下部に設けられた冷媒吸入口119a,119bから冷媒が第1冷媒圧縮部115aと第2冷媒圧縮部115bとに吸入され、第1冷媒圧縮部115aにより生成された圧縮冷媒は上部マフラ118aを介して密閉容器110内に排出され、また、第2冷媒圧縮部115bにより生成された圧縮冷媒は下部マフラ118bを介して密閉容器110内に排出され、各圧縮冷媒は、上蓋112aに設けられている冷媒吐出管114より冷媒回路RCに供給される。
【0024】
なお、第1冷媒圧縮部115aと第2冷媒圧縮部115bを区別する必要がない場合には、総称として冷媒圧縮部115と言う。同様に、冷媒吸入口119a,119bも区別する必要がない場合には、総称として冷媒吸入口119と言う。
【0025】
アキュムレータ12は、上記密閉容器110と同じく、円筒状の容器本体121に上蓋122aと下蓋122bとを被せてなる密閉容器120を備えている。この密閉容器120は、軸線をほぼ垂直、すなわち縦置きとして、圧縮機本体11の脇に例えばバンド等の締め付け固定手段を介して付設される。
【0026】
アキュムレータ12内には、上蓋122aから後述する冷媒回路RCの冷媒戻り配管1Cと、インジェクション管50(50a,50b)とが引き込まれている。また、下蓋112bからは、冷媒圧縮部115(115a,115b)の各シリンダ116に接続される冷媒吸入管124(124a,124b)が引き出されている。
【0027】
なお、この実施形態では、冷媒圧縮部115として、2つの冷媒圧縮部115a,115bが設けられ、その各々が個別的に作動するため、各冷媒圧縮部115a,115bに対応して2本の冷媒吸入管124a,124bが用いられているが、2段圧縮の場合や冷媒圧縮部115が一つである場合には、引き出される冷媒吸入管124も1本である。なお、2本の冷媒吸入管124a,124bを区別する必要がない場合には、総称として冷媒吸入管124と言う。
【0028】
ここで、図2(a)により冷媒回路RCについて説明する。この冷媒回路RCには、室外機1と室内機2とが含まれるヒートポンプ式の空気調和機用のもので、室外機1と室内機2は、液側冷媒配管1Aとガス側冷媒配管1Bとにより接続されている。
【0029】
なお、図2(a)において、室内機2は1台であるが、その複数台が液側冷媒配管1Aとガス側冷媒配管1Bとの間に並列的に接続されてもよい。
【0030】
室外機1には、上記した構成のロータリ圧縮機10と、四方弁20と、室外熱交換器30と、室外送風ファン30aと、室外膨張弁31と、インジェクション管50とが含まれている。室内機2には、室内熱交換器40と、室内送風ファン40aと、室内膨張弁41とが含まれている。
【0031】
暖房運転時には、基本的な動作として、四方弁20が図2(a)の実線図示のように切り替えられ、室外膨張弁31および室内膨張弁41は、図示しない制御部により所定の開度に調節される。
【0032】
圧縮機本体11にて生成され冷媒吐出管114から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、四方弁20およびガス側冷媒配管1Bを介して室内熱交換器40に送られ、室内空気と熱交換を行って冷却され、室内膨張弁41にて減圧された後、液側冷媒配管1Aを介して室外機1側に戻され、室外膨張弁31にて減圧され低圧の気液二相の冷媒となり、室外熱交換器30で室外空気と熱交換を行って加熱され、蒸発して低圧冷媒となり、四方片20を経由して冷媒戻り配管1Cよりアキュムレータ12に入り気液分離され、気液分離後のガス冷媒が冷媒吸入管124を介して冷媒圧縮部115に供給される。このように、暖房運転時には、室内熱交換器40が凝縮器として作用し、室外熱交換器30が蒸発器として作用する。
【0033】
冷房運転時には、基本的な動作として、四方弁20が図2(a)の鎖線図示のように切り替えられ、図示しない制御部により、室外膨張弁31は全開状態、室内膨張弁41は所定の開度に調節される。
【0034】
圧縮機本体11にて生成され冷媒吐出管114から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、四方弁20を経由して室外熱交換器30に送られ、室外空気と熱交換を行って冷却され液化した高圧の冷媒となり、液側冷媒配管1Aを介して室内機2に至り、室内膨張弁41にて減圧されて気液二相状態の冷媒となり、室内熱交換器40にて室内空気と熱交換して蒸発して低圧のガス冷媒となり、ガス側冷媒配管1Bを介して室外機1側に戻され、四方片20を経由して冷媒戻り配管1Cよりアキュムレータ12に入り気液分離され、気液分離後のガス冷媒が冷媒吸入管124を介して冷媒圧縮部115に供給される。このように、冷房運転時には、室内熱交換器40が蒸発器として作用し、室外熱交換器30が凝縮器として作用する。
【0035】
図2(a)の冷媒回路RCにおいて、インジェクション管50は、室外膨張弁31の暖房運転時には上流側、冷房運転時には下流側となる箇所で液側冷媒配管1Aから分岐され、液側冷媒配管1Aと熱交換を行うインジェクション用の二重管熱交換器32を通ってアキュムレータ12に至る。インジェクション管50には、インジェクション用の開度調節可能な電磁弁51と、インジェクション冷媒用の開閉弁52とが設けられている。
【0036】
なお、図2(b)に示すように、インジェクション管50は、圧縮機本体11と四方弁20との間の冷媒吐出管114に設けられる気液分離器21から引き出されたものであってもよい。
【0037】
図3を参照して、アキュムレータ12内には、冷媒内に含まれている異物を除去する例えば金網等からなるフィルタ126と、気液分離板127とが設けられている。フィルタ126が上で、気液分離板127はその下側に配置されている。
【0038】
冷媒戻り管1Cから供給される冷媒は、気液分離板127にて気液分離され、液冷媒はアキュムレータ12内の下部側に冷凍機油を含んだ状態で溜められ、ガス冷媒はその上部側に溜められる。便宜的に液冷媒が溜められる部分を液冷媒貯留部120bとし、ガス冷媒が貯留される部分を冷媒ガス空間120aとする。
【0039】
冷媒吸入管124a,124bは、アキュムレータ12内において、下蓋122bを貫通してほぼ垂直に立ち上がり冷媒ガス空間120aにまで延び、冷媒ガス空間120a内において冷媒吸入管124a,124bのそれぞれの吸入口129a,129bが開口している。液冷媒貯留部120b内に浸かる冷媒吸入管124a,124bの部分には、小径の冷凍機油戻し孔125が穿設されている。なお、吸入口129a,129bを区別する必要がない場合には、総称として吸入口129と言う。
【0040】
本発明によると、アキュムレータ12内には、インジェクション管50a,50bが上蓋122aからフィルタ126および気液分離板127を貫通して、冷媒ガス空間120a内でインジェクション管50a,50bの吐出口51a,51bが冷媒吸入管124の吸込口129a,129bと対向するように引き込まれている。
【0041】
この実施形態では、2本の冷媒吸入管124a,124bを備えていることから、これに対応して、インジェクション管50は、図示しない所定箇所で二股に分岐され、その各インジェクション管50a,50bがアキュムレータ12内に引き込まれている。なお、インジェクション管50a,50bを区別する必要がない場合には、総称としてインジェクション管50と言う。同様に、吐出口51a,51bについても区別する必要がない場合には、総称として吐出口51と言う。
【0042】
暖房運転時には、室内熱交換器40にて室内空気と熱交換された冷媒が、室内膨張弁41で所定の圧力に減圧され、液側冷媒配管1Aを介して室外機1側に戻されるが、上記開閉弁52をオン(開)とすることにより、液側冷媒配管1A内の冷媒の一部が、インジェクション用の電磁弁51にて減圧され、インジェクション用の二重管熱交換器32を通って液側冷媒配管1Aと熱交換され、インジェクション管50の吐出口51よりアキュムレータ12内に高速で噴射される。
【0043】
このように、インジェクション管50の吐出口51から冷媒吸入管124の吸込口129に向けて、インジェクション冷媒が高速で噴射されるため、冷媒吸入管124の吸込口周囲の静圧が低下し、アキュムレータ12内のガス冷媒が冷媒吸入管124内に引き込まれる。
【0044】
このエジェクタ効果により、冷媒圧縮部115に吸入される冷媒流量が増大するため、特に、低外気温下での暖房運転時における暖房能力を確保することができる。インジェクション冷媒は、ガス冷媒であってもよいが、液冷媒が好ましい。液冷媒をインジェクションすることにより、圧縮室内が冷却され、吐出温度の上昇が抑えられる。
【0045】
インジェクション管50の吐出口51と冷媒吸入管124の吸込口129との配置については、エジェクタ効果が得られることを条件として、図4(a)に示すように、適度な距離を置いて対向させてもよいし、図4(b)に示すように、インジェクション管50の吐出口51側の管端を冷媒吸入管124内に挿入してもよい。
【0046】
いずれの場合においても、エジェクタ効果をより発揮させるには、インジェクション管50の吐出口51側の管端に、縮径された絞り部(第1絞り部)141を形成してノズル状とすることが好ましい。
【0047】
また、冷媒吸入管124の一部分に、縮径された絞り部(第2絞り部)142を設けてもよく、これによれば、絞り部142で冷媒の流速が増すことから、冷媒吸入管124の吸込口周囲の静圧をより一層低下させることができる。
【0048】
なお、絞り部142を通過後は、断面積の拡大により冷媒の流速が減速し、これに伴って圧力が上昇することから、冷媒圧縮部115の吸入圧力が高まり、電動機113の圧縮動力の低減にもなる。
【0049】
上記のように、インジェクション管50は、フィルタ126および気液分離板127を貫通して冷媒ガス空間120aにまで引き込まれるが、その貫通部分に隙間があると、そこから異物がアキュムレータ12の貯留部内に混入するおそれがある。
【0050】
そこで、この実施形態では、図5に示すようなシール手段130にて貫通部分に隙間が生じないようにしている。
【0051】
このシール手段130には、気液分離板127の貫通孔の周りにフィルタ126側に向けて環状に形成された第1シール部材131と、インジェクション管50側に固着された筒状の第2シール部材132と、第1シール部材131と第2シール部材132との間に挟み込まれるフィルタ126の貫通孔の周縁部分133とが含まれる。
【0052】
第1シール部材131は、気液分離板127にロウ付けされる例えば銅材からなる円筒体であってよいが、加工の容易性からすれぱ、バーリングにより気液分離板127に一体に形成された環状の切り起こし片であることが好ましい。
【0053】
第2シール部材132は、インジェクション管50にロウ付けされる例えば銅材からなる円筒体であってよいが、第1シール部材131の内径をφ1,第2シール部材132の外径をφ2,フィルタ126の厚さをTとして、第1シール部材131の内径φ1と第2シール部材132の外径φ2は、(φ1−φ2)<Tとなるように規定される。
【0054】
このシール手段130によれば、第1シール部材131と第2シール部材132との間にフィルタ126の貫通孔の周縁部分133を挟んで、第2シール部材132を第1シール部材131内に圧入することにより、インジェクション管50の貫通部分の隙間を封止することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 室外機
1A 液側冷媒配管
1B ガス側冷媒配管
1C 冷媒戻り配管
2 室内機
10 ロータリ圧縮機
11 圧縮機本体
111 密閉容器
113 電動機
114 冷媒吐出管
115(115a,115b) 冷媒圧縮部
116 シリンダ
117 回転ピストン
12 アキュムレータ
120 密閉容器
120a 冷媒ガス空間
120b 液冷媒貯留部
124(124a,124b) 冷媒吸入管
126 フィルタ
127 気液分離板
130 シール手段
131 第1シール部材
132 第2シール部材
133 フィルタの周縁部
141,142 絞り部
20 四方弁
30 室外熱交換器
31 室外膨張弁
32 二重管熱交換器
40 室内熱交換器
41 室内膨張弁
50 インジェクション管
51 インジェクション用膨張弁
52 インジェクション用開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5